説明

圧電アクチュエータ

【課題】圧電アクチュエータの駆動効率を簡易な構成で向上させることにある。
【解決手段】立方体形状のステータ11には軸方向に貫通する貫通孔12が形成されており、貫通孔12には直進往復動自在にシャフト13が装着される。ステータ11のそれぞれの外周面には振動源である圧電セラミックス14が設けられて、圧電セラミックス14の外面に軸方向に2つの電極15,16が形成されるとともに、圧電セラミックス14の内側がステータ11を介して接地される。それぞれの電極15,16に相互に位相の異なる交流電圧が印加されると、貫通孔12の内周面に軸方向の楕円運動が形成されてシャフト13が軸方向に摩擦駆動される。シャフト13には中心方向に切り込まれたスリット23が形成されており、このスリット23がシャフト13の外周面とステータ11の内周面との摩擦接触圧を設定する設定部となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを直進駆動または回転駆動する圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
被駆動部材を回転駆動するために回転型の超音波モータが使用され、被駆動部材を直進駆動するためにリニア型の超音波モータが使用されている。これらのアクチュエータは、振動体の弾性振動を摩擦力により被駆動部材の運動に変換して被駆動部材を駆動するようにしている。振動体は金属等の弾性体とこれに貼り合わされる圧電素子とにより形成されており、超音波モータは圧電アクチュエータとも言われる。
【0003】
回転型の圧電アクチュエータとしては、外周部に振動体が設けられた円板形状の固定子と、振動体に接触するロータが設けられた回転軸とを有する超音波モータが特許文献1に記載されている。リニア型の圧電アクチュエータとしては、複数の突起が設けられた直線帯状弾性体を圧電振動子により振動させ、突起に配置された移動体を直進駆動するようにしたリニアモータが特許文献2に記載されている。
【0004】
超音波モータには、交流電圧を圧電素子に印加してその弾性振動により被駆動部材を駆動する定在波方式と、所定の位相差を持った交流電圧を一対の圧電素子に印加してその弾性振動で発生した進行波により被駆動部材を駆動する進行波方式とがある。進行波方式の超音波モータでは、被駆動部材の表面の楕円運動により摩擦駆動されて被駆動部材は進行波の進行方向とは逆向きに駆動される。
【特許文献1】特開平2−159984号公報
【特許文献2】特開2001−211670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
進行波方式の超音波モータは、進行波の進行に伴う振動体の表面の楕円運動により移動体を摩擦駆動しており、この摩擦力を効率良く移動体に作用させるために回転型の圧電アクチュエータにおいては特許文献1に記載されるように皿ばね等のばね部材を回転軸とロータとの間に組み付けている。リニア型の圧電アクチュエータにおいても直進駆動される移動体には、ばね部材等により帯状弾性体に対して押し付け力が加えられることになる。
【0006】
圧電アクチュエータは振動体の弾性振動を摩擦力により被駆動部材の回転運動や直動運動に変換しているので、電磁式や流体式のアクチュエータに比して小型化することができるという利点を有しており、カメラの自動焦点機構や手術用顕微鏡等に実用化されている。しかしながら、振動体と被駆動部材との間に摩擦力を加えるために、ばね部材を圧電アクチュエータに組み込む必要があり、圧電アクチュエータの小型化には限度があった。しかも、圧電アクチュエータは回転型とリニア型とでは、振動体の構造が相違していることから、基本構造が相互に全く相違しており、回転型とリニア型とでは互換性がない。
【0007】
圧電アクチュエータを小型化し、さらに、一つの圧電アクチュエータで直進駆動及び回転駆動の双方を実現するために、立方体形状のステータに貫通孔を形成し、その貫通孔の内周面に摩擦係合する外周面を有するシャフト状の被駆動部材を設けるとともに、上記ステータの貫通孔を取り囲む4つの外周面に厚さ方向に分極した圧電素子を取り付けた圧電アクチュエータが提案されている。
【0008】
この圧電アクチュエータでは、周方向に設けた4つの圧電素子に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加すると、各圧電素子の幅方向の伸縮によりステータの貫通孔の内周面に回転方向の楕円運動が発生して被駆動部材がその軸を中心として回転駆動する。また、上記の各圧電素子に軸方向に分離した2つの電極を設け、この2つの電極に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加すると、各圧電素子の軸方向の伸縮によりステータの貫通孔の内周面に軸方向の楕円運動が発生して被駆動部材がその軸方向に直進駆動する。
【0009】
しかしながら、上記の圧電アクチュエータにあっては、ステータ側の振動を摩擦力によって被駆動部材に伝達して被駆動部材を駆動するため、駆動効率を高めるためには、被駆動部材の外周面とステータの貫通孔の内周面との間で、適切な摩擦力を得るための機構が必要となり、また、被駆動部材の外周面やステータの貫通孔の内周面が使用によって摩擦すると、ステータから被駆動部材に駆動力を効率的に伝達することができなくなる場合があった。
【0010】
本発明の目的は、圧電アクチュエータの駆動効率を簡易な構成で向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧電アクチュエータは、シャフトをその軸方向に直進駆動する圧電アクチュエータであって、前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直線往復動自在に装着されるステータと、前記ステータの外周面に設けられる圧電素子と、前記シャフトの軸方向に電気的に分離され、前記圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための少なくとも2つの電極と、前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の圧電アクチュエータは、シャフトをその軸方向に直進駆動する圧電アクチュエータであって、前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直進往復動自在に装着されるステータと、前記ステータの外周面に前記シャフトの軸方向に設けられる少なくとも2つの圧電素子と、前記各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の圧電アクチュエータは、シャフトをその軸中心に回転駆動する圧電アクチュエータであって、前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが回転自在に装着されるステータと、前記シャフトの回転方向に相互にずらして前記ステータの外周面にそれぞれ設けられる少なくとも2つの圧電素子と、前記各圧電素子に設けられ、前記各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の圧電アクチュエータは、前記圧電素子を前記シャフトを中心として相互に対向させて前記ステータに設けることを特徴とする。