説明

固形潤滑材

【課題】生体内の環境などにおいても十分な潤滑性が得られる、人工関節等の摺動部を有する潤滑材を提供する。
【解決手段】潤滑部を構成するシリコンウエハー等の基材の表面に、メチルメタクリレート等の高分子鎖を、リビングラジカル重合にて、高い密度でグラフトさせて、摩擦特性を向上させる。この時、基材の表面処理は、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン等にてラングミュアー・ブロジェット膜を形成させ、重合開始基とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材に関する。
【背景技術】
【0002】
加工技術の精密化および集積化の進展に伴い、いわゆるマイクロマシンなどの小型、精密な機器が注目されている。このようなマイクロマシンなどの摺動部の潤滑においては、サブミクロンあるいはナノオーダーの平滑性が要求される。また、手術時に用いられるカテーテル先端にマニピュレート機能を持たせるようなマイクロマシンにおいては、生体内の環境における潤滑性も要求される。
さらに、人工関節など生体内で使用する機器の摺動部の潤滑においては、生体内の環境における潤滑性に加えて生体適合性が要求される。
【0003】
一方、固体表面に電解質高分子鎖を比較的低密度でグラフトしたいわゆるポリマーブラシが、塩濃度が非常に低い水系溶媒中において摩擦を低減させることが報告されている(非特許文献1:Nature, 425, 163-165 (2003))。
【0004】
【非特許文献1】Nature, 425, 163-165 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなポリマーブラシは、電解質高分子鎖の電界効果によって摩擦を低減させるものであるため、生体内の環境における塩濃度など、電界効果が阻害される環境では十分な潤滑が得られないという問題があった。
そこで、生体内の環境など、電界効果が阻害される環境でも十分な潤滑性が得られる潤滑材が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、高分子鎖を高いグラフト密度でグラフトした表面が、電界効果が阻害される環境においても高い潤滑性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)0.1鎖/nm2以上のグラフト密度で高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材;
(2)グラフト密度が、0.15鎖/nm2以上である上記(1)記載の潤滑材;
(3)グラフト密度が、0.2〜2鎖/nm2である上記(2)記載の潤滑材;
(4)高分子鎖のグラフトが、グラフトフロム法またはグラフトオントゥ法による高分子鎖グラフトである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の潤滑材;
(5)高分子鎖のグラフトが、グラフトフロム法による高分子鎖グラフトである上記(4)記載の潤滑材;
(6)高分子鎖のグラフトが、ラジカル重合による高分子鎖グラフトである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の潤滑材;
(7)ラジカル重合が、リビングラジカル重合である上記(6)記載の潤滑材;
(8)リビングラジカル重合が、原子移動ラジカル重合である上記(7)記載の潤滑材;
(9)重合が、基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法または化学吸着法によって固定化された重合開始基から開始される、上記(5)〜(8)のいずれかに記載の潤滑材;
(10)重合が、基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法によって固定化された重合開始基から開始される、上記(9)記載の潤滑材;
(11)重合開始基が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化スルホニル基である、上記(5)〜(10)のいずれかに記載の潤滑材;
(12)重合開始基がクロロスルホニル基である上記(11)記載の潤滑材;
(13)高分子鎖が、ホモ重合した高分子鎖である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の潤滑材;
(14)ホモ重合した高分子鎖が、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)である上記(13)記載の潤滑材;
(15)グラフト密度が0.2〜2鎖/nm2であり、高分子鎖のグラフトがラジカル重合による高分子鎖グラフトであり、重合が基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法によって固定化された重合開始基から開始され、重合開始基がクロロスルホニル基であり、高分子鎖がホモ重合した高分子鎖である、高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材;
(16)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の潤滑材を含む物品;
(17)高分子鎖がグラフトされた表面が、物品の部材の表面に形成されている上記(16)記載の物品;
(18)医療用物品である上記(16)または(17)記載の物品;
(19)医療用物品が人工関節である上記(18)記載の物品
などを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、電界効果が阻害される環境においても高い潤滑性を示す潤滑材を提供することができる。また、加重による変形が少ない潤滑材を提供することもできる。さらに、生体適合性を有する潤滑材を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材
本発明の潤滑材は、基材に高分子鎖をグラフトすることによって、高分子鎖がグラフトされた表面を形成することによって得ることができる。
以下、本発明の高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材について詳細に説明する。
【0010】
(1)高分子鎖を形成する高分子
