説明

固体撮像装置及び撮像装置

【課題】垂直転送部における転送効率劣化による縦線などの画像不良を低減することが可能な固体撮像装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の固体撮像装置は、垂直転送部2と水平転送部4と駆動制御部7とを備え、垂直転送部2は複数の垂直転送部2をグループとして有し、駆動制御部7は、出力によって、垂直転送部2、動画部22、および水平転送部4のタイミングを変更して、垂直転送部内で発生した取り残し電荷を再転送する駆動、回収する駆動および通常の駆動を選択し、低照度から高照度までの領域で常に転送効率が最大になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDイメージセンサ等の固体撮像装置及びカメラ等の撮像装置に関し、特に、電荷垂直転送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1000万画素超まで固体撮像装置の高画素化が進み、銀塩写真なみの静止画を撮影したり、動画を撮影したりすることが可能になっている。この高画素化に伴い、固体撮像装置の単位画素サイズのピッチは2μm未満となり、更に微細化が進行している。以下、電荷転送(CCD)型固体撮像装置を例にとって、従来の固体撮像装置の構成とその駆動方法について説明する。
【0003】
従来の固体撮像装置は、2次元状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオードから読み出された信号電荷を転送するための垂直CCDと、垂直CCDから水平CCDへ電荷を振り分ける動画配線部と、電荷を水平方向に読み出す水平CCDと、電荷を電圧に変換する出力アンプを備えている。
このような構成を有する従来の固体撮像素子において、画素サイズの縮小に伴って、静止画(全画素)出力時に垂直、水平を分割して出力する方法が一般的になってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−076764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述のとおり、従来においては、垂直および水平の読み出しが分割される駆動の採用により、垂直CCDでは1画素の電荷を転送するゲート電極数が増加して垂直電荷転送能力が向上、また、水平CCDではゲート電極の設計余裕度の向上が図られた。
一方、1画面を形成するために、信号電荷を読み出し転送する回数が増加し、垂直CCDでの転送スピードをあげる必要がでてきた。また、画素サイズが縮小され、垂直CCD電極内にポテンシャル勾配を設けるのが難しくなってきた。
【0006】
このような、垂直CCDの高速化、低ポテンシャル勾配は、電荷転送効率の劣化につながり、低照度から高照度における縦線発生の原因となっている。
そこで、本発明は、垂直、水平が分割されて読み出された場合において、垂直CCDを高速化しても、低照度から高照度の領域において、転送効率劣化による縦線のない良質な画像を得ることができる固体撮像装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体撮像装置は、行列状に配列された複数の光電変換部と、光電変換部に蓄えられた信号電荷を読み出し、垂直方向に転送する複数の垂直転送部と、垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向へ転送する水平転送部と、垂直転送部及び水平転送部による電荷転送を制御する駆動制御部とを備える。そして、駆動制御部は、垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を、少なくとも1回以上連続で転送できるよう駆動制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る固体撮像装置は、上記構成において、駆動制御部による駆動制御において、垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を少なくとも1つ以上の電荷回収パケットを作って電荷転送し、垂直転送部もしくは水平転送部にて取り残した元の電荷パケットに合流できるように駆動制御するか否かが決定されることを特徴とする。
