説明

回路部品の冷却装置および電子機器

【課題】本発明は、回路部品の熱を効率良くヒートシンクに逃すことができる冷却装置の提供を目的とする。
【解決手段】 冷却装置25は、発熱する半導体パッケージ18に熱的に接続されたヒートシンク26を有している。ヒートシンクは、半導体パッケージに近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に設置された受熱ブロック29を有し、この受熱ブロックは、常に圧縮コイルばね50介して半導体パッケージに近づく方向に付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体パッケージのような回路部品の放熱を促進させる冷却装置、およびこの冷却装置を搭載した電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】ブック形のポータブルコンピュータや移動体情報機器に代表される携帯形の電子機器は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するためのMPU:microprocessing unitを備えている。この種のMPUは、処理速度の高速化や多機能化に伴って消費電力が増加の一途を辿り、それ故、動作中の発熱量もこれに比例して急速に増大する傾向にある。
【0003】そのため、発熱量の大きなMPUをポータブルコンピュータの筐体に収容するに当っては、この筐体の内部でのMPUの放熱性を高める必要があり、それ故、ヒートシンクや電動式のファンユニットのようなMPU専用の冷却手段が必要不可欠な存在となりつつある。
【0004】従来のヒートシンクは、アルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成されている。ヒートシンクは、MPUが実装された回路基板にリジッドに固定されており、このヒートシンクの受熱部にMPUが熱的に接続されている。この際、ヒートシンクの受熱部とMPUとの間に隙間が素材すると、この隙間がMPUから受熱部への熱伝達を妨げる一種の断熱層となるので、従来では、受熱部とMPUとの間に熱伝導性のグリスを充填したり、あるいは熱伝導性を有するゴム製の伝熱シートを介在させることで、受熱部とMPUとの密着性を高めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、パーソナルコンピュータ用のMPUとしては、一般に半導体パッケージが用いられている。この種の半導体パッケージは、回路基板に実装した状態において、この回路基板に対する実装高さが±0.25mmの範囲でばらつくことがあり得る。また、ヒートシンクにしても金属材料の射出成形品にて構成されているので、その受熱部を含む各部に寸法公差が生じることがあり、このヒートシンクを回路基板に取り付けた状態において、受熱部から回路基板までの寸法にばらつきが生じることがあり得る。
【0006】このため、従来では、MPUと受熱部との間に伝熱シートを介在させるに当り、この伝熱シートの厚みを寸法公差等によって生じる隙間の最大値を上回るような値に設定し、この肉厚な伝熱シートをMPUと受熱部との間で弾性変形させることにより、MPUの実装高さのばらつきやヒートシンクの寸法公差を吸収している。
【0007】ところが、伝熱シートのような柔軟なゴム状弾性体は、一般的に密度が小さく、金属材料に比べて熱伝導性能が低いので、肉厚な伝熱シートを用いてMPUの実装高さのばらつきやヒートシンクの寸法公差を吸収する従来の構成では、この伝熱シートの存在によって逆にMPUから受熱部への熱伝導が妨げられる虞があり得る。
【0008】このため、MPUにヒートシンクを熱的に接続したにも拘わらず、所望の冷却効果を充分に発揮させることができなくなり、この点において一歩改善の余地が残されている。
【0009】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、回路部品と受熱ブロックとの密着性を高めて、回路部品の熱を効率良く放出することができる冷却装置および電子機器を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る冷却装置は、発熱する回路部品に熱的に接続されたヒートシンクを備えている。そして、このヒートシンクは、上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に設置された受熱ブロックを有し、この受熱ブロックは、常に弾性体を介して上記回路部品に近づく方向に付勢されていることを特徴としている。