本発明で用いられる高分子鎖を形成する高分子としては、特に制限はなく、非電解質高分子であってもよく、電解質高分子であってもよい。また、疎水性高分子であってもよく、親水性高分子であってもよい。非電解質高分子としては、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などがあげられる。電解質高分子としては、例えばPSGMA(poly(sodium sulphonated glycidyl methacrylate)、例えば、Nature, 425, 163-165 (2003)など参照)などがあげられる。疎水性高分子としては、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などがあげられる。親水性高分子としては、例えば、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(PHEMA)などがあげられる。なお、親水性高分子は、親水性モノマーを用いて調製してもよく、疎水性モノマーを用いて高分子を調製した後に、高分子に親水性基を導入することによって調製してもよい(例えば、特開2003−327638号公報など参照)。
また、本発明で用いられる高分子鎖は、1種のモノマーがホモ重合したものであってもよく、2種以上のモノマーが共重合したものであってもよい。共重合としては、ランダム共重合、ブロック共重合またはグラジエント共重合のいずれであってもよい。
本発明の高分子鎖形成に用いられるモノマーとしては、基材表面にグラフトする高分子鎖を形成できるものであればよく、特に制限はない。例えば、付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーなどの付加重合性の二重結合を少なくとも1つ有するモノマーがあげられる。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマーなどがあげられる。
また、疎水性モノマー、親水性モノマーのいずれも好適に用いることができる。
【0011】
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリレート−2−アミノエチル、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(4−((4−(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル−2−ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロメチル−2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0012】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−アミノスチレン、p−スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1−(2-((4−ビニルフェニル)メトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンおよび3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンなどがあげられる。
【0013】
さらに、付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとしては、例えば、フッ素含有ビニルモノマー(ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなど)、ケイ素含有ビニル系モノマー(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド系モノマー(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなど)、ニトリル基含有モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、アミド基含有モノマー(アクリルアミド、メタクリルアミドなど)、ビニルエステル系モノマー(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、共役ジエン系モノマー(ブタジエン、イソプレンなど)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニルなど)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデンなど)、ハロゲン化アリル(塩化アリルなど)、アリルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、メチルビニルケトンおよびビニルイソシアナートなどもあげられる。さらに、重合性二重結合を1分子中に1つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロモノマーなどもあげられる。
【0014】
疎水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレートなどのアクリル酸のアルキルエステル;フェニルアクリレートなどのアリールアクリレート;ベンジルアクリレートなどのアリールアルキルアクリレート;メトキシメチルアクリレートなどのアルコキシアルキルアクリレートなど)、メタクリル酸エステル(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのメタクリル酸のアルキルエステル;フェニルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;ベンジルメタクリレートなどのアリールアルキルメタクリレート;メトキシメチルメタクリレートなどのアルコキシアルキルメタクリレートなど)、フマル酸エステル(例、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸のアルキルエステルなど)、マレイン酸エステル(例、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸のアルキルエステルなど)、イタコン酸エステル(例、イタコン酸のアルキルエステルなど)、クロトン酸エステル(例、クロトン酸のアルキルエステルなど)、メチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、スチレン、アルキルスチレン、塩化ビニル、ビニルメチルケトン、ビニルステアレート、ビニルアルキルエーテル、およびそれらの混合物などがあげられる。
