説明

圧力制御装置

【課題】ボールを小径流路の開口周縁部に当接させる構成のバルブ式のプレッシャレギュレータにおいて、開口周縁部にボールを確実に着座させ製品性能の安定化を図る。
【解決手段】プレッシャレギュレータ1は、流入口9を備えた小径流路6と、流体流出口12を備えた大径流路5とを有するハウジング2を有する。小径流路6と大径流路5はハウジング2内で連通しており、小径流路6と大径流路5との接続部には、大径流路5に臨んで小径流路6の開口8が形成されている。大径流路5内には、開口8の周縁部11に当接するボール3が配置されている。ボール3は、バルブスプリング4によって周縁部11に圧接されている。大径流路5の内径D1は、ボール3が大径流路内周壁5aに当接した状態で、ボール3の重心Gが周縁部11よりも開口3の中心寄りとなる寸法に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧力の調整を行う圧力制御装置に関し、特に、エンジンの燃料供給系に使用される圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車や四輪乗用車等の車両(以下、自動二輪車等と略記する)の燃料供給システムや油圧回路などの流体送給系では、流体の圧力が過大になるのを防止するため種々の圧力制御装置が用いられている。このような圧力制御装置としては、ダイヤフラム式やバルブ式のプレッシャレギュレータが知られており、例えば、特開平9-166059号公報(特許文献1)には、チェックバルブタイプの圧力制御弁を備えた燃料供給装置が示されている。特許文献1の圧力制御弁では、圧縮コイルスプリングによって保持された弁体(スリーブ)の移動により、弁の開閉が制御され、燃料供給装置から吐出される燃料の圧力(燃圧)が調整される。また、実開昭48-46220号公報(特許文献3)には、球状面を備えたバルブとスプリングを用いた圧力制御弁が開示されている。
【0003】
図7は、バルブ式のプレッシャレギュレータの構成を示す説明図である。図7のプレッシャレギュレータ51は、金属製のハウジング52内に、鋼製のボール53とバルブスプリング54を収容した構成となっている。ハウジング52内には大径流路55と小径流路56が形成されており、大径流路55の小径流路56側の端部には、テーパ部57が形成されている。テーパ部57の上流側(下端)には、小径流路56の開口58が形成されている。ボール53は開口58を塞ぐような形で設けられており、開口58の周縁部59(以下、開口周縁部59と略記する)に当接・離脱可能に配されている。小径流路56の上流側の端部には、流入口61が設けられている。
【0004】
大径流路55の下流側の端部は、流出口62となっている。流出口62には、リテーナ63が固定されている。リテーナ63はリング状に形成されており、その上流側(下端面)にはバルブスプリング54の一端側が当接している。バルブスプリング54はコイルバネからなり、その他端側はボール53に当接している。ボール53は、バルブスプリング54の付勢力によって、通常時は開口周縁部59に圧接されている(閉弁状態)。これに対し、小径流路56側から流体圧が加わり流体圧がバルブスプリング54の付勢力に勝ると、ボール53が上方に移動し、開口周縁部59とボール53との間に隙間が生じ開弁状態となる。また、流体圧が低下しバルブスプリング54の付勢力が勝ると、バルブスプリング54の付勢力によってボール53が下方に移動して開口周縁部59に当接し、閉弁状態となる。
【特許文献1】特開平9-166059号公報
【特許文献2】特開平6-117549号公報
【特許文献3】実開昭48-46220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、図7のようなバルブ式プレッシャレギュレータでは、開口周縁部59にボール53を当接させるべく、テーパ部57の角度θが小さく形成されている。すなわち、プレッシャレギュレータ51では、テーパ部57が広くなだらかに形成されている。このため、ボール53が開口周縁部59からテーパ部57側に転動し易く、開口周縁部59に着座しにくいという問題があった。図8(a)に示すように、ボール53が開口周縁部59から離れると、開口58以外の部位にて留まってしまい、装置性能が不安定となるおそれがあり、その対策が求められていた。
【0006】
また、プレッシャレギュレータは、図7のように、必ずしも開口58が下側に位置するように使用されるとは限られず、例えば、自動車用の燃料ポンプモジュールなどでは、プレッシャレギュレータ51を横方向に向けて使用する場合もある。ところが、プレッシャレギュレータ51を横向きに配置すると、図8(b)に示すように、重力によりボール53が下方に落ちてしまうおそれがあり、特に、テーパ部57の角度θが小さく、ボール53が開口周縁部59に着座しにくい構成の場合、ボール53の脱落が生じ易いという問題もあった。
