説明

回転駆動装置およびそれを用いた遠心式ポンプ装置

【課題】エネルギ効率が高く、低コストで、小型の回転駆動装置を提供する。
【解決手段】この遠心式血液ポンプ装置は、血液室7内に設けられたインペラ10と、インペラ10に設けられた複数の永久磁石17と、モータ室8内に設けられ、隔壁6を介してインペラ10を回転駆動させる複数組の磁性体18およびコイル20とを備える。磁性体18は、中心線L1の周りに複数回巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aを含む。したがって、簡単な構成で、磁性体18内の鉄損を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は回転駆動装置およびそれを用いた遠心式ポンプ装置に関し、特に、隔壁を介して駆動力を伝達する回転駆動装置と、それを用いた遠心式ポンプ装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、隔壁によってモータ駆動室とロータ室とに分離した構造のキャンドモータが多く用いられている。このようなモータは、たとえば、粉塵をきらう環境下で使用される半導体製造ラインの純水輸送用ポンプや、生体液を輸送するポンプに使用されている。生体液を輸送するポンプとしては、血液室内のインペラに直接トルクを伝達するダイレクト駆動モータを用いた遠心式血液ポンプ装置がある。この遠心式血液ポンプ装置は、外部と血液室との物理的な連通を排除することができ、細菌などの血液への侵入を防止することができるので、人工心臓として用いられる。人工心臓はバッテリからの電力によって駆動されるので、モータの効率向上は大変重要である。
【0003】
特許文献1の遠心式血液ポンプは、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングと、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた磁性体と、インペラの一方面に対向して第1の室内に設けられた電磁石と、インペラの他方面に設けられた永久磁石と、第3の室内に設けられたロータおよびモータと、インペラの他方面に対向してロータに設けられた永久磁石とを備える。インペラの他方面に対向する第2の隔壁の表面には、動圧溝が形成されている。電磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ロータの永久磁石からインペラの他方面に作用する吸引力と、動圧溝の動圧軸受効果により、インペラは第2の室の内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0004】
また、特許文献2の遠心式血液ポンプは、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングと、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた磁性体と、インペラの一方面に対向して第1の室内に設けられた第1の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた第2の永久磁石と、第3の室内に設けられたロータおよびモータと、インペラの他方面に対向してロータに設けられた第3の永久磁石とを備える。インペラの一方面に対向する第1の隔壁の表面には第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面に対向する第2の隔壁の表面には第2の動圧溝が形成されている。第1の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ロータの第3の永久磁石からインペラの他方面に作用する吸引力と、第1および第2の動圧溝の動圧軸受効果により、インペラは第2の室の内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0005】
また、特許文献3の図8および図9のターボ形ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、ハウジングの外部に設けられたロータと、インペラの一方面に対向してロータに設けられた第2の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた第3の永久磁石と、インペラの他方面に対向してハウジングに設けられた磁性体とを備えている。また、インペラの一方面には第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面には第2の動圧溝が形成されている。ロータの第2の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ハウジングの磁性体からインペラの他方面に作用する吸引力と、第1および第2の動圧溝の動圧軸受効果により、インペラはハウジングの内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0006】
さらに、特許文献4のクリーンポンプは、ケーシングと、ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、ケーシングの外部に設けられたロータと、インペラの一方面に対向してロータに設けられた第2の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた磁性体と、インペラの他方面に対向してハウジング外に設けられた電磁石とを備えている。また、インペラの一方面には動圧溝が形成されている。インペラの回転数が所定の回転数よりも低い場合は電磁石を作動させ、インペラの回転数が所定の回転数を超えた場合は電磁石への通電を停止する。ロータの第2の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、動圧溝の動圧軸受効果により、インペラはハウジングの内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−209240号公報
【特許文献2】特開2006−167173号公報
【特許文献3】特開平4−91396号公報
【特許文献4】実開平6−53790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ステータとロータ間に隔壁を設けたキャンドモータでは、ステータとロータ間の隙間が大きくなるため、高トルク化や高効率化が難しいと言う課題がある。特に、小型モータの場合、寸法の制約などにより設計自由度が低く、局所的な磁気飽和の影響を受け易いため高効率化が難しい。
【0009】
また、上記特許文献1〜4のポンプは、インペラとハウジングの対向部に形成された動圧溝によってインペラのアキシアル方向の支持を行ない、インペラに設けられた永久磁石とハウジング外に設けられた永久磁石との吸引力によってインペラのラジアル方向の支持を行なっている点で共通する。
【0010】
動圧溝の支持剛性は、インペラの回転数に比例する。したがって、ポンプに外乱が印加された状態でも、インペラがハウジングに接触することなく安定して回転するためには、ポンプの常用回転数域を上げてインペラのアキシアル方向の剛性を高める必要がある。しかし、上記特許文献1〜4のポンプでは、ラジアル方向を永久磁石の吸引力を利用して支持しているので、その支持剛性は低く、インペラを高速に回転させることができないという問題がある。
【0011】
このラジアル方向の剛性を高める方法としては、インペラ内の永久磁石とハウジングの外部に配した永久磁石もしくは固定子との吸引力を強める方法がある。しかし、その吸引力を強めると、インペラのアキシアル方向への負の剛性値が大きくなり(すなわち、インペラがアキシアル方向に動けば、その動いただけその吸引力が大きくなり)、動圧によるインペラの支持性能およびインペラ−ハウジング間に作用する吸引力が大きくなり、インペラのスムーズな回転駆動が難しくなるという問題がある。また、インペラのアキシアル方向への負の剛性値が動圧による正の剛性より大きい場合は安定回転ができないという問題も生じる。ラジアル方向を永久磁石による受動型磁気軸受で支持する場合は、ラジアル方向の剛性はアキシアル方向の負の剛性値によって決定される。よって、安定回転を実現するための条件ではラジアル方向の剛性を向上させることが難しく、インペラをハウジングに接触することなく回転させるためにはインペラ質量を増加させてはならない。
