説明

回転機器及び回転機器の製造方法

【課題】小型化しても信頼性を維持または向上できる回転機器を提供する。
【解決手段】回転機器としてのディスク駆動装置100はベースプレート50とハブ10と、ベースプレート50に対してハブ10を回転自在に支持する軸受ユニットと、を備える。軸受ユニットは、開口部の内周に結合される外側スリーブ81と、外側スリーブ81の内周に結合される内側スリーブ80と、内側スリーブ80に収納され一端部をベースプレート50に結合されるシャフト20と、ラジアル動圧溝RBと、潤滑剤92と、を含む。外側スリーブ81とハブ10の結合部分には、硬化性樹脂94を介在させて外側スリーブ81とハブ10を結合する接着領域となる凹部10mと、外側スリーブ81の軸方向において凹部10mの両側に設けられて当該凹部10mに対応する外側スリーブ81とハブ10との隙間より狭い部分を形成する突出領域となる傾斜防止部10nと、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器及び回転機器の製造方法、特に小型化しつつも回転信頼性を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(以下、ディスク駆動装置やHDDと表現する場合もある)に代表される回転機器は一層の小型化が進められていると共に、長期の使用に耐える信頼性の向上を両立させることが求められている。
【0003】
多くのディスク駆動装置は記録ディスクを載置するためのハブを備えている。ハブは軸受ユニットを介してベースプレートに支持されている。軸受ユニットはシャフトとこのシャフトを収納するシャフト収納部材とを含み、シャフトの外周面またはシャフト収納部材の内周面の少なくとも一方にラジアル動圧溝を形成している。軸受ユニットは、ラジアル動圧溝の形成空間に介在させた潤滑剤にて動圧を発生させることで軸受として機能する。なお、ハブは軸受ユニットの外周に結合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−289646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスク駆動装置において、良好なデータの書き込み及び読み出しを行うためには、記録再生ヘッドに対して記録ディスクを安定して高速で回転させることが要求される。そのためにハブは、軸受ユニットに対して十分な接合強度を維持した状態で実質的に直角に結合される必要がある。
【0006】
ところで、ハブを軸受ユニットに結合するひとつの方法として、シャフト収納部材の外周にハブを接着して固定する方法が考えられる。この方法により所望の結合強度を確保しようとする場合、ハブとシャフト収納部材の間に比較的大きな隙間を形成して、その隙間に多くの硬化性樹脂(接着剤)を介在させることが一般的である。しかし、その隙間に介在した硬化性樹脂は、硬化する際に軸方向や周方向において不均一に収縮することがある。硬化性樹脂が周方向において不均一に収縮するとハブは軸受ユニットに対して偏心し易くなる。また、軸方向において不均一に収縮するとハブは軸受ユニットに対して傾斜し易くなる。
【0007】
また、ハブを軸受ユニットに結合する他の方法として、シャフト収納部材の外周にハブを単に圧入して固定する方法が考えられる。圧入だけで所望の結合強度を確保するためには、いわゆる圧入代を10μm前後に設定するのが一般的である。しかし、シャフト収納部材の外周にハブを圧入すると、シャフト収納部材の内周面が内側に縮むような変形を生じるおそれがある。特に、ディスク駆動装置を小型化した場合には、それに伴いシャフト収納部材の円筒状の壁部が薄くなる傾向があり、シャフト収納部材の内周面の変形も相対的に大きくなる。ラジアル動圧溝がシャフト収納部材の内周面に形成されていたとすると、シャフト収納部材の内周面が変形するとラジアル動圧溝も変形することになる。つまり、シャフト収納部材の内周面の変形が大きくなるとラジアル動圧溝の変形も大きくなる。ラジアル動圧溝の変形が大きくなると、ラジアル動圧の分布のバランスが崩れて潤滑剤の流出を招き易くなる。その結果、軸受ユニットの寿命を大幅に縮める原因にもなる。なお、ラジアル動圧溝がシャフトの外周面に形成されている場合も、シャフト収納部材の内周面の変形により、シャフト収納部材に対向するラジアル動圧溝までの距離が変化するので、同様にラジアル動圧の分布のバランスが崩れて、上述と同様の不具合が生じる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化しても信頼性を維持または向上できる回転機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回転機器は、ベースプレートと、中央部分に開口部が形成されると共に、外周部分に記録ディスクが載置されるべきハブと、ベースプレートに対してハブを回転自在に支持する軸受ユニットと、を備える。軸受ユニットは、開口部の内周に結合される外側スリーブと、外側スリーブの内周に結合される内側スリーブと、内側スリーブに収納され一端部をベースプレートに結合されるシャフトと、内側スリーブの内周面とシャフトの外周面の少なくともいずれか一方に設けられたラジアル動圧溝と、内側スリーブの内周面とシャフトの外周面との間に介在する潤滑剤と、を含む。外側スリーブとハブの結合部分には、硬化性樹脂を介在させて外側スリーブとハブを結合する接着領域と、外側スリーブの軸方向において接着領域の両側に設けられて当該接着領域に対応する外側スリーブとハブとの隙間より狭い部分を形成する突出領域と、が形成されている。
【0010】
この態様によると、接着で外側スリーブとハブを接合することで外側スリーブの変形を抑制しラジアル動圧溝による動圧発生バランスが崩れることを防止しつつ、接着領域による接着強度の確保及び突出領域による接合の傾きが抑制できる。なお、「回転機器」は、記録ディスクを駆動するための装置であってもよく、例えばハードディスクドライブであってもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、回転機器の製造方法である。この方法は、回転機器の製造方法であって、内側スリーブに収納される小径部と小径部より大きな大径部を有するシャフトを含む軸受ユニットを組み立て、ハブに軸受ユニットを結合してサブアッセンブリを組み立て、サブアッセンブリに含まれるディスク載置部が調芯台の台座上に設けられた受け台に接触するようにサブアッセンブリを載置し、大径部を遊嵌状態で収納する軸受孔を有するベースプレートの当該軸受孔に硬化性樹脂を塗布し、軸受孔の中心と大径部の中心が一致するようにベースプレートを移動して、軸受孔の外縁に硬化性樹脂がはみ出すように軸受孔を大径部に嵌め合わせ、硬化性樹脂が硬化する前に、当該硬化性樹脂が軸受孔と大径部との隙間に均質に浸透させて、ベースプレートとサブアッセンブリを調芯台に載置した状態で軸受孔の外縁にはみ出した硬化性樹脂を仮硬化させ、硬化性樹脂が仮硬化した後にベースプレートとサブアッセンブリとを本硬化させる。
【0012】
この態様によると、ベースプレートの軸受孔に挿入される部分を大径部とすることで、確保できる接合面積を増大できる。その結果、硬化性樹脂による接合強度が増大可能になる。また、硬化性樹脂を仮硬化させ、硬化性樹脂が仮硬化した後にベースプレートとサブアッセンブリとを本硬化させることにより、段階的な硬化となり、硬化性樹脂の硬化収縮の影響による傾き抑制効果が向上する。また、ベースプレートとサブアッセンブリとの接合角度、例えば直角度調整が可能になり、組み立て精度を向上できる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化しても信頼性を維持または向上できる回転機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置(HDD)の内部構成を説明する説明図である。
