説明

噴霧乾燥粒子の製造方法

【課題】硫酸ナトリウムを含み、かつ、非石鹸性アニオン界面活性剤を低濃度で含有する噴霧乾燥用スラリー中での凝集物の発生を抑制する噴霧乾燥粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(D)に示す成分を含有する噴霧乾燥用スラリーを調製する工程と、該噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する工程を有する噴霧乾燥粒子の製造方法であって、前記噴霧乾燥用スラリーを調製する工程において、(B)成分を添加した後に、(C)成分と(D)成分を添加することを特徴とする噴霧乾燥粒子の製造方法。(A)成分:1〜10質量%の非石鹸性アニオン界面活性剤。(B)成分:0.5〜20質量%の金属イオン封鎖剤。(C)成分:0.5質量%以上の硫酸ナトリウム。(D)成分:0.5質量%以上の炭酸カリウム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用洗剤などの粒状洗浄剤組成物は、一般に、非石鹸性アニオン界面活性剤等の界面活性剤やビルダー等を含有する洗剤スラリー(噴霧乾燥用スラリー)を噴霧乾燥して洗浄剤組成物ベース粉末(噴霧乾燥粒子)を製造し、当該洗浄剤組成物ベース粉末を高嵩密度化等することにより製造されている。
界面活性剤として非石鹸性アニオン界面活性剤が用いられている粒状洗剤組成物の製造方法としては、非石鹸性アニオン界面活性剤と、ゼオライトや炭酸カリウム等のビルダーとを含有する、高嵩密度粒状洗剤組成物を製造する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年では、洗浄力を向上させる目的で、噴霧乾燥用スラリーに硫酸ナトリウムを含有させることもある。
例えばアニオン界面活性剤(非石鹸性)、石鹸、特定のアミノカルボン酸誘導体型キレート剤、炭酸カリウムなどの水溶性アルカリ性無機塩、その他成分として硫酸ナトリウムを含む高嵩密度粒状洗剤組成物の製造方法が提案されている(特許文献2参照。)。
また、高嵩密度洗剤のベース粒子を、該粒子相互の相対的な位置を変化させながら、前記粒子の平衡相対湿度を超える湿度の雰囲気に、少なくとも30分以上暴露する工程を有する高嵩密度洗剤の製造方法が提案されている(特許文献3参照。)。特許文献3には、ベース粒子の組成に界面活性剤の他、硫酸ナトリウム、炭酸カリウム等が用いられている。
【0004】
ところで、近年では環境意識の高まりから、粒状洗浄剤組成物においても環境への負荷の低減が望まれるようになってきている。このような環境対応に適した粒状洗浄剤組成物を得る方法としては、例えば、従来の粒状洗浄剤組成物中に洗浄成分として主に配合されているアルキルベンゼンスルホン酸塩等の非石鹸性アニオン界面活性剤の使用量を削減する方法が考えられる。
【特許文献1】特開2003−105397号公報
【特許文献2】特開2001−64697号公報
【特許文献3】特開2003−301199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者等の知見によれば、特許文献2、3に記載の製造方法のように、硫酸ナトリウムを含有させると噴霧乾燥用スラリー中で凝集物が発生することがある。特に、炭酸カリウムが混在する場合は顕著である。
また、非石鹸性アニオン界面活性剤の使用量を削減する場合でも、噴霧乾燥用スラリー中で凝集物が発生しやすい。
このように噴霧乾燥用スラリー中で凝集物が発生すると、該噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する際にノズルや配管等が閉塞しやすくなる。
【0006】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、硫酸ナトリウムを含み、かつ、非石鹸性アニオン界面活性剤を低濃度で含有する噴霧乾燥用スラリー中での凝集物の発生を抑制する噴霧乾燥粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、噴霧乾燥用スラリーの調製に用いられる各成分の添加順序が、凝集物の発生に関係していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の噴霧乾燥粒子の製造方法は、下記(A)〜(D)に示す成分を含有する噴霧乾燥用スラリーを調製する工程と、該噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する工程を有する噴霧乾燥粒子の製造方法であって、前記噴霧乾燥用スラリーを調製する工程において、(B)成分を添加した後に、(C)成分と(D)成分を添加することを特徴とする。
