説明

土木構築物、土木構築物の構築方法及び土木構築物用ユニット

【課題】植物、生物にとって好ましい環境を作り出すことができる土木構築物を提供する。
【解決手段】護岸の裏込め材層において、その噛み合った裏込め材8同士が形成する空隙9内に保水性材料15を入れ込んだ状態とする。これにより、保水性材料15が、雨水、湧き水等を保水して、植物、生物に対する水補給源となるようにする。また、暑いときには、保水性材料15が保水する水の蒸発に基づく大きな潜熱を利用して、周囲環境の空気温度を下げるようにする。その一方、既に噛み合った裏込め材8同士が形成する空隙9内に保水性材料15を入れて、裏込め材8同士の直接的な噛み合いが阻害されることがないようにし、裏込め材層における実質的な強固な一体化関係を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構築物、土木構築物の構築方法及び土木構築物用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構築物として、施工面上に、詰め材が互いに噛み合った(一体化した)詰め材層(栗石、砕石等の層)を設けたものがある。例えば、特許文献1には、詰め材層をその全体の重量を利用して施工面に対して寄せ掛ける一方、複数の表面材をアンカーを介して詰め材層にそれぞれ取付けて、詰め材層の表面側に表面材層を形成したものが示されている。また、特許文献2には、網状体を用いて形成されたマット状の籠体内に詰め材を充填すると共にその籠体の上側網状体に複数の表面材を取付けたものを複数用意し、それらを施工面上に配置して、詰め材層とその上側に配置される表面材層とを形成したものが示されている。
このようなものにおいては、表面材に自然石、擬石等を用いることにより、周囲環境に調和させることができると共に、詰め材層、表面材層の透水性に基づき施工面側(地盤側)からの湧き水等を外部に排水し、土木構築物を強固な状態に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2983207号公報
【特許文献2】特許4443743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような土木構築物においては、強固な状態を維持できるものの、詰め材層の透水性が良過ぎる傾向にあり、詰め材層は、その内部に水を保持しにくい。このため、水補給、環境温度等の観点から、植物、生物の生育生息環境としては好ましくはないものとなっている。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の技術的課題は、植物、生物にとって好ましい環境を作り出すことができる土木構築物を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記土木構築物を構築するための土木構築物の構築方法を提供することにある。
第3の技術的課題は、上記土木構築物に用いられる土木構築物ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
施工面上に、詰め材が互いに噛み合った詰め材層が設けられている土木構築物において、
前記詰め材層の詰め材が、互いの噛み合いにより空隙をそれぞれ形成しており、
前記各空隙内に、水を保水可能な保水性材料が入れられている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜6に記載の通りとなる。
【0007】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項7に係る発明)にあっては、
施工面に隣接して、詰め材が互いに噛み合った詰め材層を形成し、該噛み合った詰め材によって空隙を形成する土木構築物の構築方法において、
前記詰め材層を形成した後、前記空隙内に、水を保水可能な保水性材料を入れ込む構成としてある。この請求項7の好ましい態様としては、請求項8〜9に記載の通りとなる。
【0008】
上記第3の技術的課題を達成するために本発明(請求項10に係る発明)にあっては、
網状体を用いて形成された籠体内に詰め材が充填されている土木構築物用ユニットにおいて、
前記籠体内における詰め材が作り出す空隙内に、水を保水可能な保水性材料が入り込んでいる構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、噛み合った詰め材同士が形成する空隙内に保水性材料が入れられていることから、保水性材料は、雨水、湧き水等を保水して、植物、生物に対する水補給源となり、植物、生物に対して水を適切に補給できる。また、暑いときには、保水性材料が保水する水の蒸発に基づく大きな潜熱を利用して、周囲環境の空気温度を下げることができる。したがって、当該土木構築物においては、植物、生物にとって好ましい環境を作り出すことができる。
また、既に噛み合った詰め材同士が形成する空隙内に保水性材料が入れられていることから、保水性材料が詰め材層に入り込むことに伴い、詰め材同士の直接的な噛み合いを阻害することはなく、保水性材料の保水の有無にかかわらず、詰め材層を実質的に強固な一体化物とすることができる。このため、当該土木構築物を強固な状態で維持できる。
