説明

圧縮水素ガスの貯蔵装置および貯蔵カートリッジ

圧縮水素ガス貯蔵装置が提供される。前記装置は、制御可能な吐出弁を備えた排出管が結合された密封ハウジングを備える。前記密封ハウジングは、圧縮水素ガスを蓄積且つ貯蔵するように構成された少なくとも2つの異なる種類の微小容器からなる集合体を備えたカートリッジを含むチャンバーを規定する。前記装置は、前記水素ガスを、前記カートリッジから前記チャンバーの前記カートリッジによって占有されていない空間に制御可能に遊離させるように構成された水素遊離手段も備える。前記装置は、前記制御可能な吐出弁および前記水素遊離手段と動作可能に結合され、それらの動作を制御するように構成された制御系によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に燃料貯蔵に関し、特に、水素ガスの蓄積および貯蔵に関する。
【背景技術】
【0002】
水素が非常にエネルギー密度の高い元素であり、燃焼による汚染が少ない燃料(clean-burning fuel)であることはよく知られている。水素のエネルギー密度は約120MJ/kgであるが、これは、最も一般的な燃料のエネルギー密度、例えば、天然ガス43MJ/kgおよびガソリン44.4MJ/kgの2倍を超える。水素は、燃焼によって、または燃料電池を介した酸化還元反応によって酸素と結合し、熱または電力を生み出すことができる。この反応の一次生成物は水であるが、水は無公害であり、リサイクルされて水素および酸素を再生できる。
【0003】
現在、水素エネルギーは、原子力産業、自動車運輸、自動車工業、化学工業、航空宇宙産業、携帯電源産業(携帯電話、コンピュータ、家庭電化製品)等で注目を集めている。特に、運輸部門は、世界の原油生産高の約半分を消費している。さらに、世界中の大都市の集積地域では、道路交通は、汚染物質および騒音の両方において、最も重大且つ急速に増加している排出源の1つである。新たな車両燃料としての水素は、汚染排出を削減または回避するとともに、発生する騒音レベルを大幅に減少させる機会を提供する。既に、水素で作動する内燃機関には騒音を低減する可能性があり、汚染物質レベルも著しく低下している。従って、経済の運輸部門が集中的に水素燃料を採用している。このことは、特に巨大都市および工業地帯における環境問題を解決するのに役立つ。
【0004】
水素エネルギーの問題の1つは、水素燃料の安全な貯蔵および燃焼室への供給である。最も一般的には、3つの基本的な水素貯蔵技術がある。水素は、低温液体として、または大きな容器内の圧縮ガスとして、あるいは金属水素化物のように、化合物中に化学的に結合された状態で貯蔵できる。
【0005】
液体水素の貯蔵には、−253℃(20K)という非常に低い極低温により、高度な設備条件が求められる。従って、液体貯蔵システム、移送管(transfer pipes)および燃料供給継手(refueling couplings)は、液体の状態を維持し、且つ液体水素の早期の急速な蒸発を避けるか、または遅らせるために、有効な断熱を必要とする。
【0006】
圧縮水素の貯蔵は、最も一般的な水素貯蔵方法である。通常、圧力レベルは約20MPa〜70MPaである。今日の貯蔵容器は、構造重量を減らすために、繊維複合材料を用いた設計で製造されることが多い。内部シェル(internal shell)は、ステンレス鋼またはアルミニウムからなり、ガラス繊維および/または炭素繊維が巻かれている。全てプラスチック材料からなるタンク設計も公知である。それにもかかわらず、ほとんどの圧縮ガス貯蔵タンクは、比較的大きくて重い。さらに、タンクに圧縮ガス状態の水素を蓄積する既存の技術では、10重量%未満という比較的低い水素の重量含有率(アキュムレーターの重量に対するアキュムレーター内の水素の重量の比)にしかならず、低レベルの防爆とともに、このパラメータをさらに増加させるには一定の制限がある。
【0007】
金属水素化物として気体水素を貯蔵する場合、金属合金の内部に水素を付着させることを利用する。このような水素の蓄積および貯蔵技術は、水素による過剰圧力が発生しないため、比較的防爆型である。金属水素化物として貯蔵する欠点は、金属合金の種類にもよるが、水素の再放出にある程度高い温度が必要とされること、および質量に関する貯蔵密度(mass related storage density)が低いことである。通常、水素の重量含有率は4.5%未満である。
【0008】
概念上は、物理的吸着によって他の材料における貯蔵も実現できる。例えば、カーボンナノファイバー(carbon nano-fibers)による水素貯蔵が公知である。しかし、これらの固体内での水素の結合は弱いため、金属水素化物として貯蔵する温度よりも貯蔵温度を低くしなければならない。
【0009】
また、中空ガラス微小球等の微小容器(micro-containers)に、水素を安全に貯蔵できることが知られている。個々の微小球に貯蔵される水素の量は非常に少なく、ゆえに不適切な取扱いや事故による爆発の可能性を排除できる。
【0010】
加熱されると、微小球の水素透過率が増加する。水素は、100℃〜400℃において、実用的速度(practical rates)で、微小球の薄いガラス壁を通過して中空の芯部に拡散できる。このため、高温高圧の環境下に微小球を置くことにより、微小球に気体を充填できるようになる。一旦冷却されると、室温では水素の拡散速度が大幅に低下することから、微小球は内部に水素を閉じ込める。続いて温度が上昇すると、拡散速度は増加する。従って、微小球に閉じ込められた水素は、後に温度を上げることによって放出される。
【0011】
例えば、米国特許第4,328,768号は、水素ガスが充填された中空微小球を400atmで燃料貯蔵室に貯蔵する燃料貯蔵供給システムを記載している。微小球は、燃料貯蔵室から、加熱された供給室を通って送り出され、この供給室において拡散により水素ガスが遊離してエンジンに供給される。その後、実質的に空になった微小球は、第2の貯蔵室に運ばれる。ポンプ等の機械的手段により、実質的に空になった微小球を貯蔵室に取り出し、そこから再充填のために取り出すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,328,768号明細書
【特許文献2】米国特許第4,981,625号明細書
【特許文献3】米国特許第5,260,002号明細書
【特許文献4】米国特許第5,376,347号明細書
【特許文献5】米国特許第6,224,794号明細書
【特許文献6】米国特許第6,890,592号明細書
【特許文献7】米国特許第6,998,074号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】D.B.Rapp、 J.E.Shelby著「ガラスの光増強型水素ガス放出(Photo-Enhanced Hydrogen Outgassing of Glass)」J. Non-Cryst. Solids, 2004, V.349, PP.254-259
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
微小容器に水素を蓄積且つ貯蔵する分野における公知技術にも関わらず、安全性を高めるとともにコスト削減をもたらすことになる、動作時の十分な水素負荷および放出速度に加えて、より高圧下での安全な水素貯蔵、より高い水素の重量含有率ならびに貯蔵時のより少ない水素損失を実現するために、さらなる改善が当該技術においてなお要求されている。また、水素ガスの遊離速度(rate of liberation)を制御可能に変えることができる新たな圧縮水素貯蔵装置を提供することは有利といえる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
包括的な一態様によれば、本発明は、上記従来技術の短所を部分的に排除した上で、新たな圧縮水素ガス貯蔵装置を提供する。具体的には、前記装置は、制御可能な吐出弁(controllable discharge valve)を備えた排出管が結合された密封ハウジングを備える。前記密封ハウジングは、カートリッジを含むチャンバーを規定する。本発明によれば、前記カートリッジは、圧縮水素ガスを蓄積且つ貯蔵するように構成された少なくとも2つの異なる種類の微小容器(micro-containers)からなる集合体(assembly)を備える。前記装置は、前記水素ガスを、前記カートリッジから前記チャンバーの前記カートリッジによって占有されていない空間(volume)に制御可能に遊離(放出)させるように構成された水素遊離手段(hydrogen liberating tool)も備える。好ましくは、前記装置は、前記制御可能な吐出弁および前記水素遊離手段と動作可能に結合され、それらの動作を制御するように構成された制御系も備える。前記ハウジングは、前記ハウジングを開けたり、密封したりするように構成された取外し式カバーを備えても良い。
【0016】
