説明

回路基板を収納するためのケーシング

【課題】外部に露出させるべき部位の露出方向が互いに異なる回路基板上の複数の部品のそれぞれをケーシングにしっかりと固定し、かつこれらの部品とケーシングとの間の電気的な接続を確実に行う。
【解決手段】フロント部材8およびリア部材9によりケーシングを構成し、フロント部材8には、フロント部材8とリア部材9とを接続する際に、フロント部材8に対するリア部材9の位置を調整するための支持穴32、34を設ける。支持穴32、34の直径は、支持穴32、34を介してリア部材9とフロント部材8とを接続するためのねじの直径と、遊び長さと、リア部材9の位置を調整するのに必要な調整長さとを合計した長さに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を収納するためのケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDVDレコーダなどのオーディオビジュアル機器は、回路基板をケーシングに収納することにより構成されている。ケーシングは、金属材料により形成され、一般に、板金を折り曲げ加工することにより箱状に形成されている。回路基板には、集積回路、抵抗器、コンデンサー、端子および配線などから構成された電子回路が設けられている。
【0003】
オーディオビジュアル機器の場合、回路基板に設けられた端子は、主に音声入出力端子または映像入出力端子である。端子は、その接続口がケーシングの側板に形成された穴から機器の外部に露出するように取り付けられている。これにより、機器の外部からプラグを端子に接続することが可能になる。
【0004】
端子の一端側は回路基板に半田付けされている。これにより、端子は回路基板上に固定されていると共に、回路基板に設けられた配線に電気的に接続されている。また、端子の他端側は、ケーシングの側板の内面にねじ止めされている。これにより、端子はケーシングに固定されていると共に、ケーシングと電気的に接続されている。端子の他端側とケーシングとの電気的な接続は接地を行うためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばポータブルDVDレコーダなどの小型のオーディオビジュアル機器では、必要なすべての電気部品および電子部品を1枚の回路基板上に実装することが望ましい。これにより、オーディオビジュアル機器の小型化またはコストダウンを図ることができる。
【0006】
一方、例えばDVDレコーダなどのオーディオビジュアル機器は、ビデオカメラ、モニタおよびスピーカなどの様々な種類の機器とケーブルを介して接続する機能を持っている。このようなオーディオビジュアル機器では、たくさんの端子を設けることが要求され、このため、端子を例えばフロントパネル側とリアパネル側の双方に配置することが要求される。また、ユーザがプラグを着脱する頻度の低い端子をリアパネル側に配置し、ユーザがプラグを着脱する頻度の高い端子をフロントパネル側に配置すれば、オーディオビジュアル機器の使いやすさを高めることができる。以下、オーディオビジュアル機器のフロントパネル側に配置する端子をフロント端子といい、オーディオビジュアル機器のリアパネル側に配置する端子をリア端子という。
【0007】
回路基板が1枚であり、かつフロント端子およびリア端子を有するオーディオビジュアル機器は、例えば次のように製造することができる。
【0008】
まず、回路基板上のフロントパネルに近い部分にフロント端子を配置し、回路基板上のリアパネルに近い部分にリア端子を配置するように、回路基板上における部品のレイアウトを設計する。続いて、このような部品レイアウトに従って、フロント端子、リア端子およびその他の部品を回路基板上に実装する。
【0009】
一方、板金を折り曲げ加工し、底板および前後左右の4つの側板を有する箱状のケーシングを形成する。ケーシングにおいてフロントパネル側に位置する側板には、フロント端子の接続口を機器の外部に露出させるための穴を形成する。さらに、当該側板にはフロント端子をねじ止めするための穴を形成する。一方、ケーシングにおいてリアパネル側に位置する側板には、リア端子の接続口を機器の外部に露出させるための穴を形成する。さらに、当該側板にはリア端子をねじ止めするための穴を形成する。
【0010】
続いて、ケーシング内に回路基板を置き、ケーシングの底板上などに形成された取付部にこの回路基板を取り付ける。
【0011】
回路基板をケーシング内に取り付けた後、ケーシングにおいてフロントパネル側に位置する側板の内面にフロント端子をねじ止めし、これによりフロント端子をケーシングの側板に固定すると共に、フロント端子とケーシングとを電気的に接続する。さらに、ケーシングにおいてリアパネル側に位置する側板の内面にリア端子をねじ止めし、これによりリア端子をケーシングの側板に固定すると共に、リア端子とケーシングとを電気的に接続する。
