説明

回転量検出装置、媒体搬送装置及び記録装置

【課題】 検出ローラの回転量を検出手段により高精度に検出することができる回転量検出装置及びその回転量検出装置を備えた媒体搬送装置並びに記録装置を提供すること。
【解決手段】 検出ローラ230の軸232の軸端は、検出手段250のロータリーエンコーダスケール251の嵌入の際に嵌入穴251aが軸径方向に対して傾斜せず、かつ徐々に広がるような形状の誘い込み部232aに形成されている。これにより、検出ローラの中心軸と検出手段の中心軸を一致させることができるので、検出ローラの回転量を検出手段により高精度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出ローラの回転量を検出する回転量検出装置及びその回転量検出装置を備えた媒体搬送装置並びに記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の1つであるプリンタは、記録媒体である用紙を搬送する駆動ローラを備えた用紙搬送装置が配設されている。そして、この用紙搬送装置は、駆動ローラの回転量を検出するロータリーエンコーダが配設されている。このロータリーエンコーダは、円盤状のプラスチック板で成るロータリーエンコーダスケール、このロータリーエンコーダスケールのスリット部を検出する受発光素子で成る光学センサ、この光学センサと接続された回路基板等を備えている。ロータリーエンコーダスケールの中心部には、駆動ローラの径より若干小さな径の穴が形成されている。そして、ロータリーエンコーダスケールは、中心穴が駆動ローラの軸端に嵌入されて取り付けられるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−304222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した用紙搬送装置の駆動ローラは軸端が円柱状に形成されているため、ロータリーエンコーダスケールを嵌入する際に中心穴に対して無理な力が掛かる場合がある。このような場合、駆動ローラの中心軸とロータリーエンコーダスケールの中心軸がずれるおそれがあり、駆動ローラの回転量の検出精度が悪化する。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、検出ローラの回転量を検出手段により高精度に検出することができる回転量検出装置及びその回転量検出装置を備えた媒体搬送装置並びに記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明の回転量検出装置では、回転自在な検出ローラと、この検出ローラの軸端側に嵌入されて当該回転量を検出する検出手段とを備えた回転量検出装置であって、前記検出ローラの軸端は、前記検出手段の嵌入の際に嵌入穴が軸径方向に対して傾斜せず、かつ徐々に広がるような形状に形成されていることを特徴としている。これにより、検出ローラの中心軸と検出手段の中心軸を一致させることができるので、検出ローラの回転量を検出手段により高精度に検出することができる。
【0007】
また、前記検出ローラの軸端は、径が軸端面から徐々に変化する形状の誘い込み部が設けられていることを特徴としている。これにより、検出手段の嵌入穴を無理無く広げることができる。また、前記誘い込み部は、テーパ形状に形成されていることを特徴としている。前記テーパ形状は、テーパ角度が前記検出ローラの半径と前記嵌入穴の半径の差と、前記検出手段の厚さとにより決定される角度以下であって、テーパ先端径が前記嵌入穴の径以下であって、テーパ長さが前記検出手段の厚さ以上であることを特徴としている。これにより、検出ローラの軸端に誘い込み部を容易に設けることができる。
【0008】
また、前記誘い込み部を前記嵌入穴内に案内する案内部が、前記誘い込み部の先端に形成されていることを特徴としている。これにより、検出手段の嵌入穴を誘い込み部に容易に導入することができる。また、前記検出手段は、ロータリーエンコーダスケールであることを特徴としている。これにより、検出手段を簡易な構成とすることができるので、コスト的に安価なものとすることができる。
【0009】
上記目的達成のため、本発明の媒体搬送装置では、上記各回転量検出装置を備え、前記媒体の搬送に応じて前記検出ローラを回転させることを特徴としている。上記目的達成のため、本発明の記録装置では、記録媒体を搬送して記録する記録装置であって、上記媒体搬送装置を備えたことを特徴としている。また、上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、上記媒体搬送装置を備えたことを特徴としている。これにより、上記各回転量検出装置の作用を奏する媒体搬送装置または記録装置または液体噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る媒体搬送装置が適用された記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの構成例を示す斜視図であり、図2は、そのインクジェット式プリンタの主要部の内部構成例を示す斜視図、図3は、その断面図である。図1〜図3に示すインクジェット式プリンタ100は、例えばJIS規格のA1判やJIS規格のB1判といった比較的大型のサイズの用紙幅を有するロール紙やカット紙に記録できる大型のプリンタである。このインクジェット式プリンタ100は、本体部110内に記録部120と本実施形態に係る媒体搬送装置130が配設され、本体部110を支える脚部140の間に給紙部150が配設された構成となっている。