【0011】また、本発明に係る電子機器は、筐体と;この筐体の内部に収容された発熱する回路部品と;上記筐体の内部に収容され、上記回路部品に熱的に接続されたヒートシンクと;を具備している。そして、上記ヒートシンクは、上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に設置された受熱ブロックを有し、この受熱ブロックは、常に弾性体を介して上記回路部品に近づく方向に付勢されていることを特徴としている。
【0012】このような構成よれば、ヒートシンクの受熱ブロックは、回路部品に対し浮動的に設置されているので、回路部品の実装高さにばらつきが生じたり、あるいは受熱ブロックに寸法公差が生じたとしても、この受熱ブロックが移動することで実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する。
【0013】しかも、受熱ブロックは、常に回路部品に押し付けようとする力を受けるので、これら受熱ブロックと回路部品との密着性が良好となる。このため、受熱ブロックと回路部品との間に伝熱シートを介在させるにしても、この伝熱シートに実装高さのばらつきや寸法公差を吸収する機能を付加する必要はなく、この伝熱シートを必要最小限度まで薄くすることができる。
【0014】したがって、回路部品が発熱した場合に、この回路部品の熱を効率良く受熱ブロックに伝えることができ、回路部品の冷却効率を高めることができる。
【0015】上記目的を達成するため、本発明に係る冷却装置は、発熱する回路部品に熱的に接続された受熱ブロックと、この受熱ブロックを上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に支持するベースと、上記受熱ブロックを回路部品に近づく方向に付勢する弾性体と、を有するヒートシンクと;このヒートシンクのベースに設置され、上記受熱ブロックに冷却風を導くファンユニットと;を備えていることを特徴としている。
【0016】このような構成によれば、ヒートシンクの受熱ブロックは、回路部品に対し浮動的に設置されているので、回路部品の実装高さにばらつきが生じたり、あるいは受熱ブロックに寸法公差が生じたとしても、この受熱ブロックが移動することで実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する。
【0017】しかも、受熱ブロックは、常に回路部品に押し付けようとする力を受けるので、これら受熱ブロックと回路部品との密着性が良好となる。このため、受熱ブロックと回路部品との間に伝熱シートを介在させるにしても、この伝熱シートに実装高さのばらつきや寸法公差を吸収する機能を付加する必要はなく、この伝熱シートを必要最小限度まで薄くすることができる。したがって、回路部品が発熱した場合に、この回路部品の熱を効率良く受熱ブロックに伝えることができる。
【0018】そして、ベースに設置されたファンユニットが駆動されると、回路部品の熱が充分に伝えられた受熱ブロックに冷却風が導かれる。このため、受熱ブロックを空気を媒体とする強制対流によって直接冷却することができ、受熱ブロックに伝えられた回路部品の熱を効率良くヒートシンクの外方に放出することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下本発明の第1の実施の形態をポータブルコンピュータに適用した図1ないし図8にもとづいて説明する。
【0020】図1は、電子機器としてのブック形のポータブルコンピュータ1を開示している。ポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2と、このコンピュータ本体2に支持されたディスプレイユニット3とを備えている。
【0021】コンピュータ本体2は、筐体4を有している。筐体4は、底壁4a、上壁4b、左右の側壁4cおよび前壁4dを有する偏平な箱状をなしており、その左側の側壁4cの後端部に排気口5が開口されている。
【0022】筐体4の上壁4bは、パームレスト6とキーボード装着口7とを有している。パームレスト6は、上壁4bの前半部において筐体4の幅方向に沿って延びている。キーボード装着口7は、パームレスト6の後方に位置されており、このキーボード装着口7にキーボード8が取り付けられている。
【0023】筐体4の上壁4bは、上向きに突出する一対のディスプレイ支持部10a,10bを有している。ディスプレイ支持部10a,10bは、上壁4bの後端部において筐体4の幅方向に互いに離間して配置されている。