【0012】
このようなオーディオビジュアル機器の製造において、次のような問題が生じる。
【0013】
フロント端子およびリア端子の双方をケーシングの側板にしっかりと固定し、かつこれらの端子とケーシングとを確実に電気的に接続するためには、回路基板をケーシング内に単に取り付けた段階で(つまり各端子とケーシングの側板とのねじ止めを行う前の段階で)、フロント端子とケーシングの側板とをほぼ隙間なく接触させ、かつリア端子とケーシングの側板とをほぼ隙間なく接触させる必要がある。これを実現するためには、回路基板の寸法、各端子の実装位置およびケーシングの寸法などを適切に設計し、さらに、製造時においてこれらの寸法および実装位置を設計通りに高精度に再現する必要がある。
【0014】
しかし、製造時において回路基板の寸法、各端子の実装位置またはケーシングの寸法を設計通りに高精度に再現することは、製造コスト軽減の要請をも考慮すると容易ではない。
【0015】
製造時において回路基板の寸法、各端子の実装位置またはケーシングの寸法に誤差が生じ、このため、回路基板をケーシング内に単に取り付けた段階で、フロント端子とケーシングの側板との間に大きな隙間が生じたり、リア端子とケーシングの側板との間に大きな隙間が生じたりすることがある。
【0016】
このような隙間が生じた状態で、フロント端子およびリア端子をケーシングの側板にねじ止めすると、フロント端子またはリア端子に異常な応力がかかる。この結果、フロント端子またはリア端子を回路基板に固定している半田がはがれるおそれがある。また、フロント端子またはリア端子がねじ止めによってしっかりとケーシングに固定されず、プラグの着脱に対する耐久性が低下するおそれがある。また、フロント端子またはリア端子が確実にケーシングに電気的に接続されず、このため、接地が不十分となり、この結果、不要輻射の増加または回路の静電破壊が生じるおそれがある。
【0017】
もっとも、このような問題は、回路基板をフロントパネル側基板とリアパネル側基板に分割することによって解決することができる。しかし、回路基板を分割すると、次のような問題が生じる。
【0018】
すなわち、回路基板を分割すると、回路基板のコストが上昇する。また、分割された基板間を電気的に接続するためにフラットケーブルなどが必要になり、製造が複雑となり、また、コストが上昇する。さらに、フラットケーブルを用いることにより不要輻射が増加し、またフラットケーブルがノイズを拾ってしまうという不都合も生じ得る。
【0019】
本発明は上記に例示したような問題点に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、外部に露出させるべき部位の露出方向が互いに異なる回路基板上の複数の部品のそれぞれをケーシングにしっかりと固定することができ、かつこれらの部品とケーシングとの間の電気的な接続を確実に行うことができるケーシングを提供することにある。
【0020】
本発明の第2の課題は、回路基板上の部品の半田はがれなど、回路基板または部品が破損するのを防止することができるケーシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために請求項1に記載のケーシングは、外部に露出させるべき露出部位の露出方向が互いに異なる第1部品および第2部品が取り付けられた回路基板を収納するためのケーシングであって、ベース板と、前記ベース板に固定され、内面には前記第1部品を接地するための第1接地面が形成され、当該内面には前記第1部品の露出部位を外部に露出させるための穴が形成され、当該内面には前記第1部品をねじ止めするための穴が形成されている第1側板と、前記ベース板から独立した部材により形成され、内面には前記第2部品を接地するための第2接地面が形成され、当該内面には前記第2部品の露出部位を外部に露出させるための穴が形成され、当該内面には前記第2部品をねじ止めするための穴が形成されている第2側板と、前記第2側板を前記ベース板に接続する接続機構とを備え、前記接続機構には、前記第2部品の露出部位の露出方向またはその正反対の方向において、前記ベース板に対する前記第2側板の位置を調整する調整機構が設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1はオーディオビジュアル機器を示している。図1中のオーディオビジュアル機器1は、例えばDVDレコーダである。オーディオビジュアル機器1は、ケーシング2、フロントカバー3およびトップカバー4を備えている。フロントカバー3の前側の外面はフロントパネル5であり、ケーシング2の後ろ側の外面はリアパネル6である。リアパネル6には、デジタル信号出力用の端子12の接続口12Aおよびアナログ信号出力用の端子ユニット13の3つの接続口13Aが露出している。ケーシング2は本発明の実施形態である。
