回転型電気部品
【課題】 摺動子を形成する材料の歩留まりを良くすると共に、組立などの取り扱いでの変形が少ない回転型電気部品を提供する。
【解決手段】 互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターン4A、4Bが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板2と、コード板2上に対向して回転可能に配設され、第1及び第2のコードパターン4A、4bと摺接する複数の摺動子7が設けられた回転体6とを備え、コード板2には、第1及び第2のコードパターン4A、4bが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターン3が形成され、複数の摺動子7はそれぞれ第1及び第2のコードパターン4A、4Bとコモンパターン3とに跨ぐように摺接されると共に、複数の摺動子7は互いに電気的に絶縁された状態で回転体6に取り付けるようにした。
【解決手段】 互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターン4A、4Bが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板2と、コード板2上に対向して回転可能に配設され、第1及び第2のコードパターン4A、4bと摺接する複数の摺動子7が設けられた回転体6とを備え、コード板2には、第1及び第2のコードパターン4A、4bが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターン3が形成され、複数の摺動子7はそれぞれ第1及び第2のコードパターン4A、4Bとコモンパターン3とに跨ぐように摺接されると共に、複数の摺動子7は互いに電気的に絶縁された状態で回転体6に取り付けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する際に各相のパルスコードを出力して回転角度や回転方向などを検知するエンコーダなどの回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転型電気部品の構造としては、コード板の周方向に、コード用のA相パターンとB相パターン、及びコモンパターンが形成され、これらのパターン上を、回転可能に設けられた回転体に係合された複数の摺動子が摺動することにより、A相とB相のパルスコードを出力して、このパルスコードによって回転角度や回転方向を検知する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の回転型電気部品の構造を図に基づいて説明する。
図9は従来の回転型電気部品を示す断面図、図10は従来の回転型電気部品のパターン構成を示す説明図、図11は従来の回転型電気部品の摺動子片を示す説明図である。
【0004】
図において、回転型パルススイッチは、軸受58に軸支される操作軸57と、この操作軸57に挿通され固定される摺動子片保持部材である摺動子受け56と、この摺動子受け56に固定される摺動子片54と、摺動子片54に対向して配置され、金属材から形成されるパターン51、52と、このパターン51、52を保持するパターン保持部材であるケース55とを有し、図示しないリベットを軸受58及びケース55の周辺部に設けた貫通穴に挿通して一体にしてある。また、59はクリック用の板ばねである。
【0005】
パターン51、52は、図10に示すように、櫛歯状の導電パターンを円弧状に配設したA相、B相用スイッチパターン51A、51Bと、A相、B相用スイッチパターン51A、51Bの半径と同じ半径に円弧状に配設した共通電極パターン52とから構成され、前記スイッチパターン51は、A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとを有する。63はスイッチパターン51Aに接続された端子、64はB相用のスイッチパターン51Bに接続された端子、65は共通電極パターン52に接続された端子である。
【0006】
A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bと共通電極パターン52の寸法関係は、図10に示すように、各相でのスイッチパターン51の櫛歯電極の最初のオン位置と最後のオン位置の角度を108度、相中の隣り合う櫛歯電極51a、51bの間隔(オフ幅)を12度、共通電極パターン52の範囲を125度、A相用のスイッチパターン51Aと共通電極パターン52とのギャップ60を6度、A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとのギャップ61を6度、B相用のスイッチパターン51Bと共通電極パターン52のギャップ62を7度に設定してある。
【0007】
摺動子片54は、金属材で形成され、図11に示すように、各パターン51A、51B、52に接触する接触点53a、53b、53cが半径方向で120度毎に3箇所設けられている。
【0008】
次に、動作を説明すると、まず、図10中のAの位置(最初のオン位置)に接触点(例えば53a)があり、半時計方向に操作軸57を回転させた場合には、Aの位置からBの位置(最後のオン位置)まではオン、オフ共に12度の矩形波が出力される。そして、接触点53aの次の接触点53bは120度間隔で配置されているので、Bの位置から12度更に回転させた時にA相用スイッチパターン51AのAの位置に来てオンさせる。したがって、A相用スイッチパターン51Aに対する接触点53aと53bの切り換わり部分においても12度毎のオフとなる。
【0009】
また、B相用スイッチパターン51Bにおいても、A相用スイッチパターン51Aと同様に12度の矩形波が出力され、A相とB相は6度の位相差がある。この位相差は、A相のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとのギャップ61が6度に設定されているためである。
【0010】
【特許文献1】特許第3038286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の回転型電気部品においては、各スイッチパターン及び共通電極パターンと摺接する3個の摺動子片が、互いに連結して繋がっている必要があるため、例えば、中央に開口部を有する中空軸からなる、各スイッチパターン及び共通電極パターンの円周径が大きなエンコーダにおいては、摺動子片を形成する材料を大きくしなければならず、材料の歩留まりが悪いためコスト高になるという問題があった。また、外形が大きくなり組立などの取り扱いでの変形が発生し易くなるという問題があった。
【0012】
