説明

回路基板を用いたジョイントボックス

【課題】 各種電気機器に使用することができ、金属箔による回路パターンを有する回路基板を用いたジョイントボックスを得る。
【解決手段】 上ケース11、回路ユニット12、下ケース13を相互に組み付けることにより、ジョイントボックスが形成される。
回路ユニット12の上面には、回路パターンが形成されていると共に、複数個の挿入端子15を取り付けた合成樹脂製のブロック体16が配置されている。ブロック体16は上ケース11に区画された枠部17に嵌合され、ブロック体16上に突出した挿入端子15の平刃端15a、受端15b、ピン端15cなどの接続部が枠部17内に位置している。回路ユニット12は例えば5枚の回路基板19が積層され、各回路基板19は例えば射出成型により成型された樹脂プレート20上に、パターンの箔回路21が載置されている。箔回路21は銅箔から成り、積層された回路基板19ごとに異なるパターンに区画されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路において使用され、各種の配線を分岐、結合するための各種電気機器やジョイントボックスに使用可能な回路基板を用いたジョイントボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジョイントボックスには多数の型式が知られているが、例えばFFC(フレキシブルフラットケーブル)を積層して複雑な回路処理をしたものが本出願人による特許文献1で開示されている。このジョイントボックスでは、図28に示すように所定の回路パターンを形成した導体箔1を2枚の絶縁シート2により挟着したフラットケーブル層3を積層する。
【0003】
積層したフラットケーブル層3には共通の切欠孔4を形成し、各切欠孔4に必要に応じてフラットケーブル層3の導体箔1を露出し、露出した導体箔1を最上部に取り付けた接続端子5の下端部に溶着している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−243526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した従来例は、フラットケーブル層3の製作に手間がかかり、コストが高くなる。また、切欠孔4内での導体箔1の取り出しが厄介であり、また導体箔1と接続端子5との接続が不安定となる問題もある。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、各種電気機器に使用することができ、金属箔による回路パターンを有する回路基板を用いたジョイントボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る回路基板を用いたジョイントボックスは、三次元的に成型した合成樹脂材から成る樹脂プレート上に金属箔から成る回路パターンを載置した複数枚の回路基板を積層し、これらの回路基板の所定個所に前記積層した回路基板に共通の端子挿通孔を形成し、前記任意の層の回路基板の前記端子挿通孔に金属製の略円筒状の受端子を取り付け、該受端子に付設したタブを当該回路基板の前記回路パターンに接続し、前記共通の端子挿通孔にピン状の挿入端を有する挿入端子を挿通し、前記受端子を介して該当の前記回路基板の各層の前記回路パターンを電気的に導通することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る回路基板を用いたジョイントボックスは、三次元的に成型した合成樹脂材から成る樹脂プレート上の必要個所に端子挿通孔を形成し、前記樹脂プレート上に所定形状に打ち抜いた金属箔から成る回路パターンを載置し、前記端子挿通孔に該当する前記回路パターンにピン状の挿入端を挿し込むための切込部を設けると共に、対応する前記端子挿通孔に金属製の略円筒状の受端子を嵌合した複数枚の回路基板を積層し、前記端子挿通孔に前記挿入端を挿通し、前記受端子を介して前記挿入端と前記回路基板の各層の前記回路パターンとを電気的に導通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る回路基板を用いたジョイントボックスによれば、箔回路による回路パターンが形成された回路基板を積層して製作するので、複雑な回路でも薄型化して製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図1〜図27に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る回路基板を用いたジョイントボックスの実施例の分解斜視図であり、上ケース11、回路ユニット12、下ケース13を相互に組み付けることにより、ボックス形状のジョイントボックスが得られる。つまり、上ケース11、下ケース13間に回路ユニット12が収納され、ケース11、13同士が接合されると、回路ユニット12を収容した状態で上ケース11、下ケース13に設けられたロック部14a、14bによりロックされる。
