説明

圧着構造及び圧着方法

【課題】端子の圧着部で電気的特性及び機械的特性をともに最適とすることが可能な圧着構造及び圧着方法を提供する。
【解決手段】本発明は、オープンクリンプバレル20による導体Waの圧着構造である。オープンクリンプバレル20が、前後方向に沿って連続して設けられた複数の圧着部21,22を有している。雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で複数の圧着部21,22の幅がそれぞれ異なるように形成されている。そして、複数の圧着部21,22が、ともに前後方向に沿って均一な高さαに圧縮されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線等の導体と端子とを接続するための圧着構造及び圧着方法に関する。特に、オープンクリンプバレルを有する圧着端子に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電線の芯線等の導体と端子とを接続する方法として、はんだ付けに依らない方法であり自動機による量産に適するという理由から、圧着接続が広く利用されている。圧着により導体と端子とを接続する際には、導体の周りのバレルが圧着工具によって圧縮変形される。そして、導体が圧着された端子の圧着部では、導体がバレルによって所定の圧縮率で圧縮された状態となっている。ここで、バレルによる導体の圧縮率は、圧着部の電気的特性及び機械的特性に基づいて決定される。
【0003】
しかしながら、特許文献1にも示されているように、端子の圧着部では、電気的特性にとって好ましい導体の圧縮率と機械的特性にとって好ましい導体の圧縮率とは、通常一致しない。ここで、電気的特性にとって好ましい導体の圧縮率とは、圧着部の電気抵抗が最小になる導体の圧縮率を意味する。また、機械的特性にとって好ましい導体の圧縮率とは、圧着部の引張り強度が最大になる導体の圧縮率を意味する。なお、導体の圧縮率とは、圧着前の導体の断面積と圧着後の導体の断面積との比を示し、圧縮率が高いほど圧縮量が多いことを意味する(以下、同様)。なお、オープンクリンプバレルに圧着される導体の圧縮率は、圧着工具により圧縮されるオープンクリンプバレルの高さ(圧着高さ)によって管理される。
【0004】
すなわち、端子の圧着部では、導体の圧縮率を高くするほど、導体の表面に形成された酸化被膜が破壊されることなどによって、圧着部の電気抵抗が減少する。ただし、導体の圧縮率が高くなりすぎると、圧着部の導体の断面積が減少することによって、圧着部の電気抵抗が増加する。
一方、端子の圧着部では、導体の圧縮率を高くするほど、圧着部の引張り強度が高くなる。ただし、導体の圧縮率が高くなりすぎると、圧着部の導体の断面積が減少することによって、圧縮部の引張り強度が低下する。
【0005】
そして、通常、電気的特性にとって好ましい導体の圧縮率は、機械的特性にとって好ましい導体の圧縮率と比較して高くなっている。
特に、アルミニウム線は、銅線と比較して機械的強度が低く、また表面に酸化被膜が形成されやすい。したがって、アルミニウム線と端子とを圧着により接続する場合、銅線の場合と比較して、電気的特性にとって好ましい導体の圧縮率と機械的特性にとって好ましい導体の圧縮率との乖離が大きくなる。
【特許文献1】特開2005−50736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情により、従来、圧着により導体と端子とを接続する際には、端子の圧着部で、電気的特性及び機械的特性のうち少なくとも一方が最適となっていないという問題がある。
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、端子の圧着部で電気的特性及び機械的特性をともに最適とすることが可能な圧着構造及び圧着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る圧着構造は、オープンクリンプバレルによる導体の圧着構造であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた複数の圧着部を有し、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記複数の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成され、
前記複数の圧着部が、ともに前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されていることを特徴とする。
ここで、展開状態とは、打ち抜き加工したまま(曲げ加工する前)の状態を意味する。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る圧着構造は、オープンクリンプバレルによる導体の圧着構造であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた第一圧着部及び第二圧着部を有し、
