説明

圧力容器およびその製造方法

【課題】 口金取付部の衝撃値や疲労強度が増大した圧力容器を提供する。
【解決手段】 圧力容器1は、筒状の胴2と、胴2の両端開口を閉鎖する鏡板3、4と、いずれか一方の鏡板3に一体に形成された口金取付部5とよりなる。口金取付部5において母材となる金属に、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより改質処理を施し、結晶粒を微細化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車産業、住宅産業、輸送機械産業等において、燃料となる水素ガスや天然ガスを貯蔵したり、酸素ガス供給システムにおいて酸素ガスを貯蔵したり、あるいは工業用ガスを貯蔵したりするのに用いられる圧力容器およびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
上述した圧力容器に入れられる高圧ガスの圧力は主として20〜35MPa程度であるが、将来的には70MPa程度になると考えられている。
【0004】
従来、この種の圧力容器として、たとえばJIS A6061などのアルミニウムからなるカップ状ブランクの胴部を熱間においてフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して、底付きの円筒状中間ブランクを形成し、中間ブランクの開口側端部をスピニング成形して鏡部を一体に形成するとともにその中央部に口栓部を設け、口栓部に口金取付用の穴を形成し、その後熱処理が施されたものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この圧力容器においては、熱間加工の後に熱処理を施しているので、スピニング成形のような強加工が施された部分、特に口栓部の結晶粒が粗大化し、衝撃値や疲労強度が低下する。したがって、この圧力容器においては、口栓部での破壊などの危険性が高まる。
【特許文献1】特開平11−104762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、口金取付部の衝撃値や疲労強度が増大した圧力容器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)筒状の胴と、胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなり、いずれか一方の鏡板に口金取付部が一体に形成されている圧力容器において、
口金取付部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている圧力容器。
【0009】
2)口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている上記1)記載の圧力容器。
【0010】
3)口金取付部の母材となる金属の改質処理が施された部分の結晶粒径が90μm以下である上記1)または2)記載の圧力容器。
【0011】
4)胴、両鏡板および口金取付部の母材となる金属がアルミニウムからなる上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0012】
5)口金取付部の改質処理が、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより行われている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0013】
6)胴および両鏡板が一体に形成されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0014】
7)一方の鏡板を構成する第1構成部材と、胴および他方の鏡板を構成する第2構成部材とよりなり、第1構成部材に口金取付部が一体に形成され、第1構成部材における第2構成部材との接合端部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0015】
8)第1構成部材における第2構成部材との接合端部の全肉厚の50〜80%に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている上記7)記載の圧力容器。
【0016】
9)第1構成部材における第2構成部材との接合端部の母材となる金属の改質処理が施された部分の結晶粒径が90μm以下である上記7)または8)記載の圧力容器。
【0017】
10)第1構成部材における第2構成部材との接合端部の改質処理が、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより行われている上記7)〜9)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0018】
11)上記1)〜10)のうちのいずれかに記載された圧力容器の外周面が、補強繊維に樹脂が含浸硬化させられてなる繊維強化樹脂層で覆われている強化圧力容器。
【0019】
12)繊維強化樹脂層が、補強繊維を胴の長さ方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層、および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層を備えている上記11)記載の強化圧力容器。
