説明

圧電振動デバイス用蓋体および当該蓋体を用いた圧電振動デバイス

【課題】 蓋体の機械的強度を向上させるとともに、気密信頼性の高い圧電振動デバイス用蓋体および、当該蓋体を用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電振動素子に形成された励振電極を気密封止するための圧電振動デバイスの蓋体2は、蓋体2の一主面の周縁に周状に形成された堤部20と、堤部内側の凹部23とを備え、堤部20から凹部23側へ突出した補強部21を有しており、切り欠き部210が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスの蓋体および当該蓋体を用いた圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスは、通信機器,情報機器等のタイミングデバイスとして従来より用いられている。前記機器等への圧電振動デバイスの実装スペースは、近年狭小化が進み、小型で低背型の圧電振動デバイスとして、表面実装型の水晶振動子が普及している。図14に従来の表面実装型の水晶振動子(以下、水晶振動子と略)の構造の一例を示す。図14において水晶振動子1は、上部が開口した凹部23を有する容器体3(以下ベースと略)の凹部内に水晶振動板4を接合材5(例えば導電性接着材)を介して接合し、前記容器体の開口部を平板状の蓋体2で気密封止した構造となっている。
【0003】
前記ベースは、一般的にセラミック等の絶縁材料で成形されている。例えばセラミックベースの場合、セラミックシートを積層した後、焼成によって一体的に成形されている。ここで、前記焼成時の収縮によって容器体には僅かな積層ずれが発生することがあり、当該積層ずれは、水晶振動子が超小型化になると無視できないレベルになってくる。そこで、超小型の水晶振動子に用いられるベースの材料に水晶やガラスを用い、例えばフォトリソグラフィ技術や湿式エッチングを用いることによって、高い寸法精度のベースを成形することが可能となっている。
【0004】
超小型に対応するために、蓋体およびベースをガラスや水晶で成形した場合、蓋体の機械的強度がセラミック製あるいは金属性の蓋体に比べて低下してしまうため、従来の平板状構造では蓋体の割れ等による気密不良が懸念される。蓋体の機械的強度を補う手段として、例えば特許文献1に示すように蓋体の一主面(ベースとの接合面側)に厚肉部を形成した構造が開示されている。
【0005】
特許文献1において厚肉部は、蓋体の一主面上に、平面視で振動片を避けた位置に形成されている。しかしながら、前記厚肉部だけが突出した状態となっており、蓋体のベースとの接合面側の周縁部分は補強されていないため当該部分は比較的脆弱になってしまう。
【0006】
一方、蓋体の機械的強度を補う別の手段として、例えば図15乃至16に示すように蓋体2の周縁部分に枠状の厚肉部(堤部20)を形成する方法がある。本構造の場合、蓋体の周縁部分の機械的強度は向上するものの、厚肉部分と薄肉部分(凹部底面24)との高低差(厚み差)が生じ、蓋体とベースの接合後の残留応力による割れやクラック(以下、割れ等と記載)が発生するおそれがある。前記割れ等は例えば図17に示すように蓋体の堤部20の内周の四隅を含む領域で発生することがあり、気密不良の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−136243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蓋体の機械的強度を向上させるとともに、気密信頼性の高い圧電振動デバイス用蓋体および、当該蓋体を用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、圧電振動素子に形成された励振電極を気密封止してなる圧電振動デバイスの蓋体であって、前記蓋体の一主面の周縁に周状形成された堤部と、当該堤部内側の凹部とを備え、前記堤部から前記凹部側へ突出した補強部が形成された蓋体となっている。
【0010】
上記構成によれば、蓋体の周縁部分は堤部によって機械的強度を補うことができるとともに、当該堤部から前記凹部側へ突出した補強部が形成されているため、さらに蓋体の機械的強度を向上させることができる。
【0011】
具体的に前記補強部は前記堤部から突出形成され、堤部と一体成形された構造であるため堤部と前記凹部との厚み差を緩和することができる。つまり本構造によって、厚肉部分(堤部)と薄肉部分(凹部)の境界となる領域を補強することができる。これにより、蓋体と容器体との接合後の蓋体の割れ等を抑制することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、前記補強部が、平面視矩形状の前記堤部の内側四隅を含む領域に四箇所形成された構造となっていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、蓋体の周縁部分は堤部によって機械的強度を補うことができるとともに、前記補強部が平面視矩形状の堤部の内側四隅を含む領域(以下、コーナー部分と表記)に四箇所形成されているため、コーナー部分の機械的強度を向上させることができる。