【0024】ディスプレイユニット3は、偏平な箱状のディスプレイハウジング11と、このディスプレイハウジング11に収容された液晶表示装置12とを有している。ディスプレイハウジング11は、表示用開口部13が形成された前面を有し、この表示用開口部13を通じて液晶表示装置12の表示画面12aが外方に露出されている。
【0025】ディスプレイハウジング11は、脚部14を有している。脚部14は、ディスプレイ支持部10a,10bの間に介在されているとともに、図示しないヒンジ装置を介して筐体4に回動可能に支持されている。このため、ディスプレイユニット3は、パームレスト6やキーボード8を上方から覆うように倒される閉じ位置と、パームレスト6、キーボード8および表示画面12aを露出させる開き位置とに亘って回動し得るようになっている。
【0026】図2や図7に示すように、筐体4の内部には回路基板16が収容されている。回路基板16は、筐体4の底壁4aにねじ止めされて、この底壁4aと平行に配置されている。回路基板16は、第1の面としての上面16aと、第2の面としての下面16bとを有している。この回路基板16の上面16aの後端部には、回路部品としてのBGA形の半導体パッケージ18が実装されている。
【0027】半導体パッケージ18は、マトリクス状に並べられた多数の半田ボール19を有するベース基板20と、このベース基板20に実装されたICチップ21とを有している。ICチップ21は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するため、動作中の消費電力が大きくなっており、それに伴いICチップ21の放熱量も冷却を必要とする程に大きなものとなっている。そして、この半導体パッケージ18は、上記半田ボール19を介して回路基板16の上面16aに直接半田付けされており、上記筐体4の後端左側部に位置されている。
【0028】回路基板16の上面16aには、半導体パッケージ18の冷却を促進させるための冷却装置25が取り付けられている。冷却装置25は、図3や図4に見られるように、ヒートシンク26と、電動式のファンユニット27とを備えている。
【0029】ヒートシンク26は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料を射出成形することで構成されている。このヒートシンク26は、ベース28と、このベース28に支持された受熱ブロック29とを備えている。ベース28は、筐体4の幅方向に延びる細長い板状をなしており、このベース28の長手方向に沿う一端部には、図5や図7に示す通孔30が開口されている。通孔30は、半導体パッケージ18よりも大きな開口形状を有している。
【0030】図5に最も良く示されるように、ベース28は、一対のガイド部31a,31bと、ねじ孔32を有する三つの支持部33a〜33cとを有している。これらガイド部31a,31bおよび支持部33a〜33cは、通孔30の開口縁部に位置されている。ガイド部31a,31bは、ベース28の上面から上向きに突出する円盤状をなしており、通孔30を挟んで互いに向かい合っている。支持部33a〜33cは、ガイド部31a,31bに隣接した位置において、通孔30の周方向に間隔を存して配置されており、これら支持部33a〜33cにしてもベース28の上面から僅かに上向きに突出する円盤状をなしている。
【0031】ベース28の周縁部には、複数の支持脚35が一体に形成されている。これら支持脚35は、夫々図示しないねじを介して回路基板16の上面16aに固定されている。このため、ベース28は、筐体4の後端左側部において回路基板16と平行に配置されており、このベース28の通孔30の内側に半導体パッケージ18が入り込んでいる。
【0032】また、ベース28の一端部には、ファン取り付け部36が一体に形成されている。ファン取り付け部36は、通孔30に隣接した位置において、ベース28の上方に向けて張り出すとともに、上記筐体4の側壁4cの排気口5と向かい合っている。
【0033】なお、ベース28の上面には、多数の柱状の冷却フィン37が一体に形成されており、これら冷却フィン37は、上記ファン取り付け部36とは通孔30を挟んだ反対側に位置されている。
【0034】図5に示すように、上記受熱ブロック29は、ベース28の通孔30を上方から覆うような大きさを有する平坦な板状をなしている。この受熱ブロック29は、上面39aおよび下面39bを有し、この下面39bがベース28の通孔30と向かい合っている。下面39bの略中央部には、下向きに僅かに張り出す凸部40が形成されている。凸部40は、通孔30の内側に位置されており、この凸部40の下端は、上記半導体パッケージ18のICチップ21と対向し合う平坦な受熱面40aをなしている。