親水性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ置換アルキルアクリレート(例、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエトキシエチルアクリレート、ポリエトキシプロピルアクリレートなど)、ヒドロキシ置換アルキルメタクリレート(例、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエトキシエチルメタクリレート、ポリエトキシプロピルメタクリレートなど)、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(例、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなど)、N−アルキルメタクリルアミド(例、N−メチルメタクリルアミドなど)、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルコキシポリエチレングリコールアクリレート、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−グルコシロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、メタクリルアミド、アリルアルコール、N−ビニルピロリドン及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、およびそれらの混合物があげられる。
【0015】
また、例えば特開2003−327638号公報に記載されているような、側鎖に特定の基を有するモノマーも好適に用いることができる。例えば、側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーは、高分子を作製した後に、高分子の側鎖をカルボキシル基またはカルボキシル塩基に転換することにより親水性付与することができる点で好ましい(例えば、特開2003−327638号公報など参照)。側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーとしては、例えば、1−メトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−プロポキシエチルアクリレート、1−(1−メチルエトキシ)エチルアクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−(2−メチルプロポキシ)エチルアクリレート、1−(2−エチルヘキソキシ)エチルアクリレート、ピラニルアクリレート、1−メトキシエチルメタクリート、1−エトキシエチルメタクリート、1−プロポキシエチルメトクリート、1−(1−メチルエトキシ)エチルメタクリート、1−ブトキシエチルメタクリート、1−(2−メチルプロポキシ)エチルメタクリート、1−(2−エチルヘキソシキ)エチルメタクリレート、ピラニルメタクリート、ジ−1−メトキシエチルマレート、ジ−1−エトキシエチルマレート、ジ−1−プロポキシエチルマレート、ジ−1−(1−メチルエトキシ)エチルマレート、ジ−1−ブトキシエチルマレート、ジ−1−(2−メチルプロポキシ)エチルマレート、ジピラニルマレートなどがあげられる。
【0016】
本発明の潤滑材は、高分子鎖を高いグラフト密度でグラフトした表面を用いることによって、電界効果を利用しなくても高い潤滑性を達成することができるので、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などの非電解質高分子も好適に用いることができる。
本発明の潤滑材を生体内で使用される物品、例えば手術時に用いられるカテーテル先端にマニピュレート機能を持たせるようなマイクロマシンや人工関節の潤滑に用いる場合には、タンパク質などの非特異的吸着を抑制しうることから、親水性高分子であるのが好ましい。
【0017】
(2)高分子鎖のグラフト方法
高分子鎖のグラフト方法としては、所望のグラフト密度で高分子鎖のグラフトを行うことができる方法であればよく特に制限はない。例えば、グラフトフロム(grafting-from)法、グラフトオントゥ(grafting-onto)法などを用いることができるが、グラフトフロム法が好ましい。また、疎水性の、または疎水性化された基材の表面に、疎水性−親水性のジブロック共重合体である高分子鎖(例えば、PMMA−b−PSGMAなど)の疎水性部分を接着させる方法も用いることができる(例えば、Nature, 425, 163-165 (2003)など参照)。
また、高分子鎖の重合方法としては、所望のグラフト密度で高分子鎖の重合を行うことができる方法であればよく、特に制限はないが、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、グラフトされる高分子鎖の分子量および分子量分布のコントロールがしやすい、多様な共重合体(例、ランダム共重合体、ブロック共重合体、組成傾斜型共重合体など)のグラフトがしやすいという点で、さらに、リビングラジカル重合(LRP)法が好ましい。リビングラジカル重合法としては、さらに原子移動ラジカル重合(ATRP)法が好ましい(例えば、J. Am. Chem. Soc., 117, 5614 (1995)、Macromolecules, 28, 7901 (1995)、Science, 272, 866 (1996)、Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)など参照)。
高分子鎖のグラフト方法としては、なかでも、リビングラジカル重合を用いたグラフトフロム法による方法(例えば、特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報など参照)が好ましい。
【0018】
ラジカル重合に用いられる触媒としては、ラジカル重合を触媒できるものであればよく特に制限はないが、好ましくは遷移金属錯体があげられる。遷移金属錯体の好ましい例は、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましい触媒は、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケル錯体である。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物の例は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅である。
銅化合物を用いる場合には、触媒活性を高めるために、配位子を添加するのが好ましい。配位子としては、例えば、2,2'−ビピリジルもしくはその誘導体、1,10−フェナントロリンもしくはその誘導体、ポリアミン(テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミンなど)、L−(−)−スパルテイン等の多環式アルカロイドなどがあげられる。
