土圧壁
【課題】単一径の複数のエレメントを用いることで構築でき、また、径の異なる掘進機を用意することなく、また、掘削土量も増やさずに構築できる土圧壁を提供すること。
【解決手段】左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と上壁1206の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
【解決手段】左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と上壁1206の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大断面で中距離の地下トンネルを構築する際に好適な土圧壁に関する。
【背景技術】
【0002】
地下トンネルを構築する際に用いられる土圧壁として、従来、多数の矩形断面のコンクリート充填鋼殻を、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設し、これらコンクリート充填鋼殻相互を継手により連結した技術が知られている(例えば特許文献1)。また、柱体と組み合わせることでボックス形状とした技術も知られている。また、断面が台形の多数の鋼製エレメントを用い、トンネル形状を円形にする技術も知られている。
さらに、多数のコンクリート充填欠円管を、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設し、これらコンクリート充填欠円管相互をPC鋼線、PC鋼棒、連続炭素繊維製やケプラー製などの連結用部材により連結した技術も知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−120372
【特許文献2】特開2002−146777
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、矩形断面のコンクリート充填鋼殻を用いる従来技術と、柱体と組み合わせることでトンネル断面をボックス形状とする従来技術では、コンクリート充填鋼殻を鉛直方向および水平方向に直線状に並べており、隅角部で壁部が直角に交わる断面が矩形の土圧壁が構築され、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合に隅角部に大きな曲げモーメントが作用することから、隅角部に大掛かりな補強構造が必要となる。
また、断面が台形の多数の鋼製エレメントを用い、トンネル形状を円形にする従来技術では、台形の孔が掘削されるように掘進機を新たに製作する必要があり、例えば、円形以外の形状のトンネルを構築する場合には、その都度、エレメントと掘進機を製作しなければならない。
また、コンクリート充填欠円管を用いる従来技術でも、コンクリート充填欠円管を鉛直方向および水平方向に直線状に並べており、隅角部で壁部が直角に交わる断面が矩形の土圧壁が構築され、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合に隅角部に大きな曲げモーメントが作用することから、隅角部に他の箇所よりも直径の大きな鋼管を用いて補強する必要があり、そのため、径の異なる掘進機が必要となり、かつ、掘削土量も増え、不経済となる。
また、コンクリート充填欠円管を用いる従来技術では、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合、スペース上、隅角部に配設する斜め補強部材の定着用のスペースを確保することが困難となる。
【0004】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、本発明はコンクリート充填欠円管を用いた土圧壁の改良に関するもので、本発明の目的は、単一径の複数のエレメントを用いることで構築でき、また、径の異なる掘進機を用意することなく、また、掘削土量も増やさずに構築でき、しかも、隅角部に配設する斜め補強部材の定着用のスペースを確保することができる土圧壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる断面が矩形枠状の土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記土圧壁の隅部に位置するエレメントは、その隅部を構成する2つの壁の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されていることを特徴とする。
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記左右の側壁と前記上壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記上壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記上壁は左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記底壁と前記上壁との間に鉛直方向に延在する中柱が設けられ、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記中柱と前記左側壁との間に位置する上壁箇所および前記中柱と前記右側壁との間に位置する上壁箇所は、それら上壁箇所の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の土圧壁では、円筒部と係合部とが係合しているので、大きな有効桁高を確保でき、さらに、隣り合う柱体相互は、円筒部と係合部とが係合し、かつ、隣り合う柱体間に主鋼材が配設された状態で各柱体の内部にコンクリートが充填されるので、土圧壁の耐力は格段と高められる。
特に、本発明では、土圧壁の角部に位置するエレメントが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁の内側に変位して配置されているので、土圧壁の構造上の強度が高められ、土圧壁の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
あるいは、アーチ状に形成された上壁の端部が、側壁の上端や中柱の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁の構造上の強度が高められ、土圧壁の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメントを用いて補強する必要がなくなる。
そのため、均一直径のエレメントで土圧壁を構築でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、単一径(単一形状)の掘進機を用意すれば足り、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメントを用いる従来技術に比べ掘削土量を削減でき、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
前記の目的を達成するため本発明は、土圧壁の角部に位置するエレメントを、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁の内側に変位して配置するようにし、あるいは、上壁をアーチ状に形成するようにした。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明に係る土圧壁の実施例を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1の土圧壁12は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体14と、これら複数の柱体14の内部を貫通する複数の主鋼材16と、各柱体14の内部に充填されたコンクリートCにより矩形枠状に構成されている。
前記各柱体14は、図2(A)、(B)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の少なくとも一側が前記円筒部1802の全長にわたって円筒部1802の内側に窪んだ係合部1804とからなる中空状のエレメント18がその長手方向に同軸上に並べられることで構成されている。
隣り合う柱体14相互は、一方の柱体14を構成するエレメント18の各係合部1804に、他方の柱体14を構成するエレメント18の各円筒部1802の一部が係合されるように配置されている。
前記主鋼材16は、前記各柱体14の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメント18の係合部1804を通って各柱体14の内部間を貫通し土圧壁12の周囲に沿って連続するように配設されている。
そして、これら柱体14の内部にコンクリートCが充填されている。
なお、本発明において主鋼材16とは、曲げ応力に抵抗させるため用いるものを広く含み、したがって、鉄筋や、H形鋼などの鋼材などの他、鋼材ではない繊維ロッドなどを広く含む。
【0010】
本実施例では、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、ほぼ水平方向に延在し左右の側壁1204の上端を接続する上壁1206とで構成されている。
そして、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と上壁1206の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
【0011】
本実施例では、断面形状の異なる3種類の柱体14が用いられ、各柱体14に対応して3種類のエレメント18が用いられている。
すなわち、矩形枠をなす土圧壁12の底壁1202と上壁1206の中央と左右両端寄りに位置する柱体14のエレメント18は、図2(A)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の両側に設けられた係合部1804とで構成されている。