【0035】また、受熱ブロック29は、一対のガイド孔42a,42bと、三つの取り付け座部43a〜43cとを有している。ガイド孔42a,42bおよび取り付け座部43a〜43cは、受熱面40の周囲に位置されており、これらガイド孔42a,42b内に上記ベース28のガイド部31a,31bが上下方向にスライド可能に嵌合されて、受熱ブロック29とベース28との位置決めがなされている。取り付け座部43a〜43cは、受熱ブロック29の上面に露出された平坦なばね受け部44を有している。これらばね受け部44の中央には、嵌合孔45が開口されており、これら嵌合孔45は、上記ベース28の支持部33a〜33cと向かい合っている。
【0036】なお、受熱ブロック29は、その上面39aから上向きに突出する多数の軸状の放熱フィン46を有し、これら放熱フィン46は、取り付け座部43a〜43cを避けるようにして上面39aの略全面に亘って配置されている。
【0037】図2ないし図6に示すように、受熱ブロック29は、三つの取り付けねじ47を介してベース28に支持されている。取り付けねじ47は、図8に拡大して示すように、円柱状の軸部48aと、この軸部48aの一端に同軸状に連なる雄ねじ部48bと、上記軸部48bの他端に連なるフランジ部48cとを有している。軸部48aは、受熱ブロック29の上方から嵌合孔45にスライド可能に挿通されており、この軸部48aに連なる雄ねじ部48bがベース28のねじ孔32にねじ込まれている。そのため、受熱ブロック29は、軸部48aをガイドとして半導体パッケージ18に近づいたり遠ざかる方向に上下に移動可能となっており、上記ベース28に対し浮動的に支持されている。
【0038】取り付けねじ47のフランジ部48cは、軸部48aの径方向外側に張り出しており、受熱ブロック29のばね受け部44と向かい合っている。これらフランジ部48cと受熱ブロック29のばね受け部44との間には、弾性体としての圧縮コイルばね50が圧縮状態で介在されており、この圧縮コイルばね50は、軸部48aの外周に装着されている。このため、受熱ブロック29は、常に圧縮コイルばね50を介して半導体パッケージ18に近づく方向に弾性的に付勢されている。
【0039】図7や図8に示すように、受熱ブロック29の受熱面40aと半導体パッケージ18のICチップ21との間には、伝熱シート51が介在されている。伝熱シート51は、例えばシリコーン樹脂にアルミナを添加してなるゴム状の弾性体であり、熱伝導性を有している。伝熱シート51は、受熱面40aとICチップ21との間で弾性的に挟み込まれており、この伝熱シート51を介して受熱面40aとICチップ21とが熱的に接続されている。
【0040】図4に示すように、上記ファンユニット27は、ファンケーシング55と、このファンケーシング55に偏平モータ(図示せず)を介して支持されたロータ56とを有している。ファンケーシング55は、アルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成され、上記ベース28のファン取り付け部36にねじ止めされている。そして、このファンユニット27は、ロータ56の回転軸線O1を水平にした縦置きの姿勢でベース28に一体的に組み込まれており、そのロータ56が上記筐体4の排気口5と向かい合っている。
【0041】このため、ファンユニット27のロータ56が回転駆動されると、筐体4の内部の空気が冷却風となってヒートシンク26に向けて流れ、この冷却風は、ヒートシンク26を冷却した後、排気口5を通じて筐体4の外方に排出されるようになっている。
【0042】図7および図8に示すように、上記回路基板16の下面16bには、金属製の補強板57が取り付けられている。補強板57は、半導体パッケージ18のベース基板20の外周部に沿うような枠状をなしている。そして、この補強板57は、半導体パッケージ18の実装部に対応する位置に設置されており、上記受熱ブロック29をICチップ21に向けて押圧したことに伴う回路基板16の反りや撓みを防止している。
【0043】このような構成のポータブルコンピュータ1によると、半導体パッケージ18の放熱を促進させるヒートシンク26は、半導体パッケージ18と共に回路基板16に固定されたベース28と、このベース28に浮動的に支持された受熱ブロック29とで構成され、この受熱ブロック29は、圧縮コイルばね50を介して常に半導体パッケージ18のICチップ21に近づく方向に弾性的に付勢されている。
【0044】このため、回路基板16上での半導体パッケージ18の実装高さにばらつきが生じたり、あるいはベース28や受熱ブロック29に寸法公差が生じたとしても、受熱ブロック29がガイド部31a,31bや取り付けねじ47の軸部48aをガイドとして上下にスライドすることで実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する。
