説明

圧電センサ

【課題】その製造コストの低廉化や組み立ての容易化を達成できる圧電センサを提供する。
【解決手段】圧電体(10)と、この圧電体と相俟って超音波を送信或いは受信可能な振動子(2)を形成する振動板(20)と、振動子から引き出されており、この振動子と回路基板に接続する端子(80,82)とを導通させる導電線(16,26)と、端子を保持する面(54)とは反対側の面(44)にて振動子を支持する台座(42)、及び、この台座の周縁に沿って立設され、振動子を囲繞する周壁(70)をそれぞれ有し、これら台座及び周壁を一体形成したケース(40)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体の機械的振動を利用して超音波を送受信可能な圧電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の圧電センサは、例えば自動ドア用の感知器に使用することができ、超音波を検出媒体とした非接触の検出センサである。
詳しくは、圧電センサは圧電体を備え、この圧電体は機械エネルギーと電気エネルギーとを相互変換する機能を有しており(圧電効果、逆圧電効果)、例えば圧電体に電圧を印加すると、圧電体は伸縮する。
【0003】
そして、圧電体と振動板とを組み合わせた振動子の構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、圧電体及び振動板からなる振動子が台座に配置され、この台座には端子が保持されている。また、これら振動子と端子とは導電線で導通されており、端子及び導電線を介して圧電体に電圧を印加すると、圧電体の伸縮に伴って振動子が屈曲して機械的に振動(共振現象)するため、圧電センサは超音波を送信できる。
【0004】
当該送信された超音波が物体で反射し、圧電センサがこの反射した超音波を受信すると、振動子の屈曲運動によって電圧が得られる。これにより、ドアに接近する物体の有無やこの物体までの距離を検出でき、自動ドアの制御部はドア開閉用のモータに駆動信号を出力可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−51568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、部品点数の削減の点については依然として課題が残されている。すなわち、上記特許文献1に記載の圧電センサは、その製品状態では振動子の周囲を覆うハウジングが別途必要になるからである。
より詳しくは、作業者が圧電センサを製品検査する際や圧電センサを回路基板に実装する際に、振動子に触れるのはその性能維持上好ましくなく、また、この回路基板への実装後においても、塵埃等が振動子に付着するのを避けるために、この振動子は当然にハウジングで保護されている。
【0007】
つまり、上記特許文献1に記載の圧電センサの場合には、筒状のハウジングと台座とが別部品となって部品点数が増え、これでは製造コストの低廉化を図れない。
また、振動子の周囲を筒状のハウジングで単に覆うと、圧電センサの組み立てや製品検査が困難になる点にも留意しなければならない。導電線をハウジングの外部に引き回して台座の下面で端子に接続する場合には当該ハウジングが邪魔になるし、さらに、振動子や導電線の配置状態なども外部から確認できないからである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、製造コストの低廉化や組み立ての容易化を達成できる圧電センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、圧電体と、この圧電体と相俟って超音波を送信或いは受信可能な振動子を形成する振動板と、振動子から引き出されており、この振動子と回路基板に接続する端子とを導通させる導電線と、端子を保持する面とは反対側の面にて振動子を支持する台座、及び、この台座の周縁に沿って立設され、振動子を囲繞する周壁をそれぞれ有し、これら台座及び周壁を一体形成したケースとを具備する。
【0010】
第1の発明によれば、圧電センサは、圧電体及び振動板で形成された振動子を有し、この振動子は超音波を送信或いは受信可能であり、振動子からは導電線が引き出されている。また、この振動子はケースの台座に支持される。
一方、この台座において振動子を支持した面の反対側の面には、回路基板に接続する端子が保持されており、これら端子と振動子とは導電線を介して電気的に接続されている。
【0011】
ここで、振動子はケースの周壁で囲まれてこの周壁の内周側に配置されるが、これら周壁と上述の台座とは一体形成されたケースである。このように、振動子を囲む周壁と振動子を支持する台座とを1個の部品に形成すれば、上記筒状のハウジングと台座とが別部品である従来の構造に比して部品点数が減り、圧電センサの製造コストを削減できる。また、圧電センサの組み立ても容易になる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の構成において、振動子に載置され、超音波を増幅するイコライザをさらに具備し、周壁は、その内周側と外周側とが連通し、台座に対する振動子の配置状態、若しくは、この振動子に対する導電線の配置状態、又は、この振動子に対するイコライザの載置状態を視認可能な窓部を有していることを特徴とする。
