説明

回転角度検出装置

【課題】回りに磁石を使用した装置があったとしても、磁界の影響を受けない回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】回転角度検出装置は、加速度センサ11を設けた第一基板7と、ステアリングシャフト30の回転運動を第一基板7の揺動運動に変換する変換機構と、変換機構を通じて揺動運動する第一基板7の傾斜に伴う加速度センサ11の出力信号を処理し、ステアリングシャフト30の回転角度を求める制御装置13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングコラム内には、ステアリングの操舵角を検出する回転角度検出装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の回転角度検出装置では、ステアリングシャフトと一体に回転する主動歯車と、同主動歯車に歯合する二つの第一従動歯車及び第二従動歯車とを備えている。ステアリングシャフトが回転すると、主動歯車も一体に回転し、それに伴って第一従動歯車及び第二従動歯車がそれぞれ回転する。
【0003】
第一従動歯車及び第二従動歯車の軸部の両端部にはそれぞれ磁石が収容されており、両磁石に対向する位置には第一磁気検出素子及び第二磁気検出素子が設けられている。第一磁気検出素子及び第二磁気検出素子は、第一従動歯車及び第二従動歯車に伴うそれぞれ磁石からの磁束の方向の変化を検出し、それら検出信号を制御装置に出力する。そして、制御装置はこれらの磁束の変化に応じた検出信号に基づきステアリングシャフトの回転角度を検出する。
【特許文献1】特開2006−234573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年磁石を用いて位置検出を行うシフトレバー等の装置が開発されるようになっている。そして、これら磁気検出を用いる装置がステアリングコラムに設けられることが想定される。そのため、磁石を用いてステアリングシャフトの回転角度を検出している上記特許文献1に記載の回転角度検出装置では、磁気検出を用いる他の装置から磁界の影響を受けるおそれがある。そこで、磁界の影響を受けない回転角度検出装置が求められている。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回りに磁石を使用した装置があったとしても、磁界の影響を受けない回転角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、回転部材の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、加速度センサを設けた第一基板と、前記回転部材の回転運動を同第一基板の揺動運動に変換する変換機構と、同変換機構を通じて揺動運動する同第一基板の傾斜に伴う同加速度センサの出力信号を処理し、同回転部材の回転角度を求める制御手段とを備えることをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、回転部材の回転運動を第一基板の揺動運動に変換し、第一基板の揺動運動に伴う加速度センサの傾斜によって回転部材の回転角度を求めるため、回りに磁石を使用した装置があったとしても、磁界の影響を受けることなく、回転部材の回転角度を求めることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転角度検出装置において、加速度センサを設けた第二基板を前記回転部材の回転によって移動しないように設け、前記制御手段は、前記第一基板の加速度センサの出力値から同第二基板の加速度センサの出力値を引いた値に基づき、前記回転部材の回転角度を求めることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、加速度センサを設けた第二基板を備え、同第二基板は回転部材の影響を受けない。このため、回転角度検出装置を例えば車両等に備え、車両自体が傾いた場合でも、第一基板の出力値から第二基板の出力値を引くことによって、車両自体の傾き分を除去することができる。この結果、検出時に傾く物体に回転角度検出装置を備えたとしても、回転部材の回転角度を求めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転角度検出装置において、前記第一基板が揺動可能に前記第二基板に連結され、両第一基板及び第二基板の加速度センサからの出力信号を処理する制御手段をいずれか一方の基板に設けることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、両第一基板及び第二基板が連結されるため配線が可能である。