【0024】
図2は、フロントカバー3およびトップカバー4を取り外した状態のオーディオビジュアル機器1を示している。図2に示すように、ケーシング2内には回路基板7が収納されている。
【0025】
図3は回路基板7を示している。回路基板7上には電子回路が設けられている。電子回路は、集積回路、抵抗器、コンデンサー、端子11、端子12、端子ユニット13、他の端子および配線などから構成されている。なお、電子回路を構成する電子部品のうち、端子11、端子12および端子ユニット13以外の電子部品は、図示を省略している。
【0026】
図3に示すように、回路基板7上においてフロンパネル5に近い部分には、例えばデジタル信号入力用の端子11(例えばDV入力ジャック)が配置されている。端子11の一端側は、回路基板7上に半田付けされている。これにより、端子11は回路基板7上に固定されていると共に、回路基板7に設けられた配線に電気的に接続されている。
【0027】
端子11の他端側には、プラグを接続するための接続口11Aが設けられている。接続口11Aは、ケーシング2の側板22に形成された穴27(図4参照)を介してオーディオビジュアル機器1の外部に露出する。接続口11Aの露出方向は図3中の矢示Aに示すように前方向である。
【0028】
また、端子11の他端側には、端子11をケーシング2の側板22の接地面26にねじ止めするためのねじ止め部11Bが設けられている。ねじ止め部11Bは、少なくとも接地面26と接触する部分が金属材料により形成されており、ねじ止め部11Bを接地面26に接触させることによって端子11を接地することができる構造になっている。ねじ止め部11Bにはねじ穴11Cが形成されている。
【0029】
一方、回路基板7上においてリアパネル6に近い部分には、例えばデジタル信号出力用の端子12(例えば光デジタル音声出力ジャック)が配置されている。端子12の一端側は、回路基板7上に半田付けされている。これにより、端子12は回路基板7上に固定されていると共に、回路基板7に設けられた配線に電気的に接続されている。
【0030】
端子12の他端側には、プラグを接続するための接続口12Aが設けられている。接続口12Aは、ケーシング2の側板41に形成された穴45(図6参照)を介してオーディオビジュアル機器1の外部に露出する。接続口12Aの露出方向は図3中の矢示Bに示すように後ろ方向である。
【0031】
また、端子12の他端側には、端子12をケーシング2の側板41の接地面44にねじ止めするためのねじ止め部12Bが設けられている。ねじ止め部12Bを接地面44にねじ止めすることにより端子12のぐらつきを防止することができる。ねじ止め部12Bにはねじ穴12Cが形成されている。
【0032】
さらに、回路基板7上においてリアパネル6に近い部分には、例えばアナログ信号出力用の端子ユニット13(例えばピンジャックユニット)が配置されている。端子ユニット13の一端側は、回路基板7上に半田付けされている。これにより、端子ユニット13は回路基板7上に固定されていると共に、回路基板7に設けられた配線に電気的に接続されている。
【0033】
端子ユニット13の他端側には、プラグを接続するための3つの接続口13Aが設けられている。各接続口13Aは、ケーシング2の側板22に形成された穴47(図6参照)を介してオーディオビジュアル機器1の外部に露出する。各接続口13Aの露出方向は図3中の矢示Bに示すように後ろ方向である。
【0034】
また、端子ユニット13の他端側には、端子ユニット13をケーシング2の側板41の接地面44にねじ止めするためのねじ止め部13Bが設けられている。ねじ止め部13Bは、少なくとも接地面44と接触する部分が金属材料により形成されており、ねじ止め部13Bを接地面44に接触させることによって端子ユニット13を接地することができる構造になっている。ねじ止め部13Bにはねじ穴13Cが形成されている。
【0035】
このように、回路基板7上には、オーディオビジュアル機器1の外部に露出させるべき接続口の露出方向が前方向の端子11と、オーディオビジュアル機器1の外部に露出させるべき接続口の露出方向が後ろ方向の端子12および端子ユニット13とが取り付けられている。つまり、回路基板7上には、接続口(露出部位)の露出方向が互いに異なる端子が存在する。
【0036】
