説明

回転ツマミ取付構造

【課題】回転ツマミを回転するときに、がたつきや面ブレが生ぜず、こすれ音も少なくするようにした回転ツマミ取付構造を提供する。
【解決手段】回転ツマミ取付構造は、回転軸12を回転する回転ツマミ取付構造であって、回転ツマミ10のパネル11に対向する側に環状突出部10gを設け、パネル11と環状突出部10gの間に弾性部材19と摺動性部材20を備えた環状スペーサ14を挟み込み、環状スペーサ14と環状突出部10gを接触させた状態で、回転ツマミ10の嵌合部10gを回転軸12に嵌合させて回転ツマミ10をパネル11に回転自在に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転ツマミ取付構造に関し、例えば、オーディオ装置、ビデオ装置等の電子機器の前面パネル等に設けるために好適な回転ツマミ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転ツマミ取付構造としては、特許文献1に開示されるものがあった。特許文献1において、回転ツマミ取付構造は、回動操作部であるツマミ体(回転ツマミ)と、このツマミ体と一体的に連結して回動するシャフトと、弾性材料からなる介在弾性部材と、ケース体と、を備えている。
【0003】
介在弾性部材は、ツマミ体とケース体との間に配置され、シャフトの中心軸の略直角方向にケース体の円筒形状に突出した部位の内周と接触するオーバーラップ部があり、ここで摩擦を生じるようになっている。ツマミ体は、この摩擦によって適切な回動トルク調整設定されることとなり、ケース体に対して安定した回動をすることが可能となっている。
【0004】
しかしながら、この場合、介在弾性部材とケース体の円筒形状に突出した部位の内周とは隙間なく接触しているが、介在弾性部材とケース体の円筒形状に突出した部位の底面とは、接触しておらず、隙間を有している。そのためその隙間方向でのがたつきが生じる可能性があるという問題がある。また、オーバーラップ部で摩擦を生じるようにしているため、ツマミ体を回転するときに、こすれ音等が生じる可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、上記のようながたつきが生じないように、回転ツマミをシャフトにネジ止めすることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。また、上記のようなこすれ音等が生じないように、回転ツマミとケース体とのこすれる部分にグリースを塗布することが考えられる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−349580公報
【特許文献2】特開2003−203542公報
【特許文献3】特開平11−345706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回転ツマミのがたつきが生じないように、回転ツマミをシャフトにネジ止めする場合、回転ツマミにネジ穴を設ける工程が必要になり、また、ネジと金属シャフトが必要となるためコストの面で問題がある。さらに、回転ツマミをシャフトにネジ止めする場合、加工精度の問題でプラスチック等の安価なものを用いることはできず、高価なアルミニウム等の削りだしのものを用いる必要がある。また、オーディオ機器では、雑音を抑える必要があり、回転ツマミからのこすれ音等は、生じないようにしなければならない。こすれ音等が生じないように、回転ツマミとケース体とのこすれる部分にグリースを塗布する場合、グリースが必要となるため、コストの面で問題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる回転ツマミ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転ツマミ取付構造は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
請求項1記載の発明に係る回転ツマミ取付構造は、回転軸を回転する回転ツマミ取付構造であって、回転ツマミのパネルに対向する側に環状突出部を設け、パネルと環状突出部の間に弾性部材と摺動性部材を備えた環状スペーサを挟み込み、環状スペーサと環状突出部を接触させた状態で、回転ツマミの嵌合部を回転軸に嵌合させて回転ツマミをパネルに回転自在に取り付けたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造を示す表側からの分解斜視図である。
【図2】本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造を示す裏側からの分解斜視図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造を示す断面図である。