上述した第1の発明の如く、周壁と台座とを1部品で形成すると、導電線は周壁の外周側に引き回し難くなる。振動子が周壁の内周側に配置される一方、端子は、この振動子を支持した面の反対側の面に保持されているからである。
【0013】
しかしながら、第2の発明によれば、周壁は窓部を有しており、その内周側と外周側とを連通している。したがって、振動子から引き出された導電線は、周壁の内周側から窓部を経由して周壁の外周側に引き回すことができ、この導電線を、ケースの高さ方向で視た周壁の上端から周壁の外周側に引き出した後、周壁の下端に向けて引き回さなくて済み、振動子と端子とを容易に接続可能になる。
【0014】
さらに、作業者は、振動子に対するイコライザの載置状態、この振動子に対する導電線の配置状態や、台座に対する振動子の配置状態について、窓部を介して周壁の外周側から目視で確認できる。これにより、圧電センサの製品検査に要する時間を短縮でき、この点も圧電センサの製造コストの低廉化に寄与する。また、常に周壁の外周側から目視で確認可能になるため、出荷する圧電センサの信頼性も向上する。
【0015】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、周壁は、その内周側と外周側とがケースの高さ方向に亘って完全に連通し、振動子から引き出された導電線を受容して端子に導く側面開口を備えることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、側面開口は、その内周側と外周側とがケースの高さ方向に亘って総て連通しているので、導電線を有した振動子がケースの高さ方向に沿って降ろされる場合にも、導電線が周壁に触れることなく振動子を台座に配置できる。この結果、導電線の破損を防止しつつ、圧電センサの組み立て性が大幅に向上する。
【0016】
第4の発明は、第2や第3の発明の構成において、台座は、ケースの高さ方向に亘って貫通するとともに、側面開口に連通してこの側面開口にて受容された導電線を保持する導電線保持孔を備えることを特徴とする。
第4の発明によれば、第2や第3の発明の作用に加えてさらに、導電線は、振動子から側面開口を経由して周壁の外周側に引き回された後、導電線保持孔で保持された状態で端子に向かう。したがって、周壁の外周側から端子に向かう導電線が反発して周壁の外周側に戻ってくるのを回避でき、圧電センサの組み立て作業が容易になる。
【0017】
しかも、導電線を周壁の外周側に表出させずに済むことから、この点も導電線の破損防止に寄与するし、また、導電線は振動子と端子とを最短の長さで接続可能になる。
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、端子を保持する面には、この面と回路基板との空間を確保するスペース用リブが設けられていることを特徴とする。
【0018】
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、スペース用リブが端子を保持する面と回路基板との空間を確保する。よって、ケースは回路基板に接触しないため、ケース側の振動が回路基板側に伝達するのを回避できる。また、導電線を端子に半田で固定する場合には、この半田部分を回路基板に対して逃がすことができるし、さらに、端子を回路基板に半田で固定する場合には、この半田部分をケースから離間できることから、回路基板やケースへのダメージを抑制できる。
【0019】
第6の発明は、第1から第5の発明の構成において、端子を保持する面には、この端子の極性を識別する極性識別用突起が設けられていることを特徴とする。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の作用に加えてさらに、圧電センサを上記回路基板に組み付けに要する時間を短縮できる。さらに、極性の誤った圧電センサの実装も回避されるため、圧電センサを搭載したモジュールの信頼性向上にも寄与する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、振動子を囲む周壁と振動子を支持する台座とが一体形成されており、製造コストの低廉化や組み立ての容易化を達成できる圧電センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の圧電センサの外観斜視図である。
【図2】図1の圧電センサの分解斜視図であり、その組み立て前の状態を示す図である。
【図3】図1の圧電センサの縦断面図である。
【図4】図2のケースの背面図である。
【図5】図2のケースの側面図である。