(A)成分:1〜10質量%の非石鹸性アニオン界面活性剤。
(B)成分:0.5〜20質量%の金属イオン封鎖剤。
(C)成分:0.5質量%以上の硫酸ナトリウム。
(D)成分:0.5質量%以上の炭酸カリウム。
【0008】
また、前記(C)成分を添加した後に、前記(D)成分を添加することが好ましい。
さらに、前記(D)成分を添加する前に、前記(A)成分を添加することが好ましい。
また、前記(B)成分がゼオライト及び/又は水溶性高分子であることが好ましい。
さらに、前記(B)成分がゼオライトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硫酸ナトリウムを含み、かつ、非石鹸性アニオン界面活性剤を低濃度で含有する噴霧乾燥用スラリー中での凝集物の発生を抑制する噴霧乾燥粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の噴霧乾燥粒子の製造方法で調製される噴霧乾燥用スラリーは、非石鹸性アニオン界面活性剤と、金属イオン封鎖剤と、硫酸ナトリウムと、炭酸カリウムとを含有する。
【0011】
[噴霧乾燥用スラリー含有成分]
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は非石鹸性アニオン界面活性剤である。
ここで、本発明において「非石鹸性アニオン界面活性剤」とは、石鹸以外のアニオン界面活性剤を包含するものとする。
(A)成分としては、石鹸以外であれば特に制限されるものではなく、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、α−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、α−スルホ脂肪酸エステル塩(α−SF)、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩(MES)等のアルカリ塩等が挙げられる。中でも、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)が好ましい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0012】
なお、(A)成分は、前記アルカリ塩を、噴霧乾燥用スラリーを調製する工程に供することができる。また、噴霧乾燥用スラリーを調製する工程中に、(A)成分の酸前駆体(A1)(以下、(A1)成分ということがある。)と、該酸前駆体(A1)を中和する目的で用いるアルカリ物質(以下、(E1)成分ということがある。)を混合することにより(A)成分を調製してもよい。(A)成分の酸前駆体(A1)とアルカリ物質(E1)を混合する場合、(A)成分は、例えば噴霧乾燥用スラリーを調製する際、水と(E1)成分と(A1)成分を混合することにより得ることができる。
ここで、(E1)成分としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができる。
【0013】
(A)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(A)成分の含有量(配合量)は、噴霧乾燥用スラリー100質量%中、1〜10質量%である。該配合量は、好ましくは2〜8質量%であり、より好ましくは3〜6質量%である。
配合量が該範囲の下限値以上であることにより洗浄性が向上し、例えば粒状洗浄剤組成物に用いた場合、洗浄力が向上する。また、洗浄後の衣料等の黄変(黄ばみ)が抑制される。一方、上限値以下であれば、環境対応に適した噴霧乾燥粒子が得られる。
【0014】
<(B)成分>
本発明において、(B)成分は金属イオン封鎖剤である。
金属イオン封鎖剤は、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の硬度成分である金属イオンを捕捉し、硬度を低下させるものであり、例えば、カルシウムイオン捕捉能が100CaCOmg/g以上であることが望ましく、より望ましくは200CaCOmg/g以上である。金属イオン封鎖剤のカルシウムイオン捕捉能は、カルシウムイオン電極を用いて下記のようにして測定する。なお、溶液は全て緩衝液(0.1M−NHCl−NHOH buffer(pH10.0))を用いて調製する。
