説明

回転式カッターヘッドとそれを備えたスクライブ装置、及びそのスクライブ方法とその方法によって形成した脆性材料部品

【課題】 曲線形状のガラススクライブができる回転式カッターヘッドを提供する。
【解決手段】 回転式カッターヘッドをアーム40とカッターチップ49を設けたチップホルダー46とから構成し、スクライブヘッド32の下部に回転制御手段を設けて回転転制御可能に取付ける。また、チップホルダー46はアーム40に少なくとも1個取付けると共にスクライブヘッド32の中心軸Qからオフセットした位置に位置可変手段を用いて設け、カッターヘッドの回転によってチップホルダー46がスクライブヘッド32の中心軸Qの周りを回転するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスなどの脆性材料をスクライブするスクライブ装置のカッターヘッドに関し、特に回転式のカッターヘッドとそれを備えたスクライブ装置、及び、その回転式カッターヘッドを用いてのスクライブ方法とそのスクライブ方法によって形成した脆性材料部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置はパーソナルコンピュータやファックス,電話等の情報機器、複写機などの事務用機器、電子レンジや冷蔵庫,洗濯機等の家電製品、時計、各種の加工機械装置等と今や各方面の機器に広く用いられている。この液晶表示装置の主要構成部品の一つにガラスが用いられているが、このガラスの所要の大きさへの切断はスクライブ装置を用いて行っている。
【0003】
一般に、スクライブ装置のスクライブ方法は、カッターチップを設けたカッターヘッドをスクライブ装置に取付け、カッターヘッドをガラス面上で横軸(X軸)方向の移動と縦軸(Y軸)方向の移動を行ってカッターチップでガラスをスクライブする方法を取っている。そして、スクライブ後に破断して矩形形状のガラスを製作している。
【0004】
この様なスクライブ装置での横軸方向の移動と縦軸方向の移動との組み合わせで曲線形状のスクライブ線を形成するには大変無理があり、円形や楕円形などの形状のガラスを製作するのに時間を要すると共にその形状及び切断面も非常に粗いものとなって、滑らかな曲線や滑らかな切断面を得ることができなかった。
【0005】
そこで、円形や楕円形などの曲線形状を成すガラスを得る技術の一つとして下記に示す特許文献1に開示された技術を見ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−40739号公報
【0007】
図14は上記特許文献1に示されたところのガラス切断装置の斜視図を示している。このガラス切断装置は、図14に示されるように、大きく分けて型板2とカッターヘッド10とから構成されている。型板2は型板本体4と一対(図中左右にある2組)の吸盤5、吸盤ベース6、ネジ、カムレバー7などが組み立てられた構造をなしている。また、カッターヘッド10はカッター刃12、カッター本体11、ベアリング18、連結バー13、ガイド棒14、握り15などが組み立てられた構造をなしている。
【0008】
型板本体4は長円形の形状をなしており、上面側に同じ長円形での溝4aが設けられている。そして、その溝4aの中をベアリング(図示していない)を取付けたガイド棒14が走行するようになっている。
【0009】
ガラスの切断は次ぎの様にして行われる。ガラスG上に一対の吸盤5を介して型板2をあてがい、カムレバー7を起こして吸盤5をガラスGに吸着する。次に、カッターヘッド10の握り15を握って矢印の方向にカッターヘッド10を動かすと、型板本体4の外壁に沿ってカッターヘッド10のベアリング18が回転し、それにつれてガラスGに当接したカッター刃12が回転してガラスGをスクライブし、スクライブ線Sが形成される。このスクライブ線Sは型板本体4の溝4aの長円形と相似形の長円形形状をなして形成される。その後、ガラスGを押さえて、吸盤5がガラスGに吸着した状態で型板2とカッターヘッドを持ち上げると長円形をなしたガラスGがスクライブ線Sの所で切断されて、吸盤5に吸着した状態で持ち上げられる。そして、カムレバー7を倒すことにより長円形のガラスGが吸盤から離れて長円形のガラスが得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に示されたガラス切断装置は型板2の溝4aの形状に倣ってスクライブするスクライブ方法を取っている。従って、型板2の溝4aの形状を変えれば色々な形状のガラスを製作することができる。例えば、円形状のもの、四隅をR付けした略矩形形状のもの、楕円形状のもの、異形曲線をなす異形形状のものなどである。
【0011】
しかしながら、この方法はガラスの形状が変わる毎に型板2或いは型板2の型板本体4を用意しなければならない。また、同じ形状でも大きさが変わる毎にカッターヘッド10或いはカッターヘッドの10の連結バー13やベアリング18を用意しなければならない。このため、ガラスの形状や大きさに合わせて型板2やカッターヘッド10を沢山用意しなければならないので設備コストも高くなる。また、それらの設備管理上での管理コストも増える。
【0012】
また、このカラス切断装置は手動による切断方法を取る。量産性も低く、その製造コストも高くなる。
【0013】
また、手動であることから、カッター刃でのガラス押圧力も一定にならず押圧力のバラツキが発生する。このことは、ガラスへのスクライブの深さが一定にならず、スクライブ深さのバラツキが大きく現れる。そして、ガラスを切断したときにはガラス切断面が粗くなり、場合によってはチッピングなども発生し、ガラスの品質低下を招く危険がある。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑みて成されたもので、短時間で曲線形状のガラスが形成できて、そして、滑らかな外形曲線と滑らかな切断面が得られるスクライブ方法、並びにスクライブ装置などを見いだすことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、本発明においては回転式カッターヘッドを用いる。そして、本発明における回転式カッターヘッドの特徴は、スクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドであって、該カッターヘッドはアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成され、前記アームは前記スクライブヘッドに回転制御可能に取付けられ、前記チップホルダーは前記アームに少なくとも1個取付けられると共に前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に設けられて前記アームの回転によって前記スクライブヘッドの中心軸の周りを回転することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記アームは回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記回転制御手段は少なくともモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材からなることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記アームは前記チップホルダーのオフセット量を所定量可変にするための位置可変手段を有することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記位置可変手段は所要の間隔に設けた複数のチップホルダー取付け穴からなることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記位置可変手段は長窓穴からなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記位置可変手段はモータと前記チップホルダーをスライドするスライド機構部材とからなり、前記チップホルダーの位置可変は自動的に制御可能になっていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の回転式カッターヘッドの特徴は、前記スクライブヘッドに前記カッターチップの押圧力を脆性材料の板厚に応じて制御できる押圧力制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のスクライブ装置の特徴は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドを備え、該スクライブヘッドに設けたカッターヘッドのカッターチップで前記ワークにスクライブを行うスクライブ装置において