説明

圧力制御装置

【課題】 圧力制御装置10よりも下流側で発生する圧力変動を防止することのできる整流器44を備える圧力制御装置10を提供する。
【解決手段】 圧力制御装置10は、弁座11と整流器44とを含んで構成される。弁座11は、流体が流れる管路に設けられ、管路を上流側管路12と下流側管路13とに仕切り、上流側管路12の内径よりも小さい内径の透孔14を規定する。透孔軸線と上流側管軸とは、角度を成す。透孔軸線方向は、透孔14を流れる流体の流れ方向であり、上流側管軸方向は、上流側管路12内の流体の流れ方向である。整流器44は、弁座11よりも上流側に配置され、板状案内部46と筒状案内部48とを有する。板状案内部46は上流側管軸に略平行に設けられる板状の部分であり、筒状案内部48は、板状案内部46に設けられ、透孔14よりも上流側の流体を下流側に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる管路内において流体の圧力を制御する圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管路を流れる流体において、上流側と下流側とに圧力差がある場合、上流側における流体が乱流となると、下流側における圧力が一定せず、圧力が変動する現象が観測されることが知られる。流体の圧力変動が生じると、圧力変動を、その周期に合わせて相殺する制御を行うことは困難であるという問題点がある。これを抑制するために、管路内において流体の流れを整流する整流器が知られる。
【0003】
図4は、従来技術に係る整流器1およびこれを備える圧力制御装置2の断面図である。従来技術に係る整流器1は、直線状の流路の途中に設けられ、流速を均一化する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−175337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術に係る整流器1は、直線状の流路の途中に配置され、流速を均一化するけれども、上流側で流体の流れに乱れが発生すれば、下流側における圧力変動を抑制しきれないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、圧力制御装置よりも下流側で発生する圧力変動を防止することのできる整流器を備える圧力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、圧力制御装置は、弁座と整流器とを含んで構成される。弁座は、流体が流れる管路に設けられ、管路を上流側管路と下流側管路とに仕切り、透孔が形成される。透孔軸線方向と上流側管軸方向とは、角度を成す。透孔軸線方向は、透孔を流れる流体の流れ方向であり、上流側管軸方向は、上流側管路内の流体の流れ方向である。整流器は、弁座よりも上流側に配置され、通過する流体の流れを整流する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上流側管路を流れる流体の流れ方向を、板状案内部によって規定することができる。したがって、流れ方向が規定された直後に流体の流路を筒状案内部によって規定し、流体を透孔に案内することができる。これによって、整流器を設けない場合に比べて、流れ方向が変化する位置において流体が乱流となる領域を小さくすることができる。したがって、透孔を通過するときに流体に圧力変動が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である。第1実施形態にかかる圧力制御装置10は、流体が流れる管路内の流体の圧力を制御する。圧力制御装置10は、弁座11を含んで構成される。弁座11は、流体が流れる管路に設けられ、管路を上流側管路12と下流側管路13とに仕切り、上流側管路12の内径よりも小さい内径の透孔14を規定する。透孔14の軸線と上流側管軸とは、角度を成す。透孔14の軸線は、透孔14を流れる流体の流れ方向にほぼ平行であり、上流側管軸は、上流側管路12内の流体の流れ方向にほぼ平行である。本実施形態において、透孔軸線方向と上流側管軸方向とが成す角度は、およそ90度程度である。また、前記流体はたとえば都市ガスであり、前記管路はたとえばガス配管である。ただし、図1に示す構造の圧力制御装置10は、本発明にかかる圧力制御装置の一実施形態にすぎず、本発明を、種々の構造の圧力制御装置として実現することは可能であるので、図1に示す構造によって、本発明が示す技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
