説明

回転電気

【課題】簡便な構成でコイルと冷却油の耐熱保護を行うこと。
【解決手段】回転軸が水平方向に設置されるロータ30と、冷却油がコイルエンド22の重力方向上側から吹き掛けられるステータ20と、を備えるモータジェネレータ100であって、コイルエンド22の外周面で、ロータ30の回転軸60を含む水平面近傍の位置に配置される温度センサ23と、温度センサ23の外周側に配置され、重力方向上側に向かって延びるセンサガイド24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電機、モータジェネレータ等の回転電機では、運転の際にステータの巻線温度が上昇するので、巻線に温度センサを押し付けてその温度を計測する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、近年、ロータに磁石を埋め込んだ交流モータや交流モータジェネレータも多く用いられるようになってきている。このようにロータに磁石を埋め込んだ回転電機では、運転の際にはロータの磁石の温度が上昇するのでロータ内部に磁石に沿った冷却油を流す冷却油流路を設け、磁石を冷却することが行われている。一方、磁石はロータと共に回転していることから、その温度を直接測定することが難しい。そこで、磁石の冷却油を出口からステータに取り付けた温度センサに向かって半径方向に噴出させ、磁石を冷却して温度の上昇した冷却油の温度を温度センサで検出することによって磁石の温度を推定し、磁石の冷媒流量を増減させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、ロータの内部に冷却油流路を設け、ロータからステータのコイルエンドに向かって冷却油を半径方向に向かって吹き掛けて、コイルエンドを冷却する方法も用いられている(例えば、特許文献3参照)。この場合、効果的にコイルエンドに冷却油がかかる様に、コイルエンドに冷却油をガイドするガイド部材を取り付けることが提案されている。また、特許文献3では、コイルエンドの冷却油の掛かりにくい部分に温度センサを取り付けてコイルエンドの最も高い温度を検出してコイルエンドの耐熱保護を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92858号公報
【特許文献2】特開2008−178243号公報
【特許文献3】特開2009−284718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の回転電機では、ステータをより効率的に冷却するためにステータのコイルエンドの鉛直上方向からコイルエンドに向って冷却油を吹きかける方法が用いられることが多い。この場合、コイルと冷却油の両方の耐熱保護を行うために、コイルの温度が所定の上限温度未満の状態でかつ、冷却油の温度が所定の上限温度未満の状態となるように、回転電機の負荷を制限することが行われる。また、冷却油の流量を変化させる場合には、コイルの温度が所定の温度範囲となることと、冷却油の温度が所定の温度範囲となるように制御することが必要となる。例えば、コイルの温度が低い場合には冷却油の流量は少なく、コイルの温度が上昇するにつれて冷却油の流量は多くなるように制御する。更に、コイルの温度が上昇するにつれて冷却油自体の温度が上昇してくると、冷却油自体の温度が耐熱限界温度未満となるように冷却油の流量を低減させるように制御する。つまり、冷却油の温度が低い場合には、コイル温度によって冷却油の流量が決まり、冷却油の温度がある程度高くなってくると冷却油自体の温度によって冷却油の流量が決まってくることとなる。
【0006】
この場合、コイルの温度と冷却油の温度の双方の温度を検出することが必要となる。しかし、特許文献1から3に記載された従来技術は、コイルの温度又は冷却油の温度のいずれか一方を計測することしか示されておらず、コイルの温度と冷却油自体の温度とを検出しようとすると複数の温度センサを設けることが必要となり構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡便な構成でコイルと冷媒の耐熱保護を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転電機は、回転軸が水平方向に設置されるロータと、冷却用の冷媒がコイルエンドの重力方向上側から吹き掛けられるステータと、を備える回転電機であって、前記コイルエンドの外周面で、前記ロータの回転中心を含む水平面近傍の位置に配置される温度センサと、前記温度センサの外周側に配置され、重力方向上側に向かって延びるセンサガイドと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の回転電機において、前記回転電機の負荷を制限する制御部を備え、前記制御部は、前記冷媒の流量が所定の閾値未満の場合には、前記温度センサで検出した温度がコイルエンドの上限温度を超えないように前記回転電機の負荷を制限し、前記冷媒の流量が前記所定の閾値以上の場合には、前記温度センサで検出した温度が前記冷媒の上限温度を超えないように前記回転電機の負荷を制限することとしても好適である。また、前記制御部は、前記冷媒の流量を増減させ、前記冷媒の流量が所定の閾値未満の場合には、前記温度センサで検出した温度がコイルエンドの上限温度を超えないように前記冷媒の流量を増減させ、前記冷媒の流量が所定の閾値以上の場合には、前記温度センサで検出した温度が冷媒の上限温度を超えないように前記冷媒の流量を増減させること、としても好適である。
