回転角検出装置およびそれを用いたアクチュエータ
【課題】 部品点数が少ない回転角検出装置を提供する。
【解決手段】 ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごとに検出する。この構成では、1つのホールIC751に対し、ロータ20の回転に同期した2つのパルス信号PS1および仮想パルス信号PS2を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあったホールICの数を1つに減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつホールICの数を減らすことが可能である。
【解決手段】 ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごとに検出する。この構成では、1つのホールIC751に対し、ロータ20の回転に同期した2つのパルス信号PS1および仮想パルス信号PS2を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあったホールICの数を1つに減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつホールICの数を減らすことが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置およびそれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転角を検出するには例えばロータリエンコーダが用いられる。ロータリエンコーダにはアブソリュート方式とインクリメンタル方式との2種類がある。アブソリュート方式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置は、回転体の絶対的な回転位置を検出可能である。インクリメンタル方式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置は、回転体の回転開始位置に対する相対的な回転角を検出可能である。
【0003】
ロータリエンコーダには、例えば光学式や磁気式などがある。光学式のロータリエンコーダは、回転体とともに回転する例えばスリット円板に光を当て、スリット円板を通過した光に基づいて回転体の回転に同期したパルス信号を生成する。磁気式のロータリエンコーダは、回転体とともに回転する例えば磁気円板に磁気センサを対向させ、磁気センサが読み取る磁界の強弱に基づいて回転体の回転に同期したパルス信号を生成する。
【0004】
特許文献1には、磁気式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置が記載されている。特許文献1のロータリエンコーダは、2つのホールICを有している。一方のホールICは、他方のホールICに対し周方向にずらして配置される。これにより、一方のホールICが出力するパルス信号は、他方のホールICが出力するパルス信号に対し1/4周期位相がずれるようになっている。回転角検出装置は、一方および他方のホールICが出力するパルス信号のエッジをカウントすることにより回転体の回転角を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−112151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、回転角検出装置は、小型にするためや組立工数の低減のために部品点数を減らすことが求められている。特許文献1のような磁気式のロータリエンコーダの場合、磁気円板の着磁数を2倍にすることによって分解能を維持しつつホールICを1つ減らすことが考えられる。しかしながら、磁気円板の大きさを変えずに着磁数を増やすのは困難である。仮に磁気円板の着磁数を増やすことができても、パルス信号の出力のため必要な磁束密度を得ることができない。
【0007】
また、光学式のロータリエンコーダの場合、スリット円板のスリット数を2倍にすることによって分解能を維持しつつフォトトランジスタ等の受光素子を1つ減らすことが考えられる。しかしながら、スリット円板の大きさを変えずにスリット数を増やすのは困難である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数が少ない回転角検出装置およびそれを用いたアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、回転角検出装置は、発信部と受信部と制御部とを備える。発信部は、回転体と共に回転可能であり、磁界または光を発生する。受信部は、発信部が発生する磁界または光を受け、回転体の回転に同期したパルス信号を出力する。制御部は、前記パルス信号に対し位相がずれる単数または複数の仮想パルス信号を生成し、これらパルス信号および仮想パルス信号のエッジ数をカウントする。制御部は、パルス信号および仮想パルス信号のエッジ数に基づいて回転体の回転角を検出する。
【0009】
「パルス信号のエッジ」とは、パルス信号のうち出力が変化する部分のことを指す。「パルス信号の立上りエッジ」とは、パルス信号の出力が低レベルから高レベルに変化する部分のことを指す。「パルス信号の立下りエッジ」とは、パルス信号の出力が高レベルから低レベルに変化する部分のことを指す。
【0010】
この構成では、1つの受信部に対し、回転体の回転に同期した複数のパルス信号を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあった例えばホールIC等の受信部の数を1つ減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつ受信部の数を減らすことが可能である。その結果、部品点数が少ない回転角検出装置を得ることができる。
【0011】
請求項2および3に仮想パルス信号のエッジをカウントするカウント手段の具体的な構成を示す。
請求項2に記載の発明では、制御部は、パルス信号のうち連続する第1立上りエッジ、立下りエッジおよび第2立上りエッジをカウントする。制御部は、パルス信号の第1立上りエッジのカウント時点から立下りエッジのカウント時点までのオン時間を算出し、パルス信号の立下りエッジのカウント時点からオン時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき、仮想パルス信号の立下りエッジをカウントする。制御部は、パルス信号の立下りエッジのカウント時点から第2立上りエッジのカウント時点までのオフ時間を算出し、パルス信号の第2立上りエッジのカウント時点からオフ時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき、仮想パルス信号の立上りエッジをカウントする。
請求項3に記載の発明では、所定の時間比は0.5である。
【0012】
請求項4に記載の発明では、回転角検出装置は、多極磁石からなる送信部と磁気センサからなる受信部とから構成される磁気式のロータリエンコーダを備える。送信部は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように構成される。これによれば、多極磁石の大きさを変えずに磁極数を増やすことが困難であるとき小スペースに回転角検出装置を構成することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、送信部を構成する多極磁石の各磁極は、周方向に等間隔に配置される。これによれば、回転体の回転角を等間隔に検出することができる。
請求項6に記載の発明では、回転角検出装置は、アクチュエータに適用される。このアクチュエータは、ステータおよびロータからなるモータと、請求項1〜5に記載の回転角検出装置によって構成され、モータのロータの回転角を検出するロータリエンコーダと、を備える。これによれば、アクチュエータ搭載上スペースの制約があるとき小スペースに回転角検出装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による回転角検出装置を備えるシフトバイワイヤシステムの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のアクチュエータの縦断面図である。
【図3】図2のアクチュエータのリングギヤ、プラネタリギヤ、およびドライブギヤを図2のY矢印方向から見た図である。
【図4】図2のアクチュエータの後ハウジングおよびモータのステータ、ロータリエンコーダを図2のY矢印方向から見た図である。
【図5】図2のアクチュエータの駆動軸、リングギヤおよびプラネタリギヤを模式的に示す斜視図である。
【図6】図2のロータリエンコーダのマグネットを示す図であって、(a)マグネットの正面図、(b)VIb−VIb線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図8】本発明の第1実施形態による回転角検出装置の制御作動を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の第2実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図10】本発明の第3実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図11】本発明の第4実施形態による回転角検出装置のマグネットを示す図であって、(a)マグネットの正面図、(b)XIb−XIb線断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態による回転角検出装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転角検出装置を適用したシフトバイワイヤシステムを図1に示す。シフトバイワイヤシステム7は、運転者により操作されるセレクトレバーの操作位置に応じてアクチュエータ1を作動させて図示しない車両用自動変速機のシフトレンジを切り換える。シフトバイワイヤシステム7は、セレクトレバーとシフトアクチュエータ1とがワイヤ(電線)を経由して電気的に接続されるバイワイヤシステムである。