【図2】図1のディスク駆動装置の記録ディスクを回転駆動する部分を説明する説明図である。
【図3】本実施形態のディスク駆動装置のハブの形状の一例を説明する説明図である。
【図4】本実施形態のディスク駆動装置のシャフト収納部材の上面図である。
【図5】本実施形態のディスク駆動装置のシャフト収納部材とシャフトの間に潤滑剤を注入することを説明する説明図である。
【図6】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図7】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図8】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図9】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図10】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図11】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図12】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図13】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の製造方法を説明する説明図である。
【図14】本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置の他の構造例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態(以下実施形態という)、図面に基づいて説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
図1は、本実施形態の回転機器の一例であるディスク駆動装置100の内部構成を説明する説明図である。なお、図1は、内部構成を露出させるためにトップカバーを取り外した状態を示している。
【0018】
ディスク駆動装置100は、ベースプレート50と、ハブ10と、磁気記録タイプの記録ディスク200と、データリード/ライト部8と、トップカバー(不図示)と、を備える。以降ベースプレート50に対してハブ10が搭載される側(図1の紙面表側)を上側として、ベースプレート50の長手方向を横方向として説明する。
【0019】
記録ディスク200は、ハブ10に載置され、ハブ10の回転駆動に伴って回転する。ベースプレート50はアルミニウムの合金をダイカストにより成型して形成することができる。ベースプレート50は、後述する軸受ユニットを介してハブ10を回転自在に支持する。データリード/ライト部8は、記録再生ヘッド8aと、スイングアーム8bと、ピボットアセンブリ8cと、ボイスコイルモータ8dと、を含む。記録再生ヘッド8aは、スイングアーム8bの先端部に取り付けられ、記録ディスク200に磁気的にデータを記録し、記録ディスク200からデータを読み取る。ピボットアセンブリ8cは、スイングアーム8bをベースプレート50に対してヘッド回転軸の周りに揺動自在に支持する。ボイスコイルモータ8dは、スイングアーム8bをヘッド回転軸の周りに揺動させ、記録再生ヘッド8aを記録ディスク200の記録面上の所望の位置に移動させる。データリード/ライト部8は、ヘッドの位置を制御する公知の技術を用いて構成される。
【0020】
図2は、図1のA−A線断面図である。ディスク駆動装置100は、例えば、直径が95mmの3.5インチ型の複数の記録ディスク200を搭載し、それらを回転させる。例えば、記録ディスク200のそれぞれの中央の孔の直径は25mm、厚みは1.27mmである。なお、以下の説明では、図2中矢印A方向を上側または上方向という場合がある。また、図2中矢印B方向を下側または下方向という場合がある。また、矢印AB方向を軸方向またはモータ回転軸R方向、両矢印C方向を径方向という場合がある。
【0021】
ディスク駆動装置100は、中央に開口を有する略カップ形状のハブ10と、ベースプレート50と、シャフト収納部材83、シャフト20と、内側リング21と、外側リング22と、ヨーク30と、円筒状マグネット40と、積層コア60と、コイル70と、オイルなどの潤滑剤92と、硬化性樹脂94と、キャップ部材23と、を備える。
【0022】
シャフト収納部材83は、貫通孔80aが設けられた内側スリーブ80と、この内側スリーブ80の外周側面に固着される外側スリーブ81とを含んでいる。
【0023】
ハブ10は、モータ回転軸Rを中心とする外観が凸状に形成された部品である。本実施形態の場合、4枚の記録ディスク200がハブ10に載置された場合を考える。ハブ10のうち図2中で上側に突き出た部分である円筒状の外筒部10bの表面に4枚の記録ディスク200の中央の孔が嵌合される。4枚の記録ディスク200のうち一番下側の記録ディスク200は、ハブ10の表面のうち外筒部10bの下端から径方向に張り出してディスク載置部として機能する着座面10cに着座する。外筒部10bの直径は例えば25mmである。より正確には外筒部10bの直径は、24.978±0.01mmである。
【0024】
ハブ10の着座面10cには、記録ディスク200を着座させるために上側(矢印A方向)に向かい突き出た突起部13が形成される。突起部13は、モータ回転軸Rの周りに円環状に形成され、突起部13のうち記録ディスク200が着座する部分の面は滑らかな曲面である。その曲面の断面は円弧状であり、記録ディスク200は着座面10cに周方向で線状に接することとなる。
【0025】
図3は本実施形態のハブ10の一例を示す断面図である。ハブ10は、軸方向でベースプレート50と反対側の端面に、外筒部10bを軸方向外側(図2の矢印A方向)に突出させた周状壁部10pを有する。また、ハブ10は周状壁部10pの径方向内側であるモータ回転軸R側に周状壁部10pより軸方向(矢印B方向)に凹んだ第1周状凹部10qを有する。さらに、ハブ10は、第1周状凹部10qの径方向内側に第1周状凹部10qより軸方向(矢印B方向)に凹んだ第2周状凹部10sと、この第2周状凹部10sの径方向内側に軸方向外側(矢印A方向)に突出した第1周状凸部10uと、を有している。なお、第1周状凹部10qには複数のネジ穴10rが周方向に等間隔で例えば6箇所に設けられている。
【0026】
ハブ10は、軸方向でベースプレート50側に延びる円筒状の隔壁14(周状壁部ともいう)を有する。隔壁14は外側に外筒部10bを構成している。また、ハブ10は、隔壁14の径方向内側に隔壁14より軸方向に凹んだ第3周状凹部10tを有する。また、ハブ10は第3周状凹部10tの径方向内側に第3周状凹部10tより軸方向に凹んだ第4周状凹部10vと、第4周状凹部10vの径方向内側に第4周状凹部10vより軸方向に下側に突出した第2周状凸部10wとを有する。第4周状凹部10vは、第1周状凹部10qの径方向内側で、第2周状凹部10sと径方向において重複する位置に形成されている。
【0027】
クランパ206は、外縁部206a、中間部206b、内縁部206c、中心孔206d、孔206eから構成された略円盤状の部材である。外縁部206aは記録ディスク200を上方から押さえる。外縁部206aの内側には中間部206bが延設され、中間部206bの内側には内縁部206cが延設されている。内縁部206cの内側には中心孔206dが形成されている。クランパ206は、中間部206bにネジ穴10rと対応する位置に孔206eが設けられている。クランパ206は、内縁部206cが第2周状凹部10sに嵌め合わされ、中間部206bが周状壁部10pの内側に嵌め合わされて第1周状凹部10qに接するように装着される。この構成により、クランパ206はハブ10の上端部の凹凸形状で位置決めされる。したがって、取り付ける作業が容易であると共に自動化にも容易に適用できる。また、ハブ10の上面10aを凹凸形状にすることで、その形状に倣わせて装着するクランパ206の形状を複数回屈曲した形状にできる。その結果、クランパ206の弾性力を向上すると共に剛性を向上できる。クランパ206の弾性力を向上できることで、記録ディスク200への押圧力が大きくなるとともに安定するので、記録ディスク200の固定を安定して実施できる。