【0011】
回路ユニット12の上面には、図示を省略した回路パターンが形成されていると共に、複数個の挿入端子15を取り付けた合成樹脂製のブロック体16が配置されている。ブロック体16は上ケース11に区画された枠部17に嵌合され、ブロック体16上に突出した挿入端子15の平刃端15a、受端15b、ピン端15cなどの接続部が枠部17内に位置している。そして、これらの接続部にヒューズ素子、スイッチ素子或いは他の接続端子を収容したコネクタが装着可能とされている。
【0012】
また、下ケース13においても枠部18が形成され、図示は省略しているが、回路ユニット12の下面に取り付けられたブロック体16から挿入端子15の接続端が下向きに突出され、下ケース13の下面に同様の素子、コネクタなどが装着可能とされている。
【0013】
また、このジョイントボックス内に電子回路ユニットを設けることもでき、更にはジョイントボックスから端子を突出して、電子回路ユニットを収容したボックス同士を隣接して、端子同士により接続することもできる。
【0014】
回路ユニット12は例えば5枚の回路基板19が積層され、図2、図3に示すように、各回路基板19は例えば射出成型により成型された合成樹脂製の最大厚み1.5mm程度の樹脂プレート20上に、パターンの箔回路21が載置されている。箔回路21は例えば厚さ120μmの銅箔から成り、積層された回路基板19ごとに異なるパターンに区画されている。
【0015】
樹脂プレート20には、図4に示すように複数のアンカピン20aが上方に向けて突出され、箔回路21に設けられたピン孔21aに挿通されている。このアンカピン20aの上部を熱により押し潰すことにより、箔回路21は樹脂プレート20に位置決め固定されている。
【0016】
なお、電流容量によっては一部の箔回路21は、図5に示すように金属箔を2層又はそれ以上の複数層とされ、高さの高いアンカピン20a’により固定されている。樹脂プレート20に穿孔された溶着用孔部20bから溶着電極を挿し込むことにより、重ねた箔回路21同士は溶着される。
【0017】
樹脂プレート20の複数個所には、図2、図3に示すように積層した樹脂プレート20に共通の円形の端子挿通孔20cが形成され、所定の層の回路基板19の各回路21には端子挿通孔20cと同径の孔部が設けられていて、この端子挿通孔20cには受端子22が取り付けられている。なお、受端子22は必要な電流容量によって数種類の大きさがあり、それに伴って端子挿通孔20cの径も数種類設けられている。
【0018】
受端子22は例えば肉厚0.2mmの黄銅板から成り、フォーミングプレスにより形成されている。この受端子22は図6に示すように、短円筒状に形成した筒状接続部22aの上部にフランジ部22bが形成され、更にフランジ部22bの一部にタブ22cが付設されている。なお、筒状接続部22aとフランジ部22bとの境界部は、後述する挿入端子を受け入れるためのテーパ状の案内部22dとされている。
【0019】
図7は5枚の回路基板19を積層し、受端子22を固定した状態の回路ユニット12の要部断面図であり、回路基板19の端子挿通孔20cの中間部の内径を受端子22の筒状接続部22aの外径とほぼ同じとしている。端子挿通孔20cの上部の周囲は上方に持ち上げられた円環部20dとされ、この円環部20d内に受端子22のフランジ部22bを載置する段部20eが形成されている。端子挿通孔20cの下部は筒状接続部22aの下部を拡開するために内径が大きくされている。
【0020】
なお図示においては、受端子22を取り付けない端子挿通孔20cの内径は、受端子22の内径とほぼ同じ大きさとしているが、受端子22を取り付ける端子挿通孔20cと同形状にしても支障はない。
【0021】
受端子22の筒状接続部22aは端子挿通孔20c内に配置され、筒状接続部22aの下部は端子挿通孔20cの下部にテーパ状にかしめ止めされている。この筒状接続部22aの下部の拡開は、受端子22の回路基板19への固定を主目的としているが、下面方向から挿入端子15を挿し込む場合におけるテーパ状の案内部22eともなっている。また、タブ22cは回路基板19の箔回路21上に溶着により接続されており、この溶着のためにタブ22cの下方の樹脂プレート20には、電極挿通のための溶着用孔部20fが形成されている。
【0022】
