説明

回路基板固定装置および回路基板検査装置

【課題】回路基板に与えるストレスを軽減しつつクランプ部によって回路基板がクランプされているか否かを確実に検出する。
【解決手段】各々の先端部41a,42aが互いに接離可能に構成された第1クランプ部41および第2クランプ部42部を有して各先端部41a,42aによって回路基板をクランプするクランプ機構14と、クランプ機構14による回路基板のクランプ状態を検出する検出部とを備えて回路基板を固定可能に構成され、各第2クランプ部42には、先端部42aに開口部64aが位置して圧縮機構に接続される通気孔64が形成され、検出部は、圧縮機構と通気孔64との間に配設されて通気孔64を流れる気体についての物理量を検出するセンサを備え、センサによって検出された物理量に基づいてクランプ状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板をクランプするクランプ機構とクランプ機構によるクランプ状態を検出する検出部とを備えた回路基板固定装置、およびその回路基板固定装置を備えて回路基板に対する電気的検査を行う回路基板検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板固定装置として、特開2009−117740号公報において出願人が開示した回路基板固定装置が知られている。この回路基板固定装置は、基台本体、一対の梁部材、移動機構および複数のクランプ機構などを備えて構成されている。この場合、各梁部材は、基台本体における第1の方向とその長さ方向とが一致するように基台本体に配設されると共に、第1方向と直交する第2の方向に沿って移動(スライド)可能に構成されている。また、各クランプ機構は、本体部および回動部などを備えて各梁部材に配置されると共に、本体部の先端部と回動部の先端部とによって回路基板をクランプ可能に構成されている。
【0003】
また、出願人は、上記した回路基板固定装置を改良して、各クランプ機構を上記した第2方向に沿って個別に移動可能に構成して、回路基板をクランプした状態の各クランプ機構を第2方向に沿って移動させて回路基板を引っ張ることにより、回路基板に皺などの変形が生じているときに、その変形を矯正する回路基板固定装置を開発している。また、出願人は、回路基板に当接させる複数の当接部を備えて、回路基板を挟んで互いに対向配置した各当接部を互いに近接する向きに移動させて回路基板を押圧し、これによって回路基板を固定する回路基板固定装置を開発している。
【0004】
一方、この種の回路基板固定装置では、測定中に回路基板の位置ずれ等が生じたときには、測定値が不正確となる。このため、この種の回路基板固定装置には、クランプ機構による回路基板のクランプ状態や、回路基板に対する当接部の当接状態(以下、総称して「クランプ状態等」ともいう)を検出する機能が備えられている。この場合、出願人が開発している回路基板固定装置では、上記したクランプ機構を移動させて回路基板を引っ張る機構や、当接部を移動させて回路基板を押圧する機構を利用してクランプ状態等を検出する構成を採用している。この場合、クランプ機構を移動させて回路基板を引っ張る機構を利用する構成では、回路基板がクランプ機構によってクランプされていないときには、クランプ機構が予め決められた距離よりも長く第2方向に沿って移動する。また、当接部を移動させて回路基板を押圧する機構を利用する構成では、予め指定された位置に回路基板が正しくセット(載置)されていないときには、各当接部が予め決められた距離よりも長く互いに近接する向きに移動する。このため、クランプ機構の移動距離や当接部の移動距離を検出することで、クランプ状態等を検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117740号公報(第5−7頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の各回路基板固定装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、これらの回路基板固定装置では、クランプ機構を移動させて回路基板を引っ張る機構や、当接部を移動させて回路基板を押圧する機構を利用してクランプ状態等を検出している。この場合、クランプ機構を移動させて回路基板を引っ張る機構を利用する構成においては、回路基板をクランプした状態でクランプ機構を移動させる必要があるため、変形等が生じておらず矯正の必要がない回路基板や、薄手の回路基板に対して、必要以上のストレスを加えることとなり好ましくない。