前記第二圧着部が、前記第一圧着部に対して前記導体の先端側に形成され、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記第二圧着部の幅が前記第一圧着部の幅と比較して広くなるように形成され、
前記第一圧着部及び前記第二圧着部が、ともに前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る圧着方法は、オープンクリンプバレルによる導体の圧着方法であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた複数の圧着部を有し、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記複数の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成され、
前記複数の圧着部が、ともに一対のアンビル及びクリンパによって前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項4に係る圧着方法は、オープンクリンプバレルによる導体の圧着方法であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた第一圧着部及び第二圧着部を有し、
前記第二圧着部が、前記第一圧着部に対して前記導体の先端側に形成され、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記第二圧着部の幅が前記第一圧着部の幅と比較して広くなるように形成され、
前記第一圧着部及び前記第二圧着部が、ともに一対のアンビル及びクリンパによって前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されることを特徴とする。
ここで、本発明の請求項1乃至4に記載されたオープンクリンプバレルは、導体を圧着するオープンクリンプバレルを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本願請求項1に係る圧着構造又は請求項3に係る圧着方法では、オープンクリンプバレルは、展開状態で複数の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成されている。また、複数の圧着部が、ともに導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されている。これにより、本願請求項1に係る圧着構造又は請求項3に係る圧着方法では、オープンクリンプバレルを導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮することにより、複数の圧着部でそれぞれ異なる導体の圧縮率を得ることができる。
【0012】
ここで、展開状態のオープンクリンプバレルで、複数の圧着部のうち一の圧着部の幅を、該一の圧着部が所定の高さに圧縮された際に電気的特性が最適となる所定の圧縮率で導体を圧縮する寸法に設定する。また、展開状態のオープンクリンプバレルで、複数の圧着部のうち他の圧着部の幅を、該他の圧着部が所定の高さに圧縮された際に機械的特性が最適となる所定の圧縮率で導体を圧縮する寸法に設定する。これにより、本願請求項1に係る圧着構造又は請求項3に係る圧着方法では、一の圧着部で電気的特性が最適となる圧縮率を得ることができ、他の圧着部で機械的特性が最適となる圧縮率を得ることができる。したがって、本願請求項1に係る圧着構造又は請求項3に係る圧着方法によれば、導体の圧着部で電気的特性及び機械的特性をともに最適とすることが可能となる。
また、本願請求項1に係る圧着構造又は請求項3に係る圧着方法によれば、複数の圧着部を導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮すればよく、一対のアンビル及びクリンパのみで導体を圧着するオープンクリンプバレル全体の圧着作業を行うことができるため、圧着時の管理工数を増加させることもない。
【0013】