カルシウムイオン捕捉能の測定;
(i)検量線の作成
標準カルシウムイオン溶液を作成し、カルシウムイオン濃度の対数と電位の関係を示す検量線を作成する。
(ii)カルシウムイオンの捕捉能の測定
約0.1gの金属イオン封鎖剤を秤量し、100mLメスフラスコに仕込み、上記の緩衝液でメスアップする。これに、カルシウムイオン濃度が20000ppm(CaCO換算)に相当するCaCl水溶液(pH10.0)をビュレットから滴下する。滴下はCaCl水溶液を0.1〜0.2mLずつ加えて行い、その時の電位を読み取る。また、金属イオン封鎖剤を含有しない緩衝液にも同様にCaCl水溶液滴下を行う。この溶液をブランク溶液と称する。先に作成した検量線よりカルシウムイオン濃度を求め、CaCl水溶液の滴下量とカルシウムイオン濃度の関係をグラフに示す(図1)。図1中、線Aはブランク溶液(金属イオン封鎖剤を使用しない緩衝液を用いた場合)のデータを示し、線Bは金属イオン封鎖剤含有緩衝液を用いた場合のデータを示す。線Bの延長線と、横軸との交点をPとし、Pにおけるブランク溶液のカルシウムイオン濃度から、金属イオン封鎖剤のカルシウムイオン捕捉能を求める。
【0015】
このような金属イオン封鎖剤としては、ゼオライト及び/又は水溶性高分子が好ましく、ゼオライトがより好ましい。
ゼオライトとしては、A型、X型、P型ゼオライトに代表される平均一次粒子径0.1〜10μmの合成ゼオライト等が挙げられる。
【0016】
水溶性高分子としては、天然高分子、半合成高分子及び合成高分子のいずれの高分子化合物も好適に用いることができる。
ここで、本発明において「水溶性高分子」とは、20℃における水への溶解度が0.1g/(100g水)以上であることが望ましく、より望ましくは0.2g/(100g水)以上であり、さらに望ましくは0.3g/(100g水)以上である。
また、質量平均分子量は500以上が好ましく、2000以上がより好ましく、上限値は、好ましくは100000以下である。
なお、ここでいう「質量平均分子量」とは、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定される値を示す。
【0017】
天然高分子としては、例えば寒天、アルギン酸ナトリウム等の海藻類の高分子化合物;キサンタンガム、アラビアガム等のガム類の高分子化合物;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等のタンパク質類の高分子化合物等が挙げられる。
半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン誘導体等が挙げられる。
また、合成高分子としては、アクリル酸重合体、マレイン酸重合体、アクリル酸/マレイン酸の共重合体、ポリビニルアルコール類、カルボキシビニルポリマー類、高重合ポリエチレングリコール類等が挙げられる。
【0018】
上記の水溶性高分子の中でも、一般に洗浄用として用いられる、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸重合体、マレイン酸重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、及びこれらの塩;高重合ポリエチレングリコール等がより好ましく、アクリル酸/マレイン酸共重合体がさらに好ましい。
なお、市販品で入手可能な水溶性高分子には様々なグレードのものがあるが、本発明の利用を限定するものではなく、例えば、その市販品が製造される際に製造工程で混入する不純物や、品質安定化のために添加される保存安定剤や酸化防止剤を含む水溶性高分子等も本発明の範囲に含まれる。
【0019】
(B)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(B)成分の含有量(配合量)は、噴霧乾燥用スラリー100質量%中、0.5〜20質量%である。該配合量は、好ましくは1〜15質量%である。
配合量が該範囲の下限値以上であることにより凝集物の発生を抑制できる。一方、上限値以下であれば、他の成分とのバランスがよい。
【0020】
<(C)成分>
本発明において、(C)成分は硫酸ナトリウムである。
硫酸ナトリウムは、上述したように洗浄力(溶解性)を向上させる目的の他、噴霧乾燥用スラリーの比重を調整し、噴霧乾燥粒子とした際の強度を確保する目的で含有される。