また、当接部を移動させて回路基板を押圧する機構を利用する構成においては、当接部の押圧によって変形が生じる薄手の回路基板には用いることができないという課題がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、回路基板に与えるストレスを軽減しつつクランプ部によって回路基板がクランプされているか否かを確実に検出し得る回路基板固定装置および回路基板検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の回路基板固定装置は、各々の先端部が互いに接離可能に構成された一対のクランプ部を有して当該各先端部によって回路基板をクランプするクランプ機構と、当該クランプ機構による前記回路基板のクランプ状態を検出する検出部とを備えて前記回路基板を固定する回路基板固定装置であって、前記各クランプ部の一方には、前記先端部に開口部が位置するように配置されて給気および吸気の少なくとも一方を行う圧縮機構に接続される気体流路が配設され、前記検出部は、前記圧縮機構と前記気体流路との間に配設されて当該気体流路を流れる気体についての物理量を検出するセンサを備え、当該センサによって検出された前記物理量に基づいて前記クランプ状態を検出する。
【0009】
また、請求項2記載の回路基板固定装置は、請求項1記載の回路基板固定装置において、前記各クランプ部の前記各先端部には、互いに当接可能な当接面がそれぞれ形成され、前記気体流路は、前記一方のクランプ部の内部に設けられた通気孔で構成され、前記一方のクランプ部における前記当接面には、前記通気孔に繋がる前記開口部が形成され、前記両クランプ部の他方における前記当接面には、前記一方のクランプ部における前記当接面との当接状態において前記通気孔の前記開口部に繋がって当該通気孔を大気雰囲気中に連通させる連通口が形成されている。
【0010】
また、請求項3記載の回路基板固定装置は、請求項1または2記載の回路基板固定装置において、前記圧縮機構と前記センサとの間に配設されて前記気体流路の前記開口部が閉塞された状態において前記気体を通気させるリリーフ弁を備えている。
【0011】
また、請求項4記載の回路基板検査装置は、請求項1から3のいずれかに記載の回路基板固定装置と、当該回路基板固定装置によって固定されている前記回路基板に対して検査用プローブを接触させるプロービング装置と、前記検査用プローブを介して入力した電気信号に基づいて前記回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の回路基板固定装置および請求項4記載の回路基板検査装置によれば、圧縮機構に接続されると共に一対のクランプ部の一方の先端部に開口部が位置する気体流路をそのクランプ部に配設し、圧縮機構と通気孔との間に配設されたセンサによって検出された気体流路を流れる気体についての物理量に基づいてクランプ状態を検出することにより、クランプした回路基板を引っ張ったり、回路基板を押圧したりすることなく回路基板のクランプ状態を確実に検出することができる。したがって、この回路基板固定装置および回路基板検査装置によれば、回路基板に与えるストレスを十分に軽減しつつ、クランプ機構によるクランプ状態を確実に検出することができる。
【0013】
また、請求項2記載の回路基板固定装置および請求項4記載の回路基板検査装置によれば、一方のクランプ部の内部に設けられた通気孔で気体流路を構成すると共にそのクランプ部の当接面に通気孔に繋がる開口部を形成し、他方のクランプ部の当接面には、一方のクランプ部の当接面との当接状態において通気孔の開口部に繋がって通気孔を大気雰囲気中に連通させる連通口を形成したことにより、一方のクランプ部の外側に気体流路を設ける必要がないため、そのクランプ部を大形化させることなくクランプ状態を検出する機能をクランプ機構に付加することができる。
【0014】
また、請求項3記載の回路基板固定装置および請求項4記載の回路基板検査装置によれば、圧縮機構とセンサとの間に配設されて気体流路の開口部が閉塞された状態において気体を通気させるリリーフ弁を備えたことにより、開口部が閉塞されたときの気体流路内の圧力を低下させることができるため、気体流路内の圧力上昇に伴う気体の吐出力によってクランプ部の先端部が回路基板から浮き上がってクランプが解除される事態を確実に防止することができる。
【0015】
また、請求項4記載の回路基板検査装置によれば、上記の回路基板固定装置を備えたことにより、回路基板を固定したことを確実に検出することができるため、回路基板が固定されているか否かの確認ができない状態での検査の実行を確実に回避することができる。したがって、この回路基板検査装置によれば、検査の信頼性を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