【0045】しかも、受熱ブロック29は、常に圧縮コイルばね50を介して半導体パッケージ18のICチップ21に押し付けようとする力を受けているので、受熱ブロック29の受熱面40aとICチップ21との密着性を高めることができ、それ故、受熱面40aとICチップ21との間に伝熱シート51を介在させるにしても、この伝熱シート51に実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する機能を付加する必要はない。このため、伝熱シート51は、ICチップ21の熱を受熱面40aの全面に亘って分散し得る程度の肉厚を有していれば良いことになり、この伝熱シート51を必要最小限度まで薄くすることができる。
【0046】したがって、ICチップ21から受熱ブロック29の受熱面40aへの熱伝導が効率良く行われる。
【0047】また、受熱ブロック29の嵌合孔45には、取り付けねじ47の軸部48aが嵌合されているので、受熱ブロック29に伝えられたICチップ21の熱は、取り付けねじ47の軸部48aから雄ねじ部48bを通じてベース28の支持部33a〜33cに逃され、ここからベース28に拡散される。このため、ICチップ21の熱は、受熱ブロック29からベース28への拡散による自然空冷によって放出され、筐体4の内部での放熱面積を充分に確保することができる。
【0048】一方、ポータブルコンピュータ1の使用中に、ICチップ21の温度が予め規定された値を上回ると、ファンユニット27のロータ56が回転駆動される。このロータ56の回転により、筐体4の内部にファンユニット27に向かう冷却風の流れが形成され、この冷却風の流れ経路にヒートシンク26のベース28や受熱ブロック29が位置される。このため、ICチップ21の熱を受ける受熱ブロック29が空気を媒体とする強制対流により強制的に冷却されることになり、この受熱ブロック29に充分に伝えられたICチップ21の熱は、空気流に乗じて排気口5から放出される。
【0049】加えて、ベース28および受熱ブロック29は、夫々冷却フィン37,46を有するので、筐体4の内部でのヒートシンク26の放熱面積が増大するのは勿論のこと、このヒートシンク26と冷却風との接触面積が増大する。よって、受熱ブロック29に伝えられたICチップ21の熱を効率良く放出することができ、充分な冷却能力を確保することができる。
【0050】また、上記構成によると、回路基板16の下面には、半導体パッケージ18の実装部に対応する位置に金属製の補強板57が取り付けられているので、受熱ブロック29をICチップ21に押し付けたことに伴う回路基板16の反りや撓みを防止することができる。このため、BGA形の半導体パッケージ18が回路基板19に向けて押圧されるにも拘わらず、特定の半田ボール19と回路基板16との半田接合部に応力が加わるのを防止でき、電気的接続の信頼性が向上する。
【0051】なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、図9に本発明の第2の実施の形態を示す。
【0052】この第2の実施の形態は、半導体パッケージ18の放熱を促進させる冷却装置61の構成が上記第1の実施の形態と相違しており、それ以外のポータブルコンピュータ1の基本的な構成は第1の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0053】図9の(A)に示すように、冷却装置61は、ヒートシンク62と電動式のファンユニット63とを備えている。ヒートシンク62は、ベースプレート64と、このベースプレート64に支持された受熱ブロック65とで構成されている。
【0054】ベースプレート64は、平坦な長方形の板状をなしており、回路基板16の上方に配置されている。このベースプレート64は、回路基板16の上面16aに複数の円柱状のスペーサ66を介して支持されている。スペーサ66は、熱伝導性を有する金属材料にて構成され、これらスペーサ66の下端には、図9の(B)に示すような雄ねじ部67が同軸状に形成されている。雄ねじ部67は、金属製の補強板70を介して回路基板16に結合されている。
【0055】すなわち、補強板70は、回路基板16の下面16bに重ね合わされて半導体パッケージ18の実装部分を下方から補強している。この補強板70の外周部には、上向きに突出する複数の円筒部71が形成されている。円筒部71は、ベースプレート64にバーリング加工を施すことにより構成され、これら円筒部71の内面に雌ねじ部72が形成されている。
