圃場走行作業用農作業車
【課題】圃場の往復作業走行の折返し部に来た際に、農作業装置の下降タイミングの調節を含む植付部の取扱いを要することなく、土壌の硬度に応じた機器制御により旋回走行跡の荒れに適切に対処することができる圃場走行作業用農作業車を提供する。
【解決手段】圃場走行作業用農作業車は、旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロート15を備えた植付部7と、この植付部7について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部21とを備えて構成され、上記植付部のフロート15に圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサ15sを設け、このフロートセンサ15sの感度と連動して上記植付部の下降動作のタイミングを変更するように制御する。
【解決手段】圃場走行作業用農作業車は、旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロート15を備えた植付部7と、この植付部7について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部21とを備えて構成され、上記植付部のフロート15に圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサ15sを設け、このフロートセンサ15sの感度と連動して上記植付部の下降動作のタイミングを変更するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体走行とともに自動的に田植作業等の圃場走行作業をする圃場走行作業用農作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回走行可能な機体に備えた作業部である農作業装置により、機体走行とともに田植作業等の圃場走行作業を行う圃場走行作業用農作業車において、特許文献1に示すように、機体の旋回走行動作と連動して農作業装置の動作を制御するようにしたものが知られている。この農作業車は、昇降動作可能に田植え等の水田植生作業を行う農作業装置と、この農作業装置と一体構成のフロート等を備えて構成される。このフロートは、前後方向傾斜を調節可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、センサを備えて植生盤面の高さ位置を検出する。
【0003】
田植え等の圃場の往復作業走行においては、フロートで植生盤面を均平整地しつつ農作業装置が植付作業を行う。このとき、フロートのセンサに基づいて農作業装置の高さを昇降調節して植付け深さを調節する。往行から復行への折り返し地点でUターン旋回する旋回過程においては、農作業装置の植付動作を停止するとともに上昇動作により農作業装置とフロートとを植生盤面の上方の非作業高さ位置に保持して旋回走行に入り、機体が復行方向まで旋回すると農作業装置を下降し、次いで同農作業装置を稼動することにより植付けを再開する。この一連の旋回付帯操作を制御する制御装置からなる制御部により機体の旋回動作と連動して農作業装置の取扱いを自動処理する旋回連動制御を行うことにより、オペレータの操作負担を軽減することができる。例えば、作業圃場の土壌が硬い場合は機体旋回時の農作業装置の下降タイミングを早く設定することにより、旋回走行跡の土壌の荒れを抑えて広い範囲を整地しつつ植付けすることができる。
【0004】
しかし、圃場状況は全面が均一とは限らず、場所によって状況が変動する場合があり、特に、土壌の硬度が高い領域では、その都度オペレータが農作業装置の下降タイミングを調節するという煩わしい操作を機体旋回操作と合わせて行う必要があり、オペレータにとって大きな作業負担となっていた。
【特許文献1】特開2002−335720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、圃場の往復作業走行の折返し部に来た際に、農作業装置の下降タイミングの調節を含む作業部の取扱いを要することなく、土壌の硬度に応じた機器制御により旋回走行跡の荒れに適切に対処することができる圃場走行作業用農作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロートを備えた作業部と、この作業部について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部とを備えた圃場走行作業用農作業車において、上記作業部のフロートに圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサを設け、このフロートセンサの感度と連動して上記作業部の下降動作のタイミングを変更することを特徴とする。
【0007】
作業部のフロートに設けたフロートセンサは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を設定による検出感度で検出し、このフロートセンサの設定感度と連動して作業部の下降動作のタイミングが変更されることから、オペレータが土壌硬度と対応して検出感度を設定することにより、上記機体が圃場を旋回走行する際に、土壌硬度と対応して変更されたタイミングで作業部のフロートが下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圃場走行作業用農作業車は以下の効果を奏する。
請求項1の発明により、上記機体はオペレータの旋回操作に応じて圃場を旋回走行し、制御部は上記旋回操作の検出に応じて作業部の非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を機体旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御し、作業部のフロートに設けたフロートセンサは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を感度調節可能に検出し、このフロートセンサの設定感度と連動して作業部の下降動作のタイミングが変更され、そのタイミングで作業部のフロートが下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【0009】
