説明

回転モータ,該回転モータを駆動源とするポンプ,該ポンプを搭載した食器洗浄機,給湯器及び洗濯機

【課題】製造コストを抑えつつ、通電トルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制する。
【解決手段】クローポール型のステータ鉄心9にはコイル17が配され、コイル17への通電により発生する磁束がステータ鉄心9の爪磁極9cから永久磁石3へと伝達されることにより、該永久磁石3が吸引反発することでトルクを発生させロータ5を回転させる。このとき、ステータ鉄心9に隣接して配置してある鉄心11と、永久磁石3の延長部3bとの間で、上記通電により発生しているトルクとは別のトルクを発生させる。この別のトルクを発生させることによって、コイル15への通電により発生するトルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機器に適用可能な回転モータ,該回転モータを駆動源とするポンプ,該ポンプを搭載した食器洗浄機,給湯器及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータの永久磁石とステータのコイルに流れる電流の相互作用により発生する通電トルクとは異なる磁気回路により構成するトルク発生手段を備えた回転モータが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の回転モータでは、トルク発生手段が発生する別のトルクによって、通電トルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制することが可能となる。
【0005】
しかしながら、この回転モータは、通電トルクとは別のトルクを発生させるために、ステータ鉄心に別途磁石を設置するほかに、この別磁石との間で磁気回路を形成する空隙をロータ側の鉄心に形成する必要があり、特にこの空隙の加工には困難を伴うので製造コストが高くなる傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストを抑えつつ、通電トルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれたコイルとを有するステータと、永久磁石を有するロータとを備えた回転モータにおいて、前記コイルへの通電により前記ステータ鉄心の磁極と前記永久磁石との間でトルクを発生させる磁気回路を形成し、前記ステータ鉄心とは別に鉄心を設け、この鉄心の磁極と、前記ロータ側の永久磁石との間で、前記トルクとは別のトルクを発生させる、前記磁気回路とは別の磁気回路を形成することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の回転モータであって、前記鉄心の磁極との間で前記別のトルクを発生させる前記ロータ側の永久磁石は、前記ステータ鉄心の磁極との間で前記トルクを発生させる前記永久磁石と一体化していることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の回転モータであって、前記鉄心の磁極との間で前記別のトルクを発生させる前記ロータ側の永久磁石は、前記ステータ鉄心の磁極との間で前記トルクを発生させる前記永久磁石に対して別部材としたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回転モータであって、前記ステータ鉄心を、軸方向に延在しかつ前記永久磁石に対して径方向に対向する爪磁極を周方向に沿って複数備えるクローポール型鉄心で構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータであって、前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、磁性粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータであって、前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、金属ガラスで構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータであって、前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、鋼板を複数積層してなる積層鉄心で構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の回転モータを駆動源とするポンプとしたことを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載のポンプを搭載する食器洗浄機としたことを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8に記載のポンプを搭載する給湯器としたことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項8に記載のポンプを搭載する洗濯機としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、ステータ鉄心とは別に設けた鉄心の磁極と、ロータ側の永久磁石との間で、ステータ鉄心の磁極と永久磁石との間で発生するトルクとは別のトルクを発生させるようにしたので、通電トルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制することができる。