【0012】
特に、特許文献2の図39で示されるように、インペラを外部のモータコイルとインペラに配した永久磁石の磁気的相互作用で回転させる場合は、特許文献2の図3に示されるようなインペラを永久磁石間の磁気カップリングで回転駆動させる場合に比べて起動トルクが小さいので、インペラのスムーズな回転駆動が難しい。これは、本遠心式血液ポンプが、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングに対し、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラを、モータによって回転させるキャンドモータ構造となり、モータギャップが広いためである。よって起動トルクを発生させるために大きな電流を必要とする。モータ効率を改善することは、起動時の電流低減や定格回転時の消費電力の低減に必要であり、特にバッテリ駆動の場合には大変重要である。
【0013】
一般に、モータの効率向上を図る方法としては、磁性鋼板を積層したもので鉄心を構成することにより、鉄損を減らす方法がある。また、鉄心の形状を工夫することによってコイルの占積率を向上させる方法もある。しかし、鉄心の寸法や形状によっては加工性、生産性が悪化し、コスト高になると言う問題があった。
【0014】
それゆえに、この発明の主たる目的は、エネルギ効率が高く、低コストで、小型の回転駆動装置と、それを用いた遠心式ポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る回転駆動装置は、隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、第1の室内において隔壁に沿って回転可能に設けられたロータと、第2の室内に設けられ、隔壁を介してロータを回転駆動させる駆動部とを備えた回転駆動装置であって、ロータに設けられ、ロータの回転方向に配列された複数の第1の永久磁石を備えたものである。駆動部は、複数の第1の永久磁石に対向して設けられ、各々が、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を有する複数の第1の磁性体と、それぞれ複数の第1の磁性体に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイルとを含む。
【0016】
好ましくは、磁性鋼板は柱状に巻回されて各第1の磁性体は柱状に形成され、複数の第1の磁性体の端面は複数の第1の永久磁石に対向して設けられ、複数のコイルは、それぞれ複数の第1の磁性体の側面全体を覆うように巻回されている。
【0017】
また好ましくは、磁性鋼板は電磁鋼板である。
また好ましくは、磁性鋼板はアモルファス金属で形成されている。
【0018】
また好ましくは、磁性鋼板は円柱状に巻回されている。
また好ましくは、磁性鋼板は角柱状に巻回されている。
【0019】
また好ましくは、磁性鋼板は、溶接によって巻回された形状に固定されている。
また好ましくは、磁性鋼板は、樹脂含浸によって巻回された形状に固定されている。
【0020】
また好ましくは、磁性鋼板は、中心線の周りに複数回巻回されて同心状に配置された複数の筒部材を構成しており、各第1の磁性体には、中心線の一方側において複数の筒部材の各々を中心線と平行な方向に切断する切り欠き部が形成されている。
【0021】
また好ましくは、各第1の磁性体には焼鈍処理が施されている。
また好ましくは、各第1の磁性体は、さらに、棒状の第2の磁性体を有し、磁性鋼板は第2の磁性体に巻回されている。
【0022】
また好ましくは、磁性鋼板は、対応する第2の磁性体に溶接によって固定されている。
また好ましくは、第2の磁性体は、対応する磁性鋼板の幅よりも長く、第2の磁性体の両端部は、巻回された磁性鋼板から突出している。
【0023】
また好ましくは、各第1の磁性体は、さらに、第2の磁性体の隔壁側の端部に結合された第3の磁性体を有し、回転駆動装置は、さらに、複数の第1の磁性体に共通に設けられ、複数の第1の磁性体の各々に含まれる第2の磁性体の隔壁と反対側の端部に結合された第4の磁性体を備える。
【0024】
また好ましくは、第3の磁性体には、第2の磁性体の隔壁側の端部を嵌め込むための第1の孔が形成され、第4の磁性体には、それぞれ複数の第1の磁性体に対応して設けられ、対応の第1の磁性体に含まれる第2の磁性体の隔壁と反対側の端部を嵌め込むための複数の第2の孔が形成されている。
【0025】
また好ましくは、第4の磁性体は、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を含む。
【0026】
また好ましくは、磁性鋼板は電磁鋼板である。
また好ましくは、隔壁は円筒状に形成され、ロータと駆動部とは、ロータの径方向に隙間を開けて配置されている。
【0027】
また好ましくは、隔壁は平面状に形成され、ロータと駆動部とは、ロータの回転中心軸の延在方向に隙間を開けて配置されている。
【0028】
また、この発明に係る遠心式ポンプ装置は、上記回転駆動装置を備え、ロータは、回転時の遠心力によって液体を送るインペラである。
【0029】
また、この発明に係る遠心式ポンプ装置は、隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、第1の室内において隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、第2の室内に設けられ、隔壁を介してインペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、インペラの一方面に対向する第1の室の内壁に設けられ、第1の永久磁石を吸引する第2の永久磁石と、インペラの他方面に設けられ、インペラの回転方向に互いに隙間を開けて配列された複数の第3の永久磁石とを備えたものである。各第3の永久磁石は、インペラの回転中心軸の延在方向に着磁され、各隣接する2つの第3の永久磁石の磁極は互いに異なる。駆動部は、複数の第3の永久磁石に対向して設けられ、各々が、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を有する複数の磁性体と、それぞれ複数の第1の磁性体に対応して設けられて各々が対応の磁性体に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイルとを含む。インペラの回転中において、第1および第2の永久磁石間の第1の吸引力と複数の第3の永久磁石および複数の磁性体間の第2の吸引力とは、第1の室内におけるインペラの可動範囲の略中央で釣り合う。インペラの一方面またはそれに対向する第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面またはそれに対向する隔壁に第2の動圧溝が形成されている。
【0030】
好ましくは、液体は血液であり、遠心式ポンプ装置は、血液を循環させるために使用される。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る回転駆動装置および遠心式ポンプ装置では、巻回された帯状の磁性鋼板で駆動部の磁性体を形成したので、磁性体内の鉄損を低減することができ、効率の向上を図ることができる。また、磁性体を簡単に形成できるので、装置の小型化、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態1による遠心式血液ポンプ装置のポンプ部の外観を示す正面図である。
【図2】図1に示したポンプ部の側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のIV−IV線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図7に示した磁性体の構成を示す図である。
【図9】図7に示した複数のコイルに印加する電圧を例示するタイムチャートである。
【図10】図3に示したインペラの浮上位置を説明するための図である。