【0056】補強板70の円筒部71は、回路基板16に開けた通孔73に嵌合されており、この嵌合により、回路基板16と補強板70との位置決めがなされている。通孔73は、回路基板16を厚み方向に貫通して回路基板16の上面16aに開口されており、この通孔73内にスペーサ66の雄ねじ部67が上方から挿入されている。そして、スペーサ66の雄ねじ部67は、円筒部71の雌ねじ部72にねじ込まれている。このため、スペーサ66と補強板70とは、回路基板16を挟み込んだ状態で互いに結合されており、この回路基板16の上面16aからスペーサ66が上向きに突出されている。
【0057】上記ベースプレート64は、スペーサ66の上端に突き合わされるとともに、このスペーサ66にねじ74を介して固定されている。このベースプレート64は、第1の取り付け部76と第2の取り付け部77とを備えており、これら取り付け部76,77は、ベースプレート64の下面において互いに並べて配置されている。第1の取り付け部76は、回路基板16の上方に位置されて半導体パッケージ18と向かい合っている。第2の取り付け部77は、回路基板16の側方に突出されて筐体4の底壁4aと向かい合っている。
【0058】上記受熱ブロック65は、アルミニウム合金の射出成形品にて構成されている。受熱ブロック65は、半導体パッケージ18を上方から覆うような大きさを有する板状をなしており、この受熱ブロック65の下面の中央部に下向きに僅かに張り出す凸部78が形成されている。凸部78の下端は、半導体パッケージ18のICチップ21と対向し合う平坦な受熱面78aをなしている。
【0059】また、受熱ブロック65は、複数のガイド孔79と複数の放熱フィン80とを有している。ガイド孔79は、凸部78の周囲に位置されており、これらガイド孔79の開口縁部には、上向きに延びる円筒状のガイド壁81が形成されている。放熱フィン80は、受熱ブロック65の上面から上向きに突出されている。これら放熱フィン80は、凸部78の反対側に位置されている。
【0060】受熱ブロック65は、複数の取り付けねじ47を介してベースプレート64の第1の取り付け部76に支持されている。取り付けねじ47の軸部48aは、受熱ブロック65の下方からガイド孔79にスライド可能に挿通されており、この軸部48aに連なる雄ねじ部48bがベースプレート64の第1の取り付け部76にねじ込まれている。そのため、受熱ブロック65は、軸部48aをガイドとして半導体パッケージ18に近づいたり遠ざかる方向に上下に移動可能となっており、ベースプレート64に対し浮動的に支持されている。
【0061】受熱ブロック65の外周部とベースプレート64の下面との間には、圧縮コイルばね50が圧縮状態で介在されており、この圧縮コイルばね50は、軸部48aの外周に装着されている。このため、受熱ブロック65は、常に圧縮コイルばね50を介して半導体パッケージ18に近づく方向に弾性的に付勢されており、その凸部78の受熱面78aが伝熱シート51を介してICチップ19に熱的に接続されている。
【0062】なお、上記取り付けねじ47のフランジ部48cは、受熱ブロック65の外周部の下面と向かい合っており、軸部48aからの受熱ブロック65の脱落を阻止するストッパとして機能している。
【0063】図9の(A)に示すように、上記ファンユニット63は、ベースプレート64の第2の取り付け部77に支持されている。ファンユニット63は、偏平なファンケーシング85と、このファンケーシング85に偏平モータ(図示せず)を介して支持されたロータ86とを備えている。ファンケーシング85は、ロータ86を取り囲むような枠状をなしており、このファンケーシング85の一端に吸込口87が開口されているとともに、ファンケーシング85の周壁に排出口88が開口されている。
【0064】このファンユニット63は、ロータ86の回転軸線O1を垂直にした横置きの姿勢でベースプレート64の第2の取り付け部77に一体的に組み込まれている。そのため、ファンユニット63は、筐体4の内部においてベースプレート64に沿うように配置されており、その排出口88が上記受熱ブロック65と向かい合っている。
【0065】このような構成によると、ヒートシンク62の受熱ブロック65は、回路基板16上の半導体パッケージ18に対し近づいたり遠ざかる方向に上下に移動可能に浮動的に支持されているので、半導体パッケージ18の実装高さにばらつきが生じたり、あるいは受熱ブロック65に寸法公差が生じたとしても、受熱ブロック65が取り付けねじ47の軸部48aをガイドとして上下にスライドすることで実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する。
