説明

回転制御バネ機構付き免震装置、及び免震装置の回転量の制御方法

【課題】地震時に鋼管杭の杭頭部に発生する曲げモーメントを抑制して免震装置の回転を制御し、免震装置に有害な回転を発生させない回転制御バネ機構付き免震装置、および免震装置の回転量の制御方法を提供する。
【解決手段】積層ゴム免震装置2と、鋼管杭4相互を連結する扁平基礎梁5と、扁平基礎梁と接続し、積層ゴム免震装置を支持する免震装置支持ブロック18と、免震装置支持ブロックを一組の定着筋7により鋼管杭4の杭頭部6に定着する支持ブロック定着部19と、から構成されるパイルキャップ3と、を備え、パイルキャップは、接合される鋼管杭との調節された固定度により地震動により発生する杭頭曲げモーメントを低減し、低減された杭頭曲げモーメントに対して回転バネとして抵抗し、地震時の積層ゴム免震装置の回転量を許容回転量以内に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転制御バネ機構付き免震装置、及び免震装置の回転量の制御方法に係り、特に、地震時における免震装置の回転量を杭頭に設置されたパイルキャップの回転バネ機構により制御する回転制御バネ機構付き免震装置、及び地震時における免震装置の回転量を制御する免震装置の回転量の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置は、地盤から建物への地震動入力を低減させ、地震時の建物の構造安全性を高める。そのために、建物の重量を支えて安定させ、かつ水平方向に大きく変形してゆっくり動くという特性が要求される。これらの特性を満たす免震装置として、例えば、積層ゴム支承を用いた免震装置、或いはすべり支承を用いた免震装置などがある。本発明では、免震装置は積層ゴム支承を用いた免震装置を対象とするが、この積層ゴムには、例えば、天然ゴムを使用した天然ゴム系積層ゴム、中心部に鉛プラグを挿入した鉛入り積層ゴム、ゴム自体の添加物により減衰性をもたせた高減衰積層ゴムなどが用いられる。
【0003】
これらの積層ゴム免震装置は、複数のゴムシートと鋼板とが交互に積層され、高温、高圧で接着した構造となっている。この積層ゴム免震装置は、内部に鋼板が有ることで鉛直方向に大きな剛性が得られ、鉛直方向の沈み込み量が極めて少なくなる。そして、地震時の水平方向の変形を積層された複数のゴムシートのせん断変形により吸収することができる。このように、積層ゴム支承は、地震時に鉛直方向の高い剛性で建物の重量を支えて安定させ、水平方向の大きなせん断変形により建物を地盤から免震(アイソレート)する。
【0004】
これらの積層ゴム支承が機能するには、積層ゴム免震装置を支持する部分のフレーム自体に大きな曲げ変形による回転が生じないことが前提となる。非特許文献1には、「高減衰ゴム系積層ゴム支承の水平2方向加力時における限界性能に関する新たな知見について」と題し、高減衰ゴム系積層ゴム支承が2方向曲げ変形を受けた場合の限界性能について報告されている。ここでは、積層ゴム支承の曲げによる傾きが、例えば1/100程度を越えると高減衰ゴムがはがれてしまい、積層ゴム支承として機能しなくなることが示されている。このように、地震時に地盤から建物への地震動入力を低減させる目的で設置される積層ゴム支承を用いた免震装置自体が機能しなくなることは重大な問題となる。
【0005】
従来、積層ゴム免震装置を建物の基礎部に設置する場合には、杭の柱頭部に設けられた巨大なフーチング基礎などの上に免震装置を設置するのが一般的であった。これは、フーチング基礎は極めて曲げ剛性が高く、地震時に発生する杭頭曲げモーメントによる杭の変形の影響をほとんど受けないため、積層ゴム免震装置が支承としてとして機能しなくなる虞が極めて少なく安定的に免震効果を発揮できるからである。
【0006】
図7に、積層ゴム免震装置102を建物の基礎部に設置する場合の従来構法の一つの実施例を示す。内部にコンクリートを充填した鋼管113による鋼管杭104の柱頭部106には鋼管杭104を保護するパイルキャップ103が設けられる。そして、パイルキャップ103上に積層ゴム免震装置102が設置され、積層ゴム免震装置102は、柱材などの上部構造111を支持する。パイルキャップ103には、隣接する鋼管杭104同士を繋ぐ基礎梁105及び基礎スラブ118が接続される。そして、鋼管杭104の主筋110はパイルキャップ103に連続して配筋され、パイルキャップ103と鋼管杭104の杭頭部106とは、ほとんど回転角を生じない剛接合となる。このように、鋼管杭104の杭頭部106はパイルキャップ103に対して剛接合とされるのが一般的である。従って、地震時にはこの基礎梁105に大きな曲げモーメントが発生し、基礎梁105は梁成が大きくなり曲げ剛性も大きくなる。そして、このような基礎梁105が接続されるパイルキャップ103自体も高い曲げ剛性を有する。
【0007】
このように、フーチングやパイルキャップ103と、鋼管杭104の杭頭部106とは回転角を生じない剛接合であり、積層ゴム免震装置102が設置されるフーチングやパイルキャップ103の回転剛性が高いことから、地震時に積層ゴム免震装置102には、上述したような有害な回転が発生する虞は少なかった。しかし、地震時に発生する大きな杭頭曲げモーメントにより、鋼管杭、フーチング、基礎梁、パイルキャップ103等の基礎構造が過大な部材断面となり、施工の工期がかかり工事費用が嵩むという問題が生じていた。
【0008】
