説明

回転軸の粉末シール片ユニット

【課題】粉末シール片は作業者が1個ずつ粉末シール片を持って両面接着フイルムの剥離紙を剥し取り、シール部の内に挿入し、両面接着フイルムの他方面をシール部の内周面に指先で押付接着しており、全て手作業であるため極めて非効率で、熟練によってバラつきが生じる。
【解決手段】弾性材製の板片の中心部に軸嵌合部11をあけ、上部開口の左右を側片部12とし底部を嵌合部13としたホルダー10を設けると共に、該ホルダー10の軸嵌合部11の内周面にシール材片14を一体的に接着して粉末シール片ユニットAを設け、一方、ケース1のシール部の底部に嵌合凹部15を凹設し、前記粉末シール片ユニットAの嵌合部13をケース1の嵌合凹部15に嵌合して、粉末シール片ユニットAをケース1に取付けるように備えた、回転軸の粉末シール片ユニットA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複写機、ファックス、プリンター等におけるトナーカートリッジ等の回転軸の周面に付着した粉末が軸受部に混入して回転の妨げにならないように、軸受部の内側に取付けて粉末の侵入をシールする回転軸の粉末シール片ユニットに係り、従来は、全て手作業によって粉末シール片の両面接着フイルムの他方面(剥離紙を剥して)をシール部の内側に接着して取付けていたものを、本発明は、両面接着フイルムの粘着に拠らず嵌合部を嵌合凹部に嵌合するだけで、また、主として、手作業によらず自動的に、極めて簡単かつ高速・高能率に取付・設置することを可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来例粉末シール片の縦断正面図、平面図、及び、右側面図、
図8は従来例粉末シール片をケースに取付・設置した状態の一部縦断正面図、図9は図8のZ−Z線矢視断面図で粉末シール片のケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図である。
【0003】
従来、複写機、ファックス、プリンター等において、粉末3(例、トナー、主としてカーボン微粉末)を充填した長方形箱状等のケース1にマグネットローラー、転写ローラー等の回転軸2をセットしたトナーカートリッジ等が広く用いられているが、長期間の使用により、これらの回転軸2の周面に付着した粉末3が軸受部4に混入して回転の妨げ(回転障害、回転騒音等の発生)にならないように、通常、軸受部4の内側(ケース1例えばトナー槽の左右側端部)に粉末3をシールするシール部5を設けて、該シール部5から軸受部4側へ粉末3がもれ出ないようにしている。
【0004】
而して、回転軸2をケース1の正面側若しくは上面側から軸受部4に架設するときに嵌合する前記シール部5はU字乃至J字形類似に形成し、その内周面に粉末3のもれをシールする粉末シール片a(シール材片6+ホルダー7)を一体的に接着して備えたものである。
【0005】
そして、従来、前記粉末シール片aのシール材片6として、弾力性があって摩擦抵抗が極めて少なく、耐久性に秀れ、高密度に絡合した繊維が微粉末の侵入を有効に防御する作用を行う等の秀れた特性を兼備した素材である、ポリテトラフルオロエチレン製のフイルム片若しくはフェルト片、または、近時開発され多方面に使用されつつある超極細繊維不織布(ナノ繊維不織布)片を使用している。
【0006】
前記粉末シール片aは、メーカーによって多少相違するが、例えば、幅10mm位、長さ45mm位、厚さ0.5〜1mm位の上記シール材片6と、厚さ3mm位の発泡プラスチック、ゴム、若しくはフェルト製の弾力性のあるホルダー7を容易に剥離しない状態に積層形成し、そのものの裏面に両面接着フイルム8の片面(他方面に剥離紙9を接着)を接着したものであり、
該粉末シール片aを、上記シール部5の内周面に両面接着フイルム8の他方面(剥離紙9を剥して)を接着して取付けるものである。
【0007】
而して、前記従来の粉末シール片aを、シール部5の内周面に取付ける作業は、作業者が1個ずつ粉末シール片aを持って両面接着フイルム8の剥離紙9を剥し取り、シール部5の内に挿入し、両面接着フイルム8の他方面をシール部5の内周面に指先で押付けて接着して取付けるようにしており、全て、完全な手作業によっているため、極めて非効率で生産性が悪く、加工速度、加工個数等の向上に限界があり、その上、熟練の度合によってバラつきが生じて、良品歩留まりが悪い、等の多くの重大な課題があった。
