説明

回路基板の回路部品実装方法およびコンデンサマイクロホン

【課題】ハンダ付け後において、回路基板面に残されているフラックスを容易に除去できるようにする。
【解決手段】ハンダ付けランド(131〜133,221〜223,261,262,271,272)を含む回路配線が形成されている回路基板(20)の上記ハンダ付けランドに所定の回路部品(FET21,コンデンサ26,27)を実装するにあたって、上記ハンダ付けランドを除く回路配線の所定部分に、溶剤にて溶解する溶剤溶解型樹脂からなるハンダレジスト(30)を塗布し、上記ハンダ付けランドに上記回路部品をハンダ付けしたのち、所定の溶剤にてハンダレジスト(30)を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の回路部品実装方法に関し、さらに詳しく言えば、コンデンサマイクロホンに好適な回路基板の回路部品実装方法に関するものである。本発明には、その回路基板を備えたコンデンサマイクロホンも含まれる。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、そのユニット内に電気絶縁性のスペーサを介して対向的に配置された振動板と固定極とを含む静電型音響電気変換器を備えているが、この種の静電型音響電気変換器はインピーダンスがきわめて高いことから、コンデンサマイクロホンには、高いインピーダンスで信号を受けて低いインピーダンスで信号を出力するインピーダンス変換器が搭載されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているように、インピーダンス変換器は専用の回路基板にハンダ付けにて実装された状態で、ユニットケース内に組み込まれる。インピーダンス変換器には、通常、FET(電界効果トランジスタ)が用いられるが、まれに真空管が用いられることもある。
【0004】
FETの場合、そのゲートが固定極に接続され、ソースが振動板とともに接地に接続され、ドレインは駆動電源に接続される。ドレインとソースとの間にはコンデンサが接続され、ドレインからは直流阻止用のコンデンサを介して音声信号用の出力端子が引き出される。
【0005】
ところで、FETやコンデンサ、リード線などの回路部品を回路基板にハンダ付けする場合、そのハンダ付けに必要なフラックスが回路基板の表面に広がる。フラックスが吸湿すると絶縁抵抗が低下し、それに起因して漏れ電流が流れ雑音が発生することがある。
【0006】
これを防止するため、従来では、ハンダ付け後にフラックスを除去するため、アルコールなどで洗浄するようにしているが、部品と回路基板との間に入り込んだフラックスは容易に除去することができない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−153392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、ハンダ付け後において、回路基板面に残されているフラックスを容易に除去できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されているように、ハンダ付けランドを含む回路配線が形成されている回路基板の上記ハンダ付けランドに所定の回路部品を実装するにあたって、上記ハンダ付けランドを除く上記回路配線の所定部分に、溶剤にて溶解する溶剤溶解型樹脂からなるハンダレジストを塗布し、上記ハンダ付けランドに上記回路部品をハンダ付けしたのち、所定の溶剤にて上記ハンダレジストを除去することを特徴としている。
【0010】
本発明には、請求項1により回路部品が実装された部品実装回路基板で、上記回路部品として静電型音響電気変換器と接続されるインピーダンス変換器が実装されている回路基板を備えたコンデンサマイクロホンも含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハンダ付けランドを除く回路配線の所定部分に、溶剤にて溶解する溶剤溶解型樹脂からなるハンダレジストを塗布し、ハンダ付けランドに回路部品をハンダ付けしたのち、所定の溶剤にてハンダレジストを除去するようにしたことにより、ハンダ付け後において、回路基板面に残されているフラックスをハンダレジストとともに容易に除去することができる。
【0012】
また、この回路部品実装方法をコンデンサマイクロホンの少なくともインピーダンス変換器が実装された回路基板に適用することにより、フラックスの吸湿に起因する雑音発生のないコンデンサマイクロホンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明する。この実施形態における回路基板はコンデンサマイクロホン用途のもので、図1は回路基板が組み込まれたコンデンサマイクロホンの要部を示す断面図、図2(a)は回路基板の上面図で、同図(b)はその下面図、図3(a)〜(c)は回路基板の回路部品実装工程を順を追って示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、この実施形態に係るコンデンサマイクロホンは、フレキシブルパイプPの先端に取り付けられ、例えば会議室やテレビ放映の会見席などに多用されているグースネック型のコンデンサマイクロホン10である。
【0015】
図1には、コンデンサマイクロホン10のマイクロホン本体11側のみが図解されており、マイクロホン本体11には、図示しないマイクロホンユニットがねじ螺合により着脱自在に取り付けられる。
【0016】
上記マイクロホンユニットは、円筒状の例えばアルミニウム製のユニットケース内に、音波により振動する振動板と固定極とを電気絶縁性のスペーサリングを介して対向的に配置してなる静電型の音響電気変換器が収納されており、ユニットケースの後端には上記固定極と電気的に接続されている電極端子ピンが設けられている。
【0017】
