説明

固形透明芳香化粧料

【課題】
調製方法が容易で、様々な香気成分と幅広いHLBをもつ溶媒を含有する香料も配合可能であり、得られた化粧料は透明性、安定性、使用感、香りの持続性に優れた固形透明芳香化粧料を提供すること。
【解決手段】
デキストリン脂肪酸エステル、液状油としてミネラルオイル、界面活性剤及び香料を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調製が容易で、透明感があり、使用性に優れ、経時の安定性が良好な固形透明芳香化粧料を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の芳香化粧料はサラシミツロウとホホバ油などの組成物に、香料を加えたものであり、これらは不透明で外観が悪く、また経時的に変色したり、離しょうしたりする問題があった。また芳香化粧料を固形化するにあたり、様々なゲル化剤を用いるが調製時の分散性悪く溶解しにくいといった問題があった。
【0003】
透明性があり、使用性に優れた化粧料を提供する技術としては、デキストリン脂肪酸エステルと重質流動イソパラフィンを配合する技術や(例えば特許文献1参照)αオレフィンオリゴマーとデキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸を配合する技術(例えば特許文献2参照)がある。また、成形性と透明性及び使用性に優れた化粧料を提供する技術としては、12−ヒドロキシステアリン酸とデキストリン脂肪酸エステルを配合した技術や(例えば特許文献3参照)、デキストリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンミツロウと液状油成分を配合することを特徴とする技術(例えば特許文献4参照)、N−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドなどのN−アシル−L−酸性アミノ酸ジアルキルアミドの少なくとも1種と3−メトキシ−3−メチルブタノールなどの1価の低級アルコールの少なくとも1種を含有する油性基材のゲル化剤を使って固形化する技術がある(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−235210号公報
【特許文献2】特開2001−279040号公報
【特許文献3】特開2001−39817号公報
【特許文献4】特開2002−308731号公報
【特許文献5】WO2003/102104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、透明な化粧料は得られるものの、油性基材のゲル化剤であるデキストリン脂肪酸エステルが、液状油である重質流動イソパラフィンに分散、溶解しにくく作業性が悪いうえ、溶解しても高粘性のため泡抜けが悪く、仕上がった化粧品には泡が含有し、外観が悪くなるといった問題があった。特許文献2でも、特許文献1と同様に選択するαオレフィンオリゴマーによっては粘度が高くなり、油性基材のゲル化剤であるデキストリン脂肪酸エステルが分散しにくいといった問題と、デキストリン脂肪酸エステルとαオレフィンオリゴマー組合せでは得られた化粧料が透明性に劣るといった問題があった。特許文献3の技術では、透明で成形性に優れた化粧品は得られるものの、化粧料を塗布した際に均一な塗布膜を得られず、使用感も悪いといった問題があった。一方、特許文献4の技術では、透明性、成形性、使用感に優れているものの、配合成分としてポリオキシエチレンミツロウを使用しているため、十分な透明性が得られなかった。特許文献5の技術では、透明性、成形性、香りの持続性に優れた化粧品は得られるものの、油性ゲル化基材の溶解温度は95℃以上、配合成分の選択によっては120℃まで加熱が必要とされ、作業性が悪く調製方法が容易ではないといった問題があった。また、グリセリン、エタノール、エチレングリコール又は水が含まれた香料と界面活性剤を配合すると、均一に分散しない場合や乳化粒子が均一に分散しても白濁して化粧品全体が透明にならないといった問題があった。上記の問題から特許文献1〜5には香料と界面活性剤を組み合わせた技術の記載がなかった。
そこで、調製方法が容易で、又様々な香気成分と幅広いHLBをもつ溶媒を含有する香料が配合可能であり、得られた化粧料は透明性、安定性、使用感、香りの持続性に優れた固形透明芳香化粧料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、デキストリン脂肪酸エステル、液状油としてミネラルオイル、界面活性剤及び香料を配合することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、調製方法が容易で、様々な香気成分と種々で幅広いHLBをもつ溶媒を含有する香料も配合可能であり、得られた化粧料は透明性、安定性、使用感、香りの持続性に優れた固形透明芳香化粧料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分デキストリン脂肪酸エステルは、油溶性のもので炭素数8〜24(好ましくは14〜18)の直鎖の飽和または不飽和脂肪酸とデキストリンとのエステル化合物である。具体的にはミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン等が挙げられる。これらを必要に応じて一種または二種以上用いることが出来る。市販品としてレオパールMKL2、レオパールKL2、レオパールTL2(何れも、千葉製粉社製)等を用いることができる。
本発明に用いる成分デキストリン脂肪酸エステルの配合量は特に限定されるものではないが、全成分の総量に対して5〜40%が好ましい。配合量がこの範囲より少ないと固形透明芳香化粧品が軟らかくなりすぎ、より多いと硬すぎて使用性が劣る。
【0009】
本発明に用いられる成分液状油は、40℃における動粘度が4.3〜67.90mm/s(好ましくは12.30〜67.90)のミネラルオイルである。市販品としてはモレスコホワイト(松村石油社製)等を用いることができる。本発明に用いるミネラルオイルの配合量は限定されるものではないが、全成分の総量に対して20〜93%が好ましい。また、他の液状油と組み合わせることは可能だが、配合成分であるデキストリン脂肪酸エステルのうち、ミリスチン酸デキストリン(商品名レオパールMKL2)、パルミチン酸デキストリン(商品名レオパールKL2)は、溶解性、透明性の点で流動パラフィンとの相性もよく、これを主体に配合することが好ましい。
【0010】
本発明に用いられる成分界面活性剤は、通常化粧料に用いられる陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性、アミノ酸系界面活性剤等が用いられ、例えば金属石鹸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、モノ脂肪酸ソルビタン、モノ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、アルキルグリコシド、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリン、アシルグルタミン酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明には、特に非イオン性の界面活性剤が有効であり、そのHLBが9〜17のものが適切である。市販品としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(日本サーファクタント工業社製PBC-34(HLB16.5)及びPBC-44(HLB12.5))、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン(和光純薬工業社製Tween 80(HLB15))及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日本サーファクタント工業社製HCO-20(HLB10)及びHCO-60(HLB15))等を用いることができる。本発明に用いられる界面活性剤の配合量は特に限定されないが、全成分の総量に対して1〜20%が好ましい。配合量がこの範囲より少ないと固形透明芳香化粧料が不透明傾向を示すことがあり、多いと固形透明芳香化粧料が軟らかくなり使用感や安定性が悪くなる。
【0011】
本発明に用いられる成分香料は、溶媒の含有率の低い天然精油及び種々の幅広いHLBをもつ溶媒を含有する合成香料を含む。本発明に用いられる香料の配合量は特に限定されないが、全成分の総量に対して1〜30%が好ましい。配合量がこの範囲より少ないと香りは弱く持続性も劣り、多いと2相分離等安定性が悪くなる場合がある。
【0012】
本発明の固形透明芳香化粧料には、前記成分の他に、 高級脂肪酸、アルコール類、各種樹脂類、着色色材、色素、疎水化処理剤、顔料、増粘剤、界面活性剤、保湿剤、抗酸化剤、防腐剤、消泡剤、その他の薬剤などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0013】
本発明の固形透明芳香化粧料には、練り香水、毛髪用コロン及び歯用バーム等が挙げられる。特に練り香水に用いれば透明で、塗布時に滑らかな使用性をもち、塗布膜は均一でツヤがある香りの持続性に優れた効果が得られる。
【実施例】
【0014】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、配合量などは特に指定がない限り重量%で示す。
【0015】
実施例1〜8及び、比較例1〜7:固形芳香化粧料
表1に示す組成の化粧料を下記製造方法により調製し、(イ)調製時の溶解性、 (ロ)透明性、(ハ)安定性、(二)使用感、(ホ)香りの持続性の項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、その結果も併せて表1に示した。
【0016】
【表1】