その際、本発明では、ロータ側の永久磁石との間で別のトルクを発生させる磁気回路を形成するための鉄心を単に設けるだけなので、製造コストを低く抑えることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、永久磁石のコスト上昇を抑えることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、モータ全体の形状の自由度を高めることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、ボビンに巻いたコイルを環状の鉄心に嵌め込む構造なので、製造コストを低く抑えることができる。
【0022】
請求項5または6の発明によれば、渦電流損を低く抑えてモータとして高効率化を達成でき、モータの小型化を図ることができる。また、形状の自由度が増し、クローポール型鉄心であっても製造が容易となる。
【0023】
請求項7の発明によれば、飽和磁束密度を高く維持しつつ渦電流損を低く抑えてモータとして高効率化を達成でき、モータの小型化を図ることができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、低振動,低騒音かつ低コストなポンプを得ることができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、低振動,低騒音かつ低コストな食器洗浄機を得ることができる。
【0026】
請求項10の発明によれば、低振動,低騒音かつ低コストな給湯器を得ることができる。
【0027】
請求項11の発明によれば、低振動,低騒音かつ低コストな洗濯機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる回転モータの回転中心軸線と平行な切断面による簡略化した断面図である。
【図2】(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図である。
【図3】図1の回転モータを駆動源としたポンプの断面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係わる回転モータの回転中心軸線と平行な切断面による簡略化した断面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図5】(a)は本発明の第3の実施形態に係わる回転モータの回転中心軸線と平行な切断面による簡略化した断面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係わる回転モータの回転中心軸線と平行な切断面による簡略化した断面図である。
【図7】図3のポンプを搭載した食器洗浄機の内部構造を示す模式図である。
【図8】図3のポンプを搭載した給湯ユニットの回路図である。
【図9】図3のポンプを搭載した洗濯機の内部構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1,図2に示す回転モータ1はクローポール型モータであり、環状(円筒形状)に形成した永久磁石3を備えるロータ5と、このロータ5の内周側に位置するステータ7と、ステータ7のステータ鉄心9とは別に設けた鉄心11と、を主として備えている。
【0031】
ロータ5は、永久磁石3の軸方向(図1中で左右方向)の一方(図2中で右側)の端部に支持板13を備えて大略カップ形状を呈しており、この支持板13の中心部に回転軸15を連結している。
【0032】
ステータ7は、前記ステータ鉄心9を有し、このステータ鉄心9は、支持板13と反対側に位置する端板9aの中心に、上記した回転軸13と同一軸線上に位置する軸部9bを備えるとともに、端板9aの外周縁には、軸部9bと平行かつ同方向に延出する磁極としての爪磁極9cを、円周方向に沿って複数(ここでは4個)等間隔に備えている。そして、上記した軸部9bと爪磁極9cとの間の空間に巻線であるコイル17を設置している。
【0033】
なお、コイル17はボビンに巻き付けた状態で、上記空間に嵌め込む構造としている。
【0034】