また、本発明に係る撮像装置は、行列状に配列された複数の光電変換部と、光電変換部に蓄えられた信号電荷を読み出し、垂直方向に転送する複数の垂直転送部と、垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向へ転送する水平転送部と、垂直転送部及び水平転送部による電荷転送を制御し、垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を、少なくとも1回以上連続で転送できるよう駆動制御する駆動制御部と、外部からの指示及び水平転送部からの出力の少なくとも何れかに基づいて、垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を少なくとも1つ以上の電荷回収パケットを作って電荷転送し、垂直転送部もしくは水平転送部にて取り残したもとの電荷パケットに合流できるように駆動制御するかの何れにするかを決定する信号処理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低照度から高照度の領域まで、垂直CCDの転送効率劣化がない状態が作れ、転送効率劣化による縦線のない良質な画像を実現することができる。また、近年、画素サイズが縮小され、電極内にポテンシャルの傾斜を作ることが難しくなる傾向にあり、本発明はそのような状況において、非常に有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における固体撮像装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における固体撮像装置の電極構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における固体撮像装置のVレート期間の駆動方法を模式的に示すタイミング図である。
【図4】従来の技術に基づく第1の方法による固体撮像装置のHレート期間の駆動方法を模式的に示すタイミング図である。
【図5】従来の技術に基づく第1の方法による固体撮像装置の駆動に際しての電荷転送時のポテンシャル状態と転送電荷を模式的に示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における第2の方法による固体撮像装置のHレート期間の駆動方法を示すタイミング図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における第2の方法による固体撮像装置の駆動に際しての垂直転送部での電荷転送時のポテンシャル状態と転送電荷を模式的に示す模式図である。
【図8】特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法によるHレート期間の駆動方法を模式的に示すタイミング図である。
【図9】特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法によるHレート期間の駆動に際しての垂直転送部での電荷転送時のポテンシャル状態と転送電荷を模式的に示す模式図である。
【図10】従来の技術に基づく第1の方法、本発明の第1の実施の形態の第2の方法、および特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法による固体撮像装置の駆動方法で出力8mVのときの垂直転送効率を測定した結果を示した図である。
【図11】従来の技術に基づく第1の方法、本発明の第1の実施の形態の第2の方法、および特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法による固体撮像装置の駆動方法で出力25mVのときの垂直転送効率を測定した結果を示した図である。
【図12】従来の技術に基づく第1の方法、本発明の第1の実施の形態の第2の方法、および特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法による固体撮像装置の駆動方法で出力200mVのときの垂直転送効率を測定した結果を示した図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態におけるカメラの構成を模式的に示すブロック図である。
【図14】変形例に係るCCD型固体撮像装置の平面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態における固体撮像装置及び撮像装置(カメラ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[第1の実施の形態]
1.固体撮像装置の概略構成
まず、本発明の実施の形態における固体撮像装置について、図1を用い説明する。図1は、本実施の形態における固体撮像装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る固体撮像装置は、複数のフォトダイオード1および複数の垂直転送部2からなる撮像部3、水平転送部4、出力部6、並びに駆動制御部7を備える。
複数のフォトダイオード1は、そのそれぞれが本発明の光電変換部の一例であり、撮像部3において行列状に配列される。
【0013】
複数の垂直転送部2は、それぞれがフォトダイオード1の列に対応してY軸方向に延伸する状態で設けられ、対応するフォトダイオード1に蓄えられた信号電荷を読み出し、読み出した信号電荷を水平転送部4に向け、垂直方向(Y軸方向)に転送する。