一方、「杭頭免震」と称され、例えば鋼管杭などの杭頭部にフーチング基礎や基礎梁を介さずに積層ゴム免震装置を直接接合する構造が採用されている。例えば、特許文献1には、建物基礎の施工手間や地盤掘削量を削減して短工期化およびコスト低減が図れる免震建物が開示されている。ここでは、免震装置を鋼管杭の杭頭部上に固定し、この免震装置上に上部構造であるフーチングや大梁が設置されている。また、鋼管杭の杭頭同士が基礎スラブ(連結部材)で連結されている。この基礎スラブ(連結部材)により、地震時に複数の鋼管杭がばらばらに水平変位することなく同一方向に変位することができる。また、鋼管杭の杭頭部を基礎スラブ(連結部材)から突出させることで地震時に発生する杭頭曲げモーメントを基礎スラブ(連結部材)にて抑え込むことができ、地震時に積層ゴム免震装置に有害な回転が発生する恐れは極めて少ない。このように、パイルキャップを省略し、簡易な基礎スラブ(連結部材)を設けることで、基礎梁や基礎フーチングに要する施工手間や地盤の掘削量が削減される。
【0009】
特許文献2には、適正な杭頭回転を許容しつつ制御し、基礎と免震ピットを簡略化する「杭頭免震構造」が開示されている。ここでは、杭の杭頭部とその上部に設置する免震装置との間に、免震装置と杭頭部との間で軸力を伝達可能かつそれらの間に生じる相対的な杭頭回転を許容しつつ制御する杭頭デバイスを介装する。さらに、上部部材を杭頭部もしくは下部部材に対して連結する連結部材にダンパーとしての機能を持たせることが記載されている。
【0010】
特許文献3には、地震時に杭頭部に発生する曲げモーメントに対して免震装置への負担を軽減した「柱頭免震構造」が開示されている。この柱頭免震構造は、建物の上部構造を基礎部において支持し、上部構造を地震動から免震する免震装置と、鋼管杭の杭頭部を相互に連結する基礎梁と、基礎梁が接続され、免震装置と鋼管杭の杭頭部とを接続するコンクリート充填鋼管からなる短柱から構成され、短柱は、免震装置に接続する第1短柱と、第1短柱と略同断面を有して上下方向に積層され、杭頭部を保持する第2短柱とからなり、第1短柱の下面に設けられた凹部と、第2短柱の上面に設けられた凸部とが係合する。このように、パイルキャップを省略し、簡易な基礎スラブ(連結部材)を設けることで、基礎梁や基礎フーチングに要する施工手間や地盤の掘削量が削減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許3899354号
【特許文献2】特開2007-154558号公報
【特許文献3】特許4672805号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】高減衰ゴム系積層ゴム支承の水平2方向加力時における限界性能に関する新たな知見について 技術委員会免震部材部会他 MENSHIN No.87 2010.2
【非特許文献2】新技術調査「杭頭半剛接接合工法」の調査報告 (財)建設コスト管理システム研究会 新技術調査検討会 建設コスト研究 2008WINTER
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
免震装置、特に積層ゴム免震装置は、建物の重量を支えて安定させ、かつ水平方向に大きくせん断変形してゆっくり動くという特性を利用して建物を免震させる装置である。従って、装置に発生する軸力及びせん断力には機能するが、曲げモーメントにより装置に発生する回転に対しては機能しない。従って、例えば地震時において鋼管杭などの杭頭に曲げモーメントが発生し、その曲げモーメントが免震装置に伝達すると免震装置に有害な回転が発生し、免震装置として機能しなくなる虞がある。
【0014】
従来の積層ゴム免震装置を用いた実施例では、積層ゴム免震装置が設置されるフーチングやパイルキャップと、鋼管杭などの杭頭部とは回転を生じない剛接合となっていた。従って、フーチングやパイルキャップの回転剛性が高く、地震時に積層ゴム免震装置には上述したような有害な回転が発生する虞は少なかった。しかし、一方で、地震時に発生する大きな杭頭モーメントにより、鋼管杭、フーチング、基礎梁、パイルキャップ等の基礎構造が過大な部材断面となり、施工の工期がかかり工事費用が嵩むという問題が生じていた。
【0015】
そこで、鋼管杭、フーチング、基礎梁、パイルキャップ等の基礎構造を経済的な設計にする構法が提案された。例えば、非特許文献2に示すように、杭頭半剛接接合やピン接合とし、杭頭曲げモーメントを低減する杭頭接合工法が提案されている。これらの構法により地震時の杭頭曲げモーメントが低減され、鋼管杭、フーチング、基礎梁、パイルキャップ等の基礎構造が経済的な設計となる可能性が生じた。また、「杭頭免震構造」や「柱頭免震構造」などの構法の提案により経済的な基礎構造が可能となった。
【0016】
しかし、これらの基礎構造に積層ゴム免震装置を設置する場合には、経済的な基礎構造とする場合には、上述した積層ゴム免震装置への有害な回転を回避する技術を検討しなければならない。また、地震時の地盤の液状化が発生した場合には、地盤による杭の水平抵抗が杭頭部において期待できなくなるため、積層ゴム免震装置に過大な回転が生じてしまう虞がある。
【0017】
従って、経済的に設計された基礎構造に積層ゴム免震装置を設置する場合には、積層ゴム免震装置に有害な回転を発生させないように、地震時に積層ゴム免震装置の回転量を制御する機構を設けることが必要となる。そして、この制御機構は、地震動により地盤が液状化しても積層ゴム免震装置に有害な回転を発生させない信頼性の高い技術であることが要求される。
【0018】
