回転電機及び回転電機の固定子コイルの製造方法
【課題】
回転電機の高出力化によって固定子コイルが発熱して高温になった時には、コイルエンドの絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生し、これによって絶縁皮膜が導体から剥離して結果的に絶縁不良が発生する。
【解決手段】
コイルエンドの絶縁皮膜の先端の厚みが導体の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜に傾斜面を形成する。熱サイクルよって絶縁皮膜が導体から剥離する現象を抑制することができる。
回転電機の高出力化によって固定子コイルが発熱して高温になった時には、コイルエンドの絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生し、これによって絶縁皮膜が導体から剥離して結果的に絶縁不良が発生する。
【解決手段】
コイルエンドの絶縁皮膜の先端の厚みが導体の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜に傾斜面を形成する。熱サイクルよって絶縁皮膜が導体から剥離する現象を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機や発電機のような回転電機に係り、特に固定子のコイル端部の絶縁不良を抑制した回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車等では電動機によって自動車のタイヤを駆動したり、自動車の減速時の走行慣性を利用してこの電動機を発電機として用いてリチウム電池に充電するような利用方法で回転電機が使用されている。
【0003】
そして、このような回転電機においては当然のことながら高出力化の要請があるが、この高出力化により回転電機の固定子コイルに加わる振動が大きくなったり、固定子コイルの発熱が多くなるといった現象に起因する新たな課題が浮かび上がってきている。
【0004】
具体的な例では発熱に起因する課題として、特にハイブリッド自動車のように発進/停止が繰り返されて固定子コイルに高熱の熱サイクルが与えられると、固定子コイルのコイル端部と隣接する他のコイル端部との間の溶接接続部に絶縁不良が発生し易くなるといった現象が発現してきている。
【0005】
固定子コイルのコイル端部は隣接する他のコイル端部と電気的な接続を確保するため、コイル端部の絶縁皮膜(例えばエナメル皮膜)を除去してコイルの導体部分を露出させ、この導体部分のそれぞれが溶接によって結合されている。
【0006】
尚、従来から行われてきたコイル端部の絶縁被膜の除去方法として、特許文献1にあるような回転ブラシを押し当てて絶縁被膜を除去する方法や、特許文献2にあるような有機溶剤に浸漬させて絶縁被膜を除去する方法が提案されている。
【0007】
上述したように、固定子コイルのコイル端部の溶接箇所付近は隣接するコイル端部同士の結合のためにコイル端部の絶縁被膜が除去されている。
【0008】
そして、高出力化によって固定子コイルの通電による発熱が多くなって高温になった状態、或いはこの通電が遮断され高温状態から固定子コイルが冷却されていく状態を繰り返す熱サイクルの中で、コイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生して絶縁皮膜が剥離され、結果的にこの剥離によって絶縁破壊が生じて絶縁不良を発生し易くなってきている。この現象は熱サイクルが繰り返されるたびに生じるので根本的な対策が必要であった。
【0009】
ここで、特許文献3にあるように、固定子鉄心のスロット内に収められた固定子コイルの絶縁皮膜が切削油等によって劣化するのを抑えるためにワニスを使用していたが、副次的な用い方として固定子コイルのコイル端部部分にも含浸させるとワニスの接着力によってコイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面の間の絶縁皮膜の剥離現象をある程度抑えることが期待できる。
【0010】
しかしながら、このワニスによる剥離抑制作用は固定子コイルに高熱の熱サイクルが加わると剥離現象が助長されるという副作用が生じることが判明した。この理由は課題の項で詳細に説明する。
【0011】
いずれにしても、固定子コイルに生じる高熱の熱サイクルによってコイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生して絶縁皮膜が剥離され、結果的にこの剥離によって絶縁破壊が生じて絶縁不良を発生し易くなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−14182号公報
【特許文献2】特開2011−14510号公報
【特許文献3】実開平5−039178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、一般的にコイルの絶縁被膜の剥離や損傷の保護として、特許文献3にあるような絶縁被膜の上をワニスで覆い固める方法が提案されていた。
しかしながら、高熱の熱サイクルの繰り返しによる剥離現象に加えて、ワニスとして使用されているエポキシ系の熱硬化性樹脂では180℃〜200℃以上の高温時にワニス自体からガスが発生し、その後の冷えた状態のときにワニスの体積が減少するというワニス自体の熱収縮によって絶縁皮膜の剥離現象を助長するといった副作用が生じているらしいことがわかった。
【0014】
したがって、高出力化に伴う固定子コイルの発熱が多くなるといった現象に対して従来例で行われていたワニスによる絶縁皮膜の剥離抑制作用は高温になると効果がさほど期待できないものであった。
【0015】
ただ、このワニスの使用は機械的な振動等に対しては有効であるので本発明では使用することは否定しないものであり、要はワニスを使用しても剥離が抑制できれば良いものである。
発明者等の解析の結果によれば、結局のところ特許文献1や特許文献2にある絶縁皮膜の除去法だと絶縁皮膜の除去された先端部分はコイル導体面に対してほぼ直角の状態となっていることがわかった。
【0016】
そして、熱サイクルが加わるとコイル導体と絶縁皮膜はそれぞれ固有の異なった膨張係数を有しているので膨張と収縮によって両者が相互にずれる挙動を行うが、絶縁皮膜の除去部分が直角の形状であると絶縁皮膜の除去部分の断面積は正規の絶縁皮膜の断面積とほぼ同一となり、膨張と収縮に伴う膨張力と収縮力は断面積に比例して大きくなる。
【0017】
よって、絶縁皮膜の除去部分が直角の形状であるので、その部分での断面積は最大となり大きな膨張力と収縮力が発生する。このため、コイル導体の間に大きなずれを生じることになり、結果として剥離が生じることになる。更に、これにワニスの収縮力が作用するとより剥離現象が助長されるようになる。
【0018】
本発明の目的は、コイル端部の絶縁皮膜が熱サイクルによって剥離することを抑制した回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の特徴は、コイルエンドの絶縁皮膜の厚みが導体の溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜の先端に傾斜面を形成するものである。
【発明の効果】
【0020】
絶縁皮膜の先端を厚みが薄くなるように傾斜させることにより、コイルの高温発熱時から冷却するまでの間に生じる熱収縮による絶縁被膜の剥離を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用される回転電機の断面図である。
【図2】図1に示す回転電機の固定子の断面図である。
【図3】図1に示す回転電機の回転子を軸方向に垂直に断面した斜視図である。
【図4】コイルの重ね巻きによる巻線構造を有する固定子の斜視図である。
【図5】従来の固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図6】図5に示す従来の固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図7】本発明の一実施例(第1の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図8】図7に示す本発明の一実施例になる固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図9】絶縁被膜先端の界面の熱応力の説明図である。
【図10】絶縁被膜のカット面のテーパー角度に対する引き剥がし荷重特性を説明する特性図である。
【図11】絶縁被膜の引き剥がしの疲労限界強度の説明図である。