超小型かつ薄型の蓋体において四角枠状の堤部のみが形成されている場合、前記コーナー部分に割れ等が比較的発生しやすくなるが、本発明の構成であれば当該コーナー部を補強することができる。これにより、蓋体と容器体との接合後の残留応力による割れ等を効果的に防止することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、前記補強部が、平面視矩形状の前記堤部の四辺のうち、対向する二辺に形成されていてもよい。このような構成によれば、平面視矩形状の堤部内側の対向する二短辺または対向する二長辺の,堤部と凹部の境界となる領域を補強することができる。つまりバランス良く、堤部と凹部の境界領域を補強することができる。前記補強により、蓋体と容器体との接合後の残留応力による割れ等を防止することができる。なお、前記補強部は対向する二辺の全長に亘って形成されるだけでなく、対向する二辺の一部分に補強部が対向形成されていてもよい。
【0015】
さらに前記構成によれば、凹部内に収容する圧電振動素子の大きさや形状によって変化する凹部内の空間(内部クリアランス)に応じて、補強部の形成位置を短辺側あるいは長辺側のいずれかを選択することで、限られた内部空間を有効活用できる。
ができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、前記補強部が前記堤部の内周の全てに形成されていてもよい。このような構成であれば、堤部と凹部の境界となる領域の全てを補強することができるため、さらに補強効果を向上させることができる。これにより、蓋体と容器体との接合後の残留応力による割れ等を効果的に防止することができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、前記補強部が前記凹部側にさらに突出した幅広部を有している構造であってもよい。このような構成によると、前記幅広部と前記補強部は堤部と一体成形された構造であるため、前記幅広部と堤部とに挟まれた領域の補強部の機械的強度をさらに向上させることができる。つまり、さらなる補強が必要となる位置に前記幅広部を形成することによって、補強部の補強効果をより向上させることができる。例えば平面視矩形状の補強部の二長辺の略中央部分を含む領域の各々に幅広部を対向形成することで、堤部の長辺の略中央領域をより補強することができる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、前記補強部は、前記励振電極を前記蓋体で気密封止したときに、圧電振動素子の振動領域と干渉しない位置若しくは厚みにて形成されていてもよい。このような構成によれば、圧電振動デバイスに外力が働いた際に、圧電振動素子の撓みによる補強部との接触を回避することができる。これにより耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを提供することができる。例えば容器体の凹部内に、励振電極が形成された圧電振動素子の一端側を接合した後、蓋体で前記凹部を気密封止した構造の圧電振動デバイスにおいて、何らかの外力が働くことによって圧電振動素子の他端側が撓んだ場合であっても前記補強部は圧電振動片の振動領域と干渉しない位置に形成されているため、圧電振動素子の振動を阻害することはない。
【0019】
また、前記補強部を圧電振動素子の振動領域と干渉しない厚みで形成することによって蓋体の補強を図りつつ、耐衝撃性の向上を図ることができる。つまり補強部のうち、少なくとも圧電振動素子に対向する部分の厚みを堤部の厚みよりも薄くすることにより、圧電振動素子との接触を防止しつつ、蓋体の機械的強度の向上も図ることができる。なお、圧電振動素子と干渉しない領域の補強部については、堤部と同じ厚みにすることにより、蓋体の機械的強度を向上させることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、前記蓋体がガラスまたは水晶からなり、前記補強部および前記幅広部が傾斜面を有した蓋体であってもよい。このような蓋体であれば凹部底面と、補強部または幅広部との高低差が緩和されて曲面に近づくため、蓋体に加わる応力を分散させることができる。
【0021】
前述のように容器体の凹部内に、圧電振動素子を接合した後、蓋体で前記凹部を気密封止した構造の圧電振動デバイス以外にも、中央の振動領域が薄肉で、当該領域の外周部分を厚肉とした,所謂、「逆メサ」構造の圧電振動素子においても本発明は適用可能である。例えば前記構造の圧電振動素子の場合、圧電振動素子の前記厚肉部分の表裏外周に接合材を介して、一対の本発明の蓋体の堤部を接合した圧電振動デバイス(三層構造)を得ることができる。このような構造の場合、高周波帯で小型かつ薄型の圧電振動デバイスを提供することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、前記補強部と前記堤部が略同一厚み、または前記補強部と前記堤部と前記幅広部が略同一厚みで成形された蓋体と、前記堤部の前記幅広部を含む領域との接合領域を有する圧電振動素子または容器体とが、接合材を介して前記接合領域で接合された圧電振動デバイスであってもよい。