また、底壁1202および上壁1206の左右両端寄りと左右の側壁1204の上端寄りに位置する柱体14のエレメント18は、図2(C)で示すように、円筒部1802のみで構成されている。
更に、前記の箇所を除く全ての柱体14のエレメント18、すなわち大半の柱体14を構成するエレメント18は、図2(B)で示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の一側に設けられた係合部1804とで構成されている。
前記係合部1804は円筒部1802の内側に窪み円筒部1802の全長にわたって延在している。前記係合部1804は隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の一部が収容できる寸法で構成されている。
【0012】
まず、前記エレメント18について図3乃至図5を参照して詳細に説明すると、図3はエレメントの斜視図、図4(A)はエレメントの断面正面図、(B)はエレメントの部分の側面図、図5(A)は蓋板を取り外した状態のエレメントの断面正面図、(B)は蓋板を取り外した状態のエレメントの部分の側面図を示しており、これらの図に示すエレメント18は、円筒部1802と、この円筒部1802の一側に設けられた係合部1804とで構成されている。
前記円筒部1802は、鋼管の一側を切り欠くことで構成されている。
前記係合部1804は、円筒部1802の一側が窪むように凹部状に設けられ、係合部1804は、円筒部1802の内側に配置され凹部の底部を構成する鋼板製の底板1810と、底板1810の両側から起立して凹部の両側を構成し円筒部1802に連結される鋼板製の側板1812とで構成されている。
このような構成からなる係合部1804に、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の一部が収容された状態で、円筒部1802の両端に位置する円筒部1802の縁が、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802に当たり、図4(A)に示すように、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間に閉塞された閉塞空間1850が形成されるように構成されている。
【0013】
図5(A)、(B)に示すように、前記円筒部1802の上下部には、円筒部1802を貫通する主鋼材挿通孔20が互いに等間隔をおき円筒部1802の長手方向に沿って多数形成されている。
また、前記底板1810の上下部にも、底板1810を貫通する主鋼材挿通孔20が互いに等間隔をおき底板1810の長手方向に沿って多数形成されている。
更に、前記上下の主鋼材挿通孔20よりも内側の底板1810箇所に、互いに等間隔をおき底板1810の長手方向に沿ってコンクリート充填孔22が上下に多数形成されている。
前記主鋼材挿通孔20は、主鋼材16が挿通できるように主鋼材16よりも大きな直径で形成され、円筒部1802の各主鋼材挿通孔20と底板1810の各主鋼材挿通孔20とにわたり主鋼材16が挿通されるように、円筒部1802の主鋼材挿通孔20と底板1810の主鋼材挿通孔20とは互いに対応した箇所に形成されている。
そして、図3および図4(A)、(B)に示すように、エレメント18の地中への埋設時に、エレメント18の内部に土砂が入らないように、これら主鋼材挿通孔20は取り外し可能な蓋板24により閉塞され、また、コンクリート充填孔22は取り外し可能な蓋板26により閉塞されている。
【0014】
蓋板24、26の円筒部1802や底板1810への取り付けは、例えば、キャップを嵌め込む形式のものでもよく、あるいは、スポット溶接などにより仮止めする形式のものでもよい。
本実施の形態では、蓋板24として薄い鋼板を用い、この鋼板を円筒部1802、底板1810の外面に、スポット溶接により仮止めしており、地中に埋設された後、エレメント18の内部から作業員がハンマーなどで叩くことにより簡単に取り外せ、主鋼材挿通孔20が露出するように構成されている。
また、蓋板26として、鍔部と有底円筒部からなる薄い鋼板製のキャップを用い、エレメント18の内側から有底円筒部をコンクリート充填孔22に嵌合し、鍔部を底板1810の内面に突き当てており、地中に埋設された後、エレメント18の内部から作業員が鍔部を剥がすことにより簡単に取り外せ、コンクリート充填孔22が露出するように構成されている。
なお、図2(A)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の両側に設けられた係合部1804とからなるエレメント18では、各係合部1804に主鋼材挿通孔20、コンクリート充填孔22が形成され、これら主鋼材挿通孔20、コンクリート充填孔22は取り外し可能な蓋板24、26により閉塞されている。
また、図2(C)に示すように、円筒部1802のみからなるエレメント18では、互いに90度向きを変えた円筒部1802箇所に、前記と同様に、それぞれ主鋼材挿通孔20が形成され、これら主鋼材挿通孔20は取り外し可能な蓋板24により閉塞されている。
【0015】
次に、上記のようなエレメント18から柱体14により構成される土圧壁12をその構築手順に従ってより詳細に説明する。
図6(A)〜(E)および図7(A)〜(E)は柱体の構築方法の説明図、図8(A)〜(G)は最初に構築する柱体と次に構築する柱体の説明図を示している。
まず、上壁1206の中央をなす柱体14が、図2(A)に示すエレメント18により構築され、次に、隣の柱体14が、図2(B)に示すエレメント18や図2(C)に示すエレメント18を用いて順次構築されていく。
土圧壁12を構築するに際して発進立坑32が設けられ、発進立坑32に円形状の発進坑口34が設けられる。
図6(A)、(B)に示すように、発進立坑32内に円形掘削機36および後続機械38を配置して駆動させ、推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出して掘進させ、これにより図8(A)に示すように円形掘削機36により円形の孔3602が掘削されていく。
次に、図6(B)乃至(E)に示すように、後続機械38の後端にエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出し、次に、このエレメント18に次のエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により押し出し、このように発進立坑32内でエレメント18を順次連結して押し出し、到達立坑42に向けて掘進させる。この状態を図8(B)に示す。
なお、直線状に並べられるエレメント18どうしの連結は、例えば、エレメント18の長手方向の後端を縮径しておき、次に打ち込むエレメント18の先端を前記縮径されたエレメント18の後端に嵌め込むなど、従来公知の種々の手段により行われる。
【0016】
このようにして順次エレメント18が連結されて押し出され、円形掘削機36が到達立坑42に近づいたならば、図6(E)に示すように、到達立坑42に到達坑口48を設ける。
そして、発進立坑32におけるエレメント18の押し出しにより、円形掘削機36が到達坑口48から到達立坑42内に突出し、続いて後続機械38が到達立坑42内に突出する。
発進立坑32におけるさらなるエレメント18の押し出しにより、先頭のエレメント18の先部を到達立坑42内に露出させ、到達立坑42内において円形掘削機36および後続機械38をエレメント18から取り外し、次のエレメント18を打ち込むために円形掘削機36および後続機械38を発進立坑32へ移動する。
【0017】
先頭のエレメント18の先部が到達立坑42に到達することで、相互に連結された多数のエレメント18からなり発進立坑32と到達立坑42との間で直線状に延在する柱体14が形成されることになる。
また、多数のエレメント18の両側の係合部1804も直線状に延在することになり、この係合部1804の外側は、円形掘削機36で掘削された円形の孔3602の内部に位置しているため、土が存在していない空間Kとなっている。そのため、次の柱体14を構築するに際して、係合部1804内に円形掘削機36の一部が位置して掘進する関係上、円形掘削機36が直進し易いように、図8(C)に示すように、前記空間K内に改良土Sが充填される。
すなわち、多数のエレメント18の両側の空間Kに、発進立坑32から到達立坑42に向けて(あるいは到達立坑42から発進立坑32に向けて液状の改良土Sが柱体14の全長にわたって充填され、固化される。これにより、次に孔3602を掘削する際に、円形掘削機36の受ける抵抗が周方向において均一となり、直進し易くなる。
【0018】
次に、図7(A)に示すように、発進立坑32から次のエレメント18を打ち込むに際して、発進立坑32に発進坑口34が設けられる。なお、今回打ち込まれるエレメント18は、図2(B)に示すように、係合部1804が円筒部1802の一側部にのみ設けられており、最初に打ち込まれたエレメント18の一方の係合部1804に、今回打ち込まれるエレメント18の円筒部1802の一部が収容されるように発進坑口34が設けられる。
そして、図7(A)に示すように、発進立坑32内に円形掘削機36および後続機械38を配置して駆動させ、推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出して掘進させる。
次に、図7(B)乃至(E)に示すように、後続機械38の後端にエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出し、次に、このエレメント18に次のエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により押し出し、このようにエレメント18を発進立坑32内で順次連結しては押し出し、到達立坑42まで掘進させる。
