説明

圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法

【課題】本発明は、弾性表面波や弾性境界波などの弾性波の励起に用いられる圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法に関し、製造過程における特性バラツキの少ない圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による圧電ウエハ8は、オリエンテーション・フラット7を除く外周部分にベベリング9が形成された圧電単結晶からなる圧電基板3において、オリエンテーション・フラット7の上端部分にテーパー面10を設けるとともに、このテーパー面10における圧電基板3の上面との境界線11とテーパー面10における圧電基板3の側面との境界線12を平行とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波や弾性境界波などの弾性波の励起に用いられる圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な弾性波デバイスの製造方法は、圧電単結晶の円柱状ブロックから圧電ウエハを成形し、この圧電ウエハの上面にレジスト膜を形成しフォトマスクを用いて露光・現像して所定の櫛形電極をパターンニングし、その後個片に分割している。
【0003】
また、弾性波デバイスにおいては、圧電基板が有する伝播方向に対して櫛形電極の向きが決まるため、圧電ウエハの一部を直線的に切り落とし圧電ウエハの方向性を示すオリエンテーション・フラットが形成されるとともに、ウエハのクラック防止対策としてクラックが発生しやすい外周端エッジ部分にベベリングを施していた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−203071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、円板状の圧電ウエハにオリエンテーション・フラットを設けた場合、圧電ウエハの重心位置が圧電ウエハの中心から偏芯してしまい、この重心位置の偏芯により電極形成においてパターン精度を劣化させていた。
【0006】
すなわち、圧電ウエハに対する櫛形電極などの電極形成は圧電ウエハ状に形成されたレジスト膜を用いてエッチング成形するのであるが、このレジスト膜の形成は回転する圧電ウエハ上にレジスト膜を形成するレジストを滴下し圧電ウエハの回転に伴う遠心力により圧電ウエハ全体にレジストを行きわたらせるのである。このとき圧電ウエハの重心位置が偏芯していることで回転時に圧電ウエハが振動してしまい、レジスト膜のパターン精度を劣化させることになる。
【0007】
つまり、このような圧電ウエハから個片化された弾性波デバイスにおいては、レジスト膜が厚くなった部分から個片化された弾性波デバイスの櫛形電極の線幅がレジスト膜が薄くなった部分から個片化された弾性波デバイスの線幅より大きくなってしまい、結果としてこれらの弾性波デバイスの周波数特性に差が出来てしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、製造過程における特性バラツキの少ない圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、この目的を達成するため本発明は、オリエンテーション・フラット部分を除く外周部分にベベリングが形成された圧電単結晶からなる圧電基板において、オリエンテーション・フラットの上端エッジにテーパー面を設けるとともに、このテーパー面における圧電基板の上面との境界線とテーパー面における圧電基板の側面との境界線を平行としたのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造過程における特性バラツキの少ない圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法を提供することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0012】
図1は、弾性波の中でも弾性表面波を利用した弾性波デバイスを示したもので、一対の反射器1の間に3つの櫛形電極2が圧電基板3の伝播方向に沿って配置され、両外側の櫛形電極2が入力用のパッド電極4aに接続電極5を介して接続され、中央の櫛形電極2が出力用のパッド電極4bに接続電極5を介して接続され、3電極型の縦モード結合型の弾性表面波フィルタを構成している。また、パッド電極4cはグランド接続用の電極である。