【0023】
前記蓋体は補強部と堤部とが略同一厚みで、または幅広部と補強部と堤部とが略同一厚みで成形されているため、圧電振動素子または容器体との接合領域を拡大することができる。つまり、補強部または幅広部が堤部よりも薄肉で形成されている場合は、堤部のみが接合領域となり得るのに対し、前記構成であれば補強部、または補強部と幅広部の両領域も接合領域とすることができるためである。
【0024】
一方、圧電振動素子または容器体は、略同一厚みで成形された前記幅広部と前記補強部と前記堤部との接合領域を有しているため、断面視で略同一幅で幅広の接合領域で、蓋体と圧電振動素子とが、または前記蓋体と容器体とが、接合材を介して接合されることになる。以上の構成により、蓋体と容器体との接合強度をさらに向上させ、蓋体と容器体との接合後の蓋体の割れ等を抑制することができる。
【0025】
さらに、前述のように断面視で略同一幅で幅広の接合領域で、蓋体と圧電振動素子または容器体とが接合材を介して接合されるため、接合材の圧電振動デバイスの内部空間への侵入を防止することができる。これにより、接合材が圧電振動デバイスの内部空間へ侵入した場合に発生するガスによる特性悪化を防止することができる。また、補強部および幅広部よる接合領域の拡大によって、金属ロウ材の形成量または形成位置の設計自由度も拡大する。
【0026】
また、上記目的を達成するために、前記励振電極を外部端子へ導出するための引出導体が形成された容器体に、前記圧電振動素子を電気機械的に接合した後、本発明の蓋体で前記励振電極を気密封止した圧電振動デバイスであってもよい。
【0027】
上記構成の圧電振動デバイスによれば、蓋体と容器体との接合後の蓋体の割れ等を抑制し、良好な特性の圧電振動デバイスを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、蓋体の機械的強度を向上させるとともに、気密信頼性の高い圧電振動デバイス用蓋体および、当該蓋体を用いた圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す蓋体の平面図
【図2】図1のA部拡大斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す補強部の斜視図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す蓋体の平面図
【図5】本発明の第2の実施形態の変形例を示す蓋体の平面図
【図6】本発明の第3の実施形態を示す蓋体の平面図
【図7】本発明の第4の実施形態を示す蓋体の平面図
【図8】図7のB−B線における断面図
【図9】本発明の第5の実施形態を示す蓋体の平面図
【図10】図9のC−C線における断面図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す接合前の水晶振動子の短辺方向断面図
【図12】本発明の第5の実施形態を示す接合後の水晶振動子の短辺方向断面図
【図13】本発明の他の適用例を示す水晶振動子の長辺方向断面図
【図14】従来の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図
【図15】従来の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図
【図16】従来の実施形態を示す蓋体の平面図
【図17】従来の実施形態を示す蓋体の平面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
−第1の実施形態−
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では圧電振動素子として音叉型の水晶振動板を用い、容器体(以下、ベースと略)に形成された凹部内に水晶振動板の一端側を片持ち接合した後、前記凹部を蓋体で接合材を介して気密に接合した水晶振動子を例として示す。また、以下に述べる本発明の実施形態に係る蓋体の平面図は全て、ベースとの接合面側から見た主面を表した図となっている。
【0031】
図1は本発明の第1の実施形態を示す蓋体の,前記ベースとの接合面側から見た平面図である。平面視矩形状の蓋体2は、ホウ珪酸ガラスからなり、蓋体2の一主面(前記ベースとの接合面側)の周縁には堤部20が周状に形成されている。堤部20は平面視で矩形状となっており、堤部20の内側が凹部23となっている。そして堤部20の内側の四隅を含む領域には、補強部21(21a、21b、21c、21d)がそれぞれ形成されている。ここで補強部21は図2に示すように堤部20の高さ(厚み)よりも低く(薄肉に)形成されている。
【0032】
上記構成によれば、蓋体2の周縁部分は堤部20によって機械的強度を補うことができるとともに、堤部20から凹部23側へ突出した補強部21が形成されているため、さらに