したがって、本発明では上述した問題点を解決し、摺動子を形成する材料の歩留まりを良くすると共に、組立などの取り扱いでの変形が少ない回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明では第1の解決手段として、互いに導通した導通部と非導通部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、このコード板上に対向して回転可能に配設され、前記第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、前記コード板には、前記第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の前記摺動子はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターンと前記コモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体に取り付けられている構成とした。
【0014】
また、第2の解決手段として、複数の前記摺動子は、それぞれ同一形状で形成されている構成とした。
また、第3の解決手段として、前記コモンパターンは、前記コード板の前記コードパターンが配設された内側に形成されている構成とした。
また、第4の解決手段として、前記摺動子は、前記回転体の周方向に120度間隔で3個設けられている構成とした。
【0015】
また、第5の解決手段として、前記回転体を回転可能に収容するハウジングと、このハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、前記コード板は前記ハウジングと独立して設けられて、前記ハウジングに収容されている構成とした。
また、第6の解決手段として、前記取付板には、前記ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、このガイド片により前記コード板が前記ハウジングに位置決めされている構成とした。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明の回転型電気部品は、互いに導通した導通部と非導通部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、コード板上に対向して回転可能に配設され、第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、コード板には、第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の摺動子はそれぞれ第1及び第2のコードパターンとコモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で回転体に取り付けられていることから、複数の摺動子はそれぞれにコードパターンとコモンパターンとに摺接しているため、それぞれの摺動子が電気的に繋がっている必要がないので、大きさを小さく形成でき、材料歩留まりが向上すると共に、変形などの発生を防止できる。
【0017】
また、複数の摺動子は、それぞれ同一形状で形成されていることから、それぞれの摺動子を共通にできるため、部品の管理が容易となり、誤組み込みを防止できる。
また、コモンパターンは、コード板のコードパターンが配設された内側に形成されていることから、コード板へのそれぞれのパターンの引き回しが容易となり、コストの削減が図れる。
また、摺動子は、回転体の周方向に120度間隔で3個設けられていることから、回転体の一回転で、3の倍数のパルスコードを得ることができるので、豊富なバラエティー対応が可能となる。
【0018】
また、回転体を回転可能に収容するハウジングと、ハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、コード板はハウジングと独立して設けられて、ハウジングに収容されていることから、コード板を変えるだけで、様々なコードパターンに対応できる。
また、取付板には、ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、ガイド片によりコード板がハウジングに位置決めされていることから、コード板が収容されたハウジングに取付板を挿入して取り付けるだけで、ハウジングにコード板が位置決めされるので、組立が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の回転型電気部品の実施形態を図1乃至図8に示す。図1は本発明の回転型電気部品の分解斜視図、図2は回転型電気部品の平面図、図3は図2の3−3線における断面図、図4は取付板の下方から見た斜視図、図5はインサート成形前のコードパターン及びコモンパターンを示す平面図、図6は各パターンをインサート成形したコード板の平面図、図7は図5に摺動子を重ねた状態を示す平面図、図8は図6に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【0020】
図1乃至図3において、ハウジング1は合成樹脂等の絶縁材からなり、略円形の基台部1aと、この基台部1aの中央に突出した円筒軸1bとを有している。前記基台部1aは、前面(図3では上面)が開口された環状の箱型に形成され、内部に凹状の収納部1cを有している。また、収納部1cで前記円筒軸1bと対向する内壁部の図1における上下位置には、後述するコード板2の突起部2b、2cと係合する一対の係合凹部1d、1eが設けられており、また、前記係合凹部1eの内底面の一端側には、コード板2の接続端子5をハウジング1の底面側へ導出させる端子穴1fが設けられている。
【0021】
また、前記基台部1aの外側部には、外方へ突出した複数の脚部1gと、複数の凹溝部1hが設けられており、この凹溝部1hに後述する取付板8の係止片8bが係合されてハウジング1に取付板8が取り付けられるものとなっている。また、前記円筒軸1bは中空状に形成され、中央に大きな貫通孔1iを有している。この貫通孔1iの内壁には、図3における上下方向に複数のガイド溝1jが設けられており、このガイド溝1jに、図示しない電子機器などの操作つまみが昇降可能に取り付けられて、これも図示しない中空内のプリント基板上に実装された押釦スイッチ等を操作するものとなっている。
【0022】
このように、前記ハウジング1の中央に大きな貫通孔1iを設け、円筒軸1bを中空状にすることによって、その中央の空間部に別の電気部品を配置可能としているので、プリント基板などに実装して使用される場合には、スペースファクターの良い回転型電気部品が得られるものとなっている。
【0023】