また、本願請求項2に係る圧着構造又は請求項4に係る圧着方法では、オープンクリンプバレルが、第一圧着部と、第一圧着部に対して導体の先端側に形成された第二圧着部とを有している。また、オープンクリンプバレルは、展開状態で第二圧着部の幅が第一圧着部の幅と比較して広くなるように形成されている。さらに、第一圧着部及び第二圧着部が、ともに導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されている。これにより、本願請求項2に係る圧着構造又は請求項4に係る圧着方法では、オープンクリンプバレルを導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮することにより、第二圧着部による導体の圧縮量が、第一圧着部による導体の圧縮量と比較して多くなる。ここで、展開状態のオープンクリンプバレルで、第一圧着部の幅を、第一圧着部が所定の高さに圧縮された際に機械的特性が最適となる所定の圧縮率で導体を圧縮する寸法に設定する。また、展開状態のオープンクリンプバレルで、第二圧着部の幅を、第二圧着部が所定の高さに圧縮された際に電気的特性が最適となる所定の圧縮率で導体を圧縮する寸法に設定する。これにより、本願請求項2に係る圧着構造又は請求項4に係る圧着方法では、導体の先端側の第二圧着部で電気的特性が最適となる圧縮率を得ることができ、導体の絶縁被覆側の第一圧着部で機械的特性が最適となる圧縮率を得ることができる。したがって、本願請求項2に係る圧着構造又は請求項4に係る圧着方法によれば、導体の圧着部で電気的特性及び機械的特性をともに最適とすることが可能となる。
【0014】
また、本願請求項2に係る圧着構造又は請求項4に係る圧着方法によれば、第一圧着部及び第二圧着部を導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮すればよく、一対のアンビル及びクリンパのみで導体を圧着するオープンクリンプバレル全体の圧着作業を行うことができるため、圧着時の管理工数を増加させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る雌型端子を被覆付電線とともに示す斜視図である。図2は、図1に示す雌型端子の平面部である。図3は、図1に示す雌型端子の側面図である。図4は、図1に示す雌型端子の底面図である。図5は、図1に示す雌型端子の展開状態を示す平面図である。図6は、図3の6−6線に沿う断面図である。図7は、図3の7−7線に沿う断面図である。図8は、圧着工具により図1に示す雌型端子の圧着部に導体を圧着するときの状態を示す模式図である。なお、図1から図7では、被覆付電線Wの導体Waの延びる方向を前後方向とし、導体Waの相手コンタクト側(リセプタクル部10側)を前方とする。
【0016】
本発明に係る圧着構造は、導体を圧着するオープンクリンプバレルを有する種々の端子に適用することが可能である。また、本発明に係る圧着構造は、導体を圧着するオープンクリンプバレルに適用することが可能である。
オープンクリンプバレルは、自動機による作業に適しているという理由により、端子の圧着部の形状として広く利用されている。ここで、自動車の配線(ワイヤーハーネス)は、多数の電線からなるので、自動機による作業を前提とせざるを得ない。また、自動車の配線では、走行に伴う振動によって芯線(導体)が損傷することをできるだけ防ぐために、インシュレーションバレルを設けて保持力を向上させる必要がある。したがって、オープンクリンプバレルは、特に自動車用の端子として利用されている。
【0017】
本実施の形態では、本発明に係る圧着構造を電気コネクタ用の雌型端子に適用した場合について説明する。
図1から図4に示す雌型端子1は、基部13と、基部13から前方に向かって延びるリセプタクル部10と、基部13から後方に向かって延びるバレル部15とを備えている。雌型端子1は、打ち抜き加工された金属板を曲げ加工することにより形成されている。曲げ加工前の状態(以下、「展開状態」という)の雌型端子1は、図5に示すように、平板状である。
【0018】
リセプタクル部10は、図1から図4に示すように、打ち抜き加工された金属板を箱形に折り曲げ加工することにより形成されている。リセプタクル部10は、相手コネクタの雄型端子(図示せず)が挿入される端子挿入口11を有している。そして、リセプタクル部10は、端子挿入口11に挿入された雄型端子と電気的に接続される。
バレル部15は、オープンクリンプバレルとして形成され、被覆付電線Wを圧着する。バレル部15は、被覆付電線Wの導体Waを圧着するコンダクタバレル20と、被覆付電線Wの絶縁被覆Wbを圧着するインシュレーショングリップ30とを有している。
【0019】
コンダクタバレル20は、図6及び図7に示すように、打ち抜き加工された金属板を、前後方向(図2から図4における左右方向、図6及び図7における奥行き方向)から見た断面がU字形になるように曲げ加工することにより形成されている。そして、コンダクタバレル20は、前後方向に沿って連続して形成された第一圧着部21及び第二圧着部22からなっている。
【0020】