【0020】
13)内部に水素吸蔵物質が入れられている上記11)または12)記載の強化圧力容器。
【0021】
14)燃料水素用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用強化圧力容器が上記11)〜13)のうちのいずれかに記載の強化圧力容器からなる燃料電池システム。
【0022】
15)天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用強化圧力容器が上記11)または12)記載の強化圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【0023】
16)酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素ガス用強化圧力容器が上記11)または12)記載の強化圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【0024】
17)金属素材に熱間加工を施すことによって、筒状の胴、胴に一体に形成されかつ胴の両端開口を閉鎖する鏡板、およびいずれか一方の鏡板に一体に形成された口金取付部からなる圧力容器半製品をつくった後圧力容器半製品に熱処理を施し、ついで摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から圧力容器半製品の口金取付部に埋入し、プローブと圧力容器半製品とを相対的に移動させることにより、口金取付部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施すことを含む圧力容器の製造方法。
【0025】
18)摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をDmm、圧力容器半製品の口金取付部の肉厚をTmmとした場合、D≦3Tの条件を満たす上記17)記載の圧力容器の製造方法。
【0026】
19)摩擦攪拌接合用工具のプローブ径と、圧力容器半製品の口金取付部の肉厚とを等しくしておく上記17)または18)記載の圧力容器の製造方法。
【0027】
20)口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す上記17)〜19)のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【0028】
21)金属素材に熱間加工を施すことによって、一方の鏡板および鏡板に一体に形成された口金取付部からなる第1構成部材をつくるとともに、金属素材に熱間加工を施すことによって、胴および胴に一体に形成されかつ胴の一端開口を閉鎖する他方の鏡板からなる第2構成部材つくった後両構成部材に熱処理を施し、ついで摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から第1構成部材の口金取付部に埋入し、プローブと第1構成部材とを相対的に移動させることにより、口金取付部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施し、さらに摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から第1構成部材における第2構成部材との接合端部に埋入し、プローブと第1構成部材とを相対的に移動させることにより、第1構成部材における第2構成部材との接合端部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施し、その後第1構成部材と第2構成部材とを接合することを含む圧力容器の製造方法。
【0029】
22)摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をDmm、第1構成部材の口金取付部の肉厚をTmmとした場合、D≦3Tの条件を満たす上記21)記載の圧力容器の製造方法。
【0030】
23)摩擦攪拌接合用工具のプローブ径と、第1構成部材の口金取付部の肉厚とを等しくしておく上記21)または22)記載の圧力容器の製造方法。
【0031】
24)口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す上記21)〜23)のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【0032】
25)摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をdmm、第1構成部材における第2構成部材との接合端部の肉厚をtmmとした場合、d≦3tの条件を満たす上記21)〜24)のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【0033】
26)第1構成部材における第2構成部材との接合端部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す上記21)〜25)のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【0034】
27)金属素材が熱処理型アルミニウムからなる上記17)〜26)のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【発明の効果】