【図2】回路基板固定装置2の構成を示す構成図である。
【図3】回路基板固定装置2の平面図である。
【図4】第1クランプ部41の先端部41aと第2クランプ部42の先端部42aとが離間している状態のクランプ機構14の斜視図である。
【図5】第1クランプ部41の先端部41aと第2クランプ部42の先端部42aとが近接している状態のクランプ機構14の斜視図である。
【図6】クランプ機構14の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る回路基板固定装置および回路基板検査装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
最初に、図1に示す回路基板検査装置1の構成について説明する。回路基板検査装置1は、同図に示すように、回路基板固定装置2、プロービング装置3および制御部4を備えて、回路基板100(図2,6参照)に対する電気的検査を実行可能に構成されている。この場合、回路基板100は、一例として、矩形に形成された回路基板本体の表面に図外の導体パターンが形成されて構成されている。
【0019】
回路基板固定装置2は、図2,3に示すように、基台11、梁部材12a,12b(以下、区別しないときには「梁部材12」ともいう)、接離機構13、クランプ機構14a〜14f(以下、区別しないときには「クランプ機構14」ともいう)、圧縮機構15、電磁弁16、流量センサ17およびリリーフ弁18を備えて、回路基板100を固定可能に構成されている。
【0020】
基台11は、図3に示すように、一例として、略長方形の板状に形成されている。また、基台11の中央部には、略矩形の開口部11aが形成されている。梁部材12は、全体として長尺の板状に形成されて、同図に示す基台11の第1方向Aとその長さ方向とが一致するようにして、スライド可能に基台11に配設されている。具体的には、梁部材12aは、同図に示す基台11の第2方向B(第1方向Aに直交する方向)に沿って基台11における開口部11aの縁部に配設されたレール21a,21b上を移動可能なスライダー22a,22bにその両端部が固定されている。また、梁部材12bは、レール21a,21b上を移動可能なスライダー22c,22dにその両端部が固定されている。
【0021】
接離機構13は、図3に示すように、モータ31、ベルト32a〜32c、回転軸33およびプーリ34a〜34fを備えて構成されている。モータ31は、制御部4の制御に従って駆動軸31aを回転させる。ベルト32aは、同図に示すように、モータ31の駆動軸31aに取り付けられているプーリ34aと回転軸33に取り付けられているプーリ34bとの間に架け渡されて、駆動軸31aのトルク(回転力)を回転軸33に伝達する。また、ベルト32b,32cは、タイミングベルト(歯付きベルト)であって、回転軸33に取り付けられているプーリ34cと基台11に取り付けられているプーリ34dとの間、および回転軸33に取り付けられているプーリ34eと基台11に取り付けられているプーリ34fとの間にそれぞれ架け渡されている。
【0022】
また、ベルト32b,32cは、上側(図3における紙面手前側)の所定部位がスライダー22a,22bに形成されているラック(図示せず)に噛合すると共に、下側(同図における紙面奥側)の所定部位がスライダー22c,22dに形成されているラックに噛合している。この構成により、回転軸33が矢印X1の向きに回転したときには、スライダー22a,22bが矢印B1の向きに移動させられると共に、スライダー22c,22dが矢印B2の向きに移動させられる。また、それとは逆に、回転軸33が矢印X2の向きに回転したときには、スライダー22a,22bが矢印B2の向きに移動させられると共に、スライダー22c,22dが矢印B1の向きに移動させられる。つまり、接離機構13は、スライダー22a,22bに両端部が固定されている梁部材12a、およびスライダー22c,22dに両端部が固定されている梁部材12bを、レール21a,21bの長さ方向における中央部を中心として互いに接離するように第2方向Bに沿って移動させる。
【0023】
クランプ機構14a〜14cは、図3に示すように、梁部材12aの長さ方向に沿って等間隔に配置されて、図6に示すように、回路基板100の各縁部102のうちの第1方向Aに沿った縁部102の一方(例えば、縁部102a)をクランプ可能に構成されている。また、クランプ機構14d〜14fは、図3に示すように、梁部材12bの長さ方向に沿って等間隔に配置されて、図6に示すように、回路基板100における第1方向Aに沿った縁部102の他方(例えば、縁部102b)をクランプ可能に構成されている。