【特許文献1】特願2001−59575
【特許文献2】特願2001−208206
【特許文献3】特願2003−275372
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、近時、ケースのシール部への粉末シール片の取付を、従来のように全て手作業によらずに、機械装置によって自動的に行なう技術手段の開発、提供が希求されつつあり、また、手作業による場合でも、従来よりも格段に高精度・高効率に行うことができる技術手段の開発、提供が希求されつつあった。
そこで、本発明は、全く新規な本発明粉末シール片を開発、提供して、前記従来の課題を有効に解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、弾性材製の方形乃至長方形類似形状で設定厚の板片の中心部に、回転軸の径に見合った径でその上部を開口した半円形乃至優弧形の軸嵌合部をあけて、その上部開口の左右を側片部とし底部を嵌合部としたホルダーを形成すると共に、該ホルダーの軸嵌合部の内周面に設定厚で短冊片状のシール材片を一体的に接着して粉末シール片ユニットを備えたものであり、
【0010】
一方、ケースのU字乃至J字形類似形状のシール部の底部に、前記粉末シール片ユニットの嵌合部を嵌合する嵌合凹部を備えたものであって、
【0011】
粉末シール片ユニットの嵌合部をケースの嵌合凹部に嵌合して、粉末シール片ユニットをケースに取付けるように備えたことを特徴とする、回転軸の粉末シール片ユニットによって課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
従来は、作業者が1個ずつ粉末シール片を持って両面接着フイルムの剥離紙9剥し取り、シール部の内に挿入し、両面接着フイルムの他方面をシール部5内周面に指先で押付けて接着して取付けており、全て、完全な手作業によっているため、極めて非効率で生産性が悪く、加工速度、加工個数等の向上に限界があり、その上、熟練の度合によってバラつきが生じて、良品歩留まりが悪い、等の多くの重大な課題があったが、
本発明は、粉末シール片ユニットの嵌合部をケースの嵌合凹部に嵌合するだけで、極めて簡単かつ極めて高能率に、粉末シール片ユニットをケースに取付けることが可能となり、よって、トナーケース等の回転軸の粉末シールを従来に比し画期的に高精度化・高能率化し得る優れた効果がある。
【0013】
ケースへの粉末シール片ユニットの取付けは、従来のように、1個ずつ手作業で行う場合でも、本発明の場合は、単に、粉末シール片ユニットの嵌合部をケースの嵌合凹部に嵌合するだけで済むため、従来の両面接着フイルムの剥離紙を剥し取りってシール部の内に挿入し、両面接着フイルムの他方面をシール部の内周面に指先で押付けて接着して取付ける極めて非能率的な作業が不要となると共に、作業者の熟練を必要とせずにバラつきのない高精度・高能率の取付けを可能とし得る効果がある。
【0014】
特に、本発明は、粉末シール片ユニットの嵌合部をケースの嵌合凹部に嵌合するだけで済むため、従来のように全て手作業によらずに、適宜の自動機械装置によって自動的に取付けを行なう全自動化技術手段の摘要が可能となる特徴が有る。
よって、例えば、適宜の自動的移動手段で1個ずつ粉末シール片ユニットをピックアップし保持移動して、高速かつ連続的に嵌合設置するなどが可能となり、作業の画期的な高精度化・高能率化を実現し得る。
【0015】
なお、粉末シール片ユニットの取外・交換も上記取付・設置の場合と同様になし得る。
【0016】
また、上記のようにして、ケースのシール部の嵌合凹部に粉末シール片ユニットの嵌合部を嵌合・取付けたのち、回転軸を軸嵌合部に押下げ嵌合・設置すると、回転軸の略下半周面がシール材片に密着すると共にホルダー底部を圧縮する。
前記押下げ圧縮に伴って、ホルダーの左右側片部が求心的に窄まる方向に撓み、よって左右側片部のシール材片が回転軸の上半周面に密着する。
上記によって、回転軸の略全周面にシール材片が密着することとなり、粉末のシール性能を向上して、外部漏出防止効果を格段に助長し得る優れた特徴を発揮し得る。
(図1、図4、図5、図6参照)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