【0028】
一方、円環状のスペーサ202は、4枚の記録ディスク200のそれぞれの軸方向の間に挿入される。クランパ206は、外縁部206aがスペーサ202を介して4枚の記録ディスク200および3枚のスペーサ202をハブ10の突起部13に対して押しつける。クランパ206は、複数のクランプネジ208によって孔206eを通じてハブ10の上面10aのネジ穴10rに対して固定される。ハブ10の隔壁14の内側には、ヨーク30を支持する。つまり、隔壁14は、ヨーク30とスペーサ202及び記録ディスク200によって挟まれる。
【0029】
ヨーク30はその断面がL字型であり、鉄などの磁性材料により形成される。ヨーク30は隔壁14の内周面に接着と圧入とを併用して固定される。隔壁14の内周面には、ヨーク30が圧入される際にヨーク30が押し当てられる第1凸部16および第2凸部18が形成される。第1凸部16および第2凸部18は両方ともモータ回転軸Rの周りに形成された円環状の凸部であり、第1凸部16を上側として軸方向に互いに離間して形成される。隔壁14の内周面とヨーク30の外周面との間には硬化性樹脂94が充填される。なお、硬化性樹脂94は、ヨーク30をハブ10に圧入する前に、隔壁14の内周面に適量を供給しておくことでヨーク30の圧入動作により容易に均等に塗布できる。
【0030】
ヨーク30の内周面には円筒状マグネット40が接着固定される。円筒状マグネット40は、ネオジウム、鉄、ホウ素などの希土類材料によって形成され、積層コア60の9本の突極と径方向において対向する。円筒状マグネット40にはその周方向に8極の駆動用着磁が施される。なお、円筒状マグネット40はヨーク30を介してハブ10に固定されるといえる。
【0031】
ハブ10は、軸受ユニットを構成するべくシャフト収納部材83を受け入れる中心孔を有し、その中心孔の内筒面に半径方向外側に凹んだ凹部10mと、この凹部10mの軸方向の両側に傾斜防止部10nが形成されている。凹部10mは、外側スリーブ81と嵌め合わせた際に硬化性樹脂94を介在させて結合力を得る接着領域に対応している。傾斜防止部10nは、硬化性樹脂94が硬化する際にハブ10に対する傾斜を防止する傾斜防止領域に対応している。ハブ10において、第1周状凸部10uと第2周状凸部10wの内周面はそれぞれ突出領域ともいえる傾斜防止部10nを構成しており、傾斜防止部10nの軸方向の長さは、それぞれを構成する第1周状凸部10uおよび第2周状凸部10wの軸方向長さ以下としている。凹部10mは、直径が外側スリーブ81の接着領域に対応する部分の直径より40〜120μm大きく形成されて、この部分に硬化性樹脂94を保持することにより所定厚さの接着層を確保して接着力を向上させる。また、このように所定厚さの接着層を確保することで、接着力の不均一を抑制している。一方、傾斜防止部10nは、直径が凹部10mより小さく形成されている。凹部10m及び傾斜防止部10nの直径は、ハブ10の接合強度と傾斜と嵌め合わせの作業性とを考慮して実験等により予め求めることができる。
【0032】
また、上述したように、傾斜防止部10nと外側スリーブ81との隙間は凹部10mと外側スリーブ81との隙間に比べて狭くなる。したがって、ハブ10の中心孔に外側スリーブ81を含むシャフト収納部材83を挿入した場合、上下2箇所による支持が狭隙にて実現できる。その結果、ハブ10にシャフト収納部材83を接続した場合の直角性を容易にできると共に製品間での傾きのバラツキを抑制できる。なお、第1凸部16と第2凸部18は軸方向に対してできるだけ離間させて形成した方が接合時の傾き角が小さくできる。なお、2つの傾斜防止部10nは軸方向に対してできるだけ離間させて形成した方が接合時の傾き角が小さくできる。なお、2つの傾斜防止部10nの位置は、凹部10mに保持する硬化性樹脂94の量によって決めることができる。また、2つの傾斜防止部10nに加えさらに凸部を設けてもよい。凸部を増やすことによりハブ10にシャフト収納部材83を接続した場合の直角性は向上する一方、凹部10mの領域が減るので接着力と直角性のバランスを実験等により確認しながら、2つの傾斜防止部10nの形成位置及び凸部の形成数を決定することが望ましい。
【0033】
軸受ユニットは、内側スリーブ80と、外側スリーブ81と、シャフト20と、ラジアル動圧溝RBと、潤滑剤92と、内側リング21と、外側リング22と、を含んでいる。外側スリーブ81の一端側はハブ10の内周に結合されている。シャフト20の他端側はベースプレート50に結合されている。
【0034】
外側スリーブ81の内周面には内側スリーブ80が結合されている。例えば、内側スリーブ80の外周面は、外側スリーブ81の内周面より直径が例えば2〜15μm大きく形成される。この結果、内側スリーブ80は、外側スリーブ81の内周面に締まり嵌めにより結合される。内側スリーブ80と外側スリーブ81の二重構造とすることにより、外側スリーブ81の外周面に応力を受けても内側スリーブ80の内周面への影響を抑えることができる。つまり、内側スリーブ80の内周面とシャフト20の外周面との間の隙間の変動が抑制できて、安定した動圧を発生させることができるので回転ムラ等回転安定性が低下することを防止できる。
【0035】
内側スリーブ80は中央に貫通孔80aを有する。貫通孔80aには、軸方向中央部に半径方向外側に凹んだ潤滑剤溜まり部80bが設けられている。内側スリーブ80の貫通孔にはシャフト20の一部が収納される。内側スリーブ80の貫通孔80aの内周面とシャフト20の外周面の少なくともいずれかには、軸方向に離間した一組のヘリングボーン形状のラジアル動圧溝RBが設けられている。ラジアル動圧溝RBは、軸方向において潤滑剤溜まり部80bを避けた位置に設けられている。潤滑剤溜まり部80bを形成することにより、内側スリーブ80とシャフト20との間に潤滑剤92を確実に保持し、動圧発生を安定的に実現させる。また、潤滑剤溜まり部80bを挟んでラジアル動圧溝RBを形成することにより、シャフト20に対して、上下2箇所で動圧を発生させることができる。その結果、シャフト20に対して内側スリーブ80を2箇所で動圧支持可能となり、回転安定性の向上に寄与できる。
【0036】
キャピラリーシール部CSは、内側スリーブ80の軸方向両端部において、それぞれ内側リング21と外側リング22とを含んで構成されている。内側リング21は、その内周部がシャフト20の外周面に結合されている。また外周部が内側スリーブ80の軸方向の端部から離れるのに連れて縮径する第1テーパ部21aを有する。外側リング22は、ハブ10と一体に回転するようにハブ側に接合される。例えば外側スリーブ81の一部に接続されている。そして、外側リング22の内周部が第1テーパ部21aに対向しつつ内側スリーブ80の軸方向の端部から離れるのに連れて縮径する第2テーパ部22aを有する。対向する第1テーパ部21aと第2テーパ部22aで形成される隙間が内側スリーブ80の軸方向の端部から離れるのに連れて拡がるキャピラリーシール部CSを構成する。キャピラリーシール部CSは、その間の隙間が軸方向外側に向かって拡がるように形成されている。潤滑剤92は貫通孔80aとシャフト20の間の隙間と、内側スリーブ80の軸方向両端部とキャピラリーシール部CSの途中までの領域に連続して介在している。キャピラリーシール部CSはそれぞれ毛細管現象により潤滑剤92の漏れ出しを抑えるように作用する。
【0037】