、前記カッターヘッドは上記の特徴を持った回転式カッターヘッドであることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明のスクライブ方法の特徴は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に1個又は2個取付け、前記アームを回転駆動させて前記チップホルダーを前記スクライブヘッドの中心軸の周りを回転させ、前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明のスクライブ方法の特徴は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に1個又は2個取付け、前記アームの回転駆動で前記チップホルダーを回転移動させ、前記スクライブヘッドの前記横軸あるいは縦軸の移動駆動で前記チップホルダーを直線移動させ、該チップホルダーの回転移動と直線移動を相互に行って前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明のスクライブ方法の特徴は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に自動的に制御可能な位置可変手段を介して1個又は2個取付け、前記アームの回転駆動で前記チップホルダーを回転移動させ、前記スクライブヘッドの前記横軸あるいは縦軸の移動駆動で前記チップホルダーを直線移動させ、前記制御可能な位置可変手段でチップホルダーを回転移動及び直線移動以外のオフセット移動をさせ、該チップホルダーの回転移動と直線移動とオフセット移動とを相互に組み合わせて前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明のスクライブ方法の特徴は、前記回転制御手段は少なくともモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材からなることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明のスクライブ方法の特徴は、前記位置可変手段はモータと前記チッブホルダーをスライドするスライド機構部材とからなることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明のスクライブ方法によって形成する脆性材料部品の特徴は、円形部品又は円形のリング状部品であることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明のスクライブ方法によって形成する脆性材料部品の特徴は、長円形部品又は長円形のリング状部品、又は四隅がR付けされた略矩形部品又は四隅がR付けされた略矩形のリング状部品であることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明のスクライブ方法によって形成する脆性材料部品の特徴は、外形が曲線と直線とが混ざり合った異形形状の部品、又は外形が異形曲線をなす形状の部品、又はこれらの外形形状をなすリング状の部品であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の回転式カッターヘッドは、アームとチップホルダーとから構成し、アームはスクライブヘッドに回転制御可能に取付け、チップホルダーをアームに少なくとも1個取付けると共にスクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に設けることにより、アームの回転によってチップホルダーがスクライブヘッドの中心軸の周りを回転する。チップホルダーがスクライブヘッドの中心軸の周りを回転して円弧移動を行うことにより、チップホルダーに設けたカッターチップが脆性材料であるガラスに当接して円弧移動を行い、円弧曲線なるスクライブ線が得られる。チップホルダーをアームに1個取付ければ1本の円弧曲線なるスクライブ線が得られ、チップホルダーを2個取付ければ2本の平行な円弧曲線なるスクライブ線が得られる。
【0033】
また、アームが回転制御手段を介してスクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転することにより、アームに取付けられたチップホルダーは回転制御可能なアームによって回転角は任意に設定できる。チップホルダーの360°回転で円形のスクライブ線、180°回転で1/2円形のスクライブ線、90°回転で1/4円形のスクライブ線などが得られる。
【0034】
また、アームの回転制御手段にモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材でもって構成する。モータを用いると制御機構や伝達機構が簡単な構造にすることができるのでコスト的に安くできる。また、小型な構造で纏めることができるので狭いスペースでも設けられる。モータとしてはサーボモータやステッピングモータなどを用いることができる。
【0035】
また、チップホルダーのオフセット量を所定量可変できるように位置可変手段を設けることにより、オフセット量を所望の値に設定することができる。このことは、チップホルダーの回転移動の回転半径を変え、スクライブ線の円弧半径を変えることができる。小さい円弧半径、大きい円弧半径と所望の円弧形状が得られる。
【0036】
また、位置可変手段を所要の間隔に設けた複数のチップホルダー取付け穴でもつて構成する。どの位置の取付け穴に取付けるかによってオフセット量が決まる。例えば、アームの一番先端側の取付け穴にチップホルダーを取付ければオフセット量は一番大きくなり、一番大きな円弧半径が得られる。逆に、アームの一番内側の取付け穴にチップホルダーを取付ければオフセット量は一番小さくなり、一番小さな円弧半径が得られる。
【0037】
また、位置可変手段を長窓穴でもって構成することもできる。長窓穴であるとその長窓穴の長さの範囲の中で所望の位置にチップホルダーを固定することができる。一つの長穴で位置可変を自由に設定できるので大変便利である。また、アームの制作費も安くできる。
【0038】
また、位置可変手段をモータとチップホルダーをスライドするスライド機構部材とから構成することもできる。モータとスライド機構部材とでもって構成するとチップホルダーの位置可変を自動的に制御できる。また、オフセット量を任意に設定することができる。これは、チップホルダーのオフセット量を自動的に設定可能となって、アームからチップホルダーを取り外しすることなくオフセット量を任意の値に設定できる。また、このモータとスライド機構部材からなる位置変換手段でのオフセット量移動をオフセット移動と云うことにすると、このオフセット移動とチップホルダーの回転移動とスクライブヘッドの直線移動とを組み合わせることによって円弧曲線以外の曲線のスクライブ線を形成することができる。
【0039】
また、スクライブヘッドに脆性材料の板厚に応じてカッターチップの押圧力を制御できる押圧力制御手段を設けることによって、板厚に変化があっても絶えず一定な押圧力が得られるのでスクライブの深さが一定になり、脆性材料を切断したときの切断面も滑らかで綺麗な切断面が得られる。
【0040】
この様な作用を果たす回転式カッターヘッドをスクライブ装置に備えることにより、脆性材料を円形形状や長円形状にスクライブし、そして、切断することができる。或いはまた、円形形状のリングや長円形状のリングにスクライブし、切断することができる。また、1台のスクライブ装置、1個のカッターヘッドで自動的に対応できることから製造コストも安くすることができる。また、切断外形も滑らかな形状に仕上げられ、切断面も滑らかな面に仕上げられることから良い品質のものが得られる。
【0041】
次に、本発明のスクライブ方法は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、アームをスクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介してスクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、チップホルダーをアームのスクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に1個又は2個取付け、アームを回転駆動させてチップホルダーをスクライブヘッドの中心軸の周りを回転させ、チップホルダーに設けたカッターチップでワークにスクライブを行う方法を取る。これによって、円形部品や円形のリング状部品を形成することができる。また、アームの回転駆動でチップホルダーを回転移動させ、スクライブヘッドの横軸あるいは縦軸の移動駆動でチップホルダーを直線移動させ、該チップホルダーの回転移動と直線移動を相互に行ってチップホルダーに設けたカッターチップでワークにスクライブを行う方法を取ることにより、長円形部品や長円形のリング状部品を形成することができる。