本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記ステータは、前記貫通孔の形成方向に平面部を有する略直方体または略立方体であって、前記平面部の各々に前記圧電素子が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の圧電アクチュエータは、シャフトをその軸方向に直進駆動およびその軸中心に回転駆動する圧電アクチュエータであって、前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直線往復動自在かつ回転自在に装着されるステータと、前記ステータの外周面に設けられる第1の圧電素子と、前記シャフトの軸方向に電気的に分離され、前記第1の圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための少なくとも2つの電極と、前記シャフトの回転方向に相互にずらして前記ステータの外周面にそれぞれ設けられる少なくとも2つの第2の圧電素子と、前記第2の各圧電素子に設けられ、前記第2の各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第2の各圧電素子に設けられた電極は、前記シャフトの軸方向に電気的に分離されていることを特徴とする。本発明の圧電アクチュエータは、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを相互に軸方向にずらして前記ステータに設けることを特徴とする。
【0017】
本発明の圧電アクチュエータは、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを相互に回転方向にずらして前記ステータに設けることを特徴とする。本発明の圧電アクチュエータは、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを前記シャフトを中心として相互に対向させて前記ステータに設けることを特徴とする。
【0018】
本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記設定部は前記シャフトに横方向に切り込まれて軸方向に延びるスリットであり、前記シャフトの弾性変形により前記摩擦接触圧を設定することを特徴とする。本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記設定部は前記ステータに横方向に切り込まれて軸方向に延びるスリットであり、前記ステータの弾性変形により前記摩擦接触圧を設定することを特徴とする。本発明の圧電アクチュエータは、前記シャフトと前記ステータとのいずれか一方に耐摩耗性材料からなるスライダを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シャフトとステータの少なくとも一方にシャフトの外周面とステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部を設けたので、簡易な構成で圧電アクチュエータの駆動効率を向上させることができるとともに、摩擦接触圧を付与するばね部材等を設けなくても良いので小型化が可能である。
【0020】
また、シャフトの外周面やステータの内周面が摩耗した場合においても、摩擦接触圧によりシャフトの外周面がステータの内周面に押し付けられているので、駆動効率の低下を防止することが可能となる。さらに、摩擦接触圧を調整することにより、シャフトとステータとが強く密着するように設定すれば、停止時においてもシャフトがステータに保持されるため、停止時のシャフトの移動を防止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である圧電アクチュエータの斜視図であり、図2は図1における2−2線断面図であり、図3は図1におけるステータの3−3線断面図であり、図4は図1に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図であり、図5は図1に示す圧電アクチュエータの動作原理を示す概略断面図である。
【0022】
この圧電アクチュエータ10aは、直進駆動用の圧電アクチュエータであり、図1に示すように略立方体形状の金属製のステータ11を有している。図2および図3に示すように、ステータ11には軸方向(図3において横方向)に貫通する断面矩形状の貫通孔12が形成されており、貫通孔12には軸方向に延びる断面矩形状の中空形状のシャフト13が摺動自在に挿入されている。被駆動部材であるシャフト13の外周面は貫通孔12の内周面12aに摩擦係合しており、シャフト13がステータ11に直線往復動自在に装着されている。
【0023】
ステータ11としては、耐摩耗性と振動の温度特性の点から例えば燐青銅が用いられるが、これに限定されるものではない。また、シャフト13としては、例えばステンレスやアルミニウムが用いられるが、これに限定されるものではない。貫通孔12およびシャフト13は断面矩形状に限定されず、例えば、断面円形状であっても良く、その断面形状は任意であるが、シャフト13自体の回転を規制する場合は、断面形状が四角形や六角形等の角形状であれば何れの形状でも良く、さらにシャフト13は中空形状に限定されないのはもちろんである。
【0024】
ステータ11の外周には、内周面12aに対応させて貫通孔12の形成方向に平坦となった4つの平面部を有しており、図2に示すように、それぞれの平面部には振動源である圧電セラミックス14が貼り付け等により取り付けられている。この4つの圧電セラミックス14とステータ11とにより、シャフト13をその軸方向に直進駆動する直動用の振動体が形成される。圧電セラミックス14は、ステータ11の外周面にシャフト13を中心として相互に対向させて設けられている。直動用のステータ11は少なくとも1つの圧電セラミックス14が設けられるように、少なくとも1つの平面部を有する形状であれば良く、例えば略直方体形状であっても良い。