コード板2は、合成樹脂等の絶縁材からなり、中央に大きな開口部2aを有する円環状に形成されている。また、図6に示すように、コード板2の上下位置には、外方へ突出する一対の突起部2b、2cが設けられており、この突起部2b、2cが前記ハウジング1の収納部1c内に設けられた一対の前記係合凹部1d、1eと係合され、コード板2がハウジング1の収納部1c内に収納されて位置決めされるものとなっている。
【0024】
また、前記コード板2の一面側(前面側)には、インサート成形等の方法で一体に埋設されると共に、導電性の金属板で円環状に形成されたコモンパターン3と、同じく導電性の金属板でコモンパターン3の外周に沿って同一円周上の周方向にずらして円弧状に形成された第1のコードパターン4Aと第2のコードパターン4Bが表出して設けられている。また、前記突起部2cの中央には、図5に示すように前記コモンパターン3から導出する電極部3aが設けられており、この電極部3aを挟んで両側には、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bの一端部からそれぞれ導出する一対の電極部4a、4aが設けられている。
尚、コモンパターン3を構成する金属板と第1及び第2のコードパターン4A、4Bを構成する金属板は、同じ金属板から打ち抜き加工されたものを使用しており、これにより材料歩留まりのよいものとなっている。
【0025】
このように、前記コモンパターン3は、前記コード板2の前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bが配設された位置の内側に形成されていることから、前記コード板2へのそれぞれの前記電極部3a、4a、4aのパターンの引き回しが容易となり、コード板2が大型化せずコストの削減が図れるものとなっている。
【0026】
また、電極部3a、4a、4aの先端には、接続端子5が設けられており、これらの接続端子5が、前記収納部1cの内底面の一端側に設けられた前記端子穴1fから外方へ導出されている。そして、これらの接続端子5が、図示しない電子機器のプリント基板上の配線パターンと接続されて電気信号が出力されるものとなる。
【0027】
また、前記コモンパターン3は、導電性の金属板で円環状に連続して形成されている。また、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bは、図5に示すように、櫛歯状の導電パターンからなり、周方向に一定の間隔で互いに導通する凸状の複数個の導電部4b、4bと、凹状の非導電部4c、4cが交互に形成されている。この交互に形成された導通部4bと非導通部4cからなるパターン上を、後述する摺動子7が摺接することにより、所望の矩形波(コード出力)が得られるものとなっている。ここで、非導電部4cには、コード板2を形成する合成樹脂が入り込んでおり、導電部4bと非導電部4cは段差がなく、面一となっている。
【0028】
尚、本実施例では、第1及び第2のコードパターン4A、4Bの導電部4b、4b(パルス数)をそれぞれ5個ずつ形成し、図7、図8に示すように、第1及び第2のコードパターン4A、4B上を摺接する摺動子7を、120度間隔で3個配置するようにしているので、一回転で、3の倍数のパルス、すなわち15個のパルスを得ることができるものとなっている。尚、それぞれの摺動子7は、コモンパターン3上を常に摺接して回転するように形成されており、各摺動子7同士はコモンパターン3を介して電気的に導通された状態となっている。
【0029】
回転体6は、合成樹脂などの絶縁材で形成されており、円環状の回転板6aと、この回転板6aの中央に円筒状に突出された回転軸6bとを有している。前記回転板6aの下面側には、前記コード板2のコモンパターン3と第1及び第2のコードパターン4A、4Bとに、弾性を持って当接すると共に、回転体6の回転に伴ってコモンパターン3と、第1及び第2のコードパターン4A、4B上を摺動する導電性の金属板からなる複数の摺動子7が固着されている。
【0030】
尚、本実施例では、摺動子7は、回転板6aの下面側の同一円周上に120度間隔で3個設けられており、これらの摺動子7はそれぞれが同一形状に形成されている。また、それぞれの摺動子7は互いに絶縁された状態で前記回転板6aの下面側に固着されている。また、前記回転板6aの上面側には、円環状に連続した凹凸部からなるクリックカム部6cが設けられている。
【0031】
このように、複数の前記摺動子7が、それぞれ同一形状で形成されていることから、それぞれの摺動子7を共通にできるため、部品の管理が容易となり、摺動子7の誤組み込みを防止できる。また、前記摺動子7は、前記回転体6の周方向に120度間隔で3個設けられていることから、前記回転体6の一回転で、3の倍数のパルスコードを得ることができるので、豊富なバラエティー対応が可能となっている。
【0032】
また、前記回転軸6bは、中空状に形成され、中央に大きな係合孔6dが設けられている。また、前記回転軸6bには、外側部の下面側に外方へ突出する複数の爪部6eが設けられており、また、中央から下面側の上下方向に沿って外方へ突出するガイド突部6fが設けられている。
【0033】
前記回転体6は、前記ハウジング1の円筒軸1bに前記回転軸6bの係合孔6dが係合されて、前記回転板6aが前記収納部1c内に回転可能に収納されるものとなっている。この時、前記回転板6aの下面側に固着された前記摺動子7が、前記収納部1c内に位置決めされた前記コード板2のコモンパターン3と、第1及び第2のコードパターン4A、4Bとに当接して摺動されるものとなる。そして、前記回転軸6bの爪部6e及びガイド突部6fに、図示しない電子機器等の操作つまみが係合されて、この操作つまみの回転操作に伴って、前記回転体6が回転操作されるものとなっている。
【0034】
取付板8は、薄板の金属板を打ち抜き折り曲げて形成されており、円環状の蓋部8aと、この蓋部8aから下方へ垂下された複数の係止片8bと、一対の対向して設けられたスナップ片8c及び複数の脚片8dと、これとは異なる方向に対向して設けられた一対のガイド片8eとを有している。また、前記蓋部8aには後述するクリック板9を固着する突状の固着部8fが設けられている。
【0035】
前記取付板8は、前記ハウジング1の外側部に設けられた複数の前記凹溝部1hに、複数の前記係止片8bが係合されてその先端がかしめられることにより、前記収納部1cの開口部を覆うように前記ハウジング1に取り付けられるものとなっている。また、この時、一対の前記ガイド片8eは、その先端部が前記コード板2の突起部2b、2cの上面側に当接され、これを押え付けた状態で、前記収納部1cの係合凹部1d、1e内に係合されることにより、確実にコード板2をハウジング1の内底部との間で挟持すると共に、位置決めするものとなっている。
【0036】
