説明

圧縮機のリサイクル方法及び電動機のリサイクル方法

【課題】エアコン、冷蔵庫等に使用されている圧縮機は、省電力化を目的に貴重な資源である希土類磁石が使われている。使用済みとなった圧縮機から磁石を含めて部材を分離するリサイクル方法を提供する。
【解決手段】圧縮機に対して、カッタを用いたケース切断101によりステータ側102とポンプ側103に分離し、ポンプ側から押出104により鉄心を取り出し、取り出した鉄心に挿入された磁石を脱磁105した後、鉄心から磁石を取り出すこと106で、磁石106a、鉄心106b、ポンプ104b、ステータ102aを独立して回収する圧縮機のリサイクル方法及び電動機のリサイクル方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン、冷蔵庫等に使われる圧縮機のリサイクル方法および電動機のリサイクル方法に関わり、特に、圧縮機の部材別分離、回収に好適な圧縮機のリサイクル方法および電動機のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン、冷蔵庫等に使われる圧縮機はポンプと、それを動作させるためのモータ部、全体を覆うケースで構成され、さらにモータ部は銅線を巻いたステータと永久磁石を挿入した鉄心で構成されるのが一般的である。これらの構成部材はそれぞれ有用で、回収した圧縮機からこれらに分割・分別し、それぞれを部材としてリサイクルする方法の確立は資源循環の面で重要である。
【0003】
しかし圧縮機は低消費電力、低騒音、低振動、長寿命などの相反する要求に応えるため、強固な構造となっており、部材別に分割することが困難で、経済的に成り立つ方法での部材別のリサイクルが行われていないのが実情であった。
【0004】
部材のうち銅線付ステータを取り出す方法が、特許文献1に開示されており、これはケースを3分割する切込み加工を実施し、ステータ、鉄心、ポンプ部に分離し、その後ステータを構成する鉄と銅を分離するプロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−176430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されている方法は、ステータ、そしてそれを構成する鉄、銅のみを分離する方法を示すものである。
【0007】
圧縮機のリサイクル方法においては、圧縮機から、それを構成する部材である鉄、銅を含むステータに加え、鉄心、さらには磁石までを回収することが重要になる。特に、最近の圧縮機は省電力を目的に希土類を用いた磁石を用いており、この回収が非常に重要である。しかし、上記特許文献1にはこれらのことに関して記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決して、エアコン、冷蔵庫等に使われる圧縮機から、磁石、鉄心、銅線を巻いたステータ、ポンプ、ケースに分離・分割し、それぞれの部材を適正かつ有用にリサイクルすることを可能とする圧縮機のリサイクル方法をおよび電動機のリサイクル方法提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、ケースの切断、鉄心の末端にあるエンドプレートの切断、ポンプの押し出し、鉄心に内蔵されている磁石の脱磁、鉄心からの磁石の取り出しの一連のプロセスにより、前記磁石を含む圧縮機の構成部材を分割・分別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エアコン、冷蔵庫等に使われる圧縮機から、磁石、鉄心、銅線を巻いたステータ、ポンプ、ケースに分離・分割し、それぞれの部材を適正かつ有用にリサイクルすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例を説明する工程フロー図
【図2】実施例を説明する工程に沿った圧縮機の分離・分解図
【図3】磁石が挿入された鉄心の構造図
【図4】脱磁手順を説明する図
【図5】磁石取出しを説明する図
【図6】磁石取出しの別の方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、図2を用いて、本発明の実施手順の一例を示す。
【0013】
圧縮機201を装置に固定し、円周カッタ202aによりケース切断を実施する(ステップ101)。この切断は通常の円周切断を実施すれば良い。この作業により圧縮機はステータ側201a、ポンプ側201bに分離される。
【0014】
分離されたステータ側201aはさらにステータ取出作業によりケースとステータに分離(ステップ102)しても良いが、このステップは磁石取出しには必須ではない。
【0015】
次にステップ101で分離したポンプ側201bを装置に固定し、エンドプレートカッタ202bによりエンドプレートを切断(ステップ103)、さらにシャフト押出機構205により、シャフト204を押し出し、磁石入り鉄心104aとポンプ104b、シャフト204を分離する(ステップ104)。なおここではシャフト押し出しの前にエンドプレートを切断する作業(ステップ103)を書いているが、これはポンプ側201bの構造によっては必須ではない。
【0016】
次に磁石入り鉄心104aを脱磁する(ステップ105)。この方法については後述する。
【0017】
次に脱磁した磁石入り鉄心104aから磁石106aを取り出し、鉄心106bと分離する(ステップ106)。
【0018】
これらのステップにより磁石106aの取出しが可能となり、貴重な資源である希土類を含む磁石のリサイクルが容易となる。さらに鉄心104、ステータ102a、ケース102b。ポンプ203などの分離、分別が可能となり、資源の有効利用がより適切かつ簡便に行なえる。
【0019】
図3に磁石入り鉄心104aの概観図を示す。磁石入り鉄心104aは鉄心106bと磁石106aで構成されており、素材が異なるためこのままでは磁石106aは効率よく資源循環が出来ないため、両者の分離が必要であり、上述した通り脱磁(ステップ105)、分離(ステップ106)の工程が有効である。
【0020】
脱磁(ステップ105)の一例を図4を用いて説明する。分離した磁石入り鉄心104aを鉄心固定装置403に置き、上下動駆動装置405により磁石入り鉄心104aを磁界発生コイル402の中に挿入する。ここで電源401を用いて磁界発生コイル402に徐々に振幅が減少する交番磁界を発生させて磁石入り鉄心104aに印加することで、鉄心106bに挿入された磁石106aを脱磁することが出来る。
【0021】