【0010】
本発明の回転電機において、前記センサガイドは、前記コイルエンドと離間して配置され、前記コイルエンドの外周面を斜め下方向に広がるように流れる冷媒の少なくとも一部の流れ方向を前記温度センサに向うように変更すること、としても好適であるし、前記温度センサは、前記コイルエンド表面の温度と前記冷媒の温度のいずれか一方又は両方を計測することができること、としても好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、簡便な構成でコイルと冷媒の耐熱保護を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるモータジェネレータのコイルエンド側のカバーをはずした状態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの制御系統を示す系統図である。
【図3】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの流量が少ない場合の冷却油の流れを示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの流量が多い場合の冷却油の流れを示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの出力制限カーブの一例である。
【図7】本発明の実施形態におけるモータジェネレータの他の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、回転電機の一例としてモータジェネレータ(MG)100について説明するが、本発明は、モータジェネレータ(MG)100のみならず、電動機や発電機などに適用することができる。図1に示す様に、本実施形態のモータジェネレータ100は、ケーシング10と、ステータ20と、ロータ30とを含んでおり、モータジェネレータ100は、ロータ30の回転軸60が水平となるように電動車両等に取り付けられている。また、図1において、中心軸61は、回転軸60を通る垂直方向の軸であり、中心軸62は回転軸60を通る水平方向の中心軸である。ステータ20は、巻線が巻回されているステータコア21と、ステータコアの端面からロータ30の回転軸60の方向に突出し、ステータコアのティースの間を渡っているコイルエンド22を備えている。コイルエンド22はその断面が山形或いは略半円状の円環形状である。ケーシング10の内部には、モータジェネレータ100を駆動する三相交流電力を供給したり、モータジェネレータ100の発電した三相交流電力を出力したりする3つの電力端子26,27,28が取り付けられ、各電力端子26,27,28はステータ20の各相の巻線に接続されている。
【0014】
ステータ20の水平方向の中心軸61の面内の近傍で環状のコイルエンド22の外周面に接するように、温度センサ23が取り付けられている。温度センサ23のコイルエンド22と反対側の面には温度センサ23から略垂直上方向にセンサガイド24が取り付けられている。センサガイド24は温度センサ23に接続されるセンサコード25を温度センサ23に向ってコイルエンド22の略接線方向に沿った方向にガイドするもので、センサコード25を囲み、コイルエンド22の側に開いた溝型の板でも良いし、センサコード25の全周を囲む箱型断面であっても良い。センサガイド24から延出したセンサコード25はステータコア21の端面に沿って配線され、電力端子26,27,28に隣接する位置からケーシング10の外部に向って配線されている。
【0015】
なお、図1は、コイルエンド22側のケーシング10のカバーを外し、ケーシング10
の内部に格納されたステータ20、ロータ30が見えるような状態を示した説明図であり、手前側に配置された部品については図示されていないが、コイルエンド22の略垂直上方には冷媒である冷却油をコイルエンド22の略垂直上方からコイルエンド22上方側面に向って吹き掛ける冷却油ノズルが取り付けられている。そして、上側から吹き掛けられた冷却油はコイルエンド22の表面に沿って下側に流れケーシング10の下部に設けられた穴11から図示しないオイルパンに落ちるよう構成されている。
【0016】