このように、前記コード板2は、前記ハウジング1と独立して設けられており、前記ハウジング1に前記取付板8によって上下方向(回転体6の軸線方向)に位置決めされて収容されていることから、前記コード板2を取り変えるだけで、様々なコードパターンに対応できるものとなっている。また、前記取付板8に、前記ハウジング1の収納部1c内に挿入される前記ガイド片8eを形成し、このガイド片8eにより前記コード板2が、前記ハウジング1に押えつけられて位置決めされているので、前記コード板2が収容された前記ハウジング1に前記取付板8を挿入して取り付けるだけで、前記ハウジング1に前記コード板2が上下方向に位置決めされるため、コード板2の浮きを防止できるとともに組立が容易となっている。
【0037】
また、一対の前記スナップ片8cは、ハウジング1の外側面から底面の下方へ延出されて、図示しない電子機器等のプリント基板の取り付け穴とスナップ係合されるものとなっている。この時、複数の前記脚片8dも一緒にプリント基板に取り付けられて固定されるものとなる。また、必要に応じて、前記ハウジング1の複数の前記脚部1gを、ネジなどで前記プリント基板に固定するようにすれば確実に固定できるものとなる。
【0038】
クリック板9は、弾性を有する薄板の金属板などで弓状に形成されており、両端側には、前記取付板8の固着部8fに係合する係合孔9aが設けられ、その中央には、下方へ突出する突部を有するカム部9bが設けられている。前記回転体6が回転操作された際には、このカム部9bが、前記回転体6の回転板6a上面に形成された凹凸状のクリックカム部6cと摺接してクリック感が得られるものとなっている。
【0039】
尚、上記した実施例においては、コード板2に形成したコードパターンは、第1及び第2のコードパターン4A、4Bからなる2相のコードパターンで構成したが、本発明のように、コモンパターン3をコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上に形成するようにすれば、コード領域を広げることができ、第1と第2のコードパターン4A、4Bの間に第3のコードパターンを設けることで、プラス1相(3相)が可能で、各種のバラエティー対応が可能となる。
【0040】
上記した本発明の実施例によれば、前記コード板2には、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bが設けられた円周上とは異なる同心円上に前記コモンパターン3が形成され、複数の前記摺動子7はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bと前記コモンパターン3とに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体6に取り付けられていることから、複数の前記摺動子7はそれぞれに前記コードパターン4A、4Bと前記コモンパターン3とに摺接しているため、それぞれの前記摺動子7が電気的に繋がっている必要がないので、摺動子7の大きさを小さく形成でき、材料歩留まりが向上すると共に、変形などの発生を防止できるものとなっている。
【0041】
尚、上述した実施例においては、コモンパターン3を環状としたが、出力コードが上記実施例のような2相の場合には、コモンパターン3は必ずしも環状である必要はない。すなわち、第1と第2のコードパターン4A、4B以外の領域と摺接している1個の摺動子7(図7、図8で図示上側に位置する摺動子)は、接続端子5から出力される信号には何ら影響を及ぼすものではないことから、前記第1と第2のコードパターン4A、4b以外の領域に対応する部分にコモンパターンを設けないようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の回転型電気部品を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の回転型電気部品を示す平面図である。
【図3】本発明の図2の3−3線における断面図である。
【図4】本発明の取付板の下方から見た斜視図である。
【図5】本発明のインサート成形前のコードパターン及びコモンパターンを示す平面図である。
【図6】本発明の各パターンをインサート成形したコード板を示す平面図である。
【図7】本発明の図5に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【図8】本発明の図6に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【図9】従来の回転型電気部品を示す断面図である。
【図10】従来の回転型電気部品のパターン構成を示す説明図である。
【図11】従来の回転型電気部品の摺動子片を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1:ハウジング
1a:基台部
1b:円筒軸
1c:収納部
1d:係合凹部
1e:係合凹部
1f:端子穴
1g:脚部
1h:凹溝部
1i:貫通孔
1j:ガイド溝
2:コード板
2a:開口部
2b:突起部
2c:突起部
3:コモンパターン
3a:電極部
4A:第1のコードパターン
4B:第2のコードパターン
4a:電極部
4b:導電部
4c:非導電部
5:接続端子
6:回転体
6a:回転板
6b:回転軸
6c:クリックカム部
6d:係合孔
6e:爪部
6f:ガイド突部
7:摺動子
8:取付板
8a:蓋部
8b:係止片
8c:スナップ片
8d:脚片
8e:ガイド片
8f:固着部
9:クリック板
9a:係合孔
9b:カム部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する際に各相のパルスコードを出力して回転角度や回転方向などを検知するエンコーダなどの回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転型電気部品の構造としては、コード板の周方向に、コード用のA相パターンとB相パターン、及びコモンパターンが形成され、これらのパターン上を、回転可能に設けられた回転体に係合された複数の摺動子が摺動することにより、A相とB相のパルスコードを出力して、このパルスコードによって回転角度や回転方向を検知する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の回転型電気部品の構造を図に基づいて説明する。
図9は従来の回転型電気部品を示す断面図、図10は従来の回転型電気部品のパターン構成を示す説明図、図11は従来の回転型電気部品の摺動子片を示す説明図である。
【0004】
