説明

固定部材

【課題】板状部材に固定される固定部材において、複数の厚みの板状部材に固定可能とする。
【解決手段】板状の第1部材200に複数の係合部205を設け、板状の第2部材300に係合部205に引っ掛かることができる複数の爪部303、304を設ける。複数の爪部303、304には、第2部材300の板面からの長さが異なる複数種類の爪部303、304が含まれるようにする。板状部材500の一面側に、係合部205を貫通孔510に対応させて第1部材200を配置し、板状部材500の他面側に、爪部303、304が貫通孔510に挿入されるように第2部材300を配置した状態で、第1部材200と第2部材300を互いに接近させることで、係合部205と爪部303、304とが引っ掛かり合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有する板状部材に固定して用いられる固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貫通孔を有する板状部材の両面側から一対の部材を互いにはめ合わせることで、板状部材に固定する固定部材が知られている。このような構成を有する固定部材は、一対の部材が板状部材の両面側において板状部材の厚みの分だけ離れた状態で固定されることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成の固定部材では、特定の厚みを有する板状部材の専用品となってしまい、異なる厚みの板状部材には対応できないという問題がある。このため、固定部材を固定する板状部材の厚みが異なる場合には、それぞれの厚みの板状部材に対応した固定部材を複数用意する必要がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、板状部材に固定される固定部材において、複数の厚みの板状部材に固定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、板状の第1部材(200)と板状の第2部材(300)とを備え、前記第1部材(200)と前記第2部材(300)が貫通孔(510)を有する板状部材(500)の異なる面にそれぞれ固定される固定部材であって、
前記第1部材(200)には複数の係合部(205)が設けられ、前記第2部材(300)には前記複数の係合部(205)のそれぞれに対応し、前記係合部(205)に引っ掛かることができる複数の爪部(303、304)が設けられており、前記複数の爪部(303、304)には、前記第2部材(300)の板面からの長さが異なる複数種類の爪部(303、304)が含まれており、前記板状部材(500)の一面側に、前記係合部(205)を前記貫通孔(510)に対応させて前記第1部材(200)を配置し、前記板状部材(500)の他面側に、前記爪部(303、304)が前記貫通孔(510)に挿入されるように前記第2部材(300)を配置した状態で、前記第1部材(200)と前記第2部材(300)を互いに接近させることで、前記係合部(205)と前記爪部(303、304)とが引っ掛かり合うことを第1の特徴としている。
【0006】
このように、第2部材(300)に板面からの長さが異なる爪部(303、304)を設けることで、複数種類の爪部(303、304)はそれぞれ、第1部材(200)と第2部材(300)の間隔が異なる状態で係合部(205)に引っ掛かっり合うことができる。このため、固定部材(100、101)を異なる厚みの板状部材(500)に確実に固定することすることができる。
【0007】
また、本発明の第2の特徴は、前記第1部材(200)において、前記複数種類の爪部(303、304)のうち最も長さが長い爪部(303)に対応する部位に貫通孔(204)が形成されていることである。これにより、第1部材(200)の係合部(203)と第2部材(300)の長さが短い爪部(304)とを引っ掛かり合わせた際に、長さが長い爪部(303)は第1部材(200)の貫通孔(204)に位置することとなり、第1部材(200)の板面との干渉を避けることができる。
【0008】
また、本発明の第3の特徴は、前記第1部材(200)および前記第2部材(300)には、前記板状部材(500)の貫通孔(510)に対応するように環状に形成されたリブ(202、302)が板面から突出して設けられ、前記爪部(205)および前記係合部(303、304)は、前記リブ(202、302)に設けられていることである。
【0009】
これにより、板状の第1部材(200)および第2部材(300)の強度を向上させることができるとともに、板面から突出する爪部(303、304)の長さを短くでき、爪部(303、304)の強度を向上させることができる。さらに、第1部材(200)および第2部材(300)を板状部材(500)の両面側に配置する際に、第1部材(200)および第2部材(300)は、板状部材(500)の貫通孔(510)に対応した形状のリブ(202、302)に案内されるので、板状部材(500)に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の第4の特徴は、前記複数種類の爪部(303、304)は、第1爪部(303)と、前記第1爪部(303)より前記第2部材(300)の板面からの長さが短い第2爪部(304)とを含んでおり、前記第2爪部(304)が2つの前記第1爪部の間に配置されていることである。