【図11】図3に示したインペラの浮上位置を説明するための他の図である。
【図12】図1〜図8に示したポンプ部を制御するコントローラの構成を示すブロック図である。
【図13】図12に示したコントローラの動作を示すタイムチャートである。
【図14】実施の形態1の変更例を示す図である。
【図15】実施の形態1の他の変更例を示す図である。
【図16】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図17】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図18】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図19】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図20】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態2によるアキシアルギャップ型モータの構成を示す図である。
【図22】図21に示した磁性体の構成を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態4によるラジアルギャップ型モータの構成を示す図である。
【図24】図23に示した磁性体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態1]
図1〜図7において、本実施の形態1の遠心式血液ポンプ装置のポンプ部1は、非磁性材料で形成されたハウジング2を備える。ハウジング2は、円柱状の本体部3と、本体部3の一方の端面の中央に立設された円筒状の血液流入ポート4と、本体部3の外周面に設けられた円筒状の血液流出ポート5とを含む。血液流出ポート5は、本体部3の外周面の接線方向に延在している。
【0034】
ハウジング2内には、図3に示すように、隔壁6によって仕切られた血液室7およびモータ室8が設けられている。血液室7内には、図3および図4に示すように、中央に貫通孔10aを有する円板状のインペラ10が回転可能に設けられている。インペラ10は、ドーナツ板状の2枚のシュラウド11,12と、2枚のシュラウド11,12間に形成された複数(たとえば6つ)のベーン13とを含む。シュラウド11は血液流入ポート4側に配置され、シュラウド12は隔壁6側に配置される。シュラウド11,12およびベーン13は、非磁性材料で形成されている。
【0035】
2枚のシュラウド11,12の間には、複数のベーン13で仕切られた複数(この場合は6つ)の血液通路14が形成されている。血液通路14は、図4に示すように、インペラ10の中央の貫通孔10aと連通しており、インペラ10の貫通孔10aを始端とし、外周縁まで徐々に幅が広がるように延びている。換言すれば、隣接する2つの血液通路14間にベーン13が形成されている。なお、この実施の形態1では、複数のベーン13は等角度間隔で設けられ、かつ同じ形状に形成されている。したがって、複数の血液通路14は等角度間隔で設けられ、かつ同じ形状に形成されている。
【0036】
インペラ10が回転駆動されると、血液流入ポート4から流入した血液は、遠心力によって貫通孔10aから血液通路14を介してインペラ10の外周部に送られ、血液流出ポート5から流出する。
【0037】
また、シュラウド11には永久磁石15が埋設されており、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には、永久磁石15を吸引する永久磁石16が埋設されている。永久磁石15,16は、インペラ10をモータ室8と反対側、換言すれば血液流入ポート4側に吸引(換言すれば、付勢)するために設けられている。
【0038】
なお、シュラウド11および血液室7の内壁にそれぞれ永久磁石15,16を設ける代わりに、シュラウド11および血液室7の内壁の一方に永久磁石を設け、他方に磁性体を設けてもよい。また、シュラウド11自体を永久磁石15または磁性体で形成してもよい。また、磁性体としては軟質磁性体と硬質磁性体のいずれを使用してもよい。
【0039】
また、永久磁石16は、1つでもよいし、複数でもよい。永久磁石16が1つの場合は、永久磁石16はリング状に形成される。また、永久磁石16が複数の場合は、複数の永久磁石16は等角度間隔で同一の円に沿って配置される。永久磁石15も、永久磁石16と同様であり、1つでもよいし、複数でもよい。
【0040】
また、図4に示すように、シュラウド12には複数(たとえば8個)の永久磁石17が埋設されている。複数の永久磁石17は、隣接する磁極が互いに異なるようにして、等角度間隔で同一の円に沿って配置される。換言すれば、モータ室8側にN極を向けた永久磁石17と、モータ室8側にS極を向けた永久磁石17とが等角度間隔で同一の円に沿って交互に配置されている。
【0041】
なお、永久磁石17の重量を一定に維持すると、図4に示すように隣接する永久磁石17,17の間に隙間を設けた方が、隣接する2つの永久磁石17,17の間に隙間を開けない場合よりも、永久磁石17,17間の磁束密度が大きくなり、永久磁石17の周辺の磁界が強くなる。したがって、本実施の形態1では、インペラ10の永久磁石17と、モータ室8内の磁性体18およびコイル20との間の磁気的結合力を強めることができる。よって、装置寸法を小型に維持しながら、インペラ10の回転トルクを大きくすることができる。
【0042】
また、図7に示すように、モータ室8内には、複数(たとえば9個)の磁性体18が設けられている。複数の磁性体18は、インペラ10の複数の永久磁石17に対向して、等角度間隔で同一の円に沿って配置される。複数の磁性体18の基端は、円板状の1つの磁性体19に接合されている。各磁性体18には、コイル20が巻回されている。
【0043】
ここで、本実施の形態1では、図8に示すように、各磁性体18は、隔壁6に垂直な中心線L1の周りに複数回巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aを含む。帯状の磁性鋼板18aは長さ方向に巻回されており、その幅方向は隔壁6に垂直な方向に向けられている。磁性鋼板18aは、無方向性または方向性の磁気特性を持つ電磁鋼板であってもよいし、アモルファス金属あるいはアモルファス合金で形成されていてもよい。また、磁性鋼板18aの巻き終わりの端部を磁性鋼板18a自体に溶接することによって巻回された磁性鋼板18aを所定の形状に固定してもよいし、磁性鋼板18a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させることによって巻回された磁性鋼板18aを所定の形状に固定してもよい。
【0044】
このように、巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aによって磁性体18を形成することにより、磁性体18内の鉄損を低減するとともに、磁性体18内の磁束の透磁率を高めることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。また、磁性体18を簡単に形成できるので、装置の小型化、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【0045】
磁性鋼板18aは、円柱状に巻回してもよいし、三角柱のような角柱状に巻回してもよい。図8では、磁性鋼板18aを中心線L1の周りに円柱状に巻回した状態が示されている。円柱状に形成された磁性体18(すなわち円柱状に巻回された磁性鋼板18a)の円形の端面は、隔壁6を介してインペラ10に対向して配置される。コイル20は、円柱状の磁性体18の外周面(側面)全体を覆うように巻回される。磁性鋼板18aを円柱状に巻回した場合、コイル20の周方向長さを最小にすることができ、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0046】
