説明

回転角度検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関し、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】第一または第二の検出手段15または16のいずれかを磁石16Aと、直交配置された複数のホール素子16Bと16Cから形成すると共に、制御手段17がこの複数のホール素子16B、16CとAMR素子15Bからの検出信号を用いて、先ず回転体11の概略の回転角度を検出し、この後、AMR素子15Bからの検出信号を用いて、詳細な回転角度を検出することによって、安価なホール素子16Bや16Cを用いることができるため、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、これを用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の回転角度検出装置について、図6を用いて説明する。
【0004】
図6は従来の回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、1は側面外周に平歯車部1Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部1Bが設けられている。
【0005】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成された第一の検出体、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体2の平歯車部2Aと第二の検出体3の平歯車部3Aが、回転体1の平歯車部1Aに各々噛合している。
【0006】
また、4は第一及び第二の検出体2、3の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2の中央に装着された磁石5Aと、第二の検出体3の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、異方性磁気抵抗素子(以下、AMR素子と記載する)5Bと6Bが各々装着されている。
【0007】
そして、このように対向した磁石5AとAMR素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6AとAMR素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、AMR素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0008】
さらに、これら回転体1や第一の検出体2、第二の検出体3、配線基板4等を、絶縁樹脂製のケースやカバー(図示せず)等が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
【0009】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体1の係合部1Bにはステアリング軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0010】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2と第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5A、6Aも回転して、この磁石5A、6Aの変化する磁力をAMR素子5B、6Bが検出して、増減を繰り返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の検出信号が制御手段7へ入力される。
【0011】
なお、この時、第一の検出体2と第二の検出体3は歯数が異なり回転速度も異なるため、AMR素子5Bと6Bからのデータ波形は、形状が異なり位相差のある検出信号となる。
【0012】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って、回転体1即ちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われるように構成されているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−256138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、制御手段7が第一及び第二の検出手段5と6からの各々の検出信号と各平歯車部の歯数から、加減乗除や所定の定数の算出等の演算を行って回転体1の回転角度を検出しており、検出信号にばらつきがあると回転角度の演算に誤差が生じてしまうため、第一及び第二の検出手段5と6の検出素子としては、高精度ではあるが高価なAMR素子5Bと6Bが用いられており、装置全体として高価なものになってしまうという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明は、第一または第二の検出手段のいずれかの磁石と、直交配置された複数のホール素子から形成すると共に、制御手段がこの複数のホール素子とAMR素子からの検出信号によって、先ず回転体の概略の回転角度を検出し、この後、AMR素子からの検出信号によって、詳細な回転角度を検出するようにして回転角度検出装置を構成したものであり、第一または第二の検出手段のいずれかには、安価なホール素子を用いることができるため、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるという作用を有する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数のホール素子を磁石外周よりも内方へ配置したものであり、ホール素子による磁石の磁気の検出精度を高め、さらに高精度でばらつきの少ない回転角度の検出を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を実現できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、11は絶縁樹脂または金属製の回転体で、側面外周には平歯車部11Aが形成されると共に、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部11Bが設けられている。
