説明

圧力検知スイッチ及び車両用開閉体装置

【課題】曲げの自由度が高く、且つ、方向による検出感度の差異がなく、大きな物体との接触による形状の歪みや検知荷重の増加が生じないタッチセンサを提供する。
【解決手段】タッチセンサ51は、可撓性を有する導体により管状に形成される外側電極52の内側に、可撓性を有する導体により線状に形成される内側電極53を配置してある。外側電極52と内側電極53との間に絶縁体により螺旋状に形成されたスペーサ部材54を配置し、このスペーサ部材54により外側電極52と内側電極53との間に隙間を形成してある。内側電極53の内部には螺旋状に延びる内側導線55を配置してある。内側導線55のピッチを小さくして内側電極53を収縮自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル状に形成されて物体との接触を検知する圧力検知スイッチ及び、このスイッチを用いた車両用開閉体駆動に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられる、ドア、テールゲート、ウインドガラス、サンルーフ等の開閉体を自動的に開閉するようにした自動開閉装置には、自動開閉動作する開閉体による障害物の挟み込みを防止するために、挟み込み防止機能が設けられる。挟み込みを検出するための圧力検知スイッチとしてはコードスイッチとも呼ばれるタッチセンサが知られており、このタッチセンサはケーブル状に形成されて開閉体の端部や開口部の端部に装着される。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁体であるゴムチューブの内面に帯状に形成された一対の電極を互いに所定の間隔を空けて対向して固定するとともに、これらの電極の内部にそれぞれ導線を配置して構成され、被検出物である障害物との接触によりゴムチューブが押し潰されて電極同士が接触して各電極を介して導線が短絡されることにより障害物の接触を検出するようにしたタッチセンサが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ゴムチューブの内周面に周方向に等間隔に並ぶとともにそれぞれ長手方向に螺旋状に配置される4本の導線を固定して構成され、障害物との接触によりゴムチューブが押し潰されていずれかの導線同士が接触して短絡されることにより障害物の接触を検出するようにしたタッチセンサが記載されている。
【特許文献1】特許第3334477号公報
【特許文献2】特開平11−182136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるタッチセンサは、急激に曲げられると、ゴムチューブが潰れて電極同士が接触するおそれがあるので、このタッチセンサをドアや開口部にその端部形状に合わせて装着することは困難である。また、このタッチセンサは、一対の電極の隙間を狭めることができる方向の外力のみを検出するので、このタッチセンサに横方向から接触する障害物を検出できないという問題点があった。
【0006】
これに対して、特許文献2に記載されるタッチセンサでは、各導線を周方向に等間隔、且つ螺旋状に配置するようにしているので、曲げの自由度が高められるとともに、いずれの方向からの障害物の接触をも検出することができる。
【0007】
しかしながら、このタッチセンサでは、隣り合う電極と向かい合う電極の間隔が相違しているので、障害物が接触する位置つまり外力が加えられる方向によってセンサの検出感度が相違するという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、曲げの自由度が高く、且つ、検出感度の方向差がない圧力検知スイッチと、このスイッチを用いた車両用開閉体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧力検知スイッチは、物体との接触を検知するケーブル状の圧力検知スイッチであって、可撓性を有する導体により管状に形成される外側電極と、可撓性を有する導体により線状に形成され、上記外側電極内に収容配置される内側電極と、絶縁体によりに形成され、上記内側電極と上記外側電極の間に螺旋状に配置されて上記両電極間の隙間を保持するスペーサ部材と、上記外側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される外側導線と、上記内側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される内側導線とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の圧力検知スイッチは、上記外側導線が上記内側電極の軸心に対して360度周回するピッチは、上記スペーサ部材が上記内側電極と上記外側電極の間を360度周回するピッチの1/2以下に設定されている。