回路基板19の受端子22を取り付けない端子挿通孔20cにおいては、その上部周囲に円環部20gが形成され、端子挿通孔20cの周囲に箔回路21が存在していても、挿入される挿入端子15が箔回路21と接触しないようにされている。なお、回路ユニット12の最上位の回路基板19に設けた円環部20gは、ブロック体16を安定して載置するために、受端子22を取り付ける端子挿通孔20cに設けた円環部20dと同じ高さとされている。
【0023】
また、図2、図3に示すように樹脂プレート20の下面側には必要に応じて電線用溝部20hが形成され、この電線用溝部20h内に絶縁塗料が塗布された例えば角型電線23が装着されている。角型電線23の両端部は電線用溝部20hの両端に設けられた電線用孔部20iを介して立ち上げられて箔回路21の下面と溶着し、回路設計上、樹脂プレート20の表面においては接続できない箔回路21のパターン同士をジャンパ線として短絡するようにされている。なお、この角型電線23は電流容量に応じて各種断面積のものが使用されている。
【0024】
上述の回路基板19のアンカピン20aの熱溶融した上端部、円環部20d、受端子22は、上層の樹脂プレート20の下面に形成した凹部内に嵌まり込み、積層した回路基板19同士が密着すると共に、水平方向にずれないようにされている。例えば、図3に示す凹部20jは、下層の回路基板19に取り付けた受端子22が嵌まり込む部分である。また、樹脂プレート20の四隅に設けた透孔20lは回路基板19を積層する場合の位置合わせ孔である。
【0025】
また、回路基板19に設けられた図2、図3に示す角孔20mは、挿入端子15、受端子22では電流容量が足りない場合に、図1に示す大電流用の接続端子26を取り付けるためのものであり、回路ユニット12の最上位の回路基板19のみに設けられている。
【0026】
回路基板19は全ての箔回路21を上に向けて積層するとは限らず、図7においては上層の3層の回路基板19は箔回路21を上に向けて積層し、下層の2層の回路基板19は箔回路21を下に向けて積層されている。この場合においても、3層目と4層目の下面同士を重ねた回路基板19では、図示を省略しているが、ずれが生じないように部分的に嵌合し得るようにされている。
【0027】
図8は受端子22に挿入するための挿入端子15の斜視図を示し、挿入端子15の下部は受端子22の筒状接続部22aに挿入するための断面略四角形のピン状挿入端15dとされている。中間部15eを介しての上部は上ケース11上に突出して、他の接続端子と接続するための平刃端15aとされている。なお、この平刃端15aは、図1に示す受端15b或いはピン端15cとすることもできる。
【0028】
この挿入端15dによれば、板厚の薄い金属板を折り曲げ、空洞部がなく上下方向に幅のある断面略四角形の棒状に形成している。従って金属板の板厚が薄い場合でも、金属板の厚みと比較して一辺の厚みが十分に大きい挿入端15dを得ることができ、挿入端15dが弯曲したり或いは折損することが少ない。また、上部の平刃端15aも金属板を二重に折り畳んで厚みを持たせている。
【0029】
更に、挿入端受端子22への挿入時にクリック感を得るためと、接続を良好とするために、挿入端15dに複数の段部を形成してもよい。また、これらの挿入端15dは受端子22の大きさに合わせて数種類用意されている。
【0030】
合成樹脂材によるブロック体16に設けられた挿通孔には、幾つかの挿入端子15の中間部15eが挿し込まれて固定され、図1に示すように、挿入端15dはまとめて回路基板19に挿入されている。なお、挿入端子15の中間部15eには、挿通孔に固定するための図示しない爪部が設けられている。
【0031】
図9に示すように、ブロック体16の底部には単数又は複数の下方を向くアンカピン16aが一体に形成されており、箔回路21に設けられたピン孔21b、各樹脂プレート20に共通に設けられたピン孔20kに挿通されている。最下層の回路基板19から下方に突出したアンカピン16aの下端を溶融して押し潰すことにより、ブロック体16を回路ユニット12に固定すると共に、回路基板19の積層体同士を分離不能に固定している。
【0032】
図10は回路基板19の他の例を示し、回路基板19の積層体においては、下方の回路基板19ほど端子挿通孔20cの径は小さくされており、これに伴って受端子22の径も小径とされている。同時に、この積層体に挿入される挿入端子15においても、図11に示すようにピン状挿入端15dは、受端子22の径に合わせて先端ほど小径とされている。このような構成により、ブロック体16に固定された挿入端子15を回路基板19の積層体に挿入する際に、挿入が容易となる利点がある。
【0033】