【図12】本発明の他の実施例(第2の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図13】図12に示す本発明の他の実施例になる固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図14】本発明の更に他の実施例(第3の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態になる固定子コイルのコイル端部の製造方法を説明する説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態になる固定子コイルのコイル端部の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に従い本発明の一実施例を詳細に説明するが、まず、回転電機について図1乃至図3を用いて説明する。
図1は本発明が適用される回転電機としてのかご型誘導電動機の断面図であり、図2は図1に示す固定子の断面を示す図であり、図3は回転子を軸方向に垂直な面で断面した斜視図である。
【0023】
図1乃至図3において、かご型誘導電動機は軸方向の一端側が開口した有底筒状のハウジング1と、このハウジング1の開口端を封止するカバー2を有し、これらハウジング1とカバー2は例えば6本のボルト3によって締結されている。
【0024】
ハウジング1の内側には水路形成部材22が設けられおり、固定子4はその水路形成部材22の内側に焼き嵌め等で固定されている。水路形成部材22の図示左端のフランジはハウジング1とカバー2とに挟まれて固定されており、水路24が水路形成部材22とハウジング1との間に形成される。
【0025】
回転電機を冷却する冷却水は、ハウジング1に形成された取入口32から水路24に取り入れられた後、ハウジング1の排出口34から排出される。
固定子4は図2の断面図に示されるように、複数のスロット411が周方向等間隔に設けられた固定子鉄心412と、各スロット411内に挿入された3相の固定子コイル413とによって構成されている。
【0026】
固定子コイル413が挿入される固定子鉄心412には24個のスロット411が形成されており、固定子鉄心412は例えば厚さ0.05〜0.35mmの一枚の電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により内周にスロットを備えた円環状に成形し、成形された電磁鋼板を数百枚程度積層して構成された積層鋼板からなり、内周方向に等間隔の放射状に配置された複数のスロット411が形成されている。
【0027】
図1に戻り、固定子鉄心412の内周側には固定子鉄心412と微小な隙間を介して対向するように回転子5が回転可能に配置されている。回転子5はシャフト6に固定されてシャフト6と一体に回転し、このシャフト6はハウジング1およびカバー2にそれぞれ設けられた一対のボールベアリング7a,7bによって回転自在に支持されている。
【0028】
これらのベアリング7a,7bの内、カバー2側のベアリング7aは図示しない固定板によってカバー2に固定されており、ベアリング7bはハウジング1の底部に設けられた凹部に固定されている。
【0029】
シャフト6の左端にはプーリー12がナット11によって取り付けられており、シャフト6のプーリー12とベアリング7aとの間には、スリーブ9およびスペーサ10が設けられている。
【0030】
スリーブ9の外周およびプーリー12の内周はやや円錐形状となっており、ナット11による締め込み力によってプーリー12とシャフト6とが強固に一体化されてこれらは一体的に回転できるようになっている。
そして電動機として使用する場合は、固定子4に対して回転子5が回転駆動されるとプーリー12によってシャフト6の回転力が外部に出力され、また発電機として使用する場合は、プーリー12からの回転力がシャフト6に入力されて固定子コイルによって発電されるものである。
【0031】
図3に示すように、かご型回転子である回転子5の回転子鉄心513には回転軸方向に延びる複数の導体バー511が周方向の全周に渡って等間隔で埋め込まれている。
回転子鉄心513は磁性体からなり、回転子鉄心513の軸方向両端には各導体バー511を短絡させる短絡環512がそれぞれ設けられている。
尚、図3の斜視図においては回転子鉄心513と導体バー511との関係を明示するために、回転軸に垂直な面で断面した断面構造を示しており、プーリー12側の短絡環512およびシャフト6は図示していない。
【0032】
回転子鉄心513は固定子鉄心412と同様に、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を数百枚程度積層して構成された積層鋼板からなる。
【0033】
図3に示すように、回転子鉄心513の内周側には軽量化の為に略扇形の空洞部514が周方向等間隔に設けられ、また、回転子鉄心513の外周側すなわち固定子側には前述した導体バー511が埋め込まれており、導体バー511の内側の回転子ヨーク530に磁気回路が形成される。
【0034】
各導体バー511および短絡環512はアルミ二ウム或いはアルミニウム合金によって構成されており、ダイキャストによって回転子鉄心513に一体とされている。
回転子鉄心513の両端に配置された短絡環512は、回転子鉄心513から軸方向両端に突出するように設けられる。
尚、図1に図示していないが、ハウジング1の底部側には回転子5の回転を検出するための検出ロータが設けられ、回転センサ13は回転する検出ロータの歯を検出して回転子5の位置や回転子5の回転速度を検知するための電気信号を出力する。
【0035】
図4は、固定子鉄心412のスロット411に納められて固定子鉄心内から固定子鉄心外側の長手方向に伸びた固定子コイル413を示している。
一つの固定子コイル413は所定数のスロットを間に挟んだ一対のスロットに挿入されている。
【0036】
固定子鉄心412の両端面には各スロットから外部に突出した固定子コイル413によってコイル端部(以下、コイルエンドと称する)414が形成されている。
各スロットの出口部近傍のコイルエンド414には固定子コイル413が直線状に延在する直線部が設けられており、固定子鉄心412と固定子コイル413との間に絶縁紙が巻き付けられている。
【0037】
固定子鉄心412に納められた固定子コイル413と固定子鉄心412及び絶縁紙には、ギャップを隔てて回転自在に設けられた回転子5の回転振動によって振動が発生する。
この固定子鉄心412と固定子コイル413の振動を防止するためと、固定子鉄心412に固定子コイル413を挿入した時に出来る傷による電気的な絶縁破壊の防止のためにエポキシ系合成樹脂からなるワニスが固定子鉄心412内に含浸されている。
【0038】
また、コイルエンド414及び固定子コイル413同志の各導体線間の絶縁皮膜の保護にもエポキシ系合成樹脂からなるワニスがコイルの絶縁被覆表面に被覆されている。
【0039】
以上のような回転電機において、コイルエンド414の絶縁皮膜と導体の間に生じる絶縁不良の説明と本発明によるその解決方法を説明する。
【0040】
図5に従来のコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図6に図5のA−A断面図を示している。
固定子コイル413は全体として導体416及びこの導体416を被覆しているポリアミドイミドやポリエステルイミドのエナメル質の絶縁被膜415から構成されている。
【0041】
そして、従来の固定子コイル413のコイルエンド414付近では絶縁皮膜415を除去して導体416を露出させ、この露出された導体416は固定子鉄心414の他スロットに挿入されている隣接するコイルエンドの導体416と溶接によって結合される。
【0042】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示された回転ブラシや有機溶剤などで絶縁被膜415を除去する方法では、図6に示す断面のように絶縁被膜415の除去面417の先端の傾斜が導体416の面に対してほぼ90°に近い直角の形状になってしまうことがわかった。
【0043】
そして、熱サイクルが加わると導体416と絶縁皮膜415はそれぞれ固有の異なった膨張係数を有しているので膨張と収縮によって相互にずれる挙動を行う。
絶縁皮膜415の除去面417が直角の形状であると絶縁皮膜415の除去面417の断面積は正規の絶縁皮膜415の断面積とほぼ同一となり、膨張と収縮に伴う膨張力と収縮力は断面積に比例して大きくなる。
【0044】
よって、絶縁皮膜の除去面417が導体416に対して直角の形状であるので、除去面417の部分での断面積は最大となり、この部分で大きな膨張力と収縮力が導体の軸方向或いは直角方向、もしくは両方向に発生する。
このため、導体416と絶縁皮膜の除去面417の間に大きなずれを生じることになり、結果として剥離現象が生じることになる。
【0045】