図2に示す様に、本実施形態のモータジェネレータ100は、図1を参照して説明したステータ20と、ロータ30とを備えており、ステータ20の回転軸60側の端面には回転軸60の方向に突出したコイルエンド22が配置され、ロータ30の回転軸60を含む水平面近傍のコイルエンド22の側面には温度センサ23が取り付けられ、温度センサ23は重力方向上方に延びるセンサガイド24によってカバーされている。図2に示す様に、センサガイド24とコイルエンド22との間には隙間が設けられている。また、温度センサ23から延出したセンサコード25は、制御部50に接続され、検出した温度は制御部50に入力されるよう構成されている。また、モータジェネレータ100の各電力端子26,27,28はそれぞれ電力ケーブルでインバータ29に接続されている。インバータ29には図示しない充放電可能な二次電池からの電力が入力され、モータジェネレータ100を駆動する三相交流電力に変換されてモータジェネレータ100に出力される。また、モータジェネレータ100で発電した三相交流電力はインバータ29によって直流電力に変換されて二次電池に充電される。インバータ29は制御部50に接続され、制御部50の指令によって駆動されるよう構成されている。
【0017】
図2に示すように、モータジェネレータ100は、コイルエンド22の冷却を行う冷却システム200を備えている。冷却システム200は、冷媒である冷却油を貯留するオイルパン34と、オイルパン34に溜まった冷却油をコイルエンド22の略垂直上方に配置された冷却油ノズル33に送る冷却油ポンプ31と、冷却油ノズル33からコイルエンド22に吹き掛けられる冷却油の流量を調整する三方弁32と、冷却油ポンプ31とオイルパン34とを接続する冷却油吸込み管35と、冷却油ポンプ31の吐出口に接続される冷却油吐出管36とを備えている。冷却油ポンプ31は、ロータ30に接続され、ロータ30によって回転駆動されるものである。冷却油ポンプ31はロータ30に機械的に接続され、ロータ30の回転数に比例して回転し、ロータ30の回転数に比例して吐出流量が増減するような構造でも良いし、単にロータ30の回転数に比例して流量が増減するのではなく、例えば、流体継ぎ手等によって冷却油ポンプ31の回転数を独立して制御することができるようにしてもよい。また、コイルエンド22に吹き掛ける冷媒油の流量は冷却油ポンプ31の流量がロータ30の回転数によって決まってしまう場合には、図2に示す三方弁32によって一部の冷却油を直接オイルパン34に戻したり、他の部品の冷却に回すようにしたりして調整しても良い。冷却油ポンプ31の流量が独立して調整できる場合には、冷却油ポンプ31は制御部50に接続され、制御部50の指令によって流量を増減させることができるよう構成されていてもよい。なお、制御部50は、内部にCPUと制御プログラムや制御用データを格納する記憶部を備えるコンピュータである。
【0018】
図3から図5を参照しながら本実施形態のモータジェネレータ100が電動車両に搭載されている場合の動作について説明する。図5のステップS101に示す様に、制御部50は、モータジェネレータ100が搭載されている電動車両が始動しているかどうかを判断する。これは、イグニッションキーがオン状態となっていることで検出しても良いし、始動スイッチが押されていることによって検出するようにしてもよい。制御部50は、電動車両が始動している場合には、図5のステップS102に示すようにコイルエンド22に吹き掛けられる冷却油の流量を取得する。これは、冷却油ポンプ31の流量がロータ30の回転数に比例するような場合にはロータ30の回転数によって冷却油流量を取得しても良いし、冷却油ポンプ31の回転数を直接検出する回転数センサがある場合には、その回転数センサの出力によって冷却油流量を取得しても良いし、冷却油ポンプ31の回転数を制御部50の指令によって制御している場合には、その指令値から冷却油流量を取得してもよい。更に、上記の各値に加えて、図2に示す三方弁32の開度信号を加え、冷却油ポンプ31の吐出流量の一部が冷却油ノズル33からコイルエンド22に吹き掛けられていない場合には、その分だけ冷却油の流量を減じた量を冷却油流量としてもよい。
【0019】
そして、制御部50は、図5のステップS103に示す様に、上記のいずれかの手段によって取得した信号値と所定の閾値とを比較して冷却油流量が閾値未満かどうかを判断する。冷却油流量が所定の閾値未満の場合、図3に示す様に、冷却油ノズル33からコイルエンド22の上側の側面に吹き掛けられた冷却油は図3(a)の矢印で示すようにコイルエンド22の頂上部から下方向にコイルエンド22の表面に沿って落下すると共に、コイルエンド22の外周に沿って頂上近傍から水平方向に回りながら下方向に落下する。そして、コイルエンド22の回転軸60方向に突出した端面から下方向に落下した冷却油の一部は、コイルエンド22下部の突出した部分の表面を流れてコイルエンド22の下部を冷却し、オイルパン34に落下する。
【0020】