図12は上述の回路基板19の製造工程の説明図である。箔回路21の母材である銅箔41はローラ42にコイル状に巻回されており、必要に応じて銅箔41に予め形成したパイロット孔を基に、銅箔にはクランプなどの送り手段43により間欠的に繰り出される。銅箔41は孔あけプレス工程に搬送され、孔あけプレス44により複数の所定位置にピン孔21a、21bが穿孔され、樹脂プレート20との積層工程に移送される。なお、銅箔41に設けるピン孔21aは箔回路21を樹脂プレート20に固定するものであるので、樹脂プレート20上に残り、箔回路21となるべき部分に設けられる。
【0034】
一方、樹脂プレート20はストッカ45に積層されており、銅箔41の搬送に同期して1枚ずつ取り出される。樹脂プレート20は合成樹脂膜を射出成形或いは合成樹脂基材をホットプレスすることにより製造され、アンカピン20a、孔部20b、20f、端子挿通孔20c、円環部20d、20g、段部20e、電線用溝部20h、孔部20i、凹部20j、ピン孔20k、透孔20l等が既に形成されている。
【0035】
1枚の樹脂プレート20が積層台46上に載置されると、積層台46は上昇して銅箔41に向けて押し上げられる。樹脂プレート20のアンカピン20aが銅箔41に穿孔されたピン孔21aに入り込むように、撮像カメラ47による画像処理によって積層台46は三次元的に位置制御される。
【0036】
なお、特に電流容量を要する箔回路21には、前述したように銅箔41を二重に重ねて電気抵抗を少なくするので、上述の工程を2回繰り返し、図示しない工程により、重ねられた銅箔41同士を図5に示したように樹脂プレート20に設けた溶着用孔部20bを用いて溶着する。
【0037】
アンカピン20aをピン孔21aに挿入して銅箔41を樹脂プレート20上に重ねた後に、積層台46の上方に位置する熱プレス48を降下し、アンカピン20aの頂部を熱により押し潰し、銅箔41が樹脂プレート20から剥離しないようにする。なお、位置合わせに伴って、ブロック体16のアンカピン16aを挿通する銅箔41のピン孔21bは、樹脂プレート20のピン孔20kと一致している。
【0038】
続いて、樹脂プレート20と一体となった銅箔41を打ち抜きプレス49に搬送し、画像処理を行いながら銅箔41から箔回路21を打ち抜く。上側の打ち抜きプレス49はビク刃49aを有し、樹脂プレート20を傷付けることなく銅箔41から箔回路21を打ち抜くものであり、ビク刃49aによって箔回路21の回路パターンが打ち抜かれることになる。また、この回路パターンの打ち抜きに際して、回路パターン中の端子挿通孔20c上に位置する銅箔41はその回路基板19において受端子22に接続する場合には受端子22の内径通りの孔部が形成され、受端子22と接続しない場合には円環部20gの外側の大きさの孔部が形成される。
【0039】
更に、樹脂プレート20と共に銅箔41を搬送し、箔回路21で使用されない残材の銅箔41は、樹脂プレート20から剥離された後に残材処理刃50により細断され、残材ボックス51内に投棄される。一方、箔回路21を表面に一体に固定した樹脂プレート20は、回路基板19として所定方向に搬出され、ストッカ52内に積層される。
【0040】
図13は他の方法による回路基板19の製造工程の説明図であり、図12と同一の符号は同一の部材を示している。箔回路21の母材である銅箔41はローラ42にコイル状に巻回されており、銅箔41に孔あけプレス44により複数の所定位置にピン孔21a、21bが穿孔され、パターン回路打ち抜き工程に移送されることは図12の場合と同様である。
【0041】
続いて、銅箔41を打ち抜きプレス55に搬送し、画像処理を行いながら銅箔41から箔回路21を打ち抜く。図14に示すように上側の打ち抜きプレス55はビク刃55aを有し、銅箔41から箔回路21を打ち抜き、ビク刃55aによって箔回路21の回路パターンが打ち抜かれることになる。ビク刃55a間には、複数の吸着パット55bが設けられ、打ち抜いた箔回路21を真空吸引して保持し、ビク刃運搬装置により所定位置に運搬する。
【0042】
箔回路21として打ち抜かれない残材の銅箔41は、更に運搬され残材処理刃56により細断され、残材ボックス57内に投棄される。
【0043】
一方、樹脂プレート20はストッカ45に積層されており、銅箔41からの箔回路21の打ち抜きと同期して、1枚の樹脂プレート20が積層台46上に載置されると、ビク刃55aに保持された箔回路21が樹脂プレート20上に運ばれる。そして、撮像カメラ58による画像処理による三次元的な位置制御により樹脂プレート20のアンカピン20aが箔回路21に穿孔されたピン孔21aに入り込むようにビク刃運搬装置が制御される。
【0044】