更に、このような絶縁被膜415の除去面417の先端部分で絶縁被膜415に被覆させたワニスが高温の環境から温度が降下する時に発生する熱収縮力によって、絶縁皮膜415と導体416の界面で発生した剥離を助長する力が発生して絶縁皮膜415を導体416から更に剥離させる現象が生じてしまうことが判明した。
【0046】
上述したように、回転電機の高出力化によって固定子コイルが発熱して高温になった時には、コイルエンド414の絶縁被膜415とコイル導体416の界面に熱による大きな剥離力が発生し、これによって絶縁皮膜が導体416から剥離して結果的に絶縁不良が発生し易くなってきているのが現状である。
そこで、本発明では熱サイクルよって絶縁皮膜415が導体416から剥離する現象を抑制することができる技術を提案するものである。
【実施例1】
【0047】
本発明の第1の実施形態では、コイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜に傾斜面418を形成するものである。
【0048】
以下に、第1の実施形態におけるコイルエンド414の構成を詳細に説明するが、図7に第1の実施形態におけるコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図8に図7のA−A断面図を示している。
【0049】
固定子コイル413は断面が長方形の導線(いわゆる平角線と称されている)であって、そのコイルエンド414は絶縁皮膜415を施した導体と絶縁皮膜415を除去した溶接結合部を構成する導体416となっている。
ここで、導体416は絶縁皮膜415が施されている部分を含め形状変化がない断面が長方形状の導体として形成され、絶縁皮膜415もこの導体上に均一に被覆されている。
【0050】
そして、絶縁被膜415の先端はコイルエンド414の先端側に向かって絶縁被膜415だけの厚みが徐々に薄くなるように導体416の表面に対して傾斜角θを有する傾斜面418が形成されている。例えば、導体416が平角線の場合では、導体416の各面(4面)に接する絶縁被膜415の4箇所の先端を厚みが徐々に薄くなるように傾斜角θを有する傾斜面418をつけて形成されている。
【0051】
尚、ここで、傾斜面418は直線状に構成されているが実際には曲線状であっても良いし、少々凹凸が存在しても良いものである。要はコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となり、後述する絶縁皮膜415の引き剥がし荷重が所定の値に抑制されれば良いものである。
【0052】
そして、このように絶縁被膜415の除去面は厚みが徐々に薄くなるように傾斜角θを有する傾斜面418をつけて形成されているので、この部分に発生する熱サイクルによる膨張力と収縮力は断面積に比例することから、この断面積の減少に応じて徐々に小さくなっていくようになる。このため傾斜面418の終点では膨張力と収縮力はかなり小さくなる。したがって、導体416と絶縁被膜415傾斜面418の間での剥離を抑制することができるようになる。
【0053】
また、このように構成することで傾斜面418の剥離が抑制されているのでワニスの収縮力が加わっても、そもそも絶縁被膜415の傾斜面418が強固に接合されているため剥離を抑制することができる。
【0054】
ここで、好ましくは絶縁被膜415の先端の傾斜面418と導体416の表面の傾斜角度θは、固定子コイル413が高温時から冷却時(或いはその逆)に移行するときの絶縁被膜415と導体416の界面に発生する引き剥がし力が絶縁被膜415の引き剥がし荷重を超えない値に決められる必要がある。
【0055】
図9に絶縁被膜415先端と導体416の界面の熱応力の説明図を示し、図10に絶縁被膜415の先端(除去面)の傾斜角度に対する引き剥がし荷重特性についての説明図を示し、図11に絶縁被膜415の引き剥がしの疲労限界強度の説明図を示している。
【0056】
図9にあるように、熱サイクルで180℃に加熱された後に常温20℃に戻した時の絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力は絶縁被膜415の先端部で最大となる傾向にある。
【0057】
図10の縦軸は引き剥がし荷重の値を示し、横軸に絶縁皮膜415の傾斜面418の傾斜角度を示している。ここで、絶縁被膜415として通常に用いられている3種類の絶縁被膜を準備した。
一つは導体周りにポリアミドイミド層を施工したコイル(特性A)、一つは導体周りにポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル(特性B)、一つは導体周りにポリイミド層を施工したコイル(特性C)である。
【0058】
図10に示すように、ポリアミドイミド層を施工したコイル、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル、ポリイミド層を施工したコイルにおいては、絶縁皮膜415の先端面の傾斜角度が小さくなるにつれて絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力は減少する傾向にある。
そして、この絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力が絶縁被膜415を引き剥がす疲労限界値を超えると剥離が生じてしまうことがわかる。
【0059】
図11は絶縁被膜415の引き剥がし荷重を実際に測定する場合の例を示しており、対象とするコイルはポリアミドイミド層を施工したコイル、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル、ポリイミド層を施工したコイルである。
そして、熱サイクルで180℃に加熱した後に常温20℃に戻した状態で、引き剥がし幅を1.5mmに設定して引き剥がし、このときの荷重をフォースゲージにて測定した。この結果、絶縁被膜415を引き剥がす疲労限界値はおおよそで最大で約0.16Nであった。
【0060】
したがって、図10に戻り熱サイクルで180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので、疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度は、ポリアミドイミド層を施工したコイルでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイルでは65°以下の傾斜角度に設定すれば良い、ポリイミド層を施工したコイルでは70°以下の傾斜角度に設定すれば良いことがわかる。
【実施例2】
【0061】
本発明の第2の実施形態では、コイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜415及び導体416の表面に傾斜面419を形成するものである。
【0062】
以下に、第2の実施形態におけるコイルエンド414の構成を詳細に説明するが、図12に第2の実施形態におけるコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図13に図12のA−A断面図を示している。
【0063】
第1実施の形態では絶縁被膜415だけの先端面が傾斜して形成されているのに対して、第2の実施の形態では絶縁被膜415の先端面に絶縁皮膜側傾斜面420とこれに続く導体416の導体本体表面から内側に導体側傾斜面421とが形成され、両者でもって傾斜面419が形成されているものである。
この実施例においても、平角線の4面は導体416の面に接する絶縁被膜415と導体416の表面に4箇所の絶縁皮膜415の先端と導体416に表面が傾斜を形成するように構成されている。
【0064】
そして、図10で説明したように180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度は、ポリアミドイミド層を施工したコイルでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイルでは65°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミド層を施工したコイルでは70°以下の傾斜角度に設定すれば良いことがわかる。
この他、この実施形態によれば第1の実施形態に比べて、絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面419を形成するとその形成方法が容易になるといった効果を期待できる。
【0065】
すなわち、第1の実施形態では絶縁皮膜415のみに傾斜面418を形成していたので、絶縁皮膜415だけを除去するのは形成工程に精密な技術を必要とする場合があるのに対し、第2の実施形態では絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面419を形成するので絶縁皮膜415と導体416の界面を明確に分けることなく形成でき、第1の実施形態に比べて形成工程に精密な技術を要さないという効果が期待できるものである。