【0022】
そして、12は絶縁樹脂または金属製の第一の検出体、13は同じく第二の検出体で、第一の検出体12側面外周の平歯車部12Aが回転体11の平歯車部11Aに噛合すると共に、第二の検出体13側面外周の平歯車部12Aとは歯数の異なる平歯車部13Aが、第一の検出体12の平歯車部12Aに噛合している。
【0023】
なお、これらの歯車の直径及び歯数は、回転体11が最も大きく、第一の検出体12、第二の検出体13の順に小さくなっており、例えば、回転体11の歯数が48、第一の検出体12の歯数が32、第二の検出体13の歯数が28となっている。
【0024】
また、14は第一及び第二の検出体12、13の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体12の中央にインサート成形等により装着された、方形または円形状の磁石15Aとの対向面には、AMR素子15Bが装着され、この対向した磁石15AとAMR素子15Bによって第一の検出手段15が形成されている。
【0025】
さらに、第二の検出体13の中央に装着された円形状の磁石16Aとの対向面には、複数のホール素子16Bと16Cが装着され、この対向した磁石16Aとホール素子16B、16Cによって第二の検出手段16が形成されている。
【0026】
なお、このホール素子16Bと16Cは、図2(a)の部分平面図や図2(b)の部分側面図に示すように、磁石16Aとは2〜3mm前後の間隙を空け、磁石16Aの中心に対して直交方向に、平行に並べて配置されると共に、磁石16Aの外周よりもやや内方へ、例えばホール素子16Bと16Cの中心が、磁石16A外周よりも0.5〜1mm前後内方となるように配置されている。
【0027】
また、配線基板14にはマイコン等の電子部品によって、AMR素子15Bやホール素子16B、16Cに接続された制御手段17が形成されると共に、これら回転体11や第一の検出体12、第二の検出体13、配線基板14等を、絶縁樹脂製のケースやカバー(図示せず)等が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
【0028】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段17がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体11の係合部11Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0029】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転体11が回転し、これに連動して第一の検出体12が回転するため、この中央に装着された磁石15Aも回転して、磁石15Aの変化する磁気の方向をAMR素子15Bが検出し、この正弦波や余弦波から正接計算や直線近似計算等を行って、図3(a)の波形図に示すような、増減を繰返す略鋸歯状の検出信号Lが制御手段17へ入力される。
【0030】
また、第一の検出体12に連動して第二の検出体13も回転し、この中央に装着された磁石16Aが回転して、この磁石16Aの変化する磁力をホール素子16Bと16Cが検出し、例えばホール素子16Bからは、図4(a)の波形図に示すような、正弦波の検出信号Mが制御手段17へ出力される。
【0031】
そして、同時に、ホール素子16Bとは磁石16Aの中心に対して直交方向に、すなわち90度ずれた位置に配置されたホール素子16Cからは、余弦波の検出信号Nが制御手段17へ出力され、制御手段17がこれらの検出信号MとNから、図4(b)に示すような略鋸歯状の検出信号Pを算出する。
【0032】
なお、この時、第一の検出体12と第二の検出体13は歯数が異なり回転速度も異なるため、図3(a)に示す第一の検出体12の検出信号Lと、図3(b)に示す第二の検出体13の検出信号Pは、略鋸歯状の波形の傾き角度や形状の異なった、位相差のあるデータ波形となる。
【0033】
そして、これらの検出信号から制御手段17が、第一の検出体12の検出信号Lの例えば2回転目の角度θ1から、第二の検出体13の検出信号Pの例えば2回転目の角度θ2を減じて、図3(c)に示すような、漸次増加する直線状の位相差信号Rを算出し、この角度θ1−θ2から、先ず回転体11の概略の回転角度を検出する。
【0034】
また、この後、検出信号Lの角度θ1と各々の平歯車部の歯数から、制御手段17が回転体11の詳細な回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われる。
【0035】
つまり、制御手段17がAMR素子15Bとホール素子16B、16Cからの検出信号LとPを用いて位相差信号Rを算出し、先ず回転体11の概略の回転角度を検出した後、AMR素子15Bからの検出信号Lを用いて、詳細な回転角度を検出することによって、概略の回転角度を検出する場合にのみ使用される第二の検出手段16には、安価なホール素子16Bや16Cを用いることができるようになっている。
【0036】
すなわち、第一と第二の検出手段15と16の両方に、高精度ではあるが高価なAMR素子15Bを用いる必要はなく、概略の回転角度を検出するだけの第二の検出手段16を、磁石16Aと直交配置された複数のホール素子16B、16Cから形成することによって、装置を安価な構成にできると共に、回転体11の回転角度の確実な検出が行えるように構成されている。