圧力制御装置10は、ピストン16と、シリンダ17とをさらに含んで構成される。シリンダ17は、流体が流れる管路内に設けられ、ピストン16を内部空間に収容する。圧力制御装置10は、ピストン棒19と、Oリング21と、管路構成体22と、駆動部と、制御部とを含んで構成される。駆動部は、ピストン16をシリンダ17に対して摺動方向Zに変位させる部分である。制御部は、2次圧が上昇または下降したときに駆動部を制御して、2次圧を一定に保つ部分である。
【0012】
前記上流側管路12と下流側管路13とは、管路構成体22に含まれる。シリンダ17は、シリンダ円板27およびシリンダ円筒部28を含む。シリンダ円板27は、軸直角断面において、外形が円形に形成される板状部材であり、ピストン棒19が挿入される挿通孔19aが形成される。挿通孔19aは、外形の円の中心を通り、前記板状部材の厚み方向に延びる直線を軸線として形成され、シリンダ円板27を貫通する円柱形の孔である。ピストン棒19は、円柱状に形成され、シリンダ円板27のうちの挿通孔19aを規定する部分に対して、円滑に摺動可能である。円柱状のピストン棒19の軸線は、挿通孔19aの軸線に一致する。
【0013】
第1実施形態において、ピストン棒19の軸線を「摺動軸線」と称し、摺動軸線の方向を「摺動方向」と称する。摺動軸線に垂直に交わる直線のすべての方向を「半径方向」と称し、半径方向のうち摺動軸線から離れる向きを「半径方向外方」と称し、半径方向のうち摺動軸線に近づく向きを「半径方向内方」と称する。
【0014】
シリンダ円筒部28は、大略的に直円筒状に形成され、シリンダ円筒部28の軸線は、摺動軸線に一致する。シリンダ円筒部28の摺動方向一方Z1の端部は、シリンダ円板27と接続される。シリンダ円筒部28は、シリンダ円板27と一体に形成される。シリンダ17には、複数の連通孔32が形成される。連通孔32は、内部空間と外部空間とを連通し、ピストン16の変位によって閉塞可能である。具体的には、シリンダ円筒部28の側面に、半径方向に貫通する複数の連通孔32が形成される。複数の連通孔32は、シリンダ円筒部28の摺動軸線まわりの周方向にも複数形成され、シリンダ円筒部28の摺動方向Zにも複数形成される。連通孔32を規定する部分を「連通孔規定部」と称する。
【0015】
ピストン16は、シリンダ円筒部28に対して嵌合し、シリンダ円筒部28の半径方向内方に設置される。ピストン16は、大略的に円柱状に形成され、ピストン16の円柱の軸線は、摺動軸線に一致する。ピストン16の円柱の外径は、ピストン棒19の円柱の外径よりも大きい。ピストン16の摺動方向他方Z2の端部のうち半径方向外方の周縁部には、摺動方向他方Z2に全周にわたって突出する突出部16bが形成される。ピストン16は、ピストン棒19よりも摺動方向他方Z2に位置し、ピストン棒19の摺動方向他方Z2の端部は、ピストン16の摺動方向一方Z1の端部と接続される。ピストン16は、ピストン棒19とともに、シリンダ17に対して摺動方向Zに変位する。
【0016】
摺動軸線から半径方向外方のピストン16の外周面には、矩形溝16aが形成される。矩形溝16aは、摺動軸線まわりに周方向全周にわたって形成される。ピストン16に対する矩形溝16aの摺動方向Zの位置は、周方向に関わらず一定である。矩形溝16aは、摺動軸線に関して半径方向外方からピストン16の一部を切り欠いて形成され、摺動軸線を含む平面でピストン16を切断したときの矩形溝16aの断面形状は、長方形である。
【0017】
矩形溝16aには、Oリング21が嵌合する。Oリング21は、合成ゴムまたは合成樹脂から成り、シリンダ円筒部28の半径方向内方から、シリンダ円筒部28に対してしまりばめされる。Oリング21の半径方向の寸法は、摺動軸線まわりの周方向に一様であり、矩形溝16aの半径方向の深さよりも大きく設定される。矩形溝16aに嵌合した状態で、Oリング21は、ピストン16の外周面から摺動軸線に関して半径方向外方にわずかに突出する。ピストン16は、シリンダ円筒部28の内方から、シリンダ円筒部28に対してすきまばめされる。Oリング21とシリンダ円筒部28の内周面との隙間には、Oリング21とシリンダ円筒部28との摩擦を軽減するために、潤滑剤が塗布される。
【0018】
管路構成体22は、上流側フランジ34、下流側フランジ36および隔壁38を含んで構成され、一体に形成される。管路構成体22は、流体が流れる領域を規定し、この流体は、たとえば都市ガスであり、第1実施形態において流体が流れる向きは、予め定められる。管路構成体22の上流側端部は、上流側配管と接続される。管路構成体22の下流側端部は、下流側配管と接続される。上流側フランジ34は、上流側配管に対する固定および密閉を可能にするための管継手である。下流側フランジ36は、下流側配管に対する固定および密閉を可能にするための管継手である。
【0019】