内側リング21は、内側スリーブ80に対向する軸方向端面である内側リング端面21bが内側スリーブ80の軸方向端面と隙間をもって対向するように配置されている。外側リング22は、内側スリーブ80に対向する軸方向端面である外側リング端面が内側スリーブ80の軸方向端面と接するように外側スリーブ81の内周面に結合されて設けられている。図4は外側スリーブ81に嵌合した状態の内側スリーブ80の上面に形成したスラスト動圧溝SBの例を示す図である。内側スリーブ80は、軸方向端面のうち少なくとも内側リング端面21bが対向する領域と外側リング端面が接する領域とが平坦に形成されている。内側リング端面21bと、内側スリーブ80の軸方向端面の少なくとも一方にはヘリングボーン形状又はスパイラル形状のスラスト動圧溝SBを設けている。スラスト動圧溝SBとその対向面の間には潤滑剤92が介在している。内側スリーブ80は、例えば内側リング端面21bと対向する領域から外側リング22と対向する領域に跨ってスラスト動圧溝SBが形成されていてもよい。内側スリーブ80の軸方向端面のうち少なくとも内側リング端面21bが対向する領域と外側リング端面が接する領域とが平坦に形成されていることで、そこに、内側リング21と対向する領域と外側リング22と対向する領域に跨ってスラスト動圧溝SBを容易に形成できる。更に、内側スリーブ80の端面外周側縁には、全周に渡り面取り部80cが設けられてもよい。外側リング22と対向する領域のスラスト動圧溝SBと、内側スリーブ80の端部外周縁の面取り部80cは、最も有効なスラスト動圧を発生する内側リング21と対向する領域のスラスト動圧溝SBに潤滑剤92を送り込む連通路の一部を構成することができる。後述するが連通路は、内側スリーブ80の上下に形成されたキャピラリーシール部CS同士を連通する。内側スリーブ80の軸方向端面のうち少なくとも内側リング端面21bが対向する領域と外側リング端面が接する領域とが平坦に形成されていることで、この連通路の形成も容易となる。
【0038】
シャフト20、潤滑剤92、内側スリーブ80、外側スリーブ81、内側リング21および外側リング22はハブ10を回転自在に支持するための軸受ユニットを構成する。ディスク駆動装置100の回転時には、前述したラジアル動圧溝RB及びスラスト動圧溝SBが潤滑剤92中で生成する動圧によって、ハブ10および内側スリーブ80、外側スリーブ81および外側リング22は径方向および軸方向について実質的に非接触状態で支持される。
【0039】
積層コア60はコア円環部62とそこから半径方向外側に伸びる9本の突極64とを有する。積層コア60は、例えば厚さ0.35mmの無方向性電磁鋼板を8枚積層してカシメにより一体化して形成される。この積層コア60の製造方法としては、まず表面に絶縁処理が施された電磁鋼板をプレス加工し、ハーフパンチを形成しつつ所望のコア形状に打ち抜くことで個々の電磁鋼板を形成する。次に、コア形状の8枚の電磁鋼板をハーフパンチを用いた型内かしめによってかしめることで一体化する。この一体化形成の後、積層コアの表面の絶縁層の剥がれ等を防止するために表面処理を施す。この表面処理には種々の方法が採用できる。例えば、スプレー塗装やカチオン電着等の方法によりエポキシ樹脂を付着する方法は、均一な塗膜を形成できる点で好ましい。
【0040】
シャフト20は、例えばステンレス製の円柱形状の部材で、内側スリーブ80の貫通孔80aに収納される小径部20eと、内側スリーブ80から突出すると共に小径部20eより外径の大きな大径部20fを有する。なお、大径部20fはシャフト20の小径部20eとは別体で構成してもよい。例えば、小径部20eを含むシャフト20本体側は、軸受ユニットの主要部を構成する部材なので、SUS420等の堅い金属で高精度に加工される。一方、別体で形成する円環形状の大径部20fは、加工容易性を考慮し、例えば真鍮、アルミニウム、SUS430等の比較的軟らかな金属で形成することが望ましい。なお、大径部20fを「ブッシュ」という場合もある。円環状のブッシュは締まり嵌め状態でシャフト20に固定され大径部20fを形成している。なお、以下の説明では、図2に示すように小径部20e及び大径部20fがシャフト20として一体化されている例を示す。
【0041】
ベースプレート50の上面50aには、モータ回転軸Rを中心としたベース円環部52が設けられている。ベース円環部52は、内側側面で軸受孔50eを形成する。ベース円環部52は、一部がベースプレート50の上方に突出している。ベース円環部52の外側側面に積層コア60のコア円環部62の内側側面が締まり嵌めや接着により固定されている。一方、ベース円環部52の内側側面には、シャフト20の大径部20fが硬化性樹脂94により固定されている。
【0042】
ここで、シャフト20の大径部20fの直径が小さいと、大径部20fの外周面積が小さくなるので、ベース円環部52との接合面積が小さくなり所望の耐衝撃強度を得ることが難しくなる。逆に、シャフト20の大径部20fの直径が大きいと大径部20fの外周面積が大きくなりベース円環部52との接合部に多くの硬化性樹脂を介在させる必要がある。硬化性樹脂が多く介在すると硬化前後で飛散する揮発成分が多くなり、記録ディスク200を汚染するおそれがある。そこで、発明者らは、種々の実験によりシャフト20の大径部20fの直径が小径部20eの直径の2〜5倍の大きさにすることで、上述した耐衝撃強度の問題と硬化性樹脂に起因する問題をバランスよく解消できるとの結論を得た。例えば、図2の実施形態においては小径部20eの直径を3.054mmとし、大径部20fの直径は3.5倍の10.714mmとしている。その結果、接合強度が向上し、必要な耐衝撃強度を確保できると共に、飛散する揮発成分の影響は実使用上の問題とならないことが確認されている。また、小径部20eと大径部20fを形成することにより、耐衝撃強度を左右する接合領域をコイル70が巻回される領域から軸方向にずらすことが容易にできる。その結果、コイル70の巻回スペースを縮小させてしまうことがなく、駆動電流の増加などの問題を排除できる。
【0043】
また、図2の実施形態では、大径部20fの直径がシャフト収納部材83の外周側面、つまり外側スリーブ81の直径より大きく形成されている。図2において、固定部材の一部であるベース円環部52に対して回転部材の一部である外側スリーブ81が回転するためには、ベース円環部52と外側スリーブ81との間に隙間を設ける必要がある。このとき、大径部20fの直径を外側スリーブ81の直径より大きく形成することで、ベース円環部52の内周面に段差を設けることなく、つまり、軸方向にストレートで形成しても回転のための隙間を形成することができる。その結果、ベースプレート50の加工が容易になる。
【0044】
ベース円環部52に積層コア60を固定する際に、ベース円環部52の内側側面が内側に向かって変形することがある。変形した内側側面に大径部20fを接着するとシャフト20が傾いて固定されるおそれがある。そのため、本実施形態において、大径部20fは、軸方向において積層コア60と重複しないような位置でベース円環部52の内周面に固定している。このような軸方向で積層コア60を避けた位置で大径部20fを固定することでシャフト20の傾きの原因を排除し傾きを軽減している。
【0045】
また、ベース円環部52は、シャフト収納部材83の少なくとも一部を環囲すると共に、当該ベース円環部52の内周面とシャフト収納部材83の外周面との間に軸方向に延在する狭隙部52bを形成する。例えば、ベース円環部52は、側面が外側スリーブ81を環囲して軸方向に重複して狭隙部52bを形成する形状を有する。この狭隙部52bは、ベースプレート50側に位置するキャピラリーシール部CSの空気の流通を制限して気液界面付近における潤滑剤92の蒸気の圧力を飽和蒸気圧に近い状態に維持する。この結果、潤滑剤92の新たな蒸発を抑えることができる。なお、外側スリーブ81は、下端が積層コア60の下端よりベースプレート50側に位置するように配設されている。このような構造とすることで、狭隙部52bの軸方向長さを長くすることができる。その結果、潤滑剤92の蒸発の抑制効果をさらに向上できる。