【0007】
本発明の目的は、ボールを小径流路の開口周縁部に当接させる構成のバルブ式のプレッシャレギュレータにおいて、開口周縁部にボールを確実に着座させ製品性能の安定化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧力制御装置は、流体流入口を備えた小径流路と、流体流出口を備え前記小径流路と連通して設けられた大径流路とを有し、前記小径流路と前記大径流路との接続部に、前記大径流路に臨んで前記小径流路の開口が形成されたハウジングと、前記大径流路内に配置され、前記開口の周縁部に当接することにより前記小径流路を閉鎖する弁体と、前記大径流路内に配置され、前記弁体を前記周縁部に圧接させる弾性部材とを有してなる圧力制御装置であって、前記弁体は、その重心が常に前記周縁部よりも前記開口の中心寄りの位置となるように配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、弁体の重心位置が常に開口周縁部よりも開口中心寄りとなるため、弁体が開口から脱落しにくくなり、弁体を組み付ける際も弁体が確実に開口内に収まり、誤組み付けの防止が図られる。また、突発的な高流量等により、弁体リフト量が想定以上となってしまった場合も、その後、確実に弁体が開口内に収まり、組み付け後における弁体の位置ズレ防止も図られる。
【0010】
前記圧力制御装置において、前記大径流路の内周壁を、前記弁体が前記内周壁に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなる位置に設置しても良い。すなわち、大径流路の内径を、弁体が大径流路内周壁に当接した状態で、弁体重心が開口周縁部よりも開口中心寄りとなる寸法に設定しても良い。この場合、前記大径流路の内径をD1、前記弁体の直径をD2、前記開口の内径をD3としたとき、前記D1は、前記D2と前記D3の和よりも小さく(D1<D2+D3)しても良い。
【0011】
また、本発明の圧力制御装置では、前記大径流路の前記小径流路側の端部に下流側に向かって拡径するテーパ部を設けると共に、前記弁体が前記テーパ部に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなるように前記テーパ部を設置しても良い。
【0012】
さらに、本発明の圧力制御装置では、前記大径流路の前記小径流路側の端部に小径部を形成すると共に、前記小径部の下流側に大径部を形成し、前記小径部の内周壁を、前記弁体が前記内周壁に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなる位置に設置しても良い。
【0013】
一方、本発明の他の圧力制御装置では、流体流入口を備えた小径流路と、流体流出口を備え前記小径流路と連通して設けられた大径流路とを有し、前記小径流路と前記大径流路との接続部に、前記大径流路に臨んで前記小径流路の開口が形成されたハウジングと、前記大径流路内に配置され、前記開口の周縁部に当接することにより前記小径流路を閉鎖する弁体と、前記大径流路内に配置され、前記弁体を前記周縁部に圧接させる弾性部材とを有してなる圧力制御装置であって、前記大径流路は、該大径流路の前記小径流路側の端部に形成され、前記弁体が前記周縁部に当接した状態で前記弁体と当接するガイド部と、前記ガイド部の下流側に形成され、下流側に向かって拡径するテーパ部とを有し、前記ガイド部と前記テーパ部は、前記大径流路の一方向側のみに配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、大径流路の一方向側のみにガイド部とテーパ部とを設けたので、例えば、前記一方向側を下に向けて当該圧力制御装置を配置しても、弁体がガイド部によって支持されるため弁体が開口から脱落しにくく、弁体を組み付ける際も弁体が確実に開口内に収まり、誤組み付けの防止が図られる。また、突発的な高流量等により、弁体リフト量が想定以上となってしまった場合も、テーパ部によって弁体が押し上げられるため、その後、確実に弁体が開口内に収まり、組み付け後における弁体の位置ズレ防止も図られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧力制御装置によれば、小径流路と大径流路とを有し、両者の接続部に大径流路に臨んで小径流路の開口が形成されたハウジングと、大径流路内に配置され小径流路の開口周縁部に当接する弁体と、弁体を周縁部に圧接させる弾性部材とを有する圧力制御装置にて、弁体の重心が常に開口周縁部よりも開口中心寄りの位置となるようにしたので、弁体が開口内に収まり易くなる。