図において、回転型パルススイッチは、軸受58に軸支される操作軸57と、この操作軸57に挿通され固定される摺動子片保持部材である摺動子受け56と、この摺動子受け56に固定される摺動子片54と、摺動子片54に対向して配置され、金属材から形成されるパターン51、52と、このパターン51、52を保持するパターン保持部材であるケース55とを有し、図示しないリベットを軸受58及びケース55の周辺部に設けた貫通穴に挿通して一体にしてある。また、59はクリック用の板ばねである。
【0005】
パターン51、52は、図10に示すように、櫛歯状の導電パターンを円弧状に配設したA相、B相用スイッチパターン51A、51Bと、A相、B相用スイッチパターン51A、51Bの半径と同じ半径に円弧状に配設した共通電極パターン52とから構成され、前記スイッチパターン51は、A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとを有する。63はスイッチパターン51Aに接続された端子、64はB相用のスイッチパターン51Bに接続された端子、65は共通電極パターン52に接続された端子である。
【0006】
A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bと共通電極パターン52の寸法関係は、図10に示すように、各相でのスイッチパターン51の櫛歯電極の最初のオン位置と最後のオン位置の角度を108度、相中の隣り合う櫛歯電極51a、51bの間隔(オフ幅)を12度、共通電極パターン52の範囲を125度、A相用のスイッチパターン51Aと共通電極パターン52とのギャップ60を6度、A相用のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとのギャップ61を6度、B相用のスイッチパターン51Bと共通電極パターン52のギャップ62を7度に設定してある。
【0007】
摺動子片54は、金属材で形成され、図11に示すように、各パターン51A、51B、52に接触する接触点53a、53b、53cが半径方向で120度毎に3箇所設けられている。
【0008】
次に、動作を説明すると、まず、図10中のAの位置(最初のオン位置)に接触点(例えば53a)があり、半時計方向に操作軸57を回転させた場合には、Aの位置からBの位置(最後のオン位置)まではオン、オフ共に12度の矩形波が出力される。そして、接触点53aの次の接触点53bは120度間隔で配置されているので、Bの位置から12度更に回転させた時にA相用スイッチパターン51AのAの位置に来てオンさせる。したがって、A相用スイッチパターン51Aに対する接触点53aと53bの切り換わり部分においても12度毎のオフとなる。
【0009】
また、B相用スイッチパターン51Bにおいても、A相用スイッチパターン51Aと同様に12度の矩形波が出力され、A相とB相は6度の位相差がある。この位相差は、A相のスイッチパターン51AとB相用のスイッチパターン51Bとのギャップ61が6度に設定されているためである。
【0010】
【特許文献1】特許第3038286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の回転型電気部品においては、各スイッチパターン及び共通電極パターンと摺接する3個の摺動子片が、互いに連結して繋がっている必要があるため、例えば、中央に開口部を有する中空軸からなる、各スイッチパターン及び共通電極パターンの円周径が大きなエンコーダにおいては、摺動子片を形成する材料を大きくしなければならず、材料の歩留まりが悪いためコスト高になるという問題があった。また、外形が大きくなり組立などの取り扱いでの変形が発生し易くなるという問題があった。
【0012】
したがって、本発明では上述した問題点を解決し、摺動子を形成する材料の歩留まりを良くすると共に、組立などの取り扱いでの変形が少ない回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明では第1の解決手段として、互いに導通した導通部と非導通部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、このコード板上に対向して回転可能に配設され、前記第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、前記コード板には、前記第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の前記摺動子はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターンと前記コモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体に取り付けられている構成とした。
【0014】
また、第2の解決手段として、複数の前記摺動子は、それぞれ同一形状で形成されている構成とした。
また、第3の解決手段として、前記コモンパターンは、前記コード板の前記コードパターンが配設された内側に形成されている構成とした。
また、第4の解決手段として、前記摺動子は、前記回転体の周方向に120度間隔で3個設けられている構成とした。
【0015】
また、第5の解決手段として、前記回転体を回転可能に収容するハウジングと、このハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、前記コード板は前記ハウジングと独立して設けられて、前記ハウジングに収容されている構成とした。
また、第6の解決手段として、前記取付板には、前記ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、このガイド片により前記コード板が前記ハウジングに位置決めされている構成とした。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明の回転型電気部品は、互いに導通した導通部と非導通部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、コード板上に対向して回転可能に配設され、第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、コード板には、第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の摺動子はそれぞれ第1及び第2のコードパターンとコモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で回転体に取り付けられていることから、複数の摺動子はそれぞれにコードパターンとコモンパターンとに摺接しているため、それぞれの摺動子が電気的に繋がっている必要がないので、大きさを小さく形成でき、材料歩留まりが向上すると共に、変形などの発生を防止できる。
【0017】