【0046】
また、ベース円環部52の内周側面において、外側スリーブ81の外周面と対向する領域の直径が、大径部20fが固定される領域の直径と同じになるように形成されている。この結果、軸受孔50eはストレート形状とすることができるので加工が容易で製造の手間が少なくて済む。なお、ベース円環部52は、内周側面に円周状の溝を設けてもよい。この溝は、硬化性樹脂94を塗布する位置の目安することができると共に、硬化性樹脂94の塗布時の塗布状態を維持する機能も兼ねることができる。
【0047】
また、外側スリーブ81は、ベースプレート50と反対側の端部側がベースプレート50側に比べて小径の小径部を形成してもよい。この小径部にハブ10を固定することで、ハブ10の固定位置を安定させることができる。
【0048】
ベースプレート50は、軸受孔50eのうちシャフト20の大径部20fと接する接触領域L1の軸方向寸法t1がコイル70と軸方向に対向する対向領域L2の軸方向の厚み寸法t2より大きく形成され、接触領域L1の下端が対向領域L2より下側に出っ張る形状に形成されている。そして、接触領域L1の軸方向中心と対向領域L2の軸方向中心が実質的に一致するように構成している。その結果、ハブ10に衝撃荷重が加わった場合の大径部20fの全域に衝撃荷重を分散して伝えることができるので、シャフト20の特定の位置に梃子のように応力が集中することが抑制され、シャフト20の傾き軽減に寄与できる。例えば、図2の実施の形態においては、軸受孔50eの接触領域L1の軸方向寸法t1は3.203mmで、対向領域L2の軸方向の厚み寸法t2は2.819mmとしている。
【0049】
積層コア60のそれぞれの突極64にはコイル70が巻回される。このコイル70に3相の略正弦波状の駆動電流が流れることにより突極64に沿って駆動磁束が発生する。
【0050】
以上のように構成されたディスク駆動装置100の動作について説明する。積層コア60とコイル70と円筒状マグネット40とを含んでブラシレスモータが構成されている。ディスク駆動装置100のハブ10を回転させるために、3相の駆動電流がブラシレスモータに供給される。その駆動電流がコイル70を流れることにより、9本の突極64に沿って駆動磁束が発生する。この駆動磁束によって円筒状マグネット40にトルクが与えられ、ハブ10が回転する。
【0051】
ラジアル動圧溝RBは、内側スリーブ80に形成した貫通孔80aに、例えばボール転造や切削等の機械的な加工、エッチングなどの電気化学的な方法によって形成されている。内側スリーブ80は、外側スリーブ81の内周に例えば締まり嵌めにより嵌め合わされる。しかし、ラジアル動圧溝RBを加工した後の内側スリーブ80を外側スリーブ81に締まり嵌めによりの嵌め合わせすると、ラジアル動圧溝RBに変形が生じることがある。ラジアル動圧溝RBが変形すると、ラジアル動圧の分布のバランスが崩れて潤滑剤92の流出を招き、信頼性が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、内側スリーブ80のラジアル動圧溝RBは、外側スリーブ81へ嵌め合わせた後に形成するようにしている。その結果、ラジアル動圧溝RBの変形が軽減される。なお、このような変形が懸念されない場合、内側スリーブ80にラジアル動圧溝RBを形成した後に外側スリーブ81を嵌め合わせてもよい。
【0052】
前述したように、ハブ10と外側スリーブ81を接合するときに硬化性樹脂94を用いる。この場合、接着領域に介在させた硬化性樹脂94が硬化する際の収縮により傾斜防止領域の傾斜防止部10nは外側スリーブ81に対して偏った荷重を加える。この荷重により外側スリーブ81を介して内側スリーブ80の内側に存在するラジアル動圧溝RBに僅かながら変形を生じるおそれがある。そこで本実施形態では、傾斜防止領域の一方は、外側リング22を環囲して少なくとも一部が軸方向に重複する位置に設けている。また、傾斜防止領域の他方の傾斜防止部10nは、潤滑剤溜まり部80bを環囲して少なくとも一部が軸方向に重複する位置に設けている。この結果、傾斜防止部10nを介して伝達される外力が直接ラジアル動圧溝RBの形成領域に伝達されること防止し、ラジアル動圧溝RBの変形を抑制するようにしている。
【0053】
内側リング21と外側リング22の隙間は軸方向の開放端を構成している。潤滑剤92は、ニードルから吐出してこれらの開放端から潤滑剤保持領域に注入される。回転機器が小型化されると内側リング21の外周の直径も小さくなり、ニードルを配設する空間も制限を受ける。一方、ニードルと開放端との隙間が広い状態で潤滑剤92を吐出すると、潤滑剤92が開放端以外の部位に付着するおそれがある。このためニードルは、開放端との隙間を十分に小さくした状態で潤滑剤92を吐出したいという要望がある。そこで、本実施形態においては、図5に示すように、ニードル300は他の部材と干渉しないように軸受ユニット302の半径方向外側でかつ軸方向外側に配置して、開放端に向けて斜め外側または直角方向から吐出するようにしている。また、内側リング21は、当該内側リング21の縮径側の端部が外側リング22の縮径側の端部より、内側リング21の軸方向に対して突出するように配置してもよい。これにより、開放端の斜め外側等の空間に配設したニードル300を内側リング21の外側リング22より軸方向外側に突出した部分に十分に接近させて潤滑剤92を吐出することができる。この場合、潤滑剤92を内側リング21の外周面に付着させ、内側リング21外周面を伝わせることによって、漏れなどにより所定箇所以外への潤滑剤92の付着を防ぎ、スムーズに注入することができる。
【0054】
内側スリーブ80の両端面に設けたキャピラリーシール部CSに圧力の差があると、潤滑剤92が圧力の低い方に移動して、一方のキャピラリーシール部CSから潤滑剤92が漏れ出すおそれがある。そこで、本実施形態のディスク駆動装置100は貫通孔80a以外にキャピラリーシール部CS同士を連通する連通路304を設けている。連通路304は、例えば、外側スリーブ81と内側スリーブ80の少なくともいずれか一方に形成され、内側スリーブ80の軸方向の両端に配置された外側リング22の軸方向の端面を連通させる。また、連通路304は、外側リング22の軸方向端面の間を連通するように外側スリーブ81と内側スリーブ80いずれかに形成することができる。なお、連通路304は、外側スリーブ81の内部または内側スリーブ80の内部に形成した管状通路ではなく、外側スリーブ81と内側スリーブ80のいずれか一方の表面に溝を形成して、内側スリーブ80と外側スリーブ81で挟むことで形成されてもよい。連通路304は、潤滑剤92が介在してキャピラリーシール部CS同士の圧力差を小さくする。この結果、潤滑剤92の漏れ出しの可能性が軽減される。
【0055】
図2における上側に位置するキャピラリーシール部CSの潤滑剤92は、大気開放状態で放置すると、大気との境界面から蒸発して減少する。潤滑剤92が減少していくと軸受ユニット302の潤滑機能を低下させ、やがて寿命に至る。潤滑剤92の蒸発による減少が早く進行するとディスク駆動装置100の寿命が短くなり信頼性が低下する。図2の実施形態に係るディスク駆動装置100は、上側に位置するキャピラリーシール部CSの気液界面を覆うようにキャップ部材23を備えている。図2の例の場合、キャピラリーシール部CSの気液界面を覆うように外側リング22の外周面に結合されている。キャップ部材23は、キャピラリーシール部CSの気液界面付近で潤滑剤92の蒸気圧を高めるように作用し、新たな蒸発を抑制できる。
【0056】
キャップ部材23は、金属やプラスチックなど種々の材料を用いて切削加工やプレス加工やモールド成形など種々の方法により形成することができる。キャップ部材23は、例えばJIS名SUS303などのステンレス鋼の素材から、プレス加工により形成されてもよい。ステンレス鋼を用いた場合、形状寸法の精度が高く耐熱性が高い点で好ましい。