このため、弁体を組み付ける際に弁体を確実に開口内に収めることができ、弁体が開口から離脱する形での誤組み付けを防止できる。また、突発的な高流量等により、弁体リフト量が想定以上となってしまった場合も、その後、確実に弁体が開口内に収まるため、組み付け後における弁体の位置ズレも防止でき、圧力制御装置の製品信頼性を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明の他の圧力制御装置によれば、小径流路と大径流路とを有し、両者の接続部に大径流路に臨んで小径流路の開口が形成されたハウジングと、大径流路内に配置され小径流路の開口周縁部に当接する弁体と、弁体を周縁部に圧接させる弾性部材とを有する圧力制御装置にて、大径流路に、弁体が開口周縁部に当接した状態で弁体と当接するガイド部と、ガイド部の下流側に形成され下流側に向かって拡径するテーパ部とを設けると共に、このガイド部とテーパ部を大径流路の一方向側のみに配置したので、例えば、前記一方向側を下に向けて当該圧力制御装置を配置しても、弁体がガイド部によって支持され、弁体が開口から脱落しにくくなる。このため、弁体を組み付ける際に弁体を確実に開口内に収めることができ、弁体が開口から離脱する形での誤組み付けを防止できる。また、突発的な高流量等により、弁体リフト量が想定以上となってしまった場合も、テーパ部によって弁体が押し上げられ、その後、確実に弁体が開口内に収まるため、組み付け後における弁体の位置ズレも防止できる。従って、圧力制御装置の製品信頼性が向上すると共に、圧力制御装置を横方向に使用しても、弁体が開口から脱落しにくく、圧力制御装置のレイアウト性向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1であるプレッシャレギュレータ(圧力制御装置)の構成を示す断面図である。図1のプレッシャレギュレータ1は、例えば、自動二輪車等の燃料供給系に使用され、エンジンに送給される燃料の圧力を所定レベルに調整する。
【0019】
プレッシャレギュレータ1は、金属製のハウジング2内に、鋼球からなるボール(弁体)3とバルブスプリング(弾性部材)4を収容した構成となっている。ハウジング2内には、下流側(図中上方側)に大径流路5が、上流側に小径流路6が形成されている。大径流路5と小径流路6は互いに連通しており、ハウジング2内を流路方向(図1において上下方向)に貫通している。大径流路5内には、ボール3とバルブスプリング4が収容されている。大径流路5の小径流路6側の端部には、テーパ部7が形成されている。テーパ部7は、上流側から下流側に向かって拡径する形で設けられている。テーパ部7の上流側(下端)には、大径流路5に臨んで、小径流路6の開口8が形成されている。小径流路6の上流側の端部には、流入口(流体流入口)9が設けられている。
【0020】
プレッシャレギュレータ1では、ボール3は、小径の小径流路6と大径の大径流路5との境界部(接続部)に、小径流路6の開口8を塞ぐような形で設けられている。ボール3は、開口8の周縁部11に当接しており、小径流路6の孔径がすなわちバルブ受圧径となっている。なお、周縁部11には、ポンチングによりエッジを塑性変形させてバルブ面が形成されており、ボール3は、このバルブ面に密接する形で周縁部11に当接している。
【0021】
一方、大径流路5の下流側の端部は、流出口(流体流出口)12となっている。流出口12には、リテーナ13が固定されている。リテーナ13はリング状に形成されており、その上流側(下端面)にはバルブスプリング4の一端側が当接している。リテーナ13の中央部には、ハウジング2の内外を連通させる連通孔14が形成されている。また、リテーナ13の下面には、凹部15が形成されており、凹部15には、バルブスプリング4の外周部が圧入固定されている。
【0022】
一般に、バルブ式のプレッシャレギュレータに燃料が流れると、ボール周辺では燃料の流れが必ずしも均一とはならないため、ボールに回転力が加わり、バルブスプリングがボールと共に回転する場合がある。バルブスプリングが回転すると、バルブ部の開弁面積が安定せず制御特性が不安定になったり振動音が発生したりするおそれがあり、回転による擦れで摩耗等が発生する可能性がある。これに対し、プレッシャレギュレータ1では、バルブスプリング4が凹部15に圧入固定されているため、バルブスプリング4の回転が抑えられ、バルブの特性を安定させることができる。
【0023】
バルブスプリング4はコイルバネからなり、その他端側はボール3に当接している。ボール3は、バルブスプリング4の付勢力によって、通常時は開口8の周縁部11に圧接されている(閉弁状態)。これに対し、小径流路6側から流体圧が加わり流体圧がバルブスプリング4の付勢力に勝ると、ボール3が上方に移動し、周縁部11とボール3との間に隙間が生じ開弁状態となる。また、流体圧が低下しバルブスプリング4の付勢力が勝ると、バルブスプリング4の付勢力によってボール3が下方に移動して周縁部11に当接し、小径流路6を閉鎖して閉弁状態となる。