さらに、噛み合った詰め材同士が形成する空隙内を保水性材料の保持空間として利用することから、その詰め材同士が形成する空隙を有効に利用できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、保水性材料として、保水しても体積膨張が抑制される膨張抑制物質が用いられていることから、保水性材料の保水に伴う詰め材同士の噛み合い状態に対する影響(膨張に基づく影響)を格段に少なくすることができ、詰め材層が保水性材料を含む場合であっても、当該土木構築物を長期に亘って強固な状態で維持できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、膨張抑制物質が多孔質片であることから、その多孔質片の多孔質性を利用して、水を具体的に保水できる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、空隙内に保水性材料が、未充填空間を残した状態で入れられていることから、保水性材料が保水し、その体積が膨張したとしても、その体積膨張を未充填空間により吸収できる。このため、保水性材料の保水に基づく体積膨張が生じたとしても、詰め材同士の噛み合い状態に影響を与えることを防止でき、詰め材層、ひいては当該土木構築物の強度の低下を防止できる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、詰め材層が保持する保水性材料の量が、詰め材層が所定以上の透水性能を満たすものであることから、詰め材が噛み合うことによって形成される多数の空隙を利用して、保水性材料の保持だけでなく、施工面側(地盤側)からの湧き水、浸透水等の排水を水抜きパイプを特別に設けなくても行うことができる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、詰め材層の表面側に、複数の表面材が配置されていることから、その複数の表面材により、景観等の面から周囲に調和させることができると共に、詰め材層の詰め材の流失を防止できる。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、施工面に隣接して、詰め材が互いに噛み合った詰め材層を形成した後、その噛み合った詰め材によって形成される空隙内に保水性材料を入れ込むことから、空隙への保水性材料の入れ込みに伴い、噛み合うべき詰め材同士間に保水性材料が介在されることを防止して、詰め材同士の直接の噛み合いを確保できる。このため、保水性材料が保水しても、詰め材層の実質的な一体化を確保でき、当該土木構築物を長期に亘って強固に維持できる。
【0016】
請求項8に係る発明によれば、土木構築物が、傾斜する施工面に対して、詰め材層と、表面材が積み上げられた表面材層とが、施工面から離間する方向に向けて順に配置され、表面材層の各表面材がアンカーを介して詰め材層にそれぞれ取付けられているものであることを前提として、表面材を積み上げるに際して、表面材を、施工面から離間させつつ、所定数ずつ積み上げると共に、その所定数の表面材の積み上げの度に、積み上げられた所定数の表面材と施工面との間において、所定数の表面材のうち、最上段の表面材の略上面高さまで詰め材を充填して、所定数の表面材の各アンカーを詰め材により埋設し、しかも、所定数の表面材の各アンカーに対する詰め材の充填後の度に、詰め材同士が作り出す空隙内に保水性材料を入れ込むことから、詰め材同士の直接の噛み合いを阻害することなく(噛み合うべき詰め材同士間に介在させることなく)、詰め材層全体(各隙間)に保水性材料を的確に入れ込むことができる。このため、土木構築物として、傾斜する施工面に対して、詰め材層、表面材層が、順に配置され、表面材層の各表面材がアンカーを介して詰め材層にそれぞれ取付けられるものを構築する場合であっても、保水性材料に基づき植物、生物にとって好ましい環境を作り出すことができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、土木構築物が、網状体を用いて形成された籠体内に詰め材を充填する土木構築物用ユニットが施工面上に複数配置されたものであることを前提として、土木構築物用ユニットとして、各籠体内に詰め材を充填した後、籠体内における該詰め材同士が作り出す空隙内に保水性材料を入れ込んだものを用いることから、土木構築物が、網状体を用いて形成された籠体内に詰め材を充填する土木構築物用ユニットが施工面上に複数配置されたものであっても、保水性材料に基づき植物、生物にとって好ましい環境を簡単に作り出すことができる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、当該土木構築物用ユニットが、網状体を用いて形成された籠体内に詰め材が充填され、その籠体内における詰め材が作り出す空隙内に、水を保水可能な保水性材料が入り込んでいるものであることから、当該土木構築物用ユニットを施工面上に配置することにより、請求項1に係る土木構築物を具体的に構築できる。このため、請求項1に係る土木構築物に用いられる土木構築物ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る護岸(土木構築物)を示す縦断面図。
【図2】図1における裏込め材料の状態を示す拡大説明図。
【図3】第1実施形態に係る土木構築物の構築工程を説明する説明図。
【図4】図3の続きの工程を説明する説明図。
【図5】図4の続きの工程を説明する説明図。