第二圧着部22は、第一圧着部21に対して導体Waの先端側に形成されている。図5に示すように、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第一圧着部21の幅及び第二圧着部22の幅が互いに異なるように形成されている。本実施の形態では、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第二圧着部22の幅が第一圧着部21の幅と比較して広くなるように形成されている。雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第一圧着部21の幅方向(図5における上下方向)の両端辺が互いに前後方向に沿って平行に延びるように形成されている。また、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第二圧着部22の幅方向の両端辺が互いに前後方向に沿って平行に延びるように形成さている。すなわち、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態でコンダクタバレル20の幅方向の両端辺がそれぞれ第一圧着部21の幅方向の一の端辺及び第二圧着部22の幅方向の一の端辺によって前後方向に沿って階段状になるように形成されている。これにより、図7に示すように、雌型端子1のコンダクタバレル20は、曲げ加工によって、その第二圧着部22の幅方向の各端部が第一圧着部21の幅方向の各端部に対して斜め上方に突出するように形成される。
インシュレーショングリップ30は、図1に示すように、前後方向から見た断面がU字形になるように形成されている。
なお、図1から図5では、雌型端子1がコンタクトキャリアCに接続されている状態を示しているが、雌型端子1は、加工後にはコンタクトキャリアCから切断される。
【0021】
次に、被覆付電線Wの導体Waに雌型端子1のコンダクタバレル20を圧着するための圧着工具40について説明する。
圧着工具40は、図8に示すように、雌型端子1を位置決めして保持するアンビル41と、アンビル41に保持された雌型端子1のコンダクタバレル20を上方から圧縮するクリンパ42とを備えている。アンビル41及びクリンパ42のコンダクタバレル20に接触する圧縮面は、雌型端子1の前後方向にわたって平坦でよい。
アンビル41の上面には、雌型端子1が設置される設置溝43が設けられている。設置溝43は、コンダクタバレル20の背面にフィットするU字状の断面を有する。設置溝43は、前後方向に沿って設けられている。なお、図8では、前後方向は、奥行き方向となっている。そして、アンビル41は、設置溝43に設置された雌型端子1のコンダクタバレル20の底面を下方から保持する。
【0022】
クリンパ42は、固定して設置されたアンビル41に対して接近又は離間する方向に移動することが可能となっている。本実施の形態では、クリンパ42は、上下方向に移動することが可能となっている。クリンパ42の下面には、図8に示すように、アンビル41の設置溝43と互いに向き合う圧縮溝44が設けられている。圧縮溝44は、アンビル41の設置溝43と平行に延びている。圧縮溝44は、前後方向から見た断面がM字形になるように形成されている。そして、圧縮溝44は、アンビル41の設置溝43に設置された雌型端子1のコンダクタバレル20を圧縮する。
【0023】
次に、被覆付電線Wの導体Waに雌型端子1のコンダクタバレル20を圧着する方法について説明する。ここで、雌型端子1のバレル部15に被覆付電線Wを圧着する際には、コンダクタバレル20への導体Waの圧着及びインシュレーショングリップ30への絶縁被覆Wbの圧着が同時に行われる。本実施の形態では、インシュレーショングリップ30への絶縁被覆Wbの圧着については、説明を省略する。なお、圧着工程に先立って、被覆付電線Wの先端部の絶縁被覆Wbを予め除去して導体Waを露出させておく。
【0024】
図8(a)に示すように、初期状態の圧着工具40では、クリンパ42が、アンビル41の上方に離間して配置されている。
被覆付電線Wの導体Waに雌型端子1のコンダクタバレル20を圧着する際には、まず、雌型端子1を、初期状態の圧着工具40のアンビル41の設置溝43上に設置する。また、被覆付電線Wの導体Waを、アンビル41の設置溝43上に設置された雌型端子1のコンダクタバレル20内に挿入する。
次に、クリンパ42をアンビル41側に向かって下降させて、アンビル41及びクリンパ42によるコンダクタバレル20の圧縮変形を開始する。ここで、コンダクタバレル20の第一圧着部21及び第二圧着部22は、ともに一対のアンビル41及びクリンパ42により同時に圧縮変形される。クリンパ42の下降を開始すると、図8(b)に示すように、コンダクタバレル20の第一圧着部21の幅方向の両端部及び第二圧着部22の幅方向の両端部が、それぞれアンビル41の圧縮溝44の内側面に沿って変形する。
【0025】
そして、クリンパ42をさらに下降させると、図8(c)に示すように、コンダクタバレル20の第一圧着部21の幅方向の両端部及び第二圧着部22の幅方向の両端部が、それぞれアンビル41の圧縮溝44の底面に沿って下方に向かって屈曲する。