【0011】
本発明の圧力検知スイッチは、上記外側導線の配置本数が上記スペーサ部材の配置本数よりも多いことを特徴とする。
【0012】
本発明の圧力検知スイッチは、物体との接触を検知するケーブル状の圧力検知スイッチであって、可撓性を有する管状の絶縁部材と、可撓性を有する導体により線状に形成され、上記絶縁部材の内部に所定間隔をおいて収容保持される複数の導電部材と、上記各導電部材の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される導線とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用開閉体装置は、車体開口部に設けられた開閉体を開閉させる駆動手段と、上記開閉体と車体開口部の間に異物が挟み込まれるのを検知する圧力検知スイッチと、上記圧力検知スイッチからの検知信号に基づいて、上記駆動手段を逆転駆動もしくは停止させる制御手段とを備えた車両用開閉体装置であって、上記圧力検知スイッチは、可撓性を有する導体により管状に形成される外側電極と、可撓性を有する導体により線状に形成され、上記外側電極内に収容配置される内側電極と、絶縁体によりに形成され、上記内側電極と上記外側電極の間に螺旋状に配置されて上記両電極間の隙間を保持するスペーサ部材と、上記外側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される外側導線と、上記内側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される内側導線と、上記圧力検知スイッチを上記車体開口部または上記開閉体に取り付けるための取付部材とを備えてなることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用開閉体装置は、上記外側導線が上記内側電極の軸心に対して360度周回するピッチは、上記スペーサ部材が上記内側電極と上記外側電極の間を360度周回するピッチの1/2以下に設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用開閉体装置は、上記外側導線の配置本数が上記スペーサ部材の配置本数よりも多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外側電極と内側電極の間にスペーサ部材が螺旋状に配置されて電極間の隙間が均一に保持されるので、急激に曲げても、電極の接触が生じにくく、設置の自由度が高くなる。また、外側電極と内側電極の隙間はスペーサ部材によって均一に保持されているので、検出感度の方向差がなくなる。
【0017】
さらに、内側電極の内部に内側導線を螺旋状に配置して内側電極を収縮自在に構成してあるので、大きな物体が接触した際、内側電極が縮むことなく波型に変形し、形状の歪みや検知荷重の増加が生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1はワンボックスタイプの車両を示す側面図であり、図2は本発明の圧力検知スイッチの一実施形態であるタッチセンサを備えた車両用開閉体装置を示す平面図である。
【0020】
図1に示す車両11はワンボックスタイプの乗用車であり、その車体12の側部には開閉体としてのスライドドア14が設けられており、このスライドドア14が車両前後方向に移動することで車体12の側部に設けられた開口部13の開閉が行われる。図2に示すように、スライドドア14にはローラアッシー15が設けられており、このローラアッシー15が車体12の側部に固定されたガイドレール16に案内されることにより、スライドドア14は、図2中に実線で示す全開位置と一点鎖線で示す全閉位置との間で開閉自在となっている。また、ガイドレール16の車両前方側には車室内側に湾曲する曲部16aが設けられており、ローラアッシー15が曲部16aに案内されることにより、スライドドア14は車体12の側面と同一面に収まるように車体12の内側に引き込まれた状態で閉じられるようになっている。図示はしないが、ローラアッシー15は、図示する部位(センター部)以外にスライドドア14の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)にも設けられ、これらに対応して車体12の開口部13の上下部位にもアッパー部・ロア部に対応する図示しないガイドレールが設けられており、スライドドア14は車体12に計3カ所において支持されている。
【0021】