本願の目的は、かかる課題を解決し、地震時に鋼管杭の杭頭部に発生する曲げモーメントを抑制して免震装置の回転を制御し、免震装置に有害な回転を発生させない回転制御バネ機構付き免震装置、および免震装置の回転量の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る回転制御バネ機構付き免震装置は、建物の上部構造を支持し、上部構造を地震動から免震する免震装置と、鋼管杭を支持点とする連続梁を構成し、鋼管杭相互を連結する扁平基礎梁と、扁平基礎梁と接続し、免震装置を支持する免震装置支持ブロックと、載置された免震装置支持ブロックを一組の定着筋により鋼管杭の杭頭部に定着する支持ブロック定着部と、から構成されるパイルキャップと、を備え、パイルキャップは、接合される鋼管杭との調節された固定度により地震動により発生する杭頭曲げモーメントを低減し、低減された杭頭曲げモーメントに対して回転バネとして抵抗し、地震時の免震装置の回転量を許容回転量以内に制御することを特徴とする。
【0020】
上記構成により、回転制御バネ機構付き免震装置は、地震時において、鋼管杭の杭頭部に発生する杭頭曲げモーメントに対し、免震装置支持ブロック及び支持ブロック定着部から構成されるパイルキャップの回転バネにより抵抗し、地震時に免震装置に有害な回転を発生させないように制御することができる。すなわち、パイルキャップは、一組の定着筋により免震装置支持ブロックを支持ブロック定着部に定着させる。これにより、パイルキャップは、鋼管杭を支持点とする連続梁である扁平基礎梁の曲げ剛性を含む回転バネとして杭頭曲げモーメントに抵抗し、免震装置の回転量を低減する。また、一組の定着筋によりパイルキャップに接合される鋼管杭の固定度が調節され、これにより杭頭曲げモーメントが低減され、免震装置の回転量が制御可能となる。
【0021】
また、上記構成により地震時の地盤の液状化が発生した場合には、鋼管杭が地盤から受ける水平反力が消滅するため、鋼管杭には大きな杭頭曲げモーメントが発生し、免震装置に有害な回転角が生じてしまう虞がある。しかし、本回転制御バネ機構付き免震装置によれば、予め地盤の液状化を想定し、地震動により発生する杭頭曲げモーメントに抵抗する回転バネとして機能するパイルキャップを設置し、パイルキャップに設けられた定着筋の位置により免震装置の回転量を制御することとした。従って、地震時の地盤の液状化が発生した場合であっても免震装置の回転量を許容回転量以内に制御することが可能となる。
【0022】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、パイルキャップの免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部とが定着筋のみにより連結され、パイルキャップに接合される鋼管杭の固定度が、鋼管杭の充填コンクリート幅と、地震動により発生する杭頭曲げモーメントに抵抗する方向の一組の定着筋相互の間隔とにより調節されることが好ましい。これにより、鋼管杭の充填コンクリート幅と、地震動により発生する杭頭曲げモーメントに抵抗する方向の一組の定着筋相互の間隔とによりパイルキャップに接合される鋼管杭の固定度が調節され、この固定度が低減されることにより杭頭曲げモーメントが低減され、免震装置の回転量が制御可能となる。
【0023】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、パイルキャップが、鋼管杭を支持点とする連続梁を構成して接続される扁平基礎梁と協働し、低減された杭頭曲げモーメントに対して回転バネとして抵抗することが好ましい。これにより、扁平基礎梁が鋼管杭を支持点とする連続梁を構成してパイルキャップに接続され、鋼管杭と共にパイルキャップにおける回転バネ機構を構成し、地震動により発生する杭頭曲げモーメントに安定的に抵抗することができる。
【0024】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界には離間シート又は離間フィルムが敷設され、免震装置支持ブロックが支持ブロック定着部に対して離間可能に載置されることが好ましく、離間シートは、鋼板であり、離間フィルムは、ポリエチレンフィルムであることが好ましい。これにより、免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部とが絶縁され、地震時に杭頭曲げモーメントを受けた場合のパイルキャップの力学的なモデルを実際の構成に合わせて引張コンクリートの影響を無視することができる。また、パイルキャップに接合される鋼管杭の固定度を低減するという調節が可能となる。
【0025】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、定着筋が免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界に配設されたシース管内を貫通することが好ましい。これにより、定着筋は、コンクリートによるせん断抵抗の影響を受けることなく引張筋として機能することができる。
【0026】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、免震装置支持ブロックが少なくとも平面的に交差する2本の扁平基礎梁の交差部を含むことが好ましい。また、免震装置支持ブロックが扁平基礎梁のうち少なくとも鋼管杭の杭頭部の断面を覆う部分であることが好ましい。これにより、免震装置支持ブロックは、鋼管杭の杭頭部を保護し、建物の上部構造から伝達される重量を扁平基礎梁を介してスムーズに鋼管杭に伝達することができる。