【0016】
第1実施形態の車両用自動変速機に採用する遊星歯車式の変速機は、入出力部材間に設けられる複数の遊星歯車装置の各回転要素と他部材との係合関係を油圧式クラッチで制御することにより変速段およびシフトレンジを切り換える。油圧式クラッチに所定圧の作動油を供給する油圧制御装置には、レンジ切換弁としてのマニュアルバルブ70が設けられる。このマニュアルバルブ70は、バルブボディ700内に軸方向に移動可能に収容される弁部材701を備え、この弁部材701が軸方向に移動することで油圧制御装置内の油路を切り換えて変速機のシフトレンジを切り換える。変速機のシフトレンジには、前進走行用のDレンジ、後進走行用のRレンジ、駐車用のPレンジ、および動力遮断用のNレンジが設定されている。
【0017】
シフトバイワイヤシステム7は、シフトアクチュエータ1、コントロールロッド72、ディテント機構73、パーキングロック機構74および電子制御ユニット71(Electric Control Unit;以下「ECU」という)を備えている。
図2〜図4に示すように、シフトアクチュエータ1は、モータ2、サイクロイド減速部3、平行軸歯車減速部4、および出力軸5を外郭部材6内に備えている。外郭部材6は、前ハウジング60、中ハウジング61および後ハウジング62からなる。
【0018】
モータ2は、スイッチドリラクタンスモータ(SRモータ)から構成され、ロータ20およびステータ21を備えている。
ロータ20は、駆動軸200およびロータコア201から構成されている。駆動軸200は、後ハウジング62および前ハウジング60により回転可能に支持されている。駆動軸200の一端部200aと他端部200bとの間には、大径部200cと、一端部200aおよび他端部200bの第1軸φ1に対し偏心する偏心軸φ3を有する偏心部200dとが設けられている。ロータコア201は、駆動軸200の大径部200cの外壁に固定されている。ロータコア201は、周方向の45度毎に径外方向へ向けて突出する複数の突極(図示せず)を形成する。
【0019】
ステータ21は、ロータ20の径外方向で後ハウジング62の内壁に固定されている。ステータ21は、ステータコア210およびコイル211から構成されている。ステータコア210は、周方向の30度毎に径内方向に向けて突出する複数のステータティース(図示せず)を形成する。コイル211は、各ステータティースに巻回されるU相コイル、V相コイル、およびW相コイルから成る。
【0020】
後ハウジング62には、モータ2および後述のロータリエンコーダ75からの配線部材622が埋め込まれている。配線部材622は、後ハウジング62が形成するコネクタ623まで延びている。モータ2およびロータリエンコーダ75は、ECU71からの配線を収容する図示しないコネクタがコネクタ623に接続されることによりECU71に電気的に接続される。
【0021】
サイクロイド減速部3は、遊星歯車減速機の一種であり、リングギヤ30およびプラネタリギヤ31を備えている。
リングギヤ30は、第1軸φ1と同軸に配置される環状の内歯車である。リングギヤ30は、駆動軸200の偏心部200dの径外方向で中ハウジング61の内壁に固定される。
プラネタリギヤ31は、偏心軸φ3と同軸に配置されリングギヤ30に噛み合う外歯車である。プラネタリギヤ31は、駆動軸200の偏心部200dの外壁に嵌合する軸受82により、偏心軸φ3まわりに自転可能に且つ第1軸φ1まわりに公転可能に支持されている。プラネタリギヤ31は、偏心軸φ3の同心円上において周方向に等間隔にドライブギヤ40側へ突出する複数のトルク伝達用突起310を形成する。このトルク伝達用突起310は、後述のトルク伝達用穴402と共に、プラネタリギヤ31の自転成分をドライブギヤ40に伝達するための回転伝達手段として機能する。
【0022】
平行軸歯車減速部4は、ドライブギヤ40およびドリブンギヤ41から構成されている。
ドライブギヤ40は、第1軸φ1と同軸に配置される外歯車である。ドライブギヤ40は、前ハウジング60に嵌合する軸受83により回転可能に支持されている。ドライブギヤ40は、プラネタリギヤ31のトルク伝達用突起310が遊嵌する複数のトルク伝達用穴402を有する。このトルク伝達用穴402は、第1軸φ1の同心円上において周方向に等間隔に形成される貫通穴であり、トルク伝達用穴402と共に回転伝達手段を構成する。ドライブギヤ40は、トルク伝達用突起310とトルク伝達用穴402とが係合することによりプラネタリギヤ31にトルク伝達可能に連結されている。
ドリブンギヤ41は、第1軸φ1に平行な第2軸φ2と同軸に配置される扇状の外歯車である。
【0023】
出力軸5は、前ハウジング60に嵌合する軸受84により第2軸φ2まわりに回転可能に支持されている。出力軸5の外壁には、ドリブンギヤ41が固定されている。出力軸5の嵌合穴510には、コントロールロッド72が嵌合する。この嵌合により出力軸5とコントロールロッド72とがトルク伝達可能に連結される。
【0024】
このように構成されるシフトアクチュエータ1では、ECU71によりモータ2のコイル211にU相コイル、V相コイル、W相コイルの順で通電が切り換えられるとロータ20は一方向へ回転する。そして、ECU71によりモータ2のコイル211にW相コイル、V相コイル、U相コイルの順で通電が切り換えられるとロータ20は他方向へ回転する。U相コイル、V相コイル、W相コイルへの通電が一巡する毎にロータ20は45度回転する。
【0025】
モータ2が作動して駆動軸200が第1軸φ1まわりに回転すると、サイクロイド減速部3のプラネタリギヤ31は、図5に矢印bで示すように第1軸φ1まわりに公転しつつ図5に矢印cで示すように偏心軸φ3まわりに自転する。プラネタリギヤ31は、駆動軸200が第1軸φ1まわりに1回転する毎に、プラネタリギヤ31とリングギヤ30の歯数差に応じた所定の角度だけプラネタリギヤ31の公転方向とは反対側へ自転する。そのプラネタリギヤ31の自転速度は、駆動軸200の第1軸φ1まわりの回転速度に比べて大きく減速する。サイクロイド減速部3は、モータ2から入力される回転を減速してドライブギヤ40に出力する。
【0026】
プラネタリギヤ31の自転成分がトルク伝達用突起310およびトルク伝達用穴402を経由してドライブギヤ40に入力されると、平行軸歯車減速部4は、ドライブギヤ40の回転を減速してドリブンギヤ41から出力軸5に出力する。出力軸5は、ドリブンギヤ41から入力される回転をコントロールロッド72に出力する。
シフトアクチュエータ1は、セレクトレバーにより選択されるシフトレンジに対応する回転位置にコントロールロッド72を回転させる。
【0027】
シフトアクチュエータ1には、ECU71と共に回転角検出装置を構成するロータリエンコーダ75が組み込まれている。
ロータリエンコーダ75は、マグネット750とホールIC751とエンコーダボード752とから構成されている。図6に示すように、「送信部、磁気部材」としてのマグネット750は、N極およびS極が周方向に交互に着磁された多極磁石である。マグネット750は、各磁極が周方向に等間隔に配置される。第1実施形態では、マグネット750のN極およびS極の各着磁数は例えば24である。すなわち、1周期15°である。マグネット750は、「回転体」としてのロータ20に固定される。
【0028】
ホールIC751およびエンコーダボード752は、「受信部」に対応する。これらホールIC751およびエンコーダボード752は、後ハウジング62の内底壁に固定されている。「磁気センサ」としてのホールIC751は、ホール素子を有している。このホール素子は、マグネット750が発生する磁界の向きおよび大きさを検出可能である。
エンコーダボード752は、ホールIC751を実装する基板を含む。エンコーダボード752は、ホールIC751が出力するパルス状の電気信号に基づいてロータ20の回転に同期したパルス信号を生成する。エンコーダボード752は、前記パルス信号を「制御部」としてのECU71に出力する。第1実施形態では、ロータ20が1回転する間に24パルスのパルス信号が出力される。
【0029】
コントロールロッド72には、ディテント機構73のディテントプレート730が固定されている。シフトアクチュエータ1から出力される回転は、コントロールロッド72を経由してディテントプレート730に伝達される。
【0030】
ディテント機構73は、ディテントプレート730およびディテントスプリング733を備えている。
ディテントプレート730は、コントロールロッド72から径外方向に突出する板状部材であり、突出先端面に複数の係合溝731を有している。ディテントプレート730は、コントロールロッド72の軸方向に平行な方向へ突出する係合突起732を形成する。この係合突起732は、マニュアルバルブ70の弁部材701に対し軸方向に係合可能である。
【0031】
ディテントスプリング733は、マニュアルバルブ70のバルブボディ700に基端部が固定される方持ち状のばね板である。二股に分かれるディテントスプリング733の先端部にはローラ734が設けられている。ディテントプレート730およびコントロールロッド72の回動位置は、ディテントスプリング733のローラ734がディテントプレート730の複数の係合溝731のいずれか1に係合することによって固定される。ディテント機構73は、コントロールロッド72の回り止め手段として機能する。
【0032】
パーキングロック機構74は、パークロッド740、カム部材741、パーキングロックポール742、およびパーキングギヤ743を備えている。
パークロッド740の基端部は、ディテントプレート730に連結されている。パークロッド740の先端部は、ディテントプレート730が回動するに従ってパーキングギヤ743の軸方向に略平行な方向へ往復移動する。カム部材741は、パークロッド740の先端部と共に往復移動する。パーキングロックポール742には、パーキングギヤ743に接近および離間可能な噛合突起部742aが設けられている。この噛合突起部742aは、カム部材741がパーキングロックポール742の先端部と台座744との間に挿入されるとパーキングギヤ743側へ移動し、パーキングギヤ743に噛み合う。この噛み合いにより、パーキングギヤ743は、有段変速機の出力軸を回転不能に固定する。