なお、今回の円形掘削機36により掘削では、最初に打ち込まれたエレメント18の一方の係合部1804に対応した部分でオーバーラップして円形孔3602が掘削されることになり、隣り合うエレメント18相互において、図8(E)に示すように、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間の閉塞空間1850に改良土Sが充填された状態が残存する。
【0019】
このようにして順次エレメント18が連結されて押し出され、円形掘削機36が到達立坑42に近づいたならば、前記と同様に到達立坑42に到達坑口48を設ける。
そして、発進立坑32におけるエレメント18の押し出しにより、円形掘削機36、後続機械38が到達坑口48から到達立坑42内に突出する。
発進立坑32におけるさらなるエレメント18の押し出しにより、先頭のエレメント18の先部が到達坑口48から到達立坑42内に露出し、先頭のエレメント18の先部が到達立坑42内に露出したならば、到達立坑42内において円形掘削機36および後続機械38をエレメント18から取り外し、第3番目の柱体14を打ち込むために円形掘削機36および後続機械38を発進立坑32へ移動する。
これにより、図8(E)に示すように、最初に形成された柱体14に一部が重複した第2番目の柱体14が形成されることになる。
そして、前記と同様に、次の柱体14を構築するに際して、円形掘削機36が直進し易いように、図8(F)に示すように、前記空間K内に改良土Sが充填され図8(G)に示すように、改良土Sが充填されたのち次の円形孔3602が掘削される。
【0020】
このようにして円形掘削機36、後続機械38、エレメント18を用いて発進立坑32から到達立坑42への掘進を行ない、発進立坑32と到達立坑42との間で直線状に延在する柱体14を一部重複させつつ順次形成していき、最後には図1に示すように矩形枠状に連続する複数の柱体14が形成される。
次に、隣り合う柱体14の間の閉塞空間1850に残存した改良土Sを取り除き、隣り合う柱体14間にわたり主鋼材16を配設する。
より詳細に説明すると、まず、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間の閉塞空間1850に充填された改良土Sを取り除く。
この改良土Sの取り除きは、発進立坑32から到達立坑42に向けて、あるいは到達立坑42から発進立坑32に向けて高圧水を噴射することで行なう。
【0021】
閉塞空間1850に充填された改良土Sを取り除いたならば、次に、各柱体14を構成するエレメント18に取着された蓋板24、26を取り外し、主鋼材挿通孔20およびコンクリート充填孔22を露出させる。
この場合、主鋼材挿通孔20を閉塞する蓋板24は、作業員がエレメント18の内部からハンマーにより叩くことにより取り外され、これにより蓋板24は閉塞空間1850の下部に落下することになる。また、コンクリート充填孔22を閉塞する蓋板26は、エレメント18の内部から適宜治具により蓋板26の鍔部をこじ開けることにより取り外され、取り外された蓋板26はエレメント18外に持ち出される。
【0022】
次に、複数の柱体14の内部を貫通するように複数の主鋼材16を配設する。
本実施の形態では、複数の柱体14により矩形枠が形成されているので、矩形枠をなす底壁1202と上壁1206においてそれぞれ連続して水平に延在するように、また、左右の側壁1204においてそれぞれ連続して鉛直に延在するように主鋼材16を配設する。
この場合、主鋼材16として鉄筋やH形鋼などの撓ませることができないものを用いる場合には、適宜長さの主鋼材を主鋼材挿通孔20に挿通させた後、市販の機械式継手などを用いて直線状に連結することで配設する。主鋼材16として繊維ロッドなどを用いる場合には、これらのものは可撓可能であるので、長尺なものをそのままエレメント18内に持ち込んで配設される。
なお、主鋼材16に加え、柱体14の長手方向に間隔をおいた複数個所に、各エレメント18の係合部1804を通り土圧壁12の周囲に沿って延在するPC鋼材(緊張材として使用される鋼線)を配設するようにしてもよく、PC鋼材をこのように配設すると土圧壁12の耐力を高める上で有利となる。
【0023】
複数の柱体14の内部を貫通して複数の主鋼材16が配設されたならば、次に、各柱体14の内部および閉塞空間1850の内部にコンクリートCが充填される。この場合、閉塞空間1850へのコンクリートCの充填は、柱体1850の内部に充填されるコンクリートCがコンクリート充填孔22から閉塞空間1850に流れ込むことで行われる。
そして、各柱体14の内部および閉塞空間1850の内部に充填されたコンクリートCが固化することで図1に示す土圧壁12が構築される。
その後、土圧壁12の内部を掘削し、大断面の地下空間を構築する。
【0024】
本実施の形態による土圧壁12によれば、隣り合う柱体14相互は、円筒部1802と係合部1804とが係合した構成であるので、大きな有効桁高を確保できることは無論のこと、隣り合う柱体14間に主鋼材16が配設された状態で各柱体14の内部にコンクリートCが充填されているので、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
特に、本実施例では土圧壁12の角部に位置するエレメント18、すなわち、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aおよび左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、土圧壁12の構造上の強度が高められ、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築できるので、単一径(単一形状)の掘進機を用意すれば足り、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築できるので、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いる従来技術に比べ掘削土量を削減でき、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aおよび左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と底壁1202にわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、上述の従来技術と異なって補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例2】
【0025】
次に、図9を参照して実施例2について説明する。
図9は実施例2の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、実施例2では、底壁1202と左右の側壁1204の構造が実施例1と同様であり、上壁1206の構造が実施例1と異なっている。
すなわち、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、上壁1206とで構成され、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、上壁1206は、左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状になるようにエレメント18が並べられて配置されている。
【0026】
このような実施例2によれば、実施例1と同様に、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
また、アーチ状に形成された上壁1206は曲げモーメントが作用しにくい形状となっており構造上の強度を高める上で有利であることは無論のこと、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、かつ、アーチ状に形成された上壁1206の左右両端は左右の側壁1204の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁12の構造上の強度が高められており、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、実施例1と同様に、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となり、また、単一径の掘進機を用意すれば足り、かつ、掘削土量を従来のように増やす必要もなく、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部および左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に、それら左右の側壁1204と底壁1202とにわたり、また、左右の側壁1204と上壁1206とにわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例3】
【0027】
次に、図10を参照して実施例3について説明する。
図10は実施例3の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1、実施例2と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、実施例3では、底壁1202と左右の側壁1204の構造が実施例1と同様であり、上壁1206の構造が実施例1、2と異なっている。
すなわち、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、上壁1206とで構成され、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、底壁1202の左右方向の中央部と上壁1206の左右方向の中央部との間に鉛直方向に延在する中柱13が設けられている。この中柱13は土圧壁12(トンネル)の延在方向に隣接させて並べられ連続するように設けられている。