実施例に使用されている香料:
香料A:合成香料(グリセリンを微量含む)
香料B:合成香料(エタノール、水を微量含む)
香料C:天然精油(森林系)
香料D:天然精油(ローズ系)
香料E:天然精油(ラベンダー系)
香料F:合成香料(エチレングリコールを微量含む)
香料G:合成香料(リモネンを含むパラフィン系)
【0017】
(製造方法)
表1に示す成分(a)を成分(b)に室温で添加、分散する。(比較例によっては成分(d)と(e)を分散する)。これに成分(c)を加えて攪拌しながら加熱(70〜120℃)をして成分(a)を完全に溶解させる。次に成分(f)を加えて攪拌して均一にする。これを容器に充填して製品を得た。
【0018】
(評価方法)
(イ)調製時の溶解性
表1に示す成分(a)が溶解する温度 3段階の判定基準にて評価した。
○ : 70℃以上
△ : 90℃以上
× : 100℃以上
【0019】
(ロ)透明性
深さ5mmの透明容器で固形透明芳香化粧料を作成し、固形透明芳香化粧料の下に置いた活字を観察し、4段階の判定基準で評価した。
◎: 明確に読める。
○ : 少しぼやける。
△ : ぼやける。
× : 見えない
【0020】
(ハ)安定性
作成した固形透明芳香化粧料を40℃の条件下に1ヶ月間保存し、外観を下記の3段階の判定基準で評価した。
○ :変化を認めない。
△ :わずかな離しょうが認められる。
× :離しょうが認められる。
【0021】
(ニ)使用感
官能試験(5名による評価)を行った。評価項目は、硬度、べたつき感、塗布後のさっぱり感、香気の4点で、各項目を下記に示す5点満点で評価した。その総合点から使用性を判定した。