アンカピン20aを箔回路21のピン孔21aに挿入して、箔回路21を樹脂プレート20上に重ねた後に、ビク刃55a間の吸着パット55bから空気を噴出して箔回路21をビク刃55aから分離し樹脂プレート20上に押し付ける。この箔回路21の押し付けは、ビク刃55a間に複数の押し出しピンを設け、箔回路21を樹脂プレート20上に押し付けてもよい。
【0045】
その後に、ビク刃55aをビク刃運搬装置により、元の打ち抜きプレス55の位置に戻し、箔回路21を載置した樹脂プレート20上に、上方に位置する熱プレス48を降下し、アンカピン20aの頂部を押し潰し、箔回路21を樹脂プレート20上に固定する。
【0046】
図15〜図17は回路基板19に受端子22を固定する工程の説明図であり、パーツフィーダにより整列して供給される受端子22を図15に示すように、ロボットハンド61により必要に応じて撮像カメラ62により画像処理を行いながら保持して、回路基板19の必要個所に運搬する。ロボットハンド61には筒部63に対して吊り上げピン64が上下動自在に設けられている。この吊り上げピン64を受端子22の筒状接続部22aに挿入し、摩擦抵抗により受端子22を持ち上げ、受端子22のタブ22cが箔回路21上に載置されるように、画像処理により位置調整しながら受端子22を樹脂プレート20の端子挿通孔20cに挿入する。
【0047】
筒部63により受端子22を樹脂プレート20の段部20e上に押し付けたまま、吊り上げピン64を図16に示すように上方に持ち上げる。続いて、下方から先端を円錐状としたプレスピン65を持ち上げて、筒状接続部22aの下部を押し広げ、受端子22を端子挿通孔20cの下部にかしめ止めする。
【0048】
その後に、図17に示すようにタブ22cを箔回路21に電極66、67を用いて溶着する。電極66、67の先端はそれぞれ直径1mm前後の細径丸型とされ、上方の電極66はタブ22cに接触し、下方の電極67は箔回路21の下面に溶着用孔部20fを介して接触する。なお、この溶着はロボットハンドにより順次に行うこともできるが、多数本の電極を用いて一括して溶着することもできる。
【0049】
図18〜図20は角型電線23を樹脂プレート20の電線用溝部20hに固定する工程の説明図であり、図18において例えば0.3×3mmの偏平な角銅線に絶縁層が塗布された角型電線材71はローラ72に巻回され、間欠的に繰り出されて供給される。ローラ72から供給された角型電線材71は矯正ロール73により捩りなどが矯正され、計尺ローラ74により繰り出し長さが計測され、所定長が繰り出されたところでチャック75により固定される。この状態において、被覆剥ぎ機76によって角型電線材71の端部の絶縁層を剥離し、次いで剥離部分が切断機77に進んだところでチャック78により固定し、切断機77により剥離部分の中央を切断する。
【0050】
このようにして、両端の絶縁層が剥離された所定長の角型電線23が得られる。この角型電線23を図19に示すように加工プレス機79により両端を折り曲げ、ロボットハンドにより樹脂プレート20を裏返して裏側の電線用溝部20h内に角型電線23を装着し、図20に示すように撮像カメラ80により画像処理を行いながら、両端の絶縁剥離部を樹脂プレート20の溶着用孔部20iを介して箔回路21の下面に押し当て、上下の電極81、82を用いて角型電線23を箔回路21に溶着して電気的に接続する。
【0051】
このようにして製作され、それぞれ回路パターンが異なる複数枚の回路基板19を積層し、先の図9に示すようにブロック体16を回路基板19の積層体上に載置し、ブロック体16に固定された挿入端子15の挿入端15dを、回路基板19の端子挿通孔20cに挿入すると、挿入端15dは少なくとも何れかの回路基板19に取り付けられた受端子22の筒状接続部22aに挿入される。
【0052】
このとき、挿入端15dは断面略四角状とされているので、受端子22の筒状接続部22aに挿入された場合に角部が良好に接触し、挿入端子15は何れかの回路基板19の箔回路21と良好な電気的な接続がなされることになる。また必要に応じて、回路ユニット12の下面側からもブロック体16を装着する。
【0053】
挿入端15dの挿入と同時に、ブロック体16から突出されたアンカピン16aは回路基板19の積層体のピン孔20kを貫通するので、ピン孔20kから突出した先端を溶融すると回路ユニット12が完成する。
【0054】
この回路ユニット12を上ケース11、下ケース13により挟み込み、ロック部14a、14bによりケース11、13同士をロックする。上ケース11、下ケース13の表面から突出する挿入端子15の平刃端15a、受端15b、ピン端15cに、上述したように各種素子、コネクタを取り付けることによりジョイントボックスとして機能する。