また、複数の摺動子は、それぞれ同一形状で形成されていることから、それぞれの摺動子を共通にできるため、部品の管理が容易となり、誤組み込みを防止できる。
また、コモンパターンは、コード板のコードパターンが配設された内側に形成されていることから、コード板へのそれぞれのパターンの引き回しが容易となり、コストの削減が図れる。
また、摺動子は、回転体の周方向に120度間隔で3個設けられていることから、回転体の一回転で、3の倍数のパルスコードを得ることができるので、豊富なバラエティー対応が可能となる。
【0018】
また、回転体を回転可能に収容するハウジングと、ハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、コード板はハウジングと独立して設けられて、ハウジングに収容されていることから、コード板を変えるだけで、様々なコードパターンに対応できる。
また、取付板には、ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、ガイド片によりコード板がハウジングに位置決めされていることから、コード板が収容されたハウジングに取付板を挿入して取り付けるだけで、ハウジングにコード板が位置決めされるので、組立が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の回転型電気部品の実施形態を図1乃至図8に示す。図1は本発明の回転型電気部品の分解斜視図、図2は回転型電気部品の平面図、図3は図2の3−3線における断面図、図4は取付板の下方から見た斜視図、図5はインサート成形前のコードパターン及びコモンパターンを示す平面図、図6は各パターンをインサート成形したコード板の平面図、図7は図5に摺動子を重ねた状態を示す平面図、図8は図6に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【0020】
図1乃至図3において、ハウジング1は合成樹脂等の絶縁材からなり、略円形の基台部1aと、この基台部1aの中央に突出した円筒軸1bとを有している。前記基台部1aは、前面(図3では上面)が開口された環状の箱型に形成され、内部に凹状の収納部1cを有している。また、収納部1cで前記円筒軸1bと対向する内壁部の図1における上下位置には、後述するコード板2の突起部2b、2cと係合する一対の係合凹部1d、1eが設けられており、また、前記係合凹部1eの内底面の一端側には、コード板2の接続端子5をハウジング1の底面側へ導出させる端子穴1fが設けられている。
【0021】
また、前記基台部1aの外側部には、外方へ突出した複数の脚部1gと、複数の凹溝部1hが設けられており、この凹溝部1hに後述する取付板8の係止片8bが係合されてハウジング1に取付板8が取り付けられるものとなっている。また、前記円筒軸1bは中空状に形成され、中央に大きな貫通孔1iを有している。この貫通孔1iの内壁には、図3における上下方向に複数のガイド溝1jが設けられており、このガイド溝1jに、図示しない電子機器などの操作つまみが昇降可能に取り付けられて、これも図示しない中空内のプリント基板上に実装された押釦スイッチ等を操作するものとなっている。
【0022】
このように、前記ハウジング1の中央に大きな貫通孔1iを設け、円筒軸1bを中空状にすることによって、その中央の空間部に別の電気部品を配置可能としているので、プリント基板などに実装して使用される場合には、スペースファクターの良い回転型電気部品が得られるものとなっている。
【0023】
コード板2は、合成樹脂等の絶縁材からなり、中央に大きな開口部2aを有する円環状に形成されている。また、図6に示すように、コード板2の上下位置には、外方へ突出する一対の突起部2b、2cが設けられており、この突起部2b、2cが前記ハウジング1の収納部1c内に設けられた一対の前記係合凹部1d、1eと係合され、コード板2がハウジング1の収納部1c内に収納されて位置決めされるものとなっている。
【0024】
また、前記コード板2の一面側(前面側)には、インサート成形等の方法で一体に埋設されると共に、導電性の金属板で円環状に形成されたコモンパターン3と、同じく導電性の金属板でコモンパターン3の外周に沿って同一円周上の周方向にずらして円弧状に形成された第1のコードパターン4Aと第2のコードパターン4Bが表出して設けられている。また、前記突起部2cの中央には、図5に示すように前記コモンパターン3から導出する電極部3aが設けられており、この電極部3aを挟んで両側には、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bの一端部からそれぞれ導出する一対の電極部4a、4aが設けられている。
尚、コモンパターン3を構成する金属板と第1及び第2のコードパターン4A、4Bを構成する金属板は、同じ金属板から打ち抜き加工されたものを使用しており、これにより材料歩留まりのよいものとなっている。
【0025】
このように、前記コモンパターン3は、前記コード板2の前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bが配設された位置の内側に形成されていることから、前記コード板2へのそれぞれの前記電極部3a、4a、4aのパターンの引き回しが容易となり、コード板2が大型化せずコストの削減が図れるものとなっている。
【0026】
また、電極部3a、4a、4aの先端には、接続端子5が設けられており、これらの接続端子5が、前記収納部1cの内底面の一端側に設けられた前記端子穴1fから外方へ導出されている。そして、これらの接続端子5が、図示しない電子機器のプリント基板上の配線パターンと接続されて電気信号が出力されるものとなる。
【0027】
また、前記コモンパターン3は、導電性の金属板で円環状に連続して形成されている。また、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bは、図5に示すように、櫛歯状の導電パターンからなり、周方向に一定の間隔で互いに導通する凸状の複数個の導電部4b、4bと、凹状の非導電部4c、4cが交互に形成されている。この交互に形成された導通部4bと非導通部4cからなるパターン上を、後述する摺動子7が摺接することにより、所望の矩形波(コード出力)が得られるものとなっている。ここで、非導電部4cには、コード板2を形成する合成樹脂が入り込んでおり、導電部4bと非導電部4cは段差がなく、面一となっている。
【0028】
尚、本実施例では、第1及び第2のコードパターン4A、4Bの導電部4b、4b(パルス数)をそれぞれ5個ずつ形成し、図7、図8に示すように、第1及び第2のコードパターン4A、4B上を摺接する摺動子7を、120度間隔で3個配置するようにしているので、一回転で、3の倍数のパルス、すなわち15個のパルスを得ることができるものとなっている。尚、それぞれの摺動子7は、コモンパターン3上を常に摺接して回転するように形成されており、各摺動子7同士はコモンパターン3を介して電気的に導通された状態となっている。