また、図3(b)の矢印で示す様に、コイルエンド22は断面が略半円形の円環となっているので、コイルエンド22の厚さ方向の中央の頂上部に吹き掛けられた冷却油は、コイルエンド22の表面に沿ってコイルエンド22の回転軸60の方向に突出した端面と反対側のステータコア21側の端面とに向って流れていく。そして、冷却油の流量が所定の閾値未満の場合には、図3(a)、図3(b)に示す様に、コイルエンド22の水平方向の中央部分のハッチングで示す領域41の表面のみを流れ、図3(a),図3(b)に示すハッチングの無いコイルエンド22の領域には冷却油はかからない。このため、コイルエンド22の冷却油のかからない領域の表面に接している温度センサ23は、コイルエンド22の温度を検出することとなる。
【0021】
図5のステップS104に示す様に、制御部50は、温度センサ23によって検出した温度を取得する。制御部50は、先に説明したように、冷却油の流量が所定の閾値未満となっていると認識していることから、検出した温度はコイルエンド22の温度であると判断し、図5のステップS105,S106に示す様に、コイルの温度に基づく負荷制限を行う。制御部50はコイルの温度に基づく負荷制限を行う場合には、図6の線aに示す制限曲線を用いてモータジェネレータ100に供給する電力或いはモータジェネレータ100が発電する電力を制限する。図6の線aに示す様に、検出した温度が所定の閾値である温度T2を超えると、それまで全負荷P0まで許可していたモータジェネレータ100への電力供給或いは出力電力を全負荷P0から線aに示すように温度の上昇に伴って低下させていく。この場合、アクセル開度や車速によってより大きな出力が要求された場合であっても、モータジェネレータ100への負荷指令値を図6の線aによって制限される出力以上としないように制御する。ここで、閾値である温度T2は、コイル温度に基づく負荷制限開始温度である。
【0022】
制御部50は図5のステップS106に示す負荷制限を開始したら、再び図5のステップS105に戻って温度センサ23の検出した温度が所定の閾値T2を超えているかとどうかを判断し、温度センサ23によって検出した温度が所定の閾値T2よりも低くなるまでモータジェネレータ100の負荷制限を継続し、温度センサ23によって検出した温度が所定の閾値T2よりも低くなったら、図5のステップS107に示す様に、コイル温度に基づくモータジェネレータ100の負荷制限を停止し、図5のステップS102に戻って冷却油の流量を取得し、図5のステップS103に示すように冷却油流量が所定の閾値未満かどうかの判断を行う。
【0023】
冷却油流量が所定の閾値以上の場合、図3を参照して説明したと同様、冷却油ノズル33からコイルエンド22の上側の側面に吹き掛けられた冷却油は図4(a)に矢印で示す様に、コイルエンド22の頂上部から下方向にコイルエンド22の表面に沿って落下すると共に、コイルエンド22の外周に沿って頂上近傍から水平方向に回りながら下方向に落下する。図3(a)を参照して説明した場合よりも冷却油の流量が多く、流速が早いので、冷却油は、図3(a)を参照して説明した場合よりもより水平方向に広がって流れる。従って、コイルエンド22の端面の冷却油が流れる領域は図3(a)で示した領域41よりもより水平方向に広がったハッチングで示す領域43となっている。図4(a)に示すように、冷却油流量が所定の閾値以上の場合には、コイルエンド22の水平方向の両端を除いて回転軸60の方向に突出した端面のほとんどの領域に冷却油が上から下に向って流れる。そして、コイルエンド22の回転軸60方向に突出した端面から下方向に落下した冷却油の一部は、コイルエンド22下部の突出した部分の表面を流れてコイルエンド22の下部を冷却し、オイルパン34に落下する。
【0024】
また、冷却油ノズル33からコイルエンド22の外周面の接線方向に向って吹き掛けられた冷却油の一部は、図4(a)の矢印で示す様に、コイルエンド22の外周面に沿って流れずに、コイルエンド22の外周から接線方向に向かってコイルエンド22の外周面から離れるように斜め下方向に直線的に飛散していく。図4(a)に示す様に、飛散した冷却油は、センサガイド24のコイルエンド22の側の面に当たり、センサガイド24のコイルエンド22側の面に沿って下方向に流れ、温度センサ23の表面を流れた後、オイルパン34の中に落下する。
【0025】
また、図4(b)の矢印で示す様に、コイルエンド22の厚さ方向の中央の頂上部に吹き掛けられた冷却油は、図3(b)を参照して説明したのと同様、コイルエンド22の表面に沿ってコイルエンド22の回転軸60の方向に突出した端面と反対側のステータコア21側の端面とに向って流れていく。そして、冷却油の流量が所定の閾値以上の場合には、冷却油の流速が早いので、冷却油は、図3(b)で示した領域41よりもより広いハッチングで示す領域43の表面を下方向に向って流れていく。そして、図4(a)を参照して説明したと同様、冷却油の一部は、コイルエンド22の外周から接線方向に向かってコイルエンド22の外周面から離れるように飛散し、図4(b)に示す様に、コイルエンド22の厚さ方向の中央部に配置されているセンサガイド24のコイルエンド22の側の面に当たり、センサガイド24のコイルエンド22側の面に沿って下方向に流れ、温度センサ23の表面を流れた後、オイルパン34の中に落下する。このため、温度センサ23には常に冷却油が掛かっており、温度センサ23は、冷却油の温度を検出することとなる。通常、この検出温度は、コイルの温度よりも低い温度となる。