本発明によれば、前記微小容器に貯蔵された前記水素の圧力は、1000atmよりも高いことがある。また、前記チャンバーの前記カートリッジによって占有されていない前記空間に蓄積された前記水素の圧力は、1atmよりも高く、例えば、1atmから15atmの範囲内にあることがある。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記制御系は、前記チャンバー内の水素ガス圧力を示す圧力センサ信号を生成するように構成された圧力センサを含む。さらに、前記制御系は、前記排出管内の水素ガス圧力の流量を示すガス流量センサ信号を生成するように構成された流量計を含む。前記制御系は、前記圧力センサおよび前記流量計と動作可能に結合された制御部も含む。これにより、前記制御系は、前記圧力センサ信号および前記ガス流量センサ信号に反応する。従って、前記制御部は、前記水素遊離手段および前記吐出弁の動作を制御する制御信号を生成することができる。
【0018】
前記装置は、前記チャンバー内の圧力が危険レベルに到達すると、自動的に開くことができる少なくとも1つの安全弁をさらに備えても良い。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記カートリッジは、ケースと、前記ケース内に配置された2つの異なる種類の中空微小容器からなる集合体構造とを含む。前記ケースの壁の厚さは、前記微小容器の壁の厚さよりも少なくとも10倍大きいことがある。当該実施形態によれば、前記微小容器は、水素を部分的に透過させることが可能で且つ両端部が封止された少なくとも1つの中空微小筒(hollow micro-cylinders)と、水素を部分的に透過させることが可能な複数の中空微小球とから選ばれる。
【0020】
具体的には、前記微小容器の前記集合体は、管状の第1の部分と、前記第1の部分の内腔に配置された円筒状の第2の部分とを含む。本発明の一実施形態によれば、前記第1の部分は、前記第1の部分の軸方向に配置されている複数の密集した微小筒を含む。本発明の別の実施形態によれば、前記第1の部分は、前記第2の部分のまわりに巻きつけられた1つまたはそれ以上の中空微小筒を含む。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の部分は、前記第2の部分の円筒形空間(cylindrical volume)を埋めている複数の密集した微小球を含む。
【0022】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記カートリッジは、複数の界面ガス捕集器(interface gas collectors)を含み、各捕集器は、前記微小容器の総数のうち一部と関連付けられている。
【0023】
前記中空微小筒は、20℃〜30℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、70℃〜90℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料から作成されても良い。前記中空微小筒の前記材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きいことがある。前記中空微小筒の前記材料は、例えば、KEVLAR(登録商標)、TWARON(登録商標)、TERLON(登録商標)、ARMOS(登録商標)、TECHNORA(登録商標)等の異なるポリマーおよび複合材料から選ばれる。前記微小筒の外径は、例えば、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内でも良い。前記微小筒の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内でも良い。前記微小筒の外径は、前記集合体構造の前記第1の部分の内面から前記第1の部分の外面に向かうにつれて減少していても良い。前記微小筒の壁厚は、前記集合体構造の前記第1の部分の内面から前記第1の部分の外面に向かうにつれて増加していても良い。
【0024】
また、前記微小球は、50℃〜70℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、200℃〜250℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料から作成されても良い。前記微小球の前記材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きい。前記微小球の前記材料は、MgAlSiガラス(例えば、S−2ガラス(登録商標)、サンゴバン・ヴェトロテックス・テキスタイル社(Saint-Gobain Vetrotex Textiles)から入手可能なRガラス、日東紡績株式会社(日東紡)から入手可能なTガラス)および溶融石英等から選ぶことができる。前記微小球の外径は、例えば、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内でも良い。前記微小球の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内でも良い。前記微小球の外径は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分の周縁部に向かうにつれて減少していても良い。前記微小球の壁厚は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分の周縁部に向かうにつれて増加していても良い。前記微小球の壁厚は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分の周縁部に向かうにつれて増加する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記微小筒および前記微小球の外面は、少なくとも部分的に導電性水素吸収層で被覆されている。前記水素吸収層は、パラジウム、ニッケルおよびランタン−ニッケル合金の少なくとも1つから選ばれる金属からなる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記微小容器の少なくとも一部は、導電性接着材料により接合されている。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記水素遊離手段は、前記カートリッジと関連付けられた1つまたはそれ以上の電気加熱素子と、前記制御系に結合され、前記電気加熱素子を制御可能に駆動することにより、前記微小容器の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源(controllable power source)とを含む。
【0028】
例えば、前記水素遊離手段は、前記2つの異なる種類の微小容器にそれぞれ関連付けられた少なくとも2つの加熱素子と、前記制御系に結合され、前記少なくとも2つの加熱素子を制御可能に駆動することにより、前記微小容器の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源とを含んでも良い。具体的には、前記水素遊離手段は、前記カートリッジの前記第1の部分の両端で、前記微小球の前記導電性水素吸収層に結合された一対の第1電極を有する第1加熱素子と、前記カートリッジの前記第2の部分の両端で、前記微小筒の前記導電性水素吸収層に結合された一対の第2電極を有する第2加熱素子と、 前記制御系に結合され、前記第1加熱素子および前記第2加熱素子を制御可能に駆動することにより、前記微小球および前記微小筒の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源とを含んでも良い。
【0029】
別の例によれば、前記水素遊離手段は、前記カートリッジの前記第1の部分の両端で、前記導電性接着材料に結合された一対の第1電極を有する第1加熱素子と、前記カートリッジの前記第2の部分の両端で、前記導電性接着材料に結合された一対の第2電極を有する第2加熱素子と、前記制御系に結合され、前記第1加熱素子および前記第2加熱素子を制御可能に駆動することにより、前記微小容器の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源とを含んでも良い。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、前記水素遊離手段に少なくとも近接している前記微小筒の端部は、光増強型(photo-enhanced)水素拡散を特徴とする水素拡散材料(hydrogen diffuser material)からなるキャップで覆われている。一方、前記水素遊離手段は、所定の放射周波数範囲で作動する制御可能な放射源(controllable radiation source)を含む。前記制御可能な放射源は、前記放射源の動作を制御するように適合された前記制御系に結合されることにより、前記水素拡散材料が前記制御可能な放射源によって照射されると、前記水素拡散材料を介して光増強型水素拡散を行う。例えば、前記放射源の動作の制御は、照射される放射線の強度を変えることにより行うことができる。あるいは、前記放射源の動作の制御は、前記放射源を所定の周期でオンオフすることにより行うことができる。
【0031】
本発明のより重要な特徴について、以下の詳細な説明がよく理解されるように、また、当該技術に対する本発明の貢献がよく評価されるように、やや大まかに概略を述べた。本発明のさらなる詳細および利点は、以下の詳細な説明に記される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、水素ガス貯蔵装置の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る水素貯蔵カートリッジおよび水素遊離手段を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。