【0011】
これにより、長さの長い第1爪部(303)により第1部材(200)と第2部材(300)を固定する際には、2つの第1爪部(303)により第1部材(200)と第2部材(300)を安定した状態で固定できる。さらに、長さの短い第2爪部(304)により第1部材(200)と第2部材(300)を固定する際には、2つの第1爪部(303)が第1部材(200)と第2部材(300)を保持した状態で第2爪部(303)により第1部材(200)と第2部材(300)を固定できる。
【0012】
また、本発明の第5の特徴は、前記板状部材(500)に固定された状態で、他の部材を取付可能な取付部(205、206)を備えていることである。これにより、固定部材を用いて板状部材と他の部材とを連結することができる。
【0013】
また、本発明の第6の特徴は、前記板状部材(500)は、多数の突起部が形成された凹凸シート(501)と、前記凹凸シート(501)の両面に接合された平坦シート(502、530)とからなる合成樹脂製中空板から構成されていることである。合成樹脂製中空板に固定部材を固定する際には、構造上ネジを用いることが難しいため、爪部と係合部を引っ掛かり合わせる固定部材を好適に用いることができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1〜図8に基づいて説明する。
【0016】
図1は固定部材100、101の構成を示しており、(a)は第1固定部材100の斜視図であり、(b)は第2固定部材101の斜視図である。第1固定部材100と第2固定部材101は、ほぼ同様の構成を有しているので、先に共通する構成について説明し、その後異なる構成について説明する。
【0017】
固定部材100、101は、板状部材に固定されて用いられるものであり、本実施形態の固定部材100、101は、板状部材に固定された状態で、さらに他の部材を固定できるように構成されている。図1に示すように、固定部材100、101は、第1部材200と第2部材300の2つの部材からなる。第1部材200と第2部材300は、それぞれ略平板状の部材であり、一対で用いられる。第1部材200と第2部材300は互いに嵌合することで、後述のように板状部材の両面側に固定される。第1部材200と第2部材300は、合成樹脂材料により一体成型されており、本実施形態ではポリプロピレンを用いている。
【0018】
図2は第1部材200を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は(a)のA−A断面図である。
【0019】
第1部材200は、略長方形状の平板部201を有している。平板部201の一方の面には、リブ202が設けられている。リブ202は、平板部201の一方の面から所定高さだけ突出して設けられている。リブ202は、平板部201の板面に直交する方向(紙面垂直方向)から見て、略長方形の環状に形成されている。
【0020】
リブ202の内周面には、複数の爪部203が設けられている。爪部203は、2個が1組として用いられる。図2(a)に示すように、図中の左右方向に配置された2個の爪部203が一対になっており、3組で合計6個の爪部203が設けられている。図2(e)に示すように、爪部203の先端は、平板部201の板面と平行な方向に突出し、一対の爪部203の先端は、互いに対向する方向に突出している。図2(a)、(c)、(e)において、左側に位置する爪部203の先端は右側に突出しており、右側に位置する爪部203の先端は左側に突出している。なお、第1部材200の爪部203が本発明の第1部材の係合部に相当している。
【0021】
平板部201におけるリブ202で囲まれた領域に、複数の開口部204が形成されている。開口部204は、平板部201における爪部203に対応する位置に合計6個設けられている。このため、爪部203は、リブ202の内壁面から開口部204に向かって突出している。開口部204は、長方形状の貫通孔として構成され、後述する第2部材300の爪部303、304が挿入可能な大きさになっている。
【0022】
平板201におけるリブ202が設けられた面の反対側の面には、第1把持部205が設けられている。第1把持部205は、固定部材100、101が板状部材に固定された状態で他の部材を固定するためのものである。本実施形態の第1把持部205は、棒状部材が把持されるように構成されている。本実施形態の第1把持部205は、平板部201から突出する一対の突起部から構成され、一対の突起部の間に挿入された棒状部材が一対の突起部により狭持され固定される。第1把持部205の先端は、棒状部材を挿入しやすいように内側に向かって傾斜しており、さらに挿入された棒状部材を確実に固定するために内側に向かって突出する爪部が設けられている。
【0023】
図3は第2部材300を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は(a)のB−B断面図、(f)は(a)のC−C断面図である。
