説明

回転電機の固定子

【課題】この発明は、アルミニウム巻線を用いることによる効率の低下をアルミニウム巻線の一部を銅巻線に代えることで抑制し、低コスト化および軽量化を実現できる回転電機の固定子を得る。
【解決手段】固定子鉄心2は、環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に複数配列されたティース4、および周方向に隣り合う該ティース4間に画成されたスロット5を有する。カシメ部6の径方向内方に位置するスロット5が、他のスロット5に対して、スロット深さを浅く形成され、スロット断面積が小さくなっている。固定子巻線7は、スロット断面積の小さいスロット5に格納された銅巻線と、スロット断面積の大きなスロット5に格納されたアルミニウム巻線とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、換気扇に用いられるコンデンサモータなどの中小型の回転電機に関し、特に固定子巻線に銅線とアルミ線とを併用した回転電機の固定子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の単相誘導電動機では、巻線が固定子鉄心に分布巻で巻回されている固定子を備え、主巻線と補助巻線が固定子鉄心のスロットに格納されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−252841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来の単相誘導電動機においては、主巻線および補助巻線の線材については、何ら記載されていない。
【0005】
この種の回転電機においては、従来、主巻線および補助巻線の線材として銅が用いられていたが、低コスト化および軽量化の観点から、銅に比べて安価、かつ軽量なアルミニウムを線材として用いることが好ましい。しかし、アルミニウムは銅に比べて抵抗率が大きいので、線材を銅からアルミニウムに代えると、巻線抵抗が大きくなり、同じ電流を流した場合の損失が増加し、効率が低下するという不具合がある。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、アルミニウム巻線を用いることによる効率の低下をアルミニウム巻線の一部を銅巻線に代えることで抑制し、低コスト化および軽量化を実現できる回転電機の固定子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による回転電機の固定子は、環状のコアバック、それぞれ該コアバックの内周面から径方向内方に延在して、周方向に複数配列されたティース、および周方向に隣り合う該ティース間に画成されたスロットを有する固定子鉄心と、上記固定子鉄心のスロットに格納されて巻装された固定子巻線と、を備えている。そして、上記固定子巻線は、アルミニウム巻線と銅巻線とから構成され、格納されている上記銅巻線の導体数が格納されている上記アルミニウム巻線の導体数より多いスロットの断面積が、格納されている上記アルミニウム巻線の導体数が格納されている上記銅巻線の導体数より多いスロットの断面積より小さい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、固定子巻線がアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成されているので、固定子巻線を銅巻線のみで構成した場合に比べ、低コスト化および軽量化が図られる。
高抵抗率のアルミニウム巻線の比率が大きいスロットのスロット断面積が大きいので、所望のターン数を確保して、アルミにニウム巻線の線材の大径化が可能となり、巻線抵抗の増大を抑えることができる。また、低抵抗率の銅巻線の比率が大きいスロットのスロット断面積が小さいので、スロット断面積が小さくとも、銅巻線の線材の小径化により所望のターン数および巻線抵抗を確保できる。これにより、アルミニウム巻線を用いることによる銅損の増加が抑えられるとともに、アルミニウム巻線と銅巻線との巻線抵抗のアンバランスが緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る回転電機の固定子を示す正面図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る回転電機の固定子を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る回転電機の固定子を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態4に係る回転電機の固定子を示す正面図である。
【図5】この発明の実施の形態5に係る回転電機の固定子を示す正面図である。
【図6】この発明の実施の形態6に係る回転電機の固定子鉄心を示す要部正面図である。
【図7】この発明の実施の形態7に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【図8】この発明の実施の形態8に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態9に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による回転電機の固定子の好適な実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の固定子を示す正面図である。なお、図1中、1〜16はスロット番号を示している。
【0012】
図1において、固定子1は、円環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2と、固定子鉄心2に分布巻きに巻装された固定子巻線7と、を備えている。
【0013】
固定子鉄心2は、所定枚数の磁性鋼板を積層して形成された積層体を、コアバック3の部位をカシメて一体化して、円筒体に作製されている。この固定子鉄心2では、4つのカシメ部6がコアバック3に等角ピッチで形成され、各カシメ部6はティース4の径方向外方に位置している。そして、カシメ部6の径方向内方に位置するティース4の周方向両側のスロット5のスロット深さが、他のスロット5のスロット深さより浅く、即ちスロット断面積を小さく形成されている。ここでは、スロット番号2番、3番、6番、7番、10番、11番、14番および15番のスロット5がスロット深さを浅く、即ちスロット断面積を小さく形成されている。
【0014】