したがって、圃場の往復作業走行におけるフロートによる均平整地作業のためにオペレータが圃場の土壌硬度と対応してフロートセンサの感度を調節することにより、機体旋回時の作業部の下降動作時期が連動して変更されるので、旋回走行過程における作業部の下降動作時期の調節操作を要することなく、旋回走行跡について土壌硬度に応じた必要な範囲を均平整地することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の圃場走行作業用農作業車の一例を図1の側面図に示す田植機について説明する。田植機1は、操向車輪2、2と後輪3、3とによって4輪駆動可能に機体を支持し、操舵ハンドル4、オペレータシート5、エンジン6、植付部7のほか、各種機器を制御する後述の制御部21を備える。
【0011】
植付部7は、機体後部に昇降部11を介して昇降可能に取付けた作業部であり、図示せぬ植付クラッチを介して機体の走行に合わせて多条植え動作するほか、植付け動作と連動して苗を順次送り出す苗送出部13、薬肥を吐出する施肥部14、均平用のフロート15…等を備える。フロート15は、植付部7に対して傾斜調節可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出するフロートセンサ15sを備え、フロート面の傾斜調節による受圧中心位置の変化に応じて検出感度を調節することができる。
【0012】
制御部21の入出力構成は、図2の入出力信号系統図に示すように、機体旋回時の制御パターンを選択するための制御選択スイッチ22の操作信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、また、機体走行と植付部作動用の各種機器のアクチュエータ類を制御する。制御選択スイッチ22は、植付部7の動作を機体旋回と連動制御する「連続」のほかに、左右の機体旋回方向について「右旋回のみ」「左旋回のみ」に限定指示するダイヤルスイッチである。
【0013】
その他に、入力側には、植付け動作指令用のフィンガーレバースイッチ23a、植付部7の自動上昇選択用の植付部上昇モードスイッチ24、変速操作検知用のHSTレバー位置センサ25、操舵操作検知用のハンドル切れ角センサ26、時間調節用のタイムラグ調節ダイヤル27、ブレーキ操作検知用のブレーキペダルセンサ28、植付部の下降タイミングを決めるN1設定ダイヤル29a、植付部稼動のクラッチタイミングを決めるN2設定ダイヤル29b、フロートセンサ15sについての感度設定ダイヤル30等を接続してそれぞれの信号を入力する。
【0014】
出力側には、昇降部11の油圧シリンダ11aを介して植付部7を昇降する電磁油圧バルブ11b、植付部7の植付け稼動用の植付クラッチ作動ソレノイド31、施肥機動作用の施肥クラッチ作動ソレノイド32、HSTレバー傾動用のHST用モータ33等を接続して各機器を制御する。
【0015】
N1設定ダイヤル29aは、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転量による下降位置N1が植付部の下降タイミングとして設定される。N2設定ダイヤル29bは、N1設定ダイヤル29aと同様に、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転量によるクラッチオン位置N2が植付部7の下降タイミングとして設定される。感度設定ダイヤル30は、フロート15の傾斜角度を調節するためのものであり、前上がりの傾斜により受圧中心位置がフロート基部側に移動してフロートセンサ15sの検出感度が低下し、均平整地作用を強化することができ、逆の設定により検出感度を上げて均平整地作用を緩和することができる。
【0016】
上記制御部21による制御処理は、図3のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になるまで待機した後、制御選択スイッチ22に応じて旋回連動処理を「左旋回」「右旋回」に限定し、または、限定なしの「連続」に切替える(S3)。
【0017】
制御選択スイッチ22が「左旋回」の場合は、ハンドル操作(S21a)を待った後、左旋回であればドライブシャフト回転開始(S22)と左右共通のサブルーチン処理による左ターン制御(S23)による通常の連動処理を行い、右旋回であればサブルーチン処理によるリフト制御(S24)により異形対応を行う。制御選択スイッチ22が「右旋回」の場合は、上記と逆に、ハンドル操作(S21b)が右旋回であればドライブシャフト回転開始(S22)と左ターン制御(S23)による通常の連動処理を行い、左旋回であればリフト制御(S24)により異形対応を行う。また、制御選択スイッチ22が「連続」の場合は、ハンドル操作(S21)を待った後、左右それぞれ、ドライブシャフト回転開始(S22)と対応するターン制御(S23)による通常の連動処理を行う。
【0018】
サブルーチン処理による左または右のターン制御処理の詳細は、図4のフローチャートに示すように、植付部7の上昇モードスイッチ24が入りでない場合において、ドライブシャフト回転数チェック(S42)によって植付部7が下降する所定の下降位置N1に機体が旋回するまで待ち、旋回操作の判定のためにハンドル角度が規定値a(例えば90°)以上であることを条件に植付部「下げ」の指令(S44)後にフロートセンサ15sによりフロート15の接地を待つ(S44a,S44b)。一方、上昇モードの場合は、植付部「上げ」を指令(S41a)し、昇降リンクが最上昇位置に達するまで待つ(S41b,S41c)。ハンドル角度が規定値a以上でない場合、フロートの接地または昇降リンクの最上昇が所定時間の経過でも検出されない場合(S44b、S41c)は警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0019】
次いで、ドライブシャフト回転数チェック(S45)によって所定の旋回距離N2’になるまで待機し、異常操作の判定のためにハンドル角度のチェック(S46)により規定値b(例えば180°)以上でないことを条件に施肥クラッチ「入」を指令(S47)する。ハンドル角度が規定値b以上であれば、上記同様に、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0020】