【0013】
なお、櫛形電極2は、一対のバスバー2aと、一方のバスバー2aから他方のバスバー2aに向けて交互に延びる複数の電極指2bにより構成され、反射器1は一対のバスバー1a間を短絡する複数の電極指1bにより構成され、電極指2bが並ぶ方向と圧電基板3の伝播方向が一致している。
【0014】
また、圧電基板3は36°回転YカットX伝播のタンタル酸リチウムからなる圧電単結晶を使用し、櫛形電極2やパッド電極4a,4b,4cなどの電極材料はアルミニウム主成分とした合金を使用している。
【0015】
そして、この弾性波フィルタを構成するにあたっては、図2に示されるごとく、先ず円柱状の圧電単結晶体6を成形し、この圧電単結晶体6の外周側面の一部を平面的に切り落とし圧電単結晶体6の方向性を示すオリエンテーション・フラット7を形成する。
【0016】
次に、結晶軸におけるY軸をZ軸方向に36°回転させて出来るX−Y平面に沿って圧電単結晶体6をスライスして圧電ウエハ8を成形する。なお、圧電単結晶体6から切り出された圧電ウエハ8には図3に示すように外周の一部が直線的に切り落とすことにより形成されたオリエンテーション・フラット7を除く部分にクラック対策としてベベリング9を形成するとともに、オリエンテーション・フラット7の上端エッジ部分に面取り加工を施しテーパー面10を形成する。なお、このテーパー面10における圧電ウエハ8の上面との境界線11とテーパー面10における圧電ウエハ8の側面との境界線12を平行としている。
【0017】
次に、図4に示すように圧電ウエハ8の上面に電極パターン形成用の電極膜13をスパッタリングにより蒸着させ、この電極膜13上にレジスト膜14を形成する。なお、このレジスト膜14の形成は、図5に示すように圧電ウエハ8を回転させ、この回転する圧電ウエハ8にレジスト膜14を形成するレジスト14aを滴下し、遠心力により圧電ウエハ8の上面全体にレジスト14aを行きわたらせることで成膜している。
【0018】
次に、図4に戻りフォトマスク(特に図示せず)を用いてレジスト膜14を露光・現像して電極膜13を櫛形電極2や反射器1などの所定の電極パターンをドライエッチングにより形成し、レジスト膜14を除去した後に圧電ウエハ8を破線部で分割して個片の弾性波デバイスを形成している。
【0019】
そして、この弾性波デバイスの製造方法においては、図3に示すようにオリエンテーション・フラット7の上端部分に設けたテーパー面10の上面側の境界線11と側面側の境界線12とを平行にしたことにより弾性波デバイスの製造過程にて生じる特性バラツキを抑制しているのである。
【0020】
すなわち、オリエンテーション・フラット7は弾性波デバイスを形成する上で必要な圧電ウエハ8の伝播方向を決定するためのものであり、伝播方向の精度を確定するために、圧電ウエハ8の外周に対して所定の長さ以上の直線区間を確保しなければならず、圧電ウエハ8の外周部分においてある程度大きな範囲を切り落とさなければならず、結果的に圧電ウエハ8の重心位置の偏芯量が大きくなってしまいレジスト膜厚のバラツキに繋がっていたが、上述したようにオリエンテーション・フラット7に面取り加工でテーパー面10を形成し、その上面側の境界線11と側面側の境界線12を平行にすることで、湾曲面で形成され境界部分が滑らかとなるベベリング9とは異なり、圧電ウエハ8の上面とテーパー面10との境界線11が残るので、この境界線11を圧電ウエハ8の方向性確認用の基準ラインとして使うことができる。
【0021】
そして、この基準ラインを構成する境界線11の長さを圧電ウエハ8の伝播方向の精度を確保するための必要な長さとしても、図6の上側に示された従来のオリエンテーション・フラット7の端部と下側に示された本実施形態におけるテーパー面10の境界線11つまり基準ラインとを等しくすることになり、結果的に、この基準ラインを形成する境界線11よりも外側にも圧電ウエハ8を残留させることになるので、従来のものより重心位置15を圧電ウエハ8の中心16に近づけることができ、これによりレジスト膜14の成膜における圧電ウエハ8の振動が低減され、圧電ウエハ8内でのレジスト膜14の膜厚のバラツキを低減することができ、しいては弾性波デバイスの特性バラツキが低減できるのである。
【0022】