【図6】図1の圧電センサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の圧電センサ1を上方から視た外観斜視図であり、図2は、組み立て前の圧電センサ1を下方から視た分解斜視図である。そして、この圧電センサ1は、例えば自動ドア用の感知器に使用され、超音波を検出媒体とした非接触の検出センサである。
【0023】
図1や図2に示されるように、圧電センサ1は主に振動子2及びケース40を備えており、この振動子2はケース40内に収容される。なお、図1や図2の下方向はケース40の底面側に相当し、圧電センサ1は、このケース40の底面側を上記感知器の回路基板(図示していない)の実装面に向き合わせた状態で実装される。
【0024】
本実施例の振動子2は、圧電セラミックス(圧電体)10を金属製の振動板20に重ね合わせたユニモルフ構造で形成されている。
詳しくは、圧電セラミックス10は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス(PZT)等で構成され、ケース40の高さ方向(図1や図2の上下方向)に所定の厚みを有している(図3)。この圧電セラミックス10の形状については特に限定しないが、ここでは一例として略正方形の平板を挙げることができる。
【0025】
図2や図3に示される如く、圧電セラミックス10の他面14の適宜位置には1本のリード線(導電線)16が半田18で固定されている。本実施例のリード線16は金糸線であるが、被覆線や銅線を使用しても良い。
【0026】
また、圧電セラミックス10の上側には振動板20が重ね合わされている。
具体的には、この振動板20もケース40の高さ方向に所定の厚みを有した円形の平板であり(図3)、圧電セラミックス10の四隅を内接可能な大きさで形成されている。そして、圧電セラミックス10の振動を振動板20に与えて大きな振動を得るべく、圧電セラミックス10と振動板20とを重ね合わせ、振動板20の裏面24と圧電セラミックス10の一面12とを接着剤で接着している。なお、この図3では構造の理解を助けるために、圧電セラミックス10や振動板20の厚みを誇張して描いている。
【0027】
振動板20の裏面24の適宜位置にも1本のリード線(導電線)26が半田28で固定されており(図2,3)、このリード線26は上記リード線16と同様に、金糸線である。
【0028】
一方、振動板20の表面22には金属製のホーン(イコライザ)30が載置される(図3)。このホーン30は略すり鉢状に形成され、振動板20から離間する方向に拡開している。このホーン30の縮径した下端部分が振動板20の表面22の略中心位置に接着される。なお、図1で視えるホーン30の拡開した面には所定のコーティングが施されている。
【0029】
ここで、本実施例のケース40は、プラスチック樹脂製のカップ状で形成されるが、そのカップ状の有底部分をなす台座42と、開口部分を有した周壁70とが一体形成されている。
具体的には、図3に示されるように、まず、台座42は略円柱状に形成されており、振動子2を支持する上面44を備える。
【0030】
本実施例の上面44には、支持リブ46が振動子2に向けて突設されている。支持リブ46は筒状に形成され、環状に閉じて平坦な先端面47を有し、この先端面47が圧電セラミックス10の他面14に接触している。
支持リブ46の内周側には、同じく筒状の接着部48が形成されており、圧電セラミックス10の他面14を接着剤で固定して支持する。
【0031】
詳しくは、接着部48は、振動子2に生ずる機械的な振動の節(振幅が零になる位置)に形成されている。本実施例のような円形の振動子2の場合には、略正方形の圧電セラミックス10の幅方向及び長さ方向の伸縮によって屈曲するため、接着部48は振動子2の直径φの円周上からφ/4だけ中心寄りの位置を支持している。
【0032】
これは、本実施例の振動子2がその固有共振周波数の電圧で駆動しているからであり、その際の振動の節は、直径φの円周上からφ/4だけ中心寄りの位置、換言すれば、振動子2の中心に対して約直径φ/2の円周上に位置する。
なお、圧電セラミックス10の幅方向や長さ方向に生ずる伸縮よりは小さいものの、この圧電セラミックス10の厚み方向にも伸縮は生じている。
【0033】
一方、台座42は、上述した回路基板の実装面に対峙する下面54を備えている。
図3に示される如く、この下面54の適宜位置には端子保持部56,56が形成され、断面四角形状の端子80,82を保持して上記実装面に向けて突出させる。
【0034】
また、下面54の周縁近傍にはスペーサ(スペース用リブ)58,60が設けられている(図2,図4,図5)。これらスペーサ58,60は略直方体で形成され、その長手方向が下面54に沿って延びており、この下面54の中心に対して対称位置にそれぞれ配置され、上記実装面に当接可能である。これにより、下面54と上記実装面との空間を確保する。よって、下面54は回路基板に接触しないため、ケース40側の振動が回路基板側に伝達するのを回避できる。また、本実施例の如くリード線16,26を端子80,82に半田86,88で固定する場合には、この半田86,88部分を回路基板に対して逃がすことができるし、さらに、端子80,82を回路基板に半田で固定する場合には、この端子固定用の半田部分を下面54から離間できることから、樹脂製のケース40が溶ける等を抑制できる。