【0024】
また、各クランプ機構14は、図4に示すように、第1クランプ部41、第2クランプ部42および駆動機構43を備えてそれぞれ構成されている。
【0025】
第1クランプ部41は、図4に示すように、平面視が略矩形(長方形状)の板状に形成されている。また、第1クランプ部41の先端部41aには、回路基板100の縁部102をクランプするクランプ時において縁部102の下面(一面)に当接する当接面51が形成されている。また、図4,5に示すように、当接面51には、第2クランプ部42の後述する当接面61との当接状態(図5に示す状態)において第2クランプ部42に形成されている後述する通気孔64の開口部64aに対向する部位(具体的には、第1クランプ部41の幅方向の中央部)に切り欠き51aが形成されている。この切り欠き51aは、第1クランプ部41の当接面51と第2クランプ部42の当接面61との当接状態において、通気孔64の開口部64aに繋がって通気孔64を大気雰囲気中に連通させる連通口(気体の逃げ口)として機能して、通気孔64中の空気(気体)を通気させる。さらに、第1クランプ部41には、図4に示すように、第2クランプ部42を支持する支持部52,52が配設されている。
【0026】
第2クランプ部42は、図4に示すように、側面視L字状の板状に形成されている。また、第2クランプ部42は、その先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aに対して接離するように回動可能に構成されている。具体的には、第2クランプ部42には、同図に示すように、突起部62,62が配設され、その突起部62,62と第1クランプ部41の支持部52,52とが支持軸63を介して連結されることにより、第1クランプ部41に対して回動することが可能となっている。
【0027】
また、図4,5に示すように、第2クランプ部42の先端部42aには、回路基板100の縁部102をクランプするクランプ時において縁部102の上面(他面)に当接する当接面61が形成されている。また、両図に示すように、第2クランプ部42の内部(第2クランプ部42を構成する板体の内部)には、気体流路としての通気孔64が形成されている。この場合、通気孔64は、当接面61における第2クランプ部42の幅方向の中央部の位置であってクランプ時において第1クランプ部41の切り欠き51aに対向する位置に開口部64aが形成されると共に、基端部42b側の端面65(図5参照)における第2クランプ部42の幅方向の中央部に開口部64bが形成され、両開口部64a,64bの間で空気(気体)の通気が可能となっている。さらに、当接面61における開口部64aの周囲には、オーリングなどのシール用部材66が取り付けられている。また、通気孔64における基端部側の開口部64bは、エアチューブ200(図2参照)を介して圧縮機構15に接続されている。
【0028】
駆動機構43は、エアシリンダで構成されて、第2クランプ部42の基端部42b側を上方向に押圧することにより、先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aに対して近接するように第2クランプ部42を回動させる。なお、第1クランプ部41と第2クランプ部42との間には、第2クランプ部42の基端部42b側に対する駆動機構43による押圧が停止している状態において、第2クランプ部42の基端部42b側を下方向(第1クランプ部41側)に引っ張ることにより、第2クランプ部42の先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aから離反するように第2クランプ部42を回動させるばね(図示せず)が配設されている。
【0029】
圧縮機構15は、エアチューブ200によって構成される気体供給経路を介してクランプ機構14の駆動機構43や第2クランプ部42の通気孔64に圧縮空気を供給する(給気を行う)。電磁弁16は、図2に示すように、エアチューブ200によって構成される気体供給経路内に配置されている。この場合、電磁弁16は、制御部4の制御に従って気体供給経路を開閉することにより、駆動機構43や通気孔64に対する圧縮空気の供給および供給停止を行う。
【0030】
流量センサ17は、通気孔64を流れる空気(気体)の流量(物理量の一例)を検出するセンサであって、図2に示すように、圧縮機構15と通気孔64との間(つまり、気体供給経路内)に配置されて、通気孔64を流れる空気(気体)の流量を検出して、流量に応じたレベル(電圧値)の検出信号(電圧信号)S1を出力する。リリーフ弁18は、同図に示すように、圧縮機構15と流量センサ17との間(より具体的には、電磁弁16と流量センサ17との間)に配設されて、通気孔64の開口部64aが閉塞された状態において空気を通気させる。