【0026】
図5のステップS108に示す様に、制御部50は、温度センサ23によって検出した温度を取得する。制御部50は、先に説明したように、冷却油の流量が所定の閾値以上となっていると認識していることから、検出した温度は冷却油温度であると判断し、図5のステップS109,S110に示す様に、冷却油温度に基づく負荷制限を行う。制御部50は冷却油温度に基づく負荷制限を行う場合には、図6の線bに示す制限曲線を用いてモータジェネレータ100に供給する電力或いはモータジェネレータ100の発電する電力を制限する。図6の線bに示す様に、検出した温度が所定の閾値である温度T1を超えると、それまで全負荷P0まで許可していたモータジェネレータ100への電力供給或いは出力電力を全負荷P0から線bに示すように温度の上昇に伴って低下させていく。この場合、アクセル開度や車速によってより大きな出力が要求された場合であっても、モータジェネレータ100への負荷指令値を図6の線bによって制限される出力以上としないように制御する。ここで、閾値である温度T2は、冷却油温度に基づく負荷制限開始温度であり、先に説明したコイル温度に基づく負荷制限開始温度T2よりも低い温度となっている。
【0027】
制御部50は図5のステップS110に示す負荷制限を開始したら、再び図5のステップS109に戻って温度センサ23の検出した温度が所定の閾値T1を超えているかとどうかを判断し、温度センサ23によって検出した温度が所定の閾値T1よりも低くなるまでモータジェネレータ100の負荷制限を継続し、温度センサ23によって検出した温度が所定の閾値T1よりも低くなったら、図5のステップS111に示す様に、冷却油温度に基づくモータジェネレータ100の負荷制限を停止し、図5のステップS102に戻って冷却油の流量を取得し、図5のステップS103に示すように冷却油流量が所定の閾値未満かどうかの判断を行う。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のモータジェネレータ100では、冷却油の流量が少なく、温度センサ23に冷却油が掛からない場合には、温度センサ23でコイルの温度を検出し、コイル温度に基づいた出力制限カーブによりモータジェネレータ100の出力制限を行い、冷却油の流量が多く、冷却油が常に温度センサ23に掛かる場合には、温度センサ23で冷却油温度を検出し、冷却油温度基づいた出力制限カーブによりモータジェネレータ100の出力制限を行うことができる。このため、1つの温度センサでコイル温度と冷却油温度とを的確に検出することができ、簡便な構成でコイルと冷却油の耐熱保護を行うことができる。
【0029】
次に図7を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、モータジェネレータ100の冷却油ポンプ31の吐出流量がロータ30の回転と独立して制御することができる場合である。また、図1から図6を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0030】
図7のステップS201に示す様に、制御部50は、モータジェネレータ100が搭載されている電動車両が始動しているかどうかを判断し、電動車両が始動している場合には、図7のステップS201に示す様に、冷却油流量を取得する。本実施形態では、冷却油ポンプ31の吐出量は、制御部50からの指令によって制御され、三方弁32の開度も制御部50の指令によって制御されていることから、制御部50は、冷却油ポンプ31の駆動指令値と三方弁32の開度指令値に基づいて冷却油の流量を取得する。そして、図7のステップS203に示す様に、その流量を所定の閾値と比較し、所定の閾値未満である場合には、冷却油の流量は少なく、図3に示したようにコイルエンド22の中央部分のみに冷却油が掛かり、温度センサ23はコイル温度を検出しているものと判断する。そして、制御部50は、図7のステップS204に示す様に、温度センサ23からの温度を取得し、温度センサ23で検出した温度がある閾値、例えば、コイルの上限温度より少し低い温度、を超えた場合には、コイルエンド22の温度が上限温度に近づくと判断し、図7のステップS206に示す様に、冷却油ポンプ31の流量を増加させる指令を出力する。
【0031】
制御部50は、図7のステップS207に示す様に、再度、冷却油の流量を取得し、図7のステップS208に示すように、冷却油流量が所定の閾値未満かどうかを判断する。そして、冷却油流量が所定の閾値未満の場合には、冷却油は図3に示す様に温度センサ23には掛からず、温度センサ23はコイルの温度を検出していると判断し、図7のステップS205に戻って、コイル温度の閾値と検出した温度とを比較し、検出した温度が閾値を超えている場合には、再度、図7のステップS207に示す様に冷却油の流量を増加させる。また、温度センサ23で検出した温度がコイル温度の閾値よりも低くなっている場合には、図7のステップS212に示す様に、冷却油の流量を低減し、図7のステップS202に戻って、再度、冷却油流量を取得する。