また、磁性鋼板18aを中心線L1の周りに三角柱のような角柱状に巻回することも可能である。図7では、磁性鋼板18aは中心線L1の周りに三角柱状に巻回されている。三角柱状に形成された磁性体18(すなわち三角柱状に巻回された磁性鋼板18a)の三角形の端面は、隔壁6を介してインペラ10に対向して配置される。コイル20は、三角柱状の磁性体18の側面全体を覆うように巻回される。また、複数の磁性体18の周囲にはコイル20を巻回するためのスペースが均等に確保され、各隣接する2つの磁性体18の互いに対向する面は略平行に設けられている。このため、コイル20用の大きなスペースを確保することができ、コイル20の巻数を大きくすることができる。したがって、インペラ10を回転駆動させるための大きなトルクを発生することができる。また、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0047】
なお、複数の磁性体18を囲む外形面(図7では、複数の磁性体18の外周を囲む円)は、複数の永久磁石17を囲む外形面(図4では、複数の磁性体17の外周を囲む円)に一致していてもよいし、複数の磁性体18を囲む外形面が複数の永久磁石17を囲む外形面よりも大きくてもよい。また、磁性体18は、ポンプ1の最大定格(インペラ10の回転駆動トルクが最大の条件)において、磁気的な飽和がないように設計することが好ましい。
【0048】
9個のコイル20には、たとえば120度通電方式で電圧が印加される。すなわち、9個のコイル20は、3個ずつグループ化される。各グループの第1〜第3のコイル20には、図9に示すような電圧VU,VV,VWが印加される。第1のコイル20には、0〜120度の期間に正電圧が印加され、120〜180度の期間に0Vが印加され、180〜300度の期間に負電圧が印加され、300〜360度の期間に0Vが印加される。したがって、第1のコイル20が巻回された磁性体18の先端面(インペラ10側の端面)は、0〜120度の期間にN極になり、180〜300度の期間にS極になる。電圧VVの位相は電圧VUよりも120度遅れており、電圧VWの位相は電圧VVよりも120度遅れている。したがって、第1〜第3のコイル20にそれぞれ電圧VU,VV,VWを印加することにより、回転磁界を形成することができ、複数の磁性体18とインペラ10の複数の永久磁石17との吸引力および反発力により、インペラ10を回転させることができる。
【0049】
ここで、インペラ10が定格回転数で回転している場合は、永久磁石15,16間の吸引力と複数の永久磁石17および複数の磁性体18間の吸引力とは、血液室7内におけるインペラ10の可動範囲の略中央付近で釣り合うようにされている。このため、インペラ10のいかなる可動範囲においてもインペラ10への吸引力による作用力は非常に小さい。その結果、インペラ10の回転起動時に発生するインペラ10とハウジング2との相対すべり時の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、相対すべり時におけるインペラ10とハウジング2の内壁の表面の損傷(表面の凹凸)はなく、さらに低速回転時の動圧力が小さい場合にもインペラ10はハウジング2から浮上し易くなり、非接触の状態となる。したがって、インペラ10とハウジング2との相対すべりによって溶血・血栓が発生したり、相対すべり時に発生したわずかな表面損傷(凹凸)によって血栓が発生することもない。
【0050】
また、インペラ10のシュラウド12に対向する隔壁6の表面には複数の動圧溝21が形成され、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には複数の動圧溝22が形成されている。インペラ10の回転数が所定の回転数を超えると、動圧溝21,22の各々とインペラ10との間に動圧軸受効果が発生する。これにより、動圧溝21,22の各々からインペラ10に対して抗力が発生し、インペラ10は血液室7内で非接触状態で回転する。
【0051】
詳しく説明すると、複数の動圧溝21は、図5に示すように、インペラ10のシュラウド12に対応する大きさに形成されている。各動圧溝21は、隔壁6の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)隔壁6の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。また、複数の動圧溝21は略同じ形状であり、かつ略同じ間隔に配置されている。動圧溝21は凹部であり、動圧溝21の深さは0.005〜0.4mm程度であることが好ましい。動圧溝21の数は、6〜36個程度であることが好ましい。
【0052】
図5では、10個の動圧溝21がインペラ10の中心軸に対して等角度で配置されている。動圧溝21は、いわゆる内向スパイラル溝形状となっているので、インペラ10が時計方向に回転すると、動圧溝21の外径部から内径部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と隔壁6の間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0053】
なお、動圧溝21を隔壁6に設ける代わりに、動圧溝21をインペラ10のシュラウド12の表面に設けてもよい。
【0054】
このように、インペラ10と複数の動圧溝21の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は隔壁6から離れ、非接触状態で回転する。このため、インペラ10と隔壁6の間に血液流路が確保され、両者間での血液滞留およびそれに起因する血栓の発生が防止される。さらに、通常状態において、動圧溝21が、インペラ10と隔壁6の間において撹拌作用を発揮するので、両者間における部分的な血液滞留の発生を防止することができる。
【0055】
また、動圧溝21の角の部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0056】
また、複数の動圧溝22は、図6に示すように、複数の動圧溝21と同様、インペラ10のシュラウド11に対応する大きさに形成されている。各動圧溝22は、血液室7の内壁の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)血液室7の内壁の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。また、複数の動圧溝22は、略同じ形状であり、かつ略同じ間隔で配置されている。動圧溝22は凹部であり、動圧溝22の深さは0.005〜0.4mm程度があることが好ましい。動圧溝22の数は、6〜36個程度であることが好ましい。図6では、10個の動圧溝22がインペラ10の中心軸に対して等角度に配置されている。
【0057】
なお、動圧溝22は、血液室7の内壁側ではなく、インペラ10のシュラウド11の表面に設けてもよい。また、動圧溝22の角となる部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0058】
このように、インペラ10と複数の動圧溝22の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は血液室7の内壁から離れ、非接触状態で回転する。また、ポンプ部1が外的衝撃を受けたときや、動圧溝21による動圧力が過剰となったときに、インペラ10の血液室7の内壁への密着を防止することができる。動圧溝21によって発生する動圧力と動圧溝22によって発生する動圧力は異なるものとなっていてもよい。
【0059】
インペラ10のシュラウド12と隔壁6との隙間と、インペラ10のシュラウド11と血液室7の内壁との隙間とが略同じ状態でインペラ10が回転することが好ましい。インペラ10に作用する流体力などの外乱が大きく、一方の隙間が狭くなる場合には、その狭くなる側の動圧溝による動圧力を他方の動圧溝による動圧力よりも大きくし、両隙間を略同じにするため、動圧溝21と22の形状を異ならせることが好ましい。
【0060】
なお、図5および図6では、動圧溝21,22の各々を内向スパイラル溝形状としたが、他の形状の動圧溝21,22を使用することも可能である。ただし、血液を循環させる場合は、血液をスムーズに流すことが可能な内向スパイラル溝形状の動圧溝21,22を採用することが好ましい。
【0061】