続いて、ドライブシャフト回転数チェック(S49)によって所定のクラッチオン位置N2に機体が旋回するまで待機して植付「入」を指令(S50)し、植付けクラッチセンサにより植付け状態を待って(S50a,S50b)ドライブシャフト回転カウントクリア(S51)により通常の連動処理を終了し、植付け状態が所定時間の経過でも検出されない時は、警報出力(S50c)の上で処理を終了する。
【0021】
この左または右のターン制御処理により、機体の旋回動作と連動して植付部7が対応動作して旋回過程の整地を行うとともに、旋回終了後の直進によって植付けが再開され、また、植付部7の下げ動作後等で所定条件を満たせば、ハンドル戻し等の旋回過程中のハンドル操作で条合わせが可能となる。そして、この一連の処理において、植付部の「下げ」「上げ」「入」の各指令の結果が確認されない動作異状に対して警告の出力をすることによってオペレータの対応が可能となるので、機器異状に気付かずに作業状況を悪化させる事態を回避することができる。
【0022】
また、サブルーチン処理によるリフト制御の詳細は、図5のフローチャートに示すように、植付部「上げ」を指令(S61)した後、ハンドル切れ角が所定範囲となるまで待った(S62)後に植付部「下げ」を指令する(S63)。この処理により、植付部7の昇降動作に限定して機体旋回と連動して制御することができる。この処理手順により、選択されなかった旋回方向について、植付部7を昇降制御するように連動内容が切替えられる。したがって、ドライブシャフトの回転量とハンドル操作とにより、選択された旋回方向に限定して植付部7が連動動作し、他の旋回方向については、植付部7の昇降制御に限定され、オペレータがクラッチ指令を手動介入することにより、変形圃場の異形側の対応を可能とする。
【0023】
例えば、図6のような変形圃場の往復作業工程における植付け作業例のように、制御選択スイッチ22を「左旋回のみ」に合わせることにより、左旋回Lでは、植付部7の昇降およびクラッチ断接が機体旋回と連動して制御され、右旋回Rでは、異形対応処理として植付部7の昇降動作のみが機体旋回と連動して制御されるとともに、植始め位置調節のためにクラッチ断接指令がオペレータ介入によりなされる。したがって、上記構成の制御部により、変形圃場におけるオペレータ操作を最小限度に抑えて異形対応が可能となる。また、直進走行距離N3の設定下において検出した走行距離n3に基づいて自動旋回走行が可能となる。
【0024】
次に、機体を所定位置まで後退してから旋回操作するバック旋回において植付部7を連動制御する例を説明する。
この場合は、図7のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になるまで待機した後、HSTレバーが中立位置に操作されてドライブシャフト回転数n3が所定の直進走行距離N3以上であることをチェック(S71,S71a)し、該当すれば植付部「上げ」を指令(S72)し、ドライブシャフト回転のカウントを開始(S73)する。このように、所定の距離条件を満たした位置における停車操作によって植付部7を早期に上昇動作することにより、作業能率向上とともに植付部7の破損を防止することができる。
【0025】
次いで、ドライブシャフト回転が所定以上のマイナス(S74a)となる地点まで後退した時はドライブシャフト回転数n1の補正とランプ点灯(S74b,S74c)を行い、非該当ならランプ消灯(S74d)を行う。これらをHSTレバーの後進側操作の範囲(S74e)で繰り返した後、ドライブシャフト回転のカウントを開始(S74f)した後、ハンドル操作(S75)を待って対応する左または右のターン制御(S75a,S75b)に続いてドライブシャフト回転n3カウントを開始(S75c)する。
また、HSTレバーの中立操作とドライブシャフト回転数n3が所定の直進走行距離N3以上のいずれか(S71,S71a)に非該当であれば、ハンドル旋回操作と対応(S76)して前述のリフト制御(S77)をする。
【0026】
上記手順の制御処理により、畦際まで前進して停車した位置が所定の直進走行距離N3を越えていれば、植付部7が連動制御されて非作業位置に上昇し、所定距離を後退して旋回するバック旋回に対応して植付部7を連動制御し、その他の場合は植付部7の指令を手動操作として変形圃場に対応することができる。この場合において、ドライブシャフトの回転カウントによる累積距離修正により、機体を後退する過程における前後進操作に際して所定の直進走行距離N3を境に機体が過大に後退するとランプが点灯し、前進によって消灯することから、オペレータが所定の直進走行距離N3の対応地点を知ることができる。
【0027】
したがって、バック旋回において後退のやり直しにより所定の直進走行距離N3の対応地点を把握した上で機体を旋回走行することにより、バックしすぎて旋回した場合の植え付け済みの苗を倒す事態を防止し、また、次の植え始めにまにあわずに植え始め位置が不揃いとなることを防止することができる。
【0028】
なお、上記制御の他に、機体を後退した距離の長さに応じて、旋回の途中から早期に植付部7を下降開始することにより、空中植え動作を防止するとともに、整地性を向上することができる。また、植え終わりと植え始めの位置の差が50cmを越える場合は旋回制御をキャンセルすることにより、不揃いの植付け動作を回避することができる。この場合は、ブザー音の発報制御によりオペレータにキャンセル処理を知らせることができる。
【0029】
次に、上述の植付部の旋回連動制御処理において、旋回過程の均平整地を制御する例を説明する。
図8は均平整地制御の要部フローチャートである。この処理手順は、機体の旋回に際し、例えば旋回操作の検出により、N1設定ダイヤル値および昇降感度設定ダイヤル値の読込み(S81)と、その昇降感度に応じた下降タイミングN1の補正値を算出する(S82)。この補正値は、別途検証されている図9の補正特性図により決定する。この制御特性は、フロートセンサの設定感度と対応して下降タイミングN1を変更する補正量を表したものである。すなわち、検出感度を下げるようにダイヤル調節すると、その程度に応じて下降時期が繰り上げられるように下降タイミングN1を減少補正し、また、検出感度を上げるとその逆となる。この補正値により新たな下降タイミングN1を決定し(S83)、以下、上述の旋回連動制御を行う。
【0030】