そして、中柱13と左側壁1204との間に位置する上壁箇所1210および中柱13と右側壁1204との間に位置する上壁箇所1210は、それら上壁箇所1210の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状になるようにエレメント18が並べられて配置されている。
【0028】
このような実施例2によれば、実施例1と同様に、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
また、アーチ状に形成された上壁1206は曲げモーメントが作用しにくい形状となっており構造上の強度を高める上で有利であることは無論のこと、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、かつ、アーチ状に形成された上壁箇所1210の端部は左右の側壁1204の上端および中柱13の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁12の構造上の強度が高められており、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、実施例1、実施例2と同様に、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となり、また、単一径の掘進機を用意すれば足り、かつ、掘削土量を従来のように増やす必要もなく、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部および左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に、それら左右の側壁1204と底壁1202とにわたり、また、左右の側壁1204と上壁1206とにわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例4】
【0029】
次に、図11を参照して実施例4について説明する。
図11(A)は実施例1における左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部の拡大図、図11(B)は定着用部材の斜視図を示す。
図1に示す実施例1では、隅部におけるエレメント18は土圧壁12の内側に変位して配置され、より詳細には、図4(A)に示すように、左側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、このような隅部のエレメント18の配置は残りの三箇所においても同様である。
そして、隅部に位置するエレメント18Bを通って左側壁1204の端部と上壁1206の端部とにわたり複数の補強部材90が配置されている。より詳細に説明すると、それら補強部材90は、左側壁1204の端部のエレメント18Aの円筒部1802、変位された隅部のエレメント18Bの底板1810および円筒部1802、上壁1206の端部のエレメント18Cの底板1810を通って配設されている。
各補強部材90の両端には定着用部材92が取着されている。
定着用部材92は、例えば、補強部材90がねじを有する鉄筋、PC鋼線、PC鋼棒である場合には、前記ねじに螺合可能なナット9202と、ナット9202の端面に接合されたナット9202よりも大径の環板9204とで構成されている。なお、主鋼材16の端部にも定着用部材92が取着されている。
【0030】
本実施例では、隅部に位置するエレメント18が、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と底壁1202にわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、また、左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と上壁1206にわたり斜めに補強部材90を掛け渡して配設する場合、補強部材90の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。さらに、補強部材90の両端に定着用部材92を取着すれば、補強部材90の定着力を高めることが可能となり、土圧壁12の郷土を確保しつつ補強部材90の定着長を短縮することが可能となり、補強部材90の配設作業をより簡単化し、コストダウンを図る上で有利となる。
【実施例5】
【0031】
次に、図12を参照して実施例5について説明する。
実施例5は、柱体14を構成するエレメント68の断面形状が第1の実施の形態と異なっている。
実施例5でも、実施例1と同様に、断面形状の異なる3種類の柱体14が用いられ、各柱体14に対応して3種類のエレメント68が用いられている。
すなわち、1つのエレメント68は、図12(A)に示すように、円筒部6802と、この円筒部6802の少なくとも一側が前記円筒部6802の全長にわたって円筒部6802の内側に窪んだ係合部1804とで中空状に形成されている。
また、他の1つのエレメント68は、図12(B)に示すように、円筒部6802と、この円筒部6802の両側に設けられた係合部6804とで構成されている。
また、他の1つのエレメント68は、図12(C)で示すように、円筒部1802のみで構成されている。
各係合部6804は、内側に窪む円筒面状に形成され、隣り合う柱体14相互において、一方の柱体14を構成するエレメント68の係合部6804に、他方の柱体14を構成するエレメント68の円筒部6802の一部が係合された状態で、一方の柱体14のエレメント68の係合部6804の外側と、他方の柱体14のエレメント68の円筒部6802の外側とがほぼ密着するように構成されている。
【0032】
実施例5では、隣り合う柱体14相互がほぼ密着し、隣り合う柱体14間に閉塞空間1850が生じないので、エレメント68にコンクリート充填孔22は設けられていない。
実施例5の土圧壁12によれば、第1の実施の形態と同様に、大きな有効桁高を確保できることは無論のこと、隣り合う柱体14間に主鋼材16が配設された状態で各柱体14の内部にコンクリートCが充填されているので、土圧壁12の耐力を格段と高めることができる。
また、主鋼材16とPC鋼材を併用すれば、土圧壁12の耐力を高める上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の土圧壁の断面正面図である。
【図2】土圧壁に用いるエレメントの説明図である。
【図3】エレメントの斜視図である。
【図4】蓋板が取着された状態のエレメントの説明図である。
【図5】蓋板を外した状態のエレメントの説明図である。
【図6】第1番目の柱体を形成する際の発進立坑から到達立坑への掘進状態の説明図である。
【図7】第2番目の柱体を形成する際の発進立坑から到達立坑への掘進状態の説明図である。
【図8】柱体を形成したのち改良土を充填する説明図である。
【図9】実施例2の土圧壁の断面正面図である。
【図10】実施例3の土圧壁の断面正面図である。
【図11】補強部材および定着用部材の説明図である。
【図12】形状の異なる他のエレメントの説明図である。
【符号の説明】
【0034】
12 土圧壁
14 柱体
16 主鋼材
18、68 エレメント
1802、6802 円筒部
1804、6804 係合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、大断面で中距離の地下トンネルを構築する際に好適な土圧壁に関する。
【背景技術】
【0002】
地下トンネルを構築する際に用いられる土圧壁として、従来、多数の矩形断面のコンクリート充填鋼殻を、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設し、これらコンクリート充填鋼殻相互を継手により連結した技術が知られている(例えば特許文献1)。また、柱体と組み合わせることでボックス形状とした技術も知られている。また、断面が台形の多数の鋼製エレメントを用い、トンネル形状を円形にする技術も知られている。
さらに、多数のコンクリート充填欠円管を、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設し、これらコンクリート充填欠円管相互をPC鋼線、PC鋼棒、連続炭素繊維製やケプラー製などの連結用部材により連結した技術も知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−120372
【特許文献2】特開2002−146777
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、矩形断面のコンクリート充填鋼殻を用いる従来技術と、柱体と組み合わせることでトンネル断面をボックス形状とする従来技術では、コンクリート充填鋼殻を鉛直方向および水平方向に直線状に並べており、隅角部で壁部が直角に交わる断面が矩形の土圧壁が構築され、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合に隅角部に大きな曲げモーメントが作用することから、隅角部に大掛かりな補強構造が必要となる。
また、断面が台形の多数の鋼製エレメントを用い、トンネル形状を円形にする従来技術では、台形の孔が掘削されるように掘進機を新たに製作する必要があり、例えば、円形以外の形状のトンネルを構築する場合には、その都度、エレメントと掘進機を製作しなければならない。
また、コンクリート充填欠円管を用いる従来技術でも、コンクリート充填欠円管を鉛直方向および水平方向に直線状に並べており、隅角部で壁部が直角に交わる断面が矩形の土圧壁が構築され、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合に隅角部に大きな曲げモーメントが作用することから、隅角部に他の箇所よりも直径の大きな鋼管を用いて補強する必要があり、そのため、径の異なる掘進機が必要となり、かつ、掘削土量も増え、不経済となる。