本実施の形態における固体撮像装置では、複数の垂直転送部2において、3つの垂直転送部2を1つのグループとする複数のグループを有し、このグループが水平方向(X軸方向)に繰り返して設けられている。同一のグループ内の垂直転送部2のそれぞれは、グループ内で共通(グループ内の他の第1転送部21と共通)の駆動電圧の供給を受けて信号電荷を垂直方向に転送する第1転送部21と、該第1転送部21に対応して設けられ、グループ内で独立(グループ内の他の第1転送部21に対して独立)の駆動電圧の供給を受けて対応する第1転送部21から水平転送部4に信号電荷を転送する第2転送部22とを有する。
【0014】
垂直転送部2は、1つの転送電極(図示を省略)に対応して設けられ、対応する前記転送電極への転送パルス(駆動電圧)に応じてポテンシャルのバリア領域又はウェル領域として動作する複数の電荷転送段から構成される。
第1転送部21は、異なる転送パルス(φV1、φV2、φV3、φV4、φV5及びφV6)が供給される6段の電荷転送段を含み、第2転送部22は垂直転送部2を構成する電荷転送段のうちの水平転送部4の直前に位置する最終の電荷転送段で構成される。電荷転送段のそれぞれは、転送パルスが供給される1つの電極と、該電極の下方に形成された半導体基板の不純物領域とから構成される。
【0015】
水平転送部4は、垂直転送部2から転送された信号電荷を水平方向(X軸方向左側)へ転送する。水平転送部4は異なる転送パルス(φH1、φH2及びφH3)が供給される3段の電荷転送段を含む。
駆動制御部7は、垂直転送部2及び水平転送部4による電荷転送を制御する。具体的に、駆動制御部7は、第1転送部21の垂直転送電極に6相の転送パルスφV1、φV2、φV3、φV4、φV5及びφV6を供給して第1転送部21を駆動する。そして、駆動制御部7は、第2転送部22の垂直最終段電極に7種類の転送パルスφV7、φV7R、φV7L、φV8、φV8R、φV8L及びφV9を供給して第2転送部22を駆動する。また、駆動制御部7は、水平転送部4の水平転送電極に3相の水平転送パルスφH1、φH2及びφH3を供給して水平転送部4を駆動する。
【0016】
駆動制御部7は、第1転送部21が、バリア領域で区切られるウェル領域で転送される信号電荷であるパケットを転送した後、水平方向へのパケットの転送が行われる期間でパケットの転送を停止し、第2転送部22が、同一のグループ内の異なる第1転送部21により転送されたパケットを異なるタイミングで水平転送部4に転送し、水平転送部4が、異なるタイミングで転送されたパケットを異なる期間で水平方向に転送し、異なる期間のそれぞれで、第1転送部21のパケットを形成するウェル領域として動作する電荷転送段
が異なるように垂直転送部2による電荷転送を制御する。
【0017】
このとき、駆動制御部7は、第1転送部21が、上記異なる期間の間で第1転送部21のパケットを第2転送部22に向かって転送するように垂直転送部2による電荷転送を制御する。
2.固体撮像装置の電極構成
次に、本実施の形態に係る固体撮像装置の電極構成について、図2を用い説明する。図2は、本実施の形態における固体撮像装置の電極構成を模式的に示す図である。
【0018】
図2に示すように、第1転送部21においては、垂直転送電極は1つのフォトダイオード1に対して2電極が形成されており、垂直転送電極V1、V2、V3、V4、V5及びV6の6電極を1単位としてこれが繰り返し配置されている。これらの垂直転送電極V1〜V6には転送パルスφV1〜φV6が印加され、パケットを水平転送部4に向けて転送する。
【0019】
第2転送部22においては、垂直最終段電極V7、V7R、V7L、V8、V8R、V8L及びV9が形成され、これらの垂直最終段電極V7〜V9には転送パルスφV7、φV7R、φV7L、φV8、φV8R、φV8L、φV9が印加される。
水平転送部4においては、3種類の転送電極H1、H2及びH3が形成され、これらの転送電極H1〜H3には3相の水平転送パルスφH1〜φH3が印加されるが、水平転送におけるパケットはこの転送電極H1〜H3に対して1パケットが形成されるため、垂直転送部2の3列に対して独立して1パケットを転送することができる。このため、垂直転送部2を転送された1行分の信号電荷は、第2転送部22にて3回に割り振られて水平転送部4に転送され、3回に分けて水平転送されて出力部6から出力される。
【0020】
3.固体撮像装置のVレート期間の駆動方法
次に、本実施の形態に係る固体撮像装置のVレート期間の駆動方法について、図3から図9を用い説明する。
(a)第1の方法による駆動
従来の技術に基づく第1の方法による、固体撮像装置のVレート期間の駆動方法について、図3から図5を用い説明する。図3は従来の技術に基づく第1の方法による固体撮像装置のVレート期間の駆動方法を示すタイミング図である。図4は、従来の技術に基づく第1の方法による図3のVレート期間のタイミングのHレート期間を拡大したタイミング図である。また、図5は、図4のタイミングチャートに対応した従来の駆動における電荷転送をポテンシャル図と転送電荷を模式的に示したものである。
【0021】