【0066】しかも、受熱ブロック29は、常に圧縮コイルばね50を介して半導体パッケージ18のICチップ21に押し付けようとする力を受けているので、受熱ブロック65の受熱面78aとICチップ21との密着性が高まる。
【0067】したがって、受熱面78aとICチップ21との間に伝熱シート51を介在させるにしても、この伝熱シート51に実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する機能を付加する必要はなく、上記第1の実施の形態と同様に伝熱シート51を必要最小限度まで薄くすることができる。
【0068】よって、ICチップ21から受熱ブロック65への熱伝導を効率良く行なうことができる。
【0069】また、受熱ブロック65に伝えられたICチップ21の熱は、取り付けねじ47の軸部48aからねじ部48bを通じてベースプレート64の第2の取り付け部77に逃され、ここからベースプレート64全体に拡散される。このため、ICチップ21の熱は、受熱ブロック65からベースプレート64への拡散による自然空冷によって放出され、筐体4の内部での放熱面積を充分に確保することができる。
【0070】一方、ポータブルコンピュータ1の使用中に、ICチップ21の温度が予め規定された値を上回ると、ファンユニット63のロータ86が回転駆動される。このロータ86の回転により、筐体4の内部の空気がファンケーシング85の吸込口87に吸い込まれるとともに、この吸い込まれた空気は冷却風となって排出口88から受熱ブロック65に向けて吐出される。
【0071】このため、ICチップ21の熱を受ける受熱ブロック65が空気を媒体とする強制対流により強制的に冷却されることになり、この受熱ブロック29に充分に伝えられたICチップ21の熱は、空気流に乗じて受熱ブロック65から持ち去られる。したがって、受熱ブロック65に伝えられたICチップ21の熱を効率良く放出することができ、充分な冷却能力を確保することができる。
【0072】また、上記構成によると、回路基板16のうち半導体パッケージ18の実装部分は、金属製の補強板70によって補強されているので、受熱ブロック65をICチップ21に押し付けたことに伴う回路基板16の反りや撓みを防止することができる。このため、BGA形の半導体パッケージ18が回路基板16に向けて押圧されるにも拘わらず、特定の半田ボール19と回路基板16との半田接合部に応力が加わるのを防止でき、電気的接続の信頼性が向上する。
【0073】それとともに、ねじ74を緩めてベースプレート64をスペーサ66から分離させれば、ヒートシンク62を回路基板16上から取り外すことができる。このため、半導体パッケージ18の保守作業を行なうに当って、回路基板16を筐体4の内部から取り出したり、補強板70を回路基板16から取り外す必要はなく、保守点検時の作業性を良好に維持することができる。
【0074】なお、発熱する回路部品は、BGA形の半導体パッケージに特定されるものではなく、その他の多ピン形のLSIであっても良い。
【0075】また、上記実施の形態では、半導体パッケージのICチップと受熱ブロックとの間に伝熱シートを介在させるようにしたが、この伝熱シートの代わりに熱伝導性のグリスを用いても良いとともに、場合によっては伝熱シートやグリスを省略して受熱ブロックをICチップに直接接触させるようにしても良い。
【0076】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、回路部品の実装高さにばらつきが生じたり、あるいは受熱ブロックに寸法公差が生じたとしても、この受熱ブロックが移動することで実装高さのばらつきや寸法公差分を吸収する。それとともに、受熱ブロックは、常に回路部品に押し付けようとする力を受けるので、これら受熱ブロックと回路部品との密着性が向上し、それ故、受熱ブロックと回路部品との間に伝熱シートを介在させるにしても、この伝熱シートに実装高さのばらつきや寸法公差を吸収する機能を付加する必要はない。したがって、伝熱シートを必要最小限度まで薄くできるので、回路部品の熱を効率良く受熱ブロックに伝えることができ、その分、回路部品の放熱性能が高められて、充分な冷却性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】ポータブルコンピュータの筐体にヒートシンクを組み込んだ状態を示す斜視図。
【図3】冷却装置の斜視図。
【図4】冷却装置の斜視図。
【図5】ベースプレートと受熱ブロックとを分離させた状態を示すヒートシンクの斜視図。
【図6】回路基板にヒートシンクを組み込んだ状態を示す平面図。
【図7】図6のF7−F7線に沿う断面図。
【図8】受熱ブロックの支持構造を示す断面図。