【0035】
なお、この図4は図2のケース40の背面図であり、図5(a)は、図4を上方から視たケース40の側面図である。また、図5(b)は同じく図4を左方から視た(図5(a)を左方から視た)ケース40の側面図である。
さらに、これらスペーサ58,60のうち一方のスペーサ60には端子80,82の極性を識別するピン(極性識別用突起)62が突設されている。なお、本実施例のピン62はスペーサ60に設けられているが、単なる捺印ではなく形状を有して端子80,82の極性を識別できる限り、下面54に設けられていても良い。
【0036】
ここで、台座42は、その周縁近傍に保護部(導電線保持孔)64,64を備えている(図4)。
具体的には、保護部64,64は、ケース40の高さ方向に亘って上面44と下面54とを貫通して穿設された平面視略長方形の孔である。これら保護部64,64の長手方向は、上面44や下面54の中心に向けて延びておらず、上述したスペーサ58,60のうち例えば他方のスペーサ58に向けて斜め方向に延びており(図2,図4)、リード線16,26を保持しつつ、保護することができる。このリード線16,26を保護部64,64に保持する点については後述する。
【0037】
次に、周壁70は、この台座42の周縁から上方に延びて立設される。
詳しくは、図3〜図5に示される如く、本実施例の周壁70は、その下端74が台座42の下面54と略同じ高さに位置し、この下端74から上方に向けて延びている。そして、台座42の上面44や、振動子2及びホーン30の側方を覆ってさらに上方に延びており、その上端に円形の上方開口72を有している。
【0038】
ところで、この周壁70は、その内周側と外周側とがケース40の高さ方向に亘って完全に連通した箇所を有する。
具体的には、本実施例の周壁70は導電線受容開口(側面開口)76,76を有している(図2)。導電線受容開口76,76は、上述した保護部64,64の位置に対応してそれぞれ設けられ(図3〜図5)、少なくとも各リード線16,26を受容可能な幅にて、上方開口72から下端74に至るまで周壁70の内周側と外周側とを貫通してそれぞれ形成されている。
【0039】
そして、導電線受容開口76は、台座42に対峙した位置では、保護部64の隅部分のうち下面54の周縁に最も近い隅部分に連なっており(図3,図4)、保護部64は、導電線受容開口76を介して周壁70の外周側に連通している。
一方、本実施例の導電線受容開口76,76は、振動子2やホーン30に対峙した位置に、ホーン窓部(窓部)78,78をそれぞれ有している。
【0040】
このホーン窓部78,78は、上記各リード線16,26を受容可能な幅よりも非常に大きな幅で開口され、導電線受容開口76の幅狭部分を周壁70の周方向に跨いだ範囲に形成されている(図5(b))。
再び図2に戻り、当該圧電センサ1の組み立ては、まず、端子80,82を保持したケース40を準備し、リード線16,26を備えた振動子2を台座42に向けて下降させる。
【0041】
その際、リード線16,26は、上方開口72に位置した導電線受容開口76,76の幅広部分、つまり、ホーン窓部78,78にそれぞれ受容され、ホーン窓部78,78から周壁70の外周側にそれぞれ引き出される。
続いて、振動子2を上面44に向けて降ろし、その振動子2の他面14を支持リブ46に接触させ、接着部48で振動子2を接着して固定する。
【0042】
次に、ホーン窓部78を介して周壁70の外周側に引き出されたリード線16は、作業者に掴まれて近傍の導電線受容開口76の幅狭部分から保護部64内に引き回される。これにより、図3に示されるように、リード線16の側面部分は保護部64の内壁に保持され、リード線16の先端部分は下面54の下方に引き出される。
【0043】
ホーン窓部78を介して周壁70の外周側に引き出されたリード線26は、その近傍の導電線受容開口76の幅狭部分から保護部64内に引き回される。よって、リード線26の側面部分は保護部64の内壁に保持され、リード線26の先端部分は下面54の下方に引き出される(図3,図6)。なお、この図6は図5(b)の方向から視たケース40に振動子2等を配置した状態を示している。
【0044】
そして、リード線16を下面54の近傍にて端子80の周面81に巻き付けて半田86で固定し(図3)、また、リード線26も下面54の近傍で端子82の周面83に巻き付けて半田88で固定すると(図3,図6)、振動子2と端子80,82とが導通される。
その後、ホーン30を振動板20の表面22に接着すれば圧電センサ1が完成する。
【0045】
上述の如く構成された圧電センサ1は超音波を送受信することができ、スペーサ58,60が上記感知器の回路基板の実装面に載置され、端子80,82がその回路部分に電気的に接続される。