図3に示すように、固体撮像装置の駆動においては、垂直転送部(第1転送部)21、垂直転送部(第2転送部)22及び水平転送部4に対して、転送パルスφV1〜φV6、φV7L/R、φV8L/R、φV9、φH1〜φH3が順次印加される。そして、図3に示すタイミングチャートにおいて、Hレート期間Aが含まれる。
ここで、従来の技術に基づく第1の方法による駆動では、フォトダイオードから読み出された信号電荷は、垂直転送部21を図4のタイミングでφV1からφV6の繰り返し電極を駆動して転送される。この例では、繰り返しの6電極中、3電極で電荷を蓄積し、転送は3電極蓄積と2電極蓄積を繰り返しながら行う。
【0022】
具体的には、図4に示すように、転送パルスφV1は、タイミングt1までHigh(H)レベルであり、タイミングt2からタイミングt8までの期間にLow(L)レベル、タイミングt9からは再度Hレベルに設定される。転送パルスφV2は、タイミングt3までHレベルであり、タイミングt4からタイミングt10までの期間にLレベル、その後は再度Hレベルに設定される。同様に、転送パルスφV3は、タイミングt5まではHレベルであり、タイミングt6から一定の期間、Lレベルとされ、その後、再度Hレベルに設定される。
【0023】
一方、図4に示すように、転送パルスφV4は、タイミングt2までLレベルであり、タイミングt3からタイミングt7までの期間にHレベル、タイミングt8からは再度Hレベルに設定される。転送パルスφV5は、タイミングt4までLレベルであり、タイミングt5からタイミングt9までの期間にHレベル、タイミングt10からは再度Hレベルに設定される。転送パルスφV6も、タイミングt4までLレベルであり、タイミングt5から一定の期間、Hレベルとされ、その後、再度Hレベルに設定される。
【0024】
図5(a)から図5(e)に示すように、タイミングt1における電荷蓄積状態のポテンシャルからタイミングt2、タイミングt3と電荷転送されるに従って、信号電荷が取り残される(丸印B〜丸印B)。具体的には、転送パルスφV1がLレベルとされたタイミングt2において、図5(b)に示すように、電極V1に相当する箇所のポテンシャルが変化する。このとき、丸印Bの部分に示すように、一部の信号電荷が取り残される。そして、転送パルスφV4がHレベルとされ、電極V4に相当する箇所のポテンシャルが変化するタイミングt3においても、V1電極に電荷が取り残された状態が維持される(丸印B)。同様に、転送パルスφV2、φV3、φV5、φV6の印加によるポテンシャルが変化する以後のタイミングt3〜においても、図5(c)から図5(m)に示すように、取り残された信号電荷は、時間の経過によっても、そのまま取り残されることになる。これが、垂直転送部の転送効率劣化の原因となり、垂直転送部21のバラツキによりライン毎に転送効率が異なり、縦線として画像に現れる。
(b)本実施の形態における第2の方法によるHレート期間の駆動
次に、本実施の形態における第2の方法による固体撮像装置の駆動の内、Hレート期間の駆動について、図6及び図7を用い説明する。図6は、本実施の形態における第2の方法による固体撮像装置の駆動の内、Hレート期間を拡大したタイミングである。また、図7は、本実施の形態における第2の方法による固体撮像装置の駆動の際の、垂直転送部の電荷転送時のポテンシャルと電荷を模式的に示した図である。
【0025】
なお、以下の説明においては、図3から図5に示す従来の技術における駆動との差異を中心に説明する。
図6に示すように、本実施の形態における第2の方法による駆動では、転送パルスφV1をタイミングt2でLレベルとした後、タイミングt3で一旦Hレベルへと戻す。そして、タイミングt4で再度Lレベルとする。その後については、図4に示したのと同様の波形を採る。同様に、転送パルスφV2〜φV6についても、HレベルからLレベル、あるいは、LレベルからHレベルへと変化させた後、一旦、もとの状態(信号電荷が取り残される前の電荷パケット)に戻し、その後に、完全に電荷転送を行うという操作を行っている。
【0026】
以上のような操作を実行する本実施の形態における第2の方法による駆動では、図7(b)に示すように、転送パルスφV1をLレベルにすることで電極V1に相当する箇所に取り残された信号電荷を(丸印C)、一旦、転送パルスφV1をHレベルへと一旦戻すことにより、図7(c)に示すように、信号電荷が取り残される前の電荷パケットに戻すことができる(矢印C)。そして、タイミングt3において、取り残された信号電荷を電荷パケットに戻すことで、図7(d)及び図7(e)に示すように、その後のタイミングt4、t5における垂直転送部での転送効率の劣化を抑制することができる。
【0027】
同様に、図7(f)に示すように、転送パルスφV2をLレベルにすることで電極V2に相当する箇所に取り残された信号電荷を(丸印C)、一旦、転送パルスφV2をHレベルへと一旦戻すことにより、図7(g)に示すように、信号電荷が取り残される前の電荷パケットに戻すことができる(矢印C)。そして、タイミングt7において、取り残された信号電荷を電荷パケットに戻すことで、図7(h)及び図7(i)に示すように、その後のタイミングにおける垂直転送部での転送効率の劣化を抑制することができる。