【0055】
図21以降は他の回路基板91の実施例を示している。図21に示すように、各回路基板91は射出成型により成型された合成樹脂製の例えば最大厚み1.5mm程度の樹脂プレート92上に、例えば厚さ120μmの銅等の金属箔から成り、積層された回路基板91ごとに異なる区画がなされたパターンの箔回路93が載置されている。なお、樹脂プレート92には必要に応じて、箔回路93を載置し位置決めするために、箔回路93の厚みと同等の深さを有する凹部94が箔回路93と同形状に形成されている。
【0056】
樹脂プレート92には、複数のアンカピン92aが上方に向けて突出され、箔回路93に設けられたピン孔93aに挿通され、アンカピン92aの上部を熱により押し潰すことにより、箔回路93は樹脂プレート92上に位置決め固定されている。なお、電流容量を必要とする場合には、実施例1と同様に一部の箔回路93は銅箔を2層又はそれ以上の複数層としてもよい。
【0057】
樹脂プレート92の複数個所には、積層した樹脂プレート92に共通の円形の端子挿通孔92bが形成され、所定の層の回路基板91の所定の端子挿通孔92bには、図22に拡大して示す円筒状や角筒状の受リング95が嵌合されている。なお、受リング95は後述する挿入端子の種類や電流容量によって数種類の大きさが用いられ、それに伴って端子挿通孔92bの径も数種類設けられており、例えばステンレス製の丸パイプや角パイプを切断して造られている。なお、図23に示すように、受リング95にフランジ部95aを設けてもよい。
【0058】
端子挿通孔92bに嵌合された受リング95上の箔回路93には、十字状の切込部93bが設けられており、図24に示すように例えば接続端子96の棒状の挿入端96dを挿入することにより、箔回路93の切込部93bが破られ、押し拡げられて、箔回路93は挿入端96dと受リング95の間に挟み込まれ、挿入端96dと箔回路93は導電的に接触する。なお、導通を必要としない挿入端には受リング95は嵌合されておらず、また挿通孔92bの周囲の回路パターンは導通が生じないように孔部が設けられたり除去されている。
【0059】
この場合に、挿入端96dの先端を図21に示すように尖らせることにより、挿込が容易となる。また、挿入端96dを同様に図21に示すように断面角形とすることにより、切込部93bを破り易くなり、受リング95に対する接触がより確実となる。
【0060】
なお、挿入端96dを挿入するには、図25(a)に示す十字状の切込部93bだけではなく、(b)に示すように丸孔93c、(c)に示すように角孔93dの切込部とすることもできる。
【0061】
図26は5枚の回路基板91を積層した状態の回路ユニット97の要部断面図である。また回路基板91の四隅には、回路基板91を積層する場合の図示しない凹凸部が形成され、これらの凹凸部同士を嵌合することにより上下の回路基板91が位置決めされる。
【0062】
このようにして、それぞれ回路パターンが異なる複数枚の回路基板91を積層し、図27に示すようにブロック体16を最上層の回路基板91上に載置し、ブロック体16に固定された接続端子96の挿入端96dを、回路基板91の端子挿通孔92bに挿入すると、挿入端96dは少なくとも何れかの回路基板91に取り付けられた受リング95内に挿入される。挿入端96dは受リング95ごとに設けられた箔回路93と導通し、積層した回路基板91を用いた立体的な回路ユニット97が構成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ジョイントボックスを構成する上ケース、回路ユニット、下ケースの分解斜視図である。
【図2】回路基板の平面図である。
【図3】回路基板の底面図である。
【図4】回路基板の一部断面図である。
【図5】金属箔を2枚重ねた箔回路における回路基板の一部断面図である。
【図6】受端子の斜視図である。
【図7】受端子を固定した回路基板を積層した要部断面図である。
【図8】挿入端子の斜視図である。
【図9】回路基板、ブロック体の断面図である。
【図10】受端子を固定した回路基板を積層した他の例の要部断面図である。
【図11】挿入端子の他の例の斜視図である。
【図12】回路基板の製造工程の説明図である。
【図13】回路基板の他の製造工程の説明図である。
【図14】ビク刃により箔回路を保持する工程の断面図である。
【図15】受端子をロボットハンドにより保持する工程の説明図である。
【図16】受端子を回路基板に固定する工程の説明図である。
【図17】受端子を箔回路に溶着する工程の説明図である。
【図18】角型電線の製造工程の説明図である。
【図19】角型電線を折り曲げる工程の説明図である。