【図9】(A)は、本発明の第2の実施の形態において、筐体の内部に冷却装置を組み込んだ状態を示すポータブルコンピュータの断面図。(B)は、スペーサの雄ねじ部を補強板の雌ねじ部にねじ込んだ状態を示す断面図。(C)は、回路基板と補強板の円筒部との位置関係を示す断面図。
【符号の説明】
4…筐体
18…回路部品(半導体パッケージ)
26,62…ヒートシンク
27,63…ファンユニット
28,64…ベース(ベースプレート)
29,65…受熱ブロック
50…弾性体(圧縮コイルばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発熱する回路部品に熱的に接続されたヒートシンクを具備し、このヒートシンクは、上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に設置された受熱ブロックを有し、この受熱ブロックは、常に弾性体を介して上記回路部品に近づく方向に付勢されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記ヒートシンクは、上記受熱ブロックを浮動的に支持するベースを有し、このベースに上記受熱ブロックに冷却風を導くファンユニットが支持されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】 発熱する回路部品に熱的に接続された受熱ブロックと、この受熱ブロックを上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に支持するベースと、上記受熱ブロックを回路部品に近づく方向に付勢する弾性体と、を有するヒートシンクと;このヒートシンクのベースに設置され、上記受熱ブロックに冷却風を導くファンユニットと;を備えていることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】 請求項1又は3の記載において、上記受熱ブロックと回路部品との間に、熱伝導性を有するゴム状弾性体からなる伝熱シートを介在させたことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】 請求項1又は3の記載において、上記受熱ブロックは、多数の放熱フィンを有していることを特徴とする冷却装置。
【請求項6】 請求項1又は3の記載において、上記回路部品は、BGA形の半導体パッケージであり、この半導体パッケージは回路基板に実装されているとともに、この回路基板は、上記半導体パッケージが実装された第1の面と、この第1の面とは反対側に位置された第2の面とを有し、この第2の面の上記半導体パッケージに対応する位置に補強板を設置したことを特徴とする冷却装置。
【請求項7】 請求項3の記載において、上記ヒートシンクのベースは、上記ファンユニットが設置されるファン取り付け部を有し、このファン取り付け部と上記受熱ブロックとは互いに並べて配置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】 請求項7の記載において、上記ファンユニットは、冷却風の吐出口を上記受熱ブロックに向けた姿勢で上記ベースに支持されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項9】 筐体と;この筐体の内部に収容された発熱する回路部品と;上記筐体の内部に収容され、上記回路部品に熱的に接続されたヒートシンクと;を具備し、上記ヒートシンクは、上記回路部品に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に浮動的に設置された受熱ブロックを有し、この受熱ブロックは、常に弾性体を介して上記回路部品に近づく方向に付勢されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】 請求項9の記載において、上記ヒートシンクは、上記受熱ブロックを浮動的に支持するベースを有し、このベースに上記受熱ブロックに冷却風を導くファンユニットが支持されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−57490(P2001−57490A)
【公開日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−230701
【出願日】平成11年8月17日(1999.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000108362)東芝パソコンシステム株式会社 (9)
【Fターム(参考)】