2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合には、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加するのが好ましい。
さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)なども、触媒として好適である。
重合反応には溶剤を用いてもよい。用いられる溶剤の例は、炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶剤(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶剤(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、ペルフルオロカーボン系溶剤(ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶剤(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、水などである。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行うことができる。なお、用いることができる溶剤はこれらの例に制限されない。
【0019】
高分子鎖のグラフト方法として、グラフトフロム法による方法を用いる場合には、基材表面に重合開始基が存在する必要がある。重合開始基としては、重合が開始できるものであればよく、特に制限はないが、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化スルホニル基などが好ましく、ハロゲン化スルホニル基がより好ましく、クロロスルホニル基がさらに好ましい。重合開始基は、グラフト密度およびグラフトされた高分子鎖の一次構造(分子量、分子量分布、モノマー配列様式)のコントロール性の点で、基材表面に物理的もしくは化学的に結合されているのが好ましい。重合開始基の基材表面への導入(結合)方法は、特に制限はなく、化学吸着法、ラングミュアー・ブロジェット(LB)法などによって行うことができる。例えば、シリコンウエハ(基材)表面へのクロロスルホニル基(重合開始基)の化学結合による固定化は、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシランや2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシランなどをシリコンウェハ表面の酸化層と反応させることにより行うことができる。このような基材表面への重合開始基の導入は、具体的には、例えば、特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報などに記載の方法に準じて行うことができる。基材表面への重合開始基の導入は、なかでも、導入される重合開始基の均一性、重合開始基のグラフト密度のコントロール性などの点で、ラングミュアー・ブロジェット(LB)法によるのが好ましい。
LB法においては、まず膜形成材料を適切な溶媒(例、クロロホルム、ベンゼンなど)に溶解する。次に、この溶液少量を清浄な液面、好ましくは純水の液面上に展開した後、溶媒を蒸発させるか又は隣接する水相に拡散させて、水面上に膜形成分子による低密度の膜を形成させる。続いて、通常、仕切り板を水面上で機械的に掃引し、膜形成分子が展開している水面の表面積を減少させることにより膜を圧縮して密度を増加させ、緻密な水面上単分子膜を得る。次いで、適切な条件下で、前記水面上単分子膜内を構成する分子の表面密度を一定に保ちながら、単分子層を堆積する基材を前記水面上単分子膜を横切る方向に浸漬または引き上げることによって、前記水面上単分子膜を該基材上に移し取り、単分子層を該基材上に堆積する。LB法の詳細および具体例は、「福田清成他著、新実験化学講座18巻(界面とコロイド)6章、(1977年)丸善」、「福田清成・杉道夫・雀部博之編集、LB膜とエレクトロニクス、(1986年)シーエムシー」、あるいは「石井淑夫著、よいLB膜をつくる実践的技術、(1989年)共立出版」などに記載されている。
【0020】
(3)高分子鎖のグラフト密度
高分子鎖のグラフト密度としては、電界効果が阻害される環境においても高い潤滑性を示すグラフト密度であればよく、用いられる高分子や溶媒の種類などによって適宜設定すればよいが、通常0.1鎖/nm2以上である。好ましくは、0.15鎖/nm2以上、より好ましくは0.2鎖/nm2以上、さらに好ましくは0.3鎖/nm2以上、特に好ましくは0.4鎖/nm2以上、最も好ましくは0.45鎖/nm2以上である。
また、高分子鎖のグラフトのし易さなどの点で、好ましくは5鎖/nm2以下、より好ましくは2鎖/nm2以下、さらに好ましくは1.5鎖/nm2以下、特に好ましくは1鎖/nm2以下、最も好ましくは0.8鎖/nm2以下である。
【0021】
高分子鎖のグラフト密度は公知の方法に従って測定することができ、例えば、Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)、Macromolecules, 33, 5608-5612 (2000)、Macromolecules, 38, 2137-2142 (2005)などに記載の方法に従って測定することができる。
具体的には、グラフト密度(鎖/nm2)は、グラフト量(W)とグラフト鎖の数平均分子量(Mn)を測定し、次式:
グラフト密度(鎖/nm2)= W(g/nm2)/ Mn×(アボガドロ数)
(式中、Wはグラフト量を表し、Mnは数平均分子量を表す。)
によって求めることができる。
グラフト量(W)は、基材がシリコンウェハのような平面基板の場合には、エリプソメトリー法により乾燥状態の膜厚、すなわちグラフトされた高分子鎖層の乾燥状態における厚みを測定し、バルクフィルムの密度を用いて、単位面積当たりのグラフト量を算出することにより求めることができる。基材がシリカ粒子などの場合には、赤外吸収分光測定(IR)、熱重量損失測定(TG)、元素分析測定等により測定することができる。
数平均分子量(Mn)は、重合時に溶液中に生成するフリーポリマーのMnはグラフト鎖のMnにほぼ等しいので、重合時に溶液中に生成するフリーポリマーのMnを用いてもよい。また、基材がシリカの場合、フッ酸溶液を用いて、グラフト鎖をグラフト点から切り出した後、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により、MnおよびMw/Mnを決定することができる。なお、これらの値は、溶液中に生成するフリーポリマーの値とほぼ等しいことを確認している。