【0031】
プロービング装置3は、図1に示すように、回路基板100の導体パターンに接触させる検査用プローブ71と、制御部4の制御に従って検査用プローブ71を移動させるプロービング機構72とを備えて構成されている。
【0032】
制御部4は、処理部として機能すると共に、流量センサ17と共に検出部として機能し、クランプ機構14による回路基板100の縁部102のクランプ状態を検出する。この場合、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされているときには、第2クランプ部42の通気孔64の開口部64aが閉塞されるため、リリーフ弁18から圧縮空気が通気されて、流量センサ17を通る圧縮空気の流量が減少(または、圧縮空気の流れが停止)する結果、流量センサ17から出力される検出信号S1の電圧値が予め決められた基準値未満となる。したがって、制御部4は、流量センサ17から出力される検出信号S1の電圧値(つまり、流量センサ17によって検出された通気孔64を流れる気体についての物理量としての流量の値)が基準値以上のときには、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていることを検出する。
【0033】
これとは逆に、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていないときには、開口部64aが第1クランプ部41の切り欠き51aを介して大気雰囲気中に連通し、または第1クランプ部41の先端部41aと離間して開放されるため、リリーフ弁18から圧縮空気が通気されずに開口部64a開口部から吐出されて、流量センサ17を多くの圧縮空気が通る結果、流量センサ17から出力される検出信号S1の電圧値が基準値以上となる。したがって、制御部4は、検出信号S1の電圧値が基準値以上のときには、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていないことを検出する。
【0034】
また、制御部4は、電磁弁16を制御してクランプ機構14の駆動機構43や第2クランプ部42の通気孔64に対する圧縮空気の供給および供給停止を行う。また、制御部4は、プロービング装置3のプロービング機構72を制御することにより、検査用プローブ71を回路基板100の導体パターンに接触させる。さらに、制御部4は、検査部として機能し、検査用プローブ71を介して入力した電気信号S2に基づいて電気的検査を実行する。
【0035】
次に、回路基板検査装置1を用いて回路基板100を検査する方法について、添付図面を参照して説明する。なお、初期状態では、図4に示すように、各クランプ機構14における第2クランプ部42の先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aから離間しているものとする。
【0036】
まず、図外の操作部を操作して、回路基板100の大きさ等の各種設定値を入力する。次いで、制御部4が、モータ31を制御して、入力された設定値に応じた回転数だけ駆動軸31aを回転させる。続いて、図3に示すように、駆動軸31aのトルクがベルト32aを介して回転軸33に伝達されて回転軸33が回転し、これに伴ってベルト32b,32cが牽引されて、各スライダー22a〜22dおよび梁部材12a,12bが、回路基板100の大きさに対応する移動量だけ矢印B1または矢印B2の向きに移動させられる。次いで、図6に示すように、各クランプ機構14の第1クランプ部41における先端部41aの当接面51(図4参照)に、回路基板100における縁部102a,102bの下面(図6における紙面奥側の面)を当接させるようにして載置する。
【0037】
続いて、圧縮機構15を作動させて圧縮空気の供給を開始させる。次いで、操作部を操作して測定を開始させる。この際に、制御部4が、電磁弁16を制御して、エアチューブ200によって構成される気体供給経路に圧縮空気を供給させる。これより、各クランプ機構14の第2クランプ部42に形成されている通気孔64、および各クランプ機構14の駆動機構43に気体供給経路を通って圧縮空気が供給される。
【0038】
この状態では、図4に示すように、各クランプ機構14における第2クランプ部42の先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aから離間しているため、第2クランプ部42に形成されている通気孔64の開口部64aが開放されている。このため、通気孔64に供給された圧縮空気が、第2クランプ部42の基端部42b側の開口部64bから通気孔64内を通り、先端部42a側の開口部64aから吐出される。また、この状態では、気体供給経路内に配置されている流量センサ17を多くの圧縮空気が流れるため、流量センサ17がその空気の流量に応じた電圧値であって基準値以上の電圧値の検出信号S1を出力する。