端子80,82及びリード線16,26を介して圧電セラミックス10に電圧を印加すると、圧電セラミックス10の厚み方向や、この厚み方向に直交する圧電セラミックス10の幅方向や長さ方向は伸縮する(逆圧電効果)。
【0046】
この圧電セラミックス10の幅方向や長さ方向の伸縮は、振動子2全体を撓ませる力になり、この振動子2の屈曲運動による機械的な振動によって超音波が生成される。なお、この生成された超音波はホーン30で増幅される。このように、圧電センサ1は、電気信号を超音波に変換し、この超音波を上方開口72側から物体に向けて送信できる。
【0047】
一方、この送信された超音波が空中を伝播し、物体に衝突すると圧電センサ1に向けて反射する。
この圧電センサ1は受信した超音波を電気信号に変換できる。詳しくは、圧電センサ1がホーン30を介して上記反射した超音波を受信すると、振動子2の屈曲運動に伴って圧電セラミックス10が伸縮し、電圧を得ることができるからである(圧電効果)。
【0048】
このように、圧電センサ1は、圧電効果及び逆圧電効果の利用によって超音波の送受信が可能である。
そして、この圧電センサ1を用いた自動ドアの制御部では、ドアに接近する物体の有無やこの物体までの距離を検出でき、ドア開閉用のモータに駆動信号を出力可能になる。
【0049】
以上のように、本実施例によれば、圧電センサ1は、圧電セラミックス10及び振動板20で形成されたユニモルフ振動子2を有し、この振動子2は超音波を送受信可能であり、振動子2からはリード線16,26が引き出されている。また、この振動子2は台座42の上面44に支持される。
一方、この台座42の下面54には、上記回路基板に接続する端子80,82が保持されており、これら端子80,82と振動子2とはリード線16,26を介して電気的に接続されている。
【0050】
ここで、振動子2は周壁70の内周側に配置されるが、これら周壁70と上述の台座42とは一体形成されたケース40である。このように、振動子2を囲む周壁70と振動子2を支持する台座42とを1個の部品に形成すれば、従来の構造、つまり、筒状のハウジングと台座とが別部品である構造に比して部品点数が減り、圧電センサ1の製造コストを削減できる。また、このハウジングを台座に載置せずに済むので、圧電センサ1の組み立ても容易になる。
【0051】
また、周壁70と台座42とを1部品で形成すると、リード線16,26は周壁70の外周側に引き回し難くなる。振動子2が周壁70の内周側に配置される一方、端子80,82は、台座42の下面54に保持されているからである。
しかしながら、この周壁70には導電線受容開口76,76が形成されており、その内周側と外周側とを連通している。
【0052】
したがって、振動子2から引き出されたリード線16,26は、周壁70の内周側から導電線受容開口76,76を経由して周壁70の外周側に引き回すことができ、これらリード線16,26を、上方開口72から周壁70の外周側を経由して下端74に向けて引き回さなくて済み、振動子2と端子80,82とを容易に接続可能になる。
【0053】
また、導電線受容開口76,76は、その内周側と外周側とがケース40の高さ方向に亘って総て連通しているので、リード線16,26を有した振動子2がケース40の高さ方向に沿って降ろされる場合にも、リード線16,26が周壁70に触れることなく振動子2を台座42に配置できる。この結果、リード線16,26の破損を防止しつつ、圧電センサ1の組み立て性が大幅に向上する。
【0054】
さらに、圧電センサ1の構成部品においてリード線16,26やホーン30は、その性質上強度がやや劣る部品であるが、図6にも示されるように、作業者は、振動子2に対するホーン30の載置状態、この振動子2に対するリード線16,26の配置状態や、台座42に対する振動子2の配置状態について、ホーン窓部78,78を介して周壁70の外周側から目視で確認できる。この結果、圧電センサ1の製品検査に要する時間を短縮でき、この点も圧電センサ1の製造コストの低廉化に寄与する。また、常に周壁の外周側から目視で確認可能になるため、出荷する圧電センサ1の信頼性も向上する。
【0055】
さらにまた、リード線16,26は、振動子2から導電線受容開口76,76を経由して周壁70の外周側に引き回された後、保護部64,64で保持された状態で端子80,82に向かう。したがって、周壁70の外周側から端子80,82に向かうリード線16,26が、反発して周壁70の外周側に戻ってくるのを回避でき、圧電センサ1の組み立て作業が容易になる。
【0056】
しかも、リード線16,26を周壁70の外周側に全く表出させずに済むことから、この点もリード線16,26の破損防止に寄与するし、また、リード線16,26は振動子2と端子80,82とを最短の長さで接続可能になる。
また、スペーサ60には、端子80,82の極性を識別するピン62が突設されている。よって、圧電センサ1を上記回路基板に組み付けに要する時間を短縮できる。さらに、極性の誤った圧電センサ1の実装も回避されるため、圧電センサ1を搭載したモジュールの信頼性向上にも寄与する。