図2に示すように、この車両11には、スライドドア14を自動的に開閉するために、自動開閉装置21が設けられている。この自動開閉装置21はガイドレール16の車両前後方向の略中央部に隣接して車体12の内部に固定される駆動ユニット22を有し、この駆動ユニット22からは車両前方側と後方側とに向けてケーブル23a,23bが引き出されており、駆動ユニット22から車両前方側に引き出されたケーブル23aはガイドレール16の前端に設けられた反転プーリ24aを介して車両前方側(閉側)からローラアッシー15に接続され、車両後方側に引き出されたケーブル23bはガイドレール16の後端に設けられた反転プーリ24bを介して車両後方側(開側)からローラアッシー15に接続されている。駆動ユニット22はケーブル23a,23bを駆動するようになっている。駆動ユニット22によりケーブル23a,23bが牽引されると、スライドドア14は車両前方側または後方側のケーブル23a,23bに牽引されて自動開閉動作するようになっている。つまり、この自動開閉装置21は、いわゆるケーブル式となっている。
【0022】
図3は図2に示す自動開閉装置の制御体系を示す説明図である。
【0023】
駆動ユニット22は、その駆動源となる電動モータ25と、これに固定される減速機26とを有しており、電動モータ25の回転は減速機26により所定の回転数にまで減速して出力軸27から出力されるようになっている。なお、電動モータ25としては、たとえばブラシ付き直流モータやブラシレス直流モータ等、正逆両方向に回転可能なものが用いられる。出力軸27には円筒状に形成されたドラム28が固定され、このドラム28の外周面には各ケーブル23a,23bが複数回巻き付けられている。これにより、電動モータ25が正転すると、図3中で時計回りにドラム28が回転して閉側のケーブル23aがドラム28に巻き取られ、スライドドア14はケーブル23aに牽引されて自動閉動作する。反対に、電動モータ25が逆転すると、図3中で反時計回りにドラム28が回転して開側のケーブル23bがドラム28に巻き取られ、スライドドア14はケーブル23bに牽引されて自動開動作する。
【0024】
減速機26には図示しない電磁クラッチが内装されており、スライドドア14が手動で開閉操作されるときには、電磁クラッチにより電動モータ25と出力軸27の間の動力伝達経路が遮断されてスライドドア14の手動による開閉操作力が低減されるようになっている。図示はしないが、ドラム28とスライドドア14との間にはテンショナが設けられ、このテンショナによりケーブル張力が一定に保持されるようになっている。
【0025】
出力軸27には周方向に多数の磁極が着磁された多極着磁磁石31が固定され、この多極着磁磁石31の近傍には互いに所定の位相差を設けて2つのホールIC32a,32bが配置されており、出力軸27が回転すると、これらのホールIC32a,32bからは出力軸27の回転数に反比例した周期のパルス信号が出力されるようになっている。
【0026】
電動モータ25の作動を制御するために、電動モータ25には制御装置33が接続されている。この制御装置33は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)やROM、RAMなどのメモリ等を備えた所謂マイクロコンピュータとしての機能を有しており、配線により電動モータ25に接続されている。
【0027】
制御装置33にはホールIC32a,32bが接続されており、制御装置33はホールIC32a,32bから入力されるパルス信号の周期に基づいて出力軸27の回転数つまりスライドドア14の移動速度を検出することができるようになっている。また、制御装置33はこれらのパルス信号の出現タイミングに基づいて電動モータ25の回転方向つまりスライドドア14の移動方向を検出し、さらに、スライドドア14が基準位置(例えば全閉位置)にあるときを起点としてパルス信号を積算つまりカウントすることによりスライドドア14の開閉位置を検出することができるようになっている。
【0028】
スライドドア14の開閉動作を指令するために、スライドドア14には開閉スイッチとしての機能を有するドアハンドル34が設けられている。乗員等の操作者によりドアハンドル34が操作されると、このドアハンドル34から制御装置33に開閉指令信号が入力され、制御装置33は入力された開閉指令信号やスライドドア14の開閉位置、開閉速度等をメモリ内に格納された制御プログラムに従って演算し、この演算結果に基づいて電動モータ25の作動制御を実行する。例えば、ドアハンドル34が閉側に操作されて制御装置33にスライドドア14を閉じる旨の指令信号が入力されると、制御装置33により電動モータ25が正転駆動されてスライドドア14は自動的に閉方向に作動する。反対に、ドアハンドル34が開側に操作されて制御装置33にスライドドア14を開く旨の指令信号が入力されると、制御装置33により電動モータ25が逆転駆動されてスライドドア14は自動的に開方向に作動する。