【0032】
一方、制御部50は、図7のステップS208で冷却油流量が所定の閾値を超えていると判断した場合には、冷却油は、図4を参照して説明したように流れて常に温度センサ23に掛かっており、温度センサ23はコイルよりも温度の低い冷却油の温度を検出していると判断する。そして、制御部50は、図7のステップS209で温度センサ23から検出温度を取得し、図7のステップS210に示す様に、温度センサ23によって検出した温度と冷却油の所定の閾値、例えば、冷却油の劣化しない上限温度よりも少し低い温度等、と比較し、検出した温度がこの冷却油閾値を超えた場合には、図7のステップS211に示す様に冷却油の流量を増加させる。そして、再度、図7のステップS210に戻って冷却油温度と冷却油閾値とを比較し、冷却油温度が冷却油閾値よりも低くなっていた場合には、図7のステップS213に示すように冷却流量を低減し、図7のステップS202に戻って再度冷却油流量を取得する。
【0033】
本実施形態では、温度センサ23の検出温度がコイル、冷却油の各閾値を超えた場合に冷却油の流量を増加させてコイル、冷却油の各温度を低減するようにしたので、1つの温度センサ23という簡便な構成でコイルと冷却油の耐熱保護を行うことができる。また、温度センサ23の検出温度がコイル、冷却油の各閾値を超えた場合に冷却油の流量を増加させてコイル、冷却油の各温度を低減すると共に、先に説明した実施形態のように、モータジェネレータ100の出力制限を行う様にしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 ケーシング、11 穴、20 ステータ、21 ステータコア、22 コイルエンド、23 温度センサ、24 センサガイド、25 センサコード、26,27,28 電力端子、29 インバータ、30 ロータ、31 冷却油ポンプ、32 三方弁、33 冷却油ノズル、34 オイルパン、35 冷却油吸込み管、36 冷却油吐出管、41,43 領域、50 制御部、60 回転軸、61,62 中心軸、100 モータジェネレータ、200 冷却システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平方向に設置されるロータと、冷却用の冷媒がコイルエンドの重力方向上側から吹き掛けられるステータと、を備える回転電機であって、
前記コイルエンドの外周面で、前記ロータの回転中心を含む水平面近傍の位置に配置される温度センサと、
前記温度センサの外周側に配置され、重力方向上側に向かって延びるセンサガイドと、
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記回転電機の負荷を制限する制御部を備え、
前記制御部は、前記冷媒の流量が所定の閾値未満の場合には、前記温度センサで検出した温度が前記コイルエンドの上限温度を超えないように前記回転電機の負荷を制限し、
前記冷媒の流量が所定の閾値以上の場合には、前記温度センサで検出した温度が前記冷媒の上限温度を超えないように前記回転電機の負荷を制限すること、
を特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機であって、
前記冷媒の流量を増減する制御部を備え、
前記制御部は、前記冷媒の流量が所定の閾値未満の場合には、前記温度センサで検出した温度が前記コイルエンドの上限温度を超えないように前記冷媒の流量を増減させ、
前記冷媒の流量が所定の閾値以上の場合には、前記温度センサで検出した温度が前記冷媒の上限温度を超えないように前記冷媒の流量を増減させること、
を特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記センサガイドは、前記コイルエンドと離間して配置され、前記コイルエンドの外周面を斜め下方向に広がるように流れる冷媒の少なくとも一部の流れ方向を前記温度センサに向うように変更すること、
を特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記温度センサは、前記コイルエンド表面の温度と前記冷媒の温度のいずれか一方又は両方を計測することができること、
を特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−31282(P2013−31282A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165220(P2011−165220)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】