硫酸ナトリウムは、無水物であっても、水和物であってもよいが、無水物が好ましい。また、市販品を用いてもよく、例えば、市販品が製造される際に製造工程で混入する不純物を含む硫酸ナトリウムも本発明の範囲に含まれる。
【0021】
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(C)成分の含有量(配合量)は、噴霧乾燥用スラリー100質量%中、0.5質量%以上である。該配合量は、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。
配合量が該範囲の下限値以上であることにより洗浄力(溶解性)、噴霧乾燥用スラリーの比重調整、噴霧乾燥粒子とした際の強度確保の効果が向上する。一方、上限値以下であれば、他の成分とのバランスがよい。
【0022】
<(D)成分>
本発明において、(D)成分は炭酸カリウムである。
炭酸カリウムは、噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥して粒子状にする際の製造性の確保の目的で含有される。
炭酸カリウムは、無水物であっても、水和物であってもよいが、無水物が好ましい。また、市販品を用いてもよく、例えば、市販品が製造される際に製造工程で混入する不純物を含む硫酸ナトリウムも本発明の範囲に含まれる。
【0023】
(D)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(D)成分の含有量(配合量)は、噴霧乾燥用スラリー100質量%中、0.5質量%以上である。該配合量は、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。
配合量が該範囲の下限値以上であることにより製造性確保の効果が向上する。一方、上限値以下であれば、他の成分とのバランスがよい。
【0024】
<任意成分>
噴霧乾燥用スラリーには、必要に応じて前記(E1)成分やその他の任意成分や水を配合することができる。その他の任意成分としては、例えば蛍光増白剤、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、石鹸等を用いることができる。
水は、噴霧乾燥用スラリー100質量%中の配合量が20〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは30〜40質量%である。なお、前記配合量の一部の水は、噴霧乾燥用スラリーの調製に用いる固体原料を予め水溶液にする(原料小物調製)等のために用いてもよい。
【0025】
[噴霧乾燥粒子の製造方法]
本発明の噴霧乾燥粒子の製造方法は、前記(A)〜(D)成分と任意成分を含有する噴霧乾燥用スラリーを調製する工程と、該噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する工程を有する。
【0026】
<噴霧乾燥用スラリーを調製する工程>
本工程においては、(B)成分を添加した後に、(C)成分と(D)成分を添加して噴霧乾燥用スラリーを調製する。(B)成分の存在下に、(C)成分及び(D)成分を添加することにより、凝集物の発生を抑制することができる。一方、(B)成分が存在しない状態で、(C)成分と(D)成分を添加すると凝集物が発生しやすくなるので好ましくない。
【0027】
(B)成分、並びに(C)成分及び(D)成分の添加順序は、(B)成分を添加した直後に(C)成分及び(D)成分を添加してもよく、(B)成分を添加した後に他の成分を添加し、その後に(C)成分及び(D)成分を添加してもよい。
また、(C)成分と(D)成分の添加順序は制限されないが、(C)成分を添加した後に、(D)成分を添加するのが好ましい。(B)成分と(C)成分の存在下に、(D)成分を添加することにより、凝集物の発生をより効果的に抑制することができる。
【0028】
さらに、本工程においては、(A)成分を添加するタイミングについては制限されないが、(D)成分を添加する前に(A)成分を添加するのが好ましい。(B)成分と(C)成分、並びに(A)成分の存在下に、(D)成分を添加することにより、凝集物の発生をさらに効果的に抑制することができる。
(A)成分と(D)成分の添加順序は、(A)成分を添加した直後に(D)成分を添加してもよく、(A)成分を添加した後に他の成分を添加し、その後に(D)成分を添加してもよいが、(A)成分を添加した後に他の成分を添加し、その後に(D)成分を添加するのが好ましい。また、(A)成分は、(B)成分や(C)成分の前に添加するのがより好ましい。
