説明

回動レバー式コネクタ

【課題】従来と同等の電線を用いつつコネクタ外形を小型化しても、レバー係止部の係止解除作業に支障をきたすことのない回動レバー式コネクタを提供する。
【解決手段】カバー20の裏面において、レバー係止部24の基部近傍等には、電線押えリブ29L、29L′が、レバー係止部24の底面24aよりも下方に突き出るように突設されている。電線押えリブ29L、29L′は、電線4の進行方向と垂直方向に延びて電線4に当接するように突設されている。電線押えリブ29L、29L′は、電線4がこのレバー係止部24の可動スペースに干渉するのを抑制するために、十分な高さを持って突設されている。電線押えリブ29L、29L′によって、たとえ、当該コネクタ内において電線4の占有スペースが増大しても、レバー係止部24の可動スペースは確実に確保されるので、レバー係止部24Lの係止解除作業が妨げられることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線付の端子を収容するコネクタハウジングと、コネクタハウジングに取り付けられて、電線を案内しつつ外部に導出させるカバーと、コネクタハウジングに回動可能に取り付けられたレバーと、を有する回動レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電線付の端子を収容するコネクタハウジングと、コネクタハウジングに取り付けられて、電線を案内しつつ外部に導出させるカバーと、コネクタハウジングに回動可能に取り付けられたレバーと、を有する回動レバー式コネクタが、下記特許文献1等において、知られている。
【0003】
図8は、この種の従来の回動レバー式コネクタの部分断面図である。図9は、図8の回動レバー式コネクタの他の部分断面図である。
【0004】
図8及び図9に示すように、この種の回動レバー式コネクタは、電線4付の端子を収容する箱型のコネクタハウジング60と、このコネクタハウジング60の基部側(図中、上面側)を覆うように取り付けられて、電線4を案内しつつ外部に導出させる半ドーム状のカバー70と、コネクタハウジング60及びカバー70を挟み込むようにして、コネクタハウジング60に回動可能に取り付けられたレバー80と、を有する。複数の電線4は、図中上方向に、コネクタハウジング60の電線キャビティ63から出ているが、半ドーム状のカバー70によって、図中水平方向により緩やかに湾曲されて外部に導出される。
【0005】
コネクタハウジング60の両側面には、レバー80の回動軸66が設けられている。カバー70の上部には、レバー80の係合部88に係止される可撓性を有するアーム状のレバー係止部74、及びフレーム突起72等が設けられている。レバー80には、ガイド孔81、回動孔86、その他窪み82、及び係合部88が設けられている。レバー80は、コネクタハウジング60の回動軸66に中心部が差し込まれて、この回動軸66を中心に回動可能となる。
【0006】
このような構成において、嵌合作業時には、コネクタハウジング60には、上記基部側とは反対側(図中、下面側)には、図示しない相手コネクタが図中下方から嵌合される。このときには、相手コネクタに設けられたガイドピン(不図示)が、レバー80のガイド孔81にはめ込まれて、レバー80の回動に伴ってガイドピンが上方に引き上げられて、相手コネクタがコネクタハウジング60に嵌合される。嵌合終了後には、図8に示すように、レバー係止部74がレバー80の係合部88に係止される。
【0007】
離脱作業時には、基本的に、上記と逆の作用により、コネクタハウジング60と相手コネクタが離脱される。特に、離脱作業初期には、レバー係止部74が図9中矢印B1に示す方向に押し下げられつつ、係合部88が図9中矢印B2、B3に示す方向に変移されて、レバー係止部74の係止が解除される。なお、図8、9に示すコネクタは、本発明のカバー付きコネクタの特徴をより明確に理解するために例示したものであり、特許文献1に記載のコネクタではない。
【特許文献1】特開2003−272768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のように、離脱作業初期において、係合部88を矢印B2、B3に示す方向に変移させるためには、レバー係止部74を矢印B1に示す方向に十分な量だけ押し下げる必要がある。このためには、レバー係止部74の下部に、図9でCL′で示すような十分なクリアランス、すなわち、レバー係止部74の可動スペースを確保することが必要である。
【0009】
しかしながら、近年、コネクタ外形の小型化が求められている。補足すると、電線4は同等でありながら、コネクタ外形の小型化が求められている。この影響により、カバー70に対しても小型化が求められ、このため、コネクタ内において電線4の占有スペースが増大して、クリアランスCL′が十分確保できない場合が発生している。
