説明

回転電機

【課題】回転子導体に供給された冷却用液体がスリップリングとブラシの摺動部に付着するのを防止する。
【解決手段】仕切部材82は、ロータ巻線30に供給された冷却用液体をシール部材84により密封する。スリップリング97uと電気的に接続されたブスバー99は、ロータ回転軸方向に関してスリップリング97u側からシール部材84と入力軸34との間の位置を通って入力側ロータ28側に張り出しており、この張り出した部分99aにてブスバー79と電気的に接続されている。絶縁部材90は、ブスバー99における少なくともシール部材84と入力軸34との間を通る部分99bを封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、特に、回転子に回転子導体が配設され、スリップリング及びブラシを介して回転子導体に電流が流れる回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転電機を備える動力伝達装置の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1による動力伝達装置は、巻線が配設されエンジンに機械的に連結された第1ロータと、第1ロータの巻線と電磁気的に結合する磁石が配設され駆動軸に機械的に連結された第2ロータと、第2ロータの磁石と電磁気的に結合する巻線が配設されたステータと、第1ロータの巻線と電気的に接続されたスリップリングと、スリップリングと電気的に接触するブラシと、バッテリーとステータの巻線との間で電力を授受可能に制御する第1インバータと、スリップリング及びブラシを介してバッテリーと第1ロータの巻線との間で電力を授受可能に制御する第2インバータと、を備える。特許文献1においては、第1ロータに伝達されたエンジンからの動力は、第1ロータの巻線と第2ロータの磁石との電磁気結合によって第2ロータに伝達されるため、エンジンの動力により駆動軸を駆動することができる。さらに、第2インバータを介してバッテリーと第1ロータの巻線との間で電力の授受が可能になるため、第2インバータにより第1ロータの巻線の電力を制御することで、駆動軸の回転速度を制御することができる。その場合において、第1ロータの回転速度が第2ロータの回転速度よりも高いときは、第1ロータの巻線の発電電力が第2インバータを介してバッテリー側へ供給され、第1ロータの回転速度が第2ロータの回転速度よりも低いときは、バッテリーの電力が第2インバータを介して第1ロータの巻線に供給される。さらに、ステータの巻線と第2ロータの磁石との電磁気結合によって、バッテリー側から第1インバータを介してステータの巻線に供給された電力を用いて第2ロータに動力を発生させて駆動軸を駆動することができるため、第1インバータによりステータの巻線への電力供給を制御することで、駆動軸に伝達されるトルクを制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−56010号公報
【特許文献2】特開2009−73472号公報
【特許文献3】特開2009−274536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、第1ロータと第2ロータとの間に作用するトルクによりエンジンの動力を駆動軸へ伝達する際には、第1ロータの巻線に交流電流が流れることで第1ロータが発熱するため、第1ロータの巻線にオイル等の冷却用液体を供給して冷却を行うことが望ましい。ただし、第1ロータの巻線は電気的配線を介してスリップリングと接続されているため、第1ロータの巻線に供給された冷却用液体が電気的配線を伝ってスリップリングに付着しやすくなる。スリップリングとブラシの摺動部に冷却用液体が付着すると、ブラシに異常磨耗が生じやすくなる。そこで、第1ロータの巻線に供給された冷却用液体が電気的配線を伝ってスリップリングとブラシの摺動部に付着するのを防止することが望ましい。
【0005】
本発明は、回転子導体に供給された冷却用液体がスリップリングとブラシの摺動部に付着するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転電機は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明に係る回転電機は、回転軸に取り付けられ、冷却用液体が供給される回転子導体が配設された回転子と、回転軸方向に関して回転子と間隔をおいて回転軸に取り付けられ、ブラシと電気的に接触するスリップリングと、スリップリングに電気的に接続されたブスバーと、を有するスリップリングモジュール部材と、回転子とブラシとを仕切るための仕切部材であって、シール部材が取り付けられ、回転子導体に供給された冷却用液体をシール部材により密封する仕切部材と、を備え、ブスバーは、シール部材と回転軸との間を通って回転子側に張り出し、当該張り出した部分にて回転子導体側の接続端子と電気的に接続され、スリップリングモジュール部材は、ブスバーにおける少なくともシール部材と回転軸との間を通る部分を封止するための封止部材をさらに有することを要旨とする。
【0008】
本発明の一態様では、封止部材は、ブスバーにおけるシール部材と回転軸との間を通る部分の他に、ブスバーにおける当該部分よりスリップリング側の部分をさらに封止するための部材であることが好適である。
【0009】