【0024】
ここで、本発明によるプレッシャレギュレータ1では、図7のプレッシャレギュレータ51に比して大径流路5の内径が小さくなっており、図1に示すように、ボール3の重心位置が開口8内の位置に来るように設定されている。すなわち、プレッシャレギュレータ1では、ボール3が大径流路5の内周壁5aに当接した状態で、その重心G(ここではボール中心と一致)が、常に周縁部11よりも開口8の中心寄りとなるように内周壁5aの位置(大径流路5の内径寸法)が設定されている。そこで、大径流路5の内径をD1(2×R1)、ボール3の直径をD2(2×R2)、開口8の内径(小径流路6の内径)をD3(2×R3)とすると、内周壁5aによってボール3の移動が規制され、ボール3の重心Gが周縁部11よりも中心寄りとなる条件は、
R1<R2+R3、すなわち、D1<D2+D3 (式1)
となり、プレッシャレギュレータ1はこれを満たすような寸法関係で形成されている。
【0025】
大径流路5の内径をこのような設定とし、ボール3の重心Gが周縁部11よりも開口8の中心寄りに配すると、図2に矢示したように、ボール3は常に開口8側に移動しようとする。このため、ボール3を組み付ける際、ボール3が確実に開口8に収まり、誤組み付けを避けることが可能となる。また、プレッシャレギュレータ1の作動時に突発的な高流量が流れ、ボール3のリフト量が想定以上となってしまった場合も、その後、確実にボール3が開口8に収まり、組み付け後におけるボール3の位置ズレも防止できる。従って、プレッシャレギュレータ1の製品信頼性が向上すると共に、図8(b)のように横方向に取り付けても、ボール3が開口8から脱落しにくく、プレッシャレギュレータ1のレイアウト性の向上も図られる。
【実施例2】
【0026】
次に、本発明の実施例2であるプレッシャレギュレータ21について説明する。図2は実施例2のプレッシャレギュレータ21の構成を示す断面図である。なお、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0027】
図2のプレッシャレギュレータ21もまた、ボール3の重心Gが周縁部11よりも開口8の中心寄りに配されている。ここでは、実施例1のプレッシャレギュレータ1よりもテーパ部22の角度θが大きく設定されており、ボール3はテーパ部22によって移動が規制される。すなわち、ボール3がテーパ部22に当接した状態で、その重心Gが、常に周縁部11よりも開口8の中心寄りとなるようにテーパ部22が設定されている。これにより、前述同様、ボール3が確実に開口8に収まるようになり、ボール3の誤組み付けや、組み付け後の位置ズレを防止できる。なお、プレッシャレギュレータ21においても、大径流路5の内径は実施例1と同様の設定となっている。
【実施例3】
【0028】
図3は、本発明の実施例3であるプレッシャレギュレータ23の構成を示す断面図である。図3のプレッシャレギュレータ23もまた、ボール3の重心Gが周縁部11よりも開口8の中心寄りに配されているが、ここでは、大径流路5が2段構成となっており、開口8に近い部位のみ(式1)の設定となっている。すなわち、大径流路5には、小径のボールガイド部24(小径部:内径D1)と、大径のリテーナ取付部25(大径部:内径D4>D1)が形成されており、ボール3はボールガイド部24によって移動が規制されている。ボールガイド部24の内周壁24aは、ボール3が内周壁24aに当接した状態で、ボール3の重心Gが開口8の周縁部11よりも開口8の中心寄りとなるような位置に設置されている。
【0029】
このような構成とすることにより、ボール3を確実に開口8に着座させることが可能となると共に、機能的に必要な部位のみ内径を最適寸法に設定できる。従って、例えば、リテーナ取付部25の内径D4を、図6のプレッシャレギュレータ51の大径流路内径と同径に設定すれば、リテーナ13等として従来品をそのまま使用でき、コスト的にも有利となる。
【実施例4】
【0030】
図4は、本発明の実施例4であるプレッシャレギュレータ26の構成を示す断面図である。図4のプレッシャレギュレータ26は、横向きでの使用を前提としており、ここでは、大径流路5の開口8に近い部位に、ガイド部27が形成されている。また、ガイド部27の下流側(図中右側)には、ガイド部27に連続する形でテーパ部28が形成されている。この場合、ガイド部27やテーパ部28は、プレッシャレギュレータ26の下方部位にのみ設けられており、ガイド部27の半径R5は、ボール3の半径R2と等しく設定されている(R5=R2)。また、テーパ部28の勾配は開口8に近接するテーパ部7よりも緩く(傾斜角θが大きく)設定されている。