また、両加速度センサからの出力信号を処理する制御手段がいずれかの基板に設けられるため、小型化することができる。また、別途制御手段を設ける必要がないため、コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転角度検出装置において、回りに磁石を使用した装置があったとしても、磁界の影響を受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる回転角度検出装置を車両のステアリングの操舵角検出装置に具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、回転角度検出装置は、図示しない車両のステアリングコラム内に配設されていると共に図示しないステアリングに一体回転可能に連結されたステアリングシャフト30に装着されている。回転角度検出装置は、ステアリングシャフト30の周囲の図示しない構造体に固定された箱体状のハウジング20を備えている。このハウジング20内にはステアリングシャフト30に一体回転可能に外嵌された主動歯車1、並びに主動歯車1に噛合する従動歯車2が回転可能に支持されている。従動歯車2の下面には、回転軸を同一とするとともに、下方に延びるウォーム歯車3が一体回転可能に連結されている。従って、ステアリングシャフト30が回転すると主動歯車1も一体に回転し、それに伴って従動歯車2とウォーム歯車3とが同一の回転軸を中心として回転する。また、ハウジング20内には、同ハウジング20の内壁に固定される第二基板9と、第二基板9に回動軸8を介して回動可能に連結される第一基板7と、第一基板7の先端に固定される支持部材5に伸縮可能に設けられ、ウォーム歯車3に螺合する螺合部材4とからなる検出部10が収容されている。第一基板7と支持部材5と螺合部材4とは、ウォーム歯車3の回転に従い回動軸8を中心として上下に揺動する。ここで、ウォーム歯車3と螺合部材4とは、ステアリングシャフト30の回転運動を第一基板7の揺動運動に変換する変換機構として機能している。
【0014】
図2に示されるように、ハウジング20は下面が開口した有蓋箱体状の上部ハウジング21及び上面が開口した有底箱体状の下部ハウジング22を備えている。そして、上部ハウジング21と下部ハウジング22とを組み合わせることにより、円筒状の挿通部23とその挿通部23の側方へ延出された四角筒状の収容部24とがそれぞれ形成される。挿通部23にはステアリングシャフト30が挿通され、収容部24には従動歯車2とウォーム歯車3と検出部10とが収容される。
【0015】
上部ハウジング21の収容部24に対応する内頂面には従動歯車2用の円筒状の上部軸受25が形成されている。また、下部ハウジング22の収容部24に対応する内底面にはウォーム歯車3用の円筒状の下部軸受26が形成されている。
【0016】
従動歯車2とウォーム歯車3とは一体に形成され、従動歯車2の上端部には上部ハウジング21の上部軸受25に支承される軸部2aが一体に形成されている。ウォーム歯車3には10の螺子山が形成され、ウォーム歯車3の下端部には下部ハウジング22の下部軸受26に支承される軸部3aが一体に形成されている。従動歯車2及びウォーム歯車3は、軸部2aと軸部3aとが上部軸受25と下部軸受26とにそれぞれ支承されることにより回転可能になっている。
【0017】
第二基板9は、第一基板7が回動せず同一平面上に位置した状態において、ウォーム歯車3の軸方向長さの中央に第一基板7が位置するように下部ハウジング22に固定されている。この状態は、ステアリングシャフト30が回動していない状態、すなわちステアリングの中立位置に対応する。第一基板7は、ウォーム歯車3の正逆回転に従って第二基板9に対して回動軸8を中心としてウォーム歯車3の軸方向における上下にそれぞれ同じ角度θ揺動する。すなわち、ステアリングシャフト30の回動によって、第一基板7が上下に揺動する。
【0018】
ここで、図示しないステアリングは車両が直進する状態(中立位置)から左側に二回転、右側に二回転、すなわち計四回転できるようになっている。そして、従動歯車2は主動歯車1の一回転に対して二回転するように歯数が設定されている。そのため、ステアリング(ステアリングシャフト30)が四回転すると、従動歯車2は八回転する。
【0019】
次に、検出部10について図3(a)及び(b)を参照して説明する。