他方、回路基板7には4つの穴14が形成されている。各穴14は矢示A、B方向に長い。各穴14は、回路基板7をケーシング2に取り付けるために用いられる。各穴14の形状が矢示A、B方向に長いので、回路基板7をケーシング2の取付部35にねじ62により取り付けるときに、ケーシング2に対する回路基板7の矢示A、B方向における位置を調整することができる。
【0037】
図2に戻り、ケーシング2は、フロントパネル5側に位置するフロント部材8と、リアパネル6を形成するリア部材9とから構成されている。フロント部材8とリア部材9とは互いに独立した部材であり、両者は、後述する組立工程においてねじ65(図9参照)により互いに接続される。
【0038】
図4はケーシング2のフロント部材8を示している。図4に示すように、フロント部材8は、底板21および3つの側板22、23、24を備えている。底板21はケーシング2の底部を形成する。側板22はケーシングの前壁を形成する。側板23および側板24はケーシング2の左壁および右壁をそれぞれ形成する。なお、左、右は、観察者がフロントパネル5と対面したときを基準に定める。また、底板21、側板23および側板24によりベース板が構成されている。
【0039】
フロント部材8は金属材料により形成されている。具体的には、フロント部材8は、板金を折り曲げ加工することにより形成されている。すなわち、底板21および側板22、23、24は、所定の形状に型抜きされた1枚の板金を折り曲げることにより形成されている。この結果、側板22、23、24はそれぞれ底板21に固定されている。
【0040】
側板22の内面25には、端子11を接地するための接地面26が形成されている。また、内面25には端子11の接続口11Aをオーディオビジュアル機器1の外部に露出させるための穴27が形成されている。また、内面25には端子11のねじ止め部11Bをねじ止めするための穴28が形成されている。
【0041】
側板23においてリアパネル6に近い部分には支持部31が形成されている。支持部31は側板23を形成する板金を折り曲げることにより形成されている。この結果、支持部31は側板23に固定されている。支持部31には支持穴32が形成されている。
【0042】
図5は支持穴32を拡大して示している。支持穴32の直径は、ねじ65(図8参照)の直径D1と遊び長さD2とリア部材9の位置を調整するための調整長さD3とを合計した長さに設定されている。例えば、ねじ65の直径D1は3mm、遊び長さは0.2mm、調整長さは0.5mmである。
【0043】
図4に戻り、側板24においてリアパネル6に近い部分には、側板23とほぼ同様に、支持部33が形成されている。支持部33には支持穴34が形成されている。支持穴34の直径は支持穴32の直径と同じである。
【0044】
支持部31、支持穴32、支持部33、支持穴34は、リア部材9に形成された接続部51、接続穴52、接続部53および接続穴54(図6参照)並びに2つのねじ65(図9参照)と共に、リア部材9をフロント部材8に接続するための接続機構を構成している。また、支持穴32および支持穴34は、端子12の接続口12Aおよび端子ユニット13の接続口13Aの露出方向およびその正反対の方向においてフロント部材8に対するリア部材9の位置を調整するための調整機構を構成している。
【0045】
また、フロント部材8には、回路基板7を取り付けるための4つの取付部35(2つのみ図示)が設けられている。
【0046】
図6はケーシング2のリア部材9を示している。図6に示すように、リア部材9は、側板41および上板42を備えている。側板41はケーシング2の後壁を形成すると同時にフロントパネル6を形成する。リア部材9とフロント部材8とを接続したとき、側板41の内面43はフロント部材8の側板22の内面25と互いに向かい合う。
【0047】
リア部材9は金属材料により形成されている。具体的には、リア部材9は、板金を折り曲げ加工することにより形成されている。
【0048】
側板41の内面43には、端子12および端子ユニット13を接地するための接地面44が形成されている。また、内面43には端子12の接続口12Aをオーディオビジュアル機器1の外部に露出させるための穴45が形成されている。また、内面43には端子12のねじ止め部12Bをねじ止めするための穴46が形成されている。さらに、内面43には端子ユニット13の3つの接続口13Aをオーディオビジュアル機器1の外部にそれぞれ露出させるための穴47が形成されている。また、内面43には端子ユニット13のねじ止め部13Bをねじ止めするための穴48が形成されている。
【0049】
また、側板41の右側(フロントパネル5と対面したときの右側)の端部には接続部51が形成されている。接続部51は側板41を形成する板金を折り曲げることにより形成されている。この結果、接続部51は側板41に固定されている。
【0050】