【図3】図3は、図2に示されたカートリッジの線A−Aに沿った水平断面を含む概略斜視図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態に係る水素貯蔵カートリッジおよび水素遊離手段を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。
【図5】図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る、本発明の一実施形態に係る水素貯蔵カートリッジおよび水素遊離手段を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。
【図6】図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る、本発明の一実施形態に係る水素貯蔵カートリッジおよび水素遊離手段を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。
【図7】図7は、図5に示されたカートリッジの線B−Bに沿った水平断面を含む概略斜視図である。
【図8】図8は、微小筒(マイクロチューブ)が巻かれた支持筒体の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、本発明を理解し、実際にはどのように本発明が実施され得るかを確かめるために、添付図面を参照しながら、限定されない例のみを用いて、好ましい実施形態について説明する。
【0034】
本発明に係る水素ガス貯蔵装置の原理および動作は、図面とそれに付随する説明を参照すれば、よく理解できるだろう。ただし、これらの図面は単なる例示を目的とするのであって、本発明を限定しようとするものではない。明確化のため、本発明の装置のさまざまな実施例を示す図面は、一定の縮尺で描かれておらず、均衡を欠いたものである。これらの図面におけるブロック(blocks)および他の要素は、物理的接続および/または物理的関係ではなく、各実体間の機能的関係を示すような、あくまで機能的実体(functional entities)を意味している。本発明の明細書全体を通して、図示された水素貯蔵装置およびその構成要素に共通している構成要素を識別するのに同一の参照符号およびアルファベット記号が用いられる。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る水素ガス貯蔵装置10の概略断面図である。水素ガス貯蔵装置10は、取外し式カバー12を有するハウジング11を備える。取外し式カバー12は、ハウジング11を開けたり、密封したりするように構成されている。密封ハウジング11は、チャンバー13を規定し、チャンバー13の内部には、留め具(図示せず)を用いてカートリッジ(モジュール)14が取り付けられている。カートリッジ14は、圧縮水素ガスを蓄積且つ貯蔵するために構成された少なくとも2つの異なる種類の微小容器(micro-containers)(図1では図示せず)からなる集合体(assembly)を備える。
【0036】
本発明によれば、一方の種類の微小容器は、他方の種類の微小容器とは、これらの微小容器からの水素放出速度が異なる。このような異なる水素放出速度は、以下の特徴、すなわちカートリッジ14の構造、カートリッジ14における微小容器の構成、微小容器の形状、および微小容器を形成する材料のうち、少なくとも1つを変えることによって実現できる。以下に、カートリッジ14における微小容器の種々の構成を説明する。
【0037】
カートリッジ14は、取外し式カバー12により封止される開口部(図示せず)を通って、チャンバー13に挿入されるとともに、チャンバー13から取り出される。装置10は、図1において箱形15で示され、カートリッジ14と関連付けられた少なくとも1つの水素遊離手段(hydrogen liberating tool)をさらに備える。装置10は、水素遊離手段15と動作可能に結合され、とりわけ水素遊離手段15の動作を制御するように構成された制御系16も備える。制御系16および水素遊離手段15は、ハウジング11の外側に配置され、制御系16および水素遊離手段15の両方に結合された制御可能な電源(controllable electric power source)19によって駆動される。
【0038】
水素遊離手段15は、非常に高圧で水素が貯蔵されているカートリッジ14から、中圧で水素が貯蔵されているチャンバー13のカートリッジ14によって占有されていない空間(volume)に、水素ガスを制御可能に遊離(放出)させるように構成されている。例えば、カートリッジ14の微小球に貯蔵された水素の圧力は1000atmよりも高くなることがあるが(例えば、1000atmから3000atmの範囲内)、チャンバー13の非占有空間(unoccupied volume)における水素の圧力は、1atmよりも高くなることがある(例えば、1atmから15atmの範囲内)。
【0039】
チャンバー13の非占有空間内の水素の圧力を測定するために、制御系16は、図1において箱形161で示され、ガス圧力センサ信号を生成するように動作可能な圧力センサを含む。圧力センサ161は、制御系16の制御部162に結合されている。制御部162は、とりわけガス圧力センサ信号に反応し、カートリッジ14から圧縮水素ガスを制御可能に遊離させるために、水素遊離手段15に対する制御信号を生成できる。
【0040】
ハウジング11の形状は、例えば、管状でも良い。しかし、一般に、任意のハウジング11の形状が用いられると理解されるだろう。ハウジング11は、好適な金属、プラスチックまたは複合材料から構成され、ハウジング11内部のガス圧力に起因する壁のひずみに耐えられる適切な壁厚を有していれば良い。
【0041】
装置10は、ハウジング11に結合された排出管17も備える。制御系16は、気体水素をチャンバー13から制御可能に排出させるために、排出管17に配置され、制御部162に結合された流量計163および吐出弁164も含む。動作時には、ガス流量センサ信号を生成するように動作可能な流量計163によって、排出管17における水素ガスの流量が測定される。流量計163が制御部162に結合されていることから、制御部162は、とりわけガス流量センサ信号に反応し、吐出弁164の動作を制御するバルブ制御信号を生成できる。その結果、排出された水素は、燃料として、またはユーザーが所望する反応の原料として用いることができる。装置10は、チャンバー13内の圧力が危険レベルに到達すると自動的に開くことができる1つまたは複数の安全弁18を備えても良い。
【0042】
本発明によれば、カートリッジ14の構造、カートリッジ14における微小容器の構成、微小容器の形状および微小容器を形成する材料等の特徴を異ならせることができる。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態に係る水素貯蔵カートリッジ14および水素遊離手段15を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。本実施形態によれば、カートリッジ14は、ケース141と、ケース141の内部に配置された2つの異なる種類の微小容器からなる集合体構造(assembly structure)とを含む。
【0044】
図3は、図2に示されたカートリッジの線A−Aに沿った水平断面を含む概略斜視図である。簡素化のため、図3にはケース141が示されていない。また、明確化のため、図2および図3だけでなく、これ以降の図(水素貯蔵カートリッジ14の他の構造例を示す)も一定の縮尺で描かれておらず、均衡を欠いたものであることに留意すべきである。
【0045】
図2および図3から理解されるように、微小容器の集合体構造は、管状の第1の部分31と、第1の部分31の内腔(lumen)に配置された円筒状の第2の部分32とを含む。
【0046】
第1の部分31は、第1の部分31の軸方向に配置されている複数の密集した中空微小筒(hollow micro-cylinders)(マイクロチューブ)310を含む。微小筒310の両端部22a、22bは、例えば、同等の壁厚を有する半球体で蓋をするなどして封止されている。中空微小筒310自体、または封止された両端部22a、22bのうちの少なくとも一方は、水素を少なくとも部分的に透過させる材料からなり、水素分子がそれを通って拡散できるようになっている。また、第2の部分32は、水素を部分的に透過させる材料からなり、第2の部分32の円筒形空間(cylindrical volume)を埋めている複数の密集した中空微小球320を含む。
【0047】
一般に、中空微小筒310は、任意の長さを有することができる。また、微小容器(微小筒310および微小球320)の外径dは、約50マイクロメートルから5ミリメートルの範囲内にあれば良い。微小筒310および微小球320の壁厚hの大きさは、微小筒310および微小球320に貯蔵された水素の圧力をρ、微小容器材料の引張り強さをσとするとき、式h/d=ρ/(2σ)から求められるdに対するhの比の値によって規定される。好ましくは、外径に対する壁厚の比は、ρおよびσにもよるが、0.01から0.2の範囲内にある。