【0057】
キャップ部材23は、中央にシャフト20が貫通する貫通孔を有する略カップ状に形成されている。キャップ部材23は、外側リング22の端部の軸方向で外側スリーブ81より軸方向外側へ突出する側面に、締まり嵌めや接着により結合されている。組立時の位置決めが容易であるため、作業性が良好である点で有利である。別の例では、ハブ10やクランパ206に結合させてもよい。
【0058】
ディスク駆動装置100は、その扱いによっては大きな衝撃加速度を受けることがある。衝撃加速度を受けると、記録ディスク200やハブ10の質量に応じた力がベースプレート50とシャフト20の結合部に作用する。この結果、結合部の結合力が低下または喪失して、シャフト20の姿勢が維持できずにディスク駆動装置100が機能不全に陥るおそれがある。検討の結果、図1に示すようなディスク駆動装置100の場合、ベースプレート50は、ベース円環部52が400Gの試験衝撃加速度を加えた場合にもベースプレート50とシャフト20との間で実質的な結合状態を維持する結合力を確保する形状に形成されることにより、実使用上の問題は殆ど生じないことが判明している。この場合の試験衝撃加速度を基準試験衝撃加速度という。
【0059】
図2の実施形態に係るディスク駆動装置100では、シャフト20は、内側スリーブ80の貫通孔80aに収納される小径部20eと、小径部10eより大きな外形の大径部20fと、を有している。ベースプレート50には大径部20fを嵌合した状態で隙間が形成される大きさの軸受孔50eを有している。軸受孔50eは、大径部20fとの隙間に硬化性樹脂94を介在させて結合させている。このように、大径部20fを用いた接合部を構成することにより接合面積が大きくすることが可能になり、400Gの試験衝撃加速度を加えた場合にもベースプレートとシャフトとの間で実質的な結合状態を維持する結合力を確保することが容易になる。
【0060】
図2の実施の形態に係るディスク駆動装置100では、シャフト20は、大径部20fが外側スリーブ81のベースプレート50側の端部における外周面より0.05〜0.2mm大きな直径に形成されている。この場合、軸受孔50eの内周面をストレート形状にすることが可能になり、軸方向に段差を形成する場合より早く加工することができる。例えば、図2の実施の形態においては、外側スリーブの外径は10.601mmとしている。また、この寸法差により。硬化性樹脂94を塗布する場合や硬化する場合に、シャフト20とベースプレート50との間の傾き調整が可能となる。
【0061】
ディスク駆動装置100は、ベースプレート50の上側の上面50aを含んで清浄空気空間が画成され、清浄な気体が満たされる。ディスク駆動装置100は、軸受孔50eと大径部20fの嵌合部に隙間があると、外部から異物が侵入して機能障害を生じるおそれがある。そのため、図2の実施形態に係るディスク駆動装置100は、軸受孔50eと大径部20fのそれぞれの下端部に傾斜面を含む縁部306a、306bが形成されている。そして、軸受孔50eの縁部306aから大径部20fの縁部306bに跨って硬化性樹脂94を介在させている。この結果、軸受孔50eと大径部20fの嵌合部の隙間を少なくすることができる。
【0062】
次に、本実施形態に係るディスク駆動装置100の軸受ユニット302の製造する軸受ユニット組立工程について説明する。内側スリーブ80は、外側スリーブ81の所定の位置に締まり嵌めや接着等の方法により固定される。次に、内側スリーブ80の両端面に内側リング21を配置した状態で、外側リング22を外側スリーブ81の内周に締まり嵌めや接着等の方法により固定する。次にシャフト20は、内側リング21の内径と内側スリーブ80の内径を通じて所定の位置に固定する。この際、シャフト20は、内側リング21の内径に締まり嵌めや接着等の方法により固定される。これらの工程を含んで、潤滑剤92の充填前の軸受ユニット302が組み立てられる(図5参照)。
【0063】
次に、潤滑剤92を注入する方法について説明する。潤滑剤92の充填前の軸受ユニット302は、図5に示すように軸方向が水平(矢印M方向)になるようにして、ほぼ真空に近い減圧雰囲気中に曝されることで潤滑剤充填領域内の空気が除去される。二つの潤滑剤を吐出するニードル300を準備して、それぞれのニードル300を軸受ユニット302の両端に向けて接近させる(図5)。それぞれのニードル300をそれぞれの外側リング22より軸方向外側に突出した内側リング21の部分に接近させる。この場合、ニードル300は接しても、僅かな隙間を空けてもよい。この状態で所定の量の潤滑剤92を吐出して、内側リング21と外側リング22に跨って付着させる。この状態で、軸受ユニット302の周辺の雰囲気を復圧してほぼ大気圧にすることで、潤滑剤92はシャフト20と内側スリーブ80の間に吸い込まれる。この方法は、軸受ユニット306の両方の開放端の内側リング21と外側リング22に跨って潤滑剤92を付着させるので、一度に多くの潤滑剤92を注入できる点で有利である。また、空気を巻き込みにくい点で有利である。潤滑剤92を注入した後に潤滑剤92の量を測定して潤滑剤92の充填量を確認してもよい。また、潤滑剤92の充填領域の開放端付近の内側リング21、外側リング22、シャフト20の所定の箇所に撥油剤を塗布する工程を含んでもよい。この場合、潤滑剤92の充填のスムーズ性を向上できると共に潤滑剤92の漏洩を抑えうる点で好ましい。
【0064】
次に、図6〜図13に従って実施形態に係るディスク駆動装置100の製造方法を説明する。
まず、図6に示すように、円筒状マグネット40は、ヨーク30を介してハブ10に接着により固定される。次に、ハブ10の凹部10mに所定の量の硬化性樹脂94を塗布する。この際、凹部10mの軸方向中心よりベースプレート50側へ寄った位置(図6では凹部10mの上側)に塗布するようにしてもよい。この場合軸受ユニット302の挿入により凹部10m全体に硬化性樹脂94が拡がる点で有利である。軸受ユニット結合工程では、ハブに軸受ユニット302を結合してサブアッセンブリ308を組み立てる(図7参照)。
【0065】
次に、セット工程では、台座251に対して受け台250が水平方向に移動可能に構成された調芯台252を準備する。サブアッセンブリ308を調芯台252に載置する(図8参照)。例えば、サブアッセンブリ308は大径部20fが上向きになるように載置することができる。また、ディスク載置部となる着座面10cが受け台250に接触するようにサブアッセンブリ308を調芯台252に取り付けるようにしてもよい。この場合、ディスク載置部の着座面10cをベースプレート50に対して、その傾きを軽減できる点で有利である。
【0066】
次に、塗布工程では、図9に示すように、ベースプレート50の軸受孔50eに硬化性樹脂94を塗布する。この際、硬化性樹脂94は、大径部20fが嵌め合わさる部分のうちの軸受孔50eの軸方向で入口側(図9の下側)に寄った位置、例えば、軸受孔50e全体では中間付近に、円周状に塗布する。
【0067】
次に、図10に示す嵌合工程では、ベースプレート50は上方から下方に向かって移動して、軸受孔50eが大径部20fに被るように嵌め合わされる。硬化性樹脂94は、嵌合工程後に軸受孔の外縁にはみ出すように所定の量を所定の位置に塗布してもよい。この場合、硬化性樹脂94が十分に塗布されているか否かが容易に検査しうる点で好ましい。
【0068】