本発明の一態様では、仕切部材がケースハウジングに取り付けられ、回転子導体側の接続端子は、ケースハウジングと回転軸との間を通ってスリップリング側に張り出し、当該張り出した部分にてブスバーと電気的に接続されていることが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、ブラシを有するブラシモジュール部材が仕切部材に取り付けられていることが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、交流電流が流れることで回転磁界を発生可能な固定子導体が配設された固定子と、前記回転子導体が配設された回転子である第1回転子に対し相対回転可能であり、回転子導体に交流電流が流れることで発生した回転磁界が作用するのに応じて第1回転子との間にトルクが作用し、固定子導体で発生した回転磁界が作用するのに応じて固定子との間にトルクが作用する第2回転子と、をさらに備えることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転子とブラシとを仕切るための仕切部材が、回転子導体に供給された冷却用液体をシール部材により密封し、スリップリングモジュール部材の封止部材が、スリップリングに電気的に接続されたブスバーにおける少なくともシール部材と回転軸との間を通る部分を封止することで、回転子導体に供給された冷却用液体がブスバーを伝ってスリップリングとブラシの摺動部に付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る回転電機を備えるハイブリッド駆動装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回転電機の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る回転電機の概略構成を示す図である。
【図4】入力側ロータ28、出力側ロータ18、及びステータ16の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る回転電機の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0015】
図1〜3は、本発明の実施形態に係る回転電機10を備えるハイブリッド駆動装置の構成の概略を示す図であり、図1は全体構成の概略を示し、図2,3は回転電機10の構成の概略を示す。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置は、動力(機械的動力)を発生可能な原動機として設けられたエンジン(内燃機関)36と、エンジン36と駆動軸37(車輪38)との間に設けられ、変速比の変更が可能な変速機(機械式変速機)44と、エンジン36と変速機44との間に設けられた回転電機10と、を備える。なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置については、例えば車両を駆動するための動力出力装置として用いることができる。
【0016】
回転電機10は、ケースハウジングに固定されたステータ16と、ステータ16に対し相対回転可能な第1ロータ28と、ロータ回転軸と直交する径方向においてステータ16及び第1ロータ28と所定の空隙を空けて対向し、ステータ16及び第1ロータ28に対し相対回転可能な第2ロータ18と、スリップリングモジュール95及びブラシモジュール96と、を有する。ステータ16は、第1ロータ28より径方向外側の位置に第1ロータ28と間隔を空けて配置されており、第2ロータ18は、径方向においてステータ16と第1ロータ28との間の位置に配置されている。つまり、第1ロータ28は第2ロータ18より径方向内側の位置で第2ロータ18と対向配置されており、ステータ16は第2ロータ18より径方向外側の位置で第2ロータ18と対向配置されている。第1ロータ28は回転電機10の入力軸34(第1回転軸)に取り付けられ、入力軸34はエンジン36と機械的に連結されていることで、入力軸34(第1ロータ28)にはエンジン36からの動力が伝達される。一方、第2ロータ18は回転電機10の出力軸24(第2回転軸)に取り付けられ、出力軸24は変速機44を介して駆動軸37と機械的に連結されていることで、駆動軸37(車輪38)には出力軸24(第2ロータ18)からの動力が変速機44で変速されてから伝達される。なお、以下の説明では、第1ロータ28を入力側ロータとし、第2ロータ18を出力側ロータとする。
【0017】
入力側ロータ28は、ロータコア(第1回転子鉄心)52と、ロータコア52にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のロータ巻線30と、を含む。複数相のロータ巻線30に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ロータ巻線30は、ロータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。
【0018】
ステータ16は、ステータコア(固定子鉄心)51と、ステータコア51にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のステータ巻線20と、を含む。複数相のステータ巻線20に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。
【0019】
出力側ロータ18は、ロータコア(第2回転子鉄心)53と、ロータコア53にその周方向に沿って配設され界磁束を発生する永久磁石32,33と、を含む。永久磁石32は、ロータコア53の外周部にステータ16(ステータコア51)と対向して配設されており、永久磁石33は、ロータコア53の内周部に入力側ロータ28(ロータコア52)と対向して配設されている。ここでは、永久磁石32,33を一体化することも可能である。
【0020】