【0010】
上記クリアランスCL′が十分確保できない場合には、いうまでもなく、レバー係止部74の可動スペースに電線4が干渉してくるので、レバー係止部74が矢印B1に示す方向に十分な量だけ押し下げることも困難になる。この結果、係合部88を矢印B2、B3に示す方向に変移することも困難になり、レバー係止部74の係止解除が不可能になる。
【0011】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、従来と同等の電線を用いつつコネクタ外形を小型化しても、レバー係止部の係止解除作業に支障をきたすことのない回動レバー式コネクタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の回動レバー式コネクタは、電線付の端子を収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに取り付けられて前記電線を案内するカバーと、前記コネクタハウジングに回動可能に取り付けられたレバーと、前記カバーの一部に設けられ、前記レバーの一部と係合して、可撓性を有するアーム状のレバー係止部と、を有する回動レバー式コネクタであって、前記カバーの裏面から前記電線に当接可能に突設されたリブを有して、前記電線が前記レバー係止部の可動スペースに干渉するのを抑制する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、カバーの裏面から電線に当接可能に突設されたリブを有して、電線がレバー係止部の可動スペースに干渉するのを抑制する。このリブによって、たとえ、当該コネクタ内において電線の占有スペースが増大しても、レバー係止部の可動スペースは確実に確保されるので、レバー係止部の係止解除作業が妨げられることがない。したがって、従来の同等の電線を用いながらも、コネクタの小型化が可能になる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の回動レバー式コネクタは、請求項1記載の回動レバー式コネクタにおいて、前記リブは、前記レバー係止部の自由端及び固定端側に近接して突設されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、リブは、レバー係止部の自由端及び固定端側に近接して突設されている。したがって、レバー係止部の可動スペースの確保が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、電線がレバー係止部の可動スペースに干渉するのを抑制するために電線を上から押さえつけるように、電線押えリブがカバーの裏面から突設されている。この電線押えリブによって、たとえ、当該コネクタ内において電線の占有スペースが増大しても、レバー係止部の可動スペースは確実に確保されるので、レバー係止部の係止解除作業が妨げられることがない。したがって、従来の同等の電線を用いながらも、コネクタの小型化が可能になる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、リブは、レバー係止部の自由端及び固定端側に近接して突設されている。このため、レバー係止部の可動スペースの確保が容易になる。したがって、従来の同等の電線を用いながらも、コネクタの小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回動レバー式コネクタを示す斜視図である。図2は、図1中のコネクタハウジングを示す斜視図である。図3は、図1中のカバーを斜め下方からみた場合の斜視図である。図4は、図1中のカバーの側面図である。図5は、図1中のカバーの背面図である。
【0019】
図1に示すように、この実施形態に係る回動レバー式コネクタは、電線付の端子を収容するコネクタハウジング10、コネクタハウジング10に取り付けられて電線を案内しつつ外部に導出させるカバー20、及びコネクタハウジング10に回動可能に取り付けられたレバー30を有して構成される。コネクタハウジング10、カバー20及びレバー30は共に、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタート)等の樹脂で構成される。
【0020】
コネクタハウジング10には、カバー20が図中矢印A20で示す方向から取り付けられる。また、相手コネクタ(不図示)が図中矢印A10で示す方向から嵌合されるが、このときには、相手コネクタに設けられたガイドピン(不図示)が、レバー30のガイド孔31にはめ込まれて、図中矢印A30方向へのレバー30の回動に伴ってガイドピンが上方に引き上げられて、相手コネクタがコネクタハウジング10に嵌合される。なお、この固定時における、レバー30とカバー20との係止に係る作用に関しては、後で、図6及び図7を用いて補足する。