弾性材製の板片の中心部に軸嵌合部11をあけ、上部開口の左右を側片部12とし底部を嵌合部13としたホルダー10を設けると共に、該ホルダー10の軸嵌合部11の内周面にシール材片14を一体的に接着して粉末シール片ユニットAを設け、一方、ケース1のシール部5の底部に嵌合凹部15を凹設し、前記粉末シール片ユニットAの嵌合部13をケース1の嵌合凹部15に嵌合して、粉末シール片ユニットAをケース1に取付けるように備えた、回転軸の粉末シール片ユニットA。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明実施例粉末シール片ユニットの縦断正面図、平面図、底面図、及び、右側面図、
図2はケースの一部を示し、(イ)はその縦断正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(イ)のX−X線矢視断面図、
図3は粉末シール片ユニットのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す一部縦断正面図、
図4は図3のY−Y線矢視断面図で粉末シール片ユニットのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図、
【0019】
また、符号Aは実施例粉末シール片ユニット、1はトナーケース等のケース、2は回転軸、3は粉末(トナー) 、4は軸受部、5は シール部、10はホルダー、11は軸嵌合部、12は左右の側片部、13は嵌合部、14はシール材片、15は嵌合凹部である。
【0020】
弾性材製の方形乃至長方形類似形状で設定厚(例、6〜10mm位)の板片の中心部に、回転軸2の径に見合った径でその上部を開口した半円形乃至優弧形の軸嵌合部11をあけて、その上部開口の左右を側片部12とし底部を嵌合部13としたホルダー10を形成すると共に、該ホルダー10の軸嵌合部11の内周面に設定厚(例、0.5〜1mm位)で短冊片状のシール材片14を一体的に接着して粉末シール片ユニットAを備えたものであり、
【0021】
一方、ケース1のU字乃至J字形類似形状のシール部5の底部に、前記粉末シール片ユニットAの嵌合部13を嵌合する嵌合凹部15を備えたものであって、
【0022】
粉末シール片ユニットAの嵌合部13をケース1の嵌合凹部15に嵌合して、粉末シール片ユニットAをケース1に取付けるように備えた、回転軸の粉末シール片ユニットAである。
【0023】
上記粉末シール片ユニットAにおいて、そのシール材片14はポリテトラフルオロエチレン製のフイルム若しくはフェルト、または、近時、開発されて多方面において使用されつつある超極細繊維不織布(ナノ繊維不織布)を短冊片状に形成したものであり、前記ホルダー10は、弾力性のある発泡プラスチック、ゴム、若しくはフェルト製であって、シール材片14をホルダー10に容易に剥離しないように一体的に固着して粉末シール片ユニットAを設けたものである。
【0024】
なお、前記ホルダー10の軸嵌合部11に回転軸2を嵌合・設置したときにホルダー10の嵌合部13を設定寸法圧縮(主として回転軸2とシール材片14の密着性を高めるため)するので、必要に応じて、嵌合部13の高さを設定寸法高く形成しておくことが望ましい。
【0025】
また、前記粉末シール片ユニットAを手作業、若しくは、適宜の自動的移動手段により1個宛移動して、その嵌合部13を前記ケース1の嵌合凹部15に嵌合することにより、ケース1に粉末シール片ユニットAを手動若しくは自動的に取付・設置するようにしたものである。
【実施例2】
【0026】
図5は実施例2の粉末シール片ユニットAの(イ)は縦断正面図、(ロ)はそのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図である。
実施例2の粉末シール片ユニットAは、実施例1とそのホルダーの左右側片部12の形状が相違するだけで他は同じである。
而して、前記左右側片部12の形状を、本実施例形状に限らず、種々工夫することによって、ホルダーの左右側片部が求心的に窄まる方向に撓んだときに、左右側片部12のシール材片を、より効果的に回転軸の上半周面に密着せしめ得る特徴がある。
【実施例3】
【0027】
図6は実施例3の粉末シール片ユニットAの(イ)は縦断正面図、(ロ)はそのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図である。
実施例3の粉末シール片ユニットAは、実施例2とほぼ同様であるので、詳細な説明を省く。
【産業上の利用可能性】
【0028】