【0035】
上記1)の圧力容器によれば、口金取付部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されているので、口金取付部の衝撃値および疲労強度が増大し、この圧力容器の口金取付部での破壊の危険性が低下する。
【0036】
上記2)の圧力容器によれば、この圧力容器を用いた圧力容器の口金取付部での破壊の危険性が確実に低下する。
【0037】
上記3)の圧力容器によれば、この圧力容器を用いた圧力容器の口金取付部での破壊の危険性が確実に低下する。
【0038】
上記5)の圧力容器によれば、口金取付部の改質処理を比較的簡単に行うことができる。
【0039】
上記7)の圧力容器によれば、第1構成部材における第2構成部材との接合端部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されているので、当該部分の衝撃値および疲労強度が増大し、この圧力容器の当該部分での破壊の危険性が低下する。
【0040】
上記8)の圧力容器によれば、第1構成部材における第2構成部材との接合端部での破壊の危険性が確実に低下する。
【0041】
上記9)の圧力容器によれば、第1構成部材における第2構成部材との接合端部での破壊の危険性が確実に低下する。
【0042】
上記10)の圧力容器によれば、第1構成部材における第2構成部材との接合端部の改質処理を比較的簡単に行うことができる。
【0043】
上記17)〜19)の圧力容器の製造方法によれば、上記1)、3)〜6)の圧力容器を比較的簡単に製造することができる。
【0044】
上記20)の圧力容器の製造方法によれば、上記2)の圧力容器を比較的簡単に製造することができる。
【0045】
上記21)〜25)の圧力容器の製造方法によれば、上記7)、9)および10)の圧力容器を比較的簡単に製造することができる。
【0046】
上記26)の圧力容器の製造方法によれば、上記8)の圧力容器を比較的簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
実施形態1
この実施形態は図1〜図5に示すものである。
【0049】
図1は実施形態1の圧力容器を示し、図2は圧力容器を使用した強化圧力容器を示す。図3〜図5は圧力容器の製造方法を示す。
【0050】
図1において、圧力容器(1)は、円筒状の胴(2)と、胴(2)の両端開口を閉鎖する鏡板(3)(4)と、いずれか一方の鏡板(3)に一体に形成されかつ圧力容器(1)の内外を通じさせる貫通穴(5a)を有する円筒状口金取付部(5)とよりなる。図示は省略したが、口金取付部(5)の貫通穴(5a)の内周面にはめねじが形成されている。
【0051】
圧力容器(1)は、たとえばJIS A6000系合金、JIS A2000系合金、JIS A7000系合金などの熱処理型アルミニウムにより、胴(2)、両鏡板(3)(4)および口金取付部(5)が一体に形成されている。
【0052】
口金取付部(5)においては、その外周面側から母材となるアルミニウムに改質処理が施されて結晶粒が微細化されており、口金取付部(5)の衝撃値や疲労強度が増大している。改質処理部分を(X)で示す。口金取付部(5)の改質処理は、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより行われている。改質処理が施されて結晶粒が微細化されている範囲は、口金取付部(5)の外周面から全肉厚の50〜80%の範囲内であることが好ましい。改質処理が施されて結晶粒が微細化されている範囲が、口金取付部(5)の外周面から全肉厚の50%未満であると、口金取付部(5)の衝撃値や疲労強度を増大させる効果が十分ではないことがあり、80%を越えると口金取付部(5)の内径の寸法精度が低下するおそれがある。また、口金取付部(5)における改質処理が施された部分の結晶粒径は、衝撃値や疲労強度を増大させる効果が十分となるように、90μm以下であることが好ましい。なお、当該部分の結晶粒径の下限値は20μm程度である。
【0053】
圧力容器(1)は、たとえばスキューバダイビングのエアータンクに用いられる場合には、口金取付部(5)の貫通穴(5a)内周面のめねじを利用して口金バルブが取り付けられた状態で使用される。
【0054】
また、圧力容器(1)は、図2に示すように、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(6)で覆われ、強化圧力容器(7)として用いられる。図示は省略したが、繊維強化樹脂層(6)は、補強繊維を胴(2)の長さ方向とほぼ直角をなすように巻き付けてなるフープ巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたフープ巻補強層と、補強繊維を胴(2)の長さ方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻補強層とよりなる。各補強層を構成する繊維としては、たとえばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが用いられるが、カーボン繊維を用いることが好ましい。また、各補強層を構成する樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。各補強層は、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた補強繊維、あるいは樹脂を含浸させた補強繊維の束を巻き付けた後、樹脂を硬化させることにより形成される。