入力側ロータ28、出力側ロータ18、及びステータ16のより詳細な構成例を図4に示す。図4に示す例では、入力側ロータ28、出力側ロータ18、及びステータ16が同心円状に配置されている。ステータ16のステータコア51には、径方向内側へ(出力側ロータ18へ向けて)突出した複数のティース51aがステータ周方向に沿って間隔をおいて配列されており、各ステータ巻線20がこれらのティース51aに巻回されていることで、磁極が構成される。入力側ロータ28のロータコア52には、径方向外側へ(出力側ロータ18へ向けて)突出した複数のティース52aがロータ周方向に沿って間隔をおいて配列されており、各ロータ巻線30がこれらのティース52aに巻回されていることで、磁極が構成される。ステータ16のティース51aと出力側ロータ18の永久磁石32とが出力側ロータ18の回転中心軸(入力側ロータ28の回転中心軸と一致する)に直交する径方向に対向配置されており、入力側ロータ28のティース52aと出力側ロータ18の永久磁石33とがこの径方向に対向配置されている。ステータ巻線20の巻回軸及びロータ巻線30の巻回軸は、この径方向(入力側ロータ28と出力側ロータ18が対向する方向)に一致している。永久磁石32,33はロータ周方向に間隔をおいて配列されており、さらに、永久磁石32はロータコア53内にV字状に埋設されている。ただし、永久磁石32,33については、出力側ロータ18の表面(外周面または内周面)に露出していてもよいし、出力側ロータ18内(ロータコア53内)に埋設されていてもよい。
【0021】
クラッチ48は、エンジン36と変速機44との間に、回転電機10(入力側ロータ28及び出力側ロータ18)に対し並列に設けられている。クラッチ48の係合/解放により、入力側ロータ28と出力側ロータ18との機械的係合/その解除を選択的に行うことが可能である。クラッチ48を係合させて、入力側ロータ28と出力側ロータ18とを機械的に係合させることで、入力側ロータ28と出力側ロータ18とが一体となって等しい回転速度で回転する。一方、クラッチ48を解放して、入力側ロータ28と出力側ロータ18との機械的係合を解除することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18との回転速度差が許容される。ここでのクラッチ48は、例えば油圧や電磁力を利用して係合/解放を切り替えることが可能であり、さらに、クラッチ48に供給する油圧力や電磁力を調整することで締結力を調整することもできる。
【0022】
スリップリングモジュール95は、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28と間隔をおいて入力軸34に取り付けられ、入力側ロータ28と機械的に連結されている。スリップリングモジュール95は、ロータ巻線30の各相と電気的に接続されたスリップリング97を有する。回転が固定されたブラシモジュール96は、スリップリング97に押し付けられて電気的に接触するブラシ98を有する。スリップリングモジュール95は、スリップリング97がブラシ98に対し摺動しながら(ブラシ98との電気的接触を維持しながら)、入力側ロータ28とともに回転する。
【0023】
直流電源として設けられた充放電可能な蓄電装置42は、例えば二次電池により構成することができ、電気エネルギーを蓄える。インバータ40は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ステータ巻線20の各相に供給することが可能である。さらに、インバータ40は、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を直流に変換して、電気エネルギーを蓄電装置42に回収する方向の電力変換も可能である。このように、インバータ40は、蓄電装置42とステータ巻線20との間で双方向の電力変換を行うことが可能である。
【0024】
整流器93は、ブラシ98と電気的に接続されており、スリップリング97及びブラシ98により取り出されたロータ巻線30からの交流電力をダイオード(整流素子)により整流して直流に変換する。昇圧コンバータ(DC−DCコンバータ)94は、スイッチング素子及びダイオード(整流素子)を備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により整流器93で整流された直流電力を昇圧(電圧変換)して出力する。昇圧コンバータ94で昇圧(電圧変換)された直流電力は、インバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20の各相へ供給可能である。つまり、インバータ40は、昇圧コンバータ94で昇圧された直流電力と蓄電装置42からの直流電力とのいずれか(少なくとも一方)を交流に変換してステータ巻線20の各相へ供給することが可能である。そのため、ロータ巻線30とステータ巻線20との間で電力変換を行うことが可能である。また、昇圧コンバータ94で昇圧された直流電力を蓄電装置42に回収することも可能である。ここでの整流器93は、スリップリング97側から昇圧コンバータ94側への一方向のみの電力変換を行い、昇圧コンバータ94は、整流器93側から蓄電装置42側(あるいはインバータ40側)への一方向のみの電力変換を行う。そのため、整流器93及び昇圧コンバータ94は、ロータ巻線30側から蓄電装置42側(あるいはインバータ40側)への一方向のみの電力変換を行う。なお、昇圧コンバータ94の代わりに、DC−DCコンバータとして降圧コンバータや昇降圧コンバータを設けることも可能である。
【0025】
インバータ41は、ブラシ98と電気的に接続されており、整流器93及び昇圧コンバータ94に対し並列に設けられている。インバータ41は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ブラシ98及びスリップリング97を介してロータ巻線30の各相に供給することが可能である。
【0026】