また、例えば、特開平11−263819号公報記載の方法、特開2002−145971号公報記載の方法、Nature, 425, 163 (2003)記載の方法などに従って測定することができる。具体的には、グラフトされた高分子鎖層の乾燥状態における厚みと高分子鎖の数平均分子量とをプロットしたグラフの傾き(例えば、特開平11−263819号公報参照)、グラフトされた高分子鎖のグラフト量と高分子鎖の数平均分子量とをプロットしたグラフの傾き(例えば、特開2002−145971号公報参照)から、高分子鎖のグラフト密度を求めることができる。
【0022】
(4)高分子鎖の分子量及び分子量分布
本発明の高分子鎖の数平均分子量(Mn)は、所望の潤滑性を示す分子量であればよいが、好ましくは、約500〜1,000,000、より好ましくは、約1000〜100,000である。また、分子量分布指数(Mw/Mn)は、所望の潤滑性を示す分子量分布指数であればよいが、好ましくは、約1.01〜2.0、より好ましくは、約1.01〜1.5である。
【0023】
(5)本発明で用いられる基材
本発明で用いられる基材としては、前述のグラフトフロム法、グラフトオントゥ法などによる高分子鎖のグラフトに用いることができる基材であればよく、例えば、有機材料、無機材料、金属材料などから適宜選択することができ、特に制限はない。疎水性基材、親水性基材のいずれも好適に用いることができる。
基材は、好ましくは固体であるが、例えば架橋型ハイドロゲルのような基材も好適に用いることができる。基材として用いられる固体としては、ポリウレタン系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリスチレン系材料、ポリオレフィン系材料、PMMA、PET、酢酸セルロース、シリカ、無機ガラス、紙、プラスチックラミネートフィルム、セラミックス(例、アルミナセラミックス、バイオセラミックス、ジルコニア−アルミナ複合セラミックスなどの複合セラミックスなど)、金属(例、アルミニウム、亜鉛、銅、チタンなど)、金属が蒸着された紙、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、多結晶シリコン、およびこれらの複合材料などがあげられる。その他、人工関節に用いられる材料も好適に用いることができる。
【0024】
また、基材として用いられる疎水性の有機材料としては、例えばポリオレフィン類(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレンアルファオレフィン共重合体など)、シリコン重合体、アクリル重合体(例、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポイリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートなど)及びコポリマー、フルオロポリマー(例、ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン、ポリビニルフッ化物など)、ビニル重合体(例、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルケトンなど)、ビニルモノマー含有共重合体(例、ABSなど)、天然及び合成ゴム(例、ラテックスゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン重合体、ポリイソブチレンゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体、ポリイソブチレン−イソプレンなど)、ポリウレタン(例、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカルボネートウレタン、ポリシロキサンウレタンなど)、ポリアミド(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11など)、ポリエステル、エポキシ重合体、セルロース、及び変性セルロースなどがあげられる。
さらに、基材として用いられる親水性の有機材料としては、親水性アクリル重合体(例、ポリアクリルアミド、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ−N、N‘−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸など)、親水性ビニル重合体(例、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジンなど)、ポリマレイン酸、ポリ−2−ヒドロキシエチルフマレート、無水マレイン酸、ポリビニルアルコールなどがあげられる。
【0025】
基材は、例えばチューブ、シート、ファイバー、ストリップ、フィルム、板、箔、膜、ペレット、粉末、成型品(例、押出し成型品、鋳込み成型品など)など、どのような形態または形状であってもよい。材質としては、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、PMMA、PET、酢酸セルロース、シリカ、無機ガラス、アルミニウム、銅、ケイ素、酸化ケイ素などがあげられる
【0026】
(6)高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材の作製
本発明の潤滑材は、例えばシート状の基材の表面に高分子鎖をグラフトして作製することができる。得られたシート状の潤滑材は、潤滑が必要な物品(例えば、マイクロマシン、人工関節など)などの、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部など)に接着、溶着など公知の方法により固定して用いることができる。
また、本発明の潤滑材は、潤滑が必要とされる物品などの潤滑が必要とされる場所の部材などを基材として、その表面に高分子鎖をグラフトして、潤滑が必要とされる場所の表面に作製してもよい。このように潤滑が必要とされる場所の表面に潤滑材を作製するのが、潤滑材を固定する工程が不要である点で好ましい。
なお、本発明の潤滑材に用いられる高分子鎖がグラフトされた表面は、例えば、特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報、特開2003−327638号公報、特開2003−327641号公報に記載の方法に準じて作製することもできる。
【0027】