硬化性樹脂94が周方向や軸方向に偏在すると、硬化時に硬化性樹脂94が収縮して偏荷重を生じ、ベースプレート50に対するディスク載置部となる着座面10cの傾きが大きくなることがある。そこで、硬化性樹脂94が硬化する前に、硬化性樹脂94が軸受孔50eと大径部20fとの隙間で浸透して均等に分布するように樹脂浸透工程を含むようにしてもよい。例えば、ベースプレート50は、大径部20fに嵌め合わされた後で硬化性樹脂94の全体が硬化する前に所定の時間外部からの荷重が開放されるようにしてもよい(図11参照)。また、樹脂浸透工程において硬化性樹脂94の一部が硬化するようにしてもよい。この結果、硬化性樹脂94が軸受孔50eと大径部20fとの間に周方向に均等に拡がり、ベースプレート50のサブアッセンブリ308に対する傾きが抑えられる。荷重が開放される時間は、実験により定めることができる。荷重が開放される時間は、30秒以上とすることでベースプレート50のサブアッセンブリ308に対する傾きが軽減される効果が実験等により確認されている。荷重が開放される時間は120秒以下とすることで生産性の低下を抑制し得る。例えば、ベースプレート50とサブアッセンブリ308は調芯台252に載置されたまま外部からの荷重が開放されるようにしてもよい。この場合、一層、ベースプレート50に対する着座面10cの傾きを抑えうる点で好ましい。
【0069】
また、硬化性樹脂94が硬化する前に、ベースプレート50に対するディスク載置部となる着座面10cの傾き値が所定の最大値より小さくなるようにベースプレート50のサブアッセンブリ308に対する傾きを修正する修正工程を含むようにしてもよい。例えば、ベースプレート50とサブアッセンブリ308は調芯台252に載置されたまま傾きを修正されるようにしてもよい。この場合、一層、ベースプレート50に対する着座面10cの傾きを抑えうる点で好ましい。
【0070】
次に、仮硬化工程では、軸受孔50eの外縁にはみ出した硬化性樹脂94に例えば紫外線を照射して仮硬化させる。例えば、ベースプレート50とサブアッセンブリ308は調芯台252に載置されたまま、ベースプレート50の上方から紫外線を照射するようにしてもよい(図12参照)。この場合、段階的に硬化を進めることができるので、ベースプレート50に対するディスク載置部となる着座面10cの傾きを抑えうる点で好ましい。なお、紫外線を照射する範囲が広いとディスク駆動装置100の温度上昇が大きくなり、潤滑剤92の劣化や部材の変形を生じるおそれがある。そこで、仮硬化工程は、軸受孔50eの外縁より僅かに広い範囲内に紫外線を照射するようにしてもよい。例えば、仮硬化工程は、軸受孔50eの外縁より僅かに大きな直径の外側の領域にはカバー310をかけて紫外線を照射することができる。この結果、ディスク駆動装置100の硬化性樹脂94の硬化部分以外の温度上昇が軽減され、上述した潤滑剤92の劣化や部材の変形等を抑制できる。
【0071】
次に、加熱工程では、仮硬化したベースプレート50とサブアッセンブリ308を加熱して硬化を促進する。例えば、仮硬化したベースプレート50とサブアッセンブリ308を60℃〜100℃の雰囲気に30分〜120分静置するようにしてもよい。硬化性樹脂94がほぼ硬化することで、所定の結合強度を確保する。この場合も先に仮硬化が行われているので、硬化性樹脂94の収縮の影響が出にくく、ベースプレート50に対する着座面10cの傾きを抑制できる。
【0072】
次に、加熱硬化したディスク駆動装置100は、所定の性能が検査される。検査されたディスク駆動装置100は、外気から隔離するように包装されて、次の最終組立工程に搬送される。最終組立工程では、ディスク駆動装置100は、ハブ10に記録ディスク200が装着され、データリード/ライト部8(図1参照)とトップカバー1とが固定される(図13参照)。
【0073】
図14は変形例に係るディスク駆動装置100の断面図である。図2において、上側に位置する外側リング22は、図14の変形例ではハブ312と一体とされた一体外側リング314として形成されている。また、下側に位置する外側リングは、外側スリーブ316と一体とされた一体外側リング318として形成されている。この場合、部品点数の削減に加え組立の手間が少なくなる。また、外側リングと外側スリーブとの間からの潤滑剤92の漏れを抑えうる点で有利である。なお、図14の例では、シャフト20の大径部を別部材でブッシュとして構成して接続している例を示している。
【0074】
実施形態において、締まり嵌めとは環囲部材の孔にその孔より大きな直径の被環囲部材を嵌め込んで結合する方法であって、例えば圧入や、環囲部材を加熱して被環囲部材を嵌め込む焼き嵌め、被環囲部材を冷却して環囲部材に嵌め込む冷やし嵌めとしてもよい。
【0075】
実施形態において、ハブ10は種々の材料から形成することができる。ハブ10は、例えばアルミニウム合金を素材として切削加工を含んで形成されてもよい。傾斜防止領域の寸法精度を高く形成できるから、外側スリーブ81との嵌め合いの隙間を小さくしてハブ10の傾斜を抑えうる点で好ましい。
【0076】
実施形態において、内側スリーブ80と外側スリーブ81は種々の材料から形成することができる。内側スリーブ80と外側スリーブ81は、ハブ10より縦弾性係数の高い、例えばステンレス鋼の素材から形成されてもよい。縦弾性係数の低いハブ10が、硬化性樹脂の硬化収縮の際の応力を受けて変形するから、内側スリーブ80の内周の変形を抑えうる点で有利である。内側スリーブ80と外側スリーブ81は、例えばJIS名SUS303の素材から切削加工により形成されてもよい。この場合、寸法精度を高く形成できるから、ハブ10との嵌合いの隙間を小さくしてハブ10の傾斜を抑えうる点で好ましい。
【0077】
実施形態において、内側リング21と外側リング22とは種々の材料から形成することができる。内側リング21と外側リング22は、例えばJIS名SUS303の素材から切削加工により形成されてもよい。寸法精度を高くしうる点で好ましい。
【0078】
実施形態では、ハブ10に搭載される記録ディスク200のそれぞれの厚みは1.27mmであるディスク駆動装置100について説明したが、これに限られない。たとえば、記録ディスクのそれぞれの厚みは1.4mm以上にしてもよい。記録ディスクの共振周波数が変化して、記録ディスクの振動を抑えうる点で好ましい。また、記録ディスクのそれぞれの厚みは1.7mm以上にしてもよい。これにより一層記録ディスクの振動を抑えうる。
【0079】
実施形態では、円筒状マグネット40の磁極の数は8で、突極の数は9であるディスク駆動装置100について説明したが、これに限られない。マグネットの磁極の数は8から16の範囲の偶数とし、突極の数は9から18の範囲の3の倍数としてもよい。これにより小型化してもコイルの総巻数を多くでき、その分マグネットと突極の隙間を広くしてコギングトルクの増大を抑えて駆動時に発生する振動を低減できる点で好ましい。
【0080】
実施形態では、ベースプレート50がハブ10を回転自在に支持する一体型のディスク駆動装置100について説明したが、これに限られない。例えば、図2に示される構造と同様の構造のブラシレスモータを別途製作し、そのブラシレスモータをハードディスクドライブのシャーシに取り付けてもよい。
【0081】
実施形態では、円筒状マグネット40が積層コア60の外側に位置する、いわゆるアウターロータ型のディスク駆動装置100について説明したが、これに限られない。たとえばマグネットが積層コアの内側に位置する、いわゆるインナーロータ型のディスク駆動装置であってもよい。
【0082】
実施形態は主にハードディスクドライブに用いられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、CD(CompactDisc)装置、DVD(DigitalVersatileDisc)装置等の光学ディスク記録再生装置に用いられてもよい。
【0083】
以上、実施の形態に係るディスク駆動装置の構成について説明した。これらの実施の形態は例示であり、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもない。実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であり、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0084】