上記補正処理のための補正特性は、経験値に基づいて決定することができる。具体的には、フロートセンサを低感度に調節することによりフロート15による均平整地作用が強化されて硬い土壌に対応することができ、経験的に、土壌の硬さの程度に応じた適切な検出感度が定まり、その一方で、土壌の硬さの程度に応じて旋回走行跡の荒れの程度が対応することから、その旋回過程における必要な均平整地範囲と対応して植付部の適切な下降タイミングN1が定められる。
【0031】
このように、土壌の硬さと対応して定まる検出感度と下降タイミングN1との間の関係を補正特性として植付部7の制御に反映することにより、上記機体がオペレータの旋回操作に応じて圃場を旋回走行する際に、制御部21は上記旋回操作の検出に応じて植付部の停止、非作業位置への上昇、作業位置への下降、稼動の各動作を機体旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御し、植付部7のフロート15に設けたフロートセンサ15sは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を感度調節可能に検出し、このフロートセンサ15sの設定感度と連動して植付部の下降動作のタイミングN1が変更され、そのタイミングN1でフロート15が下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【0032】
したがって、圃場の往復作業走行におけるフロート15による均平整地作業のためにオペレータが圃場の土壌硬度と対応してフロートセンサ15sの感度を調節することにより、機体旋回時の植付部7の下降動作時期が連動して変更されるので、旋回走行過程における植付部7の下降動作タイミングN1の調節操作を要することなく、旋回走行跡について土壌硬度に応じた必要な範囲を均平整地することができる。
【0033】
次に、旋回による条合わせを容易にするための旋回制御について説明する。
旋回に際して、制御部がステアリング操作の状況に基づいて小回り旋回の処理をすることにより、旋回による条合わせを容易にすることができる。詳細には、図10のフローチャートに示すように、ターン制御中(S91)を条件にハンドルを左右に頻繁に操作(S92)した時に、左右のドライブシャフトの回転速度差が小(S93)であれば、内輪側のサイドブレーキを作動する(S94)ように制御する。
【0034】
上記旋回処理において、ステアリング操作の適正度は、ポテンショメータ等によるステアリング操作の検出結果に基づいて判定することができる。例えば、旋回が大回りとなり、オペレータがこれを修正するために、ステアリング操作が一方向でなく左右方向に操作された場合はNGと判定することができる。また、内外輪の回転差が小なる場合は大回りとして判定できる。所定の条件を満たす場合は、サイドクラッチの切断に加えて更に後輪ブレーキを掛けることによって小回り旋回が可能となるので、この大回り対応の旋回補正処理によりオペレータのステアリング操作の癖によって旋回条合わせがうまくできない場合にスムーズに旋回動作するように容易に調節操作することができる。
【0035】
上記旋回補正処理は、切替スイッチ等により必要に応じて選択できるように構成し、また、後輪ブレーキを掛ける荷重や時間を調節可能にして段階的な調整ができるように構成することにより、更にスムーズな取扱いが可能となる。
【0036】
次に、旋回後の条合わせのための旋回制御を説明すると、図11のフローチャートに示すように、ターン制御中において(S101)、ハンドル操作速度(S102)又はハンドル操作量(S103)が適正値に対して小なる場合はサイドブレーキ作動を付加(S104a)し、大なる場合はサイドクラッチを解除(S104b)するべく制御する。
【0037】
上記制御処理により、オペレータのステアリング操作が遅過ぎた場合、または、回動量が少な過ぎた場合に、不足分を計算して補正するように電動動作式の片輪ブレーキによって微調整することにより、旋回した折り返し後の植付け条の間隔を自動条合わせすることができる。また、ステアリング操作が早過ぎた場合又は回動量が多過ぎた場合についても過大分を補正することによって自動条合わせすることができる。
【0038】
次に、旋回後の植始めについての旋回制御を説明すると、図12のフローチャートに示すように、ターン制御中(S111)を条件に、サイドブレーキペダルの操作(S112)をした場合は、制御パラメータN1,N2を補正(S113)した上で旋回制御する。
【0039】
上記制御処理により、左右のブレーキペダルをオペレータが操作することによって早く旋回する場合に、ペダル操作による影響を植付部7の動作制御に反映するように下降タイミングN1と稼動タイミングN2を補正することにより、次の植始め位置の狂いを解消することができる。
【0040】
また、左右の旋回ペダルで後輪の片輪のクラッチを切断し、切替レバーによってそのブレーキ動作を付加できるように構成した場合は、同切替レバーの操作に応じてその影響を反映するべく、旋回制御パラメータを補正することにより、上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】田植機の例による本発明の圃場走行作業用農作業車の側面図である。
【図2】制御部の入出力系統図である。
【図3】制御処理のフローチャートである。
【図4】ターン制御の詳細フローチャートである。
【図5】リフト制御の詳細フローチャートである。
【図6】変形圃場の往復作業工程における植付け作業例である。
【図7】バック旋回のフローチャートである。
【図8】均平整地制御の要部フローチャートである。
【図9】均平整地制御のための補正特性図である。
【図10】条合わせに適する旋回制御のフローチャートである。
【図11】自動条合わせの旋回制御のフローチャートである。
【図12】植始めについての旋回制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 田植機(圃場走行作業用農作業車)
2 操向車輪
3 後輪
4 操舵ハンドル
7 植付部(作業部)
11 昇降部
15 フロート
15s フロートセンサ
21 制御部
30 感度設定ダイヤル
N1 下降位置(制御パラメータ)