【0025】
それぞれの圧電セラミックス14は、厚さ方向に分極されており、この分極方向と同一方向の電圧を印加するとシャフト13の軸方向に収縮し、分極方向と反対方向の電圧を印加するとシャフト13の軸方向に延伸する。圧電セラミックス14としては、チタン酸バリウムやチタンジルコン酸鉛などが用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1および図3に示すように、圧電セラミックス14の外面(ステータ11と反対側の面)には、シャフト13の軸方向に電気的に分離された2つの電極15,16を有する直動用の電極が形成されており、軸方向に相互にずらして設けられた電極15,16は、それぞれ図示しないリード線により電気回路に接続されている。直動用の圧電セラミックス14の外面に形成される電極は2つで一対の電極対を構成しており、位相が異なる交流電圧を印加するため、電極は少なくとも2つ必要である。
【0027】
一方、圧電セラミックス14の内面(ステータ11側の面)には、電極17が電極15,16に対応して形成されており、圧電セラミックス14は電極17を介してステータ11の外周面に取り付けられている。電極17はステータ11と電気的に接触しており、ステータ11が接地されることにより、それぞれの圧電セラミックス14の一方の側は接地された状態となっている。
【0028】
図4に示すように、それぞれの電極15は交流電源18に接続され、また、それぞれの電極16は交流電源19に接続されている。交流電源18,19は、ともに同一の共振周波数かつ同一の振幅で相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を電極15,16を介して圧電セラミックス14に印加する直動用の電源ユニットを構成している。
【0029】
このように、各圧電セラミックス14は、シャフト13の軸方向に電気的に分離された2つの電極15,16を設けることにより、第1の電極15が設けられた第1の伸縮領域20と第2の電極16が設けられた第2の伸縮領域21との2つの伸縮領域を軸方向に有することになり、これらにより直動用の振動源を構成している。なお、ステータ11の外面の平面部にシャフト13の軸方向に相互にずらして2つの圧電セラミックスを取り付けることにより、軸方向に2つの伸縮領域を設けて直動用の振動源を構成するようにしても良い。また、電極17を電極15,16に対応させて2つの電極により形成したり、電極17を設けずに圧電セラミックス14の一方の側を直接ステータ11の外周面に取り付けたりしても良い。
【0030】
交流電源18,19の交流電圧は、正弦波状で相互に90°位相が相違しており、図5に示すように伸縮領域20,21にそれぞれ伸縮による弾性振動を発生させている。図5(A)〜(D)はこの弾性振動の4分の1周期ごとの状態を示しており、電極15,16に圧電セラミックス14の分極方向と反対方向の電圧を印加すると、伸縮領域20,21はともに延伸して図5(A)に示す状態となり、電極15に分極方向と同一方向の電圧を印加するとともに電極16に分極方向と反対方向の電圧を印加すると、伸縮領域20は収縮するが、伸縮領域21は延伸して図5(B)に示す状態となる。さらに、電極15,16に圧電セラミックス14の分極方向と同一方向の電圧を印加すると、伸縮領域20,21はともに収縮して図5(C)に示す状態になり、電極15に分極方向と反対方向の電圧を印加するとともに電極16に分極方向と同一方向の電圧を印加すると、伸縮領域20は延伸するが、伸縮領域21は収縮して図5(D)に示す状態となる。
【0031】
電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加することにより、上記のように図5(A)〜(D)に示す状態が連続的に変化し、交流電圧を印加し続けている間は伸縮による弾性振動が繰り返される。貫通孔12の内周面12aには、図5(A)〜(D)に示すように圧電セラミックス14がシャフト13の軸方向に伸縮するのに伴い、シャフト13の軸方向一端側つまり図中の左方向へ進行する進行波の波面が形成される。
【0032】
内周面12aに形成された進行波が進行すると、シャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの接触部分が進行方向に向かって連続的に変化する。この変化を貫通孔12の内周面12aの何れかの一点についてみると、進行波の進行に伴って図において反時計回りに楕円運動をしている。図5(C)に示すように、この楕円運動の頂点ではステータ11の内周面12aとシャフト13の外周面とが接触して進行波の進行方向と逆向きの摩擦力が作用して、シャフト13は進行波の進行方向と逆向きの図5において右方向に摩擦駆動される。
【0033】
このように、ステータ11の外周面に設けられた圧電セラミックス14に軸方向に電気的に分離されて形成された電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加することで、貫通孔12の内周面12aに軸方向の進行波の波面が形成され、貫通孔12の内周面12aでは軸方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、内周面12aと摩擦係合する外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。したがって、ステータ11の貫通孔12内に存在するシャフト13の外周面全体に摩擦力を介して駆動力を伝達することができるので、シャフト13をその軸方向に直進駆動するこの圧電アクチュエータ10aを小型化することができる。逆に、進行波の進行方向を図5において右方向に反転させると、シャフト13の直進駆動方向は反転することとなる。
【0034】
図1に示すように、シャフト13には中心方向に切り込まれて軸方向に伸びるスリット23が形成されており、スリット23は、シャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの摩擦接触圧を設定する設定部となっている。シャフト13にスリット23を形成したことによって、シャフト13はスリット23の間隔を狭める方向に弾性変形が可能となっており、シャフト13をステータ11の貫通孔12に装着した後、シャフト13の弾性復元力によって、シャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に適正な摩擦接触圧を付与することができるようになっている。したがって、シャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に簡易な構成で摩擦力を発生させることができ、圧電アクチュエータ10aの駆動効率を向上させることができるとともに、シャフト13自体によって摩擦接触圧を発生させることができるため、摩擦接触圧を付与するばね部材等を設けなくても良く、圧電アクチュエータ10aの小型化が可能である。