【0048】
第1の部分の内側層(すなわち、主要部(bulk))に配置された微小筒は、周辺の微小筒とは、外径dおよび壁厚hが同じでも異なっていても良い。同様に、全ての微小球320は、ほぼ同じ寸法であっても、互いに異なる寸法であっても良い。
【0049】
好ましくは、図2に示されていないが、微小筒310の外径は、第1の部分31の内面311から第1の部分31の外面312に向かうにつれて減少する。同様に、さまざまな大きさの微小球の径は、第2の部分32の中心321から第2の部分32の周縁部322に向かうにつれて減少させても良い(図示せず)。径がより大きい微小筒および微小球を主要部に配置し、周縁部に向かうにつれて、径がより小さい微小筒および微小球を配置することによって、微小容器の径が小さくなるため、壁の張力が外周に向かって低下する水素蓄積貯蔵構造が形成されると理解されるだろう。従って、微小筒の壁厚は、集合体構造の内面から集合体構造の外面に向かうにつれて増加させることができる。同様に、微小球の壁厚は、第2の部分32の中心から第2の部分32の周縁部に向かうにつれて増加させることができる。
【0050】
好ましくは、中空微小筒310および中空微小球320は、それぞれ水素透過性が異なる材料からなる。具体的には、中空微小筒310は、20℃〜30℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、70℃〜90℃よりも高い温度で高い水素透過率(10倍を超える)を有する材料からなる。また、中空微小球320は、50℃〜70℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、200℃〜250℃よりも高い温度で高い水素透過率(10倍を超える)を有する材料からなる。例えば、20℃〜30℃における水素透過率は、それぞれ微小筒材料が約(1-10)・10-9cm/atm・secであり、微小球材料が約(1-10)・10-17cm/atm・secである。上記から分かるように、この温度間隔において、主に微小筒から水素が放出されるのに対して、微小球では、さらに温度が上昇する際、必要な場合はさらなる遊離を行うために、依然として水素が貯蔵されている。従って、微小容器の水素遊離速度を制御可能に変えることにより、水素貯蔵カートリッジ14からの水素ガスの多段的遊離(multi-stage liberation)が実現される。
【0051】
好ましくは、微小筒310として選ばれる材料は、引張り強さσが大きく、密度ρが低い。例えば、σ/ρ≧1000MPa・cm/gの条件を満たす材料は、微小筒310および微小球320に好適である。微小筒310に好適な材料の例として、ポリマー(例えば、アラミド、KEVLAR(登録商標)、TWARON(登録商標)、TERLON(登録商標)、ARMOS(登録商標)、TECHNORA(登録商標))等が挙げられるが、これらに限定されない。また、微小球320に好適な材料の例として、MgAlSiガラス(例えば、S−2ガラス(登録商標)、サンゴバン・ヴェトロテックス・テキスタイル社(Saint-Gobain Vetrotex Textiles)から入手可能なRガラス、日東紡績株式会社(日東紡)から入手可能なTガラス)および溶融石英等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
間隔をあけて配置された水素貯蔵用中空微小筒および中空微小球の製造方法は、それ自体公知である(例えば、ウォン・キュ・リム(Won-Kyu Rhim)らの米国特許第4,981,625号、イシイマサトの米国特許第5,260,002号、一本松正道らの米国特許第5,376,347号、ブライアン・G・アムスデン(Brian G. Amsden)らの米国特許第6,224,794号、トロイ・ロナルド・シーハファー(Troy Ronald Seehafer)らの米国特許第6,890,592号およびデリア・ラドゥレスク(Dalia Radulescu)の米国特許第6,998,074号参照。これらの開示内容は、引用により、本明細書に組み込まれる)。ゆえに、以下では詳述しない。
【0053】
図2に示された実施形態によれば、2つの異なる種類の微小容器からなる集合体構造は、ケース141に収容されている。必要な場合には、ケースの壁の内面を、集合体構造の第1の部分31の周辺の微小筒に結合させても良い。一般に、ケース141は、好適な金属、プラスチックまたは複合材料から構成され、ハウジング11に対するカートリッジの挿入および取り出し操作を行うのに十分な剛性を備えた任意の形状および構成であれば良い。例えば、ケース141および微小筒310は、同じ材料から作成されることがある。ケースの壁の厚さは、例えば、微小筒の厚さよりも10〜15倍大きい。図2に示されているように、ケース141は、円筒状、すなわちハウジング11の内面の形状を複製している。しかし、一般に、ケース141は、任意の形状を有することができる。必要な場合には、ケース141は、ユーザーがカートリッジ14を挿入、取り出しおよび/または運びやすくするために設けられた取っ手(図示せず)を備えても良い。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、集合体構造の微小容器(微小筒および微小球)は、ケース141内に密接して(密着して)詰まっており、好ましくは互いに接合することにより、強固な構造を形成している。特に、微小容器がガラス、ポリマーまたは金属製の場合、微小容器は、例えば、焼結によって接合される。同様に、微小容器を接合するのに接着剤等の接着材料を用いることもできる。
【0055】
微小容器は、集合体構造に組み立てられている。従って、集合体構造の第1の部分31において、隣接する微小筒が互いの壁に接触することにより、微小筒に沿って、筒同士の隙間(empty inter-cylinder spaces)33を形成する。同様に、隣接する微小球が互いの壁に接触することにより、集合体構造の第2の部分32に球同士の隙間(empty inter-sphere spaces)34を形成する。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、水素遊離手段15は、微小容器に貯蔵された水素ガスの遊離(拡散放出)を活性化するために、カートリッジ14と関連付けられた1つまたはそれ以上の電気加熱素子(electrically heating elements)等の活性化素子(activation element)を含む。図2に示された実施形態の場合、活性化素子は、集合体構造の第1の部分31と関連付けられた第1加熱素子151と、集合体構造の第2の部分32と関連付けられた第2加熱素子152とを含む。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、微小容器は、互いに接触するときに導電路が形成されるように、導電性材料からなる水素吸収層で被覆されている。この被覆層は、化学蒸着法、電気めっき、無電解めっき、ゾルゲル法、プラズマCVD法、スパッタリングおよび塗布(painting)から選ばれる少なくとも1つのコーティング法で形成することができる。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、微小容器の接合に利用される接着材料は、第1の部分および/または第2の部分にそれぞれ電圧が印加されたときに、この接着材料を介して電気的浸透(electrical percolation)が行われるように、導電性を有する。導電性材料に電圧が印加されると、導電性材料を流れる電流が発生し、それによって発熱を起こすと理解されるだろう。
【0059】
従って、本発明の当該実施形態によれば、第1加熱素子151は、第1の部分31の両端で、微小筒310を接合する導電性浸透接着材料(percolating electrical conductive adhesive material)に電気的に結合された一対の第1電極153を含む。第1加熱素子151は、上記接着材料を制御可能な電源19に結合するように構成されている。また、第2加熱素子152は、第2の部分32の両端で、微小球320を接合する浸透接着材料に電気的に結合された一対の第2電極154を含む。
【0060】
第1電気加熱素子151および第2電気加熱素子152は、制御可能な電源19によって駆動される。動作時には、圧力センサ161により測定されたチャンバー13内の水素ガスの圧力と、カートリッジが水素ガスの供給を開始するのに要する時間とに応じて、制御系は、とりわけ電源151の動作を制御するように適合されている。従って、制御可能な電源19によって駆動される第1および第2電気加熱素子は、一対の第1電極および/または第2電極に印加される電圧を制御可能に変えることができ、これにより微小筒310および微小球320の温度をそれぞれ変化させる。水素の遊離は、微小容器の集合体における第1の部分および/または第2の部分に印加される電圧を、チャンバー13内の圧力が必要レベルよりも低ければ増加させ、逆に必要レベルよりも高ければ減少させるような方法で制御することができる。
【0061】