【0039】
一方、各クランプ機構14の駆動機構43が圧縮空気の供給によって作動し、第2クランプ部42の基端部42b側を上方向に押圧する。これにより、第1クランプ部41の支持部52,52と第2クランプ部42の突起部62,62とを連結する支持軸63を中心として、第1クランプ部41の先端部41aに対して先端部42aが近接する向きに第2クランプ部42が回動する。続いて、第2クランプ部42の回動によって第1クランプ部41の先端部41a(回路基板100の縁部102)に対して第2クランプ部42の先端部42aが近接する。
【0040】
ここで、第1クランプ部41における先端部41aの当接面51に回路基板100の縁部102が確実に載置され、かつ第2クランプ部42の基端部42b側が駆動機構43によって十分な押圧力で押圧されているときには、先端部42aの当接面61が回路基板100における縁部102の上面に当接する。この際に、当接面61に形成されている通気孔64の開口部64aが閉塞されるため、開口部64aからの圧縮空気の吐出が停止する。これにより、各クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされて、回路基板100が回路基板固定装置2によって固定される。
【0041】
また、この状態では、気体供給経路内に配置されている流量センサ17を通る圧縮空気の流量が減少(または、圧縮空気の流れが停止)するため、流量センサ17は、それに応じた電圧値であって基準値未満の電圧値の検出信号S1を出力する。また、通気孔64の開口部64aの閉塞によってエアチューブ200内(気体供給経路内)の圧力が上昇するため、電磁弁16と流量センサ17との間に配設されているリリーフ弁18が作動して(開放して)、圧縮機構15から供給される圧縮空気がリリーフ弁18から気体供給経路外に放出される。
【0042】
次いで、制御部4は、電磁弁16に対して気体供給経路を開放させた時点から予め決められた時間(第2クランプ部42の回動が完了するのに必要な時間)が経過した時点で、流量センサ17から出力された検出信号S1に基づき、クランプ機構14によるクランプ状態を検出する。この場合、上記したように、この時点において通気孔64の開口部64aが閉塞されて、これによって基準値未満の電圧値の検出信号S1が流量センサ17から出力されているため、制御部4は、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていることを検出する。
【0043】
続いて、制御部4は、プロービング装置3のプロービング機構72を制御することにより、検査用プローブ71を移動させて回路基板100における検査対象の導体パターンに接触させる。この場合、回路基板固定装置2によって回路基板100が確実に固定されているため、検査用プローブ71と導体パターンとの位置ずれが確実に防止されると共に、導体パターンに対する検査用プローブ71の押圧力によって回路基板100が移動する事態が確実に防止される。このため、この回路基板検査装置1では、検査対象の導体パターンに検査用プローブ71を確実に接触させることが可能となっている。
【0044】
次いで、制御部4は、検査用プローブ71を介して入力した電気信号S2に基づいて電気的検査を実行する。この後、回路基板100についての検査を終了したときには、制御部4は、電磁弁16を制御して、圧縮空気の供給を停止させる。これより、各クランプ機構14の通気孔64および駆動機構43に対する圧縮空気の供給が停止する。続いて、駆動機構43に対する圧縮空気の供給停止に伴い、第1クランプ部41と第2クランプ部42との間に配設されている図外のばねにより、第2クランプ部42の基端部42b側が下方向に引っ張られ、これによって先端部42aが第1クランプ部41の先端部41aから離反するようにして第2クランプ部42が回動させられて、クランプ機構14が初期状態に復帰する。
【0045】