また、コンクリート充填欠円管を用いる従来技術では、トンネル断面がボックス形状で隅角部を有する場合、スペース上、隅角部に配設する斜め補強部材の定着用のスペースを確保することが困難となる。
【0004】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、本発明はコンクリート充填欠円管を用いた土圧壁の改良に関するもので、本発明の目的は、単一径の複数のエレメントを用いることで構築でき、また、径の異なる掘進機を用意することなく、また、掘削土量も増やさずに構築でき、しかも、隅角部に配設する斜め補強部材の定着用のスペースを確保することができる土圧壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる断面が矩形枠状の土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記土圧壁の隅部に位置するエレメントは、その隅部を構成する2つの壁の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されていることを特徴とする。
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記左右の側壁と前記上壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記上壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記上壁は左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、前記底壁と前記上壁との間に鉛直方向に延在する中柱が設けられ、前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、前記中柱と前記左側壁との間に位置する上壁箇所および前記中柱と前記右側壁との間に位置する上壁箇所は、それら上壁箇所の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の土圧壁では、円筒部と係合部とが係合しているので、大きな有効桁高を確保でき、さらに、隣り合う柱体相互は、円筒部と係合部とが係合し、かつ、隣り合う柱体間に主鋼材が配設された状態で各柱体の内部にコンクリートが充填されるので、土圧壁の耐力は格段と高められる。
特に、本発明では、土圧壁の角部に位置するエレメントが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁の内側に変位して配置されているので、土圧壁の構造上の強度が高められ、土圧壁の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
あるいは、アーチ状に形成された上壁の端部が、側壁の上端や中柱の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁の構造上の強度が高められ、土圧壁の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメントを用いて補強する必要がなくなる。
そのため、均一直径のエレメントで土圧壁を構築でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、単一径(単一形状)の掘進機を用意すれば足り、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメントを用いる従来技術に比べ掘削土量を削減でき、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
前記の目的を達成するため本発明は、土圧壁の角部に位置するエレメントを、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁の内側に変位して配置するようにし、あるいは、上壁をアーチ状に形成するようにした。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明に係る土圧壁の実施例を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1の土圧壁12は、構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体14と、これら複数の柱体14の内部を貫通する複数の主鋼材16と、各柱体14の内部に充填されたコンクリートCにより矩形枠状に構成されている。
前記各柱体14は、図2(A)、(B)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の少なくとも一側が前記円筒部1802の全長にわたって円筒部1802の内側に窪んだ係合部1804とからなる中空状のエレメント18がその長手方向に同軸上に並べられることで構成されている。
隣り合う柱体14相互は、一方の柱体14を構成するエレメント18の各係合部1804に、他方の柱体14を構成するエレメント18の各円筒部1802の一部が係合されるように配置されている。
前記主鋼材16は、前記各柱体14の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメント18の係合部1804を通って各柱体14の内部間を貫通し土圧壁12の周囲に沿って連続するように配設されている。
そして、これら柱体14の内部にコンクリートCが充填されている。
なお、本発明において主鋼材16とは、曲げ応力に抵抗させるため用いるものを広く含み、したがって、鉄筋や、H形鋼などの鋼材などの他、鋼材ではない繊維ロッドなどを広く含む。
【0010】
本実施例では、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、ほぼ水平方向に延在し左右の側壁1204の上端を接続する上壁1206とで構成されている。
そして、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と上壁1206の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりもその中心が土圧壁12の内側に変位して配置されている。
【0011】
本実施例では、断面形状の異なる3種類の柱体14が用いられ、各柱体14に対応して3種類のエレメント18が用いられている。
すなわち、矩形枠をなす土圧壁12の底壁1202と上壁1206の中央と左右両端寄りに位置する柱体14のエレメント18は、図2(A)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の両側に設けられた係合部1804とで構成されている。
また、底壁1202および上壁1206の左右両端寄りと左右の側壁1204の上端寄りに位置する柱体14のエレメント18は、図2(C)で示すように、円筒部1802のみで構成されている。
更に、前記の箇所を除く全ての柱体14のエレメント18、すなわち大半の柱体14を構成するエレメント18は、図2(B)で示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の一側に設けられた係合部1804とで構成されている。
前記係合部1804は円筒部1802の内側に窪み円筒部1802の全長にわたって延在している。前記係合部1804は隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の一部が収容できる寸法で構成されている。
【0012】
まず、前記エレメント18について図3乃至図5を参照して詳細に説明すると、図3はエレメントの斜視図、図4(A)はエレメントの断面正面図、(B)はエレメントの部分の側面図、図5(A)は蓋板を取り外した状態のエレメントの断面正面図、(B)は蓋板を取り外した状態のエレメントの部分の側面図を示しており、これらの図に示すエレメント18は、円筒部1802と、この円筒部1802の一側に設けられた係合部1804とで構成されている。
前記円筒部1802は、鋼管の一側を切り欠くことで構成されている。
前記係合部1804は、円筒部1802の一側が窪むように凹部状に設けられ、係合部1804は、円筒部1802の内側に配置され凹部の底部を構成する鋼板製の底板1810と、底板1810の両側から起立して凹部の両側を構成し円筒部1802に連結される鋼板製の側板1812とで構成されている。
このような構成からなる係合部1804に、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の一部が収容された状態で、円筒部1802の両端に位置する円筒部1802の縁が、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802に当たり、図4(A)に示すように、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間に閉塞された閉塞空間1850が形成されるように構成されている。
【0013】
図5(A)、(B)に示すように、前記円筒部1802の上下部には、円筒部1802を貫通する主鋼材挿通孔20が互いに等間隔をおき円筒部1802の長手方向に沿って多数形成されている。
また、前記底板1810の上下部にも、底板1810を貫通する主鋼材挿通孔20が互いに等間隔をおき底板1810の長手方向に沿って多数形成されている。
更に、前記上下の主鋼材挿通孔20よりも内側の底板1810箇所に、互いに等間隔をおき底板1810の長手方向に沿ってコンクリート充填孔22が上下に多数形成されている。
前記主鋼材挿通孔20は、主鋼材16が挿通できるように主鋼材16よりも大きな直径で形成され、円筒部1802の各主鋼材挿通孔20と底板1810の各主鋼材挿通孔20とにわたり主鋼材16が挿通されるように、円筒部1802の主鋼材挿通孔20と底板1810の主鋼材挿通孔20とは互いに対応した箇所に形成されている。