【0042】
また、本発明のスクライブ方法は、ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、アームをスクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介してスクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、チップホルダーをアームのスクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に自動的に制御可能な位置可変手段を介して1個又は2個取付け、アームの回転駆動でチップホルダーを回転移動させ、スクライブヘッドの横軸あるいは縦軸の移動駆動で前記チップホルダーを直線移動させ、制御可能な位置可変手段でチップホルダーを回転移動及び直線移動以外のオフセット移動をさせ、該チップホルダーの回転移動と直線移動とオフセット移動とを相互に組み合わせてチップホルダーに設けたカッターチップでワークにスクライブを行う方法を取ることにより、外形が曲線と直線でなす異形形状の部品や外形が異形曲線をなす部品、或いは、これらの外形形状でのリング状部品を形成することができる。
【0043】
ここで、回転制御手段をモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材とで構成することによる効果、及び、位置可変手段をモータとチップホルダーをスライドするスライド機構部材とで構成することによる効果は前述した通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1は本発明の実施形態に係るスクライブ装置の要部の斜視図を示している。また、図2は図1におけるスクライブヘッド収納部と回転式カッターヘッドの側面図を示していて、スクライブヘッドと回転式カッターヘッドは一部分半裁の断面図でもって示している。また、図3は図2に示されたアームの斜視図で、図4は図2におけるアームの回転駆動によるカッターチップのスクライブ状態を示した説明図を示している。また、図5は本実施形態に係るスクライブ装置でスクライブしたスクライブ形状を示した平面図で、図5の(a)は円形状、図5の(b)は長円形状、図5の(c)は四隅がR(円弧)の付いた略矩形形状のものを示している。
【0045】
最初に図1において、本発明の実施形態に係るスクライブ装置20は、装置本体部21の上部にテーブル22、前部に操作パネル23が設けられている。このテーブル22はスクライブ加工を行うワークWを載置するために設けている。そして、真空吸着などの方法でワークWをテーブル22上に固定する。また、このテーブル22はワークWを規定の位置に配置できるように僅かに回転してワークWの位置合わせ調整ができるようになっている。ワークWは、本実施形態においては、ガラスなる脆性材料を用いている。操作パネル23は後述するスクライブヘッドの縦軸(図1中ではY軸を指しており、以降、Y軸と云う)方向、横軸(図1中ではX軸を指しており、以降、X軸と云う)方向の移動量などの様々な指示情報を入力操作するために設けている。尚、本実施形態では操作パネル23を装置本体部21と一体的に設けているが、この操作パネル23は装置本体部21とは別に操作ボックスを設け、その操作ボックスでもって指示情報の入力操作を行うことも可能である。
【0046】
また、操作本体部21上には後述するスクライブヘッドをY軸方向、X軸方向に移動させるためにブリッジ24なる駆動装置を設けている。このブリッジ24は装置本体部21の内部から立脚した左右2本の支柱25にガイドバー26を取付けてコ字型にブリッジを形成している。このブリッジ24は装置本体部21の内部に設けたモータ、ボールネジなどの駆動部材(図示していない)などによってY軸方向に制御可能に移動するようになっている。また、このブリッジ24を形成するガイドバー26の中空内部にはボールネジ(図示していない)が配設してあり、そして、このボールネジは片方の支柱25に取付けたモータ29と連結してモータ29の回転に応じて回転駆動するようになっている。また、このボールネジに係合してヘッド移動板28が設けてあり、このヘッド移動板28がボールネジの回転駆動によってガイドバー26に設けてあるガイド27に沿ってX軸方向に制御可能に移動するようになっている。また、ヘッド移動板28にはスクライブヘッド収納部30が設けられており、このスクライブヘッド収納部30から回転式カッターヘッド50が外に飛び出している。また、この回転式カッターヘッド50はアーム40とアーム40に設けられたチップホルダー46からなっている。
【0047】
次に、スクライブヘッド収納部30はゴミやほこりなどを避けるためにボックスに覆われているが、その内部は、図2に示すように、前述したヘッド移動板28に係合してヘッド昇降板31が設けられている。このヘッド昇降板31は図示していないエアーシリンダーによって上下に昇降可能に移動する。また、このヘッド昇降板31にはスクライブヘッド32とモータ33が固定されており、スクライブヘッド32には回転式カッターヘッド50が取付けられている。スクライブヘッド32はヘッド本体32aとベアリング32bとから構成され、回転式カッターヘッド50はアーム40とアーム40の先端に設けたチップホルダー46とから構成している。また、アーム40はアーム軸41とアーム板42とから構成しており、このアーム軸41がスクライブヘッド32のベアリング32bの部分と係合して、スクライブヘッド32に回転式カッターヘッド50が取付けられるようになっている。また、アーム40のアーム軸41にはプーリ45が固定されており、このプーリ45がベルト34を介してモータ33と連結し、モータ33の回動に合わせてプーリ45が回動し、同時にアーム40が回転するようになっている。このモータ33、ベルト34、プーリ45はアーム40を回転制御する手段として用いており、モータ33にサーボモータを用いていることから、アーム40の回転方向や回転角は制御可能に回転する。また、スクライブヘッド32及びモータ33が昇降可能なヘッド昇降板31に固定されていることから、カッターヘッド50もヘッド昇降板31の昇降に合わせて上下に移動する。
【0048】
ここで、本実施形態でのアーム40は、図3に示すように、アーム軸41とアーム板42とから構成する。アーム板42は両端に42aの穴と42bの穴があり、42aの穴にはアーム軸41が圧入などの方法で固定されている。また、42bの穴にはチップホルダー46がネジ止めなどの方法で固定されるようになっている。このアーム40は、図2に示すように、スクライブヘッド32の中心軸Qを中心にして回転する。このスクライブヘッド32の中心軸Qはアーム軸41の中心軸にもなっている。従って、アーム40はスクライブヘッド32の中心軸Qを中心にして回転し、アーム40に取付けたチップホルダー46もスクライブヘッド32の中心軸Qを中心にして回転する。即ち、アーム40とチップホルダー46とからなる回転式カッターヘッド50はスクライブヘッド32の中心軸Qを中心にして回転する回転式のカッターヘッドになっている。
【0049】
アーム40の先端の穴42bには、図2に示すように、チップホルダー46が固定して設けられる。このチップホルダー46はホルダー47にピン48を介してカッターチップ49が回動自在に取付けられたものからなっている。そして、カッターチップ49の刃先が脆性部材のガラスの表面に当接してスクライブできるようになっている。
【0050】
従って、チップホルダー46はスクライブヘッド32の中心軸Q(この中心軸はアーム軸41の中心軸にもなっている)からオフセットした位置に設けられている。そして、そのオフセット量をPとすると、チップホルダー46はアーム40の回転駆動によってスクライブヘッド32の中心軸Qの周りをオフセット量Pをもって制御可能に回転移動する。
【0051】
図4はアーム40の回転駆動によるカッターチップ49のスクライブ状態を示した説明図である。アーム40がスクライブヘッド32の中心軸Q(この中心軸はアーム軸41の中心軸にもなっている)を中心軸にして回転駆動すると、ガラスGの表面に当接したチップホルダー46のカッターチップ49はスクライブを施しながら矢印の方向に回転移動してオフセット量Pの半径をもって円弧状のスクライブ線Rを形成する。アーム40が1回転(360°回転)すると円形のスクライブ線Rが形成され、後工程での適宜な切断方法によって切断すると半径Pなる円形のガラスが出来上がる。また、アーム40を半回転(180°回転)すると半円(1/2円)なるスクライブ線Rが形成でき、アーム40を1/4回転(90°回転)すると1/4円なるスクライブ線Rが形成できる。