一方、例えば、クランプ機構14によるクランプ時において何らかの原因によって第2クランプ部42が駆動機構43によって十分な押圧力で押圧されていないときには、第2クランプ部42における先端部42aの当接面61と回路基板100における縁部102の上面とが完全に当接しないため、当接面61と縁部102の上面との間に隙間が生じることとなる。この状態では、通気孔64に供給される圧縮空気がこの隙間から吐出するため、流量センサ17を通る圧縮空気の流量が減少しないため(または、減少量が僅かなため)、流量センサ17は、それに応じた電圧値であって基準値以上の電圧値の検出信号S1を出力する。この際には、制御部4は、流量センサ17から出力された検出信号S1に基づき、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていないことを検出する。この場合、制御部4は、検査を一時停止(または、中止)すると共に、例えば、クランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていない旨を報知する報知画面を図外の表示部に表示させる。
【0046】
また、第1クランプ部41に回路基板100を載置する際に、回路基板100の縁部102が第1クランプ部41の当接面51から外れていたときには、クランプ機構14によるクランプ時において、図5に示すように、第2クランプ部42の当接面61と第1クランプ部41の当接面51とが当接する。この場合、この回路基板固定装置2では第1クランプ部41の当接面51に切り欠き51aが形成されているため、通気孔64の開口部64aがこの切り欠き51aに繋がって、通気孔64が大気雰囲気中に連通した状態となる。このため、この状態においても、通気孔64に供給される圧縮空気がこの切り欠き51aを介して吐出して流量センサ17を通る圧縮空気の流量が減少しないため(または、減少量が僅かなため)、流量センサ17はそれに応じた電圧値であって基準値以上の電圧値の検出信号S1を出力し、制御部4は流量センサ17から出力された検出信号S1に基づいてクランプ機構14によって回路基板100の縁部102がクランプされていないことを検出する。したがって、この回路基板固定装置2では、回路基板100が固定されていない状態で検査が行われる事態を確実に防止することが可能となっている。
【0047】
このように、この回路基板固定装置2および回路基板検査装置1によれば、圧縮機構15に接続されると共に第2クランプ部42の先端部42aに開口部64aが位置する通気孔64を第2クランプ部42に形成し、圧縮機構15と通気孔64との間に配設された流量センサ17によって検出された通気孔64を流れる空気の流量に基づいて制御部4がクランプ状態を検出することにより、クランプした回路基板100の縁部を引っ張ったり、回路基板100の縁部を押圧したりすることなく回路基板100をクランプしているか否か(クランプ状態)を確実に検出することができる。したがって、この回路基板固定装置2および回路基板検査装置1によれば、回路基板100に与えるストレスを十分に軽減しつつ、クランプ機構14によるクランプ状態を確実に検出することができる。
【0048】
また、この回路基板固定装置2および回路基板検査装置1によれば、第2クランプ部42の当接面61に開口部64aが形成されるようにして気体流路としての通気孔64を第2クランプ部42の内部に設けると共に、第1クランプ部41の当接面51に切り欠き51aを形成したことにより、第2クランプ部42の外側に気体流路を設ける必要がないため、第2クランプ部42を大形化させることなくクランプ状態を検出する機能をクランプ機構14に付加することができる。
【0049】
また、この回路基板固定装置2および回路基板検査装置1によれば、圧縮機構15と流量センサ17との間に配設されて、通気孔64の開口部64aが閉塞された状態において気体を通気させるリリーフ弁18を備えたことにより、開口部64aが閉塞されたときの通気孔64内の圧力を低下させることができるため、通気孔64内の圧力上昇に伴う圧縮空気の吐出力によって第2クランプ部42の先端部42aが回路基板100から浮き上がってクランプが解除される事態を確実に防止することができる。
【0050】
また、この回路基板検査装置1によれば、上記の回路基板固定装置2を備えたことにより、回路基板100を固定したことを確実に検出することができるため、回路基板100が固定されているか否かの確認ができない状態での検査の実行を確実に回避することができる。したがって、この回路基板検査装置1によれば、検査の信頼性を十分に向上させることができる。
【0051】
なお、第2クランプ部42に気体流路としての通気孔64を形成した例について上記したが、第1クランプ部41に気体流路としての通気孔を形成する構成を採用することもできる。この場合、上記した構成において第1クランプ部41の当接面51に形成した切り欠き51aと同様の切り欠きを第2クランプ部42に形成することで、上記した構成と同様の効果を実現することができる。
【0052】