微小容器の加熱中に温度を制御する必要がある場合、カートリッジ14は、例えば、筒同士および球同士の隙間に設けられ、微小容器の温度を測定し、且つ測定温度を示す温度センサ信号を生成するように構成された1つまたはいくつかの温度センサ(図示せず)を備えても良い。温度センサは、カートリッジ素子の過熱および損傷を避けるために、とりわけ温度センサ信号に反応し、電気加熱素子151、152を制御することができる制御系16に結合されても良い。
【0062】
制御可能な温度変化により、微小容器に貯蔵された水素ガスを、ケース141の微小容器によって占有されていない空間、すなわち筒同士の隙間33および球同士の隙間34のそれぞれに制御可能に放出することができる。また、ケース141の微小容器によって占有されていない上記空間に蓄積された水素ガスは、さらに、チャンバー13のカートリッジ14によって占有されていない空間130に排出することができる。例えば、水素ガスは、ケース141の壁を通って空間130に拡散できる。さらに、必要な場合には、水素をカートリッジ14から空間130に制御可能に遊離させるために、ケース141内に固有のバルブ(図示せず)を設けても良い。
【0063】
このような水素ガスの多段階遊離は、カートリッジ14の第1の部分を素早く加熱することにより、第1電気加熱素子151をオンにした後、例えば3〜5秒というかなり短い時間間隔で、微小筒310および筒同士の隙間33からの水素ガス供給を開始する可能性をもたらす。一方、カートリッジの第2の部分を比較的高温に加熱するには、より多くの時間がかかる。従って、微小球320および球同士の隙間34に貯蔵された水素ガスは、後の段階で供給される。
【0064】
図4は、本発明の別の実施形態に係る水素貯蔵カートリッジを備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。本実施形態のカートリッジは、図2に示されたカートリッジとは、複数の界面ガス捕集器(interface gas collectors)401を含み、各捕集器は、微小筒310の総数のうち一部と関連付けられている点が異なる。微小筒310のそれぞれの部分は、対応する加熱素子402を備えており、加熱素子402は、微小筒310を接合する導電性接着材料に結合された一対の電極を有する。
【0065】
動作時には、微小筒の各部分および筒同士の隙間に貯蔵された水素ガスを、対応する界面ガス捕集器401の空間に制御可能に放出することができる。さらに、界面ガス捕集器401からの水素ガスは、それぞれに対応する界面捕集器バルブ(interface collector valves)403を介して、チャンバー13のカートリッジ14によって占有されていない空間130に制御可能に排出することができる。界面捕集器バルブ403は、ガス捕集器401のケース内に配置され、且つ制御部162と動作可能に結合されている。例えば、圧力センサ161により測定されたチャンバー13内のガス圧力が所定の圧力値未満の場合、制御部162は、界面捕集器バルブ403の動作を制御する圧力制御信号(control pressure signals)を生成することにより、水素ガスを1つまたはそれ以上の界面ガス捕集器401からチャンバー13の空間130に排出させる。
【0066】
本発明の当該実施形態によれば、カートリッジは、微小球320の総数または一部と関連付けられた1つまたはそれ以上の界面ガス捕集器404を含むこともできる。微小球320は、対応する加熱素子を備えており、この加熱素子は、微小球320を接合する導電性接着材料に結合された一対の電極405を有する。動作時において、必要な場合には、まず水素ガスをガス捕集器404の空間に蓄積しても良い。水素をガス捕集器404から空間130に制御可能に排出するために、ガス捕集器404のケース内に固有の界面バルブ405を設けても良い。
【0067】
図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る水素貯蔵カートリッジおよび水素遊離手段15を備えた図1の装置の概略図である。本発明の当該実施形態によれば、カートリッジ14は、図2に示されたカートリッジと基本的に同じ構成である。具体的には、カートリッジ14は、ケース141と、ケース141の内部に配置された2つの異なる種類の微小容器からなる集合体構造とを含む。微小容器の集合体構造は、管状の第1の部分51と、第1の部分51の内腔に配置された円筒状の第2の部分52とを含む。
【0068】
第1の部分51は、第1の部分51の軸方向に配置されている複数の密集した中空微小筒510を含む。微小筒510の両端部53a、53bは、封止されている。具体的には、水素遊離手段15から遠い側にある微小筒510の端部53aは、水素不浸透性材料(impermeable to hydrogen material)からなるキャップ54aで封止されているのに対して、水素遊離手段15に近い側にある微小筒510の端部53bは、水素拡散材料(hydrogen diffuser material)からなるキャップ54bで封止されている。従って、(両端部から封止された)微小筒510は、高圧で水素ガスを貯蔵できる。
【0069】
本発明の当該実施形態によれば、端部53bを封止する水素拡散材料は、光増強型(photo-enhanced)水素拡散特性を有する。一例において、水素拡散材料は、光増強型水素拡散を特徴としている。赤外(IR)放射によって透過する水素の放出速度を大幅に加速させる材料は、当該技術分野において公知である(例えば、D.B.Rapp、 J.E.Shelby著「ガラスの光増強型水素ガス放出(Photo-Enhanced Hydrogen Outgassing of Glass)」J. Non-Cryst. Solids, 2004, V.349, PP.254-259参照)。例えば、市販のホウケイ酸ガラスに光学活性成分(例えば、Fe)をドープすることにより、赤外放射に対する水素の拡散速度の感度を劇的に高めることがある。
【0070】
本発明の当該実施形態によれば、微小筒510からの水素の遊離を活性化するために、水素遊離手段15は、キャップ54bが所定の周波数範囲で照射されると、このキャップ54bを介して光増強型水素拡散を行う制御可能な放射源(controllable radiation source)56等の活性化要素(activation element)を含む。キャップ54bの水素拡散材料にもよるが、制御可能な放射源56は、さまざまな電磁スケール(electromagnetic scale)の範囲で作動することができる。
【0071】
例えば、水素拡散材料が、FeがドープされたPyrex(登録商標)ガラスに基づく場合、制御可能な放射源56は、赤外(IR)ランプであっても良い。実際には、赤外放射によりドーパントが反応して、ガラス内に自然発生する微細孔(microscopic pores)を開ける。微小筒510内の高圧下にある水素は、キャップ54bに開けられた孔を通って拡散できる。この場合、微小筒510からの水素の放出は、赤外放射強度を変えることにより、および/または赤外放射源を単にオンオフすることにより制御できる。
【0072】
放射源56は、制御系16によって制御される。動作時には、チャンバー13内の水素ガスの圧力にもよるが、制御系は、とりわけ放射源36の動作を、照射される放射線の強度を変えることにより、および/または電源19を所定の周期でオンオフすることにより制御するように適合されている。その結果、微小筒510に貯蔵された水素は、チャンバー13のカートリッジ14によって占有されていない空間に制御可能に遊離される。例えば、チャンバー内の圧力が低ければ放射強度を増加させ、逆に高ければ放射強度を減少させれば良い。
【0073】
また、図2に示されたものと同様に、微小容器の集合体構造における第2の部分52は、水素を部分的に透過させる材料からなり、第2の部分52の円筒形空間を埋めている複数の密集した中空微小球520を含む。微小球520からの水素の遊離を活性化するために、水素遊離手段15は、第2の部分52と関連付けられ、微小球520を加熱するように構成された球加熱素子(sphere heating element)57を含む。図2に示された場合と同じく、球加熱素子57は、第2の部分52の両端で、微小球520を接合する浸透接着材料に電気的に結合された一対の電極571を含む。
【0074】
球加熱素子57は、制御可能な電源19によって駆動される。動作時には、圧力センサ161により測定されたチャンバー13内の水素ガスの圧力と、カートリッジが水素ガスの供給を開始するのに要する時間とに応じて、制御系は、とりわけ電源19の動作を制御するように適合されている。従って、制御可能な電源19によって駆動される球加熱素子57は、一対の電極571に印加される電圧を制御可能に変えることができ、これにより微小球520の温度を変化させる。水素の遊離は、微小容器の集合体における第2の部分に印加される電圧を、チャンバー13内の圧力が必要レベルよりも低ければ増加させ、逆に必要レベルよりも高ければ減少させるような方法で制御することができる。
【0075】
従って、本発明の装置は、カートリッジ14の第1の部分から水素ガスを遊離させることにより、制御可能な放射源56をオンにした後、例えば3〜5秒というかなり短い時間間隔で、微小筒510および筒同士の隙間33からの水素ガスの供給を開始する可能性をもたらす。その後、カートリッジの第2の部分を作動させることができるため、微小球520および球同士の隙間521に貯蔵された水素ガスは、後の段階で供給される。