【0052】
上記の円弧形状のスクライブが行える回転式カッターヘッド50はガラスGの面上で所望の位置にセットすることができる。スクライブヘッド32を設けてあるところのブリッジ24をY軸方向の駆動で所望の位置に移動し、スクライブヘッド32を設けてあるところのヘッド移動板28をX軸方向の駆動で所望の位置に移動することによって回転式カッターヘッド50を所望の位置にセットできる。これは、予め操作パネルでの位置情報入力によって行われれ、また、回転式カッターヘッド50の回転角制御も予め操作パネルでの位置情報入力によって行われる。そして、回転式カッターヘッド50の回転制御やスクライブヘットのY軸移動制御、X軸移動制御は別途(図示していない)に設けた駆動回路によって制御が行われるようになっている。
【0053】
次に、本実施形態におけるスクライブ装置20は、最初にテーブル22上に載置したワークWを規定の位置にセッするために位置調整機構を持っている。この位置調整は2台のカメラと2台のモニターテレビを用いて行っている。図1において、装置本体部21の後方側に取付けた取付台51がブリッジ型に設けられており、その上にレール52が敷かれ、レール52の左右に2個の台座53が設けられ、そして、2台のカメラ54が台座53に取付けられている。このカメラ54は台座53の上下移動機構によって上下に動くようになっている。
また、カメラ54とコードを介して接続された2台のテレビ55が配置されており、このカメラ54で写した映像をテレビ55で表示できるようになっている。
【0054】
正常な位置へのセットは次のようにして行う。最初に、ワークWの左右2隅に設けた十字線なるアライメントマークを左右2台のカメラ54でそれぞれ写し取り、その映像を2台のテレビ55にそれぞれ映し出し、左右のアライメントマークがテレビに映し出される基準に対してどの位ずれているかを見る。そして、左右2台のテレビ映像を見ながらテーブル22を微小に回転してアライメントマークをテレビに映し出された基準に一致させる。これによってワークWは規定の位置にセットされる。
【0055】
本実施形態のスクライブ装置20は円弧の回転駆動を行う回転式カッターヘッド50を備えている。そして、その回転式カッターヘッド50の回転駆動によってガラスを円弧形状にスクライブする。図5は本実施形態のスクライブ装置で得られるスクライブ形状を示したものである。
【0056】
図5の(a)は、スクライブヘッド32を静止させて回転式カッターヘッド50を1回転(360°回転)T1させ、チップホルダー46を1回転移動させてカッターチッブ49で円形のスクライブ線R1を形成したものである。
【0057】
図5の(b)は長円形状のスクライブ線R2を得たもので、最初に、スクライブヘッド32をY軸方向の駆動を行って、Y1方向(Y軸の往方向)に回転式カッターヘッド50を移動させながらチップホルダー46を直線移動させ、カッターチップ49で直線のスクライブを行う。次に、回転式カッターヘッド50を1/2回転(180°回転)T2を行いながらチップホルダー46を半回転移動させ、半円のスクライブを行う。次に、回転式カッターヘッド50を1/2回転した状態で回転式カッターヘッド50をY2方向(Y1方向と逆な方向で、複方向)に移動してチップホルダー46を直線移動させ、直線のスクライブを行う。尚、Y1方向とY2方向での移動量は同じである。最後に、回転式カッターヘッド50を1/2回転T3を行ってチップホルダー46を半回転移動させ、半円のスクライブを行う。これによって、長円形なるスクライブ線R2が形成される。このように、長円形なるスクライブ線R2は、回転式カッターヘッド50のチップホルダー46をY1方向(Y軸の往方向)への直線移動−1/2回転T2移動−Y2方向(Y軸の複方向)への直線移動−1/2回転T3移動を順次組み合わせることによって形成する。
【0058】
図5の(c)は四隅がR(円弧)付けされた略矩形形状のスクライブ線R3を得たものである。これは、スクライブヘッド32をY軸方向の駆動とX軸方向の駆動の両方の駆動を使って行う。このスクライブ線R3は、回転式カッターヘッド50のチップホルダー46をY3方向(Y軸の往方向)への直線移動−1/4回転T4(90°回転)移動−X1方向(X軸の往方向)への直線移動−1/4回転T5(90°回転)移動−Y4方向(Y軸の複方向)への直線移動−1/4回転T6(90°回転)移動−X2方向(X軸の複方向)への直線移動−1/4回転T7(90°回転)移動を行いながらカッターチップでスクライブすることによって形成できる。
【0059】
このようにしてスクライブした後で、スクライブ装置20に連結或いは別途に配設した切断装置でスクライブ線の部分を切断することによって円形状のガラスや長円形状のガラス、或いは四隅が円弧のR付けされた略矩形形状のガラスが得られる。
【0060】
尚、本実施形態における回転式カッターヘッド50はアーム40にチップホルダー46を1個設けたものからなるが、2個、3個、4個と複数設けることも可能である。例えば、チップホルダー46を2個設けて360°回転すると円形のリング状ガラスを製作することができる。チップホルダー46を複数設けるにはアーム40に複数の穴を並べて形成し、その穴にチップホルダー46ーを取付ければ良い。
【0061】
また、本実施形態においては、アーム40の先端に1個の穴を設けて、その穴にチップホルダー46を設けたが、穴は必要に応じて複数、所要間隔に設けることもできる。そして、その要望の穴にチップホルダー46を設けると要望するオフセット量を得ることができる。形状の大きさに応じて適宜に穴を選択し、その選択した穴にチップホルダー46を設けると良い。
【0062】
このように、スクライブ装置20に回転式カッターヘッド50を用いることにより、1個のカッターヘッド50で円形状、長円形状、略矩形形状のガラスを製作することができる。また、また、その大きさも自由に設定することができる。しかも、自動的に製作することがきるので量産性があり、製造コストも非常に安くできる。また、ガラスの切断形状も滑らかな曲線が得られ、切断面も滑らかな面が得られるので綺麗な切断面が得られる。
【0063】
尚、本実施形態においては、回転式カッターヘッド50の回転駆動の回転制御手段はモータ33、プーリ45、ベルト34などから構成したが、回転制御手段はこの構成に限るものではなく、モータ、歯車などの構成で回転制御を行っても良く、また、目的にかなうものであれば他の構成のものであっても構わない。
【0064】
また、スクライブヘッド32のX軸方向の駆動はモータ29、ボールネジを介してヘッド移動板28をX軸方向に駆動させることによって行っているが、スクライブヘッド32のX軸方向の駆動はこの構成に限るものではなく、ボールネジに代えてベルトを用いた構成でスクライブヘッド32のX軸方向の駆動を行なう構造であっても良い。
【実施例1】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明の更に詳しい内容を説明する。最初に、本発明の実施例1を図6、図7を用いて説明する。図6は本発明の実施例1に係る回転式カッターヘッドの斜視図を示している。また、図7は図6における回転式カッターヘッドでのスクライブ方法によって得られたガラスの平面図を示している。
【0066】
実施例1に係る回転式カッターヘッド70は、図6に示すように、アーム60に2個のチップホルダー66を設けたものからなる。アーム60はアーム軸61をアーム板62の一方端側に圧入などの方法で固定した構造を取っており、アーム軸61はスクライブヘッド(前述の実施形態で説明したスクライブヘッドと同一仕様のもの)に取付けられる。また、アーム板62は他方端側に所定の間隔を持って62b1、62b2、62b3、62b4なる複数の穴を順次形成したものからなっている。この62b1、62b2、62b3、62b4なる複数の穴はチップホルダー66が取付けられる穴で、スクライブヘッドの中心軸Q(この中心軸Qはアーム軸61の中心軸にもなっている)からのチップホルダー66の位置のオフセット量の位置可変手段として用いている。本実施例1では62b1、62b2、62b3、62b4なる4個の穴を設けてあるが、特に4個に限定するものではなく必要とする個数の穴を設けるのが好ましい。
【0067】
本実施例1においては、62b1の穴と62b3の穴にそれぞれチップホルダー66を止めネジなどを用いて平行にして固定している。従って、62b3の穴に取付けたチップホルダー66はP1なるオフセット量を持ち、62b1の穴に取付けたチップホルダー66はP2なるオフセット量を持っている。2個のチップホルダー66はその先端にそれぞれカッターチップ69を持ち、この2個のカッターチップ69でガラスのスクライブを行う。