【0055】
強化圧力容器(7)は、燃料水素ガス用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素ガス用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガス用強化圧力容器として用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0056】
また、強化圧力容器(7)は、天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガス用強化圧力容器として用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0057】
さらに、強化圧力容器(7)は、酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガス用強化圧力容器として用いられる。
【0058】
以下、図3〜図5を参照して、圧力容器(1)の製造方法について説明する。
【0059】
まず、円筒状のアルミニウム押出形材を所定の長さに切断して円筒状素材をつくった後、筒状素材の一端部に熱間スピニング加工を施すことにより、一方の鏡板(3)と、貫通穴(5a)を有する口金取付部(5)とを形成する。ここで、口金取付部(5)の長さは、図1に示す完成品の圧力容器(1)における口金取付部(5)の長さよりも長くしておく。また、筒状素材の他端部に熱間スピニング加工を施すことにより他方の鏡板(4)を形成する。こうして、胴(2)、両鏡板(3)(4)および口金取付部(5)からなる圧力容器半製品(10)を製造する。
【0060】
ついで、圧力容器半製品(10)の口金取付部(5)に、摩擦攪拌接合用工具(11)を用いて改質処理を施し、結晶粒を微細化する(図3参照)。
【0061】
摩擦攪拌接合用工具(11)は、先端部にテーパ部を介して小径部(12a)が同軸上に一体に形成された円柱状回転子(12)と、回転子(12)の小径部(12a)の端面に小径部(12a)と同軸上に一体に形成されかつ小径部(12a)よりも小径であるピン状プローブ(13)とを備えている。回転子(12)およびプローブ(13)は、圧力容器半製品(10)よりも硬質でかつ摩擦攪拌時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱性を有する材料で形成されている。
【0062】
そして、摩擦攪拌接合用工具(11)の回転子(12)およびプローブ(13)を500〜3000rpmで回転させながら、圧力容器半製品(10)の口金取付部(5)の基端寄りの部分に外周面側からプローブ(13)を埋入する(図4参照)。ここで、摩擦攪拌接合用工具(11)の回転子(12)の端面におけるプローブ(13)の周囲に形成された肩部(12b)の直径をDmm、口金取付部(5)の肉厚をTmmとした場合、D≦3Tの条件を満たすことが好ましい。D>3Tの場合、口金取付部(5)への入熱量が過大となり、軟化域が大きくなって口金取付部(5)の変形が生じるおそれがある。また、プローブ(13)の径(P1)を口金取付部(5)の肉厚Tmmと等しくしておくことが好ましい。この場合、口金取付部(5)の厚み全体にわたってアルミニウムの十分な塑性流動層が得られる。また、プローブ(13)の長さは、口金取付部(5)の全肉厚の50〜80%の範囲に改質処理を施しうるような長さとしておくことが好ましい。
【0063】
ついで、圧力容器半製品(10)を軸線の周りに回転させながら、摩擦攪拌接合用工具(11)を口金取付部(5)の先端側(図4の左側)に直線的に移動させる。ここで、圧力容器半製品(10)の軸線周りの回転は、口金取付部(5)の外周面の周速が10〜30cpmとなるように行うことが好ましい。すると、プローブ(13)の回転により発生する摩擦熱と、口金取付部(5)と肩部(12b)との摺動により発生する摩擦熱とによって、圧力容器半製品(10)の母材となる金属は軟化するとともに、この軟化部がプローブ(13)の回転力を受けて攪拌混合され、さらにこの軟化部がプローブ(13)の通過溝を埋めるように塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化するという現象が、プローブ(13)の移動に伴って繰り返されることにより、母材となる金属が摩擦攪拌混合され、改質されて結晶粒が微細化する。
【0064】
そして、プローブ(13)が口金取付部(5)の先端部に至ったときに、プローブ(13)を引き抜く。プローブ(13)の引き抜きにより口金取付部(5)の外周面に穴(14)が形成されるので、口金取付部(5)の穴(14)が存在する部分を切断する(図5参照)。こうして、圧力容器(1)が製造される。
【0065】
次に、実施形態1に関しての具体的実験例について説明する。
【0066】