【0033】
ECU71は、図示しないCPU、ROM、およびRAMなどを有するマイクロコンピュータから構成されている。ECU71は、図示しないレバーポジションセンサ、ロータリエンコーダ75およびインヒビタスイッチ76に電気的に接続している。レバーポジションセンサは、セレクトレバーの操作位置に対応する電気信号をECU71に出力する。ロータリエンコーダ75は、シフトアクチュエータ1のモータ2のロータ20の回転に同期したパルス信号をECU71に出力する。インヒビタスイッチ76は、コントロールロッド72の絶対的な回転位置に対応する電気信号をECU71に出力する。インヒビタスイッチ76は、例えばポテンショメータから構成される。
【0034】
ECU71は、入力される各信号に基づき、ROMに記録されている所定の制御プログラムに従ってシフトアクチュエータ1を制御する。具体的には、ECU71は、シフトアクチュエータ1を作動に先立って、セレクトレバーの操作位置に対応する指示シフトレンジへ切り換えるためのコントロールロッド72の目標回転角を算出する。そして、ECU71は、コントロールロッド72の目標回転角が得られるまでシフトアクチュエータ1を回転駆動させる。第1実施形態では、ECU71は、インヒビタスイッチ76から供給される電気信号に基づいてコントロールロッド72の回転位置を把握する。また、ECU71は、インヒビタスイッチ76から供給される電気信号に基づいてモータ2およびコントロールロッド72の回転方向を把握する。
【0035】
以上のように構成されるシフトバイワイヤシステム7は、セレクトレバーにより指示される指示シフトレンジが変更されると、ECU71からシフトアクチュエータ1の作動指令信号を出力する。その作動指令信号に従いシフトアクチュエータ1が作動すると、コントロールロッド72およびディテントプレート730が回動する。その回動によりディテントプレート730に係合する弁部材701が軸方向に移動すると、マニュアルバルブ70が作動してシフトレンジが切り換わると共にカム部材741が軸方向へ移動する。指示シフトレンジがPレンジである場合、カム部材741がパーキングロックポール742を押し上げることでパーキングロックポール742の噛合突起部742aとパーキングギヤ743とが噛み合い、有段変速機の出力軸を回転不能に固定する。
【0036】
次に、ECU71の回転角検出のための機能について詳しく説明する。
ECU71は、ロータリエンコーダ75が出力するパルス信号に対し位相がずれる仮想パルス信号を生成し、これらパルス信号および仮想パルス信号のエッジ数をカウントする。そして、カウントしたエッジ数に比例するロータ20の回転角を検出する。その検出について以下に具体的に示す。
【0037】
図7は、ECU71に供給されるパルス信号PS1を示す。図7には、ECU71が生成する仮想パルス信号PS2を二点鎖線で示す。
ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1、E3および立下りエッジE2、E4をカウントする。ECU71は、立上りエッジE1のカウント時点t1から立下りエッジE2のカウント時点t2までのオン時間T1を算出する。ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点t2から立上りエッジE3のカウント時点t4までのオフ時間T2を算出する。ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点t4から立下りエッジE4のカウント時点t6までのオン時間T3を算出する。
【0038】
ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点t2からオン時間T1の半分の時間{(T1)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE5をカウントする。ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点t4からオフ時間T2の半分の時間{(T2)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立上りエッジE6をカウントする。ECU71は、立下りエッジE4のカウント時点t6からオン時間T3の半分の時間{(T3)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE7をカウントする。
【0039】
ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごと即ち15°の1/4周期ごとに検出する。
【0040】
次に、ECU71の作動を図8に基づいて説明する。図8は、ECU71の回転角検出の制御作動に関する処理フローを示したものである。図8に示す一連の処理は、例えば、ECU71からシフトアクチュエータ1の作動指令信号が出力されてから、コントロールロッド72が目標回転角回転するまで繰り返し実行される。コントロールロッド72が目標回転角回転したか否かは、例えばインヒビタスイッチ76により検出される。
【0041】
図8のステップS1では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が1を示す場合に立上りエッジE1のカウント条件が成立していると判定する。立上りエッジE1のカウント条件が成立している場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2へ移行する。一方、立上りエッジE1のカウント条件が成立していない場合(ステップS1:NO)、ECU71は、モータ2が回転していないと判断し、本ルーチンを抜ける。
【0042】
ステップS2では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1をカウントする。
ステップS3では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が0を示す場合に立下りエッジE2のカウント条件が成立していると判定する。立下りエッジE2のカウント条件が成立している場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4へ移行する。一方、立下りエッジE2のカウント条件が成立していない場合(ステップS3:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0043】
ステップS4では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE2をカウントする。
ステップS5では、ECU71は、立上りエッジE1のカウント時点から立下りエッジE2のカウント時点までのオン時間T1を算出する。
ステップS6では、ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点からオン時間T1の半分の時間{(T1)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE5をカウントする。
【0044】
ステップS7では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が1を示す場合に立上りエッジE3のカウント条件が成立していると判定する。立上りエッジE3のカウント条件が成立している場合(ステップS7:YES)、処理はステップS7へ移行する。一方、立上りエッジE3のカウント条件が成立していない場合(ステップS7:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0045】
ステップS8では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE3をカウントする。
ステップS9では、ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点から立上りエッジE3のカウント時点までのオフ時間T2を算出する。
ステップS10では、ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点からオフ時間T2の半分の時間{(T2)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立上りエッジE6をカウントする。
【0046】
ステップS11では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が0を示す場合に立下りエッジE4のカウント条件が成立していると判定する。立下りエッジE4のカウント条件が成立している場合(ステップS11:YES)、処理はステップS12へ移行する。一方、立下りエッジE4のカウント条件が成立していない場合(ステップS11:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0047】
ステップS12では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE4をカウントする。
ステップS13では、ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点から立下りエッジE4のカウント時点までのオン時間T3を算出する。
ステップS14では、ECU71は、立下りエッジE4のカウント時点からオン時間T3の半分の時間{(T3)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE7をカウントし、本ルーチンを抜ける。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態では、ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごとに検出する。