(7)本発明の潤滑材の摩擦係数(μ)
本発明の潤滑材の摩擦係数(μ)は、後述する実施例に記載されているように、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
具体的には、本発明の潤滑材をシリコンウェハなどの基材とシリカ粒子(半径R)などのプローブの表面に形成し、プローブをカンチレバーに接着し、良溶媒によって高分子鎖を膨潤させた状態で測定する。カンチレバーのせん断係数(G)、カンチレバーの幅(W)、カンチレバーの厚み(T)、カンチレバーの長さ(L)から、次式:
L=GWT3/3L
により、カンチレバーのねじれバネ定数kLが算出される(Adv Colloid Interface Sci, 27, 189 (1987)参照)。
垂直方向の力(FN、normal force)は次式:
N=kNΔz
(式中、Δzはカンチレバーの垂直変位を表す。)によって求めることができる。
カンチレバーの角(ねじれ)変位(θL)は、プローブ(シリカ粒子)を、サンプル基質(シリコンウェハ)上で一定の垂直方向の力で負荷を加えた状態で、y方向に一定の速度で往復してスライドさせることにより測定することができる。
そして水平方向の力(FL、lateral force)、すなわち摩擦力は、これらの測定値を用いて、次式:
L=kLθL/R
によって求めることができ、得られた垂直方向の力(FN)と水平方向の力(FL、lateral force)との関係から、摩擦係数(μ)を求めることができる。
本発明の潤滑材の摩擦係数(μ)は、好ましくは0.05未満であり、より好ましくは10-2未満であり、さらに好ましくは10-3未満である。
【0028】
2.高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材を含む物品
また、本発明は高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材を含む物品にも関する。
高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材を含む物品としては、本発明の潤滑材を含んでいればよく特に制限はないが、例えば、マイクロマシン(例、手術時に用いられるカテーテル先端にマニピュレート機能を持たせたマイクロマシンなど)、医療用物品(例、人工関節、バイアルおよびその栓、シリンジなど)などがあげられる。
本発明の高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材を含む物品は、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部など)の摺動面の両方に、本発明の潤滑材を有するのが好ましい。
本発明の高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材を含む物品は、例えばシート状の本発明の潤滑材を、潤滑が必要な物品(例えば、マイクロマシン、人工関節など)の、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部など)に接着、溶着など公知の方法により固定することによって製造することができる。また、潤滑が必要とされる物品の潤滑が必要とされる場所の部材を基材として、その表面に高分子鎖をグラフトして、潤滑が必要とされる場所の表面に本発明の潤滑材を作製することによって製造することもできる。このように潤滑が必要とされる物品の潤滑が必要とされる場所の表面に潤滑材を作製するのが、潤滑材を固定する工程が不要である点で好ましい。
【0029】
本発明の潤滑材は、溶媒でグラフトされた高分子鎖を膨潤させることにより良好な潤滑性を示す。本発明の潤滑材は、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされているため、その高分子鎖が溶媒で膨潤させることで伸張され、好ましくは伸びきり鎖にも匹敵するほど高度に伸張される。本発明の潤滑材は、その高分子鎖が溶媒で膨潤されると、膨潤された高分子鎖層の濃厚溶液系ゆえの大きな浸透圧効果によって大きな荷重を支えることができるものと考えられる。また、接触領域において、局所濃度の増大の解消と(高伸張状態がゆえに得られる)大きなエントロピーゲインのために、グラフトされた高分子鎖は相互侵入せず、収縮して絡み合いを抑制することによって、低摩擦特性が発現すると考えられる。
本発明の潤滑材は、このように溶媒中で高分子鎖が伸張されることにより低摩擦特性が発現するので、高分子鎖を膨潤または伸張させることができる溶媒中で用いるのが好ましい。高分子鎖を膨潤または伸張させることができる溶媒としては、良溶媒が好ましい。
良溶媒は、グラフトされた高分子鎖によって異なるので、高分子鎖に応じて適宜選択すればよい。例えば、PMMAの高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、トルエンなどの非極性溶媒があげられる。PHEMAの高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、メタノールなどの極性溶媒があげられる。また、一般に、親水性高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、水を含む水系溶媒があげられる。水系溶媒としては、ヒトを含む動物の体液もあげることができる。すなわち、親水性高分子鎖がグラフトされている場合には、好ましくは、ヒトを含む動物の体液を良溶媒として、低摩擦特性を発現することができるので、生体内で用いられる機器(例、生体内で用いられるマイクロマシン、人工関節など)の潤滑に好適に用いることができる。
本発明の潤滑材は、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされているので、側鎖の電界効果を利用しなくても低摩擦特性が発現する。したがって、側鎖の電界効果を阻害する溶媒、側鎖の電界効果を阻害しない溶媒のいずれを用いてもよい。
【0030】
上述のように、本発明の潤滑材は良溶媒中で低摩擦特性が発現するので、潤滑が必要とされる摺動面などの両方に本発明の潤滑材を固定または作製し、その潤滑材にグラフトされた高分子鎖を良溶媒によって膨潤または伸張させることによって、摺動面などを潤滑させることができる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実施例1
シリコンウエハおよびプローブシリカ粒子(半径R=5μm)上へのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)鎖のグラフト