接続部51には接続穴52が形成されている。接続穴52内にはねじが切られている。接続穴52の直径は、ねじ65(図9参照)を適切にねじ止めすることができるように設定されており、支持穴32の直径よりも小さい。
【0051】
側板41の左側の端部には、接続部53および接続穴54が形成されている。接続部53および接続穴54は接続部51および接続穴52とそれぞれ同じである。
【0052】
図7ないし図9は、回路基板7をケーシング2内に収納するための組立工程を示している。
【0053】
組立工程において、まず、図7に示すように、フロント部材8の取付部35上に回路基板7を置く。続いて、端子11の接続口11Aを側板22の穴27に合わせるように回路基板7の位置を調整する(図3および図4参照)。続いて、回路基板7を矢示A方向(接続口11の露出方向)に押し、端子11のねじ止め部11Bを側板22の接地面26に接触させる。
【0054】
続いて、ねじ61を側板22の穴28(図4参照)に通し、これを端子11のねじ穴11Cに挿入する。そして、端子11が側板22に強固に固定され、かつねじ止め部11Bと接地面26とが確実に電気的に接続されるように、ねじ61を締める。
【0055】
続いて、ねじ62を回路基板7の穴14に通し、これらを取付部35に形成されたねじ穴に挿入する。そして、回路基板7が取付部35に強固に固定されるように、ねじ62を締める。なお、ねじ62を取り付けてから、ねじ61を取り付けてもよい。
【0056】
続いて、図8に示すように、リア部材9をフロント部材8に嵌める。すなわち、リア部材9の上板42をフロント部材8の側板23と側板24との間に挿入し、リア部材9を矢示A方向にスライドさせる。そして、リア部材9の穴45、47と、端子12の接続口12A、端子ユニット13の接続口13Aとを合わせ、端子12のねじ止め部12Bおよび端子ユニット13のねじ止め部13Bをリア部材9の側板41の接地面44に接触させる。このとき、リア部材9の接続部51がフロント部材8の支持部31と重なり合い、リア部材9の接続部53がフロント部材8の支持部33と重なり合うようにリア部材9の位置を調整する。
【0057】
続いて、ねじ63およびねじ64を側板41の穴46および穴48に通し、これらを端子12のねじ穴12Cおよび端子ユニット13のねじ穴13Cに挿入し、締める。ねじ63およびねじ64の締め付けは、端子12および端子ユニット13が側板41に強固に固定され、かつねじ止め部13Bが接地面44に確実に電気的に接続されるように行う。
【0058】
続いて、図9に示すように、ねじ65をフロント部材9の支持穴32に通し、これをリア部材9の接続穴52(図6参照)に挿入し、締める。同様に、ねじ65をフロント部材9の支持穴34に通し、これをリア部材9の接続穴54(図6参照)に挿入し、締める。これにより、接続部51、53と支持部31、33とがそれぞれ接続され、この結果、リア部材9とフロント部材8とが接続され、ケーシング2が完成する。
【0059】
図10は、調整機構である支持穴32、34の調整機能を示している。
【0060】
回路基板7の前後方向(矢示A、B方向)における寸法の誤差、端子11、端子12または端子ユニット13の前後方向における実装位置の誤差、フロント部材8の前後方向における寸法の誤差などが生じることがある。
【0061】
例えば、このような誤差が生じたため、端子11をフロント部材8の側板22にねじ止めした後、回路基板7、端子12(および端子ユニット13)の位置が矢示A方向に長さLずれたとする。図10では、このように位置ずれした回路基板7および端子12などを二点鎖線で示している。
【0062】
この状態でリア部材9の側板41が端子12(および端子ユニット13)にねじ止めされると、端子12(および端子ユニット13)の位置ずれに追従して、リア部材9も矢示A方向に長さLずれ、これと同時に、リア部材9の接続穴52(54)も矢示A方向に長さLずれる。この結果、ねじ65も矢示A方向に長さLずれることになる。
【0063】
しかし、フロント部材8の支持穴32(34)の直径は、図5に示すように、ねじ65の直径D1と遊び長さD2と調整長さD3とを合計した長さに設定されている。このため、位置ずれの長さLが調整長さD3よりも短い限り、ねじ65を支持穴32(34)に通して接続穴52(54)に正常に取り付けることができる。
【0064】
このように、支持穴32(34)の調整機能によれば、回路基板7の寸法誤差、端子11、端子12または端子ユニット13の実装位置の誤差、フロント部材8の誤差などに応じて、リア部材9をフロント部材8に対して矢示A、B方向(前後方向、つまり端子12Aの接続口12Aおよび端子ユニット13の接続口13Aの露出方向およびその正反対の方向)にスライド移動させることができる。