【0029】
スライドドア14と障害物(被検出物)との接触や当該接触に伴うスライドドア14による障害物の挟み込みを検出するために、スライドドア14の車両前方側つまりスライドドア14が閉じる際に進行方向側となる端部には、タッチセンサユニット41が取り付けられている。
【0030】
図4(a)および図4(b)はタッチセンサユニットの詳細を示す斜視図であり、図5は図4のタッチセンサにおけるスペーサ部材と各導線の配置を模式的に示す図、図6は同タッチセンサの断面図、図7は同タッチセンサの回路図である。
【0031】
図4(a)に示すように、タッチセンサユニット41は可撓性を有する絶縁体であるゴムにより形成された取付部材としてのセンサホルダ42を有しており、このセンサホルダ42はスライドドア14に設けられたブラケット43をセンサホルダ42で挟み込むようにして固定され、その先端部はスライドドア14の端部よりも車両前方側に突出している。センサホルダ42のスライドドア14の端部よりも車両前方側に突出した部分には車両上下方向に貫通する装着孔42aが形成されており、この装着孔42aにはケーブル状に形成されたタッチセンサ51が装着されている。
【0032】
なお、図4(b)に示すように、センサホルダ42をスライドドア14の側縁接合部に直接装着してもよい。
【0033】
図5と図6に示すように、このタッチセンサ51は、外側電極52と内側電極53とを有しており、外側電極52は、例えば導電性ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM))など、可撓性を有する導体により管状(チューブ状)に形成されている。内側電極53は、外側電極52と同様に導電性ゴムなどの可撓性を有する導体により線状に形成されており、外側電極52の内側に同軸で配置されている。
【0034】
外側電極52と内側電極53との間には、例えばゴム等の絶縁体により螺旋状に形成されたスペーサ部材54が1本配置されている。このスペーサ部材54は全長に亘って同一のピッチPで配置されている。これにより、外側電極52と内側電極53の間に均一な隙間が形成されて、両電極52,53が電気的に絶縁されている。
【0035】
内側電極53の内部には内側導線55が螺旋状に1本配置されている。この内側導線55は、スペーサ部材54のピッチPよりも小さいピッチで全長に亘って配置されている。つまり、内側導線55は内側電極53と電気的に接続された状態で内側電極53を長手方向に貫き、その一端を制御装置33に接続してある(図7参照)。なお、内側導線55のピッチは内側電極53が後述のような伸縮性を生じる値に設定してある。
【0036】
一方、外側電極52の内部には外側導線56が螺旋状に1本配置されている。この外側導線56は、スペーサ部材54と同じ向きに旋回し、そのピッチPをスペーサ部材54のピッチPと全長に亘って同一に設定してある。つまり、外側導線56は外側電極52に電気的に接続されているので、外側電極52が内側電極53に接触すると、外側導線56と内側導線55が電気的に接続することになる。なお、スペーサ部材54と内側電極53は同時成形により成形固着されている。そして、スペーサ部材54が巻回された内側電極53を外側電極52に挿入し、図5に示すように、スペーサ部材54が外側導線56の中間に収まるように内側電極53と外側電極52を位置決めし、その状態で両者の両端を固定してある。つまり、スペーサ部材54と外側導線56の位相差を180度にしてある。
【0037】
図7に示すように、外側導線56は外側電極52を長手方向に貫き、その一端を接地してある。また、外側導線56の他端は検出用抵抗57を介して内側導線55の他端に接続してある。つまり、内側導線55と外側導線56との間には検出用抵抗57が直列に接続されているので、常時は、制御装置33から検出用抵抗57に電流が流れ、検出用抵抗57に電圧降下が生じているが、外側電極52が内側電極53に接触すると、検出用抵抗57に電流が流れなくなり、電圧降下は生じなくなる。つまり、タッチセンサ51の電圧降下を監視することで、外側電極52と内側電極53の接触を検知しているのである。
【0038】
図8(a)〜(c)は、それぞれタッチセンサが障害物との接触を検出した状態を説明する図である。
【0039】
例えば、スライドドア14が自動的に閉動作しているときに、その端部に取り付けられたセンサホルダ42に障害物が接触すると、その接触によりセンサホルダ42とともにタッチセンサ51の外側電極52が変形して、外側電極52が内側電極53に接触する。外側電極52が内側電極53に接触すると、外側導線56と内側導線55とがこれらの電極52,53を介して短絡され、各導線55,56に検出用抵抗57を通らない短絡電流が流れ、この短絡電流が検出信号となって制御装置33は障害物の接触を検出する。検出信号が入力されると、制御装置33はスライドドア14を開方向に反転移動あるいは停止させ、これにより、スライドドア14による障害物の挟み込みを回避する。