【0028】
そして、その後の駆動においても、上記同様の操作を実行することにより、図7(j)及び図7(k)に示すように、取り残された信号電荷を(丸印C)を、もとの電荷パケットに戻し(矢印C)、図7(n)及び図7(o)に示すように、取り残された信号電荷を(丸印C)を、もとの電荷パケットに戻し(矢印C)、図7(r)及び図7(s)に示すように、取り残された信号電荷を(丸印C)を、もとの電荷パケットに戻し(矢印C10)、図7(v)及び図7(w)に示すように、取り残された信号電荷を(丸印C11)を、もとの電荷パケットに戻す(矢印C12)。
【0029】
以上のように、本実施の形態における第2の方法による駆動においては、従来の駆動タイミングとは異なり、例えば、電極に相当する箇所に取り残された信号電荷を、取り残される前の電荷パケットに戻し、その後に完全に電荷転送する。これにより、上記従来の駆動(第1の方法による駆動)に比べて垂直転送部にて信号電荷の取り残しがない転送効率のよい電荷転送を実現することができる。
(c)特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法によるHレート期間の駆動
次に、特許文献1に開示の技術に基づく第3の方法による駆動の内、Hレート期間の駆動について、図8及び図9を用い説明する。図8は、特許文献1に開示された技術に基づく第3の方法による駆動でのHレート期間の駆動タイミングであり、図9は、特許文献1に開示された技術に基づく第3の方法による駆動での垂直転送部の電荷転送時のポテンシャルと電荷を模式的に示した図である。
【0030】
図8に示すように、転送パルスφV1は、タイミングt1までHレベルであり、タイミングt2からタイミングt6までの間がLレベルに設定される。転送パルスφV2は、タイミングt3までHレベルであり、タイミングt4からタイミングt7までの間がHレベルに設定される。転送パルスφV3は、タイミングt5までがHレベルであり、タイミングt6から一定の期間がLレベルに設定される。
【0031】
一方、転送パルスφV4は、タイミングt2までLレベルであり、タイミングt3から一定の期間がHレベルに設定される。転送パルスφV5は、タイミングt4までLレベルであり、タイミングt5から一定の期間がHレベルに設定される。転送パルスφV6についても、一定の期間がHレベルに設定される。
以上のように、第3の方法による駆動においては、タイミングt1からタイミングt6までは、上記従来の技術による駆動方法と変わらないが、タイミングt7においてV1電極をオン(Hレベルに)して取り残した信号電荷を回収し、その後のタイミングt23において回収した電荷をもとのパケットに合流させることで、垂直の転送効率を改善できる。
【0032】
具体的には、図9(b)から図9(f)に示すように、各箇所に取り残された信号電荷を(丸印D〜D)、図9(g)及び図9(h)に示すように、回収し(矢印D、D)、また、図9(k)に示すように、取り残された信号電荷を(丸印D)、図9(l)に示すように、回収する(矢印D)。そして、図9(w)に示すように、タイミングt23において、回収した信号電荷をもとの電荷パケットに合流させる(矢印D10)。
【0033】
4.効果
上記項目(a)に示す従来の技術における駆動(第1の方法による駆動)と、上記項目(b)に示す第2の方法による駆動と、上記項目(c)に示す第3の方法による駆動との各転送効率について、図10から図12を用い説明する。図10は、垂直転送部の信号電荷が8mV出力のときの、各転送効率を示し、図11は、垂直転送部の信号電荷が25mVのときの、各転送効率を示し、図12は、垂直転送部の信号電荷が200mVのときの、各転送効率を示す。
【0034】
先ず、図10に示すように、上記項目(a)に示す第1の方法による駆動(通常駆動)では、転送効率が略93%となっているのに対し、上記項目(c)に示す第3の方法による駆動(回収駆動)では、転送効率が略99%となっており、上記(b)に示す第2の方法による駆動(再転送駆動)では、転送効率が略100%となっている。このように、垂直転送部の信号電荷が8mVの低照度時の撮影に際しては、本発明の実施の形態における第2の方法を用いた再転送駆動(上記項目(b)に示す方法)が、通常駆動(上記項目(a)に示す方法)、特許文献1の回収駆動(上記項目(c)に示す方法)に比べて一番転送効率が良い。
【0035】
次に、図11に示すように、垂直転送部の信号電荷が25mV出力のときにおいては、通常駆動(上記項目(a)に示す第1の方法)の転送効率が98%となっているのに対して、本発明の実施の形態における第2の方法を用いた再転送駆動(上記項目(b)に示す方法)、及び特許文献1の回収駆動(上記項目(c)に示す第3の方法)での各転送効率が略100%となっている。このように、垂直転送部の信号電荷が25mVの時の撮影に際しては、本発明の実施の形態における第2の方法を用いた再転送駆動(上記項目(b)に示す方法)と特許文献1の回収駆動(上記項目(c)に示す第3の方法が略同等の転送効率で、通常駆動(上記項目(a)に示す第1の方法)よりも良い結果である。