【0029】
従って、(A)〜(D)成分の添加順序は(A)成分を添加した後に(B)成分を添加し、その後に(C)成分を添加し、その後に(D)成分を添加することがより好ましい。
なお、(A)〜(D)成分さえ上述した順序で添加すれば、水や任意成分等においては、その添加順序や添加のタイミングは制限されない。
【0030】
ここで、図2に噴霧乾燥用スラリーの調製装置の一実施形態例を示す。
図2において、配合槽11は撹拌翼12を有し、その上部が開口した中空の円柱状のものである。
撹拌翼12は、3枚の長方形状の撹拌羽根12a、12b、12cと棒状の回転軸13からなるパドルであり、該回転軸13に、撹拌羽根12a、12b、12cの長手方向の中心付近がそれぞれ取り付けられている。また、撹拌羽根12a、12b、12cの回転軸13への取り付け位置は、回転軸13の先端と、該先端から一定の間隔を空けた位置にそれぞれ取り付けられている。
【0031】
この例において、配合槽11は、その直径が600mm、高さは1000mmである
また、撹拌羽根12a、12b、12cは、その幅はそれぞれ480mmである。撹拌羽根12a、12b、12cの回転軸13への取り付け位置は、下から一段目の撹拌羽根12aは配合槽11の底より50mm、下から二段目の撹拌羽根12bは配合槽11の底より300mm、下から三段目の撹拌羽根12cは配合槽11の底より580mmの高さである。
【0032】
図2において、配合槽11は、その底面の中央付近に排出口16を備えた主配合槽である。また、配合槽11は、一端が排出口16に接続され、他の一端が配合槽11上部に繋がる循環ライン14a、14bを有している。該循環ライン14a、14bの途中には、ポンプ15が取り付けられている。
原料の混合時には、配合槽11内の原料混合物は、ポンプ15の作用により排出口16から取り出され、排出口16に続く循環路14a、14bを通過し、配合槽11上部から配合槽11内に導入されて循環するようになっている。
【0033】
図2に示す噴霧乾燥用スラリーの調製装置10を用いて噴霧乾燥用スラリーを調製する際には、例えば配合槽11内に前記(A)〜(D)成分と、水と、必要に応じて任意成分を上述した添加順序で投入し、常圧下、前記撹拌翼12(パドル)を用いて混合する。
【0034】
本工程においては、配合槽11内で撹拌翼12(パドル)を用いて原料を混合する際、撹拌翼12の回転数は、好ましくは40〜80rpm以下であり、より好ましくは50〜70rpmである。
原料の配合順序は、一例として、はじめに配合槽11内に水や任意成分を投入し、次いで(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を順次添加した後にさらに任意成分を必要に応じて添加し、撹拌翼12(パドル)により撹拌、混合することによって噴霧乾燥用スラリーを調製する方法が挙げられる。
また、はじめに配合槽11内に水を投入し、次いで、(E1)成分と(A1)成分を配合して(A)成分を調製した後に、上述した順序で各成分を添加してもよい。
【0035】
配合槽11内で各原料を混合する際、撹拌翼12を回転させながら配合槽11内で混合した原料混合物の一部を、配合槽11底面の排出口16から取り出し、ポンプ15により循環ライン14a、14bへと送り出し、配合槽11上部から配合槽11内へと戻し、循環させることが好ましい。これにより、原料の混合効率が良好なものとなる。
循環の開始時は、特に制限されるものではないが、例えば前記配合順序の例においては、(B)成分を配合した後に開始することが好ましい。
【0036】
原料混合物の循環は、配合槽11内の原料混合物の一部を、配合槽11底面の排出口16から取り出し、循環ライン14a、14bを経て、配合槽11内へと戻す方法であり、この循環は一周に限らず、複数周循環させてもよい。
【0037】
本工程においては、配合槽11内に、最初の原料を投入し始めてから、最後の原料の投入が終了するまでの時間は15〜60分であることが好ましく、また、最後の原料の投入後に撹拌を継続させる時間は5〜20分であることが好ましい。これにより、より均一な噴霧乾燥用スラリーが得られる。
また、原料を混合する操作は50〜80℃で行うことが好ましい。該温度で行うことにより、原料混合物の混合効率が向上する。