この固定子鉄心2は、端面の外形形状を円形とする丸形の鉄心であり、スロット5が内周側に開口するように周方向に配列され、ティース4の先端面が固定子鉄心2の端面の中心と同軸の円筒面に接するように形成されている。そこで、スロット深さを浅くすることは、コアバック3の径方向幅を広くすることを意味する。
【0015】
固定子巻線7は、16個のスロット5に分布巻きで納められた4つの主巻線7aおよび4つの補助巻線7bを備えている。
【0016】
具体的には、4つの主巻線7aは、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号1番と4番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号5番と8番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号9番と12番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、およびアルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号13番と16番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線から構成されている。
【0017】
また、4つの補助巻線7bは、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号3番と6番とのスロット5に格納された銅巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号7番と10番とのスロット5に格納された銅巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号11番と14番とのスロット5に格納された銅巻線、および銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号15番と2番とのスロット5に格納された銅巻線から構成されている。
【0018】
そして、このように構成された固定子1を、4極の回転子(図示せず)の外周に所定に隙間を確保して回転子を囲繞するように配設して、16スロット4極のコンデンサモータが構成される。
【0019】
この実施の形態1では、固定子巻線7がアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成されているので、固定子巻線を銅巻線のみで構成した場合に比べ、低コスト化および軽量化が図られる。
【0020】
高抵抗率のアルミニウム巻線がスロット深さの深いスロット5、即ち大きな断面積のスロット5に格納されているので、所望のターン数を確保して線材の大径化が可能となり、巻線抵抗の増大を抑えることができる。また、低抵抗率の銅巻線がスロット深さの浅いスロット5、即ち小さな断面積のスロット5に格納されているので、スロット断面積が小さくとも、線材の小径化により所望のターン数および巻線抵抗を確保できる。したがって、アルミニウム巻線を用いることによる銅損の増加が抑えられるとともに、アルミニウム巻線(主巻線7a)と銅巻線(補助巻線7b)との巻線抵抗のアンバランスが緩和される。
【0021】
銅巻線がカシメ部6の径方向内方に位置するティース4の周方向両側のスロット5に格納されているので、当該スロット5のスロット深さを、他のスロット深さより浅く形成できる。そこで、固定子鉄心2を大径化することなく、カシメ部6とスロット5との間の間隔を広くでき、カシメ部6の周辺部分での磁化特性の悪化に起因する磁気飽和を緩和できる。また、カシメ部6に面しないスロット5は、磁気飽和しないコアバック3の幅までスロット深さを深くできるので、アルミニウム巻線が巻装されるスロット5のスロット断面積を大きくでき、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
【0022】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2に係る回転電機の固定子を示す正面図である。なお、図2中、1〜24はスロット番号を示している。
【0023】
図2において、固定子1Aは、円環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2Aと、固定子鉄心2Aに分布巻きに巻装された固定子巻線7Aと、を備えている。
【0024】
固定子鉄心2Aは、所定枚数の磁性鋼板を積層して形成された積層体を、コアバック3の部位をカシメて一体化して、丸形の鉄心に作製されている。この固定子鉄心2Aでは、4つのカシメ部6がコアバック3に等角ピッチで形成され、各カシメ部6はティース4の径方向外方に位置している。そして、カシメ部6の径方向内方に位置するティース4の周方向両側のスロット5が、そのスロット底部のティース側角部をスロット内方に張り出して、スロット断面積を小さく形成されている。ここでは、スロット番号2番、3番、8番、9番、14番、15番、20番および21番のスロット5がスロット断面積を小さく形成されている。
【0025】
固定子巻線7Aは、24個のスロット5に分布巻きで納められた6つの主巻線7aおよび6つの補助巻線7bを備えている。
【0026】
具体的には、6つの主巻線7aは、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号1番と4番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号5番と8番とのスロット5に格納された銅巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号9番と12番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号13番と16番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号17番と20番とのスロット5に格納された銅巻線、および銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号21番と24番とのスロット5に格納された銅巻線から構成されている。
【0027】