【図20】角型電線を箔回路に溶着する工程の説明図である。
【図21】回路基板の組立説明図である。
【図22】受リングの拡大斜視図である。
【図23】変形例の受リングの斜視図である。
【図24】挿入端を箔回路を介して受リングに挿入した断面図である。
【図25】切込部の変形例の平面図である。
【図26】回路基板を積層した要部断面図である。
【図27】積層した回路基板に挿入端を挿入した状態の断面図である。
【図28】従来例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0064】
12、97 回路ユニット
15 挿入端子
16 ブロック体
19、91 回路基板
20、92 樹脂プレート
20c、92b 端子挿通孔
21、93 箔回路
22 受端子
23 角型電線
41 銅箔
49、55 打ち抜きプレス
49a、55a ビク刃
55b 吸着パット
71 角型電線材
95 受リング
96 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元的に成型した合成樹脂材から成る樹脂プレート上に金属箔から成る回路パターンを載置した複数枚の回路基板を積層し、これらの回路基板の所定個所に前記積層した回路基板に共通の端子挿通孔を形成し、前記任意の層の回路基板の前記端子挿通孔に金属製の略円筒状の受端子を取り付け、該受端子に付設したタブを当該回路基板の前記回路パターンに接続し、前記共通の端子挿通孔にピン状の挿入端を有する挿入端子を挿通し、前記受端子を介して該当の前記回路基板の各層の前記回路パターンを電気的に導通することを特徴とする回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項2】
前記受端子のタブは前記回路パターンに溶着により接続した請求項1に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項3】
三次元的に成型した合成樹脂材から成る樹脂プレート上の必要個所に端子挿通孔を形成し、前記樹脂プレート上に所定形状に打ち抜いた金属箔から成る回路パターンを載置し、前記端子挿通孔に該当する前記回路パターンにピン状の挿入端を挿し込むための切込部を設けると共に、対応する前記端子挿通孔に金属製の略円筒状の受端子を嵌合した複数枚の回路基板を積層し、前記端子挿通孔に前記挿入端を挿通し、前記受端子を介して前記挿入端と前記回路基板の各層の前記回路パターンとを電気的に導通することを特徴とする回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項4】
前記積層した回路基板同士は互いに嵌合し得る凹凸部を有することを特徴とする請求項項1又は3に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項5】
前記挿入端子は下部を前記挿入端とし、上部を他の接続端子と嵌合する接続端としたことを特徴とする請求項1又は3に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項6】
前記挿入端は断面角型としたことを特徴とする請求項5に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項7】
前記挿入端子は取付孔を有する合成樹脂ブロックに取り付け、前記挿入端子の挿入端と接続端との間の中間部を合成樹脂ブロックに固定し、前記挿入端を前記回路基板の端子挿通孔にまとめて挿入することを特徴とする回路基板を用いた請求項5に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。
【請求項8】
前記合成樹脂ブロックの底部に下方を向くアンカピンを形成し、該アンカピンを前記回路基板の積層体に設けたアンカピン用孔部に挿通し、前記積層体の反対側に突出した端部を溶融することにより前記積層体を固定することを特徴とする請求項7に記載の回路基板を用いたジョイントボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−220165(P2008−220165A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73718(P2008−73718)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【分割の表示】特願2006−511657(P2006−511657)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】