なお、調製後に得られる噴霧乾燥用スラリーの温度は70〜80℃であることが好ましい。該温度であることにより、噴霧乾燥用スラリーの流動性が良好となり、噴霧乾燥塔での噴霧乾燥の操作性が向上する。
【0038】
本発明において、噴霧乾燥用スラリーを調製する工程により得られる噴霧乾燥用スラリーの粘度は、2〜10Pa・sであることが好ましく、3〜7Pa・sであることがより好ましい。
なお、前記噴霧乾燥用スラリー粘度の測定は、噴霧乾燥用スラリーの温度を75℃に調整し、B型粘度計(東京計器製、製品名:B8H)を使用して回転数20rpm、ローターNo.4の条件で10回転した時の目盛りを読み取り、所定の換算を行うことにより測定することができる。
【0039】
<噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する工程>
本工程においては、前記<噴霧乾燥用スラリーを調製する工程>により調製される噴霧乾燥用スラリーを乾燥する。
【0040】
本工程における噴霧乾燥用スラリーの乾燥は、例えば前記工程により得られる噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥塔に移送し、該噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置された噴霧乾燥用スラリーの微粒化装置から、所定の噴霧圧力で噴霧を行う方法等が挙げられる。かかる乾燥方法により、噴霧乾燥粒子が得られる。
【0041】
噴霧乾燥塔としては、向流式であっても並流式であってもよく、中でも、熱効率や乾燥粉(噴霧乾燥粒子)を充分に乾燥することができることから向流式が好ましい。
噴霧乾燥用スラリーの微粒化装置としては、圧力噴霧ノズル、2流体噴霧ノズル、回転円盤式等が挙げられる。中でも、所望とする平均粒径を得ることが容易な圧力噴霧ノズルを用いることが好ましい。
ここで、「圧力噴霧ノズル」とは、圧力をかけることにより、噴霧乾燥用スラリーを該ノズルの噴霧口より押し出しながら噴射させて微粒化させる際に用いるノズル全般を包含する。中でも、噴霧乾燥用スラリーを、該ノズルの一又は複数の流入口から該ノズル内の渦巻き室に導き、その渦巻き室内で旋回流として噴霧口より噴射させる構造を持つノズルが特に好ましい。噴霧時の圧力としては、2〜4MPa(ゲージ圧)が好ましく、より好ましくは2.5〜3MPa(ゲージ圧)である。
【0042】
噴霧乾燥用スラリーの噴霧乾燥時、噴霧乾燥塔内には高温ガスが供給される。この高温ガスは、例えば噴霧乾燥塔の下部より供給され、噴霧乾燥塔の塔頂より排出される。
この高温ガスの温度としては、170〜300℃であることが好ましく、200〜280℃であることがより好ましい。該範囲であれば、噴霧乾燥用スラリーを充分に乾燥することができ、所望とする水分含有量の噴霧乾燥粒子を容易に得ることができる。
また、噴霧乾燥塔より排出されるガスの温度は、通常、70〜125℃であることが好ましく、70〜115℃であることがより好ましい。
なお、高温ガスが噴霧乾燥塔の下部より供給され、噴霧乾燥塔の塔頂より排出される(向流式)場合、得られる噴霧乾燥粒子の温度が高くなりすぎることを抑制するために、噴霧乾燥塔の下部より冷風を供給することができる。また、同時に、例えば噴霧乾燥塔の下部より無機微粒子(ゼオライト等)などを導入し、噴霧乾燥粒子と接触させることにより、該噴霧乾燥粒子の噴霧乾燥塔内壁への付着を防止したり、得られる噴霧乾燥粒子の流動性が向上しやすくなる。
【0043】
また、本発明においては、上記乾燥方法により得られる噴霧乾燥粒子は、その水分含有量が、噴霧乾燥粒子中、3〜8質量%が好ましく、3.5〜7.5質量%がより好ましく、4〜7質量%がさらに好ましい。噴霧乾燥粒子に水分含有量が該範囲であれば、壊れにくい噴霧乾燥粒子が得られやすくなる。一方、上限値以下であることにより噴霧乾燥粒子の流動性が向上し、噴霧乾燥粒子の噴霧乾燥塔内壁などの装置への付着が抑制されやすくなる。
前記噴霧乾燥粒子中の水分含有量は、噴霧乾燥用スラリーの乾燥時の乾燥条件等によって制御することができる。例えば、噴霧乾燥塔内に供給される高温ガスの温度を調整する方法等が挙げられる。
【0044】
上記噴霧乾燥粒子の製造方法により製造される噴霧乾燥粒子は、粒状洗浄剤組成物等の製造に用いることができる。例えば、係る噴霧乾燥粒子を、別途調製しておいた、噴霧乾燥粒子の製造に用いた以外の界面活性剤等の濃縮物や他の原料と共に、捏和(混練)押出後に破砕する捏和破砕造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法等の各種造粒方法により高嵩密度化することにより粒状洗浄剤組成物を得ることができる。