JIS A6061製アルミニウム押出形材からなる内径200mm、肉厚4.5mm、長さ800mmの円筒状素材を用意した後、円筒状素材の一端部に、スピニング温度を変えて熱間スピニング加工を施すことにより、一方の鏡板(3)と貫通穴(5a)を有する口金取付部(5)とを形成するとともに、円筒状素材の他端部に熱間スピニング加工を施すことにより他方の鏡板(4)を形成し、胴(2)、両鏡板(3)(4)および口金取付部(5)からなる圧力容器半製品(10)を製造した。ここで、口金取付部(5)の肉厚Tは10mm、長さは40mmである。ついで、圧力容器半製品(10)を530℃に加熱して焼入処理を施した後、180℃に8時間保持する焼戻し処理を施した。そして、口金取付部(5)の結晶粒径を測定した。
【0067】
また、上記と同様にして得られた圧力容器半製品(10)を530℃に加熱して焼入処理を施した後、180℃に8時間保持する焼戻し処理を施した。ついで、プローブ(13)の直径10mm、プローブ(13)の長さ8mm、肩部(12b)の直径24mmである摩擦攪拌接合用工具(11)を使用し、回転子(12)およびプローブ(13)を1500rpmで回転させながら、圧力容器半製品(10)の口金取付部(5)の基端寄りの部分に外周面側からプローブ(13)を埋入した。ついで、圧力容器半製品(10)を、口金取付部(5)の外周面の周速が30cpmとなるように、軸線の周りに回転させながら、摩擦攪拌接合用工具(11)のプローブ(13)を口金取付部(5)の先端側に移動させ、口金取付部(5)を摩擦攪拌して改質処理を施した。その後、プローブ(13)が口金取付部(5)の先端部に至ったときに引き抜き、口金取付部(5)の穴(14)が存在する部分を切断した。そして、口金取付部(5)の結晶粒径を測定した。
【0068】
表1に、スピニング温度と、改質処理無しの場合および有りの場合の結晶粒径を示す。
【表1】

【0069】
実施形態2
この実施形態は図6〜図9に示すものである。
【0070】
図6は実施形態2の圧力容器を示し、図7〜図9は圧力容器の製造方法を示す。
【0071】
図6において、圧力容器(20)は、一方の鏡板(3)および鏡板(3)に一体に形成された口金取付部(5)を構成する第1構成部材(21)と、胴(2)および胴(2)に一体に形成されかつ胴(2)の一端開口を閉鎖する他方の鏡板(4)を構成する第2構成部材(22)とよりなる。
【0072】
第1構成部材(21)は熱間鍛造により形成されたものであり、圧力容器(20)の内外を通じさせる貫通穴(5a)を有する口金取付部(5)が一体に形成されている。第2構成部材(22)はカップ状金属素材に熱間においてフローフォーミングによりしごき加工を施すことによって形成されたものであり、一端が開口するとともに他端が閉鎖された有底円筒状体である。第1構成部材(21)と第2構成部材(22)とは、両者の突き合わせ部において、適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により全周にわたって接合されている。
【0073】
両構成部材(21)(22)は、それぞれたとえばJIS A6000系合金、JIS A2000系合金、JIS A7000系合金などの熱処理型アルミニウムにより形成されている。両構成部材(21)(22)は同じ材料で形成されていてもよいし、あるいは異なる材料で形成されていてもよい。
【0074】
第1構成部材(21)の口金取付部(5)においては、実施形態1の場合と同様にして、その外周面側から母材となるアルミニウムに改質処理が施されて結晶粒が微細化されており、口金取付部(5)の衝撃値や疲労強度が増大している。
【0075】
また、第1構成部材(21)における第2構成部材(22)との接合端部(23)においては、その外周面側から母材となるアルミニウムに改質処理が施されて結晶粒が微細化されており、接合端部(23)の衝撃値や疲労強度が増大している。改質処理部を(X1)で示す。第1構成部材(21)の接合端部(23)の改質処理は、摩擦攪拌接合用工具(11)のプローブ(13)を用いて摩擦攪拌することにより行われている。改質処理が施されて結晶粒が微細化されている範囲は、接合端部(23)の外周面から全肉厚の50〜80%の範囲内であることことが好ましい。改質処理が施されて結晶粒が微細化されている範囲が、接合端部(23)の外周面から全肉厚の50%未満であると、接合端部(23)の衝撃値や疲労強度を増大させる効果が十分ではないことがあり、80%を越えると接合端部(23)の内径の寸法精度が低下するおそれがある。また、接合端部(23)における改質処理が施された部分の結晶粒径は、衝撃値や疲労強度を増大させる効果が十分となるように、90μm以下であることが好ましい。なお、当該部分の結晶粒径の下限値は20μm程度である。
【0076】
圧力容器(20)は、たとえばスキューバダイビングのエアータンクに用いられる場合には、口金取付部(5)の貫通穴(5a)の内周面のめねじを利用して口金バルブが取り付けられた状態で使用される。
【0077】
また、圧力容器(20)は、実施形態1の場合と同様に、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層で覆われ、強化圧力容器として用いられる。
【0078】
強化圧力容器は、燃料水素ガス用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素ガス用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガス用強化圧力容器として用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0079】