【0035】
また、摩擦接触圧によりシャフト13の外周面がステータ11の内周面12aに押し付けられているので、シャフト13の外周面やステータ11の内周面12aが使用によって摩耗した場合においても駆動効率の低下を防止することができる。さらに、摩擦接触圧を調整することにより、シャフト13がステータ11の内周面12aに強く圧接するように設定すれば、停止時においてもシャフト13をステータ11に保持する保持力を有することになるため、停止時のシャフト13の移動を防止することも可能となる。
【0036】
シャフト13の軸方向両端部の外周面には、横方向(幅方向)に突出するストッパ24が取り付けられており、シャフト13の軸方向変位の最大変位量を規定するとともに、シャフト13のステータ11からの抜けを防止している。ストッパ24は、必ずしもシャフト13に取り付ける必要はなく、ステータ11や圧電アクチュエータ10aの外部に取り付けるようにしても良い。
【0037】
また、この種の圧電アクチュエータでは、進行波を形成させる振動体の伸縮がミクロンオーダーであり、1サイクルの変位量が極めて小さいため、超音波領域の周波数の振動を発生させている。この振動の他の機器への伝播と振動による駆動効率の低下を防止するために、ステータ11は防振支持台25を介して固定される。なお、防振支持台25を介してシャフト13を固定するようにしても良い。
【0038】
なお、本実施の形態においては、圧電セラミックス14に電気的に分離した2つの電極15,16を形成し、電極15,16に位相が90°異なる交流電圧を印加して貫通孔12の内周面12aに軸方向の楕円運動を発生させてシャフト13を直進駆動させるものを例示したが、ステータ11の外周面にシャフト13の軸方向に2つの圧電セラミックスを貼り付け、この2つの圧電セラミックスに位相が90°異なる交流電圧を印加して貫通孔12の内周面12aに軸方向の楕円運動を発生させてシャフト13を直進駆動させるように構成しても良い。
【0039】
図6は本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図であり、図7は図6における7−7線断面図であり、図8は図6に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。なお、これらの図において、前述した圧電アクチュエータと共通する部材には同一の符号が付されている。
【0040】
この圧電アクチュエータ10bは回転駆動用の圧電アクチュエータであり、図7に示すように、略立方体形状の金属製のステータ11には、軸方向に貫通する断面円形状の貫通孔12が形成されている。貫通孔12には軸方向に延びる断面円形状の中空形状のシャフト13が摺動自在に挿入されている。被駆動部材であるシャフト13はその外周面に設けられた後述するスライダを介して貫通孔12の内周面12aに摩擦係合しており、シャフト13がステータ11に回転自在に装着されている。
【0041】
ステータ11の外周には、貫通孔12の形成方向に平坦となった4つの平面部を有しており、図7に示すように、それぞれの平面部に振動源である圧電セラミックス28が貼り付け等により取り付けられている。この4つの圧電セラミックス28とステータ11とにより、シャフト13をその軸中心に回転駆動する回転用の振動体が形成される。回転用の圧電セラミックス28は、シャフト13の回転方向に少なくとも2つ必要であるため、回転用のステータ11は、シャフト13の回転方向に相互にずらして設けられた少なくとも2つの平面部を有する形状であれば良く、例えば略直方体形状であっても良い。さらに、駆動の安定性などを考慮すると、回転用の圧電セラミックス28は、シャフト13の回転方向に3つ以上、特に4つ設けることが好ましく、ステータ11は、回転方向に相互にずらして設けられた少なくとも3つ、好ましくは4つの平面部を有する形状であることが好ましい。
【0042】
圧電セラミックス28は、ステータ11の外周面にシャフト13を中心として相互に対向させるとともにシャフト13の回転方向に相互にずらして設けられている。それぞれの圧電セラミックス28は、厚さ方向に分極されており、この分極方向と同一方向の電圧を印加するとシャフト13と直交する幅方向に収縮し、分極方向と反対方向の電圧を印加するとシャフト13と直交する幅方向に延伸する。
【0043】
図7に示すように、4つの圧電セラミックス28の外面(ステータ11と反対側の面)には、回転駆動用の電極として電極29〜32が形成されており、これらは図示しないリード線により電気回路に接続されている。一方、圧電セラミックス28の内面(ステータ11側の面)には、電極17が電極29〜32に対応して形成されており、圧電セラミックス28は、電極17を介してステータ11の外周面に取り付けられている。電極17はステータ11と電気的に接触しており、ステータ11が接地されることによりそれぞれの圧電セラミックス28の一方の側は接地された状態となっている。
【0044】
図8に示すように、電極29〜32はそれぞれ交流電源33〜36に接続されている。交流電源33〜36は、ともに同一の共振周波数かつ同一の振幅で相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を電極29〜32を介して各圧電セラミックス28に印加する回転用の電源ユニットを構成している。
【0045】
このように、4つの圧電セラミックス28は、回転方向に分離されて配置されており、これらにより第1の電極29が設けられた第1の伸縮領域37と、第2の電極30が設けられた第2の伸縮領域38と、第3の電極31が設けられた第3の伸縮領域39と、第4の電極32が設けられた第4の伸縮領域40とを有する構成となっている。
【0046】
交流電源33〜36の交流電圧は、相互に90°位相が相違しており、シャフト13の回転方向に相互にずらしてステータ11に設けられた各伸縮領域37〜40に弾性振動を発生させている。ステータ11の貫通孔12の内周面12aには、4つの圧電セラミックス28がシャフト13と直交する幅方向に伸縮するのに伴い、図7において反時計回りの回転方向へ進行する進行波の波面が形成される。つまり、内周面12aにおいて各伸縮領域37〜40の弾性振動によって、内周面12aに弾性振動の進行波の波面が形成される。この進行波の進行によりステータ11の内周面12aには回転方向に楕円運動が発生し、ステータ11の内周面12aとシャフト13の外周面との間に進行波の進行方向と逆向きの摩擦力が作用し、シャフト13は進行波の進行方向と逆向きの時計回りの回転方向へ摩擦駆動される。
