説明

圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス

【課題】
腐食性ガスおよび高湿度などの悪質な周囲環境から圧力応答方式タッチパネルを隔離し前記圧力応答方式タッチパネルを保護するための保護ボックスにおいて、従来タッチパネルの視認およびタッチボタンの押圧の都度必要であった保護ボックスの開閉操作を不必要とし、操作性および周囲環境からの保護の信頼性を改善する。
【解決手段】
保護ボックス蓋11Cに可撓性の透明材料を使用し、保護ボックス蓋11Cのタッチパネル2側に各タッチボタン3に対応した位置および数の透明な媒体スペーサ12を間隙D(D≧0)を介して配設することにより、機器操作者は保護ボックス蓋11Cを開くことなく、常時タッチパネル2を視認しながら保護ボックス蓋11Cの表面の押圧により媒体スペーサ12を介して対応するタッチボタン3を押圧することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電子機器や電子装置に使用される、抵抗膜方式などの圧力応答方式タッチパネルを用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル式のディスプレイをUIF(User Interface)とする装置は通常タッチパネルが露出している(たとえば非特許文献1参照)が、装置が腐食性ガスや高湿度などの雰囲気下で使用される場合は、タッチパネルの保護のためディスプレイを保護ボックスで覆って密閉し、雰囲気から隔離する。
【0003】
常時視認性を考慮する必要がない場合には板金筐体など不透明材料の保護ボックスを使用すれば良いが、視認性が必要な場合は保護ボックスのタッチパネル前面部分には透明材料を使用する。なお別法としてタッチパネル表面に保護フィルムを貼ってパネルを保護する方法もあるが、この方法はディスプレイ全体を周囲の腐食性ガスや高湿度雰囲気から保護する効果はない。
【0004】
図4は従来の扉付きの保護ボックスの一例である。ディスプレイ筐体1の前面は圧力応答方式のタッチパネル2となっている。タッチパネル2の表面には複数のタッチボタン3があり、機器の作動に必要な操作は手指等による押圧で行われる。前記のように悪環境からの保護のため、ディスプレイ筐体1は密閉構造の保護ボックス4内に適切な支持材(図示せず)を介して配設される。
【0005】
保護ボックス4はたとえば板金筐体の保護ボックス本体4Bと透明材料の開閉式の保護ボックス蓋4Cで構成される。通常は保護ボックス蓋4Cと保護ボックス本体4Bは密接され、ディスプレイ筐体1は外部環境から隔離されているので、機器操作時はタッチボタン3の押圧のため開閉式の保護ボックス蓋4Cを開く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】島津製作所カタログCO76−0070A、島津質量分析計型全自動可搬ドライ形ヘリウムリークディテクタ Model:MSE−2000R DRY
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では前記のとおり、透明な保護ボックス蓋4Cによってタッチパネル2の視認はできるが、タッチボタン3の押圧はできないので、たとえば液晶のタッチパネル2を備えたディスプレイ筐体1においてバックライト消灯時からの復帰操作を行いたい場合は、前記のようにその都度保護ボックス蓋4Cを開ける必要がある。また保護ボックス蓋4Cに不透明材料、たとえば金属材料を使用した場合には、タッチボタン3の操作が不必要な場合でもタッチパネル2の視認が必要の都度、保護ボックス蓋4Cの開閉作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が提供する圧力応答方式タッチパネル用保護ボックスでは、保護ボックス前面部を前記タッチパネル前面と空間を介して配設され可撓性材料からなる保護ボックス蓋で構成し、前記保護ボックス蓋の特定の位置の押圧により、タッチパネル上の特定のタッチボタンに対応した特定の位置を押圧する構造を備える。また前記保護ボックス蓋と前記タッチパネルの中間に媒体を配設する。
【0009】
また前記媒体の断面輪郭はタッチボタンの輪郭境界線の内方に設ける。あるいは媒体をシート形状に作製し当該シートはタッチボタンの輪郭境界線の外方に境界を有する切り抜き部を備える。またあるいはタッチボタンの輪郭境界線の周囲外方に配設された短冊形状の媒体を備える。また保護ボックスおよび媒体に、保護ボックス蓋外方からタッチパネルを視認できる透明材料を使用する。これらの手段によって、ディスプレイ筐体を密閉したままでディスプレイ筐体前面のタッチパネルの押圧が可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、前記のように保護ボックス蓋を開けることなく、ディスプレイ筐体を密閉したままでディスプレイ筐体前面のタッチパネルの押圧が可能になるため、腐食性ガスおよび高湿度などの悪質な周囲環境から隔離した状態で機器の操作が可能になり、操作性が向上しまた悪質な雰囲気からの保護の信頼性も改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例の構造を示す正面図(1)および側面図(2)である。
【図2】本発明の第2の実施例の媒体シートを示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例の媒体シートとタッチボタンの相互位置関係を示す斜視図である。
【図4】従来の圧力応答方式タッチパネル型保護ボックスの構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の第1の実施例である。ディスプレイ筐体1およびその前面のタッチパネル2はパネル支持材13で位置決めされ保護ボックス11内に配設される。保護ボックス11は保護ボックス蓋11Cおよび保護ボックス本体11Bから構成され、保護ボックス蓋11Cには可撓性の透明材料が使用される。
【0013】
タッチパネル2と空間を介して配設された保護ボックス蓋11Cのタッチパネル2側には、タッチボタン3に対応した同数の透明材料の媒体スペーサ12が、間隙Dを介してタッチバネル2の対応するタッチボタン3の前面に配設される。したがって機器操作者は保護ボックス蓋11Cを開くことなく、常時タッチパネル2を視認し、必要な場合は保護ボックス蓋11Cを閉止した状態で直ちに保護ボックス蓋11Cおよび媒体スペーサ12を介して対応するタッチボタン3を押圧できる。