電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング素子のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を制御する。そして、電子制御ユニット50は、昇圧コンバータ94のスイッチング素子をスイッチング動作するときのデューティ比を制御することで、昇圧コンバータ94での昇圧比(電圧変換比)を制御して、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を制御する。また、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング素子のスイッチング動作を制御することによっても、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を制御することが可能である。そして、電子制御ユニット50は、クラッチ48の係合/解放を切り替えることで、入力側ロータ28と出力側ロータ18との機械的係合/その解除を切り替える制御も行う。さらに、電子制御ユニット50は、エンジン36の運転状態の制御、及び変速機44の変速比の制御も行う。
【0027】
インバータ40のスイッチング動作により複数相のステータ巻線20に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生する。そして、ステータ巻線20で発生した回転磁界と永久磁石32で発生した界磁束との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)により、出力側ロータ18にトルク(磁石トルク)を作用させることができ、出力側ロータ18を回転駆動することができる。つまり、蓄電装置42からステータ巻線20に供給された電力を出力側ロータ18の動力(機械的動力)に変換することができ、ステータ16及び出力側ロータ18を同期電動機(PMモータ部)として機能させることができる。さらに、インバータ40は、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を直流に変換して、電気エネルギーを蓄電装置42に回収する方向の変換も可能である。その場合は、出力側ロータ18の動力がステータ巻線20の電力に変換されて蓄電装置42に回収される。このように、ステータ16のステータ巻線20と出力側ロータ18の永久磁石32とが電磁気的に結合されていることで、ステータ巻線20で発生する回転磁界を出力側ロータ18に作用させて、ステータ16と出力側ロータ18との間にトルク(磁石トルク)を作用させることができる。さらに、例えば図4に示すように、永久磁石32間に突極部として磁性体(強磁性体)がステータ16(ティース51a)と対向して配置されている例や、永久磁石32が出力側ロータ18内(ロータコア53内)に埋設されている例では、ステータ16の発生する回転磁界が出力側ロータ18に作用するのに応じて、磁石トルクに加えてリラクタンストルクもステータ16と出力側ロータ18との間に作用する。電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作により例えばステータ巻線20に流す交流電流の振幅や位相角を制御することで、ステータ16と出力側ロータ18との間に作用するトルクを制御することができる。
【0028】
また、入力側ロータ28が出力側ロータ18に対し相対回転して入力側ロータ28(ロータ巻線30)と出力側ロータ18(永久磁石33)との間に回転差が生じるのに伴ってロータ巻線30に誘導起電力が発生し、この誘導起電力に起因してロータ巻線30に誘導電流(交流電流)が流れることで回転磁界が生じる。そして、ロータ巻線30の誘導電流により生じる回転磁界と永久磁石33の界磁束との電磁気相互作用によっても、出力側ロータ18にトルクを作用させることができ、出力側ロータ18を回転駆動することができる。このように、入力側ロータ28のロータ巻線30と出力側ロータ18の永久磁石33とが電磁気的に結合されていることで、ロータ巻線30で発生する回転磁界が出力側ロータ18に作用するのに応じて、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間にトルク(磁石トルク)が作用する。そのため、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間で動力(機械的動力)を伝達することができ、入力側ロータ28及び出力側ロータ18を誘導電磁カップリング部として機能させることができる。
【0029】
ロータ巻線30の誘導電流により入力側ロータ28と出力側ロータ18との間にトルク(以下、電磁カップリングトルクとする)を発生させる際には、電子制御ユニット50は、昇圧コンバータ94の出力電圧が蓄電装置42の電圧よりも高くなるように昇圧コンバータ94での昇圧比を制御する。これによって、昇圧コンバータ94から蓄電装置42とインバータ40間の配線へ電流が流れ、ロータ巻線30に誘導電流が流れるため、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に電磁カップリングトルクが作用する。その際には、電子制御ユニット50は、昇圧コンバータ94での昇圧比の制御によりロータ巻線30に流れる交流電流を制御することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に作用する電磁カップリングトルクを制御することができる(特許文献2,3も参照されたい)。一方、電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作を行わない状態で昇圧コンバータ94の出力電圧が蓄電装置42の電圧よりも低くなるように昇圧コンバータ94での昇圧比を制御することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に回転差が生じてもロータ巻線30に誘導電流が流れなくなり、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に電磁カップリングトルクは作用しなくなる。また、昇圧コンバータ94内のスイッチング素子をオフ状態に維持して昇圧コンバータ94による昇圧(電圧変換)を停止させることによっても、ロータ巻線30に誘導電流が流れなくなり、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に電磁カップリングトルクは作用しなくなる。