【0076】
図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る水素貯蔵カートリッジ14および水素遊離手段15を備えた図1の装置の長手方向における概略断面図である。本実施形態によれば、カートリッジ14は、ケース141と、ケース141の内部に配置された2つの異なる種類の微小容器からなる集合体構造とを含む。図7は、図7に示されたカートリッジの線B−Bに沿った水平断面を含む概略斜視図である。簡素化のため、図7にはケース141が示されていない。
【0077】
図6および図7から理解されるように、微小容器の集合体構造は、管状の第1の部分61と、第1の部分61の内腔に配置された円筒状の第2の部分62とを含む。
【0078】
第1の部分61は、支持筒体(supporting cylinder)611と、第2の部分62のまわりに巻きつけられた少なくとも1つの中空微小筒(マイクロチューブ)610とを含む。例えば、第1の部分61は支持筒体611を含み、この支持筒体611に微小筒610が1つまたはそれ以上の層状に巻かれていても良い。微小筒610の端部は、例えば、同等の壁厚を有する半球体で蓋をするなどして封止されている。中空微小筒610は、水素を少なくとも部分的に透過させる材料からなり、水素分子がそれを通って拡散できるようになっている。図8に、微小筒(マイクロチューブ)が巻かれた支持筒体の例が示されている。
【0079】
微小容器の集合体構造における第2の部分62は、図2〜図5を参照しながら説明した上記第2の部分と同様である。すなわち、第2の部分62は、水素を部分的に透過させる材料からなり、支持筒体611の空間を埋めている複数の密集した中空微小球620を含む。
【0080】
本発明の当該実施形態によれば、水素遊離手段15は、第1および第2の部分61、62の微小容器に貯蔵された水素ガスの遊離(拡散放出)を活性化するために、カートリッジ14と関連づけられ、制御可能な電源19によって駆動される1つまたはそれ以上の電気加熱素子を含む。具体的には、活性化素子は、集合体構造の第1の部分61と関連付けられた第1加熱素子151と、集合体構造の第2の部分62と関連付けられた第2加熱素子152とを含む。
【0081】
本発明の当該実施形態によれば、コイル状に巻かれた微小筒610およびその層が互いに接触するときに導電路が形成されるように、微小筒610を導電性材料で被覆しても良い。さらに、コイル状に巻かれた微小筒610およびその層を接合するのに導電性接着材料を用いても良く、それによって第1の部分61に電圧が印加されたときに、この接着材料を介して電気的浸透が行われる。導電性材料に電圧が印加されると、導電性材料を流れる電流が発生し、その結果、水素ガスの放出に必要な発熱を起こす。
【0082】
同様に、微小容器が互いに接触するときに導電路が形成されるように、微小球を導電性材料で被覆しても良い。あるいは、微小球は、導電性接着材料と結合することにより、第2の部分に電圧が印加されたときに、この接着材料を介して電気的浸透が行われるようにしても良い。
【0083】
従って、本発明の当該実施形態によれば、第1加熱素子151は、コイル状の微小筒610に電気的に結合された一対の第1電極155を含む。一対の第1電極155は、微小筒を覆う導電層またはコイル状に巻かれた微小筒およびその層を接合する接着材料のどちらか一方に結合するように構成されている。また、第2加熱素子152は、第2の部分62の両端で、導電層または微小球620を接合する浸透接着材料のどちらか一方に電気的に結合された一対の第2電極156を含む。
【0084】
第1および第2加熱素子に印加される電圧を制御可能に変えることにより、微小容器に貯蔵された水素ガスを、ケース141の微小容器によって占有されていない空間に制御可能に放出することができる。また、この空間からの水素ガスは、さらに、チャンバー13のカートリッジ14によって占有されていない空間130に排出することができる。例えば、水素ガスは、ケース141の壁を通って空間130に拡散できる。さらに、必要な場合には、水素をカートリッジ14から空間130に制御可能に遊離させるために、ケース141内に固有のバルブ(図示せず)を設けても良い。
【0085】
このような水素ガスの多段階遊離は、カートリッジ14の第1の部分を素早く加熱することにより、第1電気加熱素子151をオンにした後、例えば3〜5秒というかなり短い時間間隔で、微小筒からの水素ガス放出を開始する可能性をもたらす。一方、カートリッジの第2の部分を比較的高温に加熱するには、より多くの時間がかかる。従って、微小球620および球同士の隙間34に貯蔵された水素ガスは、後の段階で供給される。
【0086】
水素蓄積貯蔵カートリッジ14は、高温高圧の環境に置かれることにより、水素ガスを充填することができる。微小容器(微小筒および微小球)がこの環境にさらされるように、カートリッジ14を密封しない方が良いことが理解されるだろう。
【0087】
公知のように、ガスは中空微小容器の内部にある微小容器の壁を通って拡散するが、その速度は、圧力および/または温度が上昇するにつれて増加する。この場合、各微小容器は、小容量・高圧格納容器(small-volume high-pressure containment vessel)として作用する。水素ガスを蓄積した後、カートリッジ14を高圧下で冷却してから、圧力を下げるか、または微小球内部と同じ大きさの圧力に維持しても良い。
【0088】
一実施形態によれば、水素蓄積貯蔵カートリッジ14の充填は、高圧に耐え、加熱装置を備えるオートクレーブ内で行われる。まず、オートクレーブを、例えば、真空昇圧ポンプで真空吸引することにより、空気を除去する。次に、このオートクレーブに過剰圧力になるまで水素ガスを充填する(約1atmから3000atmの範囲内でも良い)。その後、微小容器の材料にもよるが、約200℃から500℃の範囲内でオートクレーブを加熱する。カートリッジ14は、水素拡散によってオートクレーブ内の水素圧力と微小容器内の水素圧力とが等しくなるまで、このような条件下で維持される。次に、同じ過剰圧力で、室温になるまで装置を冷却する。例えば、24℃という比較的低い周囲温度で水素蓄積貯蔵カートリッジ14を維持することにより、微小容器から漏れる水素ガスの量を最小限に抑えられる。その結果、長期間にわたって、カートリッジ14に水素ガスを貯蔵できる。次に、オートクレーブ内の水素圧力を低下させれば、オートクレーブからカートリッジ14を取り出して、装置(図1では10)のチャンバー(図1では13)に配置することができる。水素遊離手段15が作動して、80℃から100℃の範囲内で温度が保たれると、水素は、微小筒からチャンバー(図1では13)に放出され始める。ゆえに、250℃から300℃の範囲内の温度に加熱すると、水素ガスが微小球から放出されることになる。
【0089】
従って、本発明が属する技術分野の当業者ならば、好ましい実施形態に関して本発明を説明したとはいえ、この開示が基づく概念は、本発明のいくつかの目的を実施するための他の構造、装置および方法を設計する基準として容易に利用され得ることが分かるだろう。
【0090】
上記では、筒状および球状という2種類の微小容器を記載したが、本発明は、これら2種類の微小容器に限定されない。同様に、微小容器は、楕円形でも、円錐形でも、他の形状であっても良い。
【0091】
本明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたものであって、限定とみなされるべきではないことが理解されるだろう。
【0092】
よって、本発明の範囲は、本明細書に記載された例示的な実施形態によって限定されるとして解釈されないことが重要である。すなわち、添付の請求項に規定された本発明の範囲内であれば、他の変更も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御可能な吐出弁(controllable discharge valve)(164)を備えた排出管(17)が結合された密封ハウジング(11)と、水素遊離手段(hydrogen liberating tool)(15)とを備えた圧縮水素ガス貯蔵装置であって、
前記密封ハウジング(11)は、圧縮水素ガスを蓄積且つ貯蔵するように構成された少なくとも2つの異なる種類の微小容器(micro-containers)からなる集合体(assembly)を備えたカートリッジ(14)を含むチャンバー(13)を規定し、
前記水素遊離手段(15)は、前記水素ガスを、前記カートリッジ(14)から前記チャンバー(13)の前記カートリッジ(14)によって占有されていない空間(volume)に制御可能に遊離させるように構成されていることを特徴とする圧縮水素ガス貯蔵装置。
【請求項2】
前記制御可能な吐出弁(164)および前記水素遊離手段(15)と動作可能に結合され、それらの動作を制御するように構成された制御系(16)をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御系(16)は、
前記チャンバー(13)内の水素ガス圧力を示す圧力センサ信号を生成するように構成された圧力センサ(161)と、