【図4】スペーサの(a)正面図と(b)B−B断面の拡大図である。
【図5】図3の部分Aの拡大図である。
【図6】本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造での作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図5は、本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造を示すものであり、図1は、回転ツマミ取付構造の表側からの分解斜視図であり、図2は、同裏側からの同分解斜視図であり、図3は、同断面図であり、図4は、スペーサを示す図であり、図5は、図3の部分Aの拡大図である。
【0013】
図1〜図3において、符号10は、映像音響機器装置の前面のパネル11から露出するように配置され、回転軸12を回転する回転ツマミである。この回転ツマミ10は、外側部材10bと内側部材10hからなっている。外側部材10bは、アルミニウム等の金属からなる円筒の開端部につば部10aを備えている。内側部材10hは、ABS樹脂等の樹脂からなる円筒10cの中心位置に円筒状の嵌合部10dを備えている。嵌合部10dの内側は、円筒の軸を含む平面を境界として半分が樹脂で埋まっている。また、内側部材10hは、嵌合部10dを安定に固定する壁部10eと円筒10cの開端部に設けられたつば部10fを備えている。さらに、内側部材10hには、パネル11に対向する側に環状のリブ(環状突出部)10gが設けられている。内側部材10hに樹脂を用い、外側部材10bにアルミニウム等を用いることにより、安価で高級感を持たせた回転ツマミ10を形成することができる。
【0014】
回転ツマミ10は、パネル11とリブ10gの間に環状のスペーサ14を挟み込み、スペーサ14とリブ10gを接触させた状態でプリント基板15に固定されたロータリエンコーダ等の電子部品16の半円柱状の回転軸12に嵌合部10dによって嵌合し、パネル11に回転自在に取り付けられている。また、パネル11側には、スペーサ14を固定するための突出部18が設けられている。環状のリブ10gの直径は、環状のスペーサ14の外周の直径より小さく、環状のスペーサ14の内周の直径よりも大きく形成されている。それにより、環状のリブ10gが環状のスペーサ14に接触した配置をとることができる。回転ツマミ10は、内側部材10hをABS樹脂で形成し、外側部材10bをアルミニウム等で形成した構造であるが、樹脂で一体で形成しても良い。このとき、より安価に回転ツマミを作製することができる。
【0015】
図4は、スペーサ14の正面図(a)とB−B断面の拡大図(b)である。スペーサ14は、図4で示すように弾性部材19と摺動性部材20が両面テープ21により接着された構造を有し、弾性部材19の摺動性部材20とは反対側の面を両面テープ22によってパネル11に接着している。弾性部材19は、例えば、高密度マイクロセルウレタンフォーム等からなる硬度25°〜48°の厚さ0.8mm程度のものであり、摺動性部材20は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂からなる厚さ0.18mm程度のものである。また、両面テープ21,22は、例えば、厚さ0.15mm程度のものを用い、スペーサの全体の厚さは、例えば、1.28mm程度のものを用いる。摺動性部材20によって、リブ10gがすべり易くなり、こすれ音を抑えることができる。
【0016】
図5は、図3で示した符号Aの部分の拡大図であり、リブ10gのスペーサ14との接触部分の拡大図である。リブ10gの先端には環状のリブ10gに沿って、スペーサ14に向かった方向に突起する突起部23を設けている。それにより、リブ10gのスペーサ14との接触は、突起部23の先端部のみであるので、リブ10gとスペーサ14との接触面積を小さくすることができる。なお、図5では、突起部23の断面形状を半円形状にして示しているが、それに限らず、突起部23の断面形状をV字形状にしてもよい。また、図5では、スペーサ14が弾性部材19を備えているため、突起部23によって、摺動性部材20を介してスペーサ14に凹み24が生じていることが示されている。この突起部23とスペーサ14に生じた凹み24によって回転ツマミの回転時の安定性が増加する。さらに、突起部23の表面を鏡面に近くすることにより、こすれ音をより抑えることができる。また、突起部23の表面に速乾性グリスを塗布しても同様の効果が認められる。
【0017】
上記構成において、プリント基板15に電子部品16や前面のパネル11が固定されている状態で、回転ツマミ10を取り付ける際には、スペーサ14をパネル11に取り付け、回転ツマミの嵌合部10dを回転軸12に嵌合する。
【0018】