隔壁38は、管路構成体22の内部空間を流れる流体の流れ方向に関して、上流側と下流側との途中位置に設置され、上流側と下流側とを仕切って設けられる管路構成体22の一部である。隔壁38によって仕切られた内部空間のうち、上流側に位置する流体を「1次流体」と称し、下流側に位置する流体を「2次流体」と称する。第1実施形態において、上流側配管内の流体の圧力を「1次圧力」、下流側配管内の流体の圧力を「2次圧力」と称する。1次圧力は予め定められ、一定に保たれる。2次圧力には、目標となる圧力の大きさが予め定められ、本実施形態に係る圧力制御装置10は、2次圧力を目標となる圧力に保つために圧力制御を行う。2次圧力として目標として定められる圧力を「目標2次圧力」と称する。目標2次圧力は、1次圧力よりも低く、2次圧力が1次圧力よりも高くなることはない。
【0020】
隔壁38の一部には、透孔14が形成される。透孔14は、隔壁38を摺動方向Zに貫通する孔であり、1次流体が位置する上流側空間と、2次流体が位置する、隔壁38よりも下流側の空間とを連通する。管路構成体22によって規定される空間のうち、1次流体が位置する、隔壁38よりも上流側の空間を「上流側空間」と称する。隔壁38のうち、透孔14を規定する部分が弁座11である。弁座11は、摺動方向Zに見て大略的に円形の環状部分であり、弁座11の厚み方向は、摺動方向Zに一致する。透孔14を摺動方向Zに見ると、円形であり、摺動方向Zに見た透孔14の中心は、摺動軸線に一致する。管路構成体22を流れる流体の流量が、予定される範囲内で最大であるときにも、弁座11が流体の流れに対して有意な抵抗となることを防止するために、透孔14の内径は、充分に大きく設定される。
【0021】
透孔14の内径は、ピストン16の内径よりも小さく設定される。管路構成体22を流れる流体の流量が、予定される範囲内で最大であるときにも、第1実施形態において流体は、透孔14を摺動方向他方Z2から摺動方向一方Z1に向けて流れる。したがって、透孔14内において流体の流れ方向は、摺動方向一方Z1に一致する。
【0022】
ピストン16よりも摺動方向他方Z2、シリンダ円筒部28よりも摺動軸線に関して半径方向内方に位置する空間を「ピストン空間」と称する。ピストン空間43内において、流体は、ピストン16の摺動方向他方Z2の端面によって、摺動方向一方Z1に移動することが阻止される。隔壁38の透孔14は、充分に大きく形成され、弁座11が流体の流れに対して抵抗となることが防止されるので、ピストン空間43内の流体の圧力は、1次圧力である。ピストン16がピストン16の駆動範囲で最も他方摺動方向に位置する状態から、摺動方向一方Z1に変位し、シリンダ円筒部28に形成される連通孔32に規定される空間がピストン空間43に連なると、ピストン空間43内の流体は、連通孔32を摺動軸線に関して半径方向外方に通過する。
【0023】
ピストン空間43に露出した連通孔規定部33と、ピストン16のうち連通孔規定部33に臨む部分とは、流体の流れに対して抵抗として作用するので、ピストン空間43から摺動軸線に関してシリンダ円筒部28よりも半径方向外方に移動した流体の圧力は、1次圧力よりも低い。
【0024】
本実施形態において連通孔32は、シリンダ円筒部28の周方向および摺動方向Zの全範囲に広がって形成される。シリンダ円筒部28に形成される複数の連通孔32は、螺旋状の線に沿って形成される。螺旋状の線は、摺動方向一方Z1に向かうにつれて、シリンダ円筒部28の周方向に、摺動軸線を中心に螺旋状に回転する線である。螺旋状の線上に隣合う連通孔32の摺動方向Zの位置は、少なくとも一部が摺動方向Zに重なる。複数の連通孔32がこのように形成されることによって、ピストン16が摺動方向Zに変位したときに、ピストン16の変位に伴って、流体がシリンダ円筒部28を通過する量を連続的に変化させることができる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態における整流器44を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。第1実施形態に係る圧力制御装置10は、整流器44をさらに含んで構成される。整流器44は、弁座11よりも上流側に配置され、板状案内部46と筒状案内部48とを有する。板状案内部46は上流側管軸方向に略平行に設けられる板状の部分であり、筒状案内部48は、板状案内部46に設けられ、透孔14よりも上流側の流体を下流側に案内する。筒状案内部48は、透孔軸線方向に略平行な軸線を有する円筒状に形成され、板状案内部46は、筒状案内部48の外周面に、外方に向けて突出して設けられ、互いに平行な複数の板状体から成る。
【0026】