N2 クラッチオン位置(制御パラメータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体走行とともに自動的に田植作業等の圃場走行作業をする圃場走行作業用農作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回走行可能な機体に備えた作業部である農作業装置により、機体走行とともに田植作業等の圃場走行作業を行う圃場走行作業用農作業車において、特許文献1に示すように、機体の旋回走行動作と連動して農作業装置の動作を制御するようにしたものが知られている。この農作業車は、昇降動作可能に田植え等の水田植生作業を行う農作業装置と、この農作業装置と一体構成のフロート等を備えて構成される。このフロートは、前後方向傾斜を調節可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、センサを備えて植生盤面の高さ位置を検出する。
【0003】
田植え等の圃場の往復作業走行においては、フロートで植生盤面を均平整地しつつ農作業装置が植付作業を行う。このとき、フロートのセンサに基づいて農作業装置の高さを昇降調節して植付け深さを調節する。往行から復行への折り返し地点でUターン旋回する旋回過程においては、農作業装置の植付動作を停止するとともに上昇動作により農作業装置とフロートとを植生盤面の上方の非作業高さ位置に保持して旋回走行に入り、機体が復行方向まで旋回すると農作業装置を下降し、次いで同農作業装置を稼動することにより植付けを再開する。この一連の旋回付帯操作を制御する制御装置からなる制御部により機体の旋回動作と連動して農作業装置の取扱いを自動処理する旋回連動制御を行うことにより、オペレータの操作負担を軽減することができる。例えば、作業圃場の土壌が硬い場合は機体旋回時の農作業装置の下降タイミングを早く設定することにより、旋回走行跡の土壌の荒れを抑えて広い範囲を整地しつつ植付けすることができる。
【0004】
しかし、圃場状況は全面が均一とは限らず、場所によって状況が変動する場合があり、特に、土壌の硬度が高い領域では、その都度オペレータが農作業装置の下降タイミングを調節するという煩わしい操作を機体旋回操作と合わせて行う必要があり、オペレータにとって大きな作業負担となっていた。
【特許文献1】特開2002−335720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、圃場の往復作業走行の折返し部に来た際に、農作業装置の下降タイミングの調節を含む作業部の取扱いを要することなく、土壌の硬度に応じた機器制御により旋回走行跡の荒れに適切に対処することができる圃場走行作業用農作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロートを備えた作業部と、この作業部について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部とを備えた圃場走行作業用農作業車において、上記作業部のフロートに圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサを設け、このフロートセンサの感度と連動して上記作業部の下降動作のタイミングを変更することを特徴とする。
【0007】
作業部のフロートに設けたフロートセンサは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を設定による検出感度で検出し、このフロートセンサの設定感度と連動して作業部の下降動作のタイミングが変更されることから、オペレータが土壌硬度と対応して検出感度を設定することにより、上記機体が圃場を旋回走行する際に、土壌硬度と対応して変更されたタイミングで作業部のフロートが下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圃場走行作業用農作業車は以下の効果を奏する。
請求項1の発明により、上記機体はオペレータの旋回操作に応じて圃場を旋回走行し、制御部は上記旋回操作の検出に応じて作業部の非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を機体旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御し、作業部のフロートに設けたフロートセンサは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を感度調節可能に検出し、このフロートセンサの設定感度と連動して作業部の下降動作のタイミングが変更され、そのタイミングで作業部のフロートが下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【0009】
したがって、圃場の往復作業走行におけるフロートによる均平整地作業のためにオペレータが圃場の土壌硬度と対応してフロートセンサの感度を調節することにより、機体旋回時の作業部の下降動作時期が連動して変更されるので、旋回走行過程における作業部の下降動作時期の調節操作を要することなく、旋回走行跡について土壌硬度に応じた必要な範囲を均平整地することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の圃場走行作業用農作業車の一例を図1の側面図に示す田植機について説明する。田植機1は、操向車輪2、2と後輪3、3とによって4輪駆動可能に機体を支持し、操舵ハンドル4、オペレータシート5、エンジン6、植付部7のほか、各種機器を制御する後述の制御部21を備える。
【0011】
植付部7は、機体後部に昇降部11を介して昇降可能に取付けた作業部であり、図示せぬ植付クラッチを介して機体の走行に合わせて多条植え動作するほか、植付け動作と連動して苗を順次送り出す苗送出部13、薬肥を吐出する施肥部14、均平用のフロート15…等を備える。フロート15は、植付部7に対して傾斜調節可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出するフロートセンサ15sを備え、フロート面の傾斜調節による受圧中心位置の変化に応じて検出感度を調節することができる。
【0012】