また、6つの補助巻線7bは、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号3番と6番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号7番と10番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号11番と14番とのスロット5に格納された銅巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号15番と18番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号19番と22番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、および銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号23番と2番とのスロット5に格納された銅巻線から構成されている。
【0028】
そして、このように構成された固定子1Aを、6極の回転子(図示せず)の外周に所定に隙間を確保して回転子を囲繞するように配設して、24スロット6極のコンデンサモータが構成される。
【0029】
この実施の形態2においても、固定子巻線7Aがアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成されているので、固定子巻線を銅巻線のみで構成した場合に比べ、低コスト化および軽量化が図られる。
【0030】
また、高抵抗率のアルミニウム巻線が大きな断面積のスロット5に格納されているので、アルミニウム巻線のターン数を確保して線材の大径化が可能となり、巻線抵抗の増大を抑えることができる。また、低抵抗率の銅巻線が小さな断面積のスロット5に格納されているので、線材の小径化により銅巻線のターン数および巻線抵抗を確保して、スロット断面積の増大を抑えることができる。したがって、アルミニウム巻線を用いることによる銅損の増加が抑えられるとともに、アルミニウム巻線と銅巻線との巻線抵抗のアンバランスが緩和される。
【0031】
また、銅巻線がカシメ部6の径方向内方に位置するティース4の周方向両側のスロット5に格納されているので、当該スロット5のスロット底部のティース側角部をスロット内方に張り出して、スロット断面積を小さく形成できる。そこで、固定子鉄心2を大径化することなく、カシメ部6とスロット5との間の間隔を広くでき、カシメ部6の周辺部分での磁化特性の悪化に起因する磁気飽和を緩和できる。また、カシメ部8に面しないスロット5は、磁気飽和しないコアバック3の幅までスロット深さを深くできるので、アルミニウム巻線が巻装されるスロット5のスロット断面積を大きくでき、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
【0032】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3に係る回転電機の固定子を示す正面図である。なお、図3中、1〜24はスロット番号を示している。
【0033】
図3において、固定子1Bは、円環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2Bと、固定子鉄心2Bに分布巻きに巻装された固定子巻線7Bと、を備えている。
【0034】
固定子鉄心2Bは、丸形の鉄心であり、各カシメ部6はスロット5の径方向外方に位置している。そして、カシメ部6の径方向内方に位置するスロット5のスロット深さが、他のスロット深さより浅く、即ちスロット断面積を小さく形成されている。ここでは、スロット番号3番、9番、15番および21番のスロット5がスロット断面積を小さく形成されている。
【0035】
固定子巻線7Bは、24個のスロット5に分布巻きで納められた6つの主巻線7aおよび6つの補助巻線7bを備えている。
【0036】
具体的には、6つの主巻線7aは、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号1番と4番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号5番と8番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号9番と12番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号13番と16番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号17番と20番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、および銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号21番と24番とのスロット5に格納された銅巻線から構成されている。
【0037】
また、6つの補助巻線7bは、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号3番と6番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号7番と10番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号11番と14番とのスロット5に格納された銅巻線、銅線を輪状に所定回巻回してスロット番号15番と18番とのスロット5に格納された銅巻線、アルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号19番と22番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線、およびアルミニウム線を輪状に所定回巻回してスロット番号23番と2番とのスロット5に格納されたアルミニウム巻線から構成されている。
【0038】
そして、このように構成された固定子1Bを、6極の回転子(図示せず)の外周に所定に隙間を確保して回転子を囲繞するように配設して、24スロット6極のコンデンサモータが構成される。
なお、他の構成は上記実施の形態2と同様に構成されている。
【0039】
この実施の形態3においても、固定子巻線7Bがアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成され、アルミニウム巻線が大きな断面積のスロット5に格納され、銅巻線が小さな断面積のスロット5に格納されているので、上記実施の形態2と同様の効果を奏する。