図3(a)及び(b)に示されるように、第一基板7には、加速度センサ11が固定されている。第二基板9には、加速度センサ12と、両加速度センサ11,12からの出力信号を処理する制御装置13とが固定されている。第一基板7は、第二基板9に設けられる回動軸8を介して回動可能に連結されている。第一基板7に固定される支持部材5は上面から見た形状が「U」字形になっている。すなわち、支持部材5には、二つの腕部5a,5bが形成されている。これら腕部5a,5bの側面には、長孔5c,5dがそれぞれ形成されている。そして、二つの腕部5a,5bの間には、板状の螺合部材4が設けられている。螺合部材4の腕部5a,5bと対向する側面には、突出部4a,4bがそれぞれ形成されている。突出部4a,4bは、長孔5c,5dに内側から挿通され、長孔5c,5dに沿って移動可能である。螺合部材4の先端には、ウォーム歯車3に螺合する円弧状の螺合部4cが形成されている。支持部材5と螺合部材4との間には、螺合部材4を支持部材5から突出する方向へ付勢するばね6が備えられている。なお、第一基板7の加速度センサ11から制御装置13へは、図示しない配線が設けられている。
【0020】
図3(a)に示される螺合部材4の位置は、図2に示す第一基板7が第二基板9と同一平面上に位置する状態、すなわちウォーム歯車3と螺合部材4との接触位置と回動軸8とが最も近接した状態での位置である。一方、図3(b)に示される螺合部材4の位置は、図2に示す第一基板7が上下のどちらかに揺動し、最も大きい角度であるθになった状態、すなわちウォーム歯車3と螺合部材4との接触位置と回動軸8とが最も離間した状態での位置である。螺合部材4はばね6によって付勢されているため、ウォーム歯車3の回動によって第一基板7が上下どちらかに回動しても、螺合部材4の先端が常にウォーム歯車3の螺子山に螺合する。
【0021】
第一基板7の加速度センサ11は、第一基板7がウォーム歯車3の回動によって回動軸8を中心として回動し、傾斜すると図4に示されるように、第一基板7(加速度センサ11)の傾きに応じて連続的に変化する電圧(出力信号)を制御装置13に出力する。なお、図4は、加速度センサの傾きを横軸に、加速センサからの出力電圧を縦軸にプロットする。第二基板9の加速度センサ12は、ハウジング20に固定されているため、車両の傾きによって変化する電圧(出力信号)を制御装置13に出力する。
【0022】
制御装置13は、図示しないCPU(中央演算装置)、ROM、及びRAM等から構成されている。ROMには、回転角度検出装置を制御するための各種の制御プログラム及びデータが予め格納されている。制御プログラムとしては、例えば回転角度算出プログラムがある。このプログラムは加速度センサ11から出力された電圧値に基づいてステアリングシャフト30の操舵角を算出するためのプログラムである。RAMはROMの制御プログラムを展開してCPUが各種処理を実行するためのデータ記憶領域、すなわち作業領域である。そして、制御装置13は、前記ROMに格納された回転角度算出プログラムに従って、第二基板9に対する第一基板7の傾斜角度からステアリングシャフト30の回転角度を求める。
【0023】
次に、前述のように構成された回転角度検出装置によってステアリングの操舵角を求める場合について説明する。
運転者によりステアリング操作に伴ってステアリングシャフト30が回転すると、ステアリングシャフト30に固定された主動歯車1も一体に回転する。主動歯車1が回転すると、従動歯車2も回転する。そして、この従動歯車2の回転に伴ってウォーム歯車3も回転し、ウォーム歯車3の回転に応じて第一基板7が回動軸8を中心として回動し、加速度センサ11により検出される。加速度センサ11は、第一基板7の傾斜に応じて連続的に変化する電圧(出力信号)を制御装置13に出力する。加速度センサ12は、第二基板9の傾斜に応じて連続的に変化する電圧を制御装置13に出力する。
【0024】
制御装置13は、走行状態によっては第一基板7の加速度センサ11の出力値に車両の傾きが含まれることになる。しかし、第二基板9の加速度センサ12の出力値を引くことによって、第二基板9に対する第一基板7の出力電圧を求め、図4に示した出力電圧と傾きとの関係から傾斜角度を算出する。そして、制御装置13は、算出された第二基板9に対する第一基板7の傾斜角度からステアリングシャフト30の回転角度、すなわちステアリングの操舵角を求める。第一基板7の加速度センサ11の出力値から第二基板9の加速度センサ12の出力値を引くことにより、ステアリングシャフト30の回転による第一基板7の傾きに応じた傾斜角度を正確に求められる。
【0025】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ステアリングシャフト30の回転運動を第一基板7の揺動運動に変換し、第一基板7の揺動運動に伴う加速度センサ11の傾斜によってステアリングシャフト30の回転角度を求めるため、回りに磁石を使用した装置があったとしても、磁界の影響を受けることなく、ステアリングシャフト30の回転角度を求めることができる。
【0026】