【0037】
なお、以上の構成では、第一の検出手段15にAMR素子15Bを、第二の検出手段16にホール素子16Bと16Cを各々用いた構成として説明したが、これとは逆に、第一の検出体12側をホール素子16Bと16Cで形成し、第二の検出体13側をAMR素子15Bで形成して、詳細な回転角度の検出は第二の検出体13側で行うようにしてもよい。
【0038】
また、図2に示したように、複数のホール素子16Bと16Cを磁石16A外周よりも内方へ配置することによって、ホール素子16Bと16Cによる磁石16Aの磁気の検出精度を高め、さらに高精度でばらつきの少ない回転角度の検出を行うことができるようになっている。
【0039】
つまり、図5の特性図に示すように、複数のホール素子16Bと16Cの磁石16Aの磁気を検出する感度は、これらの中心が、磁石16Aの外周の真上あるいは真下にある場合が最も優れ、内方へ−1、−2mmとずれるほど、あるいは外方へ+1、+2mmとずれるほど検出感度は劣化するが、内方に比べ外方、すなわち磁石16A外周から離れる方向の方が感度の劣化は大きく、矢印で示す、磁石16A外周から外方へ+1mm前後離れた場合の劣化が特に大きい。
【0040】
このため、ホール素子16Bと16Cの中心を、磁石16Aの外周に合わせて配置した場合、各構成部品の寸法のばらつきや製作時の位置ずれによって、中心が磁石16A外周から外方へずれてしまうと、ホール素子16Bと16Cの検出感度が大きく劣化してしまう。
【0041】
これに対し、上記のように、ホール素子16Bと16Cを磁石16A外周よりも、0.5〜1mm前後内方へ直交配置することによって、多少の寸法ばらつきや位置ずれが生じた場合でも、ホール素子16Bと16Cの検出感度の大きな劣化を防ぎ、高精度でばらつきの少ない回転角度の検出が可能となる。
【0042】
さらに、上述したように、複数のホール素子16Bと16Cを磁石16Aの中心に対して直交方向に、平行に並べて配置することによって、配線基板14に占めるホール素子16Bと16Cのスペースを小さくできると共に、直径が10mmあるいは5mm前後の小さな磁石16Aを使用することも可能となり、装置全体の小型化を図ることができる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、第一または第二の検出手段15または16のいずれかを磁石16Aと、直交配置された複数のホール素子16Bと16Cから形成すると共に、制御手段17がこの複数のホール素子16B、16CとAMR素子15Bからの検出信号を用いて、先ず回転体11の概略の回転角度を検出し、この後、AMR素子15Bからの検出信号を用いて、詳細な回転角度を検出することによって、安価なホール素子16Bや16Cを用いることができるため、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0044】
そして、複数のホール素子16Bや16Cを、磁石16A外周よりも内方へ配置することによって、ホール素子16Bや16による磁石16Aの磁気の検出精度を高め、さらに高精度でばらつきの少ない回転角度の検出を行うことができる。
【0045】
なお、以上の説明では、回転体11に第一の検出体12が噛合し、この第一の検出体12に第二の検出体13が噛合した構成の回転角度検出装置について説明したが、背景技術の項で説明したような、回転体11に第一の検出体12と第二の検出体13の両方を噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【0046】
また、以上の説明では、回転体11や第一の検出体12、第二の検出体13の外周に各々平歯車部を形成し、これらが噛合して互いに連動して回転する構成について説明したが、平歯車部以外にも傘歯車等、他の形状の歯車を用いた構成や、あるいは歯車に代えて、回転を伝達できる凹凸部や高摩擦部などを回転体や各検出体の外周に形成し、これによって互いに連動して回転する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による回転角度検出装置は、安価な構成で、回転角度の確実な検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の斜視図
【図2】同部分平面図と部分側面図
【図3】同波形図
【図4】同波形図
【図5】同特性図
【図6】従来の回転角度検出装置の斜視図
【符号の説明】
【0049】
11 回転体
11A、12A、13A 平歯車部
11B 係合部
12 第一の検出体
13 第二の検出体
14 配線基板
15 第一の検出手段
15A 磁石
15B AMR素子
16 第二の検出手段
16A 磁石
16B、16C ホール素子
17 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する第一及び第二の検出体と、この第一及び第二の検出体の回転を検出する第一及び第二の検出手段と、この第一及び第二の検出手段からの検出信号により上記回転体の回転角度を検出する制御手段からなり、上記第一または第二の検出手段のいずれかを磁石と、直交配置された複数のホール素子から形成した回転角度検出装置。
【請求項2】
複数のホール素子を磁石外周よりも内方へ配置した請求項1記載の回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−96518(P2010−96518A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265052(P2008−265052)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】