【0027】
また、回転制御バネ機構付き免震装置は、パイルキャップが地震時において免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との間に発生するせん断力を伝達させるせん断力伝達機構を有することが好ましい。これにより、地震時に杭頭部に発生するせん断力を簡易に扁平基礎梁に伝達させ、地震時の建物の構造安全性を高めることができる。
【0028】
また、免震装置の回転量の制御方法は、パイルキャップの充填コンクリート及び定着筋の仕様を設定するステップと、充填コンクリート及び定着筋の仕様からパイルキャップに接合される鋼管杭の固定度を算定するステップと、扁平基礎梁を含むパイルキャップの回転バネ剛性を算出するステップと、地震時に想定される杭頭曲げモーメント(M)に対し、パイルキャップに接合される鋼管杭の固定度により低減された曲げモーメント(Ma)を算出するステップと、扁平基礎梁が限界剛性に達する際に免震装置の回転角(Θa)が許容回転量(Θp)近傍となるように、パイルキャップの充填コンクリート及び定着筋の仕様を調節するステップと、を備えることが好ましい。これにより、地震時において、鋼管杭の杭頭部に発生する杭頭曲げモーメントに対し、免震装置支持ブロック及び支持ブロック定着部から構成されるパイルキャップの回転バネにより抵抗し、地震時に免震装置に有害な回転を発生させないように制御することができる。すなわち、パイルキャップは、一組の定着筋により免震装置支持ブロックを支持ブロック定着部に定着させる。これにより、パイルキャップは、鋼管杭を支持点とする連続梁である扁平基礎梁の曲げ剛性を含む回転バネとして杭頭曲げモーメントに抵抗し、免震装置の回転量を低減する。また、一組の定着筋によりパイルキャップに接合される鋼管杭の固定度が調節され、これにより杭頭曲げモーメントが低減され、免震装置の回転量が制御可能となる。
【0029】
さらに、免震装置の回転量の制御方法は、離間シート又は離間フィルムが免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界に敷設されることにより、コンクリートの引張応力を無視して回転バネの曲げ剛性が算定されることが好ましい。これにより、パイルキャップの力学的なモデルと実際の構成がより整合し、精度の高い積層ゴム免震装置の回転量を算定することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る回転制御バネ機構付き免震装置によれば、地震時に鋼管杭の杭頭部に発生する曲げモーメントを抑制して免震装置の回転を制御し、免震装置に有害な回転を発生させない回転制御バネ機構付き免震装置、および免震装置の回転量の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る回転制御バネ機構付き免震装置の1つの実施形態の概略構成を示す一部断面図である。
【図2】図1に示す回転制御バネ機構付き免震装置のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図3】地震動により発生する杭頭曲げモーメントを受けた場合の定着筋7による抵抗モーメントを示す説明図であり、図3(b)に、側面図である図3(a)のC−C断面における応力図を示す。
【図4】扁平基礎梁を含むパイルキャップの回転バネ剛性を示す説明図である。
【図5】免震装置の回転量を調節する方法を示すフローチャートである。
【図6】杭頭固定時の杭頭曲げモーメント、及び固定度を考慮した杭頭曲げモーメントを示す説明図である。
【図7】積層ゴム免震装置を建物の基礎部に設置する場合の従来構法の一つの実施例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(回転制御バネ機構付き免震装置)
以下に、図面を用いて本発明に係る回転制御バネ機構付き免震装置1の実施形態につき、詳細に説明する。図1に、回転制御バネ機構付き免震装置1の1つの実施形態の概略構成を示す。また、図2(a)に図1のA−A断面図を、図2(b)に図1のB−B断面図を示す。回転制御バネ機構付き免震装置1は、積層ゴム免震装置2、免震装置支持ブロック18及び支持ブロック定着部19から構成されるパイルキャップ3、鋼管杭4、及び扁平基礎梁5から構成される。
【0033】
(回転制御バネ機構付き免震装置の構成)
本発明において免震装置は積層ゴム免震装置2である。積層ゴム免震装置2は、例えば、柱材や梁材などの建物の上部構造11を支持し、上部構造11からの自重を鋼管杭4に伝達する。そして、上部構造11を鋼管杭4などの下部構造から絶縁(アイソレート)して上部構造11を地震動から免震する。地震動を受けると積層ゴム免震装置2は、せん断変形することで絶縁(アイソレート)の効果を発揮する。そのために、積層ゴム免震装置2には、建物の重量を支えて安定させ、かつ水平方向に大きく変形してゆっくり動くという特性が要求される。これらの特性を満たす免震装置2として、例えば、積層ゴム支承を用いた免震装置2、或いはすべり支承を用いた免震装置などがある。本発明では、免震装置は積層ゴム支承を用いた免震装置2を対象とするが、この積層ゴムには、例えば、天然ゴムを使用した天然ゴム系積層ゴム、中心部に鉛プラグを挿入した鉛入り積層ゴム、ゴム自体の添加物により減衰性をもたせた高減衰積層ゴムなどが含まれる。
【0034】