2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン(CETS)を、クロロホルム溶媒を用いて水面(pH5〜6)上に展開した。その後、30分間保って、クロロホルム溶媒を蒸発させ、メトキシシリル基を加水分解させた。次いで、表面圧10mN/mにおいて垂直引き上げ法によりシリコンウエハ上に1層累積した。累積後、110℃で10分間熱処理により基板上に固定した。
得られた単分子固定化シリコンウエハを用いて、メチルメタクリレート(MMA)の重合を行った。MMAの重合は、リビングラジカル重合(LRP)法の一種である原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いたグラフトフロム(grafting-from)法により行った。ATRP重合は、真空脱気下、CuBrと4,4′−ジ−ヘプチル−2,2′−ビピリジン(dHbipy)を含むジフェニルエーテル(DPE)に4−トルエンスルフォニルクロライド(TsCl)およびMMAを加え(〔CuBr〕=0.010M,〔dHbipy〕=0.020M,〔TsCl〕=0.0024M,〔MMA〕=4.7M)、これに上記基板を浸漬し90℃で所定時間行った。
グラフト鎖(PMMA鎖)の分子特性は、重合液中に加えられたフリー(結合していない)の重合開始剤から同時に生成したPMMAホモポリマーの分子特性とよく一致すると考えられる。そこで、グラフト鎖の分子量(数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw))として、重合液中に同時に生成したPMMAホモポリマーの測定値を用いた。重合液中に生成したポリメチルメタクリレート(PMMA)ホモポリマーの分子量および分子量分布は、PMMAでキャリブレーションされたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により決定した。シリコンウェハ上にグラフトされたPMMA鎖層の、乾燥状態における、厚さ(Ld)は、分光エリプソメトリー(M−2000U、J.A.Woolam、USA)により決定した。また、グラフト密度(σ)は、グラフト鎖層の厚さ(Ld)および数平均分子量(Mn)から求めた。
得られたグラフト鎖の分子特性を表1に示す。表1に示すように、グラフト密度は0.53鎖/nm2であった。
プローブシリカ粒子(半径R=5μm)上へのPMMA鎖のグラフトも上記のシリコンウェハと同様にして行った。
【0032】
比較例1
シリコンウエハおよびプローブシリカ粒子(半径R=5μm)上へのポリ(メチルメタクリレート)鎖の低いグラフト密度でのグラフト
シリコンウェハおよびプローブシリカ粒子上へのPMMA鎖の低いグラフト密度でのグラフトは、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルトリエトキシシラン(BPE)をフリーイニシエーターとして用いて、ATRP法によりMMAから末端アルコキシシリル基を有するポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を合成し、これをシリコンウェハおよびプローブシリカ粒子と反応させるグラフトトゥ(grafting-to)法により行った。
得られたグラフト鎖の分子特性を表1に示す。表1に示すように、グラフト密度は0.024鎖/nm2であった。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2
原子間力顕微鏡(AFM)による高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材の摩擦特性の測定
実施例1により得られた高分子鎖がグラフトされた表面を有するシリコンウェハとプローブシリカ粒子との間の相互作用の力を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した(図1)。測定はトルエン中で行った。プローブシリカ粒子は、窒化シリコンカンチレバー(オリンパス社、OMCL-RC800、たわみバネ定数KN=0.1N/m)に接着して用いた。ねじれバネ定数kLは次式:
L=GWT3/3L
(式中、Gはカンチレバーのせん断係数、Wはカンチレバーの幅、Tはカンチレバーの厚み、Lはカンチレバーの長さを表す。)
により、20N/mと算出された(Adv Colloid Interface Sci, 27, 189 (1987)参照)。
垂直方向の力(FN、normal force)は次式:
N=kNΔz
(式中、Δzはカンチレバーの垂直変位を表す。)によって求めた。垂直方向の力のプロファイルは、垂直方向の力(FN、normal force)を分離(separation)の関数として測定することによって求めた。測定された垂直方向の力(FN)は、Derjaguin近似(F/R=2πGf)に従って、2つの平行な平面間の相互作用の自由エネルギー(Gf)に還元することができる。
水平方向の(摩擦)力(FL、lateral force)は次式:
L=kLθL/R
(式中、θLはカンチレバーの角(ねじれ)変位を表す。)によって求めた。θLは、プローブシリカ粒子を、サンプル基質(シリコンウェハ)上で一定の垂直方向の力で負荷を加えた状態で、y方向に20μm/sで往復してスライドさせて測定した。
比較のために、比較例1により得られた高分子鎖が低いグラフト密度でグラフトされた表面を有する潤滑材の摩擦特性も上述と同様にして測定した。
図2に、水平方向の(摩擦)力(FL)と垂直方向の力(FN)(荷重)との関係を示す。広い負荷荷重(FN)範囲において、本発明の高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材は、比較例1の高分子鎖が低いグラフト密度でグラフトされた表面を有する潤滑材と比較して、圧倒的に小さな摩擦力(FL)を示した。摩擦係数(μ)は、実験誤差の範囲内で負荷荷重とは無関係にほぼ一定であり、10-3未満であると推定された。
【0035】
実施例3
原子間力顕微鏡(AFM)による高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材の反発特性の測定
実施例1により得られた高分子鎖がグラフトされたシリコンウエハを、高分子鎖がグラフトされていないプローブシリカ粒子(半径R=5μm)により圧縮した時の(水平方向の変位を加えない状態における)垂直方向の力を測定した。同様にして、比較例1により得られた高分子鎖が低いグラフト密度でグラフトされたシリコンウェハについての測定も行った。測定結果を図3に示す。基質表面とシリカプローブとの間の真の距離を測定することは通常は困難であるが、本実施例では、サンプル表面の高分子鎖が掻き取られた部分と掻き取られていない部分との境界を横断するAFM−イメージングによって真の距離が正確に測定されている。高分子鎖層の平衡膨潤厚み(Le)は、反発力が観察される限界距離から求めた。