【0030】
また、インバータ41のスイッチング動作により複数相のロータ巻線30に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ロータ巻線30は、ロータ周方向に回転する回転磁界を発生する。そして、ロータ巻線30で発生した回転磁界と永久磁石33で発生した界磁束との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)により、入力側ロータ28にトルク(磁石トルク)を作用させることができ、入力側ロータ28を回転駆動することができる。一方、インバータ41のスイッチング素子をオフ状態に維持してスイッチング動作を停止させることで、ロータ巻線30に交流電流が流れなくなり、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間にトルクは作用しなくなる。このように、整流器93と昇圧コンバータ94とインバータ41とを含んで、スリップリング97及びブラシ98を介してロータ巻線30に交流電流が流れるのを許容または阻止するための駆動回路を構成することができる。
【0031】
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置の動作について説明する。
【0032】
エンジン36が動力を発生している場合は、エンジン36の動力が入力側ロータ28に伝達され、入力側ロータ28がエンジン回転方向に回転駆動する。クラッチ48が解放されている状態で、入力側ロータ28の回転速度が出力側ロータ18の回転速度より高くなると、ロータ巻線30に誘導起電力が発生する。電子制御ユニット50は、昇圧コンバータ94の出力電圧が蓄電装置42の電圧よりも高くなるように昇圧コンバータ94での昇圧比を制御することで、スリップリング97及びブラシ98を介してロータ巻線30に誘導電流(交流電流)が流れ、この誘導電流と永久磁石33の界磁束との電磁気相互作用により入力側ロータ28から出力側ロータ18にエンジン回転方向の電磁カップリングトルクが作用して出力側ロータ18がエンジン回転方向に回転駆動する。このように、入力側ロータ28に伝達されたエンジン36からの動力は、入力側ロータ28のロータ巻線30と出力側ロータ18の永久磁石33との電磁気結合によって、出力側ロータ18へ伝達される。出力側ロータ18に伝達された動力は、変速機44で変速されてから駆動軸37(車輪38)へ伝達されることで、車両の前進駆動等、負荷の正転駆動に用いられる。したがって、エンジン36の動力を用いて車輪38を正転方向に回転駆動することができ、車両を前進方向に駆動することができる。さらに、入力側ロータ28と出力側ロータ18との回転差を許容することができるため、車輪38の回転が停止してもエンジン36がストールすることはない。そのため、回転電機10を発進装置として機能させることができ、摩擦クラッチやトルクコンバータ等の発進装置を別に設ける必要がなくなる。
【0033】
さらに、ロータ巻線30に発生した交流電力は、スリップリング97及びブラシ98を介して取り出される。取り出された交流電力は整流器93で直流に整流され、整流された直流電力は昇圧コンバータ94で昇圧される。そして、昇圧コンバータ94からの直流電力がインバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20に供給されることで、ステータ16に回転磁界が形成される。このステータ16の回転磁界と出力側ロータ18の永久磁石32の界磁束との電磁気相互作用によっても、出力側ロータ18にエンジン回転方向のトルクを作用させることができる。これによって、出力側ロータ18のエンジン回転方向のトルクを増幅させるトルク増幅機能を実現することができる。また、昇圧コンバータ94からの直流電力を蓄電装置42に回収することも可能である。なお、昇圧コンバータ94のスイッチング動作を行うときは、インバータ41のスイッチング動作を行わない。
【0034】
さらに、蓄電装置42からステータ巻線20へ電力供給するようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、エンジン36の動力を用いて車輪38を正転方向に回転駆動するとともに、ステータ巻線20への供給電力を用いて発生させた出力側ロータ18の動力により車輪38の正転方向の回転駆動をアシストすることができる。また、負荷の減速運転時には、電子制御ユニット50は、ステータ巻線20から蓄電装置42へ電力回収するようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、負荷の動力をステータ巻線20と永久磁石32との電磁気結合によってステータ巻線20の電力に変換して蓄電装置42に回収することができる。
【0035】
また、クラッチ48を係合して入力側ロータ28と出力側ロータ18とを機械的に連結することで、ロータ巻線30に交流電流が流れず入力側ロータ28と出力側ロータ18との間にトルクが作用しなくても、エンジン36からの動力をクラッチ48を介して車輪38へ伝達することができ、エンジン36の動力を用いて車輪38を車両を前進方向に駆動することができる。
【0036】