図2(b)に示すように、本実施形態では建物の基礎構造として円形断面の鋼管杭4を用いるが、円形以外の断面、例えば、矩形断面であっても良い。鋼管杭4は、鋼管13の内部に充填コンクリート12が充填された杭形式であるが、鋼管杭4以外の杭形式、例えば、既製コンクリート杭などであっても良い。この鋼管杭4内部の充填コンクリート12の断面には円周方向に主筋10が配置される。また、この鋼管杭4の上部であってパイルキャップ3と接合する部分を杭頭部6と称する。
【0035】
扁平基礎梁5は鋼管杭4相互を連結する。すなわち、地震時に、鋼管杭4の杭頭の変位がばらばらにならないように、杭頭を相互に連結して相互の間隔を保持させる。本実施形態では、従来の基礎梁と異なり、梁成の小さな扁平基礎梁5を採用する。これは、後述するように、パイルキャップ3と接合する鋼管杭4の固定度(α)を低減することにより、パイルキャップ3や基礎梁に発生する応力が低減されることによる。また、図2(a)に示すように、一般的に扁平基礎梁5は、平面的に交差するX方向扁平基礎梁5a及びY方向扁平基礎梁5bから構成され、格子状に配置される。そして、この扁平基礎梁5は、厚みが薄くて幅の広い平板に近い断面を有し、地震時に鋼管杭4の杭頭部6に発生するせん断力を伝達する。また、このX方向扁平基礎梁5a及びY方向扁平基礎梁5bは、鋼管杭4を支持点とする連続梁を構成する。このため、扁平基礎梁5は、鋼管杭4の支持点において曲げモーメントが発生する剛接合となる。
【0036】
パイルキャップ3は、鋼管杭4の杭頭部6に設置されて杭頭部6を保護する。本発明では、パイルキャップ3は免震装置支持ブロック18、及び支持ブロック定着部19から構成される。図3(a)に、免震装置支持ブロック18、及び支持ブロック定着部19をそれぞれ斜線で示す。免震装置支持ブロック18は、扁平基礎梁5の一部であって積層ゴム免震装置2を支持する。この免震装置支持ブロック18は、少なくともこの2本の扁平基礎梁5a及び5bの交差部9を含むブロックである。これにより、免震装置支持ブロック18は、建物の上部構造11から伝達される自重を、扁平基礎梁5を介してスムーズに鋼管杭4に伝達することができる。また、扁平基礎梁5が平面的に1方向扁平基礎梁5a又は5bから構成される場合には、免震装置支持ブロック18は、扁平基礎梁5a又は5bのうち少なくとも鋼管杭4の杭頭部6の断面を覆う部分である。
【0037】
(免震装置の回転量制御機構)
図2(b)に示すように、パイルキャップ3の支持ブロック定着部19には、交差するX方向及びY方向に所定の水平間隔(d1,d2)を有して埋設される定着筋7が配置される。この定着筋7は、載置された免震装置支持ブロック18に上部アンカー8aを有し、鋼管杭4の杭頭部6の支持ブロック定着部19に下部アンカー8bを有して定着する。従って、パイルキャップ3の支持ブロック定着部19は、杭頭部6の先端の上部アンカー8aから定着筋7の下部アンカー8bまでをいう。このように、免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19とは定着筋7のみにより連結される。なお、図2(b)では、定着筋7は、理論的な説明のために最少本数とし、交差するX方向及びY方向にそれぞれ2本としているが、この本数には限らず設計により必要な本数が選択される。また、定着筋7の配置は、X方向及びY方向にそれぞれ配置されても良く、円形状に配置されても良い。
【0038】
図3(a)に、地震動により発生する杭頭曲げモーメント(M)を受けた場合の定着筋7による抵抗モーメント(Ma)を示す。図3(b)には、図3(a)のC−C断面における定着筋7及び充填コンクリート12の応力図を示す。C−C断面における定着筋7及び充填コンクリート12には、長期荷重による軸力及び曲げモーメントが生じているが、地震時には、さらに短期荷重として図3(b)に示す軸力及び曲げモーメントが発生して長期荷重に累積される。
【0039】
図3(b)に示すように、地震動による杭頭曲げモーメント(M)を受ける鋼管杭4の断面には圧縮側と引張側が発生し、その位置は中立軸(Xn)により表わされる。杭頭曲げモーメント(M)により引張側となる定着筋7には、引張応力(T)が発生する。ここで、コンクリートの引張応力は無視する。また、杭頭曲げモーメント(M)により圧縮側となるコンクリート面には、圧縮応力(C)が発生する。そして、引張応力(T)及び圧縮応力(C)それぞれに中立軸からの距離を乗じて足し合わせたのが抵抗モーメント(Ma)となる。この抵抗モーメント(Ma)は、定着筋7の水平間隔(d)により増減し、水平間隔(d)が大きくなると固定度(α)が上がり鋼管杭4の杭頭部6は剛接合に近づく。一方、水平間隔(d)が小さくなると固定度(α)が下がり鋼管杭4の杭頭部6はピン接合に近くなる。また、中立軸(Xn)の位置、圧縮応力(C)、引張応力(T)などの値は、鋼管杭4の充填コンクリート12の幅により変動する。
【0040】
(免震装置の回転バネ機構)
図4に、偏平基礎梁5を含むパイルキャップ3の回転バネ剛性を示す。パイルキャップ3は、地震動により杭頭曲げモーメント(M)が発生すると、杭頭曲げモーメント(M)を抑え込む回転バネとして抵抗する。その曲げ剛性(EI)は、扁平基礎梁5a,5bそれぞれによる曲げ剛性(EIx)、及び鋼管杭4による曲げ剛性(EIy)から構成される。扁平基礎梁5a,5bによる曲げ剛性(EIx)は、扁平基礎梁5a,5bが鋼管杭4を支持点とする連続梁を構成することから図4に示すような剛接合となり、杭頭曲げモーメント(M)に対して抵抗モーメント(Ma)が発生する。また、鋼管杭4による曲げ剛性(EIy)は、充填コンクリート12の幅や定着筋7の水平間隔(d)により決まる固定度(α)による抵抗モーメント(Ma)である。