【0036】
次に、図12に示すように、垂直転送部の信号電荷が200mV出力のときにおいては、従来駆動(上記項目(a)に示す第1の方法)、及び本発明の実施の形態における第1の方法を用いた再転送駆動(上記項目(b)に示す方法)の転送効率が、略99%となっており、特許文献1の回収駆動(上記項目(c)に示す第3の方法)の転送効率が100%となっている。このように、垂直転送部の信号電荷が200mVの高照度時の撮影に際しては、特許文献1の回収駆動(上記項目(c)に示す第3の方法)が、通常駆動(上記項目(a)に示す第1の方法)、本発明の実施の形態における第2の方法を用いた再転送駆動(上記項目(b)に示す方法)に比べて、一番転送効率が良い。
【0037】
以上より、本発明の実施の形態における駆動(上記項目(b)に示す第2の方法)は、25mV以下の低照度時の撮像時に非常に有効であり、高ISOのカメラが求められる現状においては、非常に有効な駆動である。図10から図12に示す結果から、信号出力により最適な駆動方法が存在することがわかる。
以上、図面を用いて説明したように、固体撮像装置の駆動においては、垂直CCDにおいて転送効率劣化で取り残された電荷を、転送パケットとは別に電荷回収用のパケットを設けて水平CCDなどで電荷を合流させて転送効率劣化を防止する方法が提案されている。また、回収駆動とは別に取り残された電荷を再転送し、元の電荷転送パケットに転送毎に戻す方法もある。これらの転送効率改善の駆動は、信号量によって効果に違いがある。
【0038】
本発明の実施の形態では、この信号量によって効果の違うそれぞれの転送方法を、信号量によって使い分けることで、低照度から高照度まで転送効率劣化による縦線のないが良質な画像を得ることを可能にする。
図10、図11、及び図12に通常駆動(第1の方法による駆動)、回収駆動(第3の方法による駆動)、再転送駆動(第2の方法による駆動)の転送効率の結果を示したが、 低照度においては再転送駆動が一番転送効率がよいが、信号が増加して高照度になった場合は回収駆動の方が転送効率がよくなる。
【0039】
一方、このような転送効率を改善する駆動は、転送のステップ数が増加して、スチル画像のフレームレートの低下、消費電力の増加などのデメリットもある。
本発明の実施の形態では、このようなそれぞれの駆動のメリット、デメリットを考慮して、低照度では再転送駆動(第2の方法による駆動)、一番使うことの多い中照度ではフレームレートの低下、消費電力の増加を抑制できる通常駆動(第1の方法による駆動)もしくは一番転送効率のよい回収駆動(第3の方法による駆動)を使うよう、信号出力に合わせて使い分け、転送効率劣化による縦線のない良質な画像を得る。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態である撮像装置(カメラ)について、図13を用い説明する。図13は、本実施の形態のカメラの構成を模式的に示すブロック図である。
図13に示すように、本実施の形態のカメラは、レンズ90と、上記第1の実施の形態に係る固体撮像装置と同様の構成を有する固体撮像装置91と、信号処理部93と、外部インターフェイス部94とから構成される。
【0041】
上記構成を有するカメラにおいて、外部に信号が出力されるまでの処理は以下のような順序に沿って行われる。
(1)レンズ90を光が通過し、固体撮像装置91に入る。
(2)信号処理部93は、固体撮像装置91を駆動し、固体撮像装置91からの出力信号を取り込む。
【0042】
このとき、信号処理部93は、カメラ外部からの指示及び固体撮像装置91からの出力の少なくともいずれかに基づいて、本発明の再転送駆動、特許文献1の回収駆動および従来駆動のいずれにするかを決定し、駆動制御部7を制御する。
例えば、信号処理部93は、ユーザにより高ISO感度での高ゲイン状態が設定されている場合(暗い被写体を撮影する場合)には、上記本発明の実施の形態の第1の方法による駆動方法で垂直転送部の転送が行われ、低ISO感度での低ゲイン状態が設定されている場合(明るい被写体を撮影する場合)には第3の方法による駆動方法で垂直転送部の転送が行われるように駆動制御部7を制御する。
【0043】
(3)信号処理部93で処理した信号が、外部インターフェイス部94を通して外部に出力される。
以上のように本実施の形態のカメラによれば、転送効率劣化による縦線が低減された固体撮像装置91からデータが出力される。よって、本実施の形態のカメラは、優れた画質での撮像を実現することができる。
【0044】
また、本実施の形態のカメラによれば、信号処理部93が撮像シーン、信号電荷量やカメラのゲイン設定に応じて駆動制御部7の転送パルスを制御することにより、低照度から高照度の領域まで転送効率劣化による縦線のない画像を得ることができる。
[その他の事項]