【0011】
本体部110は、図1〜図3に示すように、記録部120と媒体搬送装置130を覆うプラスチックあるいは板金でなるハウジング111を備えている。そして、このハウジング111は、図1〜図3に示すように、上面及び前面が開放可能なように半透明もしくは透明のプラスチックあるいは板金でなる上蓋112及び前蓋113が配設されている。
【0012】
上蓋112は、図1〜図3に示すように、後部が回動可能に支持されており、ユーザが前部を持って押し上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。ユーザは、上蓋112を開けることにより記録部120及び媒体搬送装置130の上方を大きく開放することができるので、記録ヘッド121やキャリッジ122等のメンテナンス作業及びロール紙やカット紙のセット位置エラーの修正作業、記録中や排紙中における紙ジャム等の用紙搬送エラーの解除作業等を容易に行うことができる。
【0013】
前蓋113は、図1〜図3に示すように、下部が回動可能に支持されており、ユーザが上部を持って押し下げ、あるいは押し上げることにより開閉するようになっている。ユーザは、前蓋113を開けることにより記録部120及び媒体搬送装置130の下方を大きく開放することができるので、給紙中における紙ジャム等の用紙搬送エラーの解除作業等を容易に行うことができる。
【0014】
また、本体110の前面側から見て右側下部には、図1及び図2に示すように、各色のインクカートリッジ10を収納保持するホルダ本体161とその前面を覆うカバー162を有するインクカートリッジホルダ160が配設されている。このカバー162は、下部がホルダ本体161に対し回動可能に支持されており、ユーザが上部を持って押し下げ、あるいは押し上げることにより開閉するようになっている。ユーザは、カバー162を開けることによりホルダ本体161を大きく開放することができるので、インクカートリッジ10の交換作業等を容易に行うことができる。
【0015】
さらに、本体110の前面側から見て右側上部には、図1及び図2に示すように、ユーザが記録制御等の操作等を行うための操作パネル170が配設されている。この操作パネル170は、液晶画面と各種ボタンが配設されており、ユーザが液晶画面を見て確認しながらボタン操作やロール紙やカット紙のセット位置エラーの修正作業をできるようになっている。ユーザは、視認による確実な操作や作業を行うことができるので、動作エラーや動作ミス等を無くすことができる。
【0016】
記録部120は、図2及び図3に示すように、記録ヘッド121を搭載したキャリッジ122、記録ヘッド121と制御部180の中の記録実行部とを電気的に接続するフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)123、記録ヘッド121とインクが入ったインクカートリッジ10とをつなぐインクチューブ124等を備えている。
【0017】
記録ヘッド121は、ブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、ダークイエロー、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド121は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口からロール紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0018】
キャリッジ122は、図2に示すように、主走査方向に設けられているレール127にベアリングを介して載置され、キャリッジベルト128に連結されており、図示しないキャリッジ駆動装置によってキャリッジベルト128が作動すると、キャリッジベルト128の動きに連行され、レール127に案内されて往復移動するようになっている。FFC123は、一端が制御部180のコネクタに接続され、他端が記録ヘッド121のコネクタに接続されており、記録信号を制御部180から記録ヘッド121に送るようになっている。
【0019】
インクチューブ124は、上記各色のインク用が配設されており、図示しないインク加圧供給手段を介して各一端が対応する各色のインクカートリッジ10に繋がれ、各他端が対応する各色の記録ヘッド121に繋がれている。そして、インクチューブ124は、インク加圧供給手段によって加圧された各色のインクをインクカートリッジ10から記録ヘッド121に送るようになっている。