マイクロホン本体11は、例えば黄銅合金からなる円筒状の筐体12を備える。筐体12はシールドケースでもあり、フレキシブルパイプPを介して接地系に接続される。筐体12内には、回路基板20が収納されている。
【0018】
また、筐体12内には、上記マイクロホンユニットを連結するための雄ねじリングからなるカプラー22が螺合され、回路基板20は、カプラー22によって筐体12内に固定される。
【0019】
回路基板20上には、上記マイクロホンユニットが筐体12に連結される際に上記電極端子ピンと接触する接触片23が配置されている。この実施形態において、接触片23は、上辺が斜め上方に向けて配向された変形コ字状を呈する板ばね材からなり、その内側に保形用のブロック25を抱え込んだ状態で、ゴム弾性体からなるほぼ傘型の押さえリング24によって筐体12のほぼ中央に位置決めされている。
【0020】
図2(a)を参照して、回路基板20の上面20aの中央部分には、接触片23の底辺が接触する接続パターン210が形成され、また、上面20aの周縁には、カプラー22が接触するグランドパターン211が形成されている。
【0021】
図2(b)を参照して、回路基板20の下面20bには、インピーダンス変換器としてのFET(電界効果トランジスタ)21と、2つのコンデンサ26,27とが実装されている。
【0022】
また、下面20bの周縁には、筐体12の段差部が接触するグランドパターン212が形成されている。上面20a側のグランドパターン211と下面側のグランドパターン212は、スルーホールH2内のめっきを介して導通している。
【0023】
FET21のゲートGは、スルーホールH1内のめっきを介して上面20a側の接続パターン210と接続される。また、コンデンサ26は、FET21のドレインDとグランドパターン212との間に接続され、コンデンサ27は、FET21のソースSとグランドパターン212との間に接続される。この実施形態において、FET21およびコンデンサ26,27には、それぞれチップ部品が用いられている。
【0024】
筐体12内には、例えば給電線,信号線,シールド線を含むマイクコード13がフレキシブルパイプPから引き出されており、その給電線がドレインD側のハンダ付けランド131,信号線がソースS側のハンダ付けランド132,シールド線がグランド側のハンダ付けランド133にそれぞれハンダ付けされる。なお、ゲートGは接触片23およびマイクロホンユニット側の電極端子ピンを介して固定極と接続される。
【0025】
本発明によると、次のようにして回路基板20に各回路部品が実装される。まず、図3(a)に示すように、FET21のゲートG,ドレインD,ソースS用のハンダ付けランド221,222,223、コンデンサ26,27用のハンダ付けランド261,262,271,272およびマイクコード用のハンダ付けランド131,132,133に例えばマスクをかけて、回路基板20の下面20b全体にハンダレジスト30を塗布する。
【0026】
本発明では、ハンダレジスト30に所定の溶剤にて溶解(溶出)する溶剤溶解型樹脂が用いられる。この種の溶剤溶解型樹脂には、市販されているものとして、例えばスリーボンド社製の酢酸ビニル樹脂を主成分とする固着材1410C(品番)がある。ハンダレジスト30の塗布は、スクリーン印刷によってもよい。
【0027】
ハンダレジスト30の硬化をまってマスクを除去し、上記各ハンダ付けランドを露出させて、図3(b)に示すように、FET21,コンデンサ26,27およびマイクコード13をそれぞれ対応するハンダ付けランドにハンダ付けする。図3(b)において、マイクコード13は図示が省略されている。なお、FET21,コンデンサ26,27については、リフローハンダ付け法が採用されてもよい。
【0028】
しかるのち、図3(b)に示すように、所定の溶剤にてハンダレジスト30を溶かして回路基板20から除去する。これにより、フラックスも同時に除去される。したがって、本発明によれば、フラックス残渣のない回路基板20が得られる。
【0029】
上記実施形態では、コンデンサマイクロホン用の回路基板について説明したが、本発明は、これ以外の回路基板にも適用可能である。また、硬質回路基板、フレキシブル基板の別も問われない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】回路基板が組み込まれたコンデンサマイクロホンの要部を示す断面図。
【図2】(a)回路基板の上面図,(b)その下面図。
【図3】(a)〜(c)回路基板の回路部品実装工程を順を追って示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
10 コンデンサマイクロホン
11 マイクロホン本体
12 筐体
13 マイクコード
20 回路基板
21 FET
26,27 コンデンサ
131〜133,221〜223 ハンダ付けランド
30 ハンダレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ付けランドを含む回路配線が形成されている回路基板の上記ハンダ付けランドに所定の回路部品を実装するにあたって、
上記ハンダ付けランドを除く上記回路配線の所定部分に、溶剤にて溶解する溶剤溶解型樹脂からなるハンダレジストを塗布し、上記ハンダ付けランドに上記回路部品をハンダ付けしたのち、所定の溶剤にて上記ハンダレジストを除去することを特徴とする回路基板の回路部品実装方法。
【請求項2】
請求項1により回路部品が実装された回路基板で、上記回路部品として静電型音響電気変換器と接続されるインピーダンス変換器が実装されている回路基板を備えたコンデンサマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−194209(P2009−194209A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34499(P2008−34499)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】