【0045】
以上のように、本発明の噴霧乾燥粒子の製造方法によれば、前記(A)〜(D)成分の添加順序を定めることにより、硫酸ナトリウムを含み、かつ、非石鹸性アニオン界面活性剤を低濃度で含有する噴霧乾燥用スラリーを、凝集物の発生を抑制しながら製造できる。
また、本発明によれば、非石鹸性アニオン界面活性剤の使用量を削減することができ、環境対応に適した噴霧乾燥粒子を製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。また、比率は質量比を示し、表中の各成分の配合量は純分換算した量を示す。
【0047】
[実施例1〜21、比較例1]
<噴霧乾燥用スラリーの調製>
表1に示す原料を用いて、下記噴霧乾燥用スラリーの調製方法に基づき、表2、3に示す噴霧乾燥用スラリー配合(S1〜S19)にて、各例の噴霧乾燥用スラリーを調製した。
なお、表1中の石鹸(原料番号:(5))として用いた炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウムの脂肪酸組成を下記に示す。
脂肪酸組成
12(ラウリン酸):11.7質量%、C14(ミリスチン酸):0.4質量%、C16(パルミチン酸):29.2質量%、C18F0(ステアリン酸):0.7質量%、C18F1(オレイン酸):56.8質量%、C18F2(リノール酸):1.2質量%。
【0048】
【表1】

【0049】
(噴霧乾燥用スラリーの調製方法)
表2、3に示した各噴霧乾燥用スラリー配合で、表4に示した添加順序(G1〜G4)に従い、表5、6に示した各例の噴霧乾燥用スラリーを調製した。なお、表5中の(G3)は、添加順序G3に従って調製したことを示すが、実施例8に用いた噴霧乾燥用スラリー(S8)はアクリル酸−マレイン酸コポリマー塩(B2)が未配合のため、添加順序G3で添加されるアクリル酸−マレイン酸コポリマー塩(B2)が配合されていないことを示す。
【0050】
噴霧乾燥用スラリーの調製は、図2と同様の噴霧乾燥用スラリーの調製装置10、すなわち撹拌羽根12a、12b、12cと回転軸13からなる撹拌翼12(パドル)を備え、ポンプ15付き循環ライン14a、14bを有する配合槽11を用いて、配合量200kg/バッチのスケールで調製を行った。
このときの撹拌翼12(パドル)の回転数は60rpmに設定した。
配合時間は、最初の原料である水を投入し始めてから最後の原料(石鹸または無機化合物)の投入が終了するまでの時間は25分であった。
その際、原料混合物の循環は、(B)成分(ゼオライトスラリー(B1)、アクリル酸−マレイン酸コポリマー塩(B2))の添加が終了した時点より開始した。
その後、原料混合物の撹拌を10分間継続し、該原料混合物の温度を75℃に調整して各噴霧乾燥用スラリーを得た。
なお、表2、3中の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム塩」は、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(A1)」を「水酸化カリウム(E1)」により中和して得られたものであり、配合量は、噴霧乾燥用スラリー組成物中に、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム塩として存在する量を示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
(凝集物発生量の評価)
各例で用いた噴霧乾燥用スラリーを用い、以下のようにして凝集物発生量の評価を行った。
石鹸(5)を添加し終えてから10分経過後(噴霧乾燥用スラリー温度:75℃)の噴霧乾燥用スラリー10kgを、ステンレス製の目開き8メッシュふるいに通過させ、ふるい上に残る残存物(すなわち、凝集物)を計量し、下記の評価基準に基いて評価した。結果を表5、6に示す。なお、3点以上を合格とする。
1点:ふるい上の残存物が200g以上。
2点:ふるい上の残存物が100g以上、200g未満。
3点:ふるい上の残存物が50g以上、100g未満。
4点:ふるい上の残存物が10g以上、50g未満。
5点:ふるい上の残存物が10g未満。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