また、気体流路としての通気孔64を第2クランプ部42の内部に形成する構成に代えて、気体流路としてのエアチューブを第2クランプ部42の先端部42a側に取り付ける(配設する)構成を採用することもできる。この場合、エアチューブの先端の開口部を第2クランプ部42における先端部42aの当接面61と面一となるように配置するのが好ましい。また、この構成では、回路基板100をクランプすることなく各クランプ部41,42の先端部41a,42aが近接した状態において、エアチューブの先端の開口部の近傍に第1クランプ部41を含む遮蔽物が存在しないようにエアチューブを配置することで、第1クランプ部41の当接面51における切り欠き51aの形成を省略することができる。
【0053】
また、圧縮空気を供給する(給気を行う)圧縮機構15を用いる例について上記したが、空気を吸引する(吸気を行う)圧縮機構を用いる構成を採用することもできる。この構成では、圧縮機構が作動することによって通気孔64の開口部64aが閉塞されていない状態では、開口部64aから空気が吸引されて通気孔64内を流れ、開口部64aが閉塞された状態では、開口部64aからの空気の吸引が停止するため、上記の構成と同様にして、気体流路(通気孔64)を流れる空気の流量を検出することにより、クランプ状態を確実に検出することができる。
【0054】
また、気体流路(通気孔64)を流れる空気についての物理量としての流量を検出する流量センサ17を用いる構成例について上記したが、気体流路を流れる空気の流速を検出するセンサを用いる構成を採用することもできる。また、空気以外の気体(例えば、窒素ガスや二酸化炭素)を気体流路に給気する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 回路基板検査装置
2 回路基板固定装置
3 プロービング装置
4 制御部
14a〜14f クランプ機構
15 圧縮機構
17 流量センサ
18 リリーフ弁
41 第1クランプ部
41a,42a 先端部
42 第2クランプ部
51,61 当接面
51a 切り欠き
64 通気孔
64a 開口部
71 検査用プローブ
100 回路基板
102,102a,102b 縁部
200 エアチューブ
S1 検出信号
S2 電気信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の先端部が互いに接離可能に構成された一対のクランプ部を有して当該各先端部によって回路基板をクランプするクランプ機構と、当該クランプ機構による前記回路基板のクランプ状態を検出する検出部とを備えて前記回路基板を固定する回路基板固定装置であって、
前記各クランプ部の一方には、前記先端部に開口部が位置するように配置されて給気および吸気の少なくとも一方を行う圧縮機構に接続される気体流路が配設され、
前記検出部は、前記圧縮機構と前記気体流路との間に配設されて当該気体流路を流れる気体についての物理量を検出するセンサを備え、当該センサによって検出された前記物理量に基づいて前記クランプ状態を検出する回路基板固定装置。
【請求項2】
前記各クランプ部の前記各先端部には、互いに当接可能な当接面がそれぞれ形成され、
前記気体流路は、前記一方のクランプ部の内部に設けられた通気孔で構成され、
前記一方のクランプ部における前記当接面には、前記通気孔に繋がる前記開口部が形成され、
前記両クランプ部の他方における前記当接面には、前記一方のクランプ部における前記当接面との当接状態において前記通気孔の前記開口部に繋がって当該通気孔を大気雰囲気中に連通させる連通口が形成されている請求項1記載の回路基板固定装置。
【請求項3】
前記圧縮機構と前記センサとの間に配設されて前記気体流路の前記開口部が閉塞された状態において前記気体を通気させるリリーフ弁を備えている請求項1または2記載の回路基板固定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の回路基板固定装置と、当該回路基板固定装置によって固定されている前記回路基板に対して検査用プローブを接触させるプロービング装置と、前記検査用プローブを介して入力した電気信号に基づいて前記回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている回路基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−181589(P2011−181589A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42376(P2010−42376)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】