【0066】
また、コイルの先端部分が第1の実施形態に比べて細くなっているので固定子に配置するときにスロットに事前装着されている絶縁紙を損傷することなく配置できるという効果が期待できる。
【0067】
この実施例においても傾斜面419は厳密に直線状でなくても良く、要はコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となり、絶縁皮膜415の引き剥がし荷重が所定の値に抑制されれば良いものである。
【0068】
次に、第2の実施形態における傾斜面419を有するコイルエンドの作り方について説明する。
【0069】
図14において、参照番号423は割り型によるプレス金型である。このプレス金型423は内部に固定子コイルの導体416が入る空間424を有し、その先端側内面に傾斜角部425を形成している。
【0070】
この空間424が固定子コイルの絶縁被膜415を露出させた導体416を形成し、傾斜角部425が図13に示す傾斜面419を形成することになる。
そして、金型423の下に絶縁被膜が施された固定子コイルを設置すると、金型423を所定の圧力で押し下げて導体416と絶縁被膜415を所定形状(ここでは図13に示す形状))に打ち抜くものである。この場合は平角線の場合は2面しか形成できないので、次にこのコイルを90度回転させて再度金型423で打ち抜いて完成されるものである。
【実施例3】
【0071】
本発明の第3の実施形態では、第2の実施形態と同様にコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜415及び導体416の表面に傾斜面422を形成するものである。
ここで、第2の実施形態と異なる点は導体416に形成した傾斜面が円弧状を成していることである。
【0072】
図15に第3の実施の形態おける固定子コイル414の溶接結合部の断面図を示しており、この実施の形態においては絶縁被膜415の先端面は第2の実施の形態と同じように直線状の絶縁皮膜側傾斜面423を有し、導体416の表面は傾斜面として滑らかな円弧状の導体側傾斜面424としている。もちろん、平角線の4面は導体416の面に接する絶縁被膜415と導体416の表面に4箇所の絶縁皮膜415の先端に直線状の傾斜面と導体416に表面が円弧状の傾斜面を形成するように構成されている。
【0073】
この実施例においても、図10で説明したように熱サイクルで180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので、疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度はポリアミドイミド主体の汎用AIWでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、またポリイミド・ポリアミドイミドの複数層の絶縁皮膜では65°以下の傾斜角度に設定すれば良いものである。
【0074】
また、この実施例においても第2の実施形態と同様に、絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面422を形成するとその形成方法が容易になるといった効果を期待できる。
【0075】
更に、この実施例においても第2の実施形態と同様に、コイルの先端部分が第1の実施形態に比べて細くなっているので固定子に配置するときにスロットに事前装着されている絶縁紙を損傷することなく配置できるという効果が期待できる。
【0076】
次に、第3の実施形態における傾斜面422を有するコイルエンドの作り方について説明する。
【0077】
図16において、参照番号426は割り型によるプレス金型である。このプレス金型426は内部に固定子コイルの導体416が入る空間427を有し、その先端側内面に傾斜面と円弧面が連続して形成された傾斜角部428を形成している。
【0078】
図14と同様に、この空間427がコイルの絶縁被膜415を露出させた導体416を形成し、傾斜角部428が図15に示す傾斜面422を形成することになる。
【0079】
そして、実際には金型426の下に絶縁被膜が施された固定子コイルを設置すると、金型426を所定の圧力で押し下げて導体416と絶縁被膜415を所定形状(ここでは図15に示す形状))に打ち抜くものである。この場合は平角線の場合は2面しか形成できないので、次にこのコイルを90度回転させて再度金型423で打ち抜いて完成される。
【0080】
尚、第1の実施形態の作り方は省略したが、第1の実施形態においても絶縁被膜415を傾斜して打ち抜くような金型を製作してやれば同様に絶縁被膜415に傾斜面を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…回転電機、4…固定子、5…回転子、411…スロット、412…固定子鉄心、413…固定子コイル、414…コイルエンド、415…絶縁被覆、導体…416
418…傾斜面、419…傾斜面、420…絶縁皮膜側傾斜面、421…直線状の導体側傾斜面、422…傾斜面、423…絶縁皮膜側傾斜面、424…円弧状の傾斜面
423…金型、424…空間、425…傾斜角部。
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機や発電機のような回転電機に係り、特に固定子のコイル端部の絶縁不良を抑制した回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車等では電動機によって自動車のタイヤを駆動したり、自動車の減速時の走行慣性を利用してこの電動機を発電機として用いてリチウム電池に充電するような利用方法で回転電機が使用されている。
【0003】
そして、このような回転電機においては当然のことながら高出力化の要請があるが、この高出力化により回転電機の固定子コイルに加わる振動が大きくなったり、固定子コイルの発熱が多くなるといった現象に起因する新たな課題が浮かび上がってきている。
【0004】
具体的な例では発熱に起因する課題として、特にハイブリッド自動車のように発進/停止が繰り返されて固定子コイルに高熱の熱サイクルが与えられると、固定子コイルのコイル端部と隣接する他のコイル端部との間の溶接接続部に絶縁不良が発生し易くなるといった現象が発現してきている。
【0005】
固定子コイルのコイル端部は隣接する他のコイル端部と電気的な接続を確保するため、コイル端部の絶縁皮膜(例えばエナメル皮膜)を除去してコイルの導体部分を露出させ、この導体部分のそれぞれが溶接によって結合されている。
【0006】
尚、従来から行われてきたコイル端部の絶縁被膜の除去方法として、特許文献1にあるような回転ブラシを押し当てて絶縁被膜を除去する方法や、特許文献2にあるような有機溶剤に浸漬させて絶縁被膜を除去する方法が提案されている。
【0007】
上述したように、固定子コイルのコイル端部の溶接箇所付近は隣接するコイル端部同士の結合のためにコイル端部の絶縁被膜が除去されている。
【0008】
そして、高出力化によって固定子コイルの通電による発熱が多くなって高温になった状態、或いはこの通電が遮断され高温状態から固定子コイルが冷却されていく状態を繰り返す熱サイクルの中で、コイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生して絶縁皮膜が剥離され、結果的にこの剥離によって絶縁破壊が生じて絶縁不良を発生し易くなってきている。この現象は熱サイクルが繰り返されるたびに生じるので根本的な対策が必要であった。
【0009】
ここで、特許文献3にあるように、固定子鉄心のスロット内に収められた固定子コイルの絶縁皮膜が切削油等によって劣化するのを抑えるためにワニスを使用していたが、副次的な用い方として固定子コイルのコイル端部部分にも含浸させるとワニスの接着力によってコイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面の間の絶縁皮膜の剥離現象をある程度抑えることが期待できる。
【0010】
しかしながら、このワニスによる剥離抑制作用は固定子コイルに高熱の熱サイクルが加わると剥離現象が助長されるという副作用が生じることが判明した。この理由は課題の項で詳細に説明する。
【0011】
いずれにしても、固定子コイルに生じる高熱の熱サイクルによってコイル端部の絶縁被膜とコイル導体の界面に熱による大きな剥離力が発生して絶縁皮膜が剥離され、結果的にこの剥離によって絶縁破壊が生じて絶縁不良を発生し易くなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−14182号公報
【特許文献2】特開2011−14510号公報