【実施例2】
【0014】
図2は本発明の第2の実施例である。本例では図1の媒体スペーサ12に替えて、各タッチボタン3の位置および形状に対応した角形の切り抜き部15をもつ、透明且つ薄肉の媒体シート14を媒体として配設し、保護ボックス蓋11Cの押圧により切り抜き部15内の空隙部を介して目的のタッチボタン3を押圧するとともに、特定のタッチボタン3以外には押圧の影響が及ばない構造を提供する。
【実施例3】
【0015】
図3は本発明の第3の実施例である。本例ではタッチボタン3の周囲に薄肉の媒体板16を2個、媒体板17を3個配設している。本図はタッチボタン3との位置関係を示すためにタッチパネル2を斜視する角度から示しているが、媒体板16および媒体板17は図1、図2に示す媒体スペーサ12、媒体シート14と同様、保護ボックス蓋11C(図3には図示せず)に固着されており、保護ボックス蓋11Cの押圧により特定のタッチボタン3の押圧が行われる。なお以下、図1〜図3の媒体スペーサ12、媒体シート14、媒体板16、媒体板17を総称して単に各媒体と呼ぶ。
【0016】
本発明は上記の実施例に限定されるものではない。たとえば保護ボックス11とタッチボタン3の相互寸法を適切に選定可能な場合は、特に各媒体を設けずに保護ボックス蓋11Cの押圧により直接的に特定のタッチボタン3を押圧する構造も可能である。また各実施例において、保護ボックス蓋11Cおよび各媒体に不透明材料を使用した場合でも、保護ボックス蓋11Cの各タッチボタン3に対応する位置に印刷等の方法で対応するマークを貼付し、マークを押圧すれば操作の目的を達する。
【0017】
また図1では媒体スペーサ12とタッチパネル2の間に間隙Dを設けているが、各媒体とタッチパネル2相互が零に近い押圧で接触していても誤作動が生じない場合は間隙Dを設けなくても良い。また本発明では前記のように操作の都度保護ボックス蓋11Cを開閉する必要はないが、他の目的、たとえば保守点検などのために保護ボックス蓋11Cを開閉式に設けても良い。また保護ボックス蓋11Cの周辺部を可撓性のない材料の枠で補強し、この枠を保護ボックス本体11Bと密接または開閉可能な取り付けも可能である。
【0018】
また媒体スペーサ12の形状は多角形であってもよく、大きさもたとえばタッチボタン3より小さくして押圧効果を高めてもよい。図1〜図4には各2個のタッチボタン3が示されているが、本発明はタッチボタン3の数には限定されない。また図2の媒体シート14は必ずしも1枚である必要はなく、タッチパネル2の領域内で幾つかに分割されても良い。
【0019】
また切り抜き部15の形状も角形に限定されるものではなく、タッチボタン3の形状に応じて適切な形状に選択できる。また図3には2種類の媒体板が示されているが、媒体板の寸法、数は必要に応じて変更できる。また図3のように複数種類の媒体板をタッチボタン3の周囲に複数配設する代わりに、額縁形状の媒体板をタッチボタン3の周囲の適切な位置に必要個数使用しても良い。また製作上の理由で保護ボックス蓋11Cと各媒体が同一材料により一体化されていても良い。本発明はこれらをすべて包含する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、種々の電子機器や電子装置に使用される、圧力応答方式タッチパネルを用いたディスプレイ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ディスプレイ筐体
2 タッチパネル
3 タッチボタン
4 保護ボックス
4B 保護ボックス本体
4C 保護ボックス蓋
11 保護ボックス
11B 保護ボックス本体
11C 保護ボックス蓋
12 媒体スペーサ
13 パネル支持材
14 媒体シート
15 切り抜き部
16 媒体板
17 媒体板
D 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力応答方式タッチパネルを周囲環境から保護するため前記タッチパネルの周囲を外覆する保護ボックスにおいて、前記タッチパネル前面と空間を介して配設され可撓性材料からなる保護ボックス蓋で構成した保護ボックス前面部と、前記保護ボックス蓋の特定の位置の押圧にて、タッチパネル上の特定のタッチボタンに対応した特定の押圧位置を備えたことを特徴とする圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。
【請求項2】
前記保護ボックス蓋と前記タッチパネルの中間に媒体を配設したことを特徴とする請求項1記載の圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。
【請求項3】
前記媒体の断面輪郭を、タッチボタンの輪郭境界線の内方に設けたことを特徴とする請求項2記載の圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。
【請求項4】
前記媒体は、シート形状に作製され当該シートはタッチボタンの輪郭境界線の外方に境界を有する切り抜き部を備えたことを特徴とする請求項2記載の圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。
【請求項5】
前記媒体は、タッチボタンの輪郭境界線の外方に配設された短冊形状の媒体であることを特徴とする請求項2記載の圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。
【請求項6】
前記保護ボックスおよび媒体は、保護ボックス蓋外方からタッチパネルを視認できる透明材料を使用していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の圧力応答方式タッチパネル用保護ボックス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−228015(P2011−228015A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94106(P2010−94106)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】