上記の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造では、回転ツマミ10のリブ10gとパネル11の間にスペーサ14を設け、突起部23が、弾性部材19と摺動性部材20からなるスペーサ14の表面に凹み24を作り、リブ10gとパネル11との隙間がスペーサ14で埋められるので、がたつきや面ブレがなくなる。また、回転ツマミ10の回転力が回転軸12に伝達され、回転軸12を回転させるが、そのとき、スペーサ14のリブ10gとの接触部に摺動性部材20を設けているため、リブ10gとの摩擦音を抑えることができる。
【0019】
次に、本発明の本実施形態に係る回転ツマミ取付構造の作用を説明する。
【0020】
図6は、本実施形態に係る回転ツマミ10を回転するときの様子を示す図である。図6(a)は、回転ツマミ10を正面から見た図である。回転ツマミ10を手を用いて回転するとき、回転ツマミ10の符号30で示した部分と符号31で示した部分に、手の指がかかり、手をひねることにより、矢印32で示した力F3と、矢印33で示した力F4が働く。それにより、回転ツマミ10に力のモーメントが働き、回転ツマミ10が回転しその回転力が回転軸12に伝達し、回転軸12が回転する。
【0021】
このとき、符号30で示した部分に働く力F3と符号31で示した部分に働く力F4が同じ大きさならば、回転ツマミ10は、回転する作用だけを受けるが、手のひねり具合では、符号30で示した部分に働く力F3と符号31で示した部分に働く力F4が同じでない場合が生じる。そのとき、図6(b)に示すように、回転ツマミ10には、回転させる力のモーメント以外に、回転ツマミ10を回転軸12に対して傾かせる力(F4−F3:矢印34)が働くことになる。本実施形態では、そのとき、リブ10gがスペーサ14に接触しているため、リブ10gは、スペーサ14から矢印35で示す力F5を受け(図6(c))、回転ツマミ10を傾けようとする力(F4−F3)によるモーメントと釣り合い、回転ツマミ10は傾かず、それによって、がたつきや面ブレをなくすことができる。また、回転ツマミ10が回転するとき、スペーサ14に摺動性部材20がリブ10gとの接触面にあるため、こすれ音を抑えることができる。
【0022】
以上のように、本実施形態では、回転ツマミ10を回転するときに、リブ10gとパネル11との間にスペーサ14を設けているので、回転ツマミ10が傾くことなく、がたつきや面ブレを生じることを防ぐことができる。また、スペーサ14が摺動性部材20を備えているので、リブ10gとのこすれ音を抑えることができる。さらに、回転ツマミ10のがたつきや面ブレを生じることを防ぐことができるので、スピーカ装置から放射された音響の音圧による振動を抑制し、筐体内の電子部品への影響を減少させることができる。それにより、音質向上によるオーディオ装置等の電子機器としての感性品質も向上できる。
【0023】
なお、本実施形態では、スペーサ14に弾性部材19と摺動性部材20を備えたものを用いたが、スペーサ14に表面が滑らかな弾性部材だけを用いるようにしてもよい。
また、スペーサ14に弾性部材を用い、リブ10gの先端部に摺動性部材を備えるようにしても良い。
【0024】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 回転ツマミ
10d 嵌合部
10g リブ(環状突出部)
11 パネル
12 回転軸
14 スペーサ
15 プリント基板
16 電子部品
18 突出部
19 弾性部材
20 摺動性部材
21 両面テープ
22 両面テープ
23 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転する回転ツマミ取付構造であって、
前記回転ツマミのパネルに対向する側に環状突出部を設け、
前記パネルと前記環状突出部の間に弾性部材と摺動性部材を備えた環状スペーサを挟み込み、
前記環状スペーサと前記環状突出部を接触させた状態で、前記回転ツマミの嵌合部を前記回転軸に嵌合させて前記回転ツマミを前記パネルに回転自在に取り付けたことを特徴とする回転ツマミ取付構造。
【請求項2】
前記摺動性部材は、ポリテトラフルオロエチレンからなるシートであることを特徴とする請求項1記載の回転ツマミ取付構造。
【請求項3】
前記環状突出部の前記環状スペーサと対向する端部には、前記環状スペーサに向かった方向に突起する突起部を設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転ツマミ取付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−257711(P2010−257711A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105511(P2009−105511)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】