【0041】
鋼管杭4の充填コンクリート12の幅(D)、定着筋7の水平間隔(d)を設定することで、積層ゴム免震装置2の回転量が制御される。つまり、鋼管杭4の充填コンクリート12の幅(D)、及びパイルキャップ3の定着筋7の水平間隔(d)により、免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との固定度(α)が決まる。具体的には、パイルキャップ3に対して鋼管杭4が剛接合である場合(すなわち、杭頭固定時)の抵抗モーメント(Ma)に対する低減の程度として固定度(α)が算出される。ここで、パイルキャップ3に対して鋼管杭4が剛接合である場合(すなわち、杭頭固定時)の抵抗モーメント(Ma)は、図2(b)に杭頭曲げモーメント(M)が作用した場合の中立軸位置(Xn)、充填コンクリート12の圧縮応力の分布及び引張鉄筋10による抵抗モーメント(Ma)として算出される。すなわち、図7に示すように、充填コンクリート12の円周方向に設けられた一組の鉄筋10が支持ブロック定着部19から免震装置支持ブロック18へと延びて杭頭固定となり、この鉄筋10と充填コンクリート12により杭頭固定時の抵抗モーメント(Ma)が算出できる。そして、固定度(α)は、定着筋7による抵抗モーメント(Ma)を鉄筋10による抵抗(Ma)で除した値として表される。この固定度(α)は、剛接合とピン接合の中間の値となる。この固定度(α)により低減された杭頭曲げモーメント(M)が算出される。そして接合部の曲げ剛性(EI)により低減された杭頭曲げモーメント(M)に対する杭頭の回転量(Θa)が決まり、この杭頭の回転量(Θa)が積層ゴム免震装置2の回転量(Θa)となる。このように、鋼管杭4の充填コンクリート12の幅(D)、定着筋7の水平間隔(d)の調節により積層ゴム免震装置2の回転量を積層ゴム免震装置2の許容値内に制御することが可能となる。
【0042】
図3(a)に示すように、免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との境界には、例えば鋼板からなる離間シート20が敷設される。或いは、例えば、ポリエチレンフィルムからなる離間フィルム21が敷設される。これらの離間シート20又は離間フィルム21は、鋼管杭4の充填コンクリート12の表面部分を覆うように敷設される。これらの離間シート20又は離間フィルム21により免震装置支持ブロック18が支持ブロック定着部19に対して離間可能に載置される。これにより、免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19とが絶縁され、地震時に杭頭曲げモーメント(M)を受けた場合のパイルキャップ3の力学的なモデルを実際の構成に合わせて引張コンクリートの影響を無視することができる。また、パイルキャップ3に接合される鋼管杭4の固定度(α)を低減するという調節が可能となる。
【0043】
定着筋7は、免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との境界に配設されたシース管16内を貫通する。これにより、定着筋7は離間シート20、或いは離間フィルム21を貫通し、コンクリートの付着による影響を受けずに機能することができる。
【0044】
図1に示すように、パイルキャップ3は、地震時において免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との間に発生するせん断力を伝達させるせん断力伝達機構であるシアキー15を有する。本実施形態では、このシアキー15は角型鋼管、円形鋼管などを輪切りにしたリング状の部材である。このシアキー15は、施工時に免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との境界を跨って設置し、免震装置支持ブロック18のコンクリート打設時、又は支持ブロック定着部19のコンクリート打設時に鋼管内部にもコンクリートを打設する。これにより、地震時に杭頭に発生するせん断力を支持ブロック定着部19と免震装置支持ブロック18との間で伝達させることができる。なお、このシアキー15は、回転制御バネ機構付き免震装置1における必須の構成要素ではなく、地震時に杭頭に発生するせん断力を他の手段で伝達可能な場合には、このシアキー15は不要である。
【0045】
(免震装置の回転量の制御方法)
図5に、積層ゴム免震装置2の回転量を制御する方法をフローチャートでステップごとに示す。本フローチャートでは、免震装置は積層ゴム免震装置2を用いた場合について示す。まず、予め積層ゴム免震装置2の地震時における許容回転量(Θp)を設定する(S1)。この数値は、例えば1/100などの曲げモーメントにより発生する積層ゴム免震装置2の傾斜の勾配として設定される。次に、パイルキャップ3の充填コンクリート12及び定着筋7の仕様を設定する(S2)。ここで、パイルキャップ3の充填コンクリート12の仕様には、充填コンクリート12の断面の幅(D)が含まれる。また、定着筋7の仕様には、パイルキャップ3に設けられる定着筋7の種別、径、水平間隔(d)が含まれる。この水平間隔(d)とは、地震動により発生する杭頭曲げモーメント(M)に抵抗する方向の一組の定着筋7相互の間隔をいう。
【0046】