以上、本発明に係る固体撮像装置及び撮像装置について、第1、第2の実施の形態で一例を説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、これらの実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、これらの実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される形態も、本発明に含まれる。
【0045】
例えば、上記実施の形態において、水平転送期間中にパケットを保持する垂直転送電極数
は2電極又は4電極であるとしたが、この電極数に限られない。
また、上記実施の形態において、第1転送部21は異なる転送パルスが供給される6段の電荷転送段を含むとしたが、上記実施の形態のパケット転送が適用可能な転送部、つまり4段以上の電荷転送段を含む転送段であればこれに限られない。
【0046】
例えば、図14に示すように、第1転送部21は異なる転送パルスが供給される4段の電荷転送段を含んでいてもよい。図14に示すように、n型基板107には、複数のフォトダイオード101が行列状に配列されており、各列間に垂直転送部102が形成されている。垂直転送部102の下端には、水平転送部104が設けられ、その転送方向下流側に電荷検出部105及び出力アンプ106が設けられている。
【0047】
垂直転送部102の転送電極及び水平転送部104の転送電極に対しては、タイミング発生回路108から転送パルスφV1〜φV4、φH1、φH2が出力されるようになっている。そして、図14に示す構成では、垂直転送部102の第1転送部が異なる転送パルスが供給される4段の電荷転送段を含む構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、固体撮像装置及び撮像装置に好適であり、特に一体型ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ及び医療用内視鏡のイメージセンサに好適である。
【符号の説明】
【0049】
1、101. フォトダイオード
2、102. 垂直転送部
3. 撮像部
4、104. 水平転送部
6. 出力部
7. 駆動制御部
21. 第1転送部
22. 第2転送部
90. レンズ
91. 固体撮像装置
93. 信号処理部
94. 外部インターフェイス部
103. 撮像領域
105. 電荷検出部
106. 出力アンプ
107. n型基板
108. タイミング発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配列された複数の光電変換部と、
前記光電変換部に蓄えられた信号電荷を読み出し、垂直方向に転送する複数の垂直転送部と、
前記垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向へ転送する水平転送部と、
前記垂直転送部及び前記水平転送部による電荷転送を制御する駆動制御部とを備え、
前記駆動制御部は前記垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を、少なくとも1回以上連続で転送できるよう駆動制御する
固体撮像装置。
【請求項2】
前記駆動制御部による駆動制御においては、前記垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を少なくとも1つ以上の電荷回収パケットを作って電荷転送し、垂直転送部もしくは水平転送部にて取り残した元の電荷パケットに合流できるように駆動制御するか否かが決定される
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
行列状に配列された複数の光電変換部と、
前記光電変換部に蓄えられた信号電荷を読み出し、垂直方向に転送する複数の垂直転送部と、
前記垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向へ転送する水平転送部と、
前記垂直転送部及び前記水平転送部による電荷転送を制御し、前記垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を、少なくとも1回以上連続で転送できるよう駆動制御する駆動制御部と、
外部からの指示及び前記水平転送部からの出力の少なくとも何れかに基づいて、前記垂直転送部にて1回の電荷転送にて取り残された電荷を少なくとも1つ以上の電荷回収パケットを作って電荷転送し、垂直転送部もしくは水平転送部にて取り残したもとの電荷パケットに合流できるように駆動制御するかの何れにするかを決定する信号処理部と、
を備える
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−9266(P2013−9266A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142112(P2011−142112)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】