【0040】
ここで、このタッチセンサ51では、1本の螺旋状のスペーサ部材54により外側電極52と内側電極53との隙間を設けるようにしているので、この隙間が均一化され、図8(a)〜(c)に示すように、タッチセンサ51に対して障害物が周方向のいずれの方向から接触した場合であっても、その検出感度が大きく相違することがなく、このタッチセンサ51による障害物の挟み込み検出精度を高めることができる。例えば、図8(a)に示すように、タッチセンサ51の図中上側に障害物が接触したときには、障害物により外側電極52が押され、外側電極52とともにスペーサ部材54と内側電極53も押されて内側電極53は図中下側で外側電極52と接触する。また、同図(b)(c)に示すように、タッチセンサ51に対して下方または側方から障害物が接触したときには、障害物により押された外側電極52はそのまま内側電極53に接触するが、このときの外側電極52と内側電極53の隙間つまり外側電極52のストロークは同図(a)に示す場合と同等となるので、その検出感度も同等となる。
【0041】
このタッチセンサ51では、外側電極52と内側電極53の間に螺旋状のスペーサ部材54を配置し、このスペーサ部材54により外側電極52と内側電極53との間に隙間を保持するようにしたので、外側電極52と内側電極53の隙間が均一になり、あらゆる方向からの障害物の接触を均一な検出感度で検出することができる。
【0042】
また、自動開閉動作するスライドドア14による障害物の挟み込み検出にこのタッチセンサ51を用いることにより、挟み込みを精度良く検出することができ、これにより、このタッチセンサ51を備えた自動開閉装置21の安全性を高めることができる。
【0043】
さらに、外側電極52と内側電極53の間にスペーサ部材54を螺旋状に配置してあるので、急激に曲げても、両電極52,53の間の隙間が保持され、外側電極52が内側電極53に接触しにくくなる。このため、曲げの自由度が高く、スライドドア14の端部等、複雑な形状に沿って取り付けることができる。
【0044】
図9は、タッチセンサが大きな物体との接触を検出した状態を説明する図である。
【0045】
大きな物体Oがタッチセンサ51に接触すると、外側電極52が押し潰され、内側電極53がスペーサ部材54の複数の螺旋部に跨って波型に変形する。このとき、タッチセンサ51長手方向の両端は固定されている為、内側電極53は全長をタッチセンサ51長手方向に伸長することで波形に変形しようとする。しかし、内側導線が十分な伸縮性を有していない場合には、内側導線はタッチセンサ51長手方向に伸長されにくいため、波形に変形しない。そしてこれにより検知荷重が増大する。しかし、本発明におけるタッチセンサ51では、内側電極53の内部に内側導線55を螺旋状に配置することで内側電極53をタッチセンサ51長手方向に伸縮性を有して構成してあるので、検知荷重の増加を生じずに内側電極および内側導線の波形への変形が可能である。
【0046】
図10と図11はそれぞれ図5のタッチセンサの変形例を示す図、図12は同タッチセンサにおけるスペーサ部材と外側導線の配置を模式的に示す図である。
【0047】
図10に示すタッチセンサ51Aでは、外側導線56のピッチP2をスペーサ部材54のピッチP1の1/2に設定してある。なお、ピッチP1,P2とは、スペーサ部材54または外側導線56が内側電極53の軸心に対して360度周回する間に軸心方向に移動する距離のことをいう。一方、図11に示すタッチセンサ51Bでは、外側電極52内にピッチの等しい2本の外側導線56A,56Bを設置してある。これら外側導線56A,56Bの間隔P2はスペーサ部材54のピッチP1の1/2に設定してある。いずれのタッチセンサ51A,51Bでも、その他の構成要素は図5のタッチセンサ51と同一であるので、同一の符号を付し説明を省略する。
【0048】
ところで、図5のタッチセンサ51では、外側電極52を適度な柔らかさに保ち、検知荷重の増加を抑えるため、スペーサ部材54と外側導線56をそれぞれ1本ずつ使用してある。その場合、スペーサ部材54の中間に外側導線56が収まるように両者を180度の位相差を保って配置する必要がある。このようにすると、スペーサ部材54を中心とする位相角180度の範囲において、外側導線56がスペーサ部材54に関して対称に配置されるので、全ての方向に対し同じ検知感度が得られることになる(図12(a)参照)。
【0049】