板状案内部46および筒状案内部48は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成され、板状案内部46と筒状案内部48とは、一体に形成される。板状案内部46は、摺動方向に離れて複数形成されるリング状部分49から形成される。複数のリング状部分49は、摺動方向を厚み方向として、摺動方向に均等な間隔を隔てて設置される。本実施形態において複数のリング状部分49は、摺動方向に離れて3つ配置される。リング状部分49のうち、最も摺動方向一方Z1に位置するリング状部分49と隔壁38との間隔、および各リング状部分49間の間隙は、いずれも等しい間隔として設定される。リング状部分49を摺動方向に見たときの外径は、隔壁38の透孔14の内径よりも小さく設定される。
【0027】
リング状部分49の厚みについては、規定しないけれども、複数のリング状部分49間の摺動方向の間隔は、各リング状部分49の厚みよりも大きく設定される。管路構成体22のうち、1次流体の流路を規定する上流側管路12に対して、リング状部分49は接することなく形成される。リング状部分49を摺動方向に見たときの外形が成す円の中心は、摺動軸線に一致して設置される。リング状部分49を摺動方向に見たときの内方は、摺動軸線まわりの周方向全体にわたって、筒状案内部48に連なる。
【0028】
第2部材は、摺動軸線を円筒の軸線として配置され、円筒の外形は、隔壁38の透孔14の内径よりも小さく設定される。筒状案内部48の摺動方向一方Z1の端部には、摺動軸線に関する半径方向外方に突出してフランジ部51が形成される。フランジ部51の外径は、透孔14の内径よりも大きく、また板状案内部46の外径よりも大きく設定される。フランジ部51の摺動方向一方Z1の表面部のうち、ピストン16の突出部16bに対応する部分には、合成ゴムまたは合成樹脂からなる密閉部51aが全周にわたって形成される。ピストン16が最も摺動方向他方Z2に変位したときに、ピストン16の突出部16bは、密閉部51aに当接する。これによって、透孔14は閉鎖され、流体の移動は阻止される。フランジ部51は、摺動方向一方Z1から隔壁38の弁座11に接して配置される。フランジ部51を除く筒状案内部48の円筒状の部分および板状案内部46は、透孔14の半径方向内方および透孔14よりも摺動方向他方Z2に配置される。
【0029】
フランジ部51と弁座11とは、ビスなどのねじ部材によって互いに固定される。ねじ部材は、摺動方向に軸線を有し、頭部を摺動方向一方Z1に、軸部を摺動方向他方Z2に向けて摺動方向一方Z1から弁座11に螺合する。これによって、整流器44は、管路構成体22に対して固定される。板状案内部46のうち、最も摺動方向他方Z2に位置するリング状部分49は、筒状案内部48に対してフランジ状に形成される。筒状案内部48は、隔壁38に対して接して配置されるけれども、隔壁38よりも上流側の流体の流路を規定する上流側配管に対しては、離反して形成される。整流器44が管路構成体22の隔壁38に対して固定された状態において、板状案内部46のうち最も摺動方向一方Z1寄りのリング状部分49と隔壁38との間隔は、複数の各リング状部分49間の間隔と等しく設定される。
【0030】
上流側配管から管路構成体22に進入した流体は、上流側管路12内に形成される平板状部材によって、整流され、筒状案内部48近傍に到達する。流体は、筒状案内部48の摺動方向他方Z2から、筒状案内部48の半径方向内方の空間に進入する。筒状案内部48よりも半径方向外方および摺動方向他方Z2の、板状案内部46および筒状案内部48近傍において乱流が発生しても、乱流によって移動する流体分子は、複数のリング状部分49によって、移動範囲が限定され、リング状部分49間の距離よりも大きい範囲で移動することが阻止される。また筒状案内部48よりも半径方向外方において、乱流が発生する場合にも、板状案内部46が配置されることによって、乱流となる領域の範囲が小さくなる。
【0031】
流体は、板状案内部46と上流側管路12との間隙、および筒状案内部48と上流側管路12との間隙を移動した後、第2管路の摺動方向他方Z2から、第2管路の内方の空間に移動する。筒状案内部48の半径方向内方の空間に進入した流体は、ピストン空間43に到達し、シリンダ円筒部28に形成される連通孔32を通過してシリンダ円筒部28よりも下流側に移動する。
【0032】
仮に本実施形態における整流器44が設置されない場合、上流側管路12内で乱流が生じる領域における流体の渦は、空間的な制限を受けることがないので、上流側管路12内に広がる複雑な渦となる。換言すれば、本実施形態における整流器44が設置されない場合、複数の流体分子が互いに摩擦しながら複数の向きに移動する距離は、整流器44が設置される場合に比べて大きくなる。これによって、上流側管路12内の位置によって、流体の圧力に圧力差が生じることがある。換言すれば、乱流の渦によって、流体の疎密が生じる。位置による圧力差が生じ流体の疎密が生じるとき、その圧力差を解消する向きに流体の移動が生じ、この流体の移動によって、再び位置による圧力差が生じる。これが繰返されることによって、上流側管路12内に、流体の圧力変動が生じる。
【0033】