前記排出管(17)内の水素ガス圧力の流量を示すガス流量センサ信号を生成するように構成された流量計(163)と、
前記圧力センサ(161)および前記流量計(163)と動作可能に結合されるとともに、前記圧力センサ信号および前記ガス流量センサ信号に反応し、前記水素遊離手段(15)および前記吐出弁(164)の動作を制御する制御信号を生成することが可能な制御部(162)とを含む請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記チャンバー(13)内の圧力が危険レベルに到達すると、自動的に開くことができる少なくとも1つの安全弁(18)をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記微小容器は、水素を部分的に透過させることが可能で且つ両端部が封止された少なくとも1つの中空微小筒(hollow micro-cylinders)(310)と、水素を部分的に透過させることが可能な複数の中空微小球(320)とから選ばれる請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記微小容器の前記集合体の構造は、管状の第1の部分(31)と、前記第1の部分(31)の内腔に配置された円筒状の第2の部分(32)とを含み、
前記第1の部分(31)は、前記第1の部分(31)の軸方向に配置されている複数の密集した微小筒(310)を含み、前記第2の部分(32)は、前記第2の部分(32)の円筒形空間(cylindrical volume)を埋めている複数の密集した微小球(320)を含む請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記カートリッジ(14)は、複数の界面ガス捕集器(interface gas collectors)(401)を含み、各捕集器は、前記微小容器の総数のうち一部と関連付けられている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記微小容器の前記集合体の構造は、管状の第1の部分(61)と、前記第1の部分(61)の内腔に配置された円筒状の第2の部分(62)とを含み、
前記第1の部分(61)は、前記第2の部分(62)のまわりに巻きつけられた少なくとも1つの中空微小筒(610)を含み、前記第2の部分(62)は、前記第2の部分(62)の円筒形空間を埋めている複数の密集した微小球(620)を含む請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)は、20℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、70℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料からなる請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)の材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きい請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)の前記材料は、ポリマーおよび複合材料から選ばれる請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記微小筒(310)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記微小筒(310)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記微小筒(310)の外径は、前記集合体構造の前記第1の部分の内面から前記第1の部分(31)の外面に向かうにつれて減少する請求項6に記載の装置。
【請求項15】
前記微小筒(310)の壁厚は、前記集合体構造の前記第1の部分(31)の内面から前記第1の部分(31)の外面に向かうにつれて増加する請求項6に記載の装置。
【請求項16】
前記微小球(320)は、50℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、250℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料からなる請求項5に記載の装置。
【請求項17】
前記微小球(320)の材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きい請求項5に記載の装置。
【請求項18】
前記微小球(320)の前記材料は、MgAlSiガラス(例えば、S−2ガラス(登録商標)、サンゴバン・ヴェトロテックス・テキスタイル社(Saint-Gobain Vetrotex Textiles)から入手可能なRガラス、日東紡績株式会社(日東紡)から入手可能なTガラス)および溶融石英から選ばれる請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記微小球(320)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項6に記載の装置。
【請求項20】
前記微小球(320)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項8に記載の装置。
【請求項21】
前記微小球(320)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記微小球(320)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記微小球(320)の外径は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分の周縁部に向かうにつれて減少する請求項6に記載の装置。
【請求項24】
前記微小球(320)の外径は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分の周縁部に向かうにつれて減少する請求項8に記載の装置。
【請求項25】
前記微小球(320)の壁厚は、前記第2の部分(32)の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて増加する請求項6に記載の装置。
【請求項26】
前記微小球(320)の壁厚は、前記第2の部分(32)の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて増加する請求項8に記載の装置。
【請求項27】
前記微小筒(310)および前記微小球(320)の外面は、少なくとも部分的に導電性水素吸収層で被覆されている請求項5に記載の装置。
【請求項28】
前記水素吸収層は、パラジウム、ニッケルおよびランタン−ニッケル合金の少なくとも1つから選ばれる金属からなる請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記微小容器の少なくとも一部は、導電性接着材料により接合されている請求項2に記載の装置。
【請求項30】
前記水素遊離手段(15)は、前記少なくとも2つの異なる種類の微小容器にそれぞれ関連付けられた少なくとも2つの加熱素子(151および152)と、前記制御系(16)に結合され、前記少なくとも2つの加熱素子を制御可能に駆動することにより、前記微小容器の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源(controllable power source)(19)とを含む請求項2に記載の装置。
【請求項31】
前記水素遊離手段(15)は、
前記カートリッジ(14)の前記第1の部分(31)の両端で、前記微小球(320)の前記導電性水素吸収層に結合された一対の第1電極(153)を有する第1加熱素子(151)と、
前記カートリッジ(14)の前記第2の部分(32)の両端で、前記微小筒(310)の前記導電性水素吸収層に結合された一対の第2電極(154)を有する第2加熱素子(152)と、
前記制御系(16)に結合され、前記第1加熱素子(151)および前記第2加熱素子(152)を制御可能に駆動することにより、前記微小球(320)および前記微小筒(310)の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源(19)とを含む請求項27に記載の装置。
【請求項32】
前記水素遊離手段(15)は、
前記カートリッジ(14)の前記第1の部分(31)の両端で、前記導電性接着材料に結合された一対の第1電極(153)を有する第1加熱素子(151)と、
前記カートリッジ(14)の前記第2の部分(32)の両端で、前記導電性接着材料に結合された一対の第2電極(154)を有する第2加熱素子(152)と、
前記制御系(16)に結合され、前記第1加熱素子(151)および前記第2加熱素子(152)を制御可能に駆動することにより、前記微小容器の温度を制御可能に変化させるように構成された制御可能な電源(19)とを含む請求項29に記載の装置。
【請求項33】