この実施の形態3では、銅巻線がカシメ部6の径方向内方に位置するスロット5に格納されているので、当該スロット5のスロット深さを、他のスロット深さより浅く形成できる。そこで、固定子鉄心2Bを大径化することなく、カシメ部6とスロット5との間の間隔を広くでき、カシメ部6の周辺部分での磁化特性の悪化に起因する磁気飽和を緩和できる。また、カシメ部6に面しないスロット5は、磁気飽和しないコアバック3の幅までスロット深さを深くできるので、アルミニウム巻線が巻装されるスロット5のスロット断面積を大きくでき、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
【0040】
なお、上記実施の形態1〜3では、固定子鉄心が積層された所定枚数の磁性鋼板を4箇所のカシメ部で一体化して構成されているものとしているが、カシメ部の個数は4つに限定されるものではない。
【0041】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4に係る回転電機の固定子を示す正面図である。なお、図4中、1〜16はスロット番号を示している。
【0042】
図4において、固定子1Cは、環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2Cと、固定子鉄心2Cに分布巻きに巻装された固定子巻線7と、を備えている。
【0043】
固定子鉄心2Cは、端面の外形形状が正方形の角部を円弧状に丸めた角形の鉄心であり、スロット5が内周側に開口するように周方向に配列され、ティース4の先端面が固定子鉄心2Cの端面の中心と同軸の円筒面に接するように形成されている。そして、固定子鉄心2Cの平坦な側面に面するスロット5のスロット深さが浅く形成され、円弧状の角部に面するスロット5のスロット深さが深く形成されている。ここでは、スロット番号2番、3番、8番、9番、14番および15番のスロット5がスロット断面積を小さく形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0044】
固定子鉄心2Cは、角部が円弧状に丸められた略正方形の端面形状を有する筒状体に作製されている。そこで、全てのスロット5が同じスロット深さに形成されていると、固定子鉄心2Cの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の幅が、角部とスロット5との間のコアバック3の幅より狭くなってしまう。そこで、固定子鉄心2Cの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の部位が、磁気飽和し易くなる。
【0045】
この実施の形態4では、固定子鉄心2Cの平坦な側面に面するスロット5のスロット深さが浅く形成されているので、固定子鉄心2Cの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の幅が広くなり、当該部位での磁気飽和を緩和できる。
また、角部に面するスロット5は、磁気飽和しないコアバック3の幅までスロット深さを深くできる。そこで、アルミニウム巻線が格納されるスロット5のスロット断面積を大きくでき、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
この実施の形態4においても、固定子巻線7がアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成され、アルミニウム巻線が大きな断面積のスロット5に格納され、銅巻線が小さな断面積のスロット5に格納されているので、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0046】
なお、上記実施の形態4では、固定子鉄心の角部が円弧状に丸められているものとしているが、固定子鉄心の角部を斜めに切り欠いてもよい。
また、上記実施の形態4では、端面の外形形状が正方形の角部を円弧状に丸めた鉄心を角形の鉄心としたが、角形の鉄心の端面の外形形状は正方形に限定されるものではなく、五角形、六角形などの多角形でもよい。
【0047】
実施の形態5.
図5はこの発明の実施の形態5に係る回転電機の固定子を示す正面図である。なお、図5中、1〜16はスロット番号を示している。
【0048】
図5において、固定子1Dは、円環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2Dと、固定子鉄心2Dに分布巻きに巻装された固定子巻線7と、を備えている。
【0049】
固定子鉄心2Dは、丸形の鉄心であり、4つの切り欠き8がコアバック3の外周縁部に周方向に等角ピッチで形成されている。そして、切り欠き8に面するスロット5のスロット深さが、他のスロット5のスロット深さより浅く形成されている。ここでは、スロット番号2番、3番、8番、9番、14番および15番のスロット5がスロット断面積を小さく形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0050】
固定子鉄心2Dは、切り欠き8がコアバック3の外周縁部に形成されているので、全てのスロット5が同じスロット深さに形成されていると、切り欠き8とスロット5との間のコアバック3の幅が狭くなってしまう。そこで、切り欠き8とスロット5との間のコアバック3の部位が、磁気飽和し易くなる。
【0051】
この実施の形態5では、切り欠き8に面するスロット5のスロット深さが浅く形成されているので、切り欠き8とスロット5との間のコアバック3の幅が広くなり、当該部位での磁気飽和を緩和できる。また、切り欠き8に面しないスロット5は、磁気飽和しないコアバック3の幅までスロット深さを深くできるので、アルミニウム巻線が格納されるスロット5のスロット断面積を大きくでき、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
この実施の形態5においても、固定子巻線7がアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成され、アルミニウム巻線が大きな断面積のスロット5に格納され、銅巻線が小さな断面積のスロット5に格納されているので、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0052】
なお、上記実施の形態5では、4箇所の切り欠きが固定子鉄心のコアバックに形成されているものとしているが、切り欠きの個数は4つに限定されるものではない。
【0053】
実施の形態6.