また、前記した鉄心11は、上記したステータ鉄心9の端板9aに隣接して配置してあり、ステータ鉄心9と同様に、磁極11aを円周方向に沿って複数(ここでは4個)等間隔に備えている。
【0035】
ステータ鉄心9の外周側に位置する永久磁石3は、上記した鉄心11の外周側にも位置するように、ステータ鉄心9に対応する位置の主部3aから軸方向に延長して形成した延長部3bを備えている。
【0036】
ここで、ステータ鉄心9の爪磁極9cと永久磁石3(主部3a)との間でトルクを発生させる磁気回路を形成するとともに、ステータ鉄心9とは別の鉄心11の磁極11aと、ロータ5側の永久磁石である延長部3bとの間で、上記トルクとは別のトルクを発生させる、上記磁気回路とは別の磁気回路を形成する。
【0037】
すなわち、鉄心11の磁極11aとの間で別のトルクを発生させるロータ5側の永久磁石(延長部3b)は、ステータ鉄心9の爪磁極9cとの間でトルクを発生させる永久磁石(主部3a)と一体化していることになる。
【0038】
なお、ステータ鉄心9及び鉄心11は、圧粉体としての圧粉鉄心で構成している。圧粉鉄心は、図示しない金型のキャビティ内に、例えば非晶質材料からなる磁性粉を充填し圧縮することにより成形する。このような圧粉鉄心は、鉄粉個々の表面を無機絶縁皮膜でコーティングし、粒子間を樹脂でバインドした構造であり、高周波での鉄損失が低く(渦電流損失が低く)、また飽和磁束密度が大きくしかも耐熱性に優れるという利点を備えている。
【0039】
図3に示すように、上記した回転モータ1を駆動源として内蔵するポンプPは、図1に示してある支持板13の背面に、液体を吸排する羽根車21が固定支持され、該羽根車21の中心に回転軸15が取り付けられている。回転軸15は、ポンプケース23の内部に形成してある軸支え部25に回転可能に支持され、支持板13を貫通して羽根車21と反対側に突出している。
【0040】
上記した羽根車21は、ポンプケース23内に形成してあるポンプ室27に回転可能に収容している。ポンプケース23は、液体をポンプ室27に吸入する吸入口29及び、ポンプ室27内の液体を排出する排出口31をそれぞれ備え、ポンプ室27は、上記したポンプケース23と分離板33との間に形成している。
【0041】
分離板33は、回転軸15を中心とした円板状の円板部33aと、円板部33aの外周側端部から支持板13と反対側でかつ永久磁石3の内側に沿って延設される内側円筒部33bと、永久磁石3の外側に位置する外側円筒部33cと、これら内側円筒部33b及び外側円筒部33cの羽根車21と反対側の端部同士を連結する連結部33dと、外側円筒部33cの連結部33dと反対側の端部から径方向外側に向けて延設される外側円板部33eと、をそれぞれ備えている。
【0042】
ここで、上記した分離板33の内側円筒部33bと永久磁石3との間及び、外側円筒部33cと永久磁石3との間には、ロータ5を構成する永久磁石3が回転する際に接触しない程度の僅かな隙間35及び37をそれぞれ形成するとともに、連結部33dと永久磁石3との間にも同様の隙間39を形成している。なお、これらの各隙間35,37及び39は、前述したポンプ室27に連通している。
【0043】
ステータ7で発生させる磁界を制御する制御基板41は、リード線43を介してコイル17に接続してあり、これらは、ポンプケース23を除いた部位全体を、モールド樹脂47によって被覆している。つまり、分離板33と、ステータ7(鉄心11を含む)と、制御基板41とが、モールド樹脂47により被覆されており、これにより強度を確保している。なお、リード線43は、図3では直線状としているが、適宜磁極11a相互間や爪磁極9c相互間の間隙を通してコイル17に接続してあるものとする。
【0044】
このように構成されたポンプPにおいては、コイル17への通電により発生する磁束がステータ鉄心9の爪磁極9cから永久磁石3へと伝達されることにより該永久磁石3の特に主部3aが吸引反発することで、ロータ5と一体的に設けられた羽根車21が、回転軸15とともに回転する。そして、この羽根車21の回転に伴いポンプ作用が発生し、液体が吸入口29よりポンプ室27内へと吸込まれ、このポンプ室27内で加圧され周囲方向へ圧送された液体は吐出口31からポンプ外へと吐出される。
【0045】
この際、本実施形態では、ステータ鉄心9とは別に設けてある鉄心11が、その磁極11aと永久磁石3の特に延長部3bとの間で吸引反発することで、ステータ鉄心9の爪磁極9cと永久磁石3(主部3a)との間で発生するトルクとは別のトルクを発生させる。
【0046】
これにより、コイル17への通電により発生するトルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制することができる。その際、本発実施形態では、ロータ5側の永久磁石3との間で別のトルクを発生させる磁気回路を形成するための鉄心11を単に設けるだけなので、回転モータ1の製造コストを低く抑えることができ、ポンプPを安価なものとすることができる。