また、強化圧力容器は、天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガス用強化圧力容器として用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0080】
さらに、強化圧力容器は、酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガス用強化圧力容器として用いられる。
【0081】
以下、図7〜図9を参照して、圧力容器(20)の製造方法について説明する。
【0082】
まず、アルミニウム製素材に熱間鍛造加工を施して、一方の鏡板(3)と口金取付部(5)とよりなる第1構成部材(21)をつくる。第1構成部材(21)の口金取付部(5)の長さは、図6に示す完成品の圧力容器(20)における口金取付部(5)の長さよりも長くしておく。また、第1構成部材(21)の口金取付部(5)とは反対側の端部の長さは、図6に示す完成品の圧力容器(20)における接合端部(23)の長さよりも長くしておく。一方、アルミニウム製カップ状素材に熱間においてフローフォーミングによりしごき加工を施して、胴(2)と他方の鏡板(4)とよりなる第2構成部材(22)をつくる。
【0083】
ついで、第1構成部材(21)の口金取付部(5)に、実施形態1の場合と同様にして摩擦攪拌接合用工具(11)を用いて改質処理を施し、結晶粒を微細化する。また、第1構成部材(21)における第2構成部材(22)との接合端部(23)に、摩擦攪拌接合用工具(11)を用いて改質処理を施し、結晶粒を微細化する(図7参照)。すなわち、摩擦攪拌接合用工具(11)の回転子(12)およびプローブ(13)を500〜3000rpmで回転させながら、第1構成部材(21)の接合端部(23)の口金取付部(5)寄りの部分に外周面側からプローブ(13)を埋入する(図8参照)。ここで、摩擦攪拌接合用工具(11)の回転子(12)の端面におけるプローブ(13)の周囲に形成された肩部(12b)の直径をdmm、接合端部(23)の肉厚をtmmとした場合、d≦3tの条件を満たすことが好ましい。d>3tの場合、接合端部(23)への入熱量が過大となり、軟化域が大きくなって接合端部(23)の変形が生じるおそれがある。また、プローブ(13)の径(P2)を接合端部(23)の肉厚tmmと等しくしておくことが好ましい。この場合、接合端部(23)の厚み全体にわたってアルミニウムの十分な塑性流動層が得られる。また、プローブ(13)の長さは、上合端部(23)の全肉厚の50〜80%の範囲に改質処理を施しうるような長さとしておくことが好ましい。
【0084】
ついで、第1構成部材(21)を軸線の周りに回転させながら、摩擦攪拌接合用工具(11)を接合端部(23)の第2構成部材(22)接合側(図8の右側)に直線的に移動させる。ここで、第1構成部材(21)の軸線周りの回転は、接合端部(23)の外周面の周速が10〜30cpmとなるように行うことが好ましい。すると、プローブ(13)の回転により発生する摩擦熱と、第1構成部材(21)と肩部(12b)との摺動により発生する摩擦熱とによって、第1構成部材(21)の母材となる金属は軟化するとともに、この軟化部がプローブ(13)の回転力を受けて攪拌混合され、さらにこの軟化部がプローブ(13)の通過溝を埋めるように塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化するという現象が、プローブ(13)の移動に伴って繰り返されることにより、母材となる金属が摩擦攪拌混合され、改質されて結晶粒が微細化する。
【0085】
そして、プローブ(13)が第1構成部材(21)の上記接合端部(23)の右端部に至ったときに、プローブ(13)を引き抜く。プローブ(13)の引き抜きにより第1構成部材(21)の外周面に穴(24)が形成されるので、第1構成部材(21)の穴(24)が存在する部分を切断する。こうして、第1構成部材(21)が製造される。
【0086】
なお、第2構成部材(22)における第1構成部材(21)との接合端部(23)にも、第1構成部材(21)の場合と同様にして、摩擦攪拌接合用工具(11)を用いて改質処理を施し、結晶粒を微細化しておいてもよい。
【0087】
その後、第1構成部材(21)と第2構成部材(22)とを、適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により接合する。こうして、圧力容器(20)が製造される。
【0088】
上記実施形態2において、第2構成部材(22)としては、胴(2)と他方の鏡板(4)とが一体に形成されたものが用いられているが、これに代えて、別々に形成された胴(2)と鏡板(4)とが接合されたものが第2構成部材(22)として用いられてもよい。この場合、胴(2)はたとえばアルミニウム押出形材により形成され、鏡板(4)はアルミニウム素材に熱間鍛造加工を施すことにより形成される。また、この場合、鏡板(4)における胴(2)との接合端部(23)、および胴(2)における鏡板(4)との接合端部(23)に、それぞれ第1構成部材(21)の場合と同様にして、摩擦攪拌接合用工具(11)を用いて改質処理を施し、結晶粒を微細化しておいてもよい。
【0089】