図6はこの発明の実施の形態6に係る回転電機の固定子鉄心を示す要部正面図である。
【0054】
図6において、固定子鉄心2Eは、丸形の鉄心であり、円環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチで配列されたティース4、およびコアバック3と隣り合うティース4とにより画成されたスロット10a,10bを有する。スロット10a,10bは、スロット深さが同じであるが、スロット10aのスロット幅が広く、スロット10bのスロット幅が狭く形成されている。そして、図示していないが、アルミニウム巻線がスロット10aに格納され、銅巻線がスロット10bに格納されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0055】
この実施の形態6においても、固定子巻線がアルミニウム巻線と銅巻線とを併用して構成されているので、固定子巻線を銅巻線のみで構成した場合に比べ、低コスト化および軽量化が図られる。
また、高抵抗率のアルミニウム巻線がスロット幅の広いスロット10a、即ち大きな断面積のスロット10aに格納されているので、所望のターン数を確保して線材の大径化が可能となり、巻線抵抗の増大を抑えることができる。また、低抵抗率の銅巻線がスロット幅の狭いスロット10b、即ち小さな断面積のスロット10bに格納されているので、スロット断面積が小さくとも、線材の小径化により所望のターン数および巻線抵抗を確保できる。したがって、アルミニウム巻線を用いることによる銅損の増加が抑えられるとともに、アルミニウム巻線と銅巻線との巻線抵抗のアンバランスが緩和される。
【0056】
なお、上記実施の形態1〜6では、巻線が分布巻きに固定子鉄心に巻装されているものとしているが、巻線をトロイダル巻きに固定子鉄心に巻装してもよい。
また、上記実施の形態1〜6では、スロット数が16あるいは24個の固定子鉄心と、スロットに格納された主巻線と補助巻線からなる固定子巻線とを備えたコンデンサモータを例にとって説明しているが、固定子鉄心のスロット数は16や24に限定されない。
【0057】
また、上記実施の形態1〜6では、アルミニウム巻線と銅巻線とが異なるスロットに格納されているものとして説明しているが、アルミニウム巻線と銅巻線とが同じスロットに格納されてもよい。この場合、アルミニウム巻線の券回数(スロット内に格納されているアルミニウム導体数)が銅巻線の券回数(スロット内に格納されている銅導体数)より多いスロットの断面積を大きくし、銅巻線の券回数(スロット内に格納されている銅導体数)がアルミニウム巻線の券回数(スロット内に格納されているアルミニウム導体数)より多いスロットの断面積を小さくすることになる。
また、上記実施の形態1〜6では、主巻線がアルミニウム巻線により構成され、補助巻線が銅巻線により構成されているものとしているが、主巻線を銅巻線により構成し、補助巻線をアルミニウム巻線により構成してもよいし、主巻線と補助巻線とのそれぞれをアルミニウム巻線と銅巻線とにより構成してもよい。
【0058】
実施の形態7.
図7はこの発明の実施の形態7に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【0059】
図7において、固定子1Fは、環状のコアバック3、それぞれコアバック3の内周面から径方向内方に延在して、周方向の等角ピッチで配列されたティース11a,11b、およびコアバック3と隣り合うティース11a,11bとにより画成されたスロット5を有する固定子鉄心2Fと、固定子鉄心2Fに集中巻きに巻装された固定子巻線12と、を備えている。
【0060】
固定子鉄心2Fは、端面の外形形状が正方形の角部を円弧状に丸めた角形の鉄心であり、スロット5が内周側に開口するように周方向に配列され、ティース11a,11bの先端面が固定子鉄心2Fの端面の中心と同軸の円筒面に接するように形成されている。そして、固定子鉄心2Fの円弧状の角部に面するティース11aのティース長さが長く形成され、固定子鉄心2Fの平坦な側面に面するティース11bのティース長さが短く形成されている。
固定子巻線12は、アルミニウム線をティース11aに集中巻きに巻回して作製されたアルミニウム巻線12aと、銅線をティース11bに集中巻きに巻回して作製された銅巻線12bとから構成される。
【0061】
ここで、固定子鉄心2Fが、角部が円弧状に丸められた略正方形の端面形状を有する角形の鉄心に作製されているので、全てのティースが同じティース長さに形成されていると、固定子鉄心2Fの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の幅が、角部とスロット5との間のコアバック3の幅より狭くなってしまう。そこで、固定子鉄心2Fの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の部位が、磁気飽和し易くなる。
【0062】
この実施の形態7では、固定子鉄心2Fの平坦な側面に面するティース11bのティース長さが短く形成されているので、固定子鉄心2Fの平坦な側面とスロット5との間のコアバック3の幅が広くなり、当該部位での磁気飽和を緩和できる。また、固定子鉄心2Fの角部に面するティース11aは、磁気飽和しないコアバック3の幅までティース長さを長くできるので、アルミニウム巻線12aをティース11aに巻回するスペースが広くなり、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
また、固定子巻線12がアルミニウム巻線12aと銅巻線12bとを併用して構成されているので、固定子巻線を銅巻線のみで構成した場合に比べ、低コスト化および軽量化が図られる。
【0063】
高抵抗率のアルミニウム巻線12aがティース長さの長いティース11aに巻装されているので、所望のターン数を確保して線材の大径化が可能となり、巻線抵抗の増大を抑えることができる。また、低抵抗率の銅巻線12bがティース長さの短いティース11bに巻装されているので、ティース長さが短くとも、線材の小径化により所望のターン数および巻線抵抗を確保できる。したがって、アルミニウム巻線12aを用いることによる銅損の増加が抑えられるとともに、アルミニウム巻線12aと銅巻線12bとの巻線抵抗のアンバランスが緩和される。
【0064】
実施の形態8.