【0068】
この2個のチップホルダー66を取付けた回転式カッターヘッド70は、前述の実施形態と同様に、モータ、ベルトなどの構成による回転制御手段により制御可能に回転する。図7は2個のチップホルダー66を取付けた回転式カッターヘッド70を1回転(360°回転)回転させながら2個のチップホルダー66のそれぞれのカッターチップ69でガラスをスクライブし、切断して形成した円形のリング状ガラスを示している。
【0069】
オフセット量P1の所に設けたチップホルダー66のカッターチップ69でリングの内径部分がスクライブされ、オフセット量P2の所に設けたチップホルダー66のカッターチップ69でリングの外形部分がスクライブされる。その内径部分のスクライブ線と外形部分のスクライブ線を切断すると、内径P1、外形P2のリング形状のガラスG1が得られる。リングの幅は2個のチップホルダーのオフセット量の差によって決まるので、チップホルダー66を取付ける穴の位置を変えることによってリングの幅を自由に変えることができる。
【0070】
図7に示すリング状のガラスG1は回転式カッターヘッド70を1回転(360°回転)することによって得られる。前述の実施形態で述べたように、回転式カッターヘッド70チップホルダー66をY軸の往方向への直線移動−1/2回転(180°回転)移動−Y軸の複方向への直線移動−1/2回転(180°回転)移動を繰り返すことによって長円形状のリング状ガラスが得られる。
【0071】
また、回転式カッターヘッド70のチップホルダー66をY軸の往方向への直線移動−1/4回転(90°回転)移動−X軸の往方向への直線移動−1/4回転(90°回転)移動−Y軸の複方向への直線移動−1/4回転(90°回転)移動−X軸の複方向への直線移動−1/4回転(90°回転)移動を繰り返すことによって四隅がR付けされた略矩形形状のリング状ガラスを得ることができる。
【0072】
また、アーム60に取付けるチップホルダー66は2個に限らず、更に3個、4個と増やすことも可能である。チップホルダー66の数を増やすことにより大きさの異なるリング状のガラスを一度に複数個形成することができる。
【0073】
尚、本実施例1においては、リング形状のガラスを主体に説明したが、リング形状のガラスと同時に円形のガラスや長円形のガラス、略矩形のガラスも形成されることは云うまでもない。
【実施例2】
【0074】
次に、本発明の実施例2に係る回転式カッターヘッドを図8、図9を用いて説明する。ここで、図8は本発明の実施例2に係るスクライブ装置に取付かれるスクライブヘッド収納部と回転式カッターヘッドの側面図を示していて、スクライブヘッドと回転式カッターヘッドは一部分半裁の断面図でもって示している。また、図9は図8に示された回転式カッターヘッドの斜視図を示している。
【0075】
実施例2の回転式カッターヘッドの特徴は、カッターチップの押圧力をガラスなる脆性材料の厚みの変化に応じて制御できる押圧力制御手段を設けた構造にしてあること、チップホルダーのオフセット量の位置可変手段をアームに設けた長窓穴で調整する構造にしてあることである。
【0076】
最初に、カッターチップの押圧力制御手段の構造について図8を用いて説明する。図8において、80はスクライブヘッド収納部を示しており、このスクライブヘッド収納部80はヘッド移動板28上にある。このヘッド移動板28は、前述の実施形態で図1を用いて説明したスクライブ装置のヘッド移動板と同じ仕様の部品を指している。このヘッド移動板28は図1で示したモータ29と図示していないボールネジによってX軸方向に制御可能に駆動する。(図1参照)
【0077】
再び図8に戻り、スクライブヘッド収納部80の内部にあっては、ヘッド移動板28にヘッド昇降板81が係合して設けられている。このヘッド昇降板81は図示していないエアーシリンダーによって上下に昇降可能に移動する。また、このヘッド昇降板81にはスクライブヘッド82とモータ83が固定されており、スクライブヘッド82には回転式カッターヘッド100が取付けられている。スクライブヘッド82はヘッド本体82aとベアリング82bと栓82cとから構成されており、内部に中グリによって形成した中空部82dを持っている。栓82cは中空部82dを塞ぐ栓で、ネジ止め・接着などの方法でヘッド本体82aに固く固定される。また、この栓82cには穴が設けてあり、この穴にはパイプ87が固く取付けられて、パイプ87を介して外部から圧縮空気88が中空部82dに送り込まれるようになっている。
【0078】
回転式カッターヘッド100はアーム90とアーム90の先端にナット95を介してネジ止めされたチップホルダー96とから構成している。チップホルダー96はネジ部を持ったホルダー97にピン98を介してカッターチップ99を設けた構成をなしている。また、アーム90はアーム軸91とアーム板92とから構成しており、このアーム軸91がスクライブヘッド82のベアリング82bと係合して取付けられる。これによって回転式カッターヘッド100がスクライブヘッドに82に取付けられる。また、このアーム軸91の先端にはネジ穴91aが設けられており、スクライブヘッド82に取付けられた後にそのネジ穴91aにピストン93がネジ止めされて取付けられる構造になっている。そして、スクライブヘッド82の中空部82dとピストン93と圧縮空気88とでもって加圧シリンダーの働きをなしていて、押圧力制御手段としての構成をなしている。パイプ87を介して圧縮空気88が中空部82dに送り込まれるとピストン93が押し下げられ、それに併せてピストン93に連結した回転式カッターヘッド100が下方に押し下げられ、ガラスに当接したカッターチップ99の押圧力が大きくなる。
【0079】
また、このカッターチップ99の押圧力制御手段は、圧縮空気を中空部82dに供給するためのエアー回路(図示していない)を持つ。このエアー回路の構成は、圧縮空気源から出た圧縮空気はフィルター、レギュレーター、リュブリケータを順次通過し、減圧弁で圧力調整される。そして、電磁弁式のディストリビューターを経て中空部82dに供給される。電磁弁式のディストリビューターは制御部からの信号で駆動され、中空部82dとの間のエアー流路を接続または遮断することができる。また、減圧弁に供給されるエアーの圧力を監視する圧力スイッチが設けられており、エアーの圧力が所定の圧力以下に成った場合、或いは、所定の圧力以上になった場合に前記制御部に異常信号を出力するようになっている。
【0080】
予めカッターチップ99の押圧力による供給エアー圧の許容範囲を設定しておき、その許容範囲のエアー圧を減圧弁で調整する。例えば、ガラスの厚みが厚くなると、ガラス面上で接触するカッターチップ99の加圧力は大きくなり、同時に供給エアー圧も高くなる。そして、このエアー圧が許容範囲を越えると減圧弁が働いて供給エアー圧を下げ、そして、カッターチップ99の押圧力を低くする調整が行われる。ガラスの厚みが薄くなると、上記の働きと逆の働きが行われてカッターチップ99の押圧力を高くする調整が行われる。
【0081】
このような加圧力制御手段を設けることによって、ガラスの板厚が変わっても一定の押圧力の下でスクライブを行うことができ、一定のスクライブの深さが得られる。そして、ガラスを切断したときに滑らかで綺麗な切断面が得られる。また、カッターチップの摩耗も少なくなり、カッターチップの研磨回数を減らすことができる。尚、実施例3ではエアーシリンダーの構造をスクライブヘッド82の内部にその構造を設けたが、出来合の加圧シリンダーをスクライブヘッド82に取付ける構造を取ることも可能である。
【0082】
また、この回転式カッターヘッド100はモータ83の駆動を利用して制御可能に回転駆動する。即ち、アーム90のアーム軸91にはプーリ85が固定され、このプーリ85がベルト84を介してモータ83と連結し、モータ83の回動に合わせてプーリ85が回動し、同時にアーム90が回転駆動する。このモータ83、ベルト84、プーリ85はアーム90を回転制御する手段として用いており、モータ83にサーボモータを用いていることから、アーム90の回転方向や回転角は制御可能に回転する。そして、アーム90とカッターホルダー96とからなる回転式カッターヘッド100も制御可能に回転する。また、スクライブヘッド82及びモータ83が昇降可能なヘッド昇降板81に固定されていることから、回転式カッターヘッド100はヘッド昇降板81の昇降に合わせて上下方向(Z軸方向)に移動する。
【0083】
次に、カッターヘッド100は前述した如くアーム90にナット95を介してチップホルダー96をネジ止めした構成を取る。その構造は、図9に示すように、アーム板92の一方端にアーム軸91が圧入などの方法で固くアーム板92と固定されている。アーム板92の他方端側には長い長窓穴92cが設けられて、その長窓穴92cにオフセット量Pを持ってチップホルダー96がナット95を介して固定されている。チップホルダー96はネジ部を設けたホルダー97の先端にピンを介してカッターチップ99を設けたものからなるが、ホルダー97のネジ部が長窓穴92cに挿入され、上からナット95でそのネジを締め付けてアーム板92に固定する構造を取っている。