【0021】
コネクタハウジング10は、図1及び図2に示すように、基本的に箱型をしている。その上面である基部には、電線が接続された端子が収容される円筒状の複数のキャビティ13及び円状のキャビティ14が設けられている。各キャビティ13には比較的太めの電線がそれぞれ導出され、各キャビティ14には比較的細めの電線がそれぞれ導出される。また、コネクタハウジング10の基部周縁には、側壁19が立設されている。側壁19は、コネクタハウジング10の側面に連設されているため、この側面の一部であるともいえる。互いに対向する長手方向の側壁19には、切り欠かれてスリット12が形成されている。
【0022】
側壁19の長手方向のやや内側には、カバー20側に設けられた係止突起部21に係合するように、複数の係合部11が立設されている。係合部11は、外側から内側に向けて係止突起部21を受けるような形状になっている。係合部11の形状及び数は、係止突起部21に対応するものである。
【0023】
また、コネクタハウジング10の両側面は、回動するレバー30の取り付け面15にもなっている(図1、図2では片側面のみ記載)。取り付け面15には、レバー30の回動軸16及びガイド溝18が設けられている。
【0024】
一方、カバー20は、図1及び図3〜図5に示すように、電線が導出される電線導出部29及び取り付け面である下面が開口した細長いドーム状をしている。カバー20は、上記コネクタハウジング10の側壁19の内側に沿うようにして取り付けられるような形状になっている。カバー20は、コネクタハウジング10の基部側に取り付けられて、電線を案内し、電線導出部29から外部に導出させる。
【0025】
カバー20の背面には、このカバー20をコネクタハウジング10に固定するために、係止突起部21が設けられている。係止突起部21は、外側から内側に向けて係合部11に係合するような爪状をし、対向するように2対立設されている。
【0026】
カバー20の両側面には、このカバー20の図1中矢印A20で示すような取り付け方向と平行に延びるように、複数のリブ22がそれぞれ突設されている。カバー20の両側面にはまた、カバー20が外側に開くことによって、係止突起部21と係合部11との係合具合が緩むのを防止するために、側壁19に対向するように、カバー開き防止突部25がそれぞれ設けられている。カバー開き防止突部25は、電線導出部29側に進むにつれて対向する側壁19に徐々に近づくように傾斜している。すなわち、カバー開き防止突部25は、電線導出部29側を頂点とする傾斜状になっている。カバー開き防止突部25は、電線導出部29に近い側の対になった係止突起部21及び係合部11よりも電線導出部29に近接して一対設けられている。
【0027】
また、カバー開き防止突部25に隣接して、カバー20をコネクタハウジング10から離脱させるための治具を挿入するための、治具挿入口26が形成されている。この治具挿入口26は、カバー開き防止突部25の最低部側のカバー20の下部が切り欠かれて形成されている。
【0028】
また、カバー20の上面には、レバー30側に設けられた係合部38に係止される可撓性を有するアーム状のレバー係止部24が設けられている。このレバー係止部24を挟むように補強部23が立設され、レバー係止部24の可撓性を確保するためにレバー係止部24の一部を囲むようにコ字状のスリット27も設けられている(図5参照)。また、レバー係止部24の裏面には、レバー係止部24の補強用のリブ28も形成されている(図5参照)。カバー20の開口した電線導出部29に対向する側は、電線を緩やかに曲げるために、電線の剛性が考慮されて湾曲している。
【0029】
更に、特に、図6に示すように、カバー20の裏面において、レバー係止部24の基部近傍等、すなわち、レバー係止部24の自由端及び固定端側に近接する箇所には、電線押えリブ29L、29L′が、レバー係止部24の底面24aよりも下方に突き出るように突設されている。電線押えリブ29L、29L′は、電線4の進行方向と垂直方向に延びて電線4に当接するように突設されている。電線押えリブ29L、29L′は、電線4がこのレバー係止部24の可動スペースに干渉するのを抑制するために、電線4を上から押さえつけるように十分な高さを持って突設されている。電線押えリブ29L、29L′によって、たとえ、当該コネクタ内において電線4の占有スペースが増大しても、レバー係止部24の可動スペースは確実に確保されるので、レバー係止部24の係止解除作業が妨げられることがない。
【0030】
また、コネクタハウジング10の両取り付け面15を両側から挟み込むように、ハウジング10に回動可能にレバー30が取り付けらている。レバー30には、中心部に回動孔36、この回動孔36を囲むように、相手コネクタのガイドピンを案内するためのガイド孔31、その他窪み32が設けられている。レバー30は、コネクタハウジング10の回動軸16に中心部が差し込まれて、この回動軸16を中心に回動可能である。レバー30には、カバー20側に設けられたレバー係止部24に係合する係合部38も設けられている。