【0024】
第2部材300は、略長方形状の平板部301を有している。平板部301の一方の面には、リブ302が設けられている。第2部材300のリブ302は、平板部301の一方の面から所定高さだけ突出して設けられている。第2部材300のリブ302は、第1部材200のリブ202より一回り小さい略長方形の環状に構成されている。
【0025】
リブ302には、第1爪部303と第2爪部304が設けられている。これらの爪部303、304は、第1部材200の爪部203に対応する位置に設けられている。爪部303、304は、2個が1組として用いられる。図3(a)に示す例では、図中の左右方向に配置された2個の爪部303、304が対になっており、一対の第1爪部303が2組設けられており、一対の第2爪部304が1組設けられている。爪部303、304の先端は、平板部301の板面と平行な方向に突出し、対となっている爪部303、304の先端は、互いに反対方向に向かって突出している。図3(a)、(d)〜(f)では、左側に位置する爪部303、304の先端は左側に突出し、右側に位置する爪部303、304の先端は右側に突出している。
【0026】
図3(b)、(d)〜(f)に示すように、第1爪部303と第2爪部304は平板部301の板面からの高さが異なっており、第1爪部303の方が第2爪部304より平板部301の板面からの高さが高くなっている。図3に示す例では、長さの長い第1爪部303が四隅に配置され、長さの短い第2爪部304が第1爪部303の間に挟まれるように配置されている。
【0027】
図1に戻り、図1(b)に示す第2固定部材101は、図1(a)に示す第1固定部材100と比較して、第1部材200に第2把持部206が設けられている点が異なっている。なお、第1把持部205および第2把持部206が本発明の取付部に相当している。
【0028】
第2把持部206は、平板部201の一辺を湾曲させて延長した形状となっており、半円状に湾曲した断面を有している。このような形状により、第2把持部206では、第1把持部205と直行する方向で棒状部材を把持して固定することができる。また、第2固定部材101の第1把持部205は、第1固定部材100の第1把持部205より板面から若干長く形成されている。
【0029】
次に、固定部材100、101の適用例について説明する。本実施形態の固定部材100、101は、ロールボックス400に板状部材500を固定するために用いられる。図4は、固定部材100、101を用いてロールボックス400に板状部材500を固定した状態を示す斜視図である。
【0030】
ロールボックス400は、荷物を搬送するために搬送用台車であり、荷物を載せるための長方形の底板と、底板の四辺に垂直に設けられた4つの側枠とを備え、底部にはキャスターが設けられている。ロールボックス400の側枠はパイプが縦横に連結された格子状に構成されている。このため、荷物の落下防止や傷付き防止などのために、板状部材500でロールボックス400の側面を覆うことが行われている。板状部材500をロールボックス400に固定する方法として、針金などを用いることが考えられるが、このような固定方法ではロールボックス400に対する板状部材500の着脱作業を容易に行うことができない。このため、本実施形態では、板状部材500をロールボックス400に固定するために上記構成を有する固定部材100、101を用いている。
【0031】
本実施形態では、板状部材500として合成樹脂製気泡ボードが用いられる。図5(a)は合成樹脂製気泡ボード500の斜視図であり、図5(b)は合成樹脂製気泡ボード500を分解した状態を示す斜視図である。
【0032】
図5(a)、図5(b)に示すように、気泡ボード500は合成樹脂製中空板から構成されている。このような気泡ボード500として、プラパール(登録商標)の商品名で知られているものを用いることができる。気泡ボード500は、凹凸シート501と、凹凸シート501の両面に接合された2枚の平坦シート502、503とからなる3層構造となっている。凹凸シート501には複数の中空状(例えば円柱状)の突起部がエンボス加工されており、凹凸シート501の突起部開口側(図5の下側)に平坦シート503が接合され、これにより空気が封入された密閉空間504が形成される。凹凸シート501の突起部は、面全体に千鳥状に多数配置されているため、気泡ボード500は段ボールと比較して方向性がないという特性を有している。
【0033】
このような構成により、気泡ボード500は、軽量であり、また耐圧縮性、耐衝撃性に優れるという特性を有している。合成樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系重合体や再生PETのような分解性プラスチックを用いることができる。本実施形態では気泡ボード500を構成する合成樹脂として、固定部材100、101と同一の材料であるポリプロピレンを用いている。
【0034】
このような構成の気泡ボード500としては、単位面積当り重量(目付重量)が200グラム/m2〜3000グラム/m2程度のものがよく知られている。気泡ボード50は軟質の肉厚シートから構成され曲げ剛性を有しており、薄肉シートから構成され柔軟性を有する気泡シートと区別される。なお、本明細書中において合成樹脂製中空板とは、目付重量が200グラム/m2以上の気泡ボードを意味するものとする。