10 ハブ、 10b 外筒部、 10c 着座面、 10p 周状壁部、 10q 第1周状凹部、 10s 第2周状凹部、 10u 第1周状凸部、 10t 第3周状凹部、 10v 第4周状凹部、 10w 第2周状凸部、 10a 上面、 10m 凹部、 10n 傾斜防止部、 16 第1凸部、 18 第2凸部、 20 シャフト、 20e 小径部、 20f 大径部、 21 内側リング、 22 外側リング、 23 キャップ部材、 50 ベースプレート、 50e 軸受孔、 52 ベース円環部、 52b 狭隙部、 70 コイル、 80 内側スリーブ、 80a 貫通孔、 81 外側スリーブ、 83 シャフト収納部材、 CS キャピラリーシール部、 92 潤滑剤、 94 硬化性樹脂、 100 ディスク駆動装置、 200 記録ディスク、 206e 孔、 302 軸受ユニット、 308 サブアッセンブリ、 312 ハブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
中央部分に開口部が形成されると共に、外周部分に記録ディスクが載置されるべきハブと、
前記ベースプレートに対して前記ハブを回転自在に支持する軸受ユニットと、
を備え、
前記軸受ユニットは、
前記開口部の内周に結合される外側スリーブと、
前記外側スリーブの内周に結合される内側スリーブと、
前記内側スリーブに収納され一端部を前記ベースプレートに結合されるシャフトと、
前記内側スリーブの内周面と前記シャフトの外周面の少なくともいずれか一方に設けられたラジアル動圧溝と、
前記内側スリーブの内周面と前記シャフトの外周面との間に介在する潤滑剤と、
を含み、
前記外側スリーブと前記ハブの結合部分には、硬化性樹脂を介在させて前記外側スリーブと前記ハブを結合する接着領域と、前記外側スリーブの軸方向において前記接着領域の両側に設けられて当該接着領域に対応する前記外側スリーブと前記ハブとの隙間より狭い部分を形成する突出領域と、が形成されていることを特徴とする回転機器。
【請求項2】
内周部が前記シャフトの外周面に結合されると共に外周部が前記内側スリーブの軸方向の端部から離れるのに連れて縮径する第1テーパ部を有する内側リングと、外周部が前記ハブ側に接合されると共に内周部が前記第1テーパ部に対向しつつ前記内側スリーブの軸方向の端部から離れるのに連れて縮径する第2テーパ部を有する外側リングと、が前記内側スリーブの軸方向の両端に配置され、
対向する前記第1テーパ部と前記第2テーパ部で形成される隙間が前記内側スリーブの軸方向の端部から離れるのに連れて拡がるキャピラリーシール部を構成することを特徴とする請求項1記載の回転機器。
【請求項3】
前記内側スリーブの軸方向の両端に配置される前記外側リングの少なくとも一方は、前記ハブと共に回転するようにハブ側部材と一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転機器。
【請求項4】
前記内側スリーブの軸方向の両端に配置される前記外側リングの少なくとも一方は、前記外側スリーブと一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転機器。
【請求項5】
前記内側リングは、当該内側リングの軸方向の端面が前記内側スリーブの軸方向の端面と所定の隙間を介して対向するように配置され、
前記外側リングは、当該外側リングの軸方向の端面が前記内側スリーブの軸方向の端面と接するように配置され、
前記内側スリーブの軸方向の端面は、前記内側リングの軸方向の端面が対向する領域と前記外側リングの軸方向の端面が接する領域とが平坦であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項6】
前記内側リングの軸方向の端面と、それに対向する前記内側スリーブの軸方向の端面の少なくともいずれか一方にスラスト動圧溝が形成され、当該スラスト動圧溝とその対向面の間に前記潤滑剤が介在することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項7】
前記内側スリーブの軸方向の端面には、前記内側リングの軸方向の端面と対向する領域と前記外側リングの軸方向の端面と接する領域に跨って前記スラスト動圧溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の回転機器。
【請求項8】
前記内側リングは、当該内側リングの縮径側の端部が前記外側リングの縮径側の端部より、前記内側リングの軸方向に対して突出するように配置されていることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項9】
前記外側スリーブと前記内側スリーブの少なくともいずれか一方には、前記内側スリーブの軸方向の両端に配置された前記外側リングの軸方向の端面を連通させる連通路が形成され、前記連通路には前記潤滑剤が介在することを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項10】
前記キャピラリーシール部の気液界面を覆うように前記外側リングの外周面に結合されるキャップ部材をさらに備えることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項11】
前記ハブは、
外周に前記記録ディスクの内周と係合する外筒部と、
前記外筒部の軸方向で前記ベースプレート側の端部に半径方向外側に突出するディスク載置部と、
前記外筒部において前記軸方向で前記ベースプレートと反対側の端部に突出した周状壁部と、
前記周状壁部の径方向内側に前記周状壁部より前記ハブの回転軸方向に凹んだ第1周状凹部と、
前記第1周状凹部の径方向内側に前記第1周状凹部より前記回転軸方向に凹んだ第2周状凹部と、
前記第2周状凹部の径方向内側に前記回転軸方向に突出した第1周状凸部と、
前記第1周状凹部に配設された複数のネジ穴と、
を備えていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の回転機器。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の回転機器の製造方法であって、
前記内側スリーブに収納される小径部と前記小径部より大きな大径部を有する前記シャフトを含む前記軸受ユニットを組み立て、
前記ハブに前記軸受ユニットを結合してサブアッセンブリを組み立て、
前記サブアッセンブリに含まれるディスク載置部が調芯台の台座上に設けられた受け台に接触するように前記サブアッセンブリを載置し、
前記大径部を遊嵌状態で収納する軸受孔を有する前記ベースプレートの当該軸受孔に前記硬化性樹脂を塗布し、
前記軸受孔の中心と前記大径部の中心が一致するように前記ベースプレートを移動して、前記軸受孔の外縁に前記硬化性樹脂がはみ出すように前記軸受孔を前記大径部に嵌め合わせ、
前記硬化性樹脂が硬化する前に、当該硬化性樹脂が前記軸受孔と前記大径部との隙間に均質に浸透させて、
前記ベースプレートと前記サブアッセンブリを前記調芯台に載置した状態で前記軸受孔の外縁にはみ出した前記硬化性樹脂を仮硬化させ、
前記硬化性樹脂が仮硬化した後に前記ベースプレートと前記サブアッセンブリとを本硬化させることを特徴とする回転機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−89200(P2012−89200A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234706(P2010−234706)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】