(2)加速度センサ12を設けた第二基板9を備え、第二基板9はステアリングシャフト30の影響を受けないため、車両自体が傾く場合でも、第一基板7の出力値から第二基板9の出力値を引くことによって、車両自体の傾き分を除去することができる。この結果、検出時に傾く車両であっても、ステアリングシャフト30の回転角度を求めることができる。
【0027】
(3)両第一基板7及び第二基板9が連結されるため配線が可能である。また、両加速度センサ11,12からの出力信号を処理する制御装置13が第二基板9に設けられるため、小型化することができる。また、別途制御手段を設ける必要がないため、コストを抑制することができる。
【0028】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、螺合部材4がウォーム歯車3に常に接するように付勢部材として螺合部材4と支持部材5との間にばね6を設けたが、ばねに関わらず油圧シリンダ等の他の付勢部材を用いてもよい。
【0029】
・上記実施形態では、加速度センサ11,12からの出力信号を処理する制御装置13を第二基板9に設けたが、第一基板7に設けるようにしてもよい。
・また、加速度センサ11,12からの出力信号をそれぞれ処理する制御装置を各々の基板に設けるようにしてもよい。
【0030】
・上記実施形態では、第一基板7と第二基板9とは回動軸8を介して連結したが、第一基板7がウォーム歯車3の正逆回転に応じて回動可能に設けられ、第二基板9がハウジング20に固定されるならば、連結せずそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0031】
・上記実施形態では、第一基板7に固定された支持部材5に螺合部材4を設けるようにしたが、第一基板7と支持部材5を同一部材として、第一基板7に螺合部材4を設けるようにしてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、車両のステアリングの操舵角検出装置として具体化したが、車両に関わらず、その他の回転部材の回転角度検出装置として採用してもよい。
・その他の回転部材の回転角度検出装置として採用した場合に、その回転部材を備えた構造体が傾斜しないものであれば、検出部10は回転部材を備えた構造体の傾斜を検出する加速度センサ12を設けず、回動軸8を中心として回動する第一基板7と加速度センサ11と制御装置とを設けた構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】回転角度検出装置の平段面図。
【図2】回転角度検出装置のA矢視断面図。
【図3】(a)(b)検出部の螺合部の変位を示す図。
【図4】傾斜角度と出力電圧値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1…主動歯車、2…従動歯車、3…ウォーム歯車、4…螺合部材、4a,4b…突出部、4c…螺合部、5…支持部材、5a,5b…腕部、5c,5d…長孔、6…ばね、7…第一基板、8…回動軸、9…第二基板、10…検出部、11,12…加速度センサ、13…制御装置、20…ハウジング、21…上部ハウジング、22…下部ハウジング、23…挿通部、24…収容部、25…上部軸受、26…下部軸受、30…ステアリングシャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
加速度センサを設けた第一基板と、前記回転部材の回転運動を同第一基板の揺動運動に変換する変換機構と、同変換機構を通じて揺動運動する同第一基板の傾斜に伴う同加速度センサの出力信号を処理し、同回転部材の回転角度を求める制御手段とを備える
ことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角度検出装置において、
加速度センサを設けた第二基板を前記回転部材の回転によって移動しないように設け、
前記制御手段は、前記第一基板の加速度センサの出力値から同第二基板の加速度センサの出力値を引いた値に基づき、前記回転部材の回転角度を求める
ことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転角度検出装置において、
前記第一基板が揺動可能に前記第二基板に連結され、両第一基板及び第二基板の加速度センサからの出力信号を処理する制御手段をいずれか一方の基板に設ける
ことを特徴とする回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232903(P2008−232903A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74614(P2007−74614)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】