また、エンジン36の動力を用いずに回転電機10の動力を用いて負荷を駆動する(車輪38を回転駆動する)EV(Electric Vehicle)走行を行う場合は、電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作を制御することで、負荷の駆動制御を行う。例えば、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力を交流に変換してステータ巻線20へ供給するように、インバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20への供給電力をステータ巻線20と永久磁石32との電磁気結合によって出力側ロータ18の動力に変換し、駆動軸37(車輪38)を回転駆動する。このように、エンジン36が動力を発生していなくても、ステータ巻線20への電力供給により車輪38を回転駆動することができる。なお、EV走行を行う場合は、クラッチ48を解放状態に制御する。
【0037】
また、エンジン36を始動する場合は、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力をインバータ41で交流に変換してスリップリング97及びブラシ98を介してロータ巻線30へ供給するように、インバータ41のスイッチング動作を制御することで、ロータ巻線30への供給電力を用いてエンジン36のクランキングを行うことができる。このように、ロータ巻線30には、エンジン36を始動するための交流電力が供給される。エンジン36のクランキングの際には、入力側ロータ28の回転磁界と出力側ロータ18の永久磁石33の界磁束との電磁気相互作用によりエンジン36に繋がる入力側ロータ28にトルクを作用させるが、出力側ロータ18もその反力トルクを受けることになる。そのため、EV走行時にエンジン36を始動する場合は、蓄電装置42からステータ巻線20へ電力供給して出力側ロータ18にこの反力トルクを打ち消すトルクを作用させるようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20への供給電力を用いて出力側ロータ18を回転駆動することができる。なお、エンジン36を始動する場合は、クラッチ48を解放状態に制御する。また、インバータ41のスイッチング動作を行うときは、昇圧コンバータ94のスイッチング動作を行わない。
【0038】
本実施形態において、入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に作用するトルクによりエンジン36の動力を車輪38へ伝達する際には、ロータ巻線30に交流電流が流れることで入力側ロータ28が発熱する。そこで、入力側ロータ28の過熱を防止するために、入力側ロータ28のロータ巻線30にオイル等の冷却用液体を供給して冷却を行う。また、ロータ巻線30に交流電流を流すためには、ロータ巻線30を電気的配線を介してスリップリング97に電気的に接続する必要がある。その際には、入力軸34に配線穴を設け、この配線穴に電気的配線を通してロータ巻線30とスリップリング97を接続することが考えられる。ただし、その場合は、ロータ巻線30に供給された冷却用液体が電気的配線を伝ってスリップリング97に付着しやすくなる。スリップリング97とブラシ98の摺動部に冷却用液体が付着すると、ブラシ98の異常磨耗や、スリップリング97とブラシ98の電気的接触不良が生じやすくなる。そこで、ロータ巻線30に供給された冷却用液体が電気的配線を伝ってスリップリング97とブラシ98の摺動部に付着するのを防止することが望ましい。以下、そのための構成例について、図5を用いて説明する。
【0039】
図5に示す構成例では、スリップリングモジュール95は、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28と間隔をおいて入力軸34に取り付けられている。図5では、説明の便宜上、入力側ロータ28の図示を省略しているが、実際は、図5におけるケースハウジング80より右側の位置に入力側ロータ28が配置される。スリップリングモジュール95は、入力軸34の外周に固定された樹脂等による略円筒形状の絶縁部材90と、絶縁部材90の外周に設けられ、ブラシ98と電気的に接触するスリップリング97と、絶縁部材90の内部にロータ回転軸方向に沿って設けられ、スリップリング97に電気的に接続されたブスバー99と、を有する。スリップリング97及びブスバー99の材料については、例えば銅等の電気伝導率の良い金属が主成分として使用される。ロータ巻線30がu相ロータ巻線とv相ロータ巻線とw相ロータ巻線とによる3相巻線である例では、ロータ巻線30の各相毎に対応して設けられたスリップリング97u,97v,97wが、ロータ回転軸方向に関して互いに間隔をおいて配置されている。ブラシモジュール96は、ロータ巻線30の各相毎に対応して設けられ、整流器93及びインバータ41と電気的に接続されたブラシ98u,98v,98wと、ブラシ98u,98v,98wを保持するブラシホルダ88u,88v,88wと、ブラシ98u,98v,98wの放熱を行うための放熱板89u,89v,89wと、を有する。ブラシ98u,98v,98wは、ロータ回転軸方向に関して互いに間隔をおいて配置されており、スリップリング97u,97v,97wとそれぞれ電気的に接触する。
【0040】
ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28とブラシモジュール96との間の位置には、ステータ16が固定されたケースハウジング80が位置しており、さらに、ロータ回転軸方向に関してケースハウジング80とブラシモジュール96との間の位置には、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28とブラシ98u,98v,98wとを仕切るための仕切部材82が設けられている。ブラシモジュール96は仕切部材82に取り付けられており、仕切部材82はケースハウジング80に取り付けられている。ケースハウジング80及び仕切部材82には、入力軸34を通すための開口穴が設けられており、入力軸34は、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28側からケースハウジング80及び仕切部材82の開口穴を通ってブラシモジュール96側へ延びている。スリップリングモジュール95は、ロータ回転軸方向に関してブラシモジュール96側から仕切部材82の開口穴を通ってケースハウジング80側(入力側ロータ28側)に張り出している。仕切部材82においては、オイルシール等のシール部材84が取り付けられ、ロータ巻線30に供給された冷却用液体をシール部材84により密封する。スリップリングモジュール95においては、仕切部材82の開口穴を通る位置の外周にリング状の摺動部材86が設けられており、スリップリングモジュール95の回転時には、摺動部材86がシール部材84に対して摺動する。
【0041】
入力軸34には、溝78がロータ回転軸方向に沿って形成されており、この溝78は、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28側からケースハウジング80の開口穴を通ってスリップリングモジュール95側へ延びている。u相ロータ巻線30と電気的に接続されたu相ロータ巻線30側の接続端子としてのブスバー79は、この溝78を通ってロータ回転軸方向に沿って延びている。スリップリング97uと電気的に接続されたブスバー99は、ロータ回転軸方向に関してスリップリング97u側からシール部材84と入力軸34との間(仕切部材82の開口穴)の位置を通って入力側ロータ28側に張り出しており、この張り出した部分99aにてブスバー79と電気的に接続されている。これによって、スリップリング97uとu相ロータ巻線30とを、入力軸34に配線穴を形成して電気的配線を通すことなく、ブスバー99,79を介して電気的に接続することができる。図5に示す例では、ブスバー79は、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28側からケースハウジング80と入力軸34との間(ケースハウジング80の開口穴)の位置を通ってスリップリング97u側に張り出しており、この張り出した部分79aにてブスバー99(入力側ロータ28側に張り出した部分99a)と電気的に接続されている。絶縁部材90は、ブスバー99における少なくともシール部材84と入力軸34との間(仕切部材82の開口穴)を通る部分99bを封止する。図5に示す例では、絶縁部材90は、ブスバー99におけるシール部材84と入力軸34との間(摺動部材86と入力軸34との間)を通る部分99bの他に、ブスバー99におけるこの部分99bよりスリップリング97u側の部分99cをさらに封止する。つまり、絶縁部材90は、ブスバー99における入力側ロータ28側に張り出した部分99aを除いて封止する。
【0042】
なお、図5では、スリップリング97uとu相ロータ巻線30(ブスバー79)との電気的接続構造を示しており、スリップリング97vとv相ロータ巻線30との電気的接続構造、及びスリップリング97wとw相ロータ巻線30との電気的接続構造については、図示を省略しているが、スリップリング97uとu相ロータ巻線30との電気的接続構造と同様の構造である。すなわち、スリップリング97vと電気的に接続されたブスバー99、及びスリップリング97wと電気的に接続されたブスバー99も、ロータ回転軸方向に関してスリップリング97側からシール部材84と入力軸34との間の位置を通って入力側ロータ28側に張り出しており、この張り出した部分99aにて、v相ロータ巻線側の接続端子(v相ロータ巻線30と電気的に接続されたブスバー)79、及びw相ロータ巻線側の接続端子(w相ロータ巻線30と電気的に接続されたブスバー)79とそれぞれ電気的に接続されている。そして、v相ロータ巻線側の接続端子79、及びw相ロータ巻線側の接続端子79も、ロータ回転軸方向に関して入力側ロータ28側からケースハウジング80と入力軸34との間の位置を通ってスリップリング97側に張り出しており、この張り出した部分79aにて、スリップリング97vと電気的に接続されたブスバー99、及びスリップリング97wと電気的に接続されたブスバー99とそれぞれ電気的に接続されている。絶縁部材90は、これらのブスバー99における少なくともシール部材84と入力軸34との間を通る部分99bを封止する。そして、絶縁部材90は、これらのブスバー99におけるシール部材84と入力軸34との間を通る部分99bの他に、これらのブスバー99におけるこの部分99bよりスリップリング97側の部分99cをさらに封止する。
【0043】
以上説明した図5に示す構成例では、冷却のためにロータ巻線30に供給されたオイル等の冷却用液体は、ロータ巻線30側のブスバー79には付着する。ただし、ロータ巻線30及びブスバー79と、スリップリング97及びブラシ98とが、仕切部材82及びシール部材84により互いに仕切られており、さらに、スリップリング97側のブスバー99におけるシール部材84と入力軸34との間を通る部分99bが絶縁部材90によって封止されているため、ブスバー79に付着した冷却用液体がブスバー99を伝ってスリップリング97に付着するのを防止することができる。したがって、本実施形態によれば、ロータ巻線30に供給された冷却用液体がスリップリング97とブラシ98の摺動部に付着するのを防止することができ、ブラシ98の異常摩耗、及びスリップリング97とブラシ98の電気的接触不良を防止することができる。さらに、本実施形態では、絶縁部材90によって、ブスバー99におけるシール部材84と入力軸34との間を通る部分99bの他に、ブスバー99におけるこの部分99bよりスリップリング97側の部分99cもさらに封止することで、ブスバー79に付着した冷却用液体がブスバー99を伝ってスリップリング97に付着するのをさらに確実に防止することができる。