【0047】
このように、ステータ11の外周面に回転方向に相互にずらして設けられた圧電セラミックス28に形成された電極29〜32に相互に位相が90°異なる交流電圧を印加することで、貫通孔12の内周面12aに回転方向の進行波の波面が形成され、内周面12aには回転方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、内周面12aと摩擦係合する外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。したがって、ステータ11の貫通孔12内に存在するシャフト13の外周面全体に摩擦力を介して駆動力を伝達することができるので、シャフト13をその軸中心に回転駆動するこの圧電アクチュエータ10bを小型化することができる。逆に、内周面12aに形成される進行波の進行方向を図7において時計回りの回転方向に反転すると、シャフト13の回転駆動方向は反転することとなる。
【0048】
図6および図7に示すように、シャフト13の外周面には耐摩耗性材料からなるスライダ41が設けられており、スライダ41を介してシャフト13が貫通孔12の内周面12aに摩擦係合する構成となっている。このスライダ41により、貫通孔12の内周面12aやシャフト13の外周面の摩耗が低減されるため、圧電アクチュエータ10bの駆動効率の低下を防止することができるとともに、シャフト13の駆動時における防音効果が得られる。
【0049】
シャフト13およびスライダ41には中心方向に切り込まれて軸方向に伸びるスリット23が形成されており、スリット23は、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの摩擦接触圧を設定する設定部となっている。シャフト13およびスライダ41にスリット23を形成したことによって、シャフト13は、スリット23の間隔を狭める方向に弾性変形が可能となっており、シャフト13をステータ11の貫通孔12に装着した後、シャフト13の弾性復元力によって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に適正な摩擦接触圧を付与することができるようになっている。したがって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に簡易な構成で摩擦力を発生させることができ、圧電アクチュエータ10bの駆動効率を向上させることができるとともに、シャフト13自体によって摩擦接触圧を付与することができるため、摩擦接触圧を付与するばね部材等を設けなくても良く、圧電アクチュエータ10bの小型化が可能である。
【0050】
また、摩擦接触圧によりシャフト13の外周面がステータ11の内周面12aに押し付けられているので、シャフト13に設けたスライダ41の外周面やステータ11の内周面12aが使用によって摩耗した場合においても駆動効率の低下を防止することができる。さらに、摩擦接触圧を調整することにより、シャフト13がステータ11の内周面12aに強く圧接するように設定すれば、停止時においてもシャフト13をステータ11に保持する保持力を有することになるため、停止時のシャフト13の回転を防止することも可能となる。
【0051】
シャフト13の軸方向両端部の外周面には、横方向(幅方向)に突出するストッパ24が取り付けられており、シャフト13のステータ11からの抜けを防止している。また、ステータ11は防振支持台25を介して固定される。
【0052】
図9は本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図であり、図10は図9における10−10線断面図であり、図11は図9におけるステータの11−11線断面図であり、図12は図9に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。なお、これらの図において、前述した圧電アクチュエータと共通する部材には同一の符号が付されている。
【0053】
この圧電アクチュエータ10cは、直進駆動および回転駆動の双方が可能な併用型の圧電アクチュエータであり、図10および図11に示すように、2つの略立方体形状の金属製のステータ体11a,11bを有するステータ11には、軸方向に貫通する断面円形状の貫通孔12が形成されている。ステータ11は、2つのステータ体11a,11bが連結部材11cにより軸方向に連結されて形成されており、貫通孔12には軸方向に延びる断面円形状のシャフト13が摺動自在に挿入されている。被駆動部材であるシャフト13はその外周面に設けられた後述するスライダを介して貫通孔12の内周面12aに摩擦係合しており、シャフト13がステータ11に直線往復動自在かつ回転自在に装着されている。なお、連結部材11cを設けずにステータ体11a,11bを一体に形成するようにしても良い。
【0054】
ステータ体11aは直動用のステータとなっており、貫通孔12の形状を除いては上記した圧電アクチュエータ10aにおける直動用のステータ11と同様の構造となっている。同様に、ステータ体11bは回転用のステータとなっており、図10に示すように、上記した圧電アクチュエータ10bにおける回転用のステータ11と同様の構造となっている。したがって、ステータ体11a,11bについての説明は省略する。
【0055】
図12に示すように、圧電アクチュエータ10cに接続された電気回路の電源ユニットは、ステータ体11aの第1の圧電セラミックス14に設けられた電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加する直動用の交流電源18,19と、ステータ体11bの第2の圧電セラミックス28に設けられた電極29〜32に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加する回転用の交流電源33〜36とを有している。電気回路にはスイッチ47が設けられており、直動用の交流電源18,19と回転用の交流電源33〜36との何れか一方に切り換え可能となっている。
【0056】
図12に示すように直動用の交流電源18,19にスイッチ47が切り換えられると、ステータ体11aの外周面に設けられた各圧電セラミックス14に軸方向に電気的に分離されて形成された電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧が印加されて、貫通孔12の内周面12aに軸方向の進行波の波面が形成され、貫通孔12の内周面12aでは軸方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、貫通孔12の内周面12aと摩擦係合する外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。つまり、シャフト13がその軸方向に直進駆動される。