この構成では、1つのホールIC751に対し、ロータ20の回転に同期した2つのパルス信号PS1および仮想パルス信号PS2を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあったホールICの数を1つに減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつホールICの数を減らすことが可能である。その結果、部品点数が少ない回転角検出装置を得ることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、マグネット750の各磁極は、周方向に等間隔に配置される。これによれば、回転体の回転角を等間隔に検出することができる。
また、第1実施形態では、回転角検出装置は、マグネット750とホールIC751とエンコーダボード752とから構成される磁気式のロータリエンコーダ75を備える。これによれば、マグネット750の大きさを変えずに磁極数を増やすことが困難であるとき小スペースにロータリエンコーダ75を構成することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、回転角検出装置は、車両用変速機のシフトアクチュエータ1に適用され、モータ2のロータ20の回転角を検出する。これによれば、車両搭載上スペースの制約があるとき小スペースにシフトアクチュエータ1を構成することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図9に示すように、第2実施形態では、ECUは、モータが等速回転する間、仮想パルス信号PS3の立下りエッジE5のカウント時点t13からオフ時間T2が経過したとき仮想パルス信号PS3の立上りエッジE8をカウントする。また、ECUは、仮想パルス信号PS3の立上りエッジE8のカウント時点t15からオン時間T3が経過したとき仮想パルス信号PS3の立下りエッジE9をカウントする。これにより、モータのロータの回転角を3.75度ごと即ち15°の1/4周期ごとに検出することができる。さらに、第1実施形態と比べて制御負荷を低減することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図10に示すように、第3実施形態では、ECUは、ロータリエンコーダ75が出力するパルス信号PS1に対し位相がずれる2つの仮想パルス信号PS4、PS5を生成する。仮想パルス信号PS4は、パルス信号PS1に対し位相が1/6周期ずれる。仮想パルス信号PS5は、パルス信号PS1に対し位相が2/6周期ずれる。
【0053】
ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント時点t22からオン時間T1の1/3の時間{(T1)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE10をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント時点t25からオフ時間T2の1/3の時間{(T2)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立上りエッジE11をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント時点t28からオン時間T3の1/3の時間{(T3)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE12をカウントする。
【0054】
ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント時点t22からオン時間T1の2/3の時間{2(T1)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立下りエッジE13をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント時点t25からオフ時間T2の2/3の時間{2(T2)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立上りエッジE14をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント時点t28からオン時間T3の2/3の時間{2(T3)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立下りエッジE15をカウントする。
【0055】
ECUは、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1の各エッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS4、PS5とに基づいて各パルス信号PS1、PS4およびPS5のエッジE1〜E4、E10〜E15をカウントすることにより、モータのロータの回転角を2.5度ごと即ち15°の1/6周期ごとに検出することができる。
【0056】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態による回転角検出装置のマグネット753を示す図である。図11に示すように、マグネット753は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように配置された多極磁石から構成される。マグネット753は、S極がN極に比べ周方向長さが長く形成されている。本実施形態では、S極の周方向長さはN極の周方向長さの2倍である。
【0057】
図12に示すように、第4実施形態では、モータが等速回転するときオン時間T1、T3がオフ時間T2に比べて半分になる。ECUは、パルス信号PS6の立下りエッジE17のカウント時点t32からオン時間T1が経過したとき仮想パルス信号PS7の立下りエッジE20をカウントする。ECUは、パルス信号PS6の立上りエッジE18のカウント時点t34からオフ時間T2の1/4の時間{(T2)/4}が経過したとき仮想パルス信号PS7の立上りエッジE21をカウントする。ECUは、パルス信号PS6の立下りエッジE19のカウント時点t36からオン時間T3が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE22をカウントする。これにより、モータのロータの回転角を最小で2.5度ごとに検出することができる。
【0058】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、ECUは、仮想パルス信号を3つ以上生成してもよい。これによりさらに細かく回転角を検出可能である。
また、本発明の他の実施形態では、マグネットは、N極がS極に比べ周方向長さが長く形成されてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、マグネットの着磁数は24でなくてもよい。
【0059】
また、本発明の他の実施形態では、ホールICに代えて例えば磁気抵抗素子を用いた磁気センサ等を用いてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、光学式のロータリエンコーダを用いてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転角検出装置を例えば車両の他のバルブ装置等の駆動部に使用してもよいし、例えば産業ロボットや工作機械などの他の装置の駆動部に使用してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、SRモータ以外のモータを採用してもよい。
【0060】
以上、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
20 ・・・ロータ(回転体)
71 ・・・ECU(制御部)
751・・・マグネット(発信部)
752・・・ホールIC(受信部)
753・・・エンコーダボード(受信部)
E1,E3,E6,E8,E11,E14,E16,E18,E21・・・立上りエッジ(第1立上りエッジ、第2立上りエッジ)
E2,E4,E5,E7,E9,E10,E12,E13,E15,E17,E19,E20,E22・・・立下りエッジ
PS1,PS6・・・パルス信号
PS2,PS3,PS4,PS5,PS7・・・仮想パルス信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置およびそれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転角を検出するには例えばロータリエンコーダが用いられる。ロータリエンコーダにはアブソリュート方式とインクリメンタル方式との2種類がある。アブソリュート方式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置は、回転体の絶対的な回転位置を検出可能である。インクリメンタル方式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置は、回転体の回転開始位置に対する相対的な回転角を検出可能である。
【0003】
ロータリエンコーダには、例えば光学式や磁気式などがある。光学式のロータリエンコーダは、回転体とともに回転する例えばスリット円板に光を当て、スリット円板を通過した光に基づいて回転体の回転に同期したパルス信号を生成する。磁気式のロータリエンコーダは、回転体とともに回転する例えば磁気円板に磁気センサを対向させ、磁気センサが読み取る磁界の強弱に基づいて回転体の回転に同期したパルス信号を生成する。
【0004】
特許文献1には、磁気式のロータリエンコーダを備える回転角検出装置が記載されている。特許文献1のロータリエンコーダは、2つのホールICを有している。一方のホールICは、他方のホールICに対し周方向にずらして配置される。これにより、一方のホールICが出力するパルス信号は、他方のホールICが出力するパルス信号に対し1/4周期位相がずれるようになっている。回転角検出装置は、一方および他方のホールICが出力するパルス信号のエッジをカウントすることにより回転体の回転角を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−112151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、回転角検出装置は、小型にするためや組立工数の低減のために部品点数を減らすことが求められている。特許文献1のような磁気式のロータリエンコーダの場合、磁気円板の着磁数を2倍にすることによって分解能を維持しつつホールICを1つ減らすことが考えられる。しかしながら、磁気円板の大きさを変えずに着磁数を増やすのは困難である。仮に磁気円板の着磁数を増やすことができても、パルス信号の出力のため必要な磁束密度を得ることができない。