【0029】
回転体6は、合成樹脂などの絶縁材で形成されており、円環状の回転板6aと、この回転板6aの中央に円筒状に突出された回転軸6bとを有している。前記回転板6aの下面側には、前記コード板2のコモンパターン3と第1及び第2のコードパターン4A、4Bとに、弾性を持って当接すると共に、回転体6の回転に伴ってコモンパターン3と、第1及び第2のコードパターン4A、4B上を摺動する導電性の金属板からなる複数の摺動子7が固着されている。
【0030】
尚、本実施例では、摺動子7は、回転板6aの下面側の同一円周上に120度間隔で3個設けられており、これらの摺動子7はそれぞれが同一形状に形成されている。また、それぞれの摺動子7は互いに絶縁された状態で前記回転板6aの下面側に固着されている。また、前記回転板6aの上面側には、円環状に連続した凹凸部からなるクリックカム部6cが設けられている。
【0031】
このように、複数の前記摺動子7が、それぞれ同一形状で形成されていることから、それぞれの摺動子7を共通にできるため、部品の管理が容易となり、摺動子7の誤組み込みを防止できる。また、前記摺動子7は、前記回転体6の周方向に120度間隔で3個設けられていることから、前記回転体6の一回転で、3の倍数のパルスコードを得ることができるので、豊富なバラエティー対応が可能となっている。
【0032】
また、前記回転軸6bは、中空状に形成され、中央に大きな係合孔6dが設けられている。また、前記回転軸6bには、外側部の下面側に外方へ突出する複数の爪部6eが設けられており、また、中央から下面側の上下方向に沿って外方へ突出するガイド突部6fが設けられている。
【0033】
前記回転体6は、前記ハウジング1の円筒軸1bに前記回転軸6bの係合孔6dが係合されて、前記回転板6aが前記収納部1c内に回転可能に収納されるものとなっている。この時、前記回転板6aの下面側に固着された前記摺動子7が、前記収納部1c内に位置決めされた前記コード板2のコモンパターン3と、第1及び第2のコードパターン4A、4Bとに当接して摺動されるものとなる。そして、前記回転軸6bの爪部6e及びガイド突部6fに、図示しない電子機器等の操作つまみが係合されて、この操作つまみの回転操作に伴って、前記回転体6が回転操作されるものとなっている。
【0034】
取付板8は、薄板の金属板を打ち抜き折り曲げて形成されており、円環状の蓋部8aと、この蓋部8aから下方へ垂下された複数の係止片8bと、一対の対向して設けられたスナップ片8c及び複数の脚片8dと、これとは異なる方向に対向して設けられた一対のガイド片8eとを有している。また、前記蓋部8aには後述するクリック板9を固着する突状の固着部8fが設けられている。
【0035】
前記取付板8は、前記ハウジング1の外側部に設けられた複数の前記凹溝部1hに、複数の前記係止片8bが係合されてその先端がかしめられることにより、前記収納部1cの開口部を覆うように前記ハウジング1に取り付けられるものとなっている。また、この時、一対の前記ガイド片8eは、その先端部が前記コード板2の突起部2b、2cの上面側に当接され、これを押え付けた状態で、前記収納部1cの係合凹部1d、1e内に係合されることにより、確実にコード板2をハウジング1の内底部との間で挟持すると共に、位置決めするものとなっている。
【0036】
このように、前記コード板2は、前記ハウジング1と独立して設けられており、前記ハウジング1に前記取付板8によって上下方向(回転体6の軸線方向)に位置決めされて収容されていることから、前記コード板2を取り変えるだけで、様々なコードパターンに対応できるものとなっている。また、前記取付板8に、前記ハウジング1の収納部1c内に挿入される前記ガイド片8eを形成し、このガイド片8eにより前記コード板2が、前記ハウジング1に押えつけられて位置決めされているので、前記コード板2が収容された前記ハウジング1に前記取付板8を挿入して取り付けるだけで、前記ハウジング1に前記コード板2が上下方向に位置決めされるため、コード板2の浮きを防止できるとともに組立が容易となっている。
【0037】
また、一対の前記スナップ片8cは、ハウジング1の外側面から底面の下方へ延出されて、図示しない電子機器等のプリント基板の取り付け穴とスナップ係合されるものとなっている。この時、複数の前記脚片8dも一緒にプリント基板に取り付けられて固定されるものとなる。また、必要に応じて、前記ハウジング1の複数の前記脚部1gを、ネジなどで前記プリント基板に固定するようにすれば確実に固定できるものとなる。
【0038】
クリック板9は、弾性を有する薄板の金属板などで弓状に形成されており、両端側には、前記取付板8の固着部8fに係合する係合孔9aが設けられ、その中央には、下方へ突出する突部を有するカム部9bが設けられている。前記回転体6が回転操作された際には、このカム部9bが、前記回転体6の回転板6a上面に形成された凹凸状のクリックカム部6cと摺接してクリック感が得られるものとなっている。
【0039】
尚、上記した実施例においては、コード板2に形成したコードパターンは、第1及び第2のコードパターン4A、4Bからなる2相のコードパターンで構成したが、本発明のように、コモンパターン3をコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上に形成するようにすれば、コード領域を広げることができ、第1と第2のコードパターン4A、4Bの間に第3のコードパターンを設けることで、プラス1相(3相)が可能で、各種のバラエティー対応が可能となる。
【0040】
上記した本発明の実施例によれば、前記コード板2には、前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bが設けられた円周上とは異なる同心円上に前記コモンパターン3が形成され、複数の前記摺動子7はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターン4A、4Bと前記コモンパターン3とに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体6に取り付けられていることから、複数の前記摺動子7はそれぞれに前記コードパターン4A、4Bと前記コモンパターン3とに摺接しているため、それぞれの前記摺動子7が電気的に繋がっている必要がないので、摺動子7の大きさを小さく形成でき、材料歩留まりが向上すると共に、変形などの発生を防止できるものとなっている。
【0041】