【特許文献3】実開平5−039178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、一般的にコイルの絶縁被膜の剥離や損傷の保護として、特許文献3にあるような絶縁被膜の上をワニスで覆い固める方法が提案されていた。
しかしながら、高熱の熱サイクルの繰り返しによる剥離現象に加えて、ワニスとして使用されているエポキシ系の熱硬化性樹脂では180℃〜200℃以上の高温時にワニス自体からガスが発生し、その後の冷えた状態のときにワニスの体積が減少するというワニス自体の熱収縮によって絶縁皮膜の剥離現象を助長するといった副作用が生じているらしいことがわかった。
【0014】
したがって、高出力化に伴う固定子コイルの発熱が多くなるといった現象に対して従来例で行われていたワニスによる絶縁皮膜の剥離抑制作用は高温になると効果がさほど期待できないものであった。
【0015】
ただ、このワニスの使用は機械的な振動等に対しては有効であるので本発明では使用することは否定しないものであり、要はワニスを使用しても剥離が抑制できれば良いものである。
発明者等の解析の結果によれば、結局のところ特許文献1や特許文献2にある絶縁皮膜の除去法だと絶縁皮膜の除去された先端部分はコイル導体面に対してほぼ直角の状態となっていることがわかった。
【0016】
そして、熱サイクルが加わるとコイル導体と絶縁皮膜はそれぞれ固有の異なった膨張係数を有しているので膨張と収縮によって両者が相互にずれる挙動を行うが、絶縁皮膜の除去部分が直角の形状であると絶縁皮膜の除去部分の断面積は正規の絶縁皮膜の断面積とほぼ同一となり、膨張と収縮に伴う膨張力と収縮力は断面積に比例して大きくなる。
【0017】
よって、絶縁皮膜の除去部分が直角の形状であるので、その部分での断面積は最大となり大きな膨張力と収縮力が発生する。このため、コイル導体の間に大きなずれを生じることになり、結果として剥離が生じることになる。更に、これにワニスの収縮力が作用するとより剥離現象が助長されるようになる。
【0018】
本発明の目的は、コイル端部の絶縁皮膜が熱サイクルによって剥離することを抑制した回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の特徴は、コイルエンドの絶縁皮膜の厚みが導体の溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜の先端に傾斜面を形成するものである。
【発明の効果】
【0020】
絶縁皮膜の先端を厚みが薄くなるように傾斜させることにより、コイルの高温発熱時から冷却するまでの間に生じる熱収縮による絶縁被膜の剥離を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用される回転電機の断面図である。
【図2】図1に示す回転電機の固定子の断面図である。
【図3】図1に示す回転電機の回転子を軸方向に垂直に断面した斜視図である。
【図4】コイルの重ね巻きによる巻線構造を有する固定子の斜視図である。
【図5】従来の固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図6】図5に示す従来の固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図7】本発明の一実施例(第1の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図8】図7に示す本発明の一実施例になる固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図9】絶縁被膜先端の界面の熱応力の説明図である。
【図10】絶縁被膜のカット面のテーパー角度に対する引き剥がし荷重特性を説明する特性図である。
【図11】絶縁被膜の引き剥がしの疲労限界強度の説明図である。
【図12】本発明の他の実施例(第2の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の斜視図である。
【図13】図12に示す本発明の他の実施例になる固定子コイルのコイル端部のA−A断面図である。
【図14】本発明の更に他の実施例(第3の実施形態)になる固定子コイルのコイル端部の断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態になる固定子コイルのコイル端部の製造方法を説明する説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態になる固定子コイルのコイル端部の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に従い本発明の一実施例を詳細に説明するが、まず、回転電機について図1乃至図3を用いて説明する。
図1は本発明が適用される回転電機としてのかご型誘導電動機の断面図であり、図2は図1に示す固定子の断面を示す図であり、図3は回転子を軸方向に垂直な面で断面した斜視図である。
【0023】
図1乃至図3において、かご型誘導電動機は軸方向の一端側が開口した有底筒状のハウジング1と、このハウジング1の開口端を封止するカバー2を有し、これらハウジング1とカバー2は例えば6本のボルト3によって締結されている。
【0024】
ハウジング1の内側には水路形成部材22が設けられおり、固定子4はその水路形成部材22の内側に焼き嵌め等で固定されている。水路形成部材22の図示左端のフランジはハウジング1とカバー2とに挟まれて固定されており、水路24が水路形成部材22とハウジング1との間に形成される。
【0025】
回転電機を冷却する冷却水は、ハウジング1に形成された取入口32から水路24に取り入れられた後、ハウジング1の排出口34から排出される。
固定子4は図2の断面図に示されるように、複数のスロット411が周方向等間隔に設けられた固定子鉄心412と、各スロット411内に挿入された3相の固定子コイル413とによって構成されている。
【0026】
固定子コイル413が挿入される固定子鉄心412には24個のスロット411が形成されており、固定子鉄心412は例えば厚さ0.05〜0.35mmの一枚の電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により内周にスロットを備えた円環状に成形し、成形された電磁鋼板を数百枚程度積層して構成された積層鋼板からなり、内周方向に等間隔の放射状に配置された複数のスロット411が形成されている。
【0027】
図1に戻り、固定子鉄心412の内周側には固定子鉄心412と微小な隙間を介して対向するように回転子5が回転可能に配置されている。回転子5はシャフト6に固定されてシャフト6と一体に回転し、このシャフト6はハウジング1およびカバー2にそれぞれ設けられた一対のボールベアリング7a,7bによって回転自在に支持されている。
【0028】
これらのベアリング7a,7bの内、カバー2側のベアリング7aは図示しない固定板によってカバー2に固定されており、ベアリング7bはハウジング1の底部に設けられた凹部に固定されている。
【0029】
シャフト6の左端にはプーリー12がナット11によって取り付けられており、シャフト6のプーリー12とベアリング7aとの間には、スリーブ9およびスペーサ10が設けられている。
【0030】
スリーブ9の外周およびプーリー12の内周はやや円錐形状となっており、ナット11による締め込み力によってプーリー12とシャフト6とが強固に一体化されてこれらは一体的に回転できるようになっている。
そして電動機として使用する場合は、固定子4に対して回転子5が回転駆動されるとプーリー12によってシャフト6の回転力が外部に出力され、また発電機として使用する場合は、プーリー12からの回転力がシャフト6に入力されて固定子コイルによって発電されるものである。
【0031】
図3に示すように、かご型回転子である回転子5の回転子鉄心513には回転軸方向に延びる複数の導体バー511が周方向の全周に渡って等間隔で埋め込まれている。
回転子鉄心513は磁性体からなり、回転子鉄心513の軸方向両端には各導体バー511を短絡させる短絡環512がそれぞれ設けられている。
尚、図3の斜視図においては回転子鉄心513と導体バー511との関係を明示するために、回転軸に垂直な面で断面した断面構造を示しており、プーリー12側の短絡環512およびシャフト6は図示していない。
【0032】
回転子鉄心513は固定子鉄心412と同様に、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を数百枚程度積層して構成された積層鋼板からなる。
【0033】
図3に示すように、回転子鉄心513の内周側には軽量化の為に略扇形の空洞部514が周方向等間隔に設けられ、また、回転子鉄心513の外周側すなわち固定子側には前述した導体バー511が埋め込まれており、導体バー511の内側の回転子ヨーク530に磁気回路が形成される。