しかし、外側電極52とスペーサ部材54の位置ずれが生じると、外側導線56のスペーサ部材54に対する配置バランスが崩れ、検知感度の方向差が生じてしまう(図12(b)参照)。これに対して、図10に示すように外側導線56のピッチP2をスペース部材54のピッチP1の1/2以下に設定しておく場合、または、図11に示すように外側導線56を複数本に設けておく場合には、外側電極52とスペーサ部材54の配置に関係なく、外側導線56が常に外側電極52の全周に亘って配置されている(図12(c)参照)。つまり、組立時に両電極52,53の位置合わせをする必要がなくなり、作業が容易になるのである。
【0050】
なお、外側導線56のピッチP2を小さくし過ぎたり、外側導線56の配置本数を多くし過ぎたりすると、外側電極52が硬くなり、十分な検知感度が得られなくなるので、この点を考慮して外側導線56のピッチP2や配置本数を定めなければならない。
【0051】
図13はタッチセンサの他の変形例を示す斜視図、図14は同タッチセンサから取り出した導電部材を示す図である。
【0052】
このタッチセンサ60では、可撓性を有する絶縁材で管状の絶縁部材61を成形し、その内部に一対の導電部材62を収容してある。これら導電部材62は、可撓性を有する導体により線状に成形されており、絶縁部材61の軸心に対して螺旋状に延びるようにして絶縁部材61の内面に成形固着されている。導電部材62は、絶縁部材61の長手方向のどの位置でも、径方向に対向し周方向の間隔が等しくなるように配置されている。さらに、各導電部材62の内部には、その軸心に対して螺旋状に延びる導線63が埋設されている。この導線63のピッチを小さくして導電部材62を収縮自在に構成してある。つまり、物体との接触により絶縁部材61が変形すると、導電部材62同士が接触して導線63の導通が生じるのである。
【0053】
このタッチセンサ60は導電部材62の周方向の間隔を等しくしてあるので、検出感度の方向差が生じない。さらに、絶縁部材61の内部に一対の導電部材62を螺旋状に配置してあるので、急激に曲げても、導電部材62間の隙間が保持され、導電部材62が接触しにくくなる。このため、曲げの自由度が高く、スライドドア14の端部等、複雑な形状に沿って取り付けることができる。また、導電部材62の内部に導線63を螺旋状に配置して収縮性を生じさせているので、絶縁部材61に大きな物体が接触しても、センサ形状の歪みや検知荷重の増加が生じることはない。
【0054】
本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、以上の実施形態では、スペーサ部材54と外側導線56をそれぞれ1本ずつ使用してあるが、その使用本数は複数であってもよい。
【0055】
また、内側導線55の螺旋の巻回方向については、右巻き左巻きどちらでも良く、言い換えると、スペーサ部材54や外側導線56の巻回方向と同一方向に螺旋状に巻回しても、またスペーサ部材54や外側導線56の巻回方向と逆方向に螺旋状に巻回しても構わない。
【0056】
また、前述した実施形態においては、内側電極の構造を導電性部材にて形成するようにしたが、これに限らず、内側導線が螺旋状となっていれば良く、芯材に導電性の円筒部材を被せた2層構造とし、芯材と円筒部材の間に内側導線を介在させた構造としても構わない。
【0057】
また、開閉体としてのスライドドア14の端部にタッチセンサ51を取り付けるようにしているが、これに限らず、開口部13の端部にタッチセンサ51を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ワンボックスタイプの車両を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である圧力検知スイッチとしてのタッチセンサを備えた車両用開閉体装置を示す平面図である。
【図3】図2に示す自動開閉装置の制御体系を示す説明図である。
【図4】(a)、(b)はタッチセンサユニットの詳細を示す斜視図である。
【図5】図4のタッチセンサにおけるスペーサ部材と各導線の配置を模式的に示す図である。
【図6】同タッチセンサの断面図である。
【図7】同タッチセンサの回路図である。
【図8】同タッチセンサが障害物の接触を検出した状態を示す断面図である。
【図9】同タッチセンサが大きな物体との接触を検出した状態を説明する図である。
【図10】図5の変形例を示す図である。
【図11】図5の変形例を示す図である。
【図12】同タッチセンサにおけるスペーサ部材と外側導線の配置を模式的に示す図である。
【図13】同タッチセンサの他の変形例を示す斜視図である。
【図14】同タッチセンサから取り出した導電部材を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