【0065】
以上説明したとおり、ケーシング2によれば、互いに独立した部材であるフロント部材8およびリア部材9により構成され、フロント部材8とリア部材9とを互いに接続する際に、フロント部材8に対するリア部材9の位置を支持穴32、34(調整機構)により調整することができる。
【0066】
これにより、回路基板7の寸法誤差、各端子11、12、端子ユニット13の実装位置の誤差、ケーシング2の寸法誤差などが生じても、回路基板7上に設けられた端子11、12および端子ユニット13のそれぞれをケーシング2の側板22、41に強固に固定することができ、かつ、端子11および端子ユニット13のそれぞれをケーシング2の接地面26、44に確実に電気的に接続することができる。
【0067】
すなわち、回路基板7上に設けられた端子11の接続口11Aの露出方向は、同じ回路基板7上に設けられた端子12および端子ユニット13の接続口12A、13Aの露出方向と正反対である。このため、互いに向かい合う側板22の内面25および側板41の内面43のうち、端子11は内面25に固定および接地する必要があり、端子12は内面43に固定する必要があり、端子ユニット13は内面43に固定および接地する必要がある。このような場合でも、回路基板7の寸法誤差、各端子の実装位置の誤差、ケーシング2の寸法誤差などに応じて、リア部材9をスライド移動させ、これにより、端子11、12および端子ユニット13とケーシング2との間の強固な固定および確実な電気的接続を実現することができる。
【0068】
したがって、ケーシング2によれば、端子11、12および端子ユニット13をケーシング2にねじ止めすることによって端子11、12または端子ユニット13に異常な応力がかかるのを防止することできる。これにより、端子11、12または端子ユニット13を回路基板7に固定している半田がはがれるなどの破損を防止することができる。
【0069】
また、ケーシング2によれば、端子11、12および端子ユニット13をケーシング2に強固に固定することができるので、プラグ着脱に対する端子11、12および端子ユニット13の耐久性を高めることができる。
【0070】
また、ケーシング2によれば、端子11および端子ユニット13をケーシング2に確実に電気的に接続することができるので、端子11および端子ユニット13の接地を確実に行うことができる。これにより、不要輻射の抑制、および回路基板7上に形成された電子回路の静電破壊の防止を図ることができる。
【0071】
また、ケーシング2によれば、フロント部材8に取り付けられた回路基板7に対し、リア部材9がスライド移動するので、回路基板7をフロンパネル側基板とリアパネル側基板とに分割しなくても、各端子のケーシング2への強固な固定と確実な電気的接続を実現することができる。したがって、回路基板の分割によって生じ得るコストの上昇、不要輻射の増加およびノイズの増加を防止することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、図5に示すように、調整機構である支持穴32(34)を円形に形成し、支持穴32(34)の直径を、ねじ65の直径D1と遊び長さD2と調整長さD3とを合計した長さに設定する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。図11に示すように、支持穴71を長穴形状に形成し、端子12の接続口12Aおよび端子ユニット13の接続口13Aの露出方向およびその正反対の方向、つまり調整機構によってリア部材9をスライド移動させるべき方向に限り、支持穴71の直径をD1、D2およびD3の合計長に設定してもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、リア部材9の位置を調整する調整機構を、フロント部材8の支持穴32(34)によって実現する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。リア部材9の接続穴52(54)によって調整機構を実現してもよい。この場合には、接続穴52(54)の直径をD1、D2およびD3の合計長に設定する。なお、この場合には、接続穴52(54)にねじを切らない。ねじ65としてボルトおよびナットを利用する。
【0074】