【0020】
媒体搬送装置130は、図2及び図3に示すように、ロール紙やカット紙を副走査方向に搬送する紙送りローラ131とその従動ローラ132、ロール紙やカット紙を副走査方向に搬送して排紙する排紙ローラ133とその従動ローラ134、記録完了したロール紙をカッティングするカッタ135、ロール紙やカット紙の浮き上がりを防止する図示しない紙吸引手段、そして図3に示すロール紙やカット紙の搬送量を検出する本発明の特徴的な部分である回転量検出装置200等を備えている。
【0021】
紙送りローラ131は、図示しないモータから伝達される駆動力により正逆回転駆動するようになっている。従動ローラ132は、バネ等の付勢部材により紙送りローラ131に押圧されており、紙送りローラ131の正逆回転駆動に追従して正逆回転するようになっている。そして、紙送りローラ131とその従動ローラ132は、給紙されるロール紙やカット紙を挟持して送り出すようになっている。
【0022】
排紙ローラ133は、モータから紙送りローラ131を介して伝達される駆動力により正逆回転駆動するようになっている。従動ローラ134は、バネ等の付勢部材により排紙ローラ133に押圧されており、排紙ローラ133の正逆回転駆動に追従して正逆回転するようになっている。排紙ローラ133とその従動ローラ134は、搬送されるロール紙やカット紙を挟持して送り出すようになっている。カッタ135は、図3に示すように、刃先が下方を向いた状態で、上下方向及び主走査方向に移動自在に配設されている。
【0023】
回転量検出装置200は、紙送りローラ131と記録ヘッド121の間に配設されて制御部180に接続されており、ロール紙やカット紙の搬送量を検出して搬送位置や搬送速度の信号を制御部180に出力し、ロール紙やカット紙の搬送をフィードバック制御するようになっている。このような構成の回転量検出装置200の実施形態の詳細について、さらに図4及び図5を参照して以下説明する。
【0024】
図4及び図5は、上記回転量検出装置200の実施形態の詳細を示す平面図及び側面図である。この回転量検出装置200は、ロール紙Rやカット紙Pの搬送に伴って転動する検出ローラ230と、この検出ローラ230を紙送りローラ131に押圧する押圧手段240と、検出ローラ230の回転量を検出する検出手段250を備えている。検出ローラ230は、紙送りローラ131の直上に配設されて、ロール紙Rやカット紙Pに直接接触して回動するローラ231と、このローラ231を貫通する軸232等を備えている。
【0025】
ローラ231は、例えば周囲に滑り止め用のセラミック粉が塗布されたステンレス等の金属で成り、同様にステンレス等の金属で成る軸232の一端側に焼ばめされている。なお、ローラ231は、温度補正等が可能であればゴム等により形成しても良い。軸232は、他端側に後述する検出手段250のロータリーエンコーダスケール251が嵌入されている。軸232は、ロータリーエンコーダスケール251の嵌入時に中心に形成されている嵌入穴に対して無理な力が掛からないように工夫されており、詳細は後述する。
【0026】
押圧手段240は、ローラ231の両端近傍の軸232を上方から押え込む回転体241と、ローラ231の軸232及び回転体241の軸242を軸支持する支持アーム243と、支持アーム243を揺動自在に支持する支持部244と、支持アーム243を付勢する引張バネ245等を備えている。回転体241は、ローラ231の両端近傍の軸232の軸方向と径方向の各両側に4つ配設されている。
【0027】
この回転体241としては、ローラ231の紙送りローラ131に対する押圧を補助することができるものであれば良く、例えばベアリングや軸受、金属もしくはプラスチックのローラ等が使用される。支持アーム243は、一端でローラ231の軸232を回動自在に軸支持しているとともに、回転体241の軸242を固定支持している。支持部244は、本体フレーム101に固定され、支持アーム243の略中央を揺動自在に軸支持している。引張バネ245は、一端が支持部244に係止され、他端が支持アーム243の他端に係止されている。
【0028】
検出手段250は、ローラ231の軸232の他端側に装着された円盤状のプラスチック板で成るロータリーエンコーダスケール251、このロータリーエンコーダスケール251のスリット部を挟み込むように配設され本体フレーム102に装着された受発光素子で成る光学センサ252、この光学センサ252と接続された回路基板253等を備えている。なお、検出手段250としては、ロータリーエンコーダスケール251、光学センサ252、回路基板253等の代わりに、軸232に装着された磁気エンコーダ、この磁気エンコーダの磁気変化を検出する本体フレーム102に装着された磁気センサ、この磁気センサと接続された回路基板等で構成しても良い。
【0029】