そして、図3および図4(A)、(B)に示すように、エレメント18の地中への埋設時に、エレメント18の内部に土砂が入らないように、これら主鋼材挿通孔20は取り外し可能な蓋板24により閉塞され、また、コンクリート充填孔22は取り外し可能な蓋板26により閉塞されている。
【0014】
蓋板24、26の円筒部1802や底板1810への取り付けは、例えば、キャップを嵌め込む形式のものでもよく、あるいは、スポット溶接などにより仮止めする形式のものでもよい。
本実施の形態では、蓋板24として薄い鋼板を用い、この鋼板を円筒部1802、底板1810の外面に、スポット溶接により仮止めしており、地中に埋設された後、エレメント18の内部から作業員がハンマーなどで叩くことにより簡単に取り外せ、主鋼材挿通孔20が露出するように構成されている。
また、蓋板26として、鍔部と有底円筒部からなる薄い鋼板製のキャップを用い、エレメント18の内側から有底円筒部をコンクリート充填孔22に嵌合し、鍔部を底板1810の内面に突き当てており、地中に埋設された後、エレメント18の内部から作業員が鍔部を剥がすことにより簡単に取り外せ、コンクリート充填孔22が露出するように構成されている。
なお、図2(A)に示すように、円筒部1802と、この円筒部1802の両側に設けられた係合部1804とからなるエレメント18では、各係合部1804に主鋼材挿通孔20、コンクリート充填孔22が形成され、これら主鋼材挿通孔20、コンクリート充填孔22は取り外し可能な蓋板24、26により閉塞されている。
また、図2(C)に示すように、円筒部1802のみからなるエレメント18では、互いに90度向きを変えた円筒部1802箇所に、前記と同様に、それぞれ主鋼材挿通孔20が形成され、これら主鋼材挿通孔20は取り外し可能な蓋板24により閉塞されている。
【0015】
次に、上記のようなエレメント18から柱体14により構成される土圧壁12をその構築手順に従ってより詳細に説明する。
図6(A)〜(E)および図7(A)〜(E)は柱体の構築方法の説明図、図8(A)〜(G)は最初に構築する柱体と次に構築する柱体の説明図を示している。
まず、上壁1206の中央をなす柱体14が、図2(A)に示すエレメント18により構築され、次に、隣の柱体14が、図2(B)に示すエレメント18や図2(C)に示すエレメント18を用いて順次構築されていく。
土圧壁12を構築するに際して発進立坑32が設けられ、発進立坑32に円形状の発進坑口34が設けられる。
図6(A)、(B)に示すように、発進立坑32内に円形掘削機36および後続機械38を配置して駆動させ、推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出して掘進させ、これにより図8(A)に示すように円形掘削機36により円形の孔3602が掘削されていく。
次に、図6(B)乃至(E)に示すように、後続機械38の後端にエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出し、次に、このエレメント18に次のエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により押し出し、このように発進立坑32内でエレメント18を順次連結して押し出し、到達立坑42に向けて掘進させる。この状態を図8(B)に示す。
なお、直線状に並べられるエレメント18どうしの連結は、例えば、エレメント18の長手方向の後端を縮径しておき、次に打ち込むエレメント18の先端を前記縮径されたエレメント18の後端に嵌め込むなど、従来公知の種々の手段により行われる。
【0016】
このようにして順次エレメント18が連結されて押し出され、円形掘削機36が到達立坑42に近づいたならば、図6(E)に示すように、到達立坑42に到達坑口48を設ける。
そして、発進立坑32におけるエレメント18の押し出しにより、円形掘削機36が到達坑口48から到達立坑42内に突出し、続いて後続機械38が到達立坑42内に突出する。
発進立坑32におけるさらなるエレメント18の押し出しにより、先頭のエレメント18の先部を到達立坑42内に露出させ、到達立坑42内において円形掘削機36および後続機械38をエレメント18から取り外し、次のエレメント18を打ち込むために円形掘削機36および後続機械38を発進立坑32へ移動する。
【0017】
先頭のエレメント18の先部が到達立坑42に到達することで、相互に連結された多数のエレメント18からなり発進立坑32と到達立坑42との間で直線状に延在する柱体14が形成されることになる。
また、多数のエレメント18の両側の係合部1804も直線状に延在することになり、この係合部1804の外側は、円形掘削機36で掘削された円形の孔3602の内部に位置しているため、土が存在していない空間Kとなっている。そのため、次の柱体14を構築するに際して、係合部1804内に円形掘削機36の一部が位置して掘進する関係上、円形掘削機36が直進し易いように、図8(C)に示すように、前記空間K内に改良土Sが充填される。
すなわち、多数のエレメント18の両側の空間Kに、発進立坑32から到達立坑42に向けて(あるいは到達立坑42から発進立坑32に向けて液状の改良土Sが柱体14の全長にわたって充填され、固化される。これにより、次に孔3602を掘削する際に、円形掘削機36の受ける抵抗が周方向において均一となり、直進し易くなる。
【0018】
次に、図7(A)に示すように、発進立坑32から次のエレメント18を打ち込むに際して、発進立坑32に発進坑口34が設けられる。なお、今回打ち込まれるエレメント18は、図2(B)に示すように、係合部1804が円筒部1802の一側部にのみ設けられており、最初に打ち込まれたエレメント18の一方の係合部1804に、今回打ち込まれるエレメント18の円筒部1802の一部が収容されるように発進坑口34が設けられる。
そして、図7(A)に示すように、発進立坑32内に円形掘削機36および後続機械38を配置して駆動させ、推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出して掘進させる。
次に、図7(B)乃至(E)に示すように、後続機械38の後端にエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により発進坑口34から押し出し、次に、このエレメント18に次のエレメント18を連結して推進用ジャッキ40により押し出し、このようにエレメント18を発進立坑32内で順次連結しては押し出し、到達立坑42まで掘進させる。
なお、今回の円形掘削機36により掘削では、最初に打ち込まれたエレメント18の一方の係合部1804に対応した部分でオーバーラップして円形孔3602が掘削されることになり、隣り合うエレメント18相互において、図8(E)に示すように、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間の閉塞空間1850に改良土Sが充填された状態が残存する。
【0019】
このようにして順次エレメント18が連結されて押し出され、円形掘削機36が到達立坑42に近づいたならば、前記と同様に到達立坑42に到達坑口48を設ける。
そして、発進立坑32におけるエレメント18の押し出しにより、円形掘削機36、後続機械38が到達坑口48から到達立坑42内に突出する。
発進立坑32におけるさらなるエレメント18の押し出しにより、先頭のエレメント18の先部が到達坑口48から到達立坑42内に露出し、先頭のエレメント18の先部が到達立坑42内に露出したならば、到達立坑42内において円形掘削機36および後続機械38をエレメント18から取り外し、第3番目の柱体14を打ち込むために円形掘削機36および後続機械38を発進立坑32へ移動する。
これにより、図8(E)に示すように、最初に形成された柱体14に一部が重複した第2番目の柱体14が形成されることになる。
そして、前記と同様に、次の柱体14を構築するに際して、円形掘削機36が直進し易いように、図8(F)に示すように、前記空間K内に改良土Sが充填され図8(G)に示すように、改良土Sが充填されたのち次の円形孔3602が掘削される。
【0020】
このようにして円形掘削機36、後続機械38、エレメント18を用いて発進立坑32から到達立坑42への掘進を行ない、発進立坑32と到達立坑42との間で直線状に延在する柱体14を一部重複させつつ順次形成していき、最後には図1に示すように矩形枠状に連続する複数の柱体14が形成される。
次に、隣り合う柱体14の間の閉塞空間1850に残存した改良土Sを取り除き、隣り合う柱体14間にわたり主鋼材16を配設する。
より詳細に説明すると、まず、底板1810の外側と、隣に配置されるエレメント18の円筒部1802の外側との間の閉塞空間1850に充填された改良土Sを取り除く。
この改良土Sの取り除きは、発進立坑32から到達立坑42に向けて、あるいは到達立坑42から発進立坑32に向けて高圧水を噴射することで行なう。
【0021】
閉塞空間1850に充填された改良土Sを取り除いたならば、次に、各柱体14を構成するエレメント18に取着された蓋板24、26を取り外し、主鋼材挿通孔20およびコンクリート充填孔22を露出させる。
この場合、主鋼材挿通孔20を閉塞する蓋板24は、作業員がエレメント18の内部からハンマーにより叩くことにより取り外され、これにより蓋板24は閉塞空間1850の下部に落下することになる。また、コンクリート充填孔22を閉塞する蓋板26は、エレメント18の内部から適宜治具により蓋板26の鍔部をこじ開けることにより取り外され、取り外された蓋板26はエレメント18外に持ち出される。
【0022】
次に、複数の柱体14の内部を貫通するように複数の主鋼材16を配設する。
本実施の形態では、複数の柱体14により矩形枠が形成されているので、矩形枠をなす底壁1202と上壁1206においてそれぞれ連続して水平に延在するように、また、左右の側壁1204においてそれぞれ連続して鉛直に延在するように主鋼材16を配設する。