【0084】
このような構成を取ることにより、オフセット量Pは所望の値に自由に設定することができる。場合によっては、長窓穴92cに沿ってオフセット量を示す目盛などを刻んでおくと所望のオフセット量で容易にチップホルダー96を組み付けることができる。
【0085】
また、この長窓穴92cに2個のチップホルダー96を取付けることも可能である。2個設けるとリング状のガラスを製作することができる。
【0086】
図10はアームに長窓穴の位置可変手段を設けた他の構造を示したものである。図10に示すように、この回転式カッターヘッド120はアーム110、チップホルダー116から構成するが、アーム110の長窓穴112cはアーム軸111の取付け側に設けている。即ち、アーム板112の一方端側に長窓穴112cを設け、この長窓穴112cにアーム軸111に設けたネジ111bを挿入させて、ナット115でもって下側から締め付けてアーム軸111をアーム板112に固定する構造を取っている。また、アーム板112の他方端には穴112bを設け、その穴112bにチップホルダー116を止めネジなどの方法で固定している。
【0087】
オフセット量Pの調整はアーム軸111の固定側で、アーム軸111を長窓穴112cでの位置をずらして調整する。このような構造を取ることによりオフセット量Pは所望の値に自由に設定することができる。
【0088】
尚、図10に示すカッターヘッド120はチップホルダー116を1個設けた構成を取っているが、2個設けることも可能である。穴を1個追加して、その穴にチップホルダー116を設けるか、或いは、長窓穴112cを利用して、その長窓穴112cにチップホルダー116を設けることで2個のチップホルダー116を設けた構成が取れる。
【実施例3】
【0089】
次に、本発明の実施例3に係る回転式カッターヘッドを図11〜図13を用いて説明する。ここで、図11は本発明の実施例3に係る回転式カッターヘッドの側面図を示しており、図12は図11におけるオフセット位置制御ユニットの下斜め方向から見た斜視図を示している。また、図13は図11における回転式カッターヘッドを用いてスクライブしたスクライブ線の一部の形状を示した平面図で、図13の(a)は直線と曲線で形成したスクライブ線、図13の(b)は曲線のみで形成したスクライブ線を示している。
【0090】
実施例3の回転式カッターヘッド150は、図11に示すように、アーム130とアームに130に取付けられたオフセット位置制御ユニット140とから構成される。そして、この回転式カッターヘッド150はスクライブヘッドに取付けられて制御可能に回転する。また、ここでの回転式カッターヘッド150の特徴はオフセット量Pを自由に調整制御できるオフセット位置制御ユニット140を持っていることである。このオフセット位置制御ユニット140はアーム軸131とアーム板132とから構成されたアーム130のアーム板132に設けている。
【0091】
実施例3の回転式カッターヘッド150は、スクライブヘッドの中心軸Q(これは、アーム軸131の中心軸にもなっている)からオフセットしたカッターチップ149のオフセット位置の位置可変手段としてオフセット位置制御ユニット140を用いている。そして、このオフセット位置制御ユニット140は、モータ145とチップホルダー146と調整台141、ボールネジ142、ガイド棒143、バネ144などから構成していて、調整台141、ボールネジ142、ガイド棒143、バネ144はチップホルダー146をスライドするスライド機構部品になっている。
【0092】
図12により、調整台141はコの字型をした枠になっており、そのほぼ中心部にボールネジ142が設けられて、このボールネジ142は回動自在に保持されている。また、この調整台141にはボールネジ142の両脇に当たる部分に2本のガイド棒143が設けられて調整台141に固定されている。チップホルダー146はホルダー147にピンを介してカッターチップ149を取付けたものからなるが、更に、このチップホルダー146は1個のネジ穴147bと2個の穴147cを持っており、1個のネジ穴147bはボールネジ142と係合し、2個の穴147cは2本のガイド棒143と係合している。そして、このホルダーチップ146はボールネジ142の回動に応じてO−O軸方向に移動できるようになっている。また、2本のガイド棒143は、ボールネジ142の回動に応じて移動するチップホルダー146を傾かずに円滑に移動できるようにするためにガイド目的で設けている。また、2本のガイド棒143には、図11に示すように(図12では省略してある)、バネ144を設けてあり、チップホルダー146が付勢された状態におかれている。
【0093】
モータ145はサーボモータを用いているが、このモータ145は歯車(図示していない)を介してボールネジ142と連結しており、モータ145の回動に沿ってボールネジ142が回動するようになっている。モータ145が回動するとボールネジ142が回動し、そして、ボールネジ142の回動によってチップホルダー146がO−O軸方向に移動する。
【0094】
尚本発明では、以降、O−O軸をオフセット軸、O−O軸の移動をオフセット移動と定義付けて説明することにする。
【0095】
実施例3のチップホルダー146はオフセット軸を持ってモータ145により制御可能にオフセット移動ができる。また、前述したように回転式カッターヘッド150がスクライブヘッドを中心軸Qにして制御可能に回転駆動することから、回転式カッターヘッド150に取付けられたチップホルダー146は中心軸Qからのオフセット量Pを持って制御可能に回転移動する。そして、そのオフセット量Pは、チップホルダー146が制御可能にオフセット移動できることから、自由に設定することができる。前述の実施例1、実施例2での回転式カッターヘッドでは、オフセット量Pを変える場合に、カッターヘッドを取り外して再び所定の位置に取付け直しをしなければならなかった。しかしながら、本実施例3の回転式カッターヘッドは取付け直しをする必要はなく、予めオフセット位置情報を操作パネルから入力しておくことでオフセット量Pを変更することができる。これにより、スクライブ装置の稼働率を高めることができる。また、オフセット移動制御が自由にできることによってスクライブするスクライブ形状に幅を広げることができる。
【0096】
以下、本実施例3の回転式カッターヘッド150を用いてできる簡単なスクライブ形状モデルを図13を用いて説明する。ここで、図13の(a)において、一点鎖線はスクライブヘッドの中心軸Q(これは、アーム軸の中心軸でもある)の移動軌跡を示していて、矢印が移動の進行方向を示している。Q1、Q2、Q3、Q4、Q5は移動停止ポイントで、移動が停止した位置を示している。また、実線のRはスクライブ線を示していて、カッターチップ149で形成したR1、R2、R3、R4のスクライブ線からなっている。R1はX軸と平行な直線、R2はX軸に対して傾斜した直線、R3は1/4円なる曲線、R4はY軸と平行な直線になっている。そして、これらのスクライブ線は繋がった連続線なるスクライブ線になっている。また、r1、r2、r3、r4はスクライブ線の変曲点を示している。P1、P2、Pm、Pnはオフセット量を示している。また、停止ポイントQ1の所に示した角度90°はスクライブヘッドの中心軸Qの進行方向X軸に対してのカッターヘッド150の位置角度を示しており、同様に、停止ポイントQ3の所に示したθは進行方向X軸に対してのカッターヘッド150の90°より大きい位置角度を示している。また、停止ポイントQ5の所に示した角度90°はX軸に対してのカッターヘッド150の位置角度と、カッターヘッド150の回転角度を示している。
【0097】
R1からR4なるスクライブ線の形成方法は次ぎのスクライブ方法を取ることによって形成される。
最初に、(1)Q1の停止ポイントで、Z軸駆動を行って回転式カッターヘッド150を上昇させ(これは、スクライブヘッドを上昇させることによってカッターヘッド150は上昇する)スクライブヘッドの進行方向X軸に対してカッターヘッド150を位置可変手段を用いて90°をなす位置角度と、オフセット位置制御ユニットなる位置可変手段を用いてオフセット量P1とを設定する。
次に、(2)カッターヘッド150を下降させてカッターチップ149をガラス面に所要の押圧力の下で接地させ、そして、停止ポイントQ2の所までX軸方向の直線移動を行ってR1のスクライブ線を形成する。