【0035】
図6は、固定部材100、101を用いて板状部材500をロールボックス400に固定する手順を示している。図6(a)に示すように、ロールボックス400の側枠に対応した大きさの板状部材500を用意する。板状部材500には、固定部材100、101を固定するための貫通孔510が4箇所設けられている。貫通孔510は、第1部材200のリブ202に対応した大きさに形成されている。図6(b)に示すように、下側の貫通孔510には第1固定部材100が固定され、上側の貫通孔510には第2固定部材101が固定される。
【0036】
図7、図8は、固定部材100、101を板状部材500に固定した状態を示す断面図である。図7は厚みの厚い板状部材500に固定部材100、101を固定した状態を示し、図8は図7の例より厚みの薄い板状部材500に固定部材100、101を固定した状態を示している。図7(a)、図8(b)に示すように、板状部材500の一面側(図7の上面側)から貫通孔510に第1部材200のリブ202および爪部203が挿入され、板状部材500の他面側(図7の下面側)から貫通孔510に第2部材300のリブ302および爪部303、304が挿入される。そして、第1部材200と第2部材300を互いに接近させることで、第1部材200の爪部203と第2部材300の爪部303、304とが引っ掛かり合って嵌合する。
【0037】
板状部材500は、用途に応じて、目付重量が異なり厚みが異なる複数種類の気泡ボードが用いられることがある。本実施形態の固定部材100、101は、2種類の厚みが異なる板状部材500に固定することができるように構成されている。固定部材100、101を構成する第2部材300は高さが異なる2種類の爪部303、304を備えており、それぞれの爪部303、304を第1部材200の爪部203に引っ掛かけることで、第1部材200と第2部材300との間隔を異ならせることができる。
【0038】
図7は、第1部材200の爪部203と第2部材300の第1爪部303とが嵌合した状態を示している。図7(a)に示すように、長さが長い第2部材300の第1爪部303と第1部材200の爪部203とが引っ掛かり合うことで、固定部材100、101を厚みが厚い板状部材500に固定することができる。このとき、図7(b)に示すように、長さが短い第2部材300の第2爪部304と第1部材200の爪部203とは引っ掛かり合っていない。
【0039】
図8は、第1部材200の爪部203と第2部材300の第2爪部304とが嵌合した状態を示している。図7に示す第1部材200の爪部203と第2部材300の第1爪部303とが嵌合した状態から、さらに第1部材200と第2部材300を互いに接近させることで、図8に示す第1部材200の爪部203と第2部材300の第2爪部304とが嵌合した状態にすることができる。図8(b)に示すように、長さが短い第2部材300の第2爪部304と第1部材200の爪部203とが引っ掛かり合うことで、固定部材100、101を厚みが薄い板状部材500に固定することができる。このとき、図8(a)に示すように、第2部材300の第1爪部303は第1部材200の爪部203と引っ掛かり合っておらず、長さが長い第2部材300の第1爪部303は第1部材200の貫通孔204を突き抜けた状態となっている。このように、第1部材200に貫通孔204を設けることで、第2部材300の第1爪部303が第1部材200の平板部201と干渉することを防止できる。
【0040】
以上の手順で図6(b)に示すように板状部材500に固定部材100、101を固定することができる。次に、図6(c)に示すように、板状部材500に固定された固定部材100、101をロールボックス400に固定する。板状部材500の下部に固定された第1固定部材100は、第1把持部205が鉛直方向に配置された枠に固定される。板状部材500の上端に固定された第2固定部材200は、第1把持部205が鉛直方向に配置された枠に固定され、第2把持部206が水平方向に配置された上端の枠に固定される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の固定部材100、101によれば、異なる厚みの板状部材500に確実に固定することすることができる。
【0042】
また、把持部205、206を備えているので、板状部材500に固定された固定部材100、101に他の部材を固定することが可能である。このため、固定部材100、101を用いて、板状部材500を他の部材に容易に固定することができる。上記実施形態のように、板状部材500に固定部材100、101を固定することで、板状部材500をロールボックス400に容易に固定でき、かつ、容易に外すことができる。
【0043】