【0034】
各導体バー511および短絡環512はアルミ二ウム或いはアルミニウム合金によって構成されており、ダイキャストによって回転子鉄心513に一体とされている。
回転子鉄心513の両端に配置された短絡環512は、回転子鉄心513から軸方向両端に突出するように設けられる。
尚、図1に図示していないが、ハウジング1の底部側には回転子5の回転を検出するための検出ロータが設けられ、回転センサ13は回転する検出ロータの歯を検出して回転子5の位置や回転子5の回転速度を検知するための電気信号を出力する。
【0035】
図4は、固定子鉄心412のスロット411に納められて固定子鉄心内から固定子鉄心外側の長手方向に伸びた固定子コイル413を示している。
一つの固定子コイル413は所定数のスロットを間に挟んだ一対のスロットに挿入されている。
【0036】
固定子鉄心412の両端面には各スロットから外部に突出した固定子コイル413によってコイル端部(以下、コイルエンドと称する)414が形成されている。
各スロットの出口部近傍のコイルエンド414には固定子コイル413が直線状に延在する直線部が設けられており、固定子鉄心412と固定子コイル413との間に絶縁紙が巻き付けられている。
【0037】
固定子鉄心412に納められた固定子コイル413と固定子鉄心412及び絶縁紙には、ギャップを隔てて回転自在に設けられた回転子5の回転振動によって振動が発生する。
この固定子鉄心412と固定子コイル413の振動を防止するためと、固定子鉄心412に固定子コイル413を挿入した時に出来る傷による電気的な絶縁破壊の防止のためにエポキシ系合成樹脂からなるワニスが固定子鉄心412内に含浸されている。
【0038】
また、コイルエンド414及び固定子コイル413同志の各導体線間の絶縁皮膜の保護にもエポキシ系合成樹脂からなるワニスがコイルの絶縁被覆表面に被覆されている。
【0039】
以上のような回転電機において、コイルエンド414の絶縁皮膜と導体の間に生じる絶縁不良の説明と本発明によるその解決方法を説明する。
【0040】
図5に従来のコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図6に図5のA−A断面図を示している。
固定子コイル413は全体として導体416及びこの導体416を被覆しているポリアミドイミドやポリエステルイミドのエナメル質の絶縁被膜415から構成されている。
【0041】
そして、従来の固定子コイル413のコイルエンド414付近では絶縁皮膜415を除去して導体416を露出させ、この露出された導体416は固定子鉄心414の他スロットに挿入されている隣接するコイルエンドの導体416と溶接によって結合される。
【0042】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示された回転ブラシや有機溶剤などで絶縁被膜415を除去する方法では、図6に示す断面のように絶縁被膜415の除去面417の先端の傾斜が導体416の面に対してほぼ90°に近い直角の形状になってしまうことがわかった。
【0043】
そして、熱サイクルが加わると導体416と絶縁皮膜415はそれぞれ固有の異なった膨張係数を有しているので膨張と収縮によって相互にずれる挙動を行う。
絶縁皮膜415の除去面417が直角の形状であると絶縁皮膜415の除去面417の断面積は正規の絶縁皮膜415の断面積とほぼ同一となり、膨張と収縮に伴う膨張力と収縮力は断面積に比例して大きくなる。
【0044】
よって、絶縁皮膜の除去面417が導体416に対して直角の形状であるので、除去面417の部分での断面積は最大となり、この部分で大きな膨張力と収縮力が導体の軸方向或いは直角方向、もしくは両方向に発生する。
このため、導体416と絶縁皮膜の除去面417の間に大きなずれを生じることになり、結果として剥離現象が生じることになる。
【0045】
更に、このような絶縁被膜415の除去面417の先端部分で絶縁被膜415に被覆させたワニスが高温の環境から温度が降下する時に発生する熱収縮力によって、絶縁皮膜415と導体416の界面で発生した剥離を助長する力が発生して絶縁皮膜415を導体416から更に剥離させる現象が生じてしまうことが判明した。
【0046】
上述したように、回転電機の高出力化によって固定子コイルが発熱して高温になった時には、コイルエンド414の絶縁被膜415とコイル導体416の界面に熱による大きな剥離力が発生し、これによって絶縁皮膜が導体416から剥離して結果的に絶縁不良が発生し易くなってきているのが現状である。
そこで、本発明では熱サイクルよって絶縁皮膜415が導体416から剥離する現象を抑制することができる技術を提案するものである。
【実施例1】
【0047】
本発明の第1の実施形態では、コイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜に傾斜面418を形成するものである。
【0048】
以下に、第1の実施形態におけるコイルエンド414の構成を詳細に説明するが、図7に第1の実施形態におけるコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図8に図7のA−A断面図を示している。
【0049】
固定子コイル413は断面が長方形の導線(いわゆる平角線と称されている)であって、そのコイルエンド414は絶縁皮膜415を施した導体と絶縁皮膜415を除去した溶接結合部を構成する導体416となっている。
ここで、導体416は絶縁皮膜415が施されている部分を含め形状変化がない断面が長方形状の導体として形成され、絶縁皮膜415もこの導体上に均一に被覆されている。
【0050】
そして、絶縁被膜415の先端はコイルエンド414の先端側に向かって絶縁被膜415だけの厚みが徐々に薄くなるように導体416の表面に対して傾斜角θを有する傾斜面418が形成されている。例えば、導体416が平角線の場合では、導体416の各面(4面)に接する絶縁被膜415の4箇所の先端を厚みが徐々に薄くなるように傾斜角θを有する傾斜面418をつけて形成されている。
【0051】
尚、ここで、傾斜面418は直線状に構成されているが実際には曲線状であっても良いし、少々凹凸が存在しても良いものである。要はコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となり、後述する絶縁皮膜415の引き剥がし荷重が所定の値に抑制されれば良いものである。
【0052】
そして、このように絶縁被膜415の除去面は厚みが徐々に薄くなるように傾斜角θを有する傾斜面418をつけて形成されているので、この部分に発生する熱サイクルによる膨張力と収縮力は断面積に比例することから、この断面積の減少に応じて徐々に小さくなっていくようになる。このため傾斜面418の終点では膨張力と収縮力はかなり小さくなる。したがって、導体416と絶縁被膜415傾斜面418の間での剥離を抑制することができるようになる。
【0053】
また、このように構成することで傾斜面418の剥離が抑制されているのでワニスの収縮力が加わっても、そもそも絶縁被膜415の傾斜面418が強固に接合されているため剥離を抑制することができる。
【0054】
ここで、好ましくは絶縁被膜415の先端の傾斜面418と導体416の表面の傾斜角度θは、固定子コイル413が高温時から冷却時(或いはその逆)に移行するときの絶縁被膜415と導体416の界面に発生する引き剥がし力が絶縁被膜415の引き剥がし荷重を超えない値に決められる必要がある。
【0055】
図9に絶縁被膜415先端と導体416の界面の熱応力の説明図を示し、図10に絶縁被膜415の先端(除去面)の傾斜角度に対する引き剥がし荷重特性についての説明図を示し、図11に絶縁被膜415の引き剥がしの疲労限界強度の説明図を示している。
【0056】
図9にあるように、熱サイクルで180℃に加熱された後に常温20℃に戻した時の絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力は絶縁被膜415の先端部で最大となる傾向にある。
【0057】
図10の縦軸は引き剥がし荷重の値を示し、横軸に絶縁皮膜415の傾斜面418の傾斜角度を示している。ここで、絶縁被膜415として通常に用いられている3種類の絶縁被膜を準備した。
一つは導体周りにポリアミドイミド層を施工したコイル(特性A)、一つは導体周りにポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル(特性B)、一つは導体周りにポリイミド層を施工したコイル(特性C)である。
【0058】