また、上述した実施形態では、図6に示すように上板42を有するリア部材9を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。図12に示すリア部材80のように、上板を排除してもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、図3に示すように、接続口の露出方向が互いに正反対である端子11、12などが取り付けられた回路基板7をケーシング2に収納する場合を例にあげた。すなわち、上述した実施形態では、図8に示すように、端子11をねじ止めすべき側板22の内面25と、端子12および端子ユニット13をねじ止めすべき側板41の内面43とが互いに向かい合っている場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。本発明は、回路基板上に設けられた端子の接続口の露出方向が異なる方向を向いており、このため、各端子をねじ止めすべき側板内面の方向が異なる場合に広く適用することができる。
【0076】
例えば図13に示すように、回路基板170上に設けられた端子11の接続口11の露出方向と、端子12および端子ユニット13の接続口12A、13Aの露出方向とが互いに90度異なる場合でも本発明を適用することができる。この場合には、ケーシング100のフロント部材120における側板121に、端子11の接続口11Aを外部に露出させるための穴と、端子11のねじ止め部11Bをねじ止めするための穴を形成する。そして、組立工程では、側板121の内面122に形成された接地面123に端子11を接触させつつ、端子11を側板121にねじ止めする。その後、端子12および端子ユニット13をリア部材9の側板41にねじ止めし、続いてリア部材9とフロント部材120とを接続する。
【0077】
また、上述した実施形態では、ケーシング2をフロント部材8およびリア部材9に2分割する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。回路基板の形状や、回路基板上における端子の配置などに応じて、ケーシングを3つ以上の部材に分割してもよい。
【0078】
例えば図14に示すように、ケーシング200を、フロント部材210、第1リア部材220および第2リア部材230に分割してもよい。この場合には、例えば、フロント部材210には、左右の側板211、212、支持部213、214、215、および支持穴216、217、218、219などを設ける。第1リア部220には、側板221、穴222、223、接続部224、225および接続穴226などを設ける。第2リア部材230には、側板231、穴232、233、接続部234、235および接続穴236などを設ける。
【0079】
また、上述した実施形態では、端子の接続口の露出方向が2通りの場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。端子の接続口の露出方向が3通り以上の場合でも、本発明を適用することができる。例えば、第1端子の接続口の露出方向が前方向であり、第2端子の接続口の露出方向が右方向であり、第3端子の接続口の露出方向が左方向である場合でも、本発明を適用することができる。
【0080】
また、上述した実施形態では、電子回路を構成する端子11、端子12および端子ユニット13が設けられた回路基板7をケーシング2に収納する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。本発明は、露出部位があり、かつケーシングの側板に接地が必要な端子以外の部品が設けられた回路基板を収納するケーシングにも適用することができる。
【0081】
また、上述した実施形態では、回路基板7上に設けられた端子をケーシング2の側板にねじ止めする場合を例にあげた。しかし、本発明は、例えば上板と底板とにそれぞれ端子をねじ止めする場合にも適用することができる。
【0082】
また、端子11、12などとケーシング2とを接続するねじ61、63、64や、フロント部材8およびリア部材9とを接続するねじ65には、小ねじ、止めねじ、タッピンねじ、木ねじ、ボルト・ナットのほか、部品の固定および部品の接地を可能にする、ねじに類するあらゆる接続手段が含まれる。
【0083】
また、図8中の端子11が第1部品の具体例であり、端子12および端子ユニット13がそれぞれ第2部品の具体例であり、接続口11A、12A、13Aが露出部位の具体例である。また、側板22が第1側板の具体例であり、側板41が第2側板の具体例である。また、図13中の側板121が第1側板の他の具体例である。また、図14中の側板221、231がそれぞれ第2側板の具体例である。
【0084】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うケーシングもまた本発明の技術思想に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のケーシングの実施形態を用いたオーディオビジュアル機器を示す斜視図である。