図6は、検出ローラ230の軸232と検出手段250のロータリーエンコーダスケール251の要部の詳細例を示す図である。軸232の端部には、ロータリーエンコーダスケール251の嵌入時に嵌入穴251aに対して無理な力が掛からないように、径が軸端面から徐々に変化する形状の誘い込み部232aが形成されている。このような誘い込み部232aを設けることにより、軸232にロータリーエンコーダスケール251を嵌入する際は、嵌入穴251aが軸径方向に対して傾斜せず、かつ徐々に広がっていくので、軸232の中心軸とロータリーエンコーダスケール251の中心軸とのずれを最小限に抑えることができる。
【0030】
この誘い込み部232aは、例えばテーパ形状に形成される。ここで、誘い込み部232aの先端部分の外径をd1、後端部分の外径をD1、長さをL1、テーパ角度をθ1とし、嵌入穴251aの内径をd2、長さをL2、一端面側にD1の径の円を仮に描いて他端面側のd2の径の円とを結んだときにできるテーパ角度をθ2とする。そして、種々実験を行った結果、テーパ形状としては、例えば次式(1)〜(3)のような条件を満たすことにより、嵌入穴251aを軸径方向に対して傾斜させず、かつ徐々に広がらせることができることが判明した。
θ1≦θ2=tan-1{(D1−d2)/(2・L2)}・・・(1)
d1≦d2・・・(2)
L1≧L2・・・(3)
図7は、検出ローラ230の軸232の要部の別の詳細例を示す図である。この軸232の端部には、上述した誘い込み部232aが形成されているとともに、さらに誘い込み部232aの先端に誘い込み部232aの先端部分の外径と同一径の円柱状の案内部232bが形成されている。このような案内部232bを設けることにより、軸232にロータリーエンコーダスケール251を嵌入する際は、嵌入穴251aを誘い込み部232aまで容易に導くことができ、その後の嵌入を容易に行うことができる。
【0031】
このような回転量検出装置200によれば、ロール紙Rやカット紙Pの搬送に追従してローラ231とともにロータリーエンコーダスケール251が殆ど偏心せずに回転するので、回路基板253は光学センサ252を介してローラ231の回転量、すなわちロール紙Rやカット紙Pの搬送量を高精度に検出することができる。また、回転体241がローラ231を紙送りローラ131に常時押圧しているので、ロール紙Rやカット紙Pの搬送に伴うローラ231の転動時の暴れを抑制することができる。このため、ローラ231の径を更に極小に形成することができるとともに、ローラ231の軸232を更に長く形成することができるため、ローラ231を記録ヘッド121の吐出特性回復装置を跨いで紙送りローラ131の直上に配設することが可能となる。
【0032】
例えばローラ231の径をr、ロータリーエンコーダスケール251の径をR、スリット間隔を1/nとしたとき、ローラ231上では(1/n)・(r/R)という高検出分解能を得ることができ、停止精度を向上させたり微細補正等が可能となる。したがって、高検出分解能を保持したままでロール紙Rやカット紙Pの動きをより直接的に検出することができるので、更なる高精度な搬送を制御することができる。なお、この回転量検出装置200は、図3に示すように紙送りローラ131と記録ヘッド121の間に配設されているが、紙送りローラ131よりも搬送上流側に配設しても良く、また、記録ヘッド121よりも搬送下流側に配設しても良い。
【0033】
図8は、上記制御部180の中の搬送制御部を示すブロック図である。この搬送制御部181は、上記回転量検出装置200を用いてロール紙やカット紙等の用紙の搬送をフィードバック制御するようになっている。すなわち、調節部182は、用紙の搬送位置と用紙の搬送速度を規定しており、メモリ等に記憶されている用紙の搬送目標位置SPPと、回転量検出装置200からフィードバックされる現在の用紙の搬送位置SFPとの差から、用紙の搬送速度SPVを調節する。
【0034】
調節部183は、用紙の現在の状態や過去の履歴等を求めるようになっており、調節部182からの用紙の搬送速度SPVと、回転量検出装置200からフィードバックされる現在の用紙の搬送速度SFVとの差から、例えばドライバ等の操作部184を介して例えば紙送りローラ131を駆動するモータ等の制御対象185を操作するための電流値等の操作量SCAを調節する。
【0035】
したがって、上記モータの回転量は紙送りローラ131の回転量であり、この紙送りローラ131の回転量は用紙の搬送量となるので、この搬送を直接検知可能な検出ローラ230の回転量を検出手段250で検出することにより、搬送途中におけるいかなる誤差にも左右され難い高精度な用紙搬送を制御することができる。このように、用紙搬送量を直接検出制御することにより、滑りに左右されない、すなわち、用紙のバックテンションやフロントレジスタンスの変化等の影響をキャンセルし、用紙種別の影響を排除した精度を飛躍的に向上させた搬送を行うことができる。また、摩擦係数の高い検出ローラ230は不要となるので、検出ローラ230を安価に製造することができる。