前記水素遊離手段(15)に少なくとも近接している前記複数の微小筒(310)の端部は、光増強型(photo-enhanced)水素拡散を特徴とする水素拡散材料(hydrogen diffuser material)からなるキャップ(54b)で覆われており、一方、前記水素遊離手段(15)は、所定の放射周波数範囲で作動する制御可能な放射源(controllable radiation source)(56)を含み、前記制御可能な放射源(56)は、前記放射源(56)の動作を制御するように適合された前記制御系(16)に結合されることにより、前記水素拡散材料が前記制御可能な放射源(56)によって照射されると、前記水素拡散材料を介して光増強型水素拡散を行う請求項6に記載の装置。
【請求項34】
前記放射源(56)の動作の制御は、照射される放射線の強度を変えることにより行われる請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記放射源(56)の動作の制御は、前記放射源を所定の周期でオンオフすることにより行われる請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記微小容器に貯蔵された前記水素の圧力は、1000atmよりも高い請求項1に記載の装置。
【請求項37】
前記チャンバー(13)の前記カートリッジ(14)によって占有されていない前記空間に蓄積された前記水素の圧力は、1atmから10atmの範囲内にある請求項1に記載の装置。
【請求項38】
少なくとも2つの異なる種類の微小容器(micro-containers)からなる集合体(assembly)を備え、圧縮水素ガスを蓄積且つ貯蔵するカートリッジ(14)であって、
一方の種類の前記微小容器は、他方の種類の前記微小容器とは、これらの微小容器からの水素放出速度が異なることを特徴とするカートリッジ(14)。
【請求項39】
前記微小容器は、水素を部分的に透過させることが可能で且つ両端部が封止された少なくとも1つの中空微小筒(hollow micro-cylinders)(310)と、水素を部分的に透過させることが可能な複数の中空微小球(320)とから選ばれる請求項38に記載のカートリッジ。
【請求項40】
前記微小容器の前記集合体の構造は、管状の第1の部分(31)と、前記第1の部分(31)の内腔に配置された円筒状の第2の部分(32)とを含み、
前記第1の部分(31)は、前記第1の部分(31)の軸方向に配置されている複数の密集した微小筒(310)を含み、前記第2の部分(32)は、前記第2の部分(32)の円筒形空間(cylindrical volume)を埋めている複数の密集した微小球(320)を含む請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項41】
前記カートリッジ(14)は、複数の界面ガス捕集器(interface gas collectors)(401)を含み、各捕集器は、前記微小容器の総数のうち一部と関連付けられている請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項42】
前記微小容器の前記集合体の構造は、管状の第1の部分(61)と、前記第1の部分(61)の内腔に配置された円筒状の第2の部分(62)とを含み、
前記第1の部分(61)は、前記第2の部分(62)のまわりに巻きつけられた少なくとも1つの中空微小筒(610)を含み、前記第2の部分(62)は、前記第2の部分(62)の円筒形空間を埋めている複数の密集した微小球(620)を含む請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項43】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)は、20℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、70℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料からなる請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項44】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)の材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きい請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項45】
前記少なくとも1つの中空微小筒(310)の前記材料は、ポリマーおよび複合材料から選ばれる請求項44に記載のカートリッジ。
【請求項46】
前記微小筒(310)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項47】
前記微小筒(310)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項46に記載のカートリッジ。
【請求項48】
前記微小筒(310)の外径は、前記集合体構造の前記第1の部分の内面から前記第1の部分(31)の外面に向かうにつれて減少する請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項49】
前記微小筒(310)の壁厚は、前記集合体構造の前記第1の部分の内面から前記第1の部分(31)の外面に向かうにつれて増加する請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項50】
前記微小球(320)は、50℃よりも低い温度で相対的に低い水素透過率を有し、250℃よりも高い温度で10倍を超える高い水素透過率を有する材料からなる請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項51】
前記微小球(320)の材料の密度に対する引張り強さの比は、1000MPa・cm/gよりも大きい請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項52】
前記微小球(320)の前記材料は、MgAlSiガラス(例えば、S−2ガラス(登録商標)、サンゴバン・ヴェトロテックス・テキスタイル社(Saint-Gobain Vetrotex Textiles)から入手可能なRガラス、日東紡績株式会社(日東紡)から入手可能なTガラス)および溶融石英から選ばれる請求項50に記載のカートリッジ。
【請求項53】
前記微小球(320)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項54】
前記微小球(320)の外径は、50マイクロメートルから5000マイクロメートルの範囲内にある請求項42に記載のカートリッジ。
【請求項55】
前記微小球(320)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項53に記載のカートリッジ。
【請求項56】
前記微小球(320)の外径に対する壁厚の比は、0.01から0.2の範囲内にある請求項54に記載のカートリッジ。
【請求項57】
前記微小球(320)の外径は、前記第2の部分の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて減少する請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項58】
前記微小球(320)の外径は、前記第2の部分(32)の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて減少する請求項42に記載のカートリッジ。
【請求項59】
前記微小球(320)の壁厚は、前記第2の部分(32)の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて増加する請求項40に記載のカートリッジ。
【請求項60】
前記微小球(320)の壁厚は、前記第2の部分(32)の中心から前記第2の部分(32)の周縁部に向かうにつれて増加する請求項42に記載のカートリッジ。
【請求項61】
前記微小筒(310)および前記微小球(320)の外面は、少なくとも部分的に導電性水素吸収層で被覆されている請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項62】
前記水素吸収層は、パラジウム、ニッケルおよびランタン−ニッケル合金の少なくとも1つから選ばれる金属からなる請求項61に記載のカートリッジ。
【請求項63】
前記微小容器の少なくとも一部は、導電性接着材料により接合されている請求項1に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−540248(P2009−540248A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514985(P2009−514985)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000694
【国際公開番号】WO2007/144868
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507127129)シー.イーエヌ.リミテッド (4)
【出願人】(507127048)
【Fターム(参考)】