【0007】
また、光学式のロータリエンコーダの場合、スリット円板のスリット数を2倍にすることによって分解能を維持しつつフォトトランジスタ等の受光素子を1つ減らすことが考えられる。しかしながら、スリット円板の大きさを変えずにスリット数を増やすのは困難である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数が少ない回転角検出装置およびそれを用いたアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、回転角検出装置は、発信部と受信部と制御部とを備える。発信部は、回転体と共に回転可能であり、磁界または光を発生する。受信部は、発信部が発生する磁界または光を受け、回転体の回転に同期したパルス信号を出力する。制御部は、前記パルス信号に対し位相がずれる単数または複数の仮想パルス信号を生成し、これらパルス信号および仮想パルス信号のエッジ数をカウントする。制御部は、パルス信号および仮想パルス信号のエッジ数に基づいて回転体の回転角を検出する。
【0009】
「パルス信号のエッジ」とは、パルス信号のうち出力が変化する部分のことを指す。「パルス信号の立上りエッジ」とは、パルス信号の出力が低レベルから高レベルに変化する部分のことを指す。「パルス信号の立下りエッジ」とは、パルス信号の出力が高レベルから低レベルに変化する部分のことを指す。
【0010】
この構成では、1つの受信部に対し、回転体の回転に同期した複数のパルス信号を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあった例えばホールIC等の受信部の数を1つ減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつ受信部の数を減らすことが可能である。その結果、部品点数が少ない回転角検出装置を得ることができる。
【0011】
請求項2および3に仮想パルス信号のエッジをカウントするカウント手段の具体的な構成を示す。
請求項2に記載の発明では、制御部は、パルス信号のうち連続する第1立上りエッジ、立下りエッジおよび第2立上りエッジをカウントする。制御部は、パルス信号の第1立上りエッジのカウント時点から立下りエッジのカウント時点までのオン時間を算出し、パルス信号の立下りエッジのカウント時点からオン時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき、仮想パルス信号の立下りエッジをカウントする。制御部は、パルス信号の立下りエッジのカウント時点から第2立上りエッジのカウント時点までのオフ時間を算出し、パルス信号の第2立上りエッジのカウント時点からオフ時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき、仮想パルス信号の立上りエッジをカウントする。
請求項3に記載の発明では、所定の時間比は0.5である。
【0012】
請求項4に記載の発明では、回転角検出装置は、多極磁石からなる送信部と磁気センサからなる受信部とから構成される磁気式のロータリエンコーダを備える。送信部は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように構成される。これによれば、多極磁石の大きさを変えずに磁極数を増やすことが困難であるとき小スペースに回転角検出装置を構成することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、送信部を構成する多極磁石の各磁極は、周方向に等間隔に配置される。これによれば、回転体の回転角を等間隔に検出することができる。
請求項6に記載の発明では、回転角検出装置は、アクチュエータに適用される。このアクチュエータは、ステータおよびロータからなるモータと、請求項1〜5に記載の回転角検出装置によって構成され、モータのロータの回転角を検出するロータリエンコーダと、を備える。これによれば、アクチュエータ搭載上スペースの制約があるとき小スペースに回転角検出装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による回転角検出装置を備えるシフトバイワイヤシステムの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のアクチュエータの縦断面図である。
【図3】図2のアクチュエータのリングギヤ、プラネタリギヤ、およびドライブギヤを図2のY矢印方向から見た図である。
【図4】図2のアクチュエータの後ハウジングおよびモータのステータ、ロータリエンコーダを図2のY矢印方向から見た図である。
【図5】図2のアクチュエータの駆動軸、リングギヤおよびプラネタリギヤを模式的に示す斜視図である。
【図6】図2のロータリエンコーダのマグネットを示す図であって、(a)マグネットの正面図、(b)VIb−VIb線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図8】本発明の第1実施形態による回転角検出装置の制御作動を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の第2実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図10】本発明の第3実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【図11】本発明の第4実施形態による回転角検出装置のマグネットを示す図であって、(a)マグネットの正面図、(b)XIb−XIb線断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態による回転角検出装置が処理するパルス信号および仮想パルス信号を示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態による回転角検出装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転角検出装置を適用したシフトバイワイヤシステムを図1に示す。シフトバイワイヤシステム7は、運転者により操作されるセレクトレバーの操作位置に応じてアクチュエータ1を作動させて図示しない車両用自動変速機のシフトレンジを切り換える。シフトバイワイヤシステム7は、セレクトレバーとシフトアクチュエータ1とがワイヤ(電線)を経由して電気的に接続されるバイワイヤシステムである。
【0016】
第1実施形態の車両用自動変速機に採用する遊星歯車式の変速機は、入出力部材間に設けられる複数の遊星歯車装置の各回転要素と他部材との係合関係を油圧式クラッチで制御することにより変速段およびシフトレンジを切り換える。油圧式クラッチに所定圧の作動油を供給する油圧制御装置には、レンジ切換弁としてのマニュアルバルブ70が設けられる。このマニュアルバルブ70は、バルブボディ700内に軸方向に移動可能に収容される弁部材701を備え、この弁部材701が軸方向に移動することで油圧制御装置内の油路を切り換えて変速機のシフトレンジを切り換える。変速機のシフトレンジには、前進走行用のDレンジ、後進走行用のRレンジ、駐車用のPレンジ、および動力遮断用のNレンジが設定されている。
【0017】
シフトバイワイヤシステム7は、シフトアクチュエータ1、コントロールロッド72、ディテント機構73、パーキングロック機構74および電子制御ユニット71(Electric Control Unit;以下「ECU」という)を備えている。
図2〜図4に示すように、シフトアクチュエータ1は、モータ2、サイクロイド減速部3、平行軸歯車減速部4、および出力軸5を外郭部材6内に備えている。外郭部材6は、前ハウジング60、中ハウジング61および後ハウジング62からなる。
【0018】
モータ2は、スイッチドリラクタンスモータ(SRモータ)から構成され、ロータ20およびステータ21を備えている。
ロータ20は、駆動軸200およびロータコア201から構成されている。駆動軸200は、後ハウジング62および前ハウジング60により回転可能に支持されている。駆動軸200の一端部200aと他端部200bとの間には、大径部200cと、一端部200aおよび他端部200bの第1軸φ1に対し偏心する偏心軸φ3を有する偏心部200dとが設けられている。ロータコア201は、駆動軸200の大径部200cの外壁に固定されている。ロータコア201は、周方向の45度毎に径外方向へ向けて突出する複数の突極(図示せず)を形成する。
【0019】
ステータ21は、ロータ20の径外方向で後ハウジング62の内壁に固定されている。ステータ21は、ステータコア210およびコイル211から構成されている。ステータコア210は、周方向の30度毎に径内方向に向けて突出する複数のステータティース(図示せず)を形成する。コイル211は、各ステータティースに巻回されるU相コイル、V相コイル、およびW相コイルから成る。
【0020】
後ハウジング62には、モータ2および後述のロータリエンコーダ75からの配線部材622が埋め込まれている。配線部材622は、後ハウジング62が形成するコネクタ623まで延びている。モータ2およびロータリエンコーダ75は、ECU71からの配線を収容する図示しないコネクタがコネクタ623に接続されることによりECU71に電気的に接続される。
【0021】
サイクロイド減速部3は、遊星歯車減速機の一種であり、リングギヤ30およびプラネタリギヤ31を備えている。
リングギヤ30は、第1軸φ1と同軸に配置される環状の内歯車である。リングギヤ30は、駆動軸200の偏心部200dの径外方向で中ハウジング61の内壁に固定される。