また、本実施形態の固定部材100、101は、リブ202、302が設けられているので、平板部201、301の強度が向上するとともに、平板部201、301から突出する爪部203、303、304の長さも短くなり、爪部203、303、304の強度を向上させることができる。さらに、第1部材200および第2部材300を板状部材500の両面側に配置する際に、第1部材200および第2部材300は、板状部材500の貫通孔510に対応した形状のリブ202、302に案内されるので、板状部材500に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0044】
また、本実施形態のように、固定部材100、101に他の部材を取付可能な把持部205、206を設けることで、固定部材100、101を用いて板状部材500と他の部材とを連結することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、板状部材500として中空構造の気泡ボードを用いる場合には、ネジによる固定が困難であり、上記構成のような爪部203、303、304の噛合いにより互いを固定する固定部材100、101を用いることが有効である。
【0046】
さらに気泡ボードでは、目付重量が異なる場合に厚みが変化するため、本実施形態の異なる厚みの板状部材500に固定可能な固定部材100、101を好適に用いることができる。この点について図9を用いて説明する。図9(a)はプラスチック段ボールの断面図であり、図9(b)は気泡ボードの断面図である。
【0047】
プラスチック段ボールは、例えば特公昭52−44357号公報に記載されているように、押出機から溶融状態の合成樹脂材料を成型用ダイスに押し出し、さらに中空部に空気を注入して膨らませ、最後にクリアランスが一定に設定されたサイジング冷却プレートを通過させることで製造することができる。このため、図9(a)に示すように、目付重量を異ならせても(例えば1500g/m2と3000g/m2)、全体の厚みAを一定にできる。
【0048】
これに対し、気泡ボードは、例えば特開2002−326297号公報に記載されているように、成形ロール上で成形された凹凸シートに平坦シートが加圧ロールにより押しつけられ接合される。このため、気泡ボードでは、目付重量を変化させた場合には、成形ロール(金型)が同一であれば気泡部の高さBが同一になり、シートの厚みCが気泡ボード全体の厚みAに影響を与えることとなる。例えばシートの厚みCが2倍になった場合には、気泡ボード全体の厚みAはB+C×3からB+(C×2)×3となり、シートの厚みCの3倍分だけ気泡ボード全体の厚みAが増える。図9(b)に示す例において、気泡部の厚みB=5mm、目付重量1500g/m2のシート厚みC1=0.5mm、目付重量3000g/m2のシート厚みC2=1mmとすると、目付重量1500g/m2の気泡ボードの厚みAは6.5mmとなり、目付重量3000g/m2の気泡ボードの厚みAは8mmとなる。以上のように、気泡ボードは構成上、目付重量を変化させると全体の厚みが変化する。このため、板状部材500として気泡ボードを用いる場合には、本実施形態の固定部材100、101を好適に用いることができる。
【0049】
また、固定部材100、101を板状部材500と同一の材料(本実施形態ではポリプロピレン)から構成することで、廃棄の際に板状部材500から固定部材100、101を外す必要がなくなり、リサイクルを容易に行うことができる。
【0050】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、固定部材100、101を用いて板状部材500をロールボックス400に固定したが、本発明の固定部材の用途はこれに限られることなく、種々の用途に適用可能である。
【0051】
例えば、板状部材に設けられた貫通孔が取っ手として使用される場合に、この貫通孔に本発明の固定部材を固定し、固定部材を取っ手の周縁部を覆うカバーとして用いることができる。この場合、上記実施形態で説明した把持部205、206は不要であり、さらに、固定部材の第1部材200および第2部材300の平板部201、301における中央付近に手を通すための貫通孔を設ければよい。具体的には、平板部201、301におけるリブ202、302の内側に相当する部位を貫通孔として構成し、この貫通孔の周囲に爪部203、303、304を設ければよい。このような構成の固定部材を板状部材の貫通孔(取っ手)に固定することで、板状部材の貫通孔(取っ手)の周縁部が固定部材で覆われることとなる。
【0052】
また、上記実施形態では、固定部材100、101の第2部材300に長さが異なる2種類の爪部303、304を設け、2種類の厚みの板状部材500に対応可能に構成したが、これに限らず、長さが異なる3種類以上の爪部を設けることで、3種類以上の異なる厚みの板状部材500に対応させることができる。
【0053】
また、上記実施形態の固定部材100、101では、リブ202、302に爪部203、303、304を設けたが、これに限らず、リブ202、302を設けず、平板部201、301に直接爪部203、303、304を設けるように構成することもできる。
【0054】