使用性評価(総合点)
◎: 75点以上
○ : 74〜55点
△ : 54〜25点
× : 24点以下
【0022】
(ホ)香りの持続性
使用感評価で香気を評価した後、塗布後6時間以上経過した後香気を確認し3段階の判定基準で評価した。
○ : ほどよく香る
△ : わずかに香
× : ほとんど香らない
【0023】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1〜8の固形透明芳香化粧料は比較例の固形透明芳香化粧料に比べ、調製方法が容易で、得られた化粧料は透明性、耐熱性、使用感及び香りの持続性に優れたものであった。
【0024】
実施例9 固形透明芳香化粧料
ミリスチン酸デキストリン 20.5%
ミネラルオイル 56.8%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル 4.5%
香料A 18.2%
(製造方法)
ミリスチン酸デキストリンをミネラルオイルに室温で添加、分散する。これにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを加えて攪拌しながら80℃まで加熱をしてミリスチン酸デキストリンを完全に溶解させる。次に香料を加えて攪拌して均一にする。これを容器に充填して製品を得た。
【0025】
実施例10 固形透明芳香化粧料
ミリスチン酸デキストリン 19.6%
ミネラルオイル 54.3%
脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン 13.0%
香料B 13.0%
(製造方法)
ミリスチン酸デキストリンをミネラルオイルに室温で添加、分散する。これに脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンを加えて攪拌しながら80℃まで加熱をしてミリスチン酸デキストリンを完全に溶解させる。次に香料を加えて攪拌して均一にする。これを容器に充填して製品を得た。
【0026】
実施例11 固形透明芳香化粧料
ミリスチン酸デキストリン 16.0%
ミネラルオイル 50.0%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル 6.0%
脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン 12.0%
香料B 16.0%
(製造方法)
ミリスチン酸デキストリンをミネラルオイルに室温で添加、分散する。これにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを加えて攪拌しながら80℃まで加熱をしてミリスチン酸デキストリンを完全に溶解させる。次に香料を加えて攪拌して均一にする。これを容器に充填して製品を得た。
【0027】
実施例12 固形透明芳香化粧料
パルミチン酸デキストリン 13.0%
ミネラルオイル 69.0%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル 5.0%
香料B 13.0%
(製造方法)
パルミチン酸デキストリンをミネラルオイルに室温で添加、分散する。これにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを加えて攪拌しながら80℃まで加熱をしてパルミチン酸デキストリンを完全に溶解させる。次に香料を加えて攪拌して均一にする。これを容器に充填して製品を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストリン脂肪酸エステル、液状油、界面活性剤及び香料を含むものであることを特徴とする固形透明芳香化粧料。
【請求項2】
デキストリン脂肪酸エステルがミリスチン酸デキストリン及び/又はパルミチン酸デキストリンであることを特徴とする請求項1記載の固形透明芳香化粧料。
【請求項3】
界面活性剤がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、それぞれは単独で配合されること、又は合わせて配合されることを特徴とする請求項1記載の固形透明芳香化粧料。
【請求項4】
液状油がミネラルオイルであることを特徴とする請求項1記載の固形透明芳香化粧料。
【請求項5】
香料は天然精油及び合成香料であり、様々な香気成分と幅広いHLBをもつ溶媒を含有する香料も含むことを特徴とする請求項1記載の固形透明芳香化粧料。

【公開番号】特開2010−202568(P2010−202568A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49069(P2009−49069)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(508254129)株式会社プラネット (3)
【出願人】(000199441)千葉製粉株式会社 (11)
【Fターム(参考)】