また、クリンパ42をさらに下降させると、コンダクタバレル20の第一圧着部21の及び第二圧着部22が、それぞれコンダクタバレル20に挿入された導体Waを取り囲むように変形される。また、コンダクタバレル20の第一圧着部21の幅方向の両端部及び第二圧着部22の幅方向の両端部が、コンダクタバレル20に挿入された導体Waを圧縮する。そして、第一圧着部21及び第二圧着部22がコンダクタバレル20に挿入された導体Waを圧縮することによって、導体Wa同士の間の隙間及び導体Waとコンダクタバレル20との間の隙間が塞がれていく。
【0026】
そして、クリンパ42を下降させ、図8(d1)及び(d2)に示すように、コンダクタバレル20が所定の高さ(圧着高さ)αになるまで圧縮されると、導体Waへのコンダクタバレル20の圧着が完了する。ここで、コンダクタバレル20の第一圧着部21及び第二圧着部22は、ともに前後方向に沿って均一な高さαに圧縮される。
すなわち、展開状態において互いに異なる幅を有する第一圧着部21及び第二圧着部22は、一対のアンビル41及びクリンパ42によって、ともに同じ高さαになるまで、同時に(1回の圧縮工程で)圧縮される。また、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第二圧着部22の幅が第一圧着部21の幅と比較して広くなるように形成されている。
【0027】
これにより、第一圧着部21及び第二圧着部22が前後方向に沿って均一な高さαに圧着されると、第二圧着部22の幅方向の端部による導体Waの圧縮量が、第一圧着部21の幅方向の端部による導体Waの圧縮量と比較して多くなる。したがって、導体Waを圧着したコンダクタバレル20(圧着構造)では、第二圧着部22による導体Waの圧縮量が、第一圧着部21による導体Waの圧縮量と比較して多くなる。
【0028】
そして、展開状態の雌型端子1の第一圧着部21の幅は、第一圧着部21が所定の高さαに圧縮された際に、機械的特性が最適となる所定の圧縮率で導体Waを圧縮する寸法に設定されている。また、展開状態の雌型端子1の第二圧着部22の幅は、第二圧着部22が所定の高さαに圧縮された際に、電気的特性が最適となる所定の圧縮率で導体Waを圧縮する寸法に設定されている。
【0029】
その結果、導体Waを圧着したコンダクタバレル20では、導体Waの先端側の第二圧着部22で電気的特性が最適となる導体Waの圧縮率を得ることができ、導体Waの絶縁被覆Wb側の第一圧着部21で機械的特性が最適となる導体Waの圧縮率を得ることができる。すなわち、第一圧着部21は機械的特性が最適になるように導体Waに圧着され、第二圧着部22は電気的特性が最適になるように導体Waに圧着される。
したがって、導体Waを圧着したコンダクタバレル20によれば、導体Waの圧着部21,22で電気的特性及び機械的特性をともに最適とすることが可能となる。
【0030】
ここで、端子の圧着部で電気的特性及び機械的特性をともに最適とする従来の方法として、一つの端子に互いに独立した2つのコンダクタバレルを設ける方法がある。そして、両コンダクタバレルを、異なるアンビル及びクリンパによって、それぞれ異なる高さに圧縮する。しかしながら、この従来の方法では、端子を導体に圧着する際に、コンダクタバレルを圧縮する高さを、コンダクタバレルごとに管理する必要がある。したがって、この従来の方法では、端子を導体に圧着する際に、管理工数が増加するという問題がある。一方、本発明の実施の形態に係る方法では、導体Waにコンダクタバレル20を圧着する際には、第一圧着部21及び第二圧着部22を、ともに一対のアンビル41及びクリンパ42によって前後方向に沿って均一な高さαに圧縮すればよい。すなわち、導体Waにコンダクタバレル20を圧着する際には、一対のアンビル41及びクリンパ42のみでコンダクタバレル20全体の圧着作業を行うことができる。したがって、導体Waを圧着したコンダクタバレル20によれば、圧着時の管理工数を増加させることもない。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記実施の形態では種々の変更を行うことが可能である。
例えば、本実施の形態では、コンダクタバレル20が、第一圧着部21及び第二圧着部22からなる構成となっている。しかしながら、コンダクタバレル20が、前後方向に沿って連続して設けられた3つ以上の圧着部を有する構成としても構わない。この場合、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で3つ以上の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成される。そして、3つ以上の圧着部を、ともに前後方向に沿って均一な高さに圧縮する。これにより、3つ以上の圧着部で、それぞれ異なる導体Waの圧縮率を得ることが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態では、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第二圧着部22の幅が第一圧着部21の幅と比較して広くなるように形成されている。これにより、導体Waを圧着したコンダクタバレル20では、第二圧着部22による導体Waの圧縮量が、第一圧着部21による導体Waの圧縮量と比較して多くなっている。しかしながら、雌型端子1のコンダクタバレル20は、展開状態で第二圧着部22の幅を第一圧着部21の幅と比較して狭くなるように形成されても構わない。これにより、導体Waを圧着したコンダクタバレル20では、第二圧着部22による導体Waの圧縮量が、第一圧着部21による導体Waの圧縮量と比較して少なくなる。