【図6】図5の続きの工程を説明する説明図。
【図7】第2実施形態に係る護岸(土木構築物)を示す縦断面図。
【図8】第2実施形態に係る土木構築物に用いられる土木構築物用ユニットを示す平面図。
【図9】第2実施形態に係る土木構築物用ユニットを示す一部断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態において、符号1は、河川2に臨む土木構築物としての護岸を示している。護岸1は、河川2側(図1中、左側)から陸上側に向うに従って上方に向って延びるよう傾斜される法面3(施工面)と、その法面3の下端位置から河川2側に向けて延びる設置面4(施工面)とを備えており、設置面4の先端部には基礎コンクリートブロック5が河川2水の流れ方向(紙面直角方向)に延びるようにして配置されている。
【0021】
前記法面3及び設置面4上には、その全体において、図1に示すように、吸い出し防止材6が敷設されている。吸い出し防止材6は、透水性、通気性を確保しつつ、土砂等の流失を防止する機能を有しており、その機能を発揮するため、その吸い出し防止材6として、例えばポリエステル等の長繊維不織布等が用いられている。
【0022】
前記法面3の表面側(図1中、左側)には、前記吸い出し防止材6を介して詰め材層としての裏込め材層7が設けられている。この裏込め材層7は、法面3に沿いつつ上方側に延びており、その裏込め材層7の下端部は設置面4により支えられている。この裏込め材層7は、詰め材としての裏込め材8が互いに噛み合った状態となっており、この噛み合いにより裏込め材層7は、実質的に一体化している。このため、裏込め材層7は、実質的に一体化した状態で法面3に寄り掛かっている。
【0023】
また、裏込め材層7には、図1,図2に示すように、各裏込め材8の噛み合いの下で、多数の空隙9が形成されている。この裏込め材層7中での空隙9の空隙率(重量ベース)は、本実施形態においては、強度を考慮し、30%前後(上限で40%前後)とされており、それを実現すべく、裏込め材8として、径50〜150mm前後の割栗石が用いられている。このような各空隙9は互いに連通しており、裏込め材層7は透水性を有している。
【0024】
前記裏込め材層7の表面側には、図1に示すように、表面材層10が設けられている。表面材層10は、自然石11(表面材)が基礎コンクリートブロック5から傾斜を持たせつつ積み上げられており(各段毎に図1の紙面垂直方向にも複数の自然石が並設状態)、この自然石11としては、500mm〜700mm前後(好ましくは600mm前後)の玉石、割石等(図1においては簡略化して図示)が用いられている。
【0025】
前記各自然石11は、図1に示すように、アンカー12を介して裏込め材層7に取付けられている。アンカー12は、基本的には線材からなり、その一端部は、自然石11に対する取付け端部として自然石11に取付けられ、その他端側は、裏込め材層7内を法面3側に向けて略水平に延びている。このアンカー12の他端部は、ストッパパネル13と、そのストッパパネル13の抜け止めを行う抜け止め部14とを有しており、そのうちのストッパパネル13と裏込め材層7の裏込め材8との係合により自然石11が前方に脱落することが規制されている。
【0026】
前記裏込め材層7の各空隙9には、図2に示すように、水を保水可能な保水性材料15がそれぞれ入れられている。この保水性材料15としては、種々のものを用いることができる。例えば、保水しても体積膨張が抑制(非膨張、実質的に膨張が少ないとみなされるもの等を含む)される膨張抑制物質(例えば、多孔質セラミックス系物質(より具体的には廃瓦等)、保水性多孔質レンガ(片)、溶岩、軽石、多孔質コンクリート片等)、吸水性ポリマー樹脂、自然由来の物(例えば海藻等から抽出されるもの、ウッドチップ等)、土、粘土単独、土、粘度等に吸水性ポリマーを混ぜたもの等が、適宜用いられる。この場合、保水性材料15として膨張抑制物質が用いられるときには、裏込め材8の噛み合い状態への影響を格段に少なくすることができることから、各空隙9に比較的多くの量が入れられる。一方、保水性材料15が保水により膨張する場合には、その膨張が裏込め材8同士の噛み合い状態に影響を与えないようにすべく、各空隙9には、膨張抑制物質の場合に比べて未充填空間が大きく確保される。勿論このいずれの場合においても、本実施形態においては、基本的に、裏込め材層7が所定の透水性能を有するように設定される。
また、保水性材料15の大きさ、形態は、裏込め材8同士が形成する空隙9への進入し易さ、一旦、入った後の流失しにくさ等を考慮して決められることになっている。具体的には、裏込め材8の径(空隙9の大きさ等)を考慮した大きさをもって、粒子状、硬質片状、ゾルーゲル状等の適宜の形態が選択される。
【0027】
したがって、このような護岸1においては、裏込め材層7内の各空隙9に保水性材料15が入れられていることから、保水性材料15は、雨水、湧き水等により保水し、植物、生物に対する水補給源となる。このため、植物、生物の生育生息環境として好ましい環境を作り出すことができる。また、暑いときには、保水性材料15が保水する水が蒸発することになり、その潜熱により、周囲環境の空気温度は大幅に下げられる。このため、人間を含む生物にとって快適な環境を作り出すことができる。