次に、(3)停止ポイントQ2の所でカッターヘッド150を上昇させ、その上昇した状態で停止ポイントQ3の所までカッターヘッド150を移動し、カッターヘッド150を回転させて角度θ2(図13の(a)においてθ2は90°より大きい)の位置角度に設定し、更に、オフセット移動を行ってオフセット量P2を設定する。このオフセット量P2は変曲点r2と停止ポイントQ3との距離になっている。
次に、(4)Q3のポイントでカッターヘッド150を下降させてカッターチップ149をガラス面に所要の押圧力の下で接地させ、スクライブヘッドをQ4の停止ポイントまで直線移動させながら、同時に、オフセット移動を行ってオフセット量をP2からPmまで連続的に大きくしていき、カッターチップ149でスクライブを行う。これによって、傾きのあるスクライブ線R2が形成される。Q3のポイントでカッターヘッド150を90°より大きいθ角度に振ったとき、カッターチップ149の刃の向きは変曲点r3の方向に向いた状態になる。そして、その状態で連続的にオフセット移動を行いながらスクライブヘッドをQ4のポイントに進めてもカッターチップ149に大きな負荷が掛かることなくスムーズにスクライブを施すことができる。
【0098】
次に、(5)停止ポイントQ4でカッターヘッド150を上昇させ、スクライブヘッドをX軸、Y軸の駆動を行ってQ5のポイントに移動させる。そして、カッターヘッド150を回転させてX軸に対して90°の位置角度に設定し、更に、オフセット移動を行ってオフセット量をPnに設定する。オフセット量Pnは変曲点r3とポイントQ5の距離になっている。
次に、(6)Q5のポイントでカッターヘッド150を下降してカッターチップ149をガラス面に所要の押圧力の下で接地させ、その状態でカッターヘッド150を90°回転駆動させてカッターチップ149でスクライブを行う。これによって、R3の1/4円の曲線なるスクライブ線が形成される。
次に、(7)上記(6)で1/4円のスクライブ線R3を施した状態でスクライブヘッドをY軸方向に直線移動させ、カッターチップ149の直線移動でスクライブ線R4を形成する。
【0099】
以上のスクライブ方法を行うことによりR1、R2、R3、R4からなる連続したスクライブ線が得られる。そして、このようなスクライブ線を一周に渡って形成し、そして、スクライブ線に沿ってガラスを切断すれば、X軸に平行な直線、Y軸に平行な直線、円弧なる曲線、傾きを持った直線などが混ざり合った異形形状(本発明においては、X軸、Y軸に平行な直線や円弧曲線の外に傾きを持った直線や円弧でない曲線などが入って形成された形状のものを異形形状と呼ぶことにする)のガラスが得られる。
【0100】
次に、図13の(b)に示したスクライブ線の形成方法について説明する。ここで、図13の(b)の形状は楕円形状の一部分を示している。また、図13の(b)において、一点鎖線はスクライブヘッドの中心軸Q(これは、アーム軸の中心軸でもある)の移動軌跡を示していて、矢印が移動の進行方向でX軸方向に移動する。Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、・・・は移動停止ポイントで、移動が停止した位置を示している。また、実線のRはスクライブ線を示していて、カッターチップ149で形成したR1、R2、R3、R4、R5、・・・のスクライブ線の連結したものからなっている。また、r1、r2、r3、r4、r5、・・・はスクライブ線の変曲点を示している。また、θ1、θ2、θ3、θ4、・・・はそれぞれの止ポイントでのスクライブヘッドの進行方向に対してのカッターヘッド150の位置角度を示している。即ち、Q1ポイントではθ1の位置角度、Q2ポイントではθ2の位置角度、などとなっている。停止ポイント毎にカッターヘッド150の位置角度が変わる。これらの位置角度の調整は回転制御手段で行う。また、γ1、γ2、γ3、γ4、・・・はスクライブ中での回転式カッターヘッド150の回転角度を示している。P1、P2、P3、P4、・・・はオフセット量を示していて、P1は変曲点r1とポイントQ1の距離になっている。同様に、P2は変曲点r2とポイントQ2の距離、P3は変曲点r3とポイントQ3の距離になっている。停止ポイント毎にチップホルダー146のオフセット移動が行われ、オフセット量が変わる。
【0101】
ここで、停止ポイントQ1で、カッターチップ149をガラス面に所定の押圧力の下で接地して、オフセット量P1の下でカッターヘッド150を角度γ1の回転移動を行うとR1なる円弧のスクライブ線が得られる。同様にして、停止ポイントQ2で、オフセット量P2の下でカッターヘッド150を角度γ2の回転移動を行うとR2なる円弧のスクライブ線が得られる。これを順次繰り返してスクライブ線R1、R2、R3、R4、R5、・・・を得る。そして、これを繋げるとなだらかな楕円の近似曲線が得られる。
【0102】
以下、図13の(b)に示した形状のスクライブ線の形成方法を説明する。最初に、(1)Q1のポイントでカッターヘッド150を上昇させ、カッターヘッド150の回転制御手段を用いてθ1の位置角度を設定する。また、チップホルダー146の位置可変手段を用いてチップホルダー146のオフセット移動を行いオフセット量P1を設定する。
次に、(2)カッターヘッド150を下降させてカッターチップ149をガラス面に所定の押圧力の下で接地させ、回転制御手段を用いてカッターヘッド150をγ1角度回転移動させる。これによって、カッターチップ149によるR1のスクライブ線が得られる。
次に、(3)カッターヘッド150を上昇させ、スクライブヘッドをQ2のポイントに直線移動させ、回転制御手段を用いてカッターヘッド150をθ2の位置角度に設定し、また、位置可変手段を用いてチップホルダー146のオフセット量P2を設定する。
次に、(4)カッターヘッド150を下降させてカッターチップ149をガラス面に所定の押圧力の下で接地させ、回転制御手段を用いてカッターヘッド150をγ2角度回転移動させる。これによって、R2のスクライブ線が得られる。
以降は、上記(3)と(4)の作業をポイントQ3以降のポイント毎に行い、R3以降のスクライブ線を形成する。
【0103】
図13の(b)はスクライブ線の一部分を取り上げたものであるが、上記のような形成方法を一周に渡って行うことにより楕円形状のものが得られる。また、外形の形状によっては停止ポイントの位置を沢山設け、オフセット量やカッターヘッドの回転角度を小刻みに変化させるとかなり複雑な異形曲線の形状も得ることができる。そして、そのスクライブ線に沿ってガラスを切断すると異形曲線の形状部品が得られる。
【0104】
また、上記のスクライブ作業はQ1、Q2、・・・の停止ポイントの位置座標、θ1、θ2、・・・の位置角度、γ1、γ2、・・・の回転角度、P1、P2、・・・のオフセット量などの情報を予め駆動回路に入力しておくことにより全て自動的に作業が行われる。なだらかな外形曲線の場合はさほどの時間を要せずにスクライブ形状が形成できる。外形曲線が著しく凹凸が激しいものはスクライブ形成に少し時間を要するが、切断したガラスの外形曲線はかなり滑らかで綺麗な形状が得られる。また、切断面もかなり綺麗に仕上げられる。
【0105】
以上述べたように、チップホルダーの自動的に制御可能な位置可変手段を設けることによりかなり複雑な外形形状のガラスを製作することができる。
【0106】
実施例3の回転式カッターヘッド150はオフセット位置制御ユニット140なる位置可変手段を1個設けたものであるが、2個設けることも可能である。2個設けるとリング形状のガラスが得られる。
【0107】
以上、実施形態や実施例1、2、3をもって本発明の回転式カッターヘッド及びスクライブ装置やスクライブ方法などを説明した。その中で、脆性材料にガラスを挙げて説明を行ったが、ガラス以外の脆性材料として石英やアルミナ、ジルコニア、チッカ珪素、炭化珪素などのセラミックも挙げることができる。これらの脆性材料は何れもガラスと同様に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態に係るスクライブ装置の要部の斜視図である。
【図2】図1におけるスクライブヘッド収納部と回転式カッターヘッドの側面図である。
【図3】図2に示されたアームの斜視図である。
【図4】図2におけるアームの回転駆動によるカッターチップのスクライブ状態を示した説明図である。
【図5】図1におけるスクライブ装置でスクライブしたスクライブ形状を示した平面図で、図5の(a)は円形状、図5の(b)は長円形状、図5の(c)は四隅がR(円弧)の付いた略矩形形状のものを示している。
【図6】本発明の実施例1に係る回転式カッターヘッドの斜視図である。
【図7】図6における回転式カッターヘッドでのスクライブ方法によって得られたガラスの平面図である。
【図8】本発明の実施例2に係るスクライブ装置に取付かれるスクライブヘッド収納部と回転式カッターヘッドの側面図である。