【0047】
トルク脈動を抑制することで、回転モータ1の低振動,低騒音化を達成でき、ひいてはポンプPの低振動,低騒音化を達成することができる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、ステータ鉄心9の爪磁極9cと鉄心11の磁極11aとの円周方向の位置を同等としているが、互いにずらせてもよく、これら相互の円周方向の位置関係については、上記したトルクの脈動をより効果的に相殺できるようにすることが望ましい。すなわち、永久磁石3の着磁やコイル17への通電タイミング等により定まるトルク波形(脈動)に対し、それを打ち消すように鉄心11の磁極11aの爪磁極9cに対する角度(円周方向位置)を定める。
【0049】
また、本実施形態では、ステータ鉄心9と鉄心11とは、同一の一体化している永久磁石3との間でそれぞれ別々の磁気回路を形成しているので、これら各磁気回路を別々の永久磁石によって形成する場合に比較して永久磁石のコスト上昇を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、コイル17を、環状のステータ鉄心9に対して円周方向に沿ってそれぞれ巻き付ける構造、すなわちクローポール型モータとしているので、製造コストを低く抑えることができる。
【0051】
その際、本実施形態では、ステータ鉄心9及び鉄心11を、磁性粉を圧縮して成形した圧粉体で構成しているので、特に高周波での渦電流損を低く抑えて回転モータ1として高効率化を達成でき、回転モータ1の小型化を図ることができる。また、形状の自由度が増すので、クローポール型鉄心のような積層鉄心では困難な複雑な形状であっても製造が容易となる。
【0052】
なお、ステータ鉄心9及び鉄心11を圧粉体で構成する代わりに金属ガラスで構成してもよい。金属ガラスの場合でも圧粉体と同様に、高周波での渦電流損を低く抑えて回転モータ1として高効率化を達成でき、製造も容易である。
【0053】
また、ステータ鉄心9と鉄心11とのいずれか一方のみ、例えば形状が複雑なステータ鉄心9のみ圧粉体や金属ガラスで構成し、板状の鉄心11を、鋼板を複数積層してなる積層鉄心で構成してもよい。もちろん、ステータ鉄心9についても積層鉄心で構成してもよい。積層鉄心とすることで、飽和磁束密度を高く維持しつつ渦電流損を低く抑えてモータとして高効率化を達成でき、モータの小型化を図ることができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図4に示す回転モータ1Aは、前記した第1の実施形態に対し、ステータ7のステータ鉄心9とは別の鉄心11Aを、支持板13のステータ鉄心9とは反対側に配置し、これに対応してロータ5側の永久磁石として永久磁石3Aとは別部材となる円筒形状の別(補助)磁石3A1を、鉄心11Aの周囲を囲むように支持板13に取り付けている。
【0055】
この場合の回転軸15は、鉄心11Aの中心に設けた貫通孔11Aaに回転可能に挿入し、その端部を端板13に連結している。また、鉄心11Aは、本回転モータ1Aを前記図3のポンプPに適用する場合には、例えば軸支え部25などのポンプケース23側に固定することになる。
【0056】
上記した鉄心11Aについても、図4(b)に示すように、円周方向等間隔に4個の磁極11Abを備えており、この磁極1Abとその外側の別磁石3A1との間で、ステータ鉄心9の爪磁極9cと永久磁石3との間で発生させるトルクとは別のトルクを発生させる。
【0057】
したがって本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、トルク脈動を抑制でき、その際、ロータ5A側の永久磁石3A1との間で別のトルクを発生させる磁気回路を形成するための鉄心11を設ければよく、複雑な加工等は不要となるので、製造コストを低く抑えることができる。
【0058】
また本実施形態では、別のトルクを発生させるための永久磁石を、ステータ鉄心9との間でトルクを発生させるための永久磁石3Aとは別部材となる永久磁石3A1を利用しているので、その配置や形状を適宜選定することで、モータ全体の形状の自由度を高めることができる。
【0059】
[第3の実施形態]
図5に示す回転モータ1Bは、前記した第1,第2の各実施形態の回転モータ1,1Aのようなクローポール型のステータ鉄心9に代えて、スロット巻きのステータ鉄心9Bを用いている。
【0060】
すなわち、本実施形態におけるステータ7Bのステータ鉄心9Bは、中心部における円柱形状のコア部9Baの外周側において、円周方向等間隔の4箇所に磁極9Bbを有し、これら各磁極9Bbの内側にコイル17Bを巻き付けている。
【0061】
また、ここでのステータ鉄心9B及び鉄心11は、積層鉄心で構成するが、前記した圧粉体や金属ガラスで構成してもよい。
【0062】