【0031】
プレッシャレギュレータ26では、このように大径流路5の下方側にガイド部27を設け、その内径をボール3の半径と等しく設定することにより、ボール3はガイド部27によって下方から支持される。また、ガイド部27に連続してテーパ部28を設けることにより、バルブスプリング4の付勢力によってボール3が常に上方に押し上げられる。従って、ボール3は、下方に脱落することなく確実に開口8に収まり、ボール3の誤組み付けを防止できる。また、図4に矢示したように、ボール3が開口8から離れても、ガイド部27によって案内される形で開口8に向かって移動するため、リフト量が想定以上となってしまった場合もボール3が確実に開口8に戻り、組み付け後の位置ズレも防止することができる。
【0032】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、エンジンの燃料供給系に使用されるプレッシャレギュレータを例にとって説明したが、その用途はエンジンには限定されず、種々の油圧回路に適用可能である。また、調圧対象となる流体は、ガソリンや軽油などのエンジン燃料には限定されず、水や空気、油圧回路の作動油などにも適用可能である。さらに、前述の実施例では、弁体として球状の鋼球を用いたプレッシャレギュレータについて述べたが、下端部を半球状としたスリーブ状の部材などを弁体として用いることも可能であり、プレッシャレギュレータ自体の構成も前述のものには限定されない。
【0033】
加えて、前述の実施例では、リテーナ13の下面に凹部15を設け、そこにバルブスプリング4の一端側を圧入固定する構成を示したが、図5(a)に示すように、リテーナ13の下面にスプリング固定部41を突設させ、そこにバルブスプリング4の内周を圧入固定して回転止めを行っても良い。これにより、前述同様、バルブスプリング4の回転が抑えられ、バルブの特性を安定させることができる。また、図5(b)に示すように、バルブスプリング4の一端側にフック42を形成し、これをリテーナ13に形成したフック孔13aに挿入する形でバルブスプリング4の回転を止めても良い。
【0034】
一方、前述の実施例では、ハウジング2に小径流路6を形成する形で、開口8を形成した例を示したが、図6(a)に示すように、シートリング43を別途形成し、それを大径流路44の底部(テーパ部7は形成しない)に圧入固定して開口8を形成しても良い。この場合、シートリング43の中央孔43aは小径流路6の一部となり、その開口が開口8となる。
【0035】
さらに、図6(b)に示すように、リテーナ13とシートリング43を同一部品として、両者の共用化を図ることも可能である。これにより、部品仕様を削減することができ、製品組付時の部品取り違えミスも防止することができる。共用部品45は、底部に中央孔45aを有する有底円筒形状となっており、大径流路44の内周壁44aに圧入固定される。その際、共用部品45では、プレス加工時に生じるエッジが周壁部45bの外周側となるように形成されており、このエッジが圧入後の抜け止めとして機能する。この場合も、上流側に配置された共用部品45の中央孔45aは小径流路6の一部となり、その開口が開口8となる。
【0036】
なお、前述の実施例では、バルブスプリング4として、軸方向に沿って径の変わらないコイルバネを使用したものを示したが、図5,6の変形例を含め、上方(下流側)に向けて外径が拡大するテーパスプリングを使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1であるプレッシャレギュレータ(圧力制御装置)の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例2であるプレッシャレギュレータ(圧力制御装置)の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例3であるプレッシャレギュレータ(圧力制御装置)の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例4であるプレッシャレギュレータ(圧力制御装置)の構成を示す断面図である。
【図5】本発明によるプレッシャレギュレータの変形例を示す説明図である。
【図6】本発明によるプレッシャレギュレータの他の変形例を示す説明図である。
【図7】ボールを小径流路の開口周縁部に当接させる構成のバルブ式プレッシャレギュレータの構成を示す断面図である。
【図8】図7のプレッシャレギュレータにおける問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 プレッシャレギュレータ(圧力制御装置)