【図9】図8に示された回転式カッターヘッドの斜視図である。
【図10】アームに長窓穴の位置可変手段を設けた他の構造を示した斜視図である。
【図11】本発明の実施例3に係る回転式カッターヘッドの側面図である。
【図12】図11におけるオフセット位置制御ユニットの下斜め方向から見た斜視図である。
【図13】図11における回転式カッターヘッドを用いてスクライブしたスクライブ線の形状を示した平面図で、図13の(a)は直線と曲線で形成したスクライブ線、図13の(b)は曲線のみで形成したスクライブ線を示している。
【図14】特許文献1に示されたところのガラス切断装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0109】
20 スクライブ装置
21 装置本体部
22 テーブル
23 操作パネル
24 ブリッジ
25 支柱
26 ガイドバー
27 ガイド
28 ヘッド移動板
29、33、83、145 モータ
30、80 スクライブヘッド収納部
31、81 ヘッド昇降板
32、82 スクライブヘッド
32a、82a ヘッド本体
32b、82b ベアリング
34、84 ベルト
40、60、90、110、130 アーム
41、61、91、111、131 アーム軸
42、62、92、112、132 アーム板
42b、62b1、62b2、62b3、62b4、112b 穴
45、85 プーリ
46、66、96、116、146 チップホルダー
47、97、117、147 ホルダー
48、98 ピン
49、69、99、119、149 カッターチップ
50、70、100、120、150 回転式カッターヘッド
82c 栓
82d 中空部
88 圧縮空気
92c、112c 長窓穴
93 ピストン
95、95 ナット
140 オフセット位置制御ユニット
141 調整台
142 ボールネジ
143 ガイド棒
144 バネ
G、G1 ガラス
P、P1、P2、P3、P4、Pm、Pn オフセット量
Q 中心軸
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5 移動停止ポイント
R、R1、R2、R3、R4、R5 スクライブ線
θ1、θ2、θ3、θ4 位置角度
γ1、γ2、γ3、γ4 回転角度
r1、r2、r3、r4、r5 変曲点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドであって、該カッターヘッドはアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成され、前記アームは前記スクライブヘッドに回転制御可能に取付けられ、前記チップホルダーは前記アームに少なくとも1個取付けられると共に前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に設けられて前記アームの回転によって前記スクライブヘッドの中心軸の周りを回転することを特徴とする回転式カッターヘッド。
【請求項2】
前記アームは回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転することを特徴とする請求項1に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項3】
前記回転制御手段は少なくともモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材からなることを特徴とする請求項2に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項4】
前記アームは前記チップホルダーのオフセット量を所定量可変にするための位置可変手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項5】
前記位置可変手段は所要の間隔に設けた複数のチップホルダー取付け穴からなることを特徴とする請求項4に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項6】
前記位置可変手段は長窓穴からなることを特徴とする請求項4に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項7】
前記位置可変手段はモータと前記チップホルダーをスライドするスライド機構部材とからなり、前記チップホルダーの位置可変は自動的に制御可能になっていることを特徴とする請求項4に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項8】
前記スクライブヘッドに前記カッターチップの押圧力を脆性材料の板厚に応じて制御できる押圧力制御手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転式カッターヘッド。
【請求項9】
ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドを備え、該スクライブヘッドに設けたカッターヘッドのカッターチップで前記ワークにスクライブを行うスクライブ装置において、前記カッターヘッドは前記請求項1乃至8のいずれかに記載の回転式カッターヘッドであることを特徴とするスクライブ装置。
【請求項10】
ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に1個又は2個取付け、前記アームを回転駆動させて前記チップホルダーを前記スクライブヘッドの中心軸の周りを回転させ、前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするスクライブ方法。
【請求項11】
ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に1個又は2個取付け、前記アームの回転駆動で前記チップホルダーを回転移動させ、前記スクライブヘッドの前記横軸あるいは縦軸の移動駆動で前記チップホルダーを直線移動させ、該チップホルダーの回転移動と直線移動を相互に行って前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするスクライブ方法。
【請求項12】
ワークテーブルに固定した脆性材料よりなるワークの表面上を縦軸、横軸、垂直軸に制御可能に移動するスクライブヘッドの下部に取付けられるカッターヘッドを回転制御可能なアームとカッターチップを設けたチップホルダーとから構成し、前記アームを前記スクライブヘッドに取付けると共に回転制御手段を介して前記スクライブヘッドの中心軸を回転中心軸にして制御可能に回転できるようにし、前記チップホルダーを前記アームの前記スクライブヘッドの中心軸からオフセットした位置に自動的に制御可能な位置可変手段を介して1個又は2個取付け、前記アームの回転駆動で前記チップホルダーを回転移動させ、前記スクライブヘッドの前記横軸あるいは縦軸の移動駆動で前記チップホルダーを直線移動させ、前記制御可能な位置可変手段でチップホルダーを回転移動及び直線移動以外のオフセット移動をさせ、該チップホルダーの回転移動と直線移動とオフセット移動とを相互に組み合わせて前記チップホルダーに設けたカッターチップで前記ワークにスクライブを行うことを特徴とするスクライブ方法。
【請求項13】
前記回転制御手段は少なくともモータとモータの回転をアームに伝達する伝達部材からなることを特徴とする請求項10、11、12のいずれかに記載のスクライブ方法。
【請求項14】
前記位置可変手段はモータと前記チッブホルダーをスライドするスライド機構部材とからなることを特徴とする請求項12に記載のスクライブ方法。
【請求項15】
前記請求項10に記載のスクライブ方法で円形部品又は円形のリング状部品を形成したことを特徴とする脆性材料部品
【請求項16】
前記請求項11に記載のスクライブ方法で長円形部品又は長円形のリング状部品、又は四隅がR付けされた略矩形部品又は四隅がR付けされた略矩形のリング状部品を形成したことを特徴とする脆性材料部品
【請求項17】
前記請求項12に記載のスクライブ方法で外形が曲線と直線とが混ざり合った異形形状の部品、又は外形が異形曲線をなす形状の部品、又はこれらの外形形状をなすリング状の部品を形成したことを特徴とする脆性材料部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−126322(P2007−126322A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319742(P2005−319742)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】