上記2つの実施形態において、圧力容器(1)(20)の胴(2)は円筒状であるが、これに限定されるものではなく、胴はたとえば横断面だ円形(数学的に定義されるだ円形だけではなく、だ円形に近い形状、たとえば長円形も含まれる。)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】この発明の実施形態1の圧力容器を示す斜視図である。
【図2】図1の圧力容器を用いた強化圧力容器を示す縦断面図である。
【図3】図1の圧力容器を製造する方法を示し、圧力容器半製品の口金取付部に摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入する前の状態の斜視図である。
【図4】図1の圧力容器を製造する方法を示し、圧力容器半製品の口金取付部に摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した状態の部分拡大縦断面図である。
【図5】図1の圧力容器を製造する方法を示し、圧力容器半製品の口金取付部から摩擦攪拌接合用工具のプローブを引き抜き、これにより形成される穴が存在する部分を切断した状態の斜視図である。
【図6】この発明の実施形態2の圧力容器を示す斜視図である。
【図7】図6の圧力容器を製造する方法を示し、第1構成部材における第2構成部材との接合端部に摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入する前の状態の斜視図である。
【図8】図6の圧力容器を製造する方法を示し、第1構成部材における第2構成部材との接合端部に摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した状態の部分拡大縦断面図である。
【図9】図6の圧力容器を製造する方法を示し、第1構成部材における第2構成部材との接合端部から摩擦攪拌接合用工具のプローブを引き抜き、これにより形成される穴が存在する部分を切断した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
(1)(20):圧力容器
(2):胴
(3)(4):鏡板
(5):口金取付部
(6):繊維強化樹脂層
(7):強化圧力容器
(10):圧力容器半製品
(11):摩擦攪拌接合用工具
(12):回転子
(12b):肩部
(13):プローブ
(21):第1構成部材
(22):第2構成部材
(23):第1構成部材における第2構成部材との接合端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴と、胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなり、いずれか一方の鏡板に口金取付部が一体に形成されている圧力容器において、
口金取付部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている圧力容器。
【請求項2】
口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている請求項1記載の圧力容器。
【請求項3】
口金取付部の母材となる金属の改質処理が施された部分の結晶粒径が90μm以下である請求項1または2記載の圧力容器。
【請求項4】
胴、両鏡板および口金取付部の母材となる金属がアルミニウムからなる請求項1〜3のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項5】
口金取付部の改質処理が、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより行われている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項6】
胴および両鏡板が一体に形成されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項7】
一方の鏡板を構成する第1構成部材と、胴および他方の鏡板を構成する第2構成部材とよりなり、第1構成部材に口金取付部が一体に形成され、第1構成部材における第2構成部材との接合端部において母材となる金属に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項8】
第1構成部材における第2構成部材との接合端部の全肉厚の50〜80%に改質処理が施され、結晶粒が微細化されている請求項7記載の圧力容器。
【請求項9】
第1構成部材における第2構成部材との接合端部の母材となる金属の改質処理が施された部分の結晶粒径が90μm以下である請求項7または8記載の圧力容器。
【請求項10】
第1構成部材における第2構成部材との接合端部の改質処理が、摩擦攪拌接合用工具のプローブを用いて摩擦攪拌することにより行われている請求項7〜9のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれかに記載された圧力容器の外周面が、補強繊維に樹脂が含浸硬化させられてなる繊維強化樹脂層で覆われている強化圧力容器。
【請求項12】
繊維強化樹脂層が、補強繊維を胴の長さ方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層、および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層を備えている請求項11記載の強化圧力容器。
【請求項13】
内部に水素吸蔵物質が入れられている請求項11または12記載の強化圧力容器。