【0057】
一方、回転用の交流電源33〜36にスイッチ47が切り換えられると、ステータ体11bの外周面に回転方向に相互にずらして設けられた圧電セラミックス28に形成された電極29〜32に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧が印加されて、貫通孔12の内周面12aに回転方向の進行波の波面が形成され、内周面12aには回転方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、内周面12aに摩擦係合される外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。つまりシャフト13がその軸中心に回転駆動される。
【0058】
このように、貫通孔12の形成方向に平坦となったステータ11の外周面に、それぞれシャフト13を中心として相互に対向して設けられた直動用の第1の圧電素子14と回転用の第2の圧電素子28とを相互に軸方向にずらして設けたので、内周面12aに発生する楕円運動によってステータ11の貫通孔12内に存在するシャフト13の外周面全体に摩擦力を介して駆動力が伝達できるので、圧電アクチュエータ10cを小型化することができるとともに、電気回路のスイッチ47を切り換えることで一つの圧電アクチュエータ10cでシャフト13をその軸方向に直進駆動およびその軸中心に回転駆動することができる。
【0059】
圧電アクチュエータ10bと同様に、シャフト13の外周面には、耐摩耗性材料からなるスライダ41が設けられており、スライダ41を介してシャフト13が貫通孔12の内周面12aに摩擦係合する構成となっている。このスライダ41により、貫通孔12の内周面12aやシャフト13の外周面の摩耗が低減されるため、圧電アクチュエータ10cの駆動効率の低下を防止することができるとともに、シャフト13の駆動時における防音効果が得られる。
【0060】
また、シャフト13およびスライダ41には中心方向に切り込まれて軸方向に伸びるスリット23が形成されており、スリット23はスライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの摩擦接触圧を設定する設定部となっている。シャフト13およびスライダ41にスリット23を形成したことによって、シャフト13はスリット23の間隔を狭める方向に弾性変形が可能となっており、シャフト13をステータ11の貫通孔12に装着した後、シャフト13の弾性復元力によって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に適正な摩擦接触圧を付与することができるようになっている。
【0061】
したがって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に簡易な構成で摩擦力を発生させることができ、圧電アクチュエータ10cの駆動効率を向上させることができるとともに、シャフト13自体によって摩擦接触圧を発生させることができるため、摩擦接触圧を付与するばね部材等を設けなくても良く、圧電アクチュエータ10cの小型化が可能である。
【0062】
図13は本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図であり、図14は図13における14−14線断面図であり、図15は図13に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。なお、これらの図において、前述した圧電アクチュエータと共通する部材には同一の符号が付されている。
【0063】
この圧電アクチュエータ10dは、直進駆動および回転駆動の双方が可能な併用型の圧電アクチュエータであり、図13および図14に示すように、断面正八角形状の金属製のステータ11を有している。ステータ11には、軸方向に貫通する断面円形状の貫通孔12が形成されており、貫通孔12には軸方向に延びる断面円形状のシャフト13が摺動自在に挿入されている。被駆動部材であるシャフト13はその外周面に設けた後述するスライダを介して貫通孔12の内周面12aに摩擦係合しており、シャフト13がステータ11に直線往復動自在かつ回転自在に装着される。
【0064】
ステータ11の外周には、内周面12aに対応させて貫通孔12の形成方向に平坦となった8つの平面部を有しており、図14に示すように、それぞれの平面部に振動源である第1の圧電セラミックス14と第2の圧電セラミックス28とが交互に設けられて、それぞれ4つずつの圧電セラミックス14,28とステータ11とにより併用型の振動体が形成される。圧電セラミックス14,28は、それぞれシャフト13を中心として相互に対向させるとともにシャフト13の回転方向に相互にずらしてステータ11の外周面に設けられている。
【0065】
4つの圧電セラミックス14は、直動用の圧電セラミックスを構成しており、上記した圧電アクチュエータ10aにおける直動用の圧電セラミックス14と同様の構造となっている。同様に、4つの圧電セラミックス28は、回転用の圧電セラミックス対を構成しており、上記した圧電アクチュエータ10bにおける回転用の圧電セラミックス対と同様の構造となっている。したがって、圧電セラミックス14,28についての説明は省略する。
【0066】
図15に示すように、圧電アクチュエータ10dに接続された電気回路の電源ユニットは、ステータ11の圧電セラミックス14に設けられた電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加する直動用の交流電源18,19と、ステータ11の圧電セラミックス28に設けられた電極29〜32に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧を印加する回転用の交流電源33〜36とを有している。電気回路にはスイッチ47が設けられており、直動用の交流電源18,19と回転用の交流電源33〜36との何れか一方に切り換え可能となっている。
【0067】