【0036】
脚部140は、図1及び図2に示すように、移動用のコロ141を有する2本の支持柱142を備えている。そして、支持柱142の上部に本体部110が載置されネジ止め固定されるようになっている。支持柱142に移動用のコロ141が配設されていることにより、重量のある本体部110を所望の位置へスムーズに移動させて設置することができるようになっている。
【0037】
給紙部150は、図1及び図3に示すように、本体部110の下方であって脚部140の間に配設されており、ロール紙の両端を支持する一対の支持部151、ロール紙を給送する送り出しローラ152とピンチローラ153を備えている。さらに、支持部151が固定されているとともに、送り出しローラ152とピンチローラ153の各両端が軸支されている一対のアーム部154を備えている。このような構成の給紙部150の詳細について、さらに図9を参照して以下説明する。
【0038】
図9は、上記給紙部150の詳細を示す斜視図である。一対の支持部151は、対向配置される一対のアーム部154の対向面にそれぞれ固定して取り付けられている。そして、一対の支持部151は、軸受が内蔵されており、図10に示すロール紙Rの内周部に貫装されてロール紙Rを支持するスピンドル155の両端を回動自在に軸支持するようになっている。
【0039】
すなわち、スピンドル155は、中央にロール紙Rが嵌め込まれてロール紙Rの両側に一対のフランジ状のロール紙押さえ156が嵌め込まれ、一対の支持部151の間に架け渡されるようになっている。ユーザは、スピンドル155が取り付けられたロール紙を持ち上げて、スピンドル155の両端を一対の支持部151に嵌め込むのみでロール紙の装着を完了させることができるので、ロール紙のセッティング作業工数を大幅に減少させることができる。
【0040】
送り出しローラ152とピンチローラ153は、各両端が対向配置される一対のアーム部154の対向面にそれぞれ回動自在に軸支持されている。すなわち、送り出しローラ152とピンチローラ153は、一対のアーム部154の間に架け渡されるようにして配設されている。そして、送り出しローラ152の両端は一対のアーム部154の対向面の一定箇所に軸支持されているが、ピンチローラ153は送り出しローラ152に対して当接・離間可能なように、ピンチローラ153の両端軸は一対のアーム部154の対向面に設けられた例えば溝内を移動可能に軸支持されている。そして、ピンチローラ153は、送り出しローラ152に対して当接した位置及び離間した位置にて、例えばアーム部154の対向面に設けられた係止部材と付勢部材等を用いたロック機構によりロックされるようになっている。
【0041】
ユーザは、支持部151に内蔵されている軸受により、ロール紙の先端部を容易に引き出すことができるとともに、ピンチローラ153の移動機構により、ロール紙の先端部を送り出しローラ152とピンチローラ153の間に容易に挿入・挟持させることができるので、ロール紙のセッティング作業工数を大幅に減少させることができる。
【0042】
一対のアーム部154は、脚部140の2本の支持柱142の対向面にそれぞれ図示矢印方向に回動自在に取り付けられている。そして、一対のアーム部154の回動は、図11に示すロール紙のセッティング位置と図10に示すロール紙の給紙位置にて、例えば支持柱142の対向面に設けられた係止部材と付勢部材等を用いたロック機構によりロックされて位置決めされるようになっている。
【0043】
すなわち、一対のアーム部154をロール紙のセッティング位置に回動させたときは、送り出しローラ152とピンチローラ153はインクジェット式プリンタ100の前面側に飛び出し、一対のアーム部154をロール紙の給紙位置に回動させたときは、送り出しローラ152とピンチローラ153はインクジェット式プリンタ100の背面側に回り込んで、ロール紙の搬送経路と接続されるようになっている。
【0044】
ユーザは、ロール紙の先端部を送り出しローラ152とピンチローラ153の間に挿入・挟持させる際、インクジェット式プリンタ100の背面側に潜り込まなくても、インクジェット式プリンタ100の前面側にて通常の立ち位置で作業を行うことができるので、ロール紙のセッティング作業工数を大幅に減少させることができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、一対の支持部151は、対向配置される一対のアーム部154の対向面にそれぞれ固定して取り付けられ、アーム部154とともに回動する構成としたが、脚部140の2本の支持柱142の対向面に取り付けられたアーム部154の回動軸と同芯の軸にそれぞれ固定して取り付けるように構成しても同様の効果を奏する。すなわち、アーム部154の回動とは無関係に常に一定位置に固定された支持部151としても良い。
【0046】