【請求項14】
燃料水素用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用強化圧力容器が請求項11〜13のうちのいずれかに記載の強化圧力容器からなる燃料電池システム。
【請求項15】
天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用強化圧力容器が請求項11または12記載の強化圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【請求項16】
酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素ガス用強化圧力容器が請求項11または12記載の強化圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【請求項17】
金属素材に熱間加工を施すことによって、筒状の胴、胴に一体に形成されかつ胴の両端開口を閉鎖する鏡板、およびいずれか一方の鏡板に一体に形成された口金取付部からなる圧力容器半製品をつくった後圧力容器半製品に熱処理を施し、ついで摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から圧力容器半製品の口金取付部に埋入し、プローブと圧力容器半製品とを相対的に移動させることにより、口金取付部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施すことを含む圧力容器の製造方法。
【請求項18】
摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をDmm、圧力容器半製品の口金取付部の肉厚をTmmとした場合、D≦3Tの条件を満たす請求項17記載の圧力容器の製造方法。
【請求項19】
摩擦攪拌接合用工具のプローブ径と、圧力容器半製品の口金取付部の肉厚とを等しくしておく請求項17または18記載の圧力容器の製造方法。
【請求項20】
口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す請求項17〜19のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【請求項21】
金属素材に熱間加工を施すことによって、一方の鏡板および鏡板に一体に形成された口金取付部からなる第1構成部材をつくるとともに、金属素材に熱間加工を施すことによって、胴および胴に一体に形成されかつ胴の一端開口を閉鎖する他方の鏡板からなる第2構成部材をつくった後両構成部材に熱処理を施し、ついで摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から第1構成部材の口金取付部に埋入し、プローブと第1構成部材とを相対的に移動させることにより、口金取付部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施し、さらに摩擦攪拌接合用工具のプローブを回転させつつ外周面側から第1構成部材における第2構成部材との接合端部に埋入し、プローブと第1構成部材とを相対的に移動させることにより、第1構成部材における第2構成部材との接合端部の母材となる金属を摩擦攪拌して結晶粒を微細化させる改質処理を施し、その後第1構成部材と第2構成部材とを接合することを含む圧力容器の製造方法。
【請求項22】
摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をDmm、第1構成部材の口金取付部の肉厚をTmmとした場合、D≦3Tの条件を満たす請求項21記載の圧力容器の製造方法。
【請求項23】
摩擦攪拌接合用工具のプローブ径と、第1構成部材の口金取付部の肉厚とを等しくしておく請求項21または22記載の圧力容器の製造方法。
【請求項24】
口金取付部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す請求項21〜23のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【請求項25】
摩擦攪拌接合用工具の円柱状回転子の端面におけるプローブの周囲に形成された肩部の直径をdmm、第1構成部材における第2構成部材との接合端部の肉厚をtmmとした場合、d≦3tの条件を満たす請求項21〜24のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【請求項26】
第1構成部材における第2構成部材との接合端部の全肉厚の50〜80%に改質処理を施す請求項21〜25のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。
【請求項27】
金属素材が熱処理型アルミニウムからなる請求項17〜26のうちのいずれかに記載の圧力容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−291986(P2006−291986A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109367(P2005−109367)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】