この場合、主鋼材16として鉄筋やH形鋼などの撓ませることができないものを用いる場合には、適宜長さの主鋼材を主鋼材挿通孔20に挿通させた後、市販の機械式継手などを用いて直線状に連結することで配設する。主鋼材16として繊維ロッドなどを用いる場合には、これらのものは可撓可能であるので、長尺なものをそのままエレメント18内に持ち込んで配設される。
なお、主鋼材16に加え、柱体14の長手方向に間隔をおいた複数個所に、各エレメント18の係合部1804を通り土圧壁12の周囲に沿って延在するPC鋼材(緊張材として使用される鋼線)を配設するようにしてもよく、PC鋼材をこのように配設すると土圧壁12の耐力を高める上で有利となる。
【0023】
複数の柱体14の内部を貫通して複数の主鋼材16が配設されたならば、次に、各柱体14の内部および閉塞空間1850の内部にコンクリートCが充填される。この場合、閉塞空間1850へのコンクリートCの充填は、柱体1850の内部に充填されるコンクリートCがコンクリート充填孔22から閉塞空間1850に流れ込むことで行われる。
そして、各柱体14の内部および閉塞空間1850の内部に充填されたコンクリートCが固化することで図1に示す土圧壁12が構築される。
その後、土圧壁12の内部を掘削し、大断面の地下空間を構築する。
【0024】
本実施の形態による土圧壁12によれば、隣り合う柱体14相互は、円筒部1802と係合部1804とが係合した構成であるので、大きな有効桁高を確保できることは無論のこと、隣り合う柱体14間に主鋼材16が配設された状態で各柱体14の内部にコンクリートCが充填されているので、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
特に、本実施例では土圧壁12の角部に位置するエレメント18、すなわち、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aおよび左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、土圧壁12の構造上の強度が高められ、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築できるので、単一径(単一形状)の掘進機を用意すれば足り、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築できるので、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いる従来技術に比べ掘削土量を削減でき、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aおよび左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と底壁1202にわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、上述の従来技術と異なって補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例2】
【0025】
次に、図9を参照して実施例2について説明する。
図9は実施例2の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、実施例2では、底壁1202と左右の側壁1204の構造が実施例1と同様であり、上壁1206の構造が実施例1と異なっている。
すなわち、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、上壁1206とで構成され、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、上壁1206は、左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状になるようにエレメント18が並べられて配置されている。
【0026】
このような実施例2によれば、実施例1と同様に、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
また、アーチ状に形成された上壁1206は曲げモーメントが作用しにくい形状となっており構造上の強度を高める上で有利であることは無論のこと、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、かつ、アーチ状に形成された上壁1206の左右両端は左右の側壁1204の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁12の構造上の強度が高められており、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、実施例1と同様に、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となり、また、単一径の掘進機を用意すれば足り、かつ、掘削土量を従来のように増やす必要もなく、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部および左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に、それら左右の側壁1204と底壁1202とにわたり、また、左右の側壁1204と上壁1206とにわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例3】
【0027】
次に、図10を参照して実施例3について説明する。
図10は実施例3の土圧壁の断面正面図を示す。
実施例1、実施例2と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、実施例3では、底壁1202と左右の側壁1204の構造が実施例1と同様であり、上壁1206の構造が実施例1、2と異なっている。
すなわち、土圧壁12はその断面が、ほぼ水平方向に延在する底壁1202と、底壁1202の左右両端からほぼ鉛直方向に起立する左右の側壁1204と、上壁1206とで構成され、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aは、それら各側壁1204の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と底壁1202の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されている。
また、底壁1202の左右方向の中央部と上壁1206の左右方向の中央部との間に鉛直方向に延在する中柱13が設けられている。この中柱13は土圧壁12(トンネル)の延在方向に隣接させて並べられ連続するように設けられている。
そして、中柱13と左側壁1204との間に位置する上壁箇所1210および中柱13と右側壁1204との間に位置する上壁箇所1210は、それら上壁箇所1210の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状になるようにエレメント18が並べられて配置されている。
【0028】
このような実施例2によれば、実施例1と同様に、土圧壁12の耐力を格段と高めることができ、大断面で100〜300m程度の中距離のトンネル施工に好適となる。
また、アーチ状に形成された上壁1206は曲げモーメントが作用しにくい形状となっており構造上の強度を高める上で有利であることは無論のこと、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部に位置するエレメント18Aが、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、かつ、アーチ状に形成された上壁箇所1210の端部は左右の側壁1204の上端および中柱13の上端に対して直角ではなく鈍角をなして連結されているため、土圧壁12の構造上の強度が高められており、土圧壁12の隅角部に作用する大きな曲げモーメントに十分持ちこたえることが可能となる。
したがって、実施例1、実施例2と同様に、上述の従来技術のように、隅角部に他の箇所よりも直径の大きなエレメント18を用いて補強する必要がなくなり、均一直径のエレメント18で土圧壁12を構築でき、コストダウンを図る上で有利となり、また、単一径の掘進機を用意すれば足り、かつ、掘削土量を従来のように増やす必要もなく、コストダウンを図る上で極めて有利となる。
また、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部および左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に、それら左右の側壁1204と底壁1202とにわたり、また、左右の側壁1204と上壁1206とにわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、補強部材の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。
【実施例4】
【0029】
次に、図11を参照して実施例4について説明する。
図11(A)は実施例1における左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部の拡大図、図11(B)は定着用部材の斜視図を示す。
図1に示す実施例1では、隅部におけるエレメント18は土圧壁12の内側に変位して配置され、より詳細には、図4(A)に示すように、左側壁1204と上壁1206とが交わる隅部に位置するエレメント18Bは、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置され、このような隅部のエレメント18の配置は残りの三箇所においても同様である。
そして、隅部に位置するエレメント18Bを通って左側壁1204の端部と上壁1206の端部とにわたり複数の補強部材90が配置されている。より詳細に説明すると、それら補強部材90は、左側壁1204の端部のエレメント18Aの円筒部1802、変位された隅部のエレメント18Bの底板1810および円筒部1802、上壁1206の端部のエレメント18Cの底板1810を通って配設されている。