【0044】
また、スリップリング97をロータ巻線30に電気的に接続するためには、スリップリングモジュール95側のブスバー99をロータ巻線30側のブスバー79に電気的に接続する必要がある。ここで、スリップリングモジュール95側のブスバー99とロータ巻線30側のブスバー79との電気的接続部分を、スリップリング97より外側(ロータ巻線30と反対側、図5の左側)に配置すると、その分、回転電機10のロータ回転軸方向長さが増加する。これに対して本実施形態では、スリップリングモジュール95側のブスバー99とロータ巻線30側のブスバー79との電気的接続部分を、スリップリング97より内側(ロータ巻線30側、図5の右側)に配置することができる。その結果、回転電機10のロータ回転軸方向長さを短縮することができる。
【0045】
本実施形態では、回転電機10の入力軸34と出力軸24とを入れ替えることもでき、第2ロータ18を入力軸34に機械的に連結し、第1ロータ28を出力軸24に機械的に連結することもできる。すなわち、第2ロータ18がエンジン36に機械的に連結され、第1ロータ28が車輪38に機械的に連結されていてもよい。この場合は、エンジン36からの動力が入力軸34に連結された第2ロータ18に伝達され、出力軸24に連結された第1ロータ28からの動力が車輪38に伝達されるため、第2ロータ18が入力側ロータとなり、第1ロータ28が出力側ロータとなる。
【0046】
また、本実施形態の構成は、ステータ16が省略され、ロータ巻線30が配設された第1ロータ28と第2ロータ18との間にトルクが作用する回転電機に対しても適用可能である。また、本実施形態の構成は、第2ロータ18が省略され、ステータ16とロータ巻線30が配設された第1ロータ28との間にトルクが作用する回転電機に対しても適用可能である。また、本実施形態の構成は、スリップリング97及びブラシ98を介してロータ巻線30に直流電流が流れる回転電機に対しても適用可能であり、その場合は、スリップリング97、ブラシ98、及びブスバー99がそれぞれ2つずつ設けられる。このように、本実施形態の構成は、回転子に回転子導体が配設され、スリップリング及びブラシを介して回転子導体に電流が流れる回転電機に対して適用可能である。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 回転電機、16 ステータ、18 第2ロータ(出力側ロータ)、20 ステータ巻線、24 出力軸、28 第1ロータ(入力側ロータ)、30 ロータ巻線、32,33 永久磁石、34 入力軸、36 エンジン、37 駆動軸、38 車輪、40,41 インバータ、42 蓄電装置、44 変速機、48 クラッチ、50 電子制御ユニット、79,99 ブスバー、80 ケースハウジング、82 仕切部材、84 シール部材、86 摺動部材、90 絶縁部材、93 整流器、94 昇圧コンバータ(DC−DCコンバータ)、95 スリップリングモジュール、96 ブラシモジュール、97 スリップリング、98 ブラシ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられ、冷却用液体が供給される回転子導体が配設された回転子と、
回転軸方向に関して回転子と間隔をおいて回転軸に取り付けられ、ブラシと電気的に接触するスリップリングと、スリップリングに電気的に接続されたブスバーと、を有するスリップリングモジュール部材と、
回転子とブラシとを仕切るための仕切部材であって、シール部材が取り付けられ、回転子導体に供給された冷却用液体をシール部材により密封する仕切部材と、
を備え、
ブスバーは、シール部材と回転軸との間を通って回転子側に張り出し、当該張り出した部分にて回転子導体側の接続端子と電気的に接続され、
スリップリングモジュール部材は、ブスバーにおける少なくともシール部材と回転軸との間を通る部分を封止するための封止部材をさらに有する、回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
封止部材は、ブスバーにおけるシール部材と回転軸との間を通る部分の他に、ブスバーにおける当該部分よりスリップリング側の部分をさらに封止するための部材である、回転電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機であって、
仕切部材がケースハウジングに取り付けられ、
回転子導体側の接続端子は、ケースハウジングと回転軸との間を通ってスリップリング側に張り出し、当該張り出した部分にてブスバーと電気的に接続されている、回転電機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の回転電機であって、
ブラシを有するブラシモジュール部材が仕切部材に取り付けられている、回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の回転電機であって、
交流電流が流れることで回転磁界を発生可能な固定子導体が配設された固定子と、
前記回転子導体が配設された回転子である第1回転子に対し相対回転可能であり、回転子導体に交流電流が流れることで発生した回転磁界が作用するのに応じて第1回転子との間にトルクが作用し、固定子導体で発生した回転磁界が作用するのに応じて固定子との間にトルクが作用する第2回転子と、
をさらに備える、回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−250620(P2011−250620A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122528(P2010−122528)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】