【図2】図1中のオーディオビジュアル機器のフロントカバーおよびトップカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1中のオーディオビジュアル機器の回路基板を示す斜視図である。
【図4】図1中のオーディオビジュアル機器に用いられている本発明の実施形態であるケーシングのフロント部材を示す斜視図である。
【図5】図4中のフロント部材の支持穴を示す説明図である。
【図6】図1中のオーディオビジュアル機器に用いられている本発明の実施形態であるケーシングのリア部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態であるケーシングの組立工程を示す斜視図である。
【図8】図7に続く組立工程を示す斜視図である。
【図9】図8に続く組立工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態であるケーシングの調整機能を示す説明図である。
【図11】本発明のケーシングにおける支持穴の他の実施形態を示す説明図である。
【図12】本発明のケーシングにおけるリア部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図13】本発明のケーシングの他の実施形態を示す斜視図である。
【図14】本発明のケーシングのさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
2、100、200 ケーシング
7、170、207 回路基板
8、120、210 フロント部材
9、80、220、230 リア部材
11、12 端子
13 端子ユニット
11A、12A、13A 接続口
11B、12B、13B ねじ止め部
11C、12C、13C ねじ穴
21 底板
22、23、24、41、121、211、212、221、231 側板
25、43、122 内面
26、44、123 接地面
27、28、45、46、47、48、222、223、232、233 穴
31、33、213、214、215 支持部
32、34、71、216、217、128、219 支持穴
51、53、224、225、234、235 接続部
52、54、226、236 接続穴
61、63、64、65 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出させるべき露出部位の露出方向が互いに異なる第1部品および第2部品が取り付けられた回路基板を収納するためのケーシングであって、
ベース板と、
前記ベース板に固定され、内面には前記第1部品を接地するための第1接地面が形成され、当該内面には前記第1部品の露出部位を外部に露出させるための穴が形成され、当該内面には前記第1部品をねじ止めするための穴が形成されている第1側板と、
前記ベース板から独立した部材により形成され、内面には前記第2部品を接地するための第2接地面が形成され、当該内面には前記第2部品の露出部位を外部に露出させるための穴が形成され、当該内面には前記第2部品をねじ止めするための穴が形成されている第2側板と、
前記第2側板を前記ベース板に接続する接続機構とを備え、
前記接続機構には、前記第2部品の露出部位の露出方向またはその正反対の方向において、前記ベース板に対する前記第2側板の位置を調整する調整機構が設けられていることを特徴とするケーシング。
【請求項2】
前記接続機構は、
前記ベース板に固定された支持部と、
前記支持部に形成された支持穴と、
前記第2側板に固定された接続部と、
前記接続部に形成された接続穴と、
前記支持穴および前記接続穴を介して前記支持部および前記接続部を互いに接続するねじとを備え、
少なくとも前記第2部品の露出部位の露出方向またはその正反対の方向において、前記支持穴または前記接続穴の直径を、前記ねじの直径と遊び長さと前記第2側板の位置を調整するための調整長さとを合計した長さに設定することにより前記調整機構が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーシング。
【請求項3】
前記第1側板の内面と前記第2側板の内面とは互いに向かい合っていることを特徴とする請求項1に記載のケーシング
【請求項4】
前記第1部品および前記第2部品はそれぞれ端子であることを特徴とする請求項1に記載のケーシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−65894(P2008−65894A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241817(P2006−241817)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】