このような構成において、インクジェット式プリンタ100の使用手順を図10〜図15を参照して説明する。先ず、図10(A)に示すように、ユーザは、スピンドル155に嵌め込まれている一対のロール紙押さえ156の一方をスピンドル155の一端から引き抜く。そして、図10(B)に示すように、ユーザは、スピンドル155の一端をロール紙Rの軸穴Cの一端から挿入して貫通させる。
【0047】
さらに、ユーザは、図10(C)に示すように、ロール紙Rの軸穴Cの一端をスピンドル155の他端側に挿入固定されている他方のロール紙押さえ156に嵌め込んで当接させる。続いて、ユーザは、一方のロール紙押さえ156をスピンドル155の一端から挿入して、ロール紙Rの軸穴Cの他端に嵌め込む。これにより、ロール紙Rはスピンドル155と共に回転可能となる。
【0048】
次に、ユーザは、例えば送り出しローラ152を手前に引いてアーム部154を揺動させ、ロール紙の給紙位置に位置決めされている状態(図9参照)にあるアーム部154を図11(A)に示すロール紙のセッティング位置に位置決めしてロックする。そして、ユーザは、スピンドル155が挿入されたロール紙Rを支持部151の上方へ持ち上げ、図11(B)に示すように、スピンドル155の両端部を各支持部151の窪み151aにそれぞれ嵌め込む。このように、スピンドル155の両端を一対の支持部151に嵌め込むのみでロール紙の装着を完了させることができるので、ロール紙のセッティング作業工数を大幅に減少させることができる。
【0049】
次に、図12(A)に示すように、ユーザは、ピンチローラ153を持ち上げて送り出しローラ152に対して離間させてロックする。そして、ロール紙Rの先端部を前方に引き出してピンチローラ153と送り出しローラ152の間に通す。続いて、図12(B)に示すように、ユーザは、ピンチローラ153を押し下げて送り出しローラ152に対して当接させてロックし、ロール紙Rの先端部をピンチローラ153と送り出しローラ152の間に挟持させる。このように、インクジェット式プリンタ100の前面側にて通常の立ち位置でロール紙の先端部を引き出して送り出しローラ152とピンチローラ153に挟持させることができるので、ロール紙のセッティング作業工数を大幅に減少させることができる。
【0050】
次に、図13(A)に示すように、ユーザは、例えば送り出しローラ152を奥へ押してアーム部154を揺動させ、ロール紙のセッティング位置に位置決めされている状態にあるアーム部154をロール紙の給紙位置に位置決めする。これにより、ピンチローラ153と送り出しローラ152の間に挟持されているロール紙Rの先端部は、給紙案内157の入口に位置決めされる。
【0051】
ここで、ユーザが操作パネル170を操作してインクジェット式プリンタ100を起動させると、図13(B)に示すように、送り出しローラ152が回転を開始する。そして、ピンチローラ153と送り出しローラ152の間に挟持されているロール紙Rは、給紙案内157に案内されて上方の記録部120へ送り出される。
【0052】
そして、図14に示すように、ロール紙Rは、紙送りローラ131とその従動ローラ132に挟持されて副走査方向に搬送されつつ主走査方向に移動する記録ヘッド121から吐出されるインク滴により所定の情報が記録される。このとき、ロール紙Rは、回転量検出装置200により搬送が高精度に制御されるので、ロール紙Rの記録精度を高精度な状態で維持することができる。この記録完了後、図15に示すように、ロール紙Rは、カッタ135によりカッティングされて排紙ローラ133とその従動ローラ134に挟持されて排紙される。
【0053】
以上のように、本実施形態のインクジェット式プリンタ100によれば、検出ローラ230の軸232の端部は、検出手段250のロータリーエンコーダスケール251の嵌入の際に嵌入穴251aが軸232の軸径方向に対して傾斜せず、かつ徐々に広がるような形状、すなわち軸232の径が軸端面から徐々に変化する形状の誘い込み部232aが形成されているので、嵌入穴251aを無理無く広げることができ、軸232の中心軸とロータリーエンコーダスケール251の中心軸を一致させ、検出ローラ230の回転量を検出手段250により高精度に検出することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、誘い込み部232aはテーパ形状に形成したが、軸232の径が軸端面から徐々に変化する形状であれば特にこれに限定されるものではなく、例えばエキスポネンシャルカーブの曲面を有する形状としても良い。また、誘い込み部232aは検出ローラ230の軸232に形成したが、ロータリーエンコーダスケール251が嵌入される軸であれば特にこれに限定されるものではなく、例えば紙送りローラ131やその従動ローラ132、排紙ローラ133やその従動ローラ134に形成するようにしても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
媒体搬送装置を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。また、記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの構成例を示す斜視図である。