さらに、本実施の形態では、本発明に係る圧着構造を電気コネクタ用の雌型端子1に適用している。しかしながら、本発明に係る圧着構造は、雄型端子、インシュレーショングリップを備えていない圧着端子等、種々の圧着端子に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る雌型端子を被覆付電線とともに示す斜視図である。
【図2】図1に示す雌型端子の平面部である。
【図3】図1に示す雌型端子の側面図である。
【図4】図1に示す雌型端子の底面図である。
【図5】図1に示す雌型端子の展開状態を示す平面図である。
【図6】図3の6−6線に沿う断面図である。
【図7】図3の7−7線に沿う断面図である。
【図8】圧着工具により図1に示す雌型端子の圧着部に導体を圧着するときの状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1 雌型端子
10 リセプタクル部
11 端子挿入口
13 基部
15 バレル部
20 コンダクタバレル
21 第一圧着部
22 第二圧着部
30 インシュレーショングリップ
C コンタクトキャリア
40 圧着工具
41 アンビル
42 クリンパ
43 設置溝
44 圧縮溝
W 被覆付電線
Wa 導体
Wb 絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンクリンプバレルによる導体の圧着構造であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた複数の圧着部を有し、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記複数の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成され、
前記複数の圧着部が、ともに前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されていることを特徴とする圧着構造。
【請求項2】
オープンクリンプバレルによる導体の圧着構造であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた第一圧着部及び第二圧着部を有し、
前記第二圧着部が、前記第一圧着部に対して前記導体の先端側に形成され、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記第二圧着部の幅が前記第一圧着部の幅と比較して広くなるように形成され、
前記第一圧着部及び前記第二圧着部が、ともに前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されていることを特徴とする圧着構造。
【請求項3】
オープンクリンプバレルによる導体の圧着方法であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた複数の圧着部を有し、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記複数の圧着部の幅がそれぞれ異なるように形成され、
前記複数の圧着部が、ともに一対のアンビル及びクリンパによって前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されることを特徴とする圧着方法。
【請求項4】
オープンクリンプバレルによる導体の圧着方法であって、
前記オープンクリンプバレルが、前記導体の延びる方向に沿って連続して設けられた第一圧着部及び第二圧着部を有し、
前記第二圧着部が、前記第一圧着部に対して前記導体の先端側に形成され、
前記オープンクリンプバレルは、展開状態で前記第二圧着部の幅が前記第一圧着部の幅と比較して広くなるように形成され、
前記第一圧着部及び前記第二圧着部が、ともに一対のアンビル及びクリンパによって前記導体の延びる方向に沿って均一な高さに圧縮されることを特徴とする圧着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−152110(P2009−152110A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330125(P2007−330125)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】