図9は、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2との合力の大きさが、インペラ10の血液室7内の可動範囲の中央位置以外の位置P1でゼロとなるように調整した場合にインペラ10に作用する力を示す図である。ただし、インペラ10の回転数は定格値に保たれている。
【0062】
すなわち、永久磁石15,16間の吸引力F1が永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2よりも小さく設定され、それらの合力がゼロとなるインペラ10の浮上位置はインペラ可動範囲の中間よりも隔壁6側にあるものとする。動圧溝21,22の形状は同じである。
【0063】
図10の横軸はインペラ10の位置(図中の左側が隔壁6側)を示し、縦軸はインペラ10に対する作用力を示している。インペラ10への作用力が隔壁6側に働くとき、その作用力をマイナスとしている。インペラ10に対する作用力としては、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2と、動圧溝21の動圧力F3と、動圧溝22の動圧力F4と、それらの合力である「インペラに作用する正味の力F5」を示した。
【0064】
図10から分かるように、インペラ10に作用する正味の力F5がゼロとなる位置で、インペラ10の浮上位置はインペラ10の可動範囲の中央位置から大きくずれている。その結果、回転中のインペラ10と隔壁6の間の距離は狭まり、インペラ10に対して小さな外乱力が作用してもインペラ10は隔壁6に接触してしまう。
【0065】
これに対して図11は、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2との合力の大きさが、インペラ10の血液室7内の可動範囲の中央位置P0でゼロとなるように調整した場合にインペラ10に作用する力を示す図である。この場合も、インペラ10の回転数は定格値に保たれている。
【0066】
すなわち、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とは略同じに設定されている。また、動圧溝21,22の形状は同じにされている。この場合は、図10の場合と比較して、インペラ10の浮上位置に対する支持剛性が高くなる。また、インペラ10に作用する正味の力F5は可動範囲の中央でゼロとなっているので、インペラ10に対し外乱力が作用しない場合にはインペラ10は中央位置で浮上する。
【0067】
このように、インペラ10の浮上位置は、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2と、インペラ10の回転時に動圧溝21,22で発生する動圧力F3,F4との釣り合いで決まる。F1とF2を略同じにし、動圧溝21,22の形状を同じにすることにより、インペラ10の回転時にインペラ10を血液室7の略中央部で浮上させることが可能となる。図3および図4に示すように、インペラ10は2つのディスク間に羽根を形成した形状を有するので、ハウジング2の内壁に対向する2つの面を同一形状および同一寸法にすることができる。したがって、略同一の動圧性能を有する動圧溝21,22をインペラ10の両側に設けることは可能である。
【0068】
この場合、インペラ10は血液室7の中央位置で浮上するので、インペラ10はハウジング2の内壁から最も離れた位置に保持される。その結果、インペラ10の浮上時にインペラ10に外乱力が印加されて、インペラ10の浮上位置が変化しても、インペラ10とハウジング2の内壁とが接触する可能性が小さくなり、それらの接触によって血栓や溶血が発生する可能性も低くなる。
【0069】
なお、図10および図11の例では、2つの動圧溝21,22の形状は同じであるとしたが、動圧溝21,22の形状を異なるものとし、動圧溝21,22の動圧性能を異なるものとしてもよい。たとえば、ポンピングの際に流体力などによってインペラ10に対して常に一方方向の外乱が作用する場合には、その外乱の方向にある動圧溝の性能を他方の動圧溝の性能より高めておくことにより、インペラ10をハウジング2の中央位置で浮上回転させることが可能となる。この結果、インペラ10とハウジング2との接触確率を低く抑えることができ、インペラ10の安定した浮上性能を得ることができる。
【0070】
また、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とによって構成されるインペラ10のアキシアル方向への負の支持剛性値の絶対値をKaとし、ラジアル方向の正の剛性値の絶対値をKrとし、インペラ10が回転する常用回転数領域において2つの動圧溝21,22で得られる正の剛性値の絶対値をKgとすると、Kg>Ka+Krの関係を満たすことが好ましい。
【0071】
具体的には、アキシアル方向の負の剛性値の絶対値Kaを20000N/mとし、ラジアル方向の正の剛性値の絶対値Krを10000N/mとした場合、インペラ10が通常回転する回転数領域で2つの動圧溝21,22によって得られる正の剛性値の絶対値Kgは30000N/mを超える値に設定される。
【0072】
インペラ10のアキシアル支持剛性は動圧溝21,22で発生する動圧力に起因する剛性から磁性体間の吸引力などによる負の剛性を引いた値であるから、Kg>Ka+Krの関係を持つことで、インペラ10のラジアル方向の支持剛性よりもアキシアル方向の支持剛性を高めることができる。このように設定することにより、インペラ10に対して外乱力が作用した場合に、インペラ10のラジアル方向への動きよりもアキシアル方向への動きを抑制することができ、動圧溝21の形成部でのインペラ10とハウジング2との機械的な接触を避けることができる。
【0073】
特に、動圧溝21,22は、図5および図6で示したように平面に凹設されているので、インペラ10の回転中にこの部分でハウジング2とインペラ10との機械的接触があると、インペラ10およびハウジング2の内壁のいずれか一方または両方の表面に傷(表面の凹凸)が生じてしまい、この部位を血液が通過すると、血栓及び溶血の原因となる可能性もあった。この動圧溝21,22での機械的接触を防ぎ、血栓及び溶血を抑制するために、ラジアル方向の剛性よりもアキシアル方向の剛性を高める効果は高い。
【0074】
また、インペラ10にアンバランスがあると回転時にインペラ10に振れ回りが生ずるが、この振れ回りはインペラ10の質量とインペラ10の支持剛性値で決定される固有振動数とインペラ10の回転数が一致した場合に最大となる。
【0075】
このポンプ部1では、インペラ10のアキシアル方向の支持剛性よりもラジアル方向の支持剛性を小さくしているので、インペラ10の最高回転数をラジアル方向の固有振動数以下に設定することが好ましい。そこで、インペラ10とハウジング2との機械的接触を防ぐため、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2によって構成されるインペラ10のラジアル剛性値をKr(N/m)とし、インペラ10の質量をm(kg)とし、インペラの回転数をω(rad/s)とした場合、ω<(Kr/m)0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0076】
具体的には、インペラ10の質量が0.03kgであり、ラジアル剛性値が2000N/mである場合、インペラ10の最高回転数は258rad/s(2465rpm)以下に設定される。逆に、インペラ10の最高回転数を366rad/s(3500rpm)と設定した場合には、ラジアル剛性は4018N/m以上に設定される。
【0077】
さらに、このωの80%以下にインペラ10の最高回転数を設定することが好ましい。具体的には、インペラ10の質量が0.03kgであり、ラジアル剛性値が2000N/mである場合には、その最高回転数は206.4rad/s(1971rpm)以下に設定される。逆に、インペラ10の最高回転数を366rad/s(3500rpm)としたい場合には、ラジアル剛性値が6279N/m以上に設定される。このようにインペラ10の最高回転数を設定することで、インペラ10の回転中におけるインペラ10とハウジング2の接触を抑えることができる。
【0078】