なお脱磁の別の方法としては、磁石が一定の温度になると磁力を失う、すなわち脱磁される特性を利用し、磁石入り鉄心104aのみを高周波加熱コイル内もしくは電気炉内に挿入し、高周波加熱もしくは輻射加熱によって加熱することで、鉄心106bに挿入された磁石106aを脱磁することも出来る。このようにステップ105に示した脱磁の方法としては必ずしもこれらの方法に限定する必要はなく、挿入された磁石106aを脱磁することが重要である。ただし、常温かつ短時間(10秒程度)で脱磁が可能な最初にあげた交番磁界を発声させる方法がもっとも望ましい。
【0022】
次に磁石入り鉄心104aから磁石106aを取り出す方法(ステップ106)について、その一例を図5を用いて説明する。
【0023】
脱磁した磁石入り鉄心104aを、磁石106aが上下方向を向くように鉄心固定装置B502に置き、加振機構501により上下に加振する。加振の方法としては偏心カムを用いるなど一般的なもので良い。これにより磁石106aは鉄心106bから分離することが可能である。また別の磁石取出し方法を図6を用いて説明する。脱磁した磁石入り鉄心104aを、磁石106aが上下方向を向くように鉄心固定装置C603に置き、磁石106aの向きに磁石押出機構602を合わせ、上下駆動機構601により磁石106aを鉄心106bから押し出すことで磁石106aを分離する。
【0024】
これらの方法により圧縮機201を磁石106a、鉄心106b、ポンプ側104b、ステータ103b、カバー103bに分離することができ、各部材をより効率よくリサイクルすることが可能となる。
【0025】
以上、本発明について実施形態に基づき具体的に説明したが、個別に説明した数種の発明を組み合わせて使用することも可能である。また、本発明は前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において変更可能であることは言うまでもない。
【0026】
また、図1、図2を用いて説明した本工程は、圧縮機201からの磁石106aの取出しを説明しているが、ステップ105、ステップ106に示した脱磁、磁石取出し工程を用いれば、圧縮機201以外のモータにも適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0027】
101 ケース切断
102 ステータ取出し
102a ステータ
102b ケース
103 エンドプレート切断
104 ポンプ押し出し
104a 磁石入り鉄心
104b ポンプ
105 脱磁
106 磁石取出し
106a 磁石
106b 鉄心
201 圧縮機
201a ステータ側
201b ポンプ側
202a 円周カッタ
202b エンドプレートカッタ
203 ポンプ
204 シャフト
205 シャフト押出機構
401 電源
402 磁界発生コイル
403 鉄心固定装置
404 押出シャフト
405 上下動駆動装置
501 加振機構
502 鉄心固定装置B
601 上下駆動機構
602 磁石押出機構
603 鉄心固定装置C。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機のリサイクル方法であって、
圧縮機のケースにカッタにより切り込み加工を施し、前記圧縮機のステータ側とポンプ側を分離した後、前記ポンプ側を支えてシャフト押出機構により鉄心とポンプを分離、さらに前記鉄心を脱磁後、該鉄心から磁石を取り出すことを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記ケースを前記ステータ側と前記ポンプ側に分離した後、前記ステータ側に存在するステータをケースと分離する作業を加えることで、前期ステータも取り出すことを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項3】
請求項1および2に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記ステータ側と前記ポンプ側に分離した後、前記ポンプ側を前記鉄心と前記ポンプに分離する過程において、エンドプレートの一部にカッタによる切り込み加工を施した後、前記シャフト押出機構により前記鉄心と前記ポンプを分離することを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項4】
請求項1から3に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記ポンプ側より分離した前記鉄心に挿入されている磁石の脱磁において、
前記鉄心を脱磁コイル内に挿入し、
該脱磁コイルに徐々に振幅が減少する交番磁界を発生させて前記鉄心に印加し、
該鉄心に挿入された磁石を脱磁することを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項5】
請求項1から3に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記ポンプ側より分離した前記鉄心に挿入されている磁石の脱磁において、
前記鉄心部分のみを高周波加熱コイル内もしくは電気炉内に挿入し、高周波加熱もしくは輻射加熱によって鉄心を加熱し、
前記鉄心に挿入された磁石を脱磁することを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記鉄心に挿入されている磁石の取り出しにおいて、
前記鉄心を軸方向に挟み込んでいる一対のエンドプレートのうち、少なくとも一方のエンドプレートを取り外し、前記鉄心を脱磁した後、取り出した面が重力下向きになるように前記鉄心を保持しつつ、加振することで、前記挿入されている磁石を取り出すことを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項7】
請求項1〜5に記載の圧縮機のリサイクル方法であって、
前記鉄心に挿入されている磁石の取り出しにおいて、
前記鉄心を軸方向に挟み込んでいる一対のエンドプレートを切断などの方法で取り外し、その後、取り出した面が重力上下向きになるように前記鉄心を保持しつつ、前記挿入されている磁石を押し出すことで該磁石を取り出すことを特徴とする圧縮機の部材別分離、回収する圧縮機のリサイクル方法。
【請求項8】
電動機のリサイクル方法であって、
電動機の鉄心を脱磁コイル内に挿入し、
該脱磁コイルに徐々に振幅が減少する交番磁界を発生させて鉄心を印加し、鉄心に挿入された磁石を脱磁し、
該脱磁した鉄心に振動を与えて磁石を取出す
ことを特徴とする電動機の部材別分離、回収を行う電動機のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115815(P2012−115815A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270660(P2010−270660)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】