【図2】図1のプリンタの主要部の内部構成例を示す斜視図である。
【図3】図1のプリンタの主要部の断面図である。
【図4】回転量検出装置の実施形態を示す平面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4の検出ローラの軸と検出手段のロータリーエンコーダスケールの要部の詳細例を示す図である。
【図7】検出ローラの軸の要部の別の詳細例を示す図である。
【図8】搬送制御部を示すブロック図である。
【図9】図1のプリンタの給紙部の詳細を示す斜視図である。
【図10】図1のプリンタの使用手順を示す第1の図である。
【図11】図1のプリンタの使用手順を示す第2の図である。
【図12】図1のプリンタの使用手順を示す第3の図である。
【図13】図1のプリンタの使用手順を示す第4の図である。
【図14】図1のプリンタの使用手順を示す第5の図である。
【図15】図1のプリンタの使用手順を示す第6の図である。
【符号の説明】
【0057】
10 インクカートリッジ、100 インクジェット式プリンタ、110 本体部、111 ハウジング、112 上蓋、113 前蓋、120 記録部、121 記録ヘッド、122 キャリッジ、123 FFC、124 インクチューブ、127 レール、128 キャリッジベルト、130 媒体搬送装置、131 紙送りローラ、132 従動ローラ、133 排紙ローラ、134 従動ローラ、140 脚部、141 コロ、142 支持柱、150 給紙部、151 支持部、152 送り出しローラ、153 ピンチローラ、154 アーム部、155 スピンドル、156 ロール紙押さえ、157 給紙案内、160 インクカートリッジホルダ、161 ホルダ本体、162 カバー、170 操作パネル、180 制御部、200 回転量検出装置、230 検出ローラ、231 ローラ、232 軸、232a 誘い込み部、232b 案内部、240 押圧手段、241 回転体、242 軸、243 支持アーム、244 支持部、245 引張バネ、250 検出手段、251 ロータリーエンコーダスケール、251a 嵌入穴、252 光学センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な検出ローラと、この検出ローラの軸端側に嵌入されて当該回転量を検出する検出手段とを備えた回転量検出装置であって、
前記検出ローラの軸端は、前記検出手段の嵌入の際に嵌入穴が軸径方向に対して傾斜せず、かつ徐々に広がるような形状に形成されていることを特徴とする回転量検出装置。
【請求項2】
前記検出ローラの軸端は、径が軸端面から徐々に変化する形状の誘い込み部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転量検出装置。
【請求項3】
前記誘い込み部は、テーパ形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転量検出装置。
【請求項4】
前記テーパ形状は、テーパ角度が前記検出ローラの半径と前記嵌入穴の半径の差と、前記検出手段の厚さとにより決定される角度以下であって、テーパ先端径が前記嵌入穴の径以下であって、テーパ長さが前記検出手段の厚さ以上であることを特徴とする請求項3に記載の回転量検出装置。
【請求項5】
前記誘い込み部を前記嵌入穴内に案内する案内部が、前記誘い込み部の先端に形成されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の回転量検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、ロータリーエンコーダスケールであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転量検出装置。
【請求項7】
媒体を搬送する媒体搬送装置であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の回転量検出装置を備え、前記媒体の搬送に応じて前記検出ローラを回転させることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
記録媒体を搬送して記録する記録装置であって、
請求項7に記載の媒体搬送装置を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、
請求項7に記載の媒体搬送装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−78366(P2006−78366A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263467(P2004−263467)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】