尚、上述した実施例においては、コモンパターン3を環状としたが、出力コードが上記実施例のような2相の場合には、コモンパターン3は必ずしも環状である必要はない。すなわち、第1と第2のコードパターン4A、4B以外の領域と摺接している1個の摺動子7(図7、図8で図示上側に位置する摺動子)は、接続端子5から出力される信号には何ら影響を及ぼすものではないことから、前記第1と第2のコードパターン4A、4b以外の領域に対応する部分にコモンパターンを設けないようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の回転型電気部品を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の回転型電気部品を示す平面図である。
【図3】本発明の図2の3−3線における断面図である。
【図4】本発明の取付板の下方から見た斜視図である。
【図5】本発明のインサート成形前のコードパターン及びコモンパターンを示す平面図である。
【図6】本発明の各パターンをインサート成形したコード板を示す平面図である。
【図7】本発明の図5に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【図8】本発明の図6に摺動子を重ねた状態を示す平面図である。
【図9】従来の回転型電気部品を示す断面図である。
【図10】従来の回転型電気部品のパターン構成を示す説明図である。
【図11】従来の回転型電気部品の摺動子片を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1:ハウジング
1a:基台部
1b:円筒軸
1c:収納部
1d:係合凹部
1e:係合凹部
1f:端子穴
1g:脚部
1h:凹溝部
1i:貫通孔
1j:ガイド溝
2:コード板
2a:開口部
2b:突起部
2c:突起部
3:コモンパターン
3a:電極部
4A:第1のコードパターン
4B:第2のコードパターン
4a:電極部
4b:導電部
4c:非導電部
5:接続端子
6:回転体
6a:回転板
6b:回転軸
6c:クリックカム部
6d:係合孔
6e:爪部
6f:ガイド突部
7:摺動子
8:取付板
8a:蓋部
8b:係止片
8c:スナップ片
8d:脚片
8e:ガイド片
8f:固着部
9:クリック板
9a:係合孔
9b:カム部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、このコード板上に対向して回転可能に配設され、前記第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、前記コード板には、前記第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の前記摺動子はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターンと前記コモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体に取り付けられていることを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
複数の前記摺動子は、それぞれ同一形状で形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記コモンパターンは、前記コード板の前記コードパターンが配設された内側に形成されていることを特徴とする請求項1、又は2記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記摺動子は、前記回転体の周方向に120度間隔で3個設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記回転体を回転可能に収容するハウジングと、このハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、前記コード板は前記ハウジングと独立して設けられて、前記ハウジングに収容されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記取付板には、前記ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、このガイド片により前記コード板が前記ハウジングに位置決めされていることを特徴とする請求項5記載の回転型電気部品。
【請求項1】
互いに導通した導電部と非導電部とが交互に設けられてなる第1及び第2のコードパターンが、同一円周上の周方向にずらして配設されたコード板と、このコード板上に対向して回転可能に配設され、前記第1及び第2のコードパターンと摺接する複数の摺動子が設けられた回転体とを備え、前記コード板には、前記第1及び第2のコードパターンが設けられた円周上とは異なる同心円上にコモンパターンが形成され、複数の前記摺動子はそれぞれ前記第1及び第2のコードパターンと前記コモンパターンとに跨ぐように摺接されると共に、複数の前記摺動子は互いに電気的に絶縁された状態で前記回転体に取り付けられていることを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
複数の前記摺動子は、それぞれ同一形状で形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記コモンパターンは、前記コード板の前記コードパターンが配設された内側に形成されていることを特徴とする請求項1、又は2記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記摺動子は、前記回転体の周方向に120度間隔で3個設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記回転体を回転可能に収容するハウジングと、このハウジングの上面に取り付けられる取付板とを備え、前記コード板は前記ハウジングと独立して設けられて、前記ハウジングに収容されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記取付板には、前記ハウジング内に挿入されるガイド片を形成し、このガイド片により前記コード板が前記ハウジングに位置決めされていることを特徴とする請求項5記載の回転型電気部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−12701(P2006−12701A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190798(P2004−190798)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]