本実施形態においても、第1,第2の各実施形態と同様に、製造コストを抑えつつ、通電トルクの脈動を相殺してモータ回転中のトルク波形を平坦とし、トルク脈動を抑制することができる。この際、本実施形態では、ステータ鉄心9Bにスロット巻き鉄心を使用しており、このスロット巻き鉄心を使用した回転モータ1Bは、一般的にクローポール型鉄心に比較して大型化するので、必然的に機械的強度を高く維持することができるとともに、放熱性についても有利なものとなる。
【0063】
[第4の実施形態]
図6に示す回転モータ1Cは、図5に示した第3の実施形態の回転モータ1Bにおけるスロット巻きのステータ鉄心9Bを用いた上で、図4に示した第2の実施形態の別磁石3A1を設けた構造としている。
【0064】
したがって第4の実施形態では、製造コストを抑えつつトルク脈動を抑制できる上に、モータ全体の形状の自由度を高めることができ、また機械的強度を高く維持することができるとともに、放熱性についても有利なものとなる。
【0065】
[第5の実施形態]
本実施形態では、本発明の回転モータ1を駆動源として構成したポンプPを搭載したポンプ駆動機器について説明する。
【0066】
図7は、本実施形態に係わるポンプ駆動機器としての食器洗浄機100を一例として示しており、この食器洗浄機100では、水または温水が給水口101から貯水槽102に供給され、貯水槽102に供給された水または温水が、洗浄ポンプP1によって貯水槽102からノズル103に送られ、水または温水をノズル103から噴出することで食器洗浄機100内に配置した食器104を洗浄する。
【0067】
なお、本実施形態では、洗浄後の水または温水は、下方に落下して貯水槽102に溜められ、浄水ポンプP1によって再度ノズル103に送られる。そして、所定時間循環洗浄した後に、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させることで、貯水槽102内の水が排水される。
【0068】
次に、給水口101から再度、水はたは温水を貯水槽102に供給した後、洗浄ポンプP1を所定時間作動させて濯ぎを行う。その後、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させて貯水槽102の水または温水を排水する。以上の動作を数回繰り返して濯ぎを行うことで、食器洗浄機100内に配置した食器104が洗浄される。
【0069】
ここで、本実施形態では、上述した洗浄ポンプP1および排水ポンプP2に、上記第1実施形態で例示した回転モータ1を駆動源としたポンプP(図3参照)を用いている。
【0070】
このように、本実施形態に係わる食器洗浄機100に、本発明の回転モータ1を駆動源としたポンプPを用いて洗浄ポンプP1および排水ポンプP2を構成することで、低振動,低騒音化を図ることのできる安価な食器洗浄機100を得ることができる。
【0071】
なお、本例では、ポンプPに使用する回転モータとして図1に示した第1の実施形態による回転モータ1に限らず、第2〜第4の各実施形態による回転モータを使用してもよい。
【0072】
次に、本実施形態のポンプ駆動機器の変形例について説明する。
【0073】
図8は、上記第5の実施形態の第1変形例を示しており、ポンプ駆動機器が給湯器としての給湯ユニット200である場合を例示する。この給湯ユニット200は、低電力化が可能で環境にもやさしいCO2を冷媒とするヒートポンプを利用した給湯システムであるエコキュート(登録商標)であり、図8は、そのシステム概略図を示している。
【0074】
図8に示すように、給湯ユニット200は、ヒートポンプユニット201、貯湯ユニット202、風呂203、床暖房204及び追い焚き熱交換器205や暖房熱交換器206等を備えている。
【0075】
また、上記給湯ユニット200には、台所や洗面用の温水蛇口207やお湯をためる補助タンク208が設けられており、かつ、給水口209の下流には減圧弁210が設けられるとともに、床暖房204には熱動弁211が設けられている。さらに、それぞれの配管には複数の混合弁212や安全弁213が設けられている。
【0076】
そして、複数のポンプP4,P5,P6,P7,P8を駆動させるとともに、上記各弁を制御することで、風呂203や台所や洗面用の温水蛇口207等に、水やお湯を所望の温度、流量で供給することができる。
【0077】
ここで、本変形例では、上述したポンプP4〜P8に、上記第1の実施形態で例示した回転モータ1を駆動源としたポンプP(図3参照)をそれぞれ用いている。
【0078】
このように、本変形例に係わる給湯ユニット200に本発明の回転モータ1を駆動源としたポンプPを用いてそれぞれのポンプP4〜P8を構成することで、低振動,低騒音化を図ることのできる安価な給湯ユニット200を得ることができる。
【0079】