11 車両
12 車体
13 開口部
14 スライドドア(開閉体)
15 ローラアッシー
16 ガイドレール
16a 曲部
21 自動開閉装置
22 駆動ユニット
23a,23b ケーブル
24a,24b 反転プーリ
25 電動モータ
26 減速機
27 出力軸
28 ドラム
31 多極着磁磁石
32a,32b ホールIC
33 制御装置
34 ドアハンドル
41 タッチセンサユニット
42 センサホルダ
42a 装着孔
43 ブラケット
51 タッチセンサ(圧力検知スイッチ)
52 外側電極
53 内側電極
54 スペーサ部材
55 内側導線
56 外側導線
57 検出用抵抗
60 タッチセンサ(圧力検知スイッチ)
61 絶縁部材
62 導電部材
63 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体との接触を検知するケーブル状の圧力検知スイッチであって、
可撓性を有する導体により管状に形成される外側電極と、
可撓性を有する導体により線状に形成され、上記外側電極内に収容配置される内側電極と、
絶縁体によりに形成され、上記内側電極と上記外側電極の間に螺旋状に配置されて上記両電極間の隙間を保持するスペーサ部材と、
上記外側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される外側導線と、
上記内側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される内側導線と、
を備えたことを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力検知スイッチにおいて、上記外側導線が上記内側電極の軸心に対して360度周回するピッチは、上記スペーサ部材が上記内側電極と上記外側電極の間を360度周回するピッチの1/2以下に設定されていることを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項3】
請求項1記載の圧力検知スイッチにおいて、上記外側導線の配置本数が上記スペーサ部材の配置本数よりも多いことを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項4】
物体との接触を検知するケーブル状の圧力検知スイッチであって、
可撓性を有する管状の絶縁部材と、
可撓性を有する導体により線状に形成され、上記絶縁部材の内部に所定間隔をおいて収容保持される複数の導電部材と、
上記各導電部材の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される導線と、
を備えたことを特徴とする圧力検知スイッチ。
【請求項5】
車体開口部に設けられた開閉体を開閉させる駆動手段と、
上記開閉体と車体開口部の間に異物が挟み込まれるのを検知する圧力検知スイッチと、
上記圧力検知スイッチからの検知信号に基づいて、上記駆動手段を逆転駆動もしくは停止させる制御手段とを備えた車両用開閉体装置であって、
上記圧力検知スイッチは、
可撓性を有する導体により管状に形成される外側電極と、
可撓性を有する導体により線状に形成され、上記外側電極内に収容配置される内側電極と、
絶縁体によりに形成され、上記内側電極と上記外側電極の間に螺旋状に配置されて上記両電極間の隙間を保持するスペーサ部材と、
上記外側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される外側導線と、
上記内側電極の内部にその軸心に対して螺旋状に配置される内側導線と、
上記圧力検知スイッチを上記車体開口部または上記開閉体に取り付けるための取付部材と、
を備えてなることを特徴とする車両用開閉体装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用開閉体装置において、上記外側導線が上記内側電極の軸心に対して360度周回するピッチは、上記スペーサ部材が上記内側電極と上記外側電極の間を360度周回するピッチの1/2以下に設定されていることを特徴とする車両用開閉体装置。
【請求項7】
請求項5記載の車両用開閉体装置において、上記外側導線の配置本数が上記スペーサ部材の配置本数よりも多いことを特徴とする車両用開閉体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−293816(P2008−293816A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138635(P2007−138635)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】