制御部21の入出力構成は、図2の入出力信号系統図に示すように、機体旋回時の制御パターンを選択するための制御選択スイッチ22の操作信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、また、機体走行と植付部作動用の各種機器のアクチュエータ類を制御する。制御選択スイッチ22は、植付部7の動作を機体旋回と連動制御する「連続」のほかに、左右の機体旋回方向について「右旋回のみ」「左旋回のみ」に限定指示するダイヤルスイッチである。
【0013】
その他に、入力側には、植付け動作指令用のフィンガーレバースイッチ23a、植付部7の自動上昇選択用の植付部上昇モードスイッチ24、変速操作検知用のHSTレバー位置センサ25、操舵操作検知用のハンドル切れ角センサ26、時間調節用のタイムラグ調節ダイヤル27、ブレーキ操作検知用のブレーキペダルセンサ28、植付部の下降タイミングを決めるN1設定ダイヤル29a、植付部稼動のクラッチタイミングを決めるN2設定ダイヤル29b、フロートセンサ15sについての感度設定ダイヤル30等を接続してそれぞれの信号を入力する。
【0014】
出力側には、昇降部11の油圧シリンダ11aを介して植付部7を昇降する電磁油圧バルブ11b、植付部7の植付け稼動用の植付クラッチ作動ソレノイド31、施肥機動作用の施肥クラッチ作動ソレノイド32、HSTレバー傾動用のHST用モータ33等を接続して各機器を制御する。
【0015】
N1設定ダイヤル29aは、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転量による下降位置N1が植付部の下降タイミングとして設定される。N2設定ダイヤル29bは、N1設定ダイヤル29aと同様に、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転量によるクラッチオン位置N2が植付部7の下降タイミングとして設定される。感度設定ダイヤル30は、フロート15の傾斜角度を調節するためのものであり、前上がりの傾斜により受圧中心位置がフロート基部側に移動してフロートセンサ15sの検出感度が低下し、均平整地作用を強化することができ、逆の設定により検出感度を上げて均平整地作用を緩和することができる。
【0016】
上記制御部21による制御処理は、図3のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になるまで待機した後、制御選択スイッチ22に応じて旋回連動処理を「左旋回」「右旋回」に限定し、または、限定なしの「連続」に切替える(S3)。
【0017】
制御選択スイッチ22が「左旋回」の場合は、ハンドル操作(S21a)を待った後、左旋回であればドライブシャフト回転開始(S22)と左右共通のサブルーチン処理による左ターン制御(S23)による通常の連動処理を行い、右旋回であればサブルーチン処理によるリフト制御(S24)により異形対応を行う。制御選択スイッチ22が「右旋回」の場合は、上記と逆に、ハンドル操作(S21b)が右旋回であればドライブシャフト回転開始(S22)と左ターン制御(S23)による通常の連動処理を行い、左旋回であればリフト制御(S24)により異形対応を行う。また、制御選択スイッチ22が「連続」の場合は、ハンドル操作(S21)を待った後、左右それぞれ、ドライブシャフト回転開始(S22)と対応するターン制御(S23)による通常の連動処理を行う。
【0018】
サブルーチン処理による左または右のターン制御処理の詳細は、図4のフローチャートに示すように、植付部7の上昇モードスイッチ24が入りでない場合において、ドライブシャフト回転数チェック(S42)によって植付部7が下降する所定の下降位置N1に機体が旋回するまで待ち、旋回操作の判定のためにハンドル角度が規定値a(例えば90°)以上であることを条件に植付部「下げ」の指令(S44)後にフロートセンサ15sによりフロート15の接地を待つ(S44a,S44b)。一方、上昇モードの場合は、植付部「上げ」を指令(S41a)し、昇降リンクが最上昇位置に達するまで待つ(S41b,S41c)。ハンドル角度が規定値a以上でない場合、フロートの接地または昇降リンクの最上昇が所定時間の経過でも検出されない場合(S44b、S41c)は警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0019】
次いで、ドライブシャフト回転数チェック(S45)によって所定の旋回距離N2’になるまで待機し、異常操作の判定のためにハンドル角度のチェック(S46)により規定値b(例えば180°)以上でないことを条件に施肥クラッチ「入」を指令(S47)する。ハンドル角度が規定値b以上であれば、上記同様に、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0020】
続いて、ドライブシャフト回転数チェック(S49)によって所定のクラッチオン位置N2に機体が旋回するまで待機して植付「入」を指令(S50)し、植付けクラッチセンサにより植付け状態を待って(S50a,S50b)ドライブシャフト回転カウントクリア(S51)により通常の連動処理を終了し、植付け状態が所定時間の経過でも検出されない時は、警報出力(S50c)の上で処理を終了する。
【0021】
この左または右のターン制御処理により、機体の旋回動作と連動して植付部7が対応動作して旋回過程の整地を行うとともに、旋回終了後の直進によって植付けが再開され、また、植付部7の下げ動作後等で所定条件を満たせば、ハンドル戻し等の旋回過程中のハンドル操作で条合わせが可能となる。そして、この一連の処理において、植付部の「下げ」「上げ」「入」の各指令の結果が確認されない動作異状に対して警告の出力をすることによってオペレータの対応が可能となるので、機器異状に気付かずに作業状況を悪化させる事態を回避することができる。
【0022】
また、サブルーチン処理によるリフト制御の詳細は、図5のフローチャートに示すように、植付部「上げ」を指令(S61)した後、ハンドル切れ角が所定範囲となるまで待った(S62)後に植付部「下げ」を指令する(S63)。この処理により、植付部7の昇降動作に限定して機体旋回と連動して制御することができる。この処理手順により、選択されなかった旋回方向について、植付部7を昇降制御するように連動内容が切替えられる。したがって、ドライブシャフトの回転量とハンドル操作とにより、選択された旋回方向に限定して植付部7が連動動作し、他の旋回方向については、植付部7の昇降制御に限定され、オペレータがクラッチ指令を手動介入することにより、変形圃場の異形側の対応を可能とする。