また、従来の外周面の一部を切り落としただけのオリエンテーション・フラット7であればオリエンテーション・フラット7の端部に略90度のエッジが形成されるため、図5に示すレジスト膜14の成形において、高速回転する圧電ウエハ8にレジスト膜14を形成するレジスト14aを滴下した場合、外周エッジが残るオリエンテーション・フラット7の部分でのレジスト14aの流れが、湾曲面で形成されるベベリング9の部分に比べ悪くなり、結果的にオリエンテーション・フラット7の部分に樹脂溜まりが形成され、他の部分よりレジスト膜14の厚みが大きくなる傾向が見られるのであるが、この実施形態のようにオリエンテーション・フラット7にテーパー面10を形成することで、この部分の樹脂流れが良くなり、周囲のベベリング9の部分との差が改善されるので弾性波デバイスの特性バラツキが低減できるのである。
【0023】
また、圧電ウエハ8をドライエッチングする場合においても、圧電ウエハ8の切り落とし部分が減少することにより、圧電ウエハ8を保持する治具パレットのウエハ8載置面の露出が少なくなることから、ドライエッチングによる治具パレットへのダメージを少なくでき治具パレットの使用寿命を長くすることが出来るのである。
【0024】
なお、上述した実施の形態では弾性波として弾性表面波を用いた弾性波デバイスを例に挙げて説明したが、櫛形電極2を窒化ケイ素膜などで封止した弾性境界波を用いた弾性波デバイスなどでも圧電ウエハ8に櫛形電極2を形成して作られる弾性波を利用したものに対しては同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る圧電ウエハ及びそれを用いた弾性波デバイスの製造方法は、弾性波デバイスの製造過程に生じる特性バラツキを抑制することができ、主として通信機器等に用いられる弾性波デバイスにおいて有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示す弾性波デバイスの電極パターン図
【図2】同弾性波デバイスの形成に用いられる圧電単結晶体の斜視図
【図3】同弾性波デバイスの形成に用いられる圧電ウエハの上面図
【図4】同弾性波デバイスにおける電極形成方法を示す模式図
【図5】同弾性波デバイスにおけるレジスト膜の形成方法を示す模式図
【図6】同弾性波デバイスの形成に用いられる圧電ウエハの比較を示す図
【符号の説明】
【0027】
2 櫛形電極
3 圧電基板
7 オリエンテーション・フラット
8 圧電ウエハ
9 ベベリング
10 テーパー面
11,12 境界線
14 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電単結晶からなる円板状の圧電基板と、前記圧電基板の外周の一部に設けられたオリエンテーション・フラットと、前記圧電基板の外周における前記オリエンテーション・フラット以外の部分に設けられたベベリングと、前記オリエンテーション・フラットの上端部分に設けられたテーパー面とを有し、前記テーパー面における前記圧電基板の上面との境界線と前記テーパー面における前記圧電基板の側面との境界線を平行としたことを特徴とする圧電ウエハ。
【請求項2】
圧電ウエハの上面に複数の弾性波デバイスを一括形成するための櫛形電極を形成し個片分割する弾性波デバイスの製造方法であって、圧電ウエハの上面にレジスト膜を形成し、このレジスト膜を所定のフォトマスクを用いて露光・現像することにより前記櫛形電極膜をパターンニングするにあたり、前記圧電ウエハは、圧電単結晶からなる円板状の圧電基板と、前記圧電基板の外周の一部に設けられたオリエンテーション・フラットと、前記圧電基板の外周における前記オリエンテーション・フラット以外の部分に設けられたベベリングと、前記オリエンテーション・フラットの上端エッジに設けられたテーパー面とを有し、前記テーパー面における前記圧電基板の上面との境界線と前記テーパー面における前記圧電基板の側面との境界線を平行とし、前記テーパー面における前記圧電基板の上面との境界線を基準ラインとして前記櫛形電極を形成することを特徴とした弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−77203(P2009−77203A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244842(P2007−244842)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】