複写機、ファックス、プリンター等におけるトナーカートリッジ等のケースの回転軸の周面に付着した粉末が軸受部に混入して回転の妨げにならないようにする粉末シール手段を、本発明によって、手作業の場合の高精度化・高能率化は元より、特に、手作業によらない全自動化を可能として画期的に高精度化・高能率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明実施例粉末シール片ユニットの縦断正面図、平面図、底面図、及び、右側面図。
【図2】ケースの一部を示し、(イ)はその縦断正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(イ)のX−X線矢視断面図。
【図3】粉末シール片ユニットのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す一部縦断正面図。
【図4】図3のY−Y線矢視断面図で粉末シール片ユニットのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図。
【図5】他の実施例粉末シール片ユニットの(イ)は縦断正面図、(ロ)はそのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図。
【図6】他の実施例粉末シール片ユニットの(イ)は縦断正面図、(ロ)はそのケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図。
【図7】従来例粉末シール片の縦断正面図、平面図、及び、右側面図。
【図8】従来例粉末シール片をケースに取付・設置した状態の一部縦断正面図。
【図9】図8のZ−Z線矢視断面図で粉末シール片のケース取付け及び回転軸の嵌合設置時の状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
A 実施例粉末シール片ユニット
a 従来例粉末シール片
1 ケース
2 回転軸
3 粉末(トナー)
4 軸受部
5 シール部
6 シール材片(従来)
7 ホルダー(従来)
8 両面接着フイルム(従来)
9 剥離紙(従来)
10 ホルダー
11 軸嵌合部(ホルダー)
12 左右の側片部(ホルダー)
13 嵌合部(ホルダー)
14 シール材片
15 嵌合凹部(ケース)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材製の方形乃至長方形類似形状で設定厚の板片の中心部に、回転軸の径に見合った径でその上部を開口した半円形乃至優弧形の軸嵌合部をあけて、その上部開口の左右を側片部とし底部を嵌合部としたホルダーを形成すると共に、該ホルダーの軸嵌合部の内周面に設定厚で短冊片状のシール材片を一体的に接着して粉末シール片ユニットを備えたものであり、
一方、ケースのU字乃至J字形類似形状のシール部の底部に、前記粉末シール片ユニットの嵌合部を嵌合する嵌合凹部を備えたものであって、
粉末シール片ユニットの嵌合部をケースの嵌合凹部に嵌合して、粉末シール片ユニットをケースに取付けるように備えたことを特徴とする、
回転軸の粉末シール片ユニット。
【請求項2】
前記粉末シール片ユニットの前記シール材片はポリテトラフルオロエチレン製のフイルム若しくはフェルト、または、超極細繊維不織布を短冊片状に形成したものであり、前記ホルダーは、弾力性のある発泡プラスチック、ゴム、若しくはフェルト製であって、シール材片をホルダーに容易に剥離しないように一体的に固着して粉末シール片ユニットを設けたものである、
請求項1の回転軸の粉末シール片ユニット。
【請求項3】
前記粉末シール片ユニットを手作業、若しくは、適宜の自動的手段により1個宛移動して、その嵌合部を前記ケースの嵌合凹部に嵌合することにより、ケースに粉末シール片ユニットを手動若しくは自動的に取付・設置するようにしたことを特徴とする、
請求項1の回転軸の粉末シール片ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112465(P2010−112465A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285411(P2008−285411)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(592025410)
【Fターム(参考)】