また、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とによって構成されるインペラ10のアキシアル方向の負の剛性値よりも動圧溝21,22の動圧力による剛性が大きくなった場合にインペラ10とハウジング2は非接触の状態となる。したがって、この負の剛性値を極力小さくすることが好ましい。そこで、この負の剛性値を小さく抑えるため、永久磁石15,16の対向面のサイズを異ならせることが好ましい。たとえば、永久磁石16のサイズを永久磁石15よりも小さくすることにより、両者間の距離によって変化する吸引力の変化割合、すなわち負の剛性を小さく抑えることができ、インペラ支持剛性の低下を防ぐことができる。
【0079】
また、インペラ10の回転起動前に、インペラ10が隔壁6に接触していることを確認してから、インペラ10を回転起動させることが好ましい。
【0080】
すなわち、インペラ10の非回転時では、動圧溝21,22による非接触支持はされず、さらに、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2によってインペラ10とハウジング2とは高い面圧で接触している。また、このポンプ部1のように、インペラ10をモータ室8内のコイル20および磁性体18とインペラ10の永久磁石17との磁気的相互作用で回転させる場合は、特許文献2の図3に示すようなインペラを永久磁石間の磁気カップリングで回転駆動させる場合に比べて、起動トルクが小さい。したがって、インペラ10をスムーズに回転起動させることは難しい。
【0081】
しかし、インペラ10のシュラウド12が隔壁6と接触している場合は、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触している場合に比べ、インペラ10の永久磁石17とモータ室8内の磁性体18とが近接しているので、インペラ10の起動時の回転トルクを高めることができ、インペラ10をスムーズに回転起動させることができる。
【0082】
ところが、上述の通り、インペラ10の回転時には、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とは、インペラ10の位置がインペラ10の可動範囲の中央付近にて釣り合うように設定されているので、インペラ10の停止時にインペラ10が必ずしも隔壁6に接触しているとは限らない。
【0083】
そこで、この遠心式血液ポンプ装置では、インペラ10を回転起動させる前にインペラ10を隔壁6側に移動させる手段が設けられる。具体的には、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2が大きくなるように複数のコイル20に電流を流し、インペラ10を隔壁6側に移動させる。
【0084】
図12は、ポンプ部1を制御するコントローラ25の構成を示すブロック図である。図12において、コントローラ25は、モータ制御回路26およびパワーアンプ27を含む。モータ制御回路26は、たとえば120度通電方式の3相の制御信号を出力する。パワーアンプ27は、モータ制御回路26からの3相の制御信号を増幅して、図9で示した3相電圧VU,VV,VWを生成する。3相電圧VU,VV,VWは、図7および図9で説明した第1〜第3のコイル20にそれぞれ印加される。通常の運転時は、これにより、インペラ10が可動範囲の中央位置で所定の回転数で回転する。
【0085】
図13(a)〜(c)は、インペラ10の回転起動時におけるコイル電流I、インペラ10の位置、およびインペラ10の回転数の時間変化を示すタイムチャートである。図13(a)〜(c)において、初期状態では、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触しており、インペラ10は位置PAにあるものとする。時刻t0において、予め定められた電流I0がコイル20に流される。これにより、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2が永久磁石15,16間の吸引力F1よりも大きくなり、インペラ10は隔壁6側の位置PBに移動し、インペラ10のシュラウド12は隔壁6に接触する。インペラ10が位置PBに移動したら、電流I0を遮断する(時刻t1)。インペラ10の血液室7内の位置を検出するセンサを設け、インペラ10が隔壁6に接触したことを確認した後に、電流I0を遮断することが好ましい。
【0086】
次に、コイル電流Iを予め定められた定格値まで徐々に上昇させる。このとき、インペラ10は隔壁6に接触しているので、インペラ10はスムーズに回転する。コイル電流Iの上昇に伴って、インペラ10は隔壁6側の位置PBから可動範囲の中央位置に移動する。
【0087】
以上のように、この実施の形態1では、巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aによって磁性体18を形成するので、磁性体18内の鉄損を低減するとともに、磁性体18内の磁束の透磁率を高めることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。また、磁性体18を簡単に形成できるので、装置の小型化、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【0088】
また、図14は、この実施の形態1の変更例を示すブロック図である。インペラ回転起動時とそれ以外の場合の電源供給を切り替える構成の一例を示している。図14において、この変更例では、図12のパワーアンプ27がパワーアンプ30,31および切換スイッチ32で置換される。図13の時刻t0〜t1では、モータ制御回路26の出力信号がパワーアンプ30に与えられ、パワーアンプ30の出力電圧が切換スイッチ32を介してコイル20に印加され、コイル20に電流I0が流される。時刻t2以降は、モータ制御回路26の出力信号がパワーアンプ31に与えられ、パワーアンプ31の出力電圧が切換スイッチ32を介してコイル20に印加され、コイル20に電流が流される。
【0089】
また、図15(a)〜(c)は、この実施の形態1の他の変更例を示すタイムチャートである。図15(a)〜(c)において、初期状態では、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触しており、インペラ10は位置PAにあるものとする。時刻t0において、予め定められた電流I1がコイル20に流される。モータ制御回路26により、たとえば120度通電方式の3相の制御信号を出力する。パワーアンプ27は、モータ制御回路26からの3相の制御信号を増幅して、図9で示した3相電圧VU,VV,VWを生成する。3相電圧VU,VV,VWは、図7で説明した第1〜第3のコイル20にそれぞれ印加される。よって、この電流I1によってインペラ10に回転磁界が印加される。この電流I1は、図13の電流I0よりも大きい電流であり、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触している場合でもインペラ10を回転起動させることが可能な電流である。回転起動が確認された後、コイル電流Iを低下させ、予め定められた定格値まで徐々に上昇させる。このようにインペラ10が位置PA側にあった場合でも、インペラ10の回転起動時のみにコイル20に過大電流を流すように構成してもよい。
【0090】
また、血液室7の内壁の表面および隔壁6の表面と、インペラ10の表面との少なくとも一方にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を形成してもよい。これにより、インペラ10と血液室7の内壁および隔壁6との摩擦力を軽減し、インペラをスムーズに回転起動することが可能になる。また、ダイヤモンドライクカーボン膜以外に、フッ素系樹脂膜、パラキシリレン系樹脂膜などを形成してもよい。
【0091】
また、図16は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図3と対比される図である。図16において、この変更例では、対向する永久磁石15,16の対向面のサイズが異なる。図3では、永久磁石15,16の対向面のサイズが同じである場合が示されているが、永久磁石15,16の対向面のサイズを異ならせることにより、両者間の距離によって変化する吸引力の変化量、すなわち負の剛性を小さく抑えることができ、インペラ10の支持剛性の低下を防ぐことができる。