また、上記実施形態の第1部材200では、第2部材300の爪部303、304が引っ掛かることができる爪部203を設けたが、これに限らず、第1部材200側には第2部材300の爪部303、304が引っ掛かることができる係合部が設けられていればよく、例えば貫通孔204の周縁部を係合部としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、板状部材500として気泡ボードを用いたが、これに限らず、本発明の固定部材は貫通孔が形成された板状部材であれば、プラスチック段ボール、木材、強化段ボールなど他の種類の板状部材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】固定部材の斜視図である。
【図2】(a)は第1部材の平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は(a)のA−A断面図である。
【図3】(a)は第2部材の平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は(a)のB−B断面図、(f)は(a)のC−C断面図である。
【図4】固定部材を用いてロールボックスに気泡ボードを固定した状態を示す斜視図である。
【図5】(a)は合成樹脂製気泡ボードの斜視図であり、(b)は合成樹脂製気泡ボードを分解した状態を示す斜視図である。
【図6】固定部材を用いて板状部材をロールボックスに固定する手順を示す説明図である。
【図7】固定部材を板状部材に固定した状態を示す断面図である。
【図8】固定部材を板状部材に固定した状態を示す断面図である。
【図9】(a)はプラスチック段ボールの断面図であり、(b)は気泡ボードの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100、101…固定部材、200…第1部材、201…平板部、202…リブ、203…爪部(係合部)、204…貫通孔、205…第1把持部(取付部)、206…第2把持部(取付部)、300…第2部材、301…平板部、302…リブ、303…第1爪部、304…第2爪部、400…ロールボックス、500…板状部材、510…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1部材(200)と板状の第2部材(300)とを備え、前記第1部材(200)と前記第2部材(300)が貫通孔(510)を有する板状部材(500)の異なる面にそれぞれ固定される固定部材であって、
前記第1部材(200)には複数の係合部(205)が設けられ、前記第2部材(300)には前記複数の係合部(205)のそれぞれに対応し、前記係合部(205)に引っ掛かることができる複数の爪部(303、304)が設けられており、
前記複数の爪部(303、304)には、前記第2部材(300)の板面からの長さが異なる複数種類の爪部(303、304)が含まれており、
前記板状部材(500)の一面側に、前記係合部(205)を前記貫通孔(510)に対応させて前記第1部材(200)を配置し、前記板状部材(500)の他面側に、前記爪部(303、304)が前記貫通孔(510)に挿入されるように前記第2部材(300)を配置した状態で、前記第1部材(200)と前記第2部材(300)を互いに接近させることで、前記係合部(205)と前記爪部(303、304)とが引っ掛かり合うことを特徴とする固定部材。
【請求項2】
前記第1部材(200)において、前記複数種類の爪部(303、304)のうち最も長さが長い爪部(303)に対応する部位に貫通孔(204)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記第1部材(200)および前記第2部材(300)には、前記板状部材(500)の貫通孔(510)に対応するように環状に形成されたリブ(202、302)が板面から突出して設けられ、前記爪部(205)および前記係合部(303、304)は、前記リブ(202、302)に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記複数種類の爪部(303、304)は、第1爪部(303)と、前記第1爪部(303)より前記第2部材(300)の板面からの長さが短い第2爪部(304)とを含んでおり、前記第2爪部(304)が2つの前記第1爪部の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の固定部材。
【請求項5】
前記板状部材(500)は、多数の突起部が形成された凹凸シート(501)と、前記凹凸シート(501)の両面に接合された平坦シート(502、530)とからなる合成樹脂製中空板から構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の固定部材。
【請求項6】
前記板状部材(500)に固定された状態で、他の部材を取付可能な取付部(205、206)を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223795(P2008−223795A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58945(P2007−58945)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】