次に、充填コンクリート12及び定着筋7の仕様からパイルキャップ3に接合される鋼管杭4の固定度(α)を算定する(S3)。すなわち、定着筋7の水平間隔(d)などのパイルキャップ3の仕様から、図3(b)に示すように、中立軸位置(Xn)、充填コンクリート12の圧縮応力の分布及び引張鉄筋となる定着筋7の引張応力が算定される。そして、これらの応力分布から充填コンクリート12の断面に生じる抵抗モーメント(Ma)が算出される。そして、パイルキャップ3に対して鋼管杭4が剛接合である場合(すなわち、杭頭固定時)の抵抗モーメント(Ma)に対する低減の程度として固定度(α)が算出される。ここで、パイルキャップ3に対して鋼管杭4が剛接合である場合(すなわち、杭頭固定時)の抵抗モーメント(Ma)は、図2(b)に杭頭曲げモーメント(M)が作用した場合の中立軸位置(Xn)、充填コンクリート12の圧縮応力の分布及び引張鉄筋10による抵抗モーメント(Ma)として算出して良い。すなわち、図8に示すように、充填コンクリート12の円周方向に設けられた一組の鉄筋10が支持ブロック定着部19から免震装置支持ブロック18へと延びて杭頭固定となり、この鉄筋10と充填コンクリート12により杭頭固定時の抵抗モーメント(Ma)が算出できる。そして、固定度(α)は、定着筋7による抵抗モーメント(Ma)/鉄筋10による抵抗モーメント(Ma)として表される。具体的には、定着筋7相互の水平間隔(d)の値が大きいと接合部の固定度(α)は固定(=1)に近くなり、定着筋7相互の水平間隔(d)の値が小さいと接合部の固定度(α)はピン(=0)に近くなる。このようにして、例えば、0.1〜0.9といった1と0の間の数値により杭頭の固定度(α)が算出される。この固定度(α)は、定着筋7の水平間隔(d)、パイルキャップ3の充填コンクリート12の断面幅などの因子により変動する値である。
【0047】
次に、地震時に想定される杭頭固定時の杭頭曲げモーメント(M)に対し、パイルキャップ3に接合される鋼管杭4の固定度(α)により低減された杭頭曲げモーメント(M)を算出する(S4)。図7に、杭頭固定時の杭頭曲げモーメント(M)、及び固定度(α)を考慮した杭頭曲げモーメント(M)を示す。杭頭固定時の杭頭曲げモーメント(M)は、パイルキャップ3に鋼管杭4が剛接接合すると仮定した場合に地震時に想定される杭頭曲げモーメント(M)であり、一般的に杭に発生する曲げモーメントのうちこの固定端において最大の曲げモーメントとなる。これに対し、固定度(α)を考慮した杭頭曲げモーメント(M)とは、パイルキャップ3に接合される鋼管杭4の固定度(α)により低減された杭頭曲げモーメント(M)である。すなわち、杭頭固定時の杭頭曲げモーメント(M)に、ステップ3において算出された杭頭の固定度(α)を乗じることでパイルキャップ3に接合される鋼管杭4の固定度(α)により低減された杭頭曲げモーメント(M)が算出される。
【0048】
次に、扁平基礎梁5を含むパイルキャップ3の曲げ剛性を算出する(S5)。パイルキャップ3には、鋼管杭4及び複数の扁平基礎梁5a,5bが接続されている。これらの部材の断面、及びパイルキャップ3に対する固定度(α)からパイルキャップ3の回転バネ剛性が算出される。そして、低減された杭頭曲げモーメント(M)による積層ゴム免震装置2の回転量(Θa)を算出する(S6)。低減された杭頭曲げモーメント(M)が作用した場合の接点回転角は、杭頭部6の曲げ剛性から算出できる。そして、この回転量(Θa)が地震時の積層ゴム免震装置2の最大回転量(Θa)となる。
【0049】
算出された地震時の積層ゴム免震装置2の最大回転量(Θa)とステップ1で算定した許容回転量(Θp)とを比較し、積層ゴム免震装置2の最大回転量(Θa)が許容回転量(Θp)を越えないように、パイルキャップ3の充填コンクリート12及び定着筋7の仕様を調節する(S7)。このステップを繰り返すことで、積層ゴム免震装置2の最大回転量(Θa)が許容回転量(Θp)内に収まり、積層ゴム免震装置2に有害な回転を発生させないようにすることができる。
【0050】
上述したように、滑りシート20又は滑りフィルム21が免震装置支持ブロック18と支持ブロック定着部19との充填コンクリート12面の境界に敷設される。これにより、充填コンクリート12の引張応力を無視して積層ゴム免震装置2の回転量を算出できる。すなわち、地震時の積層ゴム免震装置2の最大回転量を算出するため、「充填コンクリート12の引張応力を無視する」という算定の前提について、滑りシート20又は滑りフィルム21を敷設することで実際のディテールの上でも引張応力が発生しないようにする。これにより、より精度の高い地震時の積層ゴム免震装置2の最大回転量の算出が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 回転制御バネ機構付き免震装置、2,102 積層ゴム免震装置、3,103 パイルキャップ、4,104 鋼管杭、5,5a,5b 扁平基礎梁、6,106 杭頭部、7 定着筋、8 アンカー、8a 上部アンカー、8b 下部アンカー、9 交差部、10,110 鉄筋(主筋)、11,111 上部構造(柱)、12,112 充填コンクリート、13 鋼管、15 シアキー(せん断力伝達機構)、16 シース管、18 免震装置支持ブロック、19 支持ブロック定着部、20 離間シート、21 離間フィルム、105 基礎梁、118 基礎スラブ、D 充填コンクリートの幅、d 定着筋の水平間隔、M 杭頭曲げモーメント、Ma 抵抗モーメント、α 固定度、Θa 最大回転量、Θp 許容回転量。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部構造を支持し、上部構造を地震動から免震する免震装置と、