図10に示すように、ポリアミドイミド層を施工したコイル、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル、ポリイミド層を施工したコイルにおいては、絶縁皮膜415の先端面の傾斜角度が小さくなるにつれて絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力は減少する傾向にある。
そして、この絶縁被膜415と導体416の界面の引き剥がし力が絶縁被膜415を引き剥がす疲労限界値を超えると剥離が生じてしまうことがわかる。
【0059】
図11は絶縁被膜415の引き剥がし荷重を実際に測定する場合の例を示しており、対象とするコイルはポリアミドイミド層を施工したコイル、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイル、ポリイミド層を施工したコイルである。
そして、熱サイクルで180℃に加熱した後に常温20℃に戻した状態で、引き剥がし幅を1.5mmに設定して引き剥がし、このときの荷重をフォースゲージにて測定した。この結果、絶縁被膜415を引き剥がす疲労限界値はおおよそで最大で約0.16Nであった。
【0060】
したがって、図10に戻り熱サイクルで180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので、疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度は、ポリアミドイミド層を施工したコイルでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイルでは65°以下の傾斜角度に設定すれば良い、ポリイミド層を施工したコイルでは70°以下の傾斜角度に設定すれば良いことがわかる。
【実施例2】
【0061】
本発明の第2の実施形態では、コイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜415及び導体416の表面に傾斜面419を形成するものである。
【0062】
以下に、第2の実施形態におけるコイルエンド414の構成を詳細に説明するが、図12に第2の実施形態におけるコイルエンド414のコイル結合部の外観図を示し、図13に図12のA−A断面図を示している。
【0063】
第1実施の形態では絶縁被膜415だけの先端面が傾斜して形成されているのに対して、第2の実施の形態では絶縁被膜415の先端面に絶縁皮膜側傾斜面420とこれに続く導体416の導体本体表面から内側に導体側傾斜面421とが形成され、両者でもって傾斜面419が形成されているものである。
この実施例においても、平角線の4面は導体416の面に接する絶縁被膜415と導体416の表面に4箇所の絶縁皮膜415の先端と導体416に表面が傾斜を形成するように構成されている。
【0064】
そして、図10で説明したように180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度は、ポリアミドイミド層を施工したコイルでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミドとポリアミドイミドの複数層を形成したコイルでは65°以下の傾斜角度に設定すれば良く、ポリイミド層を施工したコイルでは70°以下の傾斜角度に設定すれば良いことがわかる。
この他、この実施形態によれば第1の実施形態に比べて、絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面419を形成するとその形成方法が容易になるといった効果を期待できる。
【0065】
すなわち、第1の実施形態では絶縁皮膜415のみに傾斜面418を形成していたので、絶縁皮膜415だけを除去するのは形成工程に精密な技術を必要とする場合があるのに対し、第2の実施形態では絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面419を形成するので絶縁皮膜415と導体416の界面を明確に分けることなく形成でき、第1の実施形態に比べて形成工程に精密な技術を要さないという効果が期待できるものである。
【0066】
また、コイルの先端部分が第1の実施形態に比べて細くなっているので固定子に配置するときにスロットに事前装着されている絶縁紙を損傷することなく配置できるという効果が期待できる。
【0067】
この実施例においても傾斜面419は厳密に直線状でなくても良く、要はコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが導体416の溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ形状となり、絶縁皮膜415の引き剥がし荷重が所定の値に抑制されれば良いものである。
【0068】
次に、第2の実施形態における傾斜面419を有するコイルエンドの作り方について説明する。
【0069】
図14において、参照番号423は割り型によるプレス金型である。このプレス金型423は内部に固定子コイルの導体416が入る空間424を有し、その先端側内面に傾斜角部425を形成している。
【0070】
この空間424が固定子コイルの絶縁被膜415を露出させた導体416を形成し、傾斜角部425が図13に示す傾斜面419を形成することになる。
そして、金型423の下に絶縁被膜が施された固定子コイルを設置すると、金型423を所定の圧力で押し下げて導体416と絶縁被膜415を所定形状(ここでは図13に示す形状))に打ち抜くものである。この場合は平角線の場合は2面しか形成できないので、次にこのコイルを90度回転させて再度金型423で打ち抜いて完成されるものである。
【実施例3】
【0071】
本発明の第3の実施形態では、第2の実施形態と同様にコイルエンド414の絶縁皮膜415の先端の厚みが溶接による溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状となるように絶縁皮膜415及び導体416の表面に傾斜面422を形成するものである。
ここで、第2の実施形態と異なる点は導体416に形成した傾斜面が円弧状を成していることである。
【0072】
図15に第3の実施の形態おける固定子コイル414の溶接結合部の断面図を示しており、この実施の形態においては絶縁被膜415の先端面は第2の実施の形態と同じように直線状の絶縁皮膜側傾斜面423を有し、導体416の表面は傾斜面として滑らかな円弧状の導体側傾斜面424としている。もちろん、平角線の4面は導体416の面に接する絶縁被膜415と導体416の表面に4箇所の絶縁皮膜415の先端に直線状の傾斜面と導体416に表面が円弧状の傾斜面を形成するように構成されている。
【0073】
この実施例においても、図10で説明したように熱サイクルで180℃に加熱した後の疲労限界値は最大0.16Nであるので、疲労限界値である最大0.16Nを満足する傾斜角度はポリアミドイミド主体の汎用AIWでは50°以下の傾斜角度に設定すれば良く、またポリイミド・ポリアミドイミドの複数層の絶縁皮膜では65°以下の傾斜角度に設定すれば良いものである。
【0074】
また、この実施例においても第2の実施形態と同様に、絶縁皮膜415と導体416の表面に連続した傾斜面422を形成するとその形成方法が容易になるといった効果を期待できる。
【0075】
更に、この実施例においても第2の実施形態と同様に、コイルの先端部分が第1の実施形態に比べて細くなっているので固定子に配置するときにスロットに事前装着されている絶縁紙を損傷することなく配置できるという効果が期待できる。
【0076】
次に、第3の実施形態における傾斜面422を有するコイルエンドの作り方について説明する。
【0077】
図16において、参照番号426は割り型によるプレス金型である。このプレス金型426は内部に固定子コイルの導体416が入る空間427を有し、その先端側内面に傾斜面と円弧面が連続して形成された傾斜角部428を形成している。
【0078】
図14と同様に、この空間427がコイルの絶縁被膜415を露出させた導体416を形成し、傾斜角部428が図15に示す傾斜面422を形成することになる。
【0079】
そして、実際には金型426の下に絶縁被膜が施された固定子コイルを設置すると、金型426を所定の圧力で押し下げて導体416と絶縁被膜415を所定形状(ここでは図15に示す形状))に打ち抜くものである。この場合は平角線の場合は2面しか形成できないので、次にこのコイルを90度回転させて再度金型423で打ち抜いて完成される。
【0080】
尚、第1の実施形態の作り方は省略したが、第1の実施形態においても絶縁被膜415を傾斜して打ち抜くような金型を製作してやれば同様に絶縁被膜415に傾斜面を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…回転電機、4…固定子、5…回転子、411…スロット、412…固定子鉄心、413…固定子コイル、414…コイルエンド、415…絶縁被覆、導体…416