図8はこの発明の実施の形態8に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【0065】
図8において、固定子鉄心2Gは、所定枚数の磁性鋼板を積層して形成された積層体を、コアバック3の部位をカシメて一体化して、角部が円弧状に丸められた略正方形の端面形状を有する角形の鉄心に作製されている。カシメ部6はコアバック3の部位にも周方向に離間して4箇所形成されている。そして、各カシメ部6の径方向内方に位置するティース11bのティース長さが短く形成され、それ以外のティース11aのティース長さが長く形成されている。
固定子巻線12は、アルミニウム線をティース11aに集中巻きに巻回して作製されたアルミニウム巻線12aと、銅線をティース11bに集中巻きに巻回して作製された銅巻線12bとから構成される。
【0066】
このように構成された固定子1Gでは、カシメ部6の径方向内方に位置するティース11bのティース長さが短くなっているので、固定子鉄心2Gを大径化することなく、カシメ部6とスロット5との間の間隔を広くでき、カシメ部6の周辺部分での磁化特性の悪化に起因する磁気飽和を緩和できる。また、カシメ部6の径方向内方に位置するティース11b以外のティース11aのティース長さを、磁気飽和しないコアバック3の幅まで長くできるので、アルミニウム巻線12aをティース11aに巻回するスペースが広くなり、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
【0067】
この実施の形態8においても、固定子巻線12がアルミニウム巻線12aと銅巻線12bとを併用して構成され、高抵抗率のアルミニウム巻線12aがティース長さの長いティース11aに巻装され、低抵抗率の銅巻線12bがティース長さの短いティース11bに巻装されているので、上記実施の形態7と同様の効果を奏する。
【0068】
なお、上記実施の形態8では、固定子鉄心が積層された所定枚数の磁性鋼板を4箇所のカシメ部で一体化して構成されているものとしているが、カシメ部の個数は4つに限定されるものではない。
【0069】
実施の形態9.