一方、裏込め材層7に保水性材料15が入り込んでいても、裏込め材層7は、裏込め材8が噛み合う状態で構成されて、非常に多くの空隙9を有しており、基本的に、裏込め材層7において透水性は確保されている(施工面側での水圧の発生防止)。しかも、既に噛み合った裏込め材8同士が形成する空隙9内に保水性材料15が入れられていることから、保水性材料15が裏込め材層7に入り込むことに伴い、噛み合うべき裏込め材8同士の間に保水性材料15が介在されることはなく、裏込め材8同士の直接的な噛み合いは確保され、裏込め材層7を、従前同様、実質的に強固な一体化物として取り扱うことができる。このため、当該護岸1を強固な状態で維持できる。
しかもこの場合、保水性材料15として膨張抑制物質を用いれば、より好ましいものとなる。保水性材料15が保水したとしても、保水性材料15の膨張が少なく(非膨張、実質的に膨張がないとみなされるような膨張を含む)、裏込め材8同士の噛み合いに及ぼす影響を少なくすることができるからである。
【0028】
このような護岸1は、次のようにして構築される。この構築に際しては、作業性等を考慮し、自然石11にアンカー12の一端部を取付けた土木構築物用ユニット16が用いられる。
先ず、図3に示すように、一段目の土木構築物用ユニット16を設置する(紙面垂直方向に複数のものが並設された状態で存在)。この場合、設置面4(吸い出し防止材6)上に裏込め材8(割栗石)をある程度敷いた上で、その上に一段目の土木構築物用ユニット16を設置し、その土木構築物用ユニット16の自然石11を基礎コンクリートブロック5上に配置すると共に、アンカー12を法面3側に向けつつ略水平状態とする。その上で、全体の高さを自然石11の略最上面の高さに調整すべく、アンカー12の配置側に裏込め材8をさらに投入し、これにより、1段目裏込め材層7aを形成し終える。このとき、裏込め材8は当接して互いが噛み合った状態なっている。
【0029】
次に、図4に示すように、保水性材料15を1段目裏込め材層7aの上側から投入し、その保水性材料15を、裏込め材8が互いに噛み合って形成している空隙9に入り込ませる。この場合、保水性材料15の大きさは、空隙9への保水性材料15の進入等を考慮して決められ、保水性材料15は裏込め材層7の下端側にまで行き渡ることになるが、本実施形態においては、1段目裏込め材層7aの多くの空隙9全てが保水性材料により充填されるわけではなく、また、各空隙9の空間全てが保水性材料15により満たされるわけではない。これにより、1段目裏込め材層7aには所望の透水性が確保されている。またこの場合、裏込め材8同士が既に噛み合った後、保水性材料15を投入することから、噛み合うべき裏込め材8同士間に保水性材料15が介在されることが回避され、裏込め材8同士の直接的な噛み合いが維持される。
【0030】
次に、図5に示すように、2段目の土木構築物用ユニット16を設置する。この場合、その土木構築物用ユニット16の自然石11は、1段目の土木構築物用ユニット16の自然石11上に積み上げられ、アンカー12は法面3側に向けて略水平な状態とされる。この後、前回同様、全体の高さを自然石11の略最上面の高さに調整すべく、さらに、アンカー12の配置側に裏込め材8を投入し、これにより、2段目裏込め材層7bを形成し終える。
【0031】
次に、図6に示すように、保水性材料15を2段目裏込め材層7bの上側から投入し、その保水性材料15を、その裏込め材8が互いに噛み合って形成している空隙9に入り込ませる。
以下、同様の工程が最上段まで繰り返され、その上端処理を終えた後、作業は終了する。
【0032】
したがって、上記土木構築物の構築方法においては、裏込め材8が既に噛み合っている裏込め材層7に対して保水性材料15を投入することから、噛み合う裏込め材8同士間に保水性材料15が介在されることはなく、裏込め材8同士の直接的な噛み合い状態を確保することができる。このため、裏込め材層7を実質的な一体化物とすることができ、その強度を確保できる。これにより、自然石11の脱落等を確実に防止できる。
【0033】
図7〜図9は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図7〜図9に示す第2実施形態においては、護岸1は、多数の土木構築物用ユニット17(いわゆるふとん籠)を、たれ部施工面4、法面部施工面3及び天端部施工面20(吸い出し防止材6)上に多数配置することにより構成されている(図7参照)。この各土木構築物用ユニット17は、網状体としての金網を用いて形成された籠体18内に詰め材としての割栗石21が充填されていると共にその籠体18の上側金網18aに複数の自然石22(表面材)が取付けられている。しかも、籠体18内における割栗石21同士が作り出す空隙9内には保水性材料15を入れられている。
このため、護岸1においては、各籠体18内の割栗石21が詰め材層を構成することになり、各籠体18における上側金網18aの複数の自然石22が、表面材層を構成することになる。そして、この護岸1においても、各籠体18上面の自然石22が、景観等の観点から周囲環境に調和させ、各籠体18内の保水性材料15が、保水して、前記第1実施形態同様、植物、人間を含む生物にとって好ましい環境を作り出すことになる。
尚、図7中、符号23は覆土を示す。
【0035】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)自然石11,22の他に、擬石、擬石模様等の各種模様を付したコンクリートブロック等を用いること。