418…傾斜面、419…傾斜面、420…絶縁皮膜側傾斜面、421…直線状の導体側傾斜面、422…傾斜面、423…絶縁皮膜側傾斜面、424…円弧状の傾斜面
423…金型、424…空間、425…傾斜角部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに至る前記絶縁皮膜の先端に、その厚みが前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ傾斜面を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、前記傾斜面は前記絶縁皮膜の先端にだけ形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、前記傾斜面は前記絶縁被膜の先端と前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されていること特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されている傾斜面は直線状に形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機において、前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されている傾斜面は円弧状に形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリアミドイミド及びポリイミドを含む複数層から形成されているときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は65°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリアミドイミドであるときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は50°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリイミドであるときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は70°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項1に記載の回転電機おいて、前記コイルは角線であって前記絶縁被膜は前記角線の4面に施され、前記絶縁皮膜の先端にその厚みが前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ傾斜面を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに施された前記絶縁皮膜が前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状に打ち抜く金型の打ち抜き工程によって前記絶縁被膜の先端に傾斜面を形成することを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【請求項11】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに施された前記絶縁皮膜及び前記コイルの導体の表面から内側を前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状に打ち抜く金型の打ち抜き工程によって前記絶縁被膜の先端及び前記導体の内側に傾斜面を形成することを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の回転電機の固定子コイルの製造方法において、前記傾斜面は前記絶縁被膜及び前記導体に亘って直線状に形成する金型の打ち抜き工程によって形成されるか、或いは前記絶縁被膜は直線状に形成され、かつ前記導体は円弧状に形成する金型の打ち抜き工程によって形成されることを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【請求項1】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに至る前記絶縁皮膜の先端に、その厚みが前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ傾斜面を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、前記傾斜面は前記絶縁皮膜の先端にだけ形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、前記傾斜面は前記絶縁被膜の先端と前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されていること特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されている傾斜面は直線状に形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機において、前記コイルエンドの導体の表面から内部側に向かって形成されている傾斜面は円弧状に形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリアミドイミド及びポリイミドを含む複数層から形成されているときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は65°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリアミドイミドであるときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は50°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5に記載の回転電機において、前記絶縁被膜がポリイミドであるときの前記絶縁被膜の先端に形成した傾斜面の傾斜角度は70°以下の傾斜角度であることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項1に記載の回転電機おいて、前記コイルは角線であって前記絶縁被膜は前記角線の4面に施され、前記絶縁皮膜の先端にその厚みが前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなる傾斜をもつ傾斜面を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに施された前記絶縁皮膜が前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状に打ち抜く金型の打ち抜き工程によって前記絶縁被膜の先端に傾斜面を形成することを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【請求項11】
回転子収納空間を備えた円環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内周に等間隔に設けられた複数のスロットと、前記スロットに挿入され隣接するコイルと溶接結合部によって結合されるコイルエンドをそれぞれ有し前記コイルエンド以外に絶縁皮膜が施された複数のコイルと、前記回転子収納空間に収納された回転子とを少なくとも備えた回転電機において、
前記コイルエンドに施された前記絶縁皮膜及び前記コイルの導体の表面から内側を前記コイルエンドの前記溶接結合部に向かって徐々に薄くなるような傾斜をもつ形状に打ち抜く金型の打ち抜き工程によって前記絶縁被膜の先端及び前記導体の内側に傾斜面を形成することを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の回転電機の固定子コイルの製造方法において、前記傾斜面は前記絶縁被膜及び前記導体に亘って直線状に形成する金型の打ち抜き工程によって形成されるか、或いは前記絶縁被膜は直線状に形成され、かつ前記導体は円弧状に形成する金型の打ち抜き工程によって形成されることを特徴とする回転電機の固定子コイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−21896(P2013−21896A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155855(P2011−155855)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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