図15に示すように直動用の交流電源18,19にスイッチ47が切り換えられると、ステータ11の外周面に交互に設けられた各圧電セラミックス14に軸方向に電気的に分離されて形成された電極15,16に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧が印加されて、貫通孔12の内周面12aに軸方向の進行波の波面が形成され、貫通孔12の内周面12aでは軸方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、貫通孔12の内周面12aと摩擦係合する外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。つまり、シャフト13がその軸方向に直進駆動される。
【0068】
一方、回転用の交流電源33〜36にスイッチ47が切り換えられると、ステータ11の外周面に交互に設けられた圧電セラミックス28に形成された電極29〜32に相互に位相が90°異なる正弦波状の交流電圧が印加されて、貫通孔12の内周面12aに回転方向の進行波の波面が形成され、内周面12aには回転方向の楕円運動が発生する。この楕円運動によって、内周面12aに摩擦係合される外周面を有するシャフト13は進行波の進行方向と逆向きに摩擦駆動される。つまりシャフト13がその軸中心に回転駆動される。
【0069】
このように、貫通孔12の形成方向に平坦となったステータ11の外周部に、直動用の第1の圧電素子14と回転用の第2の圧電素子28を回転方向に相互にずらして設けたので、内周面12aに発生する楕円運動によってステータ11の貫通孔12内に存在するシャフト13の外周面全体に摩擦力を介して駆動力が伝達できるので、圧電アクチュエータ10dを小型化することができるとともに、電気回路のスイッチ47を切り換えることで一つの圧電アクチュエータ11dでシャフト13をその軸方向に直進駆動およびその軸中心に回転駆動することができる。本実施の形態では、断面製八角形状のステータ11の外周面に圧電セラミックス14と圧電セラミックス28とを交互に4つずつ配置したが、圧電セラミックス14は少なくとも1つ、圧電セラミックス28は少なくとも2つあれば良く、さらに回転駆動の安定性などを考慮すると、圧電セラミックス28は、シャフト13の回転方向に3つ以上、特に4つ設けることが好ましい。
【0070】
圧電アクチュエータ10bと同様に、シャフト13の外周面には、耐摩耗性材料からなるスライダ41が設けられており、スライダ41を介してシャフト13が貫通孔12の内周面12aに摩擦係合する構成となっている。このスライダ41により、貫通孔12の内周面12aやシャフト13の外周面の摩耗が低減されため、圧電アクチュエータ10dの駆動効率の低下を防止することができるとともに、シャフト13の駆動時における防音効果が得られる。
【0071】
また、シャフト13およびスライダ41には中心方向に切り込まれて軸方向に伸びるスリット23が形成されており、スリット23は、スライダ41を介してシャフト13とステータ11の内周面12aとの摩擦接触圧を設定する設定部となっている。シャフト13およびスライダ41にスリット23を形成することによって、シャフト13は、スリット23の間隔を狭める方向に弾性変形が可能となっており、シャフト13をステータ11の貫通孔12に装着した後、シャフト13の弾性復元力によって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に適正な摩擦接触圧を付与することができるようになっている。
【0072】
したがって、スライダ41を介してシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に簡易な構成で摩擦力を発生させることができ、圧電アクチュエータ10dの駆動効率を向上させることができるとともに、シャフト13自体によって摩擦接触圧を発生させることができるため、摩擦接触圧を付与するばね部材等を設けなくても良く、圧電アクチュエータ10dの小型化が可能である。
【0073】
図16は摩擦接触圧を設定する設定部の変形例を示す断面図である。図16(A)に示すステータ11には1対の対角から中心方向に切り込まれて軸方向に延びるスリット45が形成されており、スリット45はシャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの摩擦接触圧を設定する設定部となっている。このスリット45によりステータ11の各外周面に矢印で示すように横方向の圧縮力を付与することでステータ11は横方向に弾性変形自在であり、シャフト13の外周面とステータ11の内周面12aとの間に適正な摩擦接触圧を付与することができるようになっている。図16(B)に示すように、内周面12aから放射方向に切り込まれて軸方向に延びるスリット45を設定部として形成するようにしても良い。圧電アクチュエータには、摩擦接触圧を設定する設定部としてシャフト13に形成されるスリット23とステータ11に形成されるスリット45との少なくとも一方または双方が設けられる。
【0074】
本発明は上記実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、スライダ41をステータ11の内周面12aに設けるようにしたり、スライダ41を一部切り欠いた形状にしたり、このスライダ41を圧電アクチュエータ11aに設けるようにしたりしても良い。また、圧電セラミックス28に設けられる各電極29〜32を、電極15,16を有する直動用の電極対と同様に軸方向に電気的に分離するようにして、この軸方向の電極対に同位相の交流電圧を印加するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態である圧電アクチュエータの斜視図である。
【図2】図1における2−2線断面図である。
【図3】図1におけるステータの3−3線断面図である。
【図4】図1に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。
【図5】図1に示す圧電アクチュエータの動作原理を示す概略断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図である。
【図7】図6における7−7線断面図である。
【図8】図6に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。
【図9】本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図である。
【図10】図9における10−10線断面図である。
【図11】図9におけるステータの11−11線断面図である。
【図12】図9に示す圧電アクチュエータと交流電源との接続状態を示す回路図である。
【図13】本発明の他の実施形態である圧電アクチュエータの斜視図である。
【図14】図13における14−14線断面図である。
【図15】図13に示す圧電アクチュエータの回路図である。