【0057】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例の圧電センサは超音波を送受信可能に構成されているが、本発明の圧電センサは、送信或いは受信のいずれかの機能を有していても良い。また、上述した自動ドア用の感知器の他、物体の有無や物体までの距離の検出結果を用いて作動する種々のモジュールに搭載可能である。
【0058】
より詳しくは、物体までの距離の検出結果を利用するモジュールとしては、例えば、液面レベル計、自動車のバックソナー、距離計測、又は、交通信号の自動切換え等である。また、物体の有無を利用するモジュールとしては、侵入者警報装置や自動点灯スイッチ等である。超音波の反射時間の計測や振動数の観測(ドップラー効果)によって物体までの距離や物体の有無を検出できるからである。
【0059】
さらに、上記実施例は最適例の説明であり、本発明の圧電センサは台座42と周壁70とが一体化されていれば上方開口72から下端74に亘って完全に連通していなくても良い。これは、上述したホーン窓部78に相当する孔が周壁70に形成されていれば、リード線16,26は振動子2から周壁70の外周側に引き回すことができるからである。また、このホーン窓部78に相当する孔は周壁70に少なくとも1つ設けられていれば良い。これらリード線16,26をいずれも同じ孔から引き出せば良いからである。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、圧電センサの製造コストの低廉化や組み立ての容易化を達成できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 圧電センサ
2 ユニモルフ振動子(振動子)
10 圧電セラミックス(圧電体)
16,26 リード線(導電線)
20 振動板
30 ホーン(イコライザ)
40 ケース
42 台座
44 上面
54 下面
58,60 スペーサ(スペース用リブ)
62 ピン(極性識別用突起)
64 保護部(導電線保持孔)
70 周壁
76 導電線受容開口(側面開口)
78 ホーン窓部(窓部)
80,82 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
この圧電体と相俟って超音波を送信或いは受信可能な振動子を形成する振動板と、
前記振動子から引き出されており、この振動子と回路基板に接続する端子とを導通させる導電線と、
前記端子を保持する面とは反対側の面にて前記振動子を支持する台座、及び、この台座の周縁に沿って立設され、前記振動子を囲繞する周壁をそれぞれ有し、これら台座及び周壁を一体形成したケースと
を具備することを特徴とする圧電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電センサであって、
前記振動子に載置され、前記超音波を増幅するイコライザをさらに具備し、
前記周壁は、その内周側と外周側とが連通し、前記台座に対する前記振動子の配置状態、若しくは、この振動子に対する前記導電線の配置状態、又は、この振動子に対する前記イコライザの載置状態を視認可能な窓部を有していることを特徴とする圧電センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電センサであって、
前記周壁は、その内周側と外周側とが前記ケースの高さ方向に亘って完全に連通し、前記振動子から引き出された前記導電線を受容して前記端子に導く側面開口を備えることを特徴とする圧電センサ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の圧電センサであって、
前記台座は、前記ケースの高さ方向に亘って貫通するとともに、前記側面開口に連通してこの側面開口にて受容された前記導電線を保持する導電線保持孔を備えることを特徴とする圧電センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電センサであって、
前記端子を保持する面には、この面と前記回路基板との空間を確保するスペース用リブが設けられていることを特徴とする圧電センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の圧電センサであって、
前記端子を保持する面には、この端子の極性を識別する極性識別用突起が設けられていることを特徴とする圧電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151611(P2011−151611A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11184(P2010−11184)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】