(2)河川2における護岸1を対象とする場合に限らず、湖水、海における護岸1等にも本発明を適用すること。
(3)土木構築物は、護岸に限らず、擁壁を含むこと。
(4)保水性材料15を、裏込め材層7が透水性を有しなくなるほど、その各空隙9内に充填すること。その場合には、裏込め材層7に作用する水圧を低減すべく、裏込め材層7にそれを貫通する水抜きパイプを設け、その水抜きパイプにより法面3側の水を外部に排出することが必要となる。
(5)裏込め材8として、割栗石(50mm〜150mm)に限らず、それに相当する大きさの砕石、コンクリート片等を用いること。
【0036】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として記載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【符号の説明】
【0037】
1 護岸11(土木構築物)
2 法面3(施工面)
4 設置面(施工面)
7 裏込め材層(詰め材層)
8 裏込め材(詰め材)
9 空隙
10 表面材層
11 アンカー
15 保水性材料
16 土木構築物用ユニット
17 土木構築物用ユニット
18 籠体
21 割栗石(詰め材、詰め材層)
22 自然石(表面材、表面材層)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面上に、詰め材が互いに噛み合った詰め材層が設けられている土木構築物において、
前記詰め材層の詰め材が、互いの噛み合いにより空隙をそれぞれ形成しており、
前記各空隙内に、水を保水可能な保水性材料が入れられている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項2】
請求項1において、
前記保水性材料として、保水しても体積膨張が抑制される膨張抑制物質が用いられている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項3】
請求項2において、
前記膨張抑制物質が、多孔質片である、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項4】
請求項1において、
前記空隙内に前記保水性材料が、未充填空間を残した状態で入れられている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項5】
請求項1において、
前記詰め材層が保持する前記保水性材料の量が、該詰め材層が所定以上の透水性能を満たすものである、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項6】
請求項1において、
前記詰め材層の表面側に、複数の表面材が配置されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項7】
施工面に隣接して、詰め材が互いに噛み合った詰め材層を形成し、該噛み合った詰め材によって空隙を形成する土木構築物の構築方法において、
前記詰め材層を形成した後、前記空隙内に、水を保水可能な保水性材料を入れ込む、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記土木構築物が、傾斜する施工面に対して、前記詰め材層と、表面材が積み上げられた表面材層とが、前記施工面から離間する方向に向けて順に配置され、該表面材層の各表面材がアンカーを介して前記詰め材層にそれぞれ取付けられているものであることを前提として、
前記表面材を積み上げるに際して、該表面材を、前記施工面から離間させつつ、所定数ずつ積み上げると共に、その所定数の表面材の積み上げの度に、該積み上げられた所定数の表面材と前記施工面との間において、該所定数の表面材のうち、最上段の表面材の略上面高さまで詰め材を充填して、該所定数の表面材の各アンカーを該詰め材により埋設し、
しかも、前記所定数の表面材の各アンカーに対する詰め材の充填後の度に、該詰め材同士が作り出す空隙内に、前記保水性材料を入れ込む、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記土木構築物が、網状体を用いて形成された籠体内に詰め材を充填する土木構築物用ユニットが施工面上に複数配置されたものであることを前提として、
前記土木構築物用ユニットとして、前記各籠体内に詰め材を充填した後、該籠体内における該詰め材同士が作り出す空隙内に前記保水性材料を入れ込んだものを用いる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項10】
網状体を用いて形成された籠体内に詰め材が充填されている土木構築物用ユニットにおいて、
前記籠体内における詰め材が作り出す空隙内に、水を保水可能な保水性材料が入り込んでいる、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−57349(P2012−57349A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201147(P2010−201147)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【Fターム(参考)】