プラネタリギヤ31は、偏心軸φ3と同軸に配置されリングギヤ30に噛み合う外歯車である。プラネタリギヤ31は、駆動軸200の偏心部200dの外壁に嵌合する軸受82により、偏心軸φ3まわりに自転可能に且つ第1軸φ1まわりに公転可能に支持されている。プラネタリギヤ31は、偏心軸φ3の同心円上において周方向に等間隔にドライブギヤ40側へ突出する複数のトルク伝達用突起310を形成する。このトルク伝達用突起310は、後述のトルク伝達用穴402と共に、プラネタリギヤ31の自転成分をドライブギヤ40に伝達するための回転伝達手段として機能する。
【0022】
平行軸歯車減速部4は、ドライブギヤ40およびドリブンギヤ41から構成されている。
ドライブギヤ40は、第1軸φ1と同軸に配置される外歯車である。ドライブギヤ40は、前ハウジング60に嵌合する軸受83により回転可能に支持されている。ドライブギヤ40は、プラネタリギヤ31のトルク伝達用突起310が遊嵌する複数のトルク伝達用穴402を有する。このトルク伝達用穴402は、第1軸φ1の同心円上において周方向に等間隔に形成される貫通穴であり、トルク伝達用穴402と共に回転伝達手段を構成する。ドライブギヤ40は、トルク伝達用突起310とトルク伝達用穴402とが係合することによりプラネタリギヤ31にトルク伝達可能に連結されている。
ドリブンギヤ41は、第1軸φ1に平行な第2軸φ2と同軸に配置される扇状の外歯車である。
【0023】
出力軸5は、前ハウジング60に嵌合する軸受84により第2軸φ2まわりに回転可能に支持されている。出力軸5の外壁には、ドリブンギヤ41が固定されている。出力軸5の嵌合穴510には、コントロールロッド72が嵌合する。この嵌合により出力軸5とコントロールロッド72とがトルク伝達可能に連結される。
【0024】
このように構成されるシフトアクチュエータ1では、ECU71によりモータ2のコイル211にU相コイル、V相コイル、W相コイルの順で通電が切り換えられるとロータ20は一方向へ回転する。そして、ECU71によりモータ2のコイル211にW相コイル、V相コイル、U相コイルの順で通電が切り換えられるとロータ20は他方向へ回転する。U相コイル、V相コイル、W相コイルへの通電が一巡する毎にロータ20は45度回転する。
【0025】
モータ2が作動して駆動軸200が第1軸φ1まわりに回転すると、サイクロイド減速部3のプラネタリギヤ31は、図5に矢印bで示すように第1軸φ1まわりに公転しつつ図5に矢印cで示すように偏心軸φ3まわりに自転する。プラネタリギヤ31は、駆動軸200が第1軸φ1まわりに1回転する毎に、プラネタリギヤ31とリングギヤ30の歯数差に応じた所定の角度だけプラネタリギヤ31の公転方向とは反対側へ自転する。そのプラネタリギヤ31の自転速度は、駆動軸200の第1軸φ1まわりの回転速度に比べて大きく減速する。サイクロイド減速部3は、モータ2から入力される回転を減速してドライブギヤ40に出力する。
【0026】
プラネタリギヤ31の自転成分がトルク伝達用突起310およびトルク伝達用穴402を経由してドライブギヤ40に入力されると、平行軸歯車減速部4は、ドライブギヤ40の回転を減速してドリブンギヤ41から出力軸5に出力する。出力軸5は、ドリブンギヤ41から入力される回転をコントロールロッド72に出力する。
シフトアクチュエータ1は、セレクトレバーにより選択されるシフトレンジに対応する回転位置にコントロールロッド72を回転させる。
【0027】
シフトアクチュエータ1には、ECU71と共に回転角検出装置を構成するロータリエンコーダ75が組み込まれている。
ロータリエンコーダ75は、マグネット750とホールIC751とエンコーダボード752とから構成されている。図6に示すように、「送信部、磁気部材」としてのマグネット750は、N極およびS極が周方向に交互に着磁された多極磁石である。マグネット750は、各磁極が周方向に等間隔に配置される。第1実施形態では、マグネット750のN極およびS極の各着磁数は例えば24である。すなわち、1周期15°である。マグネット750は、「回転体」としてのロータ20に固定される。
【0028】
ホールIC751およびエンコーダボード752は、「受信部」に対応する。これらホールIC751およびエンコーダボード752は、後ハウジング62の内底壁に固定されている。「磁気センサ」としてのホールIC751は、ホール素子を有している。このホール素子は、マグネット750が発生する磁界の向きおよび大きさを検出可能である。
エンコーダボード752は、ホールIC751を実装する基板を含む。エンコーダボード752は、ホールIC751が出力するパルス状の電気信号に基づいてロータ20の回転に同期したパルス信号を生成する。エンコーダボード752は、前記パルス信号を「制御部」としてのECU71に出力する。第1実施形態では、ロータ20が1回転する間に24パルスのパルス信号が出力される。
【0029】
コントロールロッド72には、ディテント機構73のディテントプレート730が固定されている。シフトアクチュエータ1から出力される回転は、コントロールロッド72を経由してディテントプレート730に伝達される。
【0030】
ディテント機構73は、ディテントプレート730およびディテントスプリング733を備えている。
ディテントプレート730は、コントロールロッド72から径外方向に突出する板状部材であり、突出先端面に複数の係合溝731を有している。ディテントプレート730は、コントロールロッド72の軸方向に平行な方向へ突出する係合突起732を形成する。この係合突起732は、マニュアルバルブ70の弁部材701に対し軸方向に係合可能である。
【0031】
ディテントスプリング733は、マニュアルバルブ70のバルブボディ700に基端部が固定される方持ち状のばね板である。二股に分かれるディテントスプリング733の先端部にはローラ734が設けられている。ディテントプレート730およびコントロールロッド72の回動位置は、ディテントスプリング733のローラ734がディテントプレート730の複数の係合溝731のいずれか1に係合することによって固定される。ディテント機構73は、コントロールロッド72の回り止め手段として機能する。
【0032】
パーキングロック機構74は、パークロッド740、カム部材741、パーキングロックポール742、およびパーキングギヤ743を備えている。
パークロッド740の基端部は、ディテントプレート730に連結されている。パークロッド740の先端部は、ディテントプレート730が回動するに従ってパーキングギヤ743の軸方向に略平行な方向へ往復移動する。カム部材741は、パークロッド740の先端部と共に往復移動する。パーキングロックポール742には、パーキングギヤ743に接近および離間可能な噛合突起部742aが設けられている。この噛合突起部742aは、カム部材741がパーキングロックポール742の先端部と台座744との間に挿入されるとパーキングギヤ743側へ移動し、パーキングギヤ743に噛み合う。この噛み合いにより、パーキングギヤ743は、有段変速機の出力軸を回転不能に固定する。
【0033】
ECU71は、図示しないCPU、ROM、およびRAMなどを有するマイクロコンピュータから構成されている。ECU71は、図示しないレバーポジションセンサ、ロータリエンコーダ75およびインヒビタスイッチ76に電気的に接続している。レバーポジションセンサは、セレクトレバーの操作位置に対応する電気信号をECU71に出力する。ロータリエンコーダ75は、シフトアクチュエータ1のモータ2のロータ20の回転に同期したパルス信号をECU71に出力する。インヒビタスイッチ76は、コントロールロッド72の絶対的な回転位置に対応する電気信号をECU71に出力する。インヒビタスイッチ76は、例えばポテンショメータから構成される。
【0034】
ECU71は、入力される各信号に基づき、ROMに記録されている所定の制御プログラムに従ってシフトアクチュエータ1を制御する。具体的には、ECU71は、シフトアクチュエータ1を作動に先立って、セレクトレバーの操作位置に対応する指示シフトレンジへ切り換えるためのコントロールロッド72の目標回転角を算出する。そして、ECU71は、コントロールロッド72の目標回転角が得られるまでシフトアクチュエータ1を回転駆動させる。第1実施形態では、ECU71は、インヒビタスイッチ76から供給される電気信号に基づいてコントロールロッド72の回転位置を把握する。また、ECU71は、インヒビタスイッチ76から供給される電気信号に基づいてモータ2およびコントロールロッド72の回転方向を把握する。
【0035】
以上のように構成されるシフトバイワイヤシステム7は、セレクトレバーにより指示される指示シフトレンジが変更されると、ECU71からシフトアクチュエータ1の作動指令信号を出力する。その作動指令信号に従いシフトアクチュエータ1が作動すると、コントロールロッド72およびディテントプレート730が回動する。その回動によりディテントプレート730に係合する弁部材701が軸方向に移動すると、マニュアルバルブ70が作動してシフトレンジが切り換わると共にカム部材741が軸方向へ移動する。指示シフトレンジがPレンジである場合、カム部材741がパーキングロックポール742を押し上げることでパーキングロックポール742の噛合突起部742aとパーキングギヤ743とが噛み合い、有段変速機の出力軸を回転不能に固定する。
【0036】
次に、ECU71の回転角検出のための機能について詳しく説明する。
ECU71は、ロータリエンコーダ75が出力するパルス信号に対し位相がずれる仮想パルス信号を生成し、これらパルス信号および仮想パルス信号のエッジ数をカウントする。そして、カウントしたエッジ数に比例するロータ20の回転角を検出する。その検出について以下に具体的に示す。
【0037】
図7は、ECU71に供給されるパルス信号PS1を示す。図7には、ECU71が生成する仮想パルス信号PS2を二点鎖線で示す。
ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1、E3および立下りエッジE2、E4をカウントする。ECU71は、立上りエッジE1のカウント時点t1から立下りエッジE2のカウント時点t2までのオン時間T1を算出する。ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点t2から立上りエッジE3のカウント時点t4までのオフ時間T2を算出する。ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点t4から立下りエッジE4のカウント時点t6までのオン時間T3を算出する。
【0038】
ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点t2からオン時間T1の半分の時間{(T1)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE5をカウントする。ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点t4からオフ時間T2の半分の時間{(T2)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立上りエッジE6をカウントする。ECU71は、立下りエッジE4のカウント時点t6からオン時間T3の半分の時間{(T3)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE7をカウントする。
【0039】
ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごと即ち15°の1/4周期ごとに検出する。
【0040】
次に、ECU71の作動を図8に基づいて説明する。図8は、ECU71の回転角検出の制御作動に関する処理フローを示したものである。図8に示す一連の処理は、例えば、ECU71からシフトアクチュエータ1の作動指令信号が出力されてから、コントロールロッド72が目標回転角回転するまで繰り返し実行される。コントロールロッド72が目標回転角回転したか否かは、例えばインヒビタスイッチ76により検出される。
【0041】
図8のステップS1では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が1を示す場合に立上りエッジE1のカウント条件が成立していると判定する。立上りエッジE1のカウント条件が成立している場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2へ移行する。一方、立上りエッジE1のカウント条件が成立していない場合(ステップS1:NO)、ECU71は、モータ2が回転していないと判断し、本ルーチンを抜ける。
【0042】
ステップS2では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE1をカウントする。
ステップS3では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が0を示す場合に立下りエッジE2のカウント条件が成立していると判定する。立下りエッジE2のカウント条件が成立している場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4へ移行する。一方、立下りエッジE2のカウント条件が成立していない場合(ステップS3:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0043】
ステップS4では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE2をカウントする。
ステップS5では、ECU71は、立上りエッジE1のカウント時点から立下りエッジE2のカウント時点までのオン時間T1を算出する。
ステップS6では、ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点からオン時間T1の半分の時間{(T1)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE5をカウントする。
【0044】
ステップS7では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が1を示す場合に立上りエッジE3のカウント条件が成立していると判定する。立上りエッジE3のカウント条件が成立している場合(ステップS7:YES)、処理はステップS7へ移行する。一方、立上りエッジE3のカウント条件が成立していない場合(ステップS7:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0045】
ステップS8では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE3をカウントする。
ステップS9では、ECU71は、立下りエッジE2のカウント時点から立上りエッジE3のカウント時点までのオフ時間T2を算出する。
ステップS10では、ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点からオフ時間T2の半分の時間{(T2)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立上りエッジE6をカウントする。
【0046】
ステップS11では、ECU71は、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント条件が成立しているか否かを判定する。ECU71は、パルス信号PS1が0を示す場合に立下りエッジE4のカウント条件が成立していると判定する。立下りエッジE4のカウント条件が成立している場合(ステップS11:YES)、処理はステップS12へ移行する。一方、立下りエッジE4のカウント条件が成立していない場合(ステップS11:NO)、ECU71は、本ルーチンを抜ける。
【0047】
ステップS12では、ECU71は、パルス信号PS1の立上りエッジE4をカウントする。
ステップS13では、ECU71は、立上りエッジE3のカウント時点から立下りエッジE4のカウント時点までのオン時間T3を算出する。
ステップS14では、ECU71は、立下りエッジE4のカウント時点からオン時間T3の半分の時間{(T3)/2}が経過したとき仮想パルス信号PS2の立下りエッジE7をカウントし、本ルーチンを抜ける。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態では、ECU71は、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1のエッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS2とに基づいて各パルス信号PS1およびPS2のエッジE1〜E7をカウントすることにより、ロータ20の回転角を3.75度ごとに検出する。
この構成では、1つのホールIC751に対し、ロータ20の回転に同期した2つのパルス信号PS1および仮想パルス信号PS2を用いて回転角を検出することができる。そのため、従来2つあったホールICの数を1つに減らしたとき従来と同等以上の分解能を得ることができる。つまり、分解能を維持しつつホールICの数を減らすことが可能である。その結果、部品点数が少ない回転角検出装置を得ることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、マグネット750の各磁極は、周方向に等間隔に配置される。これによれば、回転体の回転角を等間隔に検出することができる。
また、第1実施形態では、回転角検出装置は、マグネット750とホールIC751とエンコーダボード752とから構成される磁気式のロータリエンコーダ75を備える。これによれば、マグネット750の大きさを変えずに磁極数を増やすことが困難であるとき小スペースにロータリエンコーダ75を構成することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、回転角検出装置は、車両用変速機のシフトアクチュエータ1に適用され、モータ2のロータ20の回転角を検出する。これによれば、車両搭載上スペースの制約があるとき小スペースにシフトアクチュエータ1を構成することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図9に示すように、第2実施形態では、ECUは、モータが等速回転する間、仮想パルス信号PS3の立下りエッジE5のカウント時点t13からオフ時間T2が経過したとき仮想パルス信号PS3の立上りエッジE8をカウントする。また、ECUは、仮想パルス信号PS3の立上りエッジE8のカウント時点t15からオン時間T3が経過したとき仮想パルス信号PS3の立下りエッジE9をカウントする。これにより、モータのロータの回転角を3.75度ごと即ち15°の1/4周期ごとに検出することができる。さらに、第1実施形態と比べて制御負荷を低減することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図10に示すように、第3実施形態では、ECUは、ロータリエンコーダ75が出力するパルス信号PS1に対し位相がずれる2つの仮想パルス信号PS4、PS5を生成する。仮想パルス信号PS4は、パルス信号PS1に対し位相が1/6周期ずれる。仮想パルス信号PS5は、パルス信号PS1に対し位相が2/6周期ずれる。
【0053】
ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント時点t22からオン時間T1の1/3の時間{(T1)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE10をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント時点t25からオフ時間T2の1/3の時間{(T2)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立上りエッジE11をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント時点t28からオン時間T3の1/3の時間{(T3)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE12をカウントする。