表5、6の結果から明らかなように、本発明にかかる実施例1〜21は、いずれも凝集物発生量の評価が良好であり、噴霧乾燥用スラリー中での凝集物の発生を抑制できることが確認できた。
特に、噴霧乾燥用スラリーを調製する際の添加順序において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の順(添加順序:G2)で添加して噴霧乾燥用スラリーを調製した実施例20は、(C)成分と(D)成分の順序を入れ替えて(添加順序:G3)添加して噴霧乾燥用スラリーを調製した実施例1よりも、凝集物の発生がさらに抑制されていることが確認できた。
なお、実施例1は、(D)成分の後に(A)成分を添加して(添加順序:G4)噴霧乾燥用スラリーを調製した実施例21よりも凝集物の発生が抑制されていることが確認できた。
一方、(A)〜(D)成分の中で(B)成分を最後に添加する順(添加順序:G1)で添加して噴霧乾燥用スラリーを調製した比較例1は、凝集物発生量の評価が悪く、実施例1〜21より凝集物発生の抑制が劣ることが確認された。
【0058】
<噴霧乾燥粒子の製造>
上記調製方法により得られた各例の噴霧乾燥用スラリーを、噴霧乾燥塔に移送し、該噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置された圧力噴霧ノズルから、噴霧圧力2.5MPa(ゲージ圧)で噴霧を行い、各例の噴霧乾燥粒子をそれぞれ得た。
このとき、噴霧乾燥塔に供給される高温ガスは、230〜270℃の温度のガスが噴霧乾燥塔の下部より供給され、90〜110℃の温度となって噴霧乾燥塔の塔頂より排出された。なお、供給される高温ガスの温度は、所望とする水分含有量の噴霧乾燥粒子を得るために適宜、調整した。
実施例1〜21の噴霧乾燥用スラリーを乾燥するにあたっては、ノズルや配管等が閉塞することなく、効率的に噴霧乾燥粒子を得ることができた。
一方、比較例1の噴霧乾燥用スラリーを乾燥するにあたっては、ノズルや配管等が閉塞し、効率的に噴霧乾燥粒子を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】CaCl水溶液の滴下量とカルシウムイオン濃度の関係を示す図である。
【図2】噴霧乾燥用スラリーの調製装置の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
10:噴霧乾燥用スラリーの調製装置、11:配合槽、12:撹拌翼、12a:撹拌羽根、12b:撹拌羽根、12c:撹拌羽根、13:回転軸、14a:循環ライン、14b:循環ライン、15:ポンプ、16:排出口。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)に示す成分を含有する噴霧乾燥用スラリーを調製する工程と、該噴霧乾燥用スラリーを噴霧乾燥する工程を有する噴霧乾燥粒子の製造方法であって、
前記噴霧乾燥用スラリーを調製する工程において、(B)成分を添加した後に、(C)成分と(D)成分を添加することを特徴とする噴霧乾燥粒子の製造方法。
(A)成分:1〜10質量%の非石鹸性アニオン界面活性剤。
(B)成分:0.5〜20質量%の金属イオン封鎖剤。
(C)成分:0.5質量%以上の硫酸ナトリウム。
(D)成分:0.5質量%以上の炭酸カリウム。
【請求項2】
前記(C)成分を添加した後に、前記(D)成分を添加する請求項1に記載の噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項3】
前記(D)成分を添加する前に、前記(A)成分を添加する請求項1または2に記載の噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項4】
前記(B)成分がゼオライト及び/又は水溶性高分子である請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項5】
前記(B)成分がゼオライトである請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧乾燥粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−144040(P2008−144040A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333054(P2006−333054)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】