【0092】
また、図17は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図16と対比される図である。図17において、この変更例では、各磁性体18の永久磁石17に対向する先端面に磁性体35が設けられる。この磁性体35の永久磁石17に対向する表面の面積は磁性体18の先端面の面積よりも大きい。この変更例では、永久磁石17に対する磁性体18,35の吸引力を大きくすることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0093】
また、図18は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図8と対比される図である。図18において、この変更例では、磁性体18の内周面から外周面にかけて切り欠き部40が形成されている。すなわち、磁性鋼板18aは、中心線L1の周りに複数回巻回されて同心状に配置された複数の筒部材を構成している。切り欠き部40は、中心線L1の一方側(図18では右側)において複数の筒部材の各々を中心線L1と平行な方向に切断している。この変更例では、切り欠き部40を設けたので、磁性体18の鉄損を軽減することができる。
【0094】
また、図19は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図8と対比される図である。図19において、この変更例では、磁性体18では、軟磁性体である棒状の磁性体41が芯材として使用される。磁性鋼板18aは、磁性体41の周りに複数回巻回されている。磁性鋼板18aの一方端を磁性体41に溶接し、磁性鋼板18aの他方端を磁性鋼板18a自体に溶接することにより、磁性鋼板18aを所定形状に固定することができる。また、磁性体41および磁性鋼板18a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させて所定の形状に固定してもよい。
【0095】
また、図20は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。図20において、この変更例では、各磁性体18は、磁性体41、磁性鋼板18a、および磁性体42を含む。棒状の磁性体41の長さは、磁性鋼板18aの幅よりも長い。磁性鋼板18aは磁性体41の中央部に巻回されており、磁性体41の両端部は、円柱状に巻回された磁性鋼板18aから突出している。磁性体42は、扇型に形成されており、その中央部には孔42aが形成されている。磁性体41の一方端部(図20では上端部)は磁性体42の孔42aに挿嵌される。
【0096】
円板状の磁性体19には、各磁性体18に対応して設けられた孔19aが形成されている。磁性体41の他方端部(図20では下端部)は磁性体19の孔19aに挿嵌される。磁性体42は、隔壁6側に配置される。磁性体42は、扇の中心を隔壁6の中心側に向けて配置される。磁性体41は、孔42a,19aの各々に接着、圧入、あるいは焼きばめによって固定される。この変更例では、位置決め治具等を用いることなく、磁性体18の組立、磁性体19への固定を容易に行なうことができ、作業性が良好となる。
【0097】
また、磁性体18と同様に、帯状の磁性鋼板を中心線の周りに複数回巻回して磁性体19を形成してもよい。
【0098】
[実施の形態2]
図21(a)は、この発明の実施の形態2によるアキシアルギャップ型モータのロータ51を隔壁50側から見た下面図であり、図21(b)はアキシアルギャップ型モータの要部を示す正面図である。
【0099】
図21(a)(b)において、このアキシアルギャップ型モータは、実施の形態1の遠心式血液ポンプ装置のポンプ部1と同様の構成であり、円形の隔壁50で仕切られた第1および第2の室(図示せず)を備える。第1の室内には、隔壁50に沿って回転可能に設けられた円環状のロータ51が設けられ、第2の室内には、隔壁50を介してロータ51を回転駆動させるステータ60が設けられている。
【0100】
ロータ51は、非磁性材料で形成された円環状の支持部材52と、支持部材52に固定された複数(たとえば8個)の永久磁石53とを含む。複数の永久磁石53は、ロータ51の回転方向に互いに隙間を開けて配列されている。各永久磁石53は、ロータ51の回転中心軸の延在方向に着磁されている。隣接する2つの永久磁石53の磁極は互いに異なる。ステータ60は、複数の永久磁石53に対向して配置された複数(たとえば6個)の磁性体61と、それぞれ複数の磁性体61に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイル62とを含む。複数の磁性体61は、円板状の磁性体63に固定されている。複数のコイル62に120度通電方式で電圧を印加することにより、ロータ51を回転させることができる。
【0101】
本実施の形態2では図22に示すように、各磁性体61は、実施の形態1の磁性体18と同様に、帯状の磁性鋼板61aを隔壁50に垂直な中心線の周りに複数回巻回することによって構成されている。また、円板状の継鉄63は、実施の形態1の磁性体18と同様に、帯状の磁性鋼板63aを隔壁50に垂直な中心線L2の周りに複数回巻回することによって構成されている。
【0102】
磁性鋼板61aは、無方向性または方向性の磁気特性を持つ電磁鋼板であってもよいし、アモルファス金属またはアモルファス合金で形成されていてもよい。また、磁性鋼板61aの巻き終わりの端部を磁性鋼板61a自体に溶接することによって磁性鋼板61aを所定の形状に固定してもよいし、磁性鋼板61a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させて所定の形状に固定してもよい。磁性鋼板63aも、磁性鋼板61aと同様である。この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0103】
[実施の形態3]
図23は、この発明の実施の形態3によるラジアルギャップ型モータの要部を示す平面図である。
【0104】
図23において、このラジアルギャップ型モータは、図21のアキシアルギャップ型モータと同様の構成であり、円筒形の隔壁70で仕切られた第1および第2の室(図示せず)を備える。隔壁70の内側の第1の室内には、隔壁70に沿って回転可能に設けられた円筒状のロータ71が設けられ、隔壁70の外側の第2の室内には、隔壁70を介してロータ71を回転駆動させるステータ80が設けられている。
【0105】
ロータ71は、非磁性材料で形成された円筒状の支持部材(図示せず)と、支持部材に固定された複数(たとえば8個)の永久磁石72とを含む。複数の永久磁石72は、ロータ71の回転方向に互いに隙間を開けて配列されている。各永久磁石72は、ロータ71の回転方向と直交する方向(径方向)に着磁されている。隣接する2つの永久磁石72の磁極は互いに異なる。ステータ80は、複数の永久磁石72に対向して配置された複数(たとえば9個)の磁性体81と、それぞれ複数の磁性体81に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイル82とを含む。複数の磁性体81は、円筒状の磁性体83の内周面に固定されている。複数のコイル82に120度通電方式で電圧を印加することにより、ロータ71を回転させることができる。
【0106】
本実施の形態3では、各磁性体81は、実施の形態1の磁性体18と同様に、帯状の磁性鋼板を隔壁50に垂直な中心線の周りに複数回巻回することによって構成されている。また、円筒状の磁性体83は、図24に示すように、帯状の磁性鋼板83aを隔壁70の中心線L3の周りに複数回巻回することによって構成されている。
【0107】