【0054】
ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE2のカウント時点t22からオン時間T1の2/3の時間{2(T1)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立下りエッジE13をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立上りエッジE3のカウント時点t25からオフ時間T2の2/3の時間{2(T2)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立上りエッジE14をカウントする。ECUは、パルス信号PS1の立下りエッジE4のカウント時点t28からオン時間T3の2/3の時間{2(T3)/3}が経過したとき仮想パルス信号PS5の立下りエッジE15をカウントする。
【0055】
ECUは、ホールIC751により検出されたパルス信号PS1と、パルス信号PS1の各エッジ間のオン時間T1、オフ時間T2およびオン時間T3から生成した仮想パルス信号PS4、PS5とに基づいて各パルス信号PS1、PS4およびPS5のエッジE1〜E4、E10〜E15をカウントすることにより、モータのロータの回転角を2.5度ごと即ち15°の1/6周期ごとに検出することができる。
【0056】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態による回転角検出装置のマグネット753を示す図である。図11に示すように、マグネット753は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように配置された多極磁石から構成される。マグネット753は、S極がN極に比べ周方向長さが長く形成されている。本実施形態では、S極の周方向長さはN極の周方向長さの2倍である。
【0057】
図12に示すように、第4実施形態では、モータが等速回転するときオン時間T1、T3がオフ時間T2に比べて半分になる。ECUは、パルス信号PS6の立下りエッジE17のカウント時点t32からオン時間T1が経過したとき仮想パルス信号PS7の立下りエッジE20をカウントする。ECUは、パルス信号PS6の立上りエッジE18のカウント時点t34からオフ時間T2の1/4の時間{(T2)/4}が経過したとき仮想パルス信号PS7の立上りエッジE21をカウントする。ECUは、パルス信号PS6の立下りエッジE19のカウント時点t36からオン時間T3が経過したとき仮想パルス信号PS4の立下りエッジE22をカウントする。これにより、モータのロータの回転角を最小で2.5度ごとに検出することができる。
【0058】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、ECUは、仮想パルス信号を3つ以上生成してもよい。これによりさらに細かく回転角を検出可能である。
また、本発明の他の実施形態では、マグネットは、N極がS極に比べ周方向長さが長く形成されてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、マグネットの着磁数は24でなくてもよい。
【0059】
また、本発明の他の実施形態では、ホールICに代えて例えば磁気抵抗素子を用いた磁気センサ等を用いてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、光学式のロータリエンコーダを用いてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転角検出装置を例えば車両の他のバルブ装置等の駆動部に使用してもよいし、例えば産業ロボットや工作機械などの他の装置の駆動部に使用してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、SRモータ以外のモータを採用してもよい。
【0060】
以上、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
20 ・・・ロータ(回転体)
71 ・・・ECU(制御部)
751・・・マグネット(発信部)
752・・・ホールIC(受信部)
753・・・エンコーダボード(受信部)
E1,E3,E6,E8,E11,E14,E16,E18,E21・・・立上りエッジ(第1立上りエッジ、第2立上りエッジ)
E2,E4,E5,E7,E9,E10,E12,E13,E15,E17,E19,E20,E22・・・立下りエッジ
PS1,PS6・・・パルス信号
PS2,PS3,PS4,PS5,PS7・・・仮想パルス信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と共に回転可能であり、磁界または光を発生する発信部と、
前記発信部が発生する磁界または光を受け、前記回転体の回転に同期したパルス信号を出力する受信部と、
前記パルス信号に対し位相がずれる単数または複数の仮想パルス信号を生成し、前記パルス信号および前記仮想パルス信号のエッジ数をカウントし、前記エッジ数に比例する前記回転体の回転角を検出する制御部と、
を備えることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記パルス信号のうち連続する第1立上りエッジ、立下りエッジおよび第2立上りエッジをカウントし、
前記第1立上りエッジのカウント時点から前記立下りエッジのカウント時点までのオン時間を算出し、
前記立下りエッジのカウント時点から前記オン時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき前記仮想パルス信号の立下りエッジをカウントし、
前記立下りエッジのカウント時点から前記第2立上りエッジのカウント時点までのオフ時間を算出し、
前記第2立上りエッジのカウント時点から前記オフ時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき前記仮想パルス信号の立上りエッジをカウントすることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記所定の時間比は0.5であることを特徴とする請求項2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記送信部は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように配置された多極磁石から構成され、
前記受信部は、磁気センサから構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記送信部を構成する前記多極磁石の各磁極は、周方向に等間隔に配置されることを特徴とする請求項4に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
ステータおよびロータからなるモータと、
請求項1〜5に記載の回転角検出装置によって構成され、前記モータの前記ロータの回転角を検出するロータリエンコーダと、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
回転体と共に回転可能であり、磁界または光を発生する発信部と、
前記発信部が発生する磁界または光を受け、前記回転体の回転に同期したパルス信号を出力する受信部と、
前記パルス信号に対し位相がずれる単数または複数の仮想パルス信号を生成し、前記パルス信号および前記仮想パルス信号のエッジ数をカウントし、前記エッジ数に比例する前記回転体の回転角を検出する制御部と、
を備えることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記パルス信号のうち連続する第1立上りエッジ、立下りエッジおよび第2立上りエッジをカウントし、
前記第1立上りエッジのカウント時点から前記立下りエッジのカウント時点までのオン時間を算出し、
前記立下りエッジのカウント時点から前記オン時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき前記仮想パルス信号の立下りエッジをカウントし、
前記立下りエッジのカウント時点から前記第2立上りエッジのカウント時点までのオフ時間を算出し、
前記第2立上りエッジのカウント時点から前記オフ時間に所定の時間比を掛けた時間が経過したとき前記仮想パルス信号の立上りエッジをカウントすることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記所定の時間比は0.5であることを特徴とする請求項2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記送信部は、N極およびS極が周方向に交互に並ぶように、且つ、周方向に連続するN極同士の周方向間隔および周方向に連続するS極同士の周方向間隔が等しくなるように配置された多極磁石から構成され、
前記受信部は、磁気センサから構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記送信部を構成する前記多極磁石の各磁極は、周方向に等間隔に配置されることを特徴とする請求項4に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
ステータおよびロータからなるモータと、
請求項1〜5に記載の回転角検出装置によって構成され、前記モータの前記ロータの回転角を検出するロータリエンコーダと、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−7671(P2013−7671A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140960(P2011−140960)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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