【0031】
このような構成の本回動レバー式コネクタにおける、嵌合作業時及び離脱作業時の作用について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、実施形態の回動レバー式コネクタの部分断面図である。図7は、図6の回動レバー式コネクタの他の部分断面図である。
【0032】
まず、嵌合作業時には、カバー20が、コネクタハウジング10の側壁19の内側に沿うようにして、図1中矢印A20で示す方向からコネクタハウジング10の基部に取り付けられる。このとき、カバー20側の係止突起部21がコネクタハウジング10側の係合部11に係合する。次に、相手コネクタ(不図示)が図中矢印A10で示す方向からコネクタハウジング10の下部に嵌合される。この後、相手コネクタに設けられたガイドピン(不図示)が、レバー30のガイド孔31にはめ込まれて、図1中矢印A30方向へのレバー30の回動に伴ってガイドピンが上方に引き上げられて、相手コネクタがコネクタハウジング10に嵌合される。そして、最終的に、図6及び図7に示すように、アーム状のレバー係止部24の可撓性を利用して、レバー係止部24がレバー30の係合部38に係止されて、コネクタハウジング10と相手コネクタとの嵌合が完了する。
【0033】
これに対して、離脱作業は、レバー係止部24を図7中の矢印A1の方向へ押すことにより、レバー30の係合部38との係合を解除する。次に、レバー30を、反矢印A30方向へ回動させることにより、コネクタハウジング10と相手コネクタが離脱される。なお、レバー係止部24を押す際、レバー係止部24の下面と電線4との間には、電線押えリブ29L、29L′により、クリアランスCLが確保されているため、レバー係止部24と電線との干渉を防止し、離脱作業が容易に行われる。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、カバー20の裏面から突設された電線押えリブ29L、29L′によって、たとえ、当該コネクタ内において電線の占有スペースが増大しても、レバー係止部24の可動スペースは確実に確保されるので、レバー係止部24の係止解除作業が妨げられることがない。したがって、従来の同等の電線を用いながらも、コネクタの小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る回動レバー式コネクタを示す斜視図である。
【図2】図1中のコネクタハウジングを示す斜視図である。
【図3】図1中のカバーを斜め下方からみた場合の斜視図である。
【図4】図1中のカバーの側面図である。
【図5】図1中のカバーの背面図である。
【図6】実施形態の回動レバー式コネクタの部分断面図である。
【図7】図6の回動レバー式コネクタの他の部分断面図である。
【図8】この種の従来の回動レバー式コネクタの部分断面図である。
【図9】図8の回動レバー式コネクタの他の部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 コネクタハウジング
20 カバー
24 レバー係止部
29L、29L′ 電線押えリブ(請求項のリブ)
30 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線付の端子を収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに取り付けられて前記電線を案内するカバーと、前記コネクタハウジングに回動可能に取り付けられたレバーと、前記カバーの一部に設けられ、前記レバーの一部と係合して、可撓性を有するアーム状のレバー係止部と、を有する回動レバー式コネクタであって、
前記カバーの裏面から前記電線に当接可能に突設されたリブを有して、前記電線が前記レバー係止部の可動スペースに干渉するのを抑制する、
ことを特徴とする回動レバー式コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の回動レバー式コネクタにおいて、
前記リブは、
前記レバー係止部の自由端及び固定端側に近接して突設されている、
ことを特徴とする回動レバー式コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−294359(P2006−294359A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111645(P2005−111645)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】