上流側管路12内において大きな流体の渦が生じることによって、上流側管路12に生じる圧力変動の周期は一定したものではなく、ランダムな挙動を示す。この圧力変動は、透孔14およびシリンダ円筒部28の連通孔32を通過しても消失することなく下流側に伝えられることがある。これによって、2次圧力に変動が生じる。2次圧力は、一定であることが好ましく、2次圧力を制御することによって、ランダムに発生した圧力変動を相殺することは、困難である。特に目標2次圧力が1次圧力に対して相対的に高ければ高いほど、上流管路内の、位置による圧力差が、シリンダ17よりも下流側における圧力変動を発生させ易く、圧力変動の振幅が大きくなる。
【0034】
整流器44を設置することによって、上流側管路12内において乱流が発生する領域を小さくすることができる。また乱流が発生しても、乱流に伴う渦を小さいものとすることができる。これによって、位置による圧力差が生じることを抑制することができる。したがって、流体に圧力変動が生じることを防止することができ、2次圧力が変動することを防止することができる。
【0035】
仮に板状案内部46を設置せず、筒状案内部48のみを設置した場合、上流側管路12内において流体の乱流の発生を抑制することはできず、下流側配管内において圧力変動の発生が観測された。したがって、筒状案内部48のみの配置によって圧力変動を防止することはできない。
【0036】
第1実施形態によれば、圧力制御装置10は、弁座11と整流器44とを含んで構成される。弁座11は、流体が流れる管路に設けられ、管路を上流側管路12と下流側管路13とに仕切り、上流側管路12の内径よりも小さい内径の透孔14を規定する。透孔軸線方向と上流側管軸方向とは、角度を成す。透孔軸線方向は、透孔14を流れる流体の流れ方向であり、上流側管軸方向は、上流側管路12内の流体の流れ方向である。整流器44は、弁座11よりも上流側に配置され、板状案内部46と筒状案内部48とを有する。板状案内部46は上流側管軸方向に略平行に設けられる板状の部分であり、筒状案内部48は、板状案内部46に設けられ、透孔14よりも上流側の流体を下流側に案内する。
【0037】
これによって、上流側管路12を流れる流体の流れ方向を、板状案内部46によって規定することができる。したがって、流れ方向が規定された直後に流体の流路を筒状案内部48によって規定し、流体を透孔14に案内することができる。これによって、整流器44を設けない場合に比べて、流れ方向が変化する位置において流体が乱流となる領域を小さくすることができる。したがって、透孔14を通過するときに流体に圧力変動が発生することを防止することができる。
【0038】
下流側管路13および下流側配管における2次圧力の圧力変動は、上流側管路12における流体に生じる渦が小さくかつ少ない場合に抑制または防止され、上流側管路12の断面積は一定である方が、上流側管路12における流体に生じる渦が小さくかつ少なくなりやすいことが知られる。圧力制御装置10を設計する場合には、上流側管路12の断面積を一定にすることを前提として設計される場合が多いけれども、本実施形態における整流器44を設置する場合、上流側管路12の断面積が、弁座11近傍において変化しても、上流側管路12内の流体の乱流の発生を抑制することができるので、本実施形態における整流器44の設置を前提とするならば、圧力制御装置10を設計する場合に、上流側管路12の断面積を自由に設定することができる。したがって、本実施形態における整流器44を設置する圧力制御装置10は、設計の自由度を高くすることができる。
【0039】
また第1実施形態によれば、筒状案内部48は、透孔軸線方向に略平行な軸線を有する円筒状に形成され、板状案内部46は、筒状案内部48の外周面に、外方に向けて突出して設けられ、互いに平行な複数の板状体から成る。これによって、筒状案内部48の外周面よりも外方において、流体の流れを整流することができる。したがって、流体に生じる乱流の渦を小さくかつ少なくすることができる。透孔14の開口面積を制限する必要がないので、圧力損失を小さくすることができる。
【0040】
他の実施形態において、板状案内部46を成すリング状部分49は、3つでなくてもよい。たとえば2つであっても、4つ以上、あるいは5つ以上であってもよい。摺動方向Zに離れて形成されるリング状部分49の数については、規定しない。またさらに他の実施形態において、筒状案内部48の外周面の外方に複数のリング状部分49を形成する代わりに、円筒形状の部材の外周面に、周方向に延びて形成される凹部を、摺動方向Zに異なる複数の位置に形成してもよい。
【0041】