【0023】
例えば、図6のような変形圃場の往復作業工程における植付け作業例のように、制御選択スイッチ22を「左旋回のみ」に合わせることにより、左旋回Lでは、植付部7の昇降およびクラッチ断接が機体旋回と連動して制御され、右旋回Rでは、異形対応処理として植付部7の昇降動作のみが機体旋回と連動して制御されるとともに、植始め位置調節のためにクラッチ断接指令がオペレータ介入によりなされる。したがって、上記構成の制御部により、変形圃場におけるオペレータ操作を最小限度に抑えて異形対応が可能となる。また、直進走行距離N3の設定下において検出した走行距離n3に基づいて自動旋回走行が可能となる。
【0024】
次に、機体を所定位置まで後退してから旋回操作するバック旋回において植付部7を連動制御する例を説明する。
この場合は、図7のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になるまで待機した後、HSTレバーが中立位置に操作されてドライブシャフト回転数n3が所定の直進走行距離N3以上であることをチェック(S71,S71a)し、該当すれば植付部「上げ」を指令(S72)し、ドライブシャフト回転のカウントを開始(S73)する。このように、所定の距離条件を満たした位置における停車操作によって植付部7を早期に上昇動作することにより、作業能率向上とともに植付部7の破損を防止することができる。
【0025】
次いで、ドライブシャフト回転が所定以上のマイナス(S74a)となる地点まで後退した時はドライブシャフト回転数n1の補正とランプ点灯(S74b,S74c)を行い、非該当ならランプ消灯(S74d)を行う。これらをHSTレバーの後進側操作の範囲(S74e)で繰り返した後、ドライブシャフト回転のカウントを開始(S74f)した後、ハンドル操作(S75)を待って対応する左または右のターン制御(S75a,S75b)に続いてドライブシャフト回転n3カウントを開始(S75c)する。
また、HSTレバーの中立操作とドライブシャフト回転数n3が所定の直進走行距離N3以上のいずれか(S71,S71a)に非該当であれば、ハンドル旋回操作と対応(S76)して前述のリフト制御(S77)をする。
【0026】
上記手順の制御処理により、畦際まで前進して停車した位置が所定の直進走行距離N3を越えていれば、植付部7が連動制御されて非作業位置に上昇し、所定距離を後退して旋回するバック旋回に対応して植付部7を連動制御し、その他の場合は植付部7の指令を手動操作として変形圃場に対応することができる。この場合において、ドライブシャフトの回転カウントによる累積距離修正により、機体を後退する過程における前後進操作に際して所定の直進走行距離N3を境に機体が過大に後退するとランプが点灯し、前進によって消灯することから、オペレータが所定の直進走行距離N3の対応地点を知ることができる。
【0027】
したがって、バック旋回において後退のやり直しにより所定の直進走行距離N3の対応地点を把握した上で機体を旋回走行することにより、バックしすぎて旋回した場合の植え付け済みの苗を倒す事態を防止し、また、次の植え始めにまにあわずに植え始め位置が不揃いとなることを防止することができる。
【0028】
なお、上記制御の他に、機体を後退した距離の長さに応じて、旋回の途中から早期に植付部7を下降開始することにより、空中植え動作を防止するとともに、整地性を向上することができる。また、植え終わりと植え始めの位置の差が50cmを越える場合は旋回制御をキャンセルすることにより、不揃いの植付け動作を回避することができる。この場合は、ブザー音の発報制御によりオペレータにキャンセル処理を知らせることができる。
【0029】
次に、上述の植付部の旋回連動制御処理において、旋回過程の均平整地を制御する例を説明する。
図8は均平整地制御の要部フローチャートである。この処理手順は、機体の旋回に際し、例えば旋回操作の検出により、N1設定ダイヤル値および昇降感度設定ダイヤル値の読込み(S81)と、その昇降感度に応じた下降タイミングN1の補正値を算出する(S82)。この補正値は、別途検証されている図9の補正特性図により決定する。この制御特性は、フロートセンサの設定感度と対応して下降タイミングN1を変更する補正量を表したものである。すなわち、検出感度を下げるようにダイヤル調節すると、その程度に応じて下降時期が繰り上げられるように下降タイミングN1を減少補正し、また、検出感度を上げるとその逆となる。この補正値により新たな下降タイミングN1を決定し(S83)、以下、上述の旋回連動制御を行う。
【0030】
上記補正処理のための補正特性は、経験値に基づいて決定することができる。具体的には、フロートセンサを低感度に調節することによりフロート15による均平整地作用が強化されて硬い土壌に対応することができ、経験的に、土壌の硬さの程度に応じた適切な検出感度が定まり、その一方で、土壌の硬さの程度に応じて旋回走行跡の荒れの程度が対応することから、その旋回過程における必要な均平整地範囲と対応して植付部の適切な下降タイミングN1が定められる。
【0031】
このように、土壌の硬さと対応して定まる検出感度と下降タイミングN1との間の関係を補正特性として植付部7の制御に反映することにより、上記機体がオペレータの旋回操作に応じて圃場を旋回走行する際に、制御部21は上記旋回操作の検出に応じて植付部の停止、非作業位置への上昇、作業位置への下降、稼動の各動作を機体旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御し、植付部7のフロート15に設けたフロートセンサ15sは圃場作業対象となる土壌までの高さ位置を感度調節可能に検出し、このフロートセンサ15sの設定感度と連動して植付部の下降動作のタイミングN1が変更され、そのタイミングN1でフロート15が下降動作して旋回走行跡を均平整地する。
【0032】
したがって、圃場の往復作業走行におけるフロート15による均平整地作業のためにオペレータが圃場の土壌硬度と対応してフロートセンサ15sの感度を調節することにより、機体旋回時の植付部7の下降動作時期が連動して変更されるので、旋回走行過程における植付部7の下降動作タイミングN1の調節操作を要することなく、旋回走行跡について土壌硬度に応じた必要な範囲を均平整地することができる。