【図16】摩擦接触圧を設定する設定部の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10a〜10d 圧電アクチュエータ
11 ステータ
11a,11b ステータ体
11c 連結部材
12 貫通孔
12a 内周面
13 シャフト
14 圧電セラミックス(第1の圧電素子)
15〜17 電極
18,19 交流電源
20,21 伸縮領域
23 スリット(設定部)
24 ストッパ
25 防振支持台
28 圧電セラミックス(第2の圧電素子)
29〜32 電極
33〜36 交流電源
37〜40 伸縮領域
41 スライダ
45 スリット(設定部)
47 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトをその軸方向に直進駆動する圧電アクチュエータであって、
前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直線往復動自在に装着されるステータと、
前記ステータの外周面に設けられる圧電素子と、
前記シャフトの軸方向に電気的に分離され、前記圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための少なくとも2つの電極と、
前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
シャフトをその軸方向に直進駆動する圧電アクチュエータであって、
前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直進往復動自在に装着されるステータと、
前記ステータの外周面に前記シャフトの軸方向に設けられる少なくとも2つの圧電素子と、
前記各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、
前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
シャフトをその軸中心に回転駆動する圧電アクチュエータであって、
前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが回転自在に装着されるステータと、
前記シャフトの回転方向に相互にずらして前記ステータの外周面にそれぞれ設けられる少なくとも2つの圧電素子と、
前記各圧電素子に設けられ、前記各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、
前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータにおいて、前記圧電素子を前記シャフトを中心として相互に対向させて前記ステータに設けることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載の圧電アクチュエータにおいて、前記ステータは、前記貫通孔の形成方向に平面部を有する略直方体または略立方体であって、前記平面部の各々に前記圧電素子が設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
シャフトをその軸方向に直進駆動およびその軸中心に回転駆動する圧電アクチュエータであって、
前記シャフトの外周面に摩擦係合する内周面を有する貫通孔が形成され、前記シャフトが直線往復動自在かつ回転自在に装着されるステータと、
前記ステータの外周面に設けられる第1の圧電素子と、
前記シャフトの軸方向に電気的に分離され、前記第1の圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための少なくとも2つの電極と、
前記シャフトの回転方向に相互にずらして前記ステータの外周面にそれぞれ設けられる少なくとも2つの第2の圧電素子と、
前記第2の各圧電素子に設けられ、前記第2の各圧電素子に位相の異なる交流電圧を印加するための電極と、
前記シャフトと前記ステータの少なくとも一方に設けられ、前記シャフトの外周面と前記ステータの内周面との摩擦接触圧を設定する設定部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6記載の圧電アクチュエータにおいて、前記第2の各圧電素子に設けられた電極は、前記シャフトの軸方向に電気的に分離されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項8】
請求項6または7記載の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを相互に軸方向にずらして前記ステータに設けることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項9】
請求項6または7記載の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを相互に回転方向にずらして前記ステータに設けることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項10】
請求項7記載の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とを前記シャフトを中心として相互に対向させて前記ステータに設けることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータにおいて、前記設定部は前記シャフトに中心方向に切り込まれて軸方向に延びるスリットであり、前記シャフトの弾性変形により前記摩擦接触圧を設定することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータにおいて、前記設定部は前記ステータに中心方向に切り込まれて軸方向に延びるスリットであり、前記ステータの弾性変形により前記摩擦接触圧を設定することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータにおいて、前記シャフトと前記ステータとのいずれか一方に耐摩耗性材料からなるスライダを設けることを特徴とする圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−219280(P2009−219280A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61570(P2008−61570)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000136354)株式会社フコク (97)
【Fターム(参考)】