鋼管杭を支持点とする連続梁を構成し、鋼管杭相互を連結する扁平基礎梁と、
扁平基礎梁と接続し、免震装置を支持する免震装置支持ブロックと、載置された免震装置支持ブロックを一組の定着筋により鋼管杭の杭頭部に定着する支持ブロック定着部と、から構成されるパイルキャップと、を備え、
パイルキャップは、接合される鋼管杭との調節された固定度により地震動により発生する杭頭曲げモーメントを低減し、低減された杭頭曲げモーメントに対して回転バネとして抵抗し、地震時の免震装置の回転量を許容回転量以内に制御することを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、パイルキャップの免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部とは、定着筋のみにより連結され、パイルキャップに接合される鋼管杭の固定度は、鋼管杭の充填コンクリート幅と、地震動により発生する杭頭曲げモーメントに抵抗する方向の一組の定着筋相互の間隔と、により調節されることを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、パイルキャップは、鋼管杭を支持点とする連続梁を構成して接続される扁平基礎梁と協働し、低減された杭頭曲げモーメントに対して回転バネとして抵抗することを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項4】
請求項1乃至3項のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界には離間シート又は離間フィルムが敷設され、免震装置支持ブロックが支持ブロック定着部に対して離間可能に載置されることを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、離間シートは、鋼板であり、離間フィルムは、ポリエチレンフィルムであることを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、定着筋は、免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界に配設されたシース管内を貫通することを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、免震装置支持ブロックは、少なくとも平面的に交差する2本の扁平基礎梁の交差部を含むことを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、免震装置支持ブロックは、扁平基礎梁のうち少なくとも鋼管杭の杭頭部の断面を覆う部分であることを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、パイルキャップは、地震時において免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との間に発生するせん断力を伝達させるせん断力伝達機構を有することを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置であって、免震装置は、積層ゴム支承による免震装置であることを特徴とする回転制御バネ機構付き免震装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の回転制御バネ機構付き免震装置における免震装置の回転量の制御方法であって、
パイルキャップの充填コンクリート及び定着筋の仕様を設定するステップと、
充填コンクリート及び定着筋の仕様からパイルキャップに接合される鋼管杭の固定度を算定するステップと、
地震時に想定される杭頭曲げモーメント(M)に対し、パイルキャップに接合される鋼管杭の固定度により低減された杭頭曲げモーメント(M)を算出するステップと、
扁平基礎梁を含むパイルキャップの回転バネ剛性を算出し、低減された杭頭曲げモーメント(M)による免震装置の回転角(Θa)を算出するステップと、
免震装置の回転角(Θa)が許容回転量(Θp)を越えないように、パイルキャップの充填コンクリート及び定着筋の仕様を調節するステップと、
を備えることを特徴とする免震装置の回転量の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の免震装置の回転量の制御方法であって、
離間シート又は離間フィルムが免震装置支持ブロックと支持ブロック定着部との充填コンクリート面の境界に敷設されることにより、コンクリートの引張応力を無視して回転バネの曲げ剛性が算定されることを特徴とする免震装置の回転量の制御方法。



【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2070(P2013−2070A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131935(P2011−131935)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【特許番号】特許第4934769号(P4934769)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(511309492)GLプロパティーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】