【0033】
次に、旋回による条合わせを容易にするための旋回制御について説明する。
旋回に際して、制御部がステアリング操作の状況に基づいて小回り旋回の処理をすることにより、旋回による条合わせを容易にすることができる。詳細には、図10のフローチャートに示すように、ターン制御中(S91)を条件にハンドルを左右に頻繁に操作(S92)した時に、左右のドライブシャフトの回転速度差が小(S93)であれば、内輪側のサイドブレーキを作動する(S94)ように制御する。
【0034】
上記旋回処理において、ステアリング操作の適正度は、ポテンショメータ等によるステアリング操作の検出結果に基づいて判定することができる。例えば、旋回が大回りとなり、オペレータがこれを修正するために、ステアリング操作が一方向でなく左右方向に操作された場合はNGと判定することができる。また、内外輪の回転差が小なる場合は大回りとして判定できる。所定の条件を満たす場合は、サイドクラッチの切断に加えて更に後輪ブレーキを掛けることによって小回り旋回が可能となるので、この大回り対応の旋回補正処理によりオペレータのステアリング操作の癖によって旋回条合わせがうまくできない場合にスムーズに旋回動作するように容易に調節操作することができる。
【0035】
上記旋回補正処理は、切替スイッチ等により必要に応じて選択できるように構成し、また、後輪ブレーキを掛ける荷重や時間を調節可能にして段階的な調整ができるように構成することにより、更にスムーズな取扱いが可能となる。
【0036】
次に、旋回後の条合わせのための旋回制御を説明すると、図11のフローチャートに示すように、ターン制御中において(S101)、ハンドル操作速度(S102)又はハンドル操作量(S103)が適正値に対して小なる場合はサイドブレーキ作動を付加(S104a)し、大なる場合はサイドクラッチを解除(S104b)するべく制御する。
【0037】
上記制御処理により、オペレータのステアリング操作が遅過ぎた場合、または、回動量が少な過ぎた場合に、不足分を計算して補正するように電動動作式の片輪ブレーキによって微調整することにより、旋回した折り返し後の植付け条の間隔を自動条合わせすることができる。また、ステアリング操作が早過ぎた場合又は回動量が多過ぎた場合についても過大分を補正することによって自動条合わせすることができる。
【0038】
次に、旋回後の植始めについての旋回制御を説明すると、図12のフローチャートに示すように、ターン制御中(S111)を条件に、サイドブレーキペダルの操作(S112)をした場合は、制御パラメータN1,N2を補正(S113)した上で旋回制御する。
【0039】
上記制御処理により、左右のブレーキペダルをオペレータが操作することによって早く旋回する場合に、ペダル操作による影響を植付部7の動作制御に反映するように下降タイミングN1と稼動タイミングN2を補正することにより、次の植始め位置の狂いを解消することができる。
【0040】
また、左右の旋回ペダルで後輪の片輪のクラッチを切断し、切替レバーによってそのブレーキ動作を付加できるように構成した場合は、同切替レバーの操作に応じてその影響を反映するべく、旋回制御パラメータを補正することにより、上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】田植機の例による本発明の圃場走行作業用農作業車の側面図である。
【図2】制御部の入出力系統図である。
【図3】制御処理のフローチャートである。
【図4】ターン制御の詳細フローチャートである。
【図5】リフト制御の詳細フローチャートである。
【図6】変形圃場の往復作業工程における植付け作業例である。
【図7】バック旋回のフローチャートである。
【図8】均平整地制御の要部フローチャートである。
【図9】均平整地制御のための補正特性図である。
【図10】条合わせに適する旋回制御のフローチャートである。
【図11】自動条合わせの旋回制御のフローチャートである。
【図12】植始めについての旋回制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 田植機(圃場走行作業用農作業車)
2 操向車輪
3 後輪
4 操舵ハンドル
7 植付部(作業部)
11 昇降部
15 フロート
15s フロートセンサ
21 制御部
30 感度設定ダイヤル
N1 下降位置(制御パラメータ)
N2 クラッチオン位置(制御パラメータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロートを備えた作業部と、この作業部について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部とを備えた圃場走行作業用農作業車において、
上記作業部のフロートに圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサを設け、このフロートセンサの感度と連動して上記作業部の下降動作のタイミングを変更することを特徴とする圃場走行作業用農作業車。
【請求項1】
旋回操作に応じて圃場を旋回走行しうる機体と、この機体に対して昇降可能に支持されて作業位置で圃場作業をするとともに均平整地用のフロートを備えた作業部と、この作業部について旋回操作の検出に応じて非作業位置への上昇、作業位置への下降の各動作を旋回走行過程の所定のタイミングで動作制御する制御部とを備えた圃場走行作業用農作業車において、
上記作業部のフロートに圃場作業対象となる土壌の高さ位置を感度調節可能に検出するフロートセンサを設け、このフロートセンサの感度と連動して上記作業部の下降動作のタイミングを変更することを特徴とする圃場走行作業用農作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−158222(P2006−158222A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350150(P2004−350150)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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