2 ハウジング
3 ボール(弁体)
4 バルブスプリング(弾性部材)
5 大径流路
5a 内周壁
6 小径流路
7 テーパ部
8 開口
9 流入口(流体流入口)
11 周縁部
12 流出口(流体流出口)
13 リテーナ
13a フック孔
14 連通孔
15 凹部
21 プレッシャレギュレータ(圧力制御装置)
22 テーパ部
23 プレッシャレギュレータ(圧力制御装置)
24 ボールガイド部
24a 内周壁
25 リテーナ取付部
26 プレッシャレギュレータ(圧力制御装置)
27 ガイド部
28 テーパ部
41 スプリング固定部
42 フック
43 シートリング
43a 中央孔
44 大径流路
44a 内周壁
45 共用部品
45a 中央孔
45b 周壁部
51 プレッシャレギュレータ
52 ハウジング
53 ボール
54 バルブスプリング
55 大径流路
56 小径流路
57 テーパ部
58 開口
59 周縁部
61 流入口
62 流出口
63 リテーナ
D1 大径流路内径
D2 ボール直径
D3 開口内径
D4 リテーナ取付部内径
R5 ガイド部半径
G ボール重心
θ テーパ部傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入口を備えた小径流路と、流体流出口を備え前記小径流路と連通して設けられた大径流路とを有し、前記小径流路と前記大径流路との接続部に、前記大径流路に臨んで前記小径流路の開口が形成されたハウジングと、
前記大径流路内に配置され、前記開口の周縁部に当接することにより前記小径流路を閉鎖する弁体と、
前記大径流路内に配置され、前記弁体を前記周縁部に圧接させる弾性部材とを有してなる圧力制御装置であって、
前記弁体は、その重心が常に前記周縁部よりも前記開口の中心寄りの位置となるように配置されることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧力制御装置において、前記大径流路の内周壁は、前記弁体が前記内周壁に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなる位置に設置されることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の圧力制御装置において、前記大径流路の内径をD1、前記弁体の直径をD2、前記開口の内径をD3としたとき、前記D1は、前記D2と前記D3の和よりも小さい(D1<D2+D3)ことを特徴とする圧力制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の圧力制御装置において、前記大径流路は、前記小径流路側の端部に下流側に向かって拡径するテーパ部を有し、前記テーパ部は、前記弁体が前記テーパ部に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなるように設置されることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の圧力制御装置において、前記大径流路は、前記小径流路側の端部に形成された小径部と、前記小径部の下流側に形成された大径部とを有し、前記小径部の内周壁は、前記弁体が前記内周壁に当接した状態で、前記弁体の重心が前記周縁部よりも前記開口の中心寄りとなる位置に設置されることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項6】
流体流入口を備えた小径流路と、流体流出口を備え前記小径流路と連通して設けられた大径流路とを有し、前記小径流路と前記大径流路との接続部に、前記大径流路に臨んで前記小径流路の開口が形成されたハウジングと、
前記大径流路内に配置され、前記開口の周縁部に当接することにより前記小径流路を閉鎖する弁体と、
前記大径流路内に配置され、前記弁体を前記周縁部に圧接させる弾性部材とを有してなる圧力制御装置であって、
前記大径流路は、該大径流路の前記小径流路側の端部に形成され、前記弁体が前記周縁部に当接した状態で前記弁体と当接するガイド部と、前記ガイド部の下流側に形成され、下流側に向かって拡径するテーパ部とを有し、前記ガイド部と前記テーパ部は、前記大径流路の一方向側のみに配置されることを特徴とする圧力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71294(P2010−71294A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3785(P2007−3785)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】