実施例1の高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材は、F/R>1mN/m以上においても圧縮に耐え、D/Leがほぼ0.7までしか圧縮されなかった。これに対して、比較例1の高分子鎖が低いグラフト密度でグラフトされた表面を有する潤滑材は、F/R>1mN/m以上ではD/Le<0.2まで圧縮された。
このような本発明の高分子鎖がグラフトされた表面を有する潤滑材の有する圧縮に対する強い抵抗性は、大きな荷重下で用いられる潤滑材として重要な性質である。
【0036】
実施例4
シリコンウエハおよびプローブシリカ粒子(半径R=5μm)上へのポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(PHEMA)鎖のグラフトおよび摩擦特性の測定
実施例1と同様にして、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(PHEMA)鎖がグラフトされたシリコンウエハおよびプローブシリカ粒子を作製した。
グラフト密度を測定したところ、0.6鎖/nm2であった。
得られた高分子鎖がグラフトされた表面を有するシリコンウェハとプローブシリカ粒子との間のメタノール(良溶媒)中での摩擦特性を測定したところ、実施例1で得られたシリコンウェハとプローブシリカ粒子と同様の低摩擦特性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の潤滑材は、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされた表面を有するので、電界効果が阻害される環境においても高い潤滑性を示す潤滑材として利用することができる。また、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされた表面は高い耐荷重性を示すので、加重による変形が少ない潤滑材を提供することができ、高い精度が要求されるマイクロマシンなどの潤滑材として利用することができる。加えて、本発明の潤滑材は、高分子鎖層の厚みが10〜100nmオーダーで低摩擦特性が発現し、荷重による変形も少ないので、サブミクロン、あるいはナノオーダーの平滑性を必要とする摺動部分の潤滑材としても有効である。さらに、親水性高分子鎖などがグラフトされた表面を有する潤滑材は生体適合性を有することが期待されるので、人工関節など生体内で用いられる機器の潤滑材潤滑材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】原子間力顕微鏡(AFM)による摩擦特性の測定について例示した図である。
【図2】摩擦特性の測定結果を示す図である。
【図3】反発特性の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1鎖/nm2以上のグラフト密度で高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材。
【請求項2】
グラフト密度が、0.15鎖/nm2以上である請求項1記載の潤滑材。
【請求項3】
グラフト密度が、0.2〜2鎖/nm2である請求項2記載の潤滑材。
【請求項4】
高分子鎖のグラフトが、グラフトフロム法またはグラフトオントゥ法による高分子鎖グラフトである請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑材。
【請求項5】
高分子鎖のグラフトが、グラフトフロム法による高分子鎖グラフトである請求項4記載の潤滑材。
【請求項6】
高分子鎖のグラフトが、ラジカル重合による高分子鎖グラフトである請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑材。
【請求項7】
ラジカル重合が、リビングラジカル重合である請求項6記載の潤滑材。
【請求項8】
リビングラジカル重合が、原子移動ラジカル重合である請求項7記載の潤滑材。
【請求項9】
重合が、基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法または化学吸着法によって固定化された重合開始基から開始される、請求項5〜8のいずれかに記載の潤滑材。
【請求項10】
重合が、基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法によって固定化された重合開始基から開始される、請求項9記載の潤滑材。
【請求項11】
重合開始基が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化スルホニル基である、請求項5〜10のいずれかに記載の潤滑材。
【請求項12】
重合開始基がクロロスルホニル基である請求項11記載の潤滑材。
【請求項13】
高分子鎖が、ホモ重合した高分子鎖である請求項1〜12いずれかに記載の潤滑材。
【請求項14】
ホモ重合した高分子鎖が、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)である請求項13記載の潤滑材。
【請求項15】
グラフト密度が0.2〜2鎖/nm2であり、高分子鎖のグラフトがラジカル重合による高分子鎖グラフトであり、重合が基材の表面にラングミュアー・ブロジェット法によって固定化された重合開始基から開始され、重合開始基がクロロスルホニル基であり、高分子鎖がホモ重合した高分子鎖である、高分子鎖がグラフトされた表面を含む潤滑材。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の潤滑材を含む物品。
【請求項17】
高分子鎖がグラフトされた表面が、物品の部材の表面に形成されている請求項16記載の物品。
【請求項18】
医療用物品である請求項16または17記載の物品。
【請求項19】
医療用物品が人工関節である請求項18記載の物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−316169(P2006−316169A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140179(P2005−140179)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(505174105)
【Fターム(参考)】