各補強部材90の両端には定着用部材92が取着されている。
定着用部材92は、例えば、補強部材90がねじを有する鉄筋、PC鋼線、PC鋼棒である場合には、前記ねじに螺合可能なナット9202と、ナット9202の端面に接合されたナット9202よりも大径の環板9204とで構成されている。なお、主鋼材16の端部にも定着用部材92が取着されている。
【0030】
本実施例では、隅部に位置するエレメント18が、それらの壁部の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも土圧壁12の内側に変位して配置されているので、左右の側壁1204と底壁1202とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と底壁1202にわたり斜めに補強部材を掛け渡して配設する場合、また、左右の側壁1204と上壁1206とが交わる隅部にそれら左右の側壁1204と上壁1206にわたり斜めに補強部材90を掛け渡して配設する場合、補強部材90の定着のためのスペースを十分に確保することが可能となり、補強部材により土圧壁12を強固に補強する上でも有利となる。さらに、補強部材90の両端に定着用部材92を取着すれば、補強部材90の定着力を高めることが可能となり、土圧壁12の郷土を確保しつつ補強部材90の定着長を短縮することが可能となり、補強部材90の配設作業をより簡単化し、コストダウンを図る上で有利となる。
【実施例5】
【0031】
次に、図12を参照して実施例5について説明する。
実施例5は、柱体14を構成するエレメント68の断面形状が第1の実施の形態と異なっている。
実施例5でも、実施例1と同様に、断面形状の異なる3種類の柱体14が用いられ、各柱体14に対応して3種類のエレメント68が用いられている。
すなわち、1つのエレメント68は、図12(A)に示すように、円筒部6802と、この円筒部6802の少なくとも一側が前記円筒部6802の全長にわたって円筒部6802の内側に窪んだ係合部1804とで中空状に形成されている。
また、他の1つのエレメント68は、図12(B)に示すように、円筒部6802と、この円筒部6802の両側に設けられた係合部6804とで構成されている。
また、他の1つのエレメント68は、図12(C)で示すように、円筒部1802のみで構成されている。
各係合部6804は、内側に窪む円筒面状に形成され、隣り合う柱体14相互において、一方の柱体14を構成するエレメント68の係合部6804に、他方の柱体14を構成するエレメント68の円筒部6802の一部が係合された状態で、一方の柱体14のエレメント68の係合部6804の外側と、他方の柱体14のエレメント68の円筒部6802の外側とがほぼ密着するように構成されている。
【0032】
実施例5では、隣り合う柱体14相互がほぼ密着し、隣り合う柱体14間に閉塞空間1850が生じないので、エレメント68にコンクリート充填孔22は設けられていない。
実施例5の土圧壁12によれば、第1の実施の形態と同様に、大きな有効桁高を確保できることは無論のこと、隣り合う柱体14間に主鋼材16が配設された状態で各柱体14の内部にコンクリートCが充填されているので、土圧壁12の耐力を格段と高めることができる。
また、主鋼材16とPC鋼材を併用すれば、土圧壁12の耐力を高める上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の土圧壁の断面正面図である。
【図2】土圧壁に用いるエレメントの説明図である。
【図3】エレメントの斜視図である。
【図4】蓋板が取着された状態のエレメントの説明図である。
【図5】蓋板を外した状態のエレメントの説明図である。
【図6】第1番目の柱体を形成する際の発進立坑から到達立坑への掘進状態の説明図である。
【図7】第2番目の柱体を形成する際の発進立坑から到達立坑への掘進状態の説明図である。
【図8】柱体を形成したのち改良土を充填する説明図である。
【図9】実施例2の土圧壁の断面正面図である。
【図10】実施例3の土圧壁の断面正面図である。
【図11】補強部材および定着用部材の説明図である。
【図12】形状の異なる他のエレメントの説明図である。
【符号の説明】
【0034】
12 土圧壁
14 柱体
16 主鋼材
18、68 エレメント
1802、6802 円筒部
1804、6804 係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる断面が矩形枠状の土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記土圧壁の隅部に位置するエレメントは、その隅部を構成する2つの壁の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項2】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記左右の側壁と前記上壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記上壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項3】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記上壁は左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状に形成されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項4】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記底壁と前記上壁との間に鉛直方向に延在する中柱が設けられ、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記中柱と前記左側壁との間に位置する上壁箇所および前記中柱と前記右側壁との間に位置する上壁箇所は、それら上壁箇所の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状に形成されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項1】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる断面が矩形枠状の土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記土圧壁の隅部に位置するエレメントは、その隅部を構成する2つの壁の厚さ方向の中心を通る中心線が交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項2】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記左右の側壁と前記上壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記上壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項3】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記上壁は左右方向の中央部が最も上位に位置しその中央部から左右に至るにつれて次第に低くなるにアーチ状に形成されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【請求項4】
構築すべきトンネルの外殻をなすように地中に埋設された複数の柱体の内部にコンクリートが充填されて構成された底壁と左右の側壁と上壁とからなる土圧壁であって、
前記各柱体は、円筒部と、この円筒部の少なくとも一側が前記円筒部の全長にわたって円筒部の内側に窪んだ係合部とからなる中空状のエレメントがその長手方向に同軸上に並べられることで構成され、
隣り合う柱体相互は、一方の柱体を構成するエレメントの各係合部に、他方の柱体を構成するエレメントの各円筒部の一部が係合されるように配置され、
前記各柱体の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、エレメントの係合部を通って各柱体の内部間を貫通する主鋼材が土圧壁の周囲に沿って連続するように配設され、
これら柱体の内部にコンクリートが充填されており、
前記底壁と前記上壁との間に鉛直方向に延在する中柱が設けられ、
前記左右の側壁と前記底壁とが交わる隅部に位置するエレメントは、それら各側壁の厚さ方向の中心を通り上下方向に延在する中心線と前記底壁の厚さ方向の中心を通り左右方向に延在する中心線とが交わる箇所よりも前記土圧壁の内側に変位して配置され、
前記中柱と前記左側壁との間に位置する上壁箇所および前記中柱と前記右側壁との間に位置する上壁箇所は、それら上壁箇所の延在方向の中央部が最も上位に位置しこの中央部から離れるにつれてその高さが次第に低くなるアーチ状に形成されている、
ことを特徴とする土圧壁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−45928(P2006−45928A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228992(P2004−228992)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(598042574)株式会社推研 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(598042574)株式会社推研 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]