なお、本例では、上記したヒートポンプを利用した電気給湯器である給湯ユニット200に限らず、ガス給湯器やコージェネレーションシステムにも上記したポンプPを適用できる。また、本例においても、ポンプPに使用する回転モータとして図1に示した第1の実施形態による回転モータ1に限らず、第2〜第4の各実施形態による回転モータを使用してもよい。
【0080】
図9は、上記第5の実施形態の第2変形例を示しており、ポンプ駆動機器が洗濯機300である場合を例示する。
【0081】
この洗濯機300は、洗濯槽301が図示せぬモータによって回転制御されており、当該洗濯槽301を回転させるとともに、洗濯機300内の水を循環ポンプP3で循環させることで衣類等の洗濯を行うようにしている。
【0082】
ここで、本変形例では、上述した循環ポンプP3に、上記第1の実施形態で例示した回転モータ1を駆動源としたポンプP(図3参照)を用いている。このように、本変形例に係わる洗濯機300に、本発明の回転モータ1を駆動源としたポンプPを用いて循環ポンプP3を構成することで、低振動,低騒音化を図ることのできる安価な洗濯機300を得ることができる。
【0083】
なお、本例においても、ポンプPに使用する回転モータとして図1に示した第1の実施形態による回転モータ1に限らず、第2〜第4の各実施形態による回転モータを使用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,B,1C 回転モータ
3,3A ロータ側の永久磁石
3A1 別磁石(ロータ側の永久磁石)
5,5A ロータ
7,7B ステータ
9 ステータ鉄心(クローポール型鉄心)
9c 爪磁極(ステータ鉄心の磁極)
9Bb 磁極(ステータ鉄心の磁極)
11 鉄心
11a 鉄心の磁極
17,17B コイル
100 食器洗浄機
200 給湯ユニット(給湯器)
300 洗濯機
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれたコイルとを有するステータと、永久磁石を有するロータとを備えた回転モータにおいて、前記コイルへの通電により前記ステータ鉄心の磁極と前記永久磁石との間でトルクを発生させる磁気回路を形成し、前記ステータ鉄心とは別に鉄心を設け、この鉄心の磁極と、前記ロータ側の永久磁石との間で、前記トルクとは別のトルクを発生させる、前記磁気回路とは別の磁気回路を形成することを特徴とする回転モータ。
【請求項2】
前記鉄心の磁極との間で前記別のトルクを発生させる前記ロータ側の永久磁石は、前記ステータ鉄心の磁極との間で前記トルクを発生させる前記永久磁石と一体化していることを特徴とする請求項1に記載の回転モータ。
【請求項3】
前記鉄心の磁極との間で前記別のトルクを発生させる前記ロータ側の永久磁石は、前記ステータ鉄心の磁極との間で前記トルクを発生させる前記永久磁石に対して別部材としたことを特徴とする請求項1に記載の回転モータ。
【請求項4】
前記ステータ鉄心を、軸方向に延在しかつ前記永久磁石に対して径方向に対向する爪磁極を周方向に沿って複数備えるクローポール型鉄心で構成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回転モータ。
【請求項5】
前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、磁性粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータ。
【請求項6】
前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、金属ガラスで構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータ。
【請求項7】
前記ステータ鉄心と前記別に設けた鉄心との少なくともいずれか一方を、鋼板を複数積層してなる積層鉄心で構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転モータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の回転モータを駆動源としたことを特徴とするポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載のポンプを搭載したことを特徴とする食器洗浄機。
【請求項10】
請求項8に記載のポンプを搭載したことを特徴とする給湯器。
【請求項11】
請求項8に記載のポンプを搭載したことを特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−41400(P2011−41400A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186544(P2009−186544)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】