磁性鋼板83aは、無方向性または方向性の磁気特性を持つ電磁鋼板であってもよいし、アモルファス金属またはアモルファス合金で形成されていてもよい。また、磁性鋼板83aの巻き終わりの端部を磁性鋼板83a自体に溶接することによって磁性鋼板83aを円筒状に固定してもよいし、磁性鋼板83a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させて円筒状に固定してもよい。この実施の形態3でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 ポンプ部、2 ハウジング、3 本体部、4 血液流入ポート、5 血液流出ポート、6,50,70 隔壁、7 血液室、8 モータ室、10 インペラ、10a 貫通孔、11,12 シュラウド、13 ベーン、14 血液通路、15〜17,53,72 永久磁石、18,19,28,30,35,41,42,61,63,81,83 磁性体、18a,61a,63a,83a 磁性鋼板、20,62,82 コイル、21,22 動圧溝、25,42 コントローラ、26,43 モータ制御回路、27,30,31 パワーアンプ、32 切換スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、前記第1の室内において前記隔壁に沿って回転可能に設けられたロータと、前記第2の室内に設けられ、前記隔壁を介して前記ロータを回転駆動させる駆動部とを備えた回転駆動装置であって、
前記ロータに設けられ、前記ロータの回転方向に配列された複数の第1の永久磁石を備え、
前記駆動部は、
前記複数の第1の永久磁石に対向して設けられ、各々が、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を有する複数の第1の磁性体と、
それぞれ前記複数の第1の磁性体に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイルとを含む、回転駆動装置。
【請求項2】
前記磁性鋼板は柱状に巻回されて各第1の磁性体は柱状に形成され、
前記複数の第1の磁性体の端面は前記複数の第1の永久磁石に対向して設けられ、
前記複数のコイルは、それぞれ前記複数の第1の磁性体の側面全体を覆うように巻回されている、請求項1に記載の回転駆動装置。
【請求項3】
前記磁性鋼板は電磁鋼板である、請求項1または請求項2に記載の回転駆動装置。
【請求項4】
前記磁性鋼板はアモルファス金属で形成されている、請求項1または請求項2に記載の回転駆動装置。
【請求項5】
前記磁性鋼板は円柱状に巻回されている、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項6】
前記磁性鋼板は角柱状に巻回されている、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項7】
前記磁性鋼板は、溶接によって巻回された形状に固定されている、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項8】
前記磁性鋼板は、樹脂含浸によって巻回された形状に固定されている、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項9】
前記磁性鋼板は、前記中心線の周りに複数回巻回されて同心状に配置された複数の筒部材を構成しており、
各第1の磁性体には、前記中心線の一方側において前記複数の筒部材の各々を前記中心線と平行な方向に切断する切り欠き部が形成されている、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項10】
各第1の磁性体には焼鈍処理が施されている、請求項1から請求項9までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項11】
各第1の磁性体は、さらに、棒状の第2の磁性体を有し、
前記磁性鋼板は前記第2の磁性体に巻回されている、請求項1から請求項10までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項12】
前記磁性鋼板は、対応する第2の磁性体に溶接によって固定されている、請求項11に記載の回転駆動装置。
【請求項13】
前記第2の磁性体は、対応する磁性鋼板の幅よりも長く、
前記第2の磁性体の両端部は、巻回された前記磁性鋼板から突出している、請求項11または請求項12に記載の回転駆動装置。
【請求項14】
各第1の磁性体は、さらに、前記第2の磁性体の前記隔壁側の端部に結合された第3の磁性体を有し、
前記回転駆動装置は、さらに、前記複数の第1の磁性体に共通に設けられ、前記複数の第1の磁性体の各々に含まれる前記第2の磁性体の前記隔壁と反対側の端部に結合された第4の磁性体を備える、請求項13に記載の回転駆動装置。
【請求項15】
前記第3の磁性体には、前記第2の磁性体の前記隔壁側の端部を嵌め込むための第1の孔が形成され、
前記第4の磁性体には、それぞれ前記複数の第1の磁性体に対応して設けられ、対応の第1の磁性体に含まれる前記第2の磁性体の前記隔壁と反対側の端部を嵌め込むための複数の第2の孔が形成されている、請求項14に記載の回転駆動装置。
【請求項16】
前記第4の磁性体は、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を含む、請求項14または請求項15に記載の回転駆動装置。
【請求項17】
前記磁性鋼板は電磁鋼板である、請求項16に記載の回転駆動装置。
【請求項18】
前記隔壁は円筒状に形成され、
前記ロータと前記駆動部とは、前記ロータの径方向に隙間を開けて配置されている、請求項1から請求項17までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項19】
前記隔壁は平面状に形成され、
前記ロータと前記駆動部とは、前記ロータの回転中心軸の延在方向に隙間を開けて配置されている、請求項1から請求項17までのいずれかに記載の回転駆動装置。
【請求項20】
請求項19に記載の回転駆動装置を備え、
前記ロータは、回転時の遠心力によって液体を送るインペラである、遠心式ポンプ装置。
【請求項21】
隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、前記第1の室内において前記隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、前記第2の室内に設けられ、前記隔壁を介して前記インペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、
前記インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、
前記インペラの一方面に対向する前記第1の室の内壁に設けられ、前記第1の永久磁石を吸引する第2の永久磁石と、
前記インペラの他方面に設けられ、前記インペラの回転方向に互いに隙間を開けて配列された複数の第3の永久磁石とを備え、
各第3の永久磁石は、前記インペラの回転中心軸の延在方向に着磁され、
各隣接する2つの第3の永久磁石の磁極は互いに異なり、
前記駆動部は、
前記複数の第3の永久磁石に対向して設けられ、各々が、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を有する複数の磁性体と、
それぞれ前記複数の第1の磁性体に対応して設けられて各々が対応の磁性体に巻回され、回転磁界を生成するための複数のコイルとを含み、
前記インペラの回転中において、前記第1および第2の永久磁石間の第1の吸引力と前記複数の第3の永久磁石および前記複数の磁性体間の第2の吸引力とは、前記第1の室内における前記インペラの可動範囲の略中央で釣り合い、
前記インペラの一方面またはそれに対向する前記第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、前記インペラの他方面またはそれに対向する前記隔壁に第2の動圧溝が形成されている、遠心式ポンプ装置。
【請求項22】
前記液体は血液であり、
前記遠心式ポンプ装置は、前記血液を循環させるために使用される、請求項21に記載の遠心式ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−13043(P2012−13043A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152292(P2010−152292)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】