図3は、本発明の第2実施形態における整流器44を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。第2実施形態に係る圧力制御装置10は、第1実施形態に係る圧力制御装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。第2実施形態において筒状案内部48の外形は、摺動方向Zを軸線として延びる円筒形に形成され、筒状案内部48の摺動方向他方Z2の端部の内周面は、摺動方向他方Z2に向かうにつれて外方に広がって形成される。
【0042】
筒状案内部48の内周面は、摺動方向他方Z2の端部およびその近傍において、いわゆるラッパ状に形成される。これによって、筒状案内部48の内周面が、円筒形を成す場合に比べて、筒状案内部48よりも摺動方向他方Z2から筒状案内部48の半径方向に内方に移動に伴って整流器表面の流れの剥離を抑制することができる。したがって、筒状案内部48よりも摺動方向他方Z2から筒状案内部48の半径方向に内方に移動する流体の流れ方向を、滑らかに変化させることができる。
【0043】
第1および第2実施形態において、筒状案内部48の摺動方向一方Z1のフランジ部51と隔壁38とは接触して互いに固定されるものとしたけれども、他の実施形態において、筒状案内部48の摺動方向一方Z1のフランジ部51と隔壁38との間に、ゴム弾性を有する樹脂から成るダンパを配置してもよい。ダンパは、フランジ部51と隔壁38の弁座11との間の相対変位を抑制し、隔壁38に対する筒状案内部48の振動を抑制する。これによって、流体の圧力変動を吸収することによって抑制し、上流側管路12内の流体の圧力変動が下流側に伝えられることを防止することができる。
【0044】
第1および第2実施形態において、整流器44は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成され、板状案内部46と筒状案内部48とは、一体に形成されるものとしたけれども、他の実施形態において、整流器44は、樹脂によって形成されてもよい。またリング状部分49と筒状案内部48とはそれぞれ別体に形成された後に、接続される構成としてもよい。
【0045】
第1および第2実施形態において基準方向は摺動方向Zに一致し、基準方向一方は摺動方向一方Z1に一致するものとしたけれども、基準方向と摺動方向Zとは独立していてよい。たとえば他の実施形態において基準方向は、摺動方向に対して角度を成す構成としてもよく、また基準方向と摺動方向とが一致し、基準方向一方と摺動方向他方Z2とが一致する構成としてもよい。
【0046】
第1および第2実施形態において、筒状案内部48内の空間は、摺動方向に軸線を有する仮想的な円柱状の形状であるけれども、さらに他の実施形態において、筒状案内部の内部空間に、この内部空間を摺動方向に通過する流体を整流するための、摺動方向に延びる羽根が、形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力制御装置10の断面図である
【図2】本発明の第1実施形態における整流器44を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における整流器44を、摺動軸線を含む平面で切断して見た断面図である。
【図4】従来技術に係る整流器1とこれを伴う圧力制御装置2の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 圧力制御装置
11 弁座
12 上流側管路
13 下流側管路
14 透孔
16 ピストン
17 シリンダ
22 管路構成体
32 連通孔
33 連通孔規定部
38 隔壁
42 弁座
43 ピストン空間
44 整流器
46 板状案内部
48 筒状案内部
49 リング状部分
51 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路に設けられ、前記管路を上流側管路と下流側管路とに仕切り、透孔が形成される弁座であって、
前記透孔を流れる流体の流れ方向である透孔軸線方向と、前記上流側管路内の流体の流れ方向である上流側管軸方向とが角度を成す弁座と、
前記弁座よりも上流側に配置され、通過する流体の流れを整流する整流器とを含むことを特徴とする圧力制御装置。
【請求項2】
前記整流器は、前記透孔軸線方向に略平行な軸線を有し筒状に形成される筒状案内部と、
前記筒状案内部の外周面に、外方に向けて突出して板状に形成される板状案内部とから成ることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−193175(P2009−193175A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31150(P2008−31150)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000142078)株式会社協成 (21)
【Fターム(参考)】