図9はこの発明の実施の形態9に係る回転電機の固定子を示す要部断面図である。
【0070】
図9において、固定子鉄心2Hは、角部が円弧状に丸められた略正方形の端面形状を有する角形の鉄心に作製され、切り欠き8がコアバック3の外周縁部に周方向に離間して4箇所形成されている。そして、各切り欠き8の径方向内方に位置するティース11bのティース長さが短く形成され、それ以外のティース11aのティース長さが長く形成されている。
固定子巻線12は、アルミニウム線をティース11aに集中巻きに巻回して作製されたアルミニウム巻線12aと、銅線をティース11bに集中巻きに巻回して作製された銅巻線12bとから構成される。
【0071】
このように構成された固定子1Hでは、切り欠き8の径方向内方に位置するティース11bのティース長さが短くなっているので、固定子鉄心2Hを大径化することなく、切り欠き8とスロット5との間の間隔を広くでき、切り欠き8の周辺部分での磁気飽和を緩和できる。また、切り欠き8に面しないティース12aのティース長さを、磁気飽和しないコアバック3の幅まで長くできるので、アルミニウム巻線12aをティース11aに巻回するスペースが広くなり、アルミニウム巻線の低抵抗化が図られる。
【0072】
この実施の形態9においても、固定子巻線12がアルミニウム巻線12aと銅巻線12bとを併用して構成され、高抵抗率のアルミニウム巻線12aがティース長さの長いティース11aに巻装され、低抵抗率の銅巻線12bがティース長さの短いティース11bに巻装されているので、上記実施の形態7と同様の効果を奏する。
【0073】
なお、上記実施の形態9では、4箇所の切り欠きが固定子鉄心のコアバックに形成されているものとしているが、切り欠きの個数は4つに限定されるものではない。
【0074】
なお、上記実施の形態7〜9では、固定子鉄心が角形の鉄心に作製されているものとしているが、固定子鉄心は角形の鉄心に限定されず、丸形の鉄心でもよい。
また、上記実施の形態7〜9では、固定子鉄心が角形の鉄心に作製されているものとしているが、角形の鉄心の端面の外形形状は正方形に限定されるものではなく、五角形、六角形などの多角形でもよい。
【0075】
また、上記実施の形態7〜9では、アルミニウム巻線と銅巻線とが異なるティースに券回されているものとして説明しているが、アルミニウム巻線と銅巻線とが同じティースに券回されてもよい。この場合、アルミニウム巻線の券回数が銅巻線の券回数より多いティースの長さを長くし、銅巻線の券回数がアルミニウム巻線の券回数より多いティースの長さを短くすることになる。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B,1C,1D,1F,1G,1H 固定子、2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H 固定子鉄心、3 コアバック、4 ティース、5 スロット、6 カシメ部、7,7A,7B 固定子巻線、7a 主巻線、7b 補助巻線、8 切り欠き、10a,10b スロット、11a,11b ティース、12 固定子巻線、12a アルミニウム巻線、12b 銅巻線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコアバック、それぞれ該コアバックの内周面から径方向内方に延在して、周方向に複数配列されたティース、および周方向に隣り合う該ティース間に画成されたスロットを有する固定子鉄心と、上記固定子鉄心のスロットに格納されて巻装された固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子であって、
上記固定子巻線は、アルミニウム巻線と銅巻線とから構成され、
格納されている上記銅巻線の導体数が格納されている上記アルミニウム巻線の導体数より多いスロットの断面積が、格納されている上記アルミニウム巻線の導体数が格納されている上記銅巻線の導体数より多いスロットの断面積より小さいことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
上記固定子鉄心は、磁性鋼板の積層体を上記コアバックをカシメて一体化して作製された鉄心であり、
カシメ部の径方向内方に位置するスロットの断面積が、該カシメ部と当該スロットとの間隔が広くなるように、小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
上記固定子鉄心は、角形の鉄心であり、
上記固定子鉄心の平坦な側面に面するスロットが、該固定子鉄心の角部に面するスロットに対して、スロット深さを浅くして、断面積を小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
切り欠きが、上記固定子鉄心のコアバックの外周に形成されており、
上記切り欠きに面するスロットが、他のスロットに対して、スロット深さを浅くして、断面積を小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
環状のコアバック、それぞれ該コアバックの内周面から径方向内方に延在して、周方向に複数配列されたティース、および周方向に隣り合う該ティース間に画成されたスロットを有する固定子鉄心と、上記固定子鉄心のティースのそれぞれに集中巻きに巻装された固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子であって、
上記固定子巻線は、アルミニウム巻線と銅巻線とから構成され、
上記銅巻線の巻回数が上記アルミニウム巻線の巻回数より多いティースのティース長さが、上記アルミニウム巻線の巻回数が上記銅巻線の巻回数より多いティースのティース長さより短いことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項6】
上記固定子鉄心は、磁性鋼板の積層体を上記コアバックをカシメて一体化して作製された鉄心であり、
カシメ部の径方向内方に位置するティースが、他のティースに対して、ティース長さを短く形成されていることを特徴とする請求項5記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
上記固定子鉄心は、角形の鉄心であり、
上記固定子鉄心の平坦な側面に面するティースが、該固定子鉄心の角部に面するティースに対して、ティース長さを短く形成されていることを特徴とする請求項5記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
切り欠きが、上記固定子鉄心のコアバックの外周に形成されており、
上記切り欠きに面するティースが、他のティースに対して、ティース長さを短く形成されていることを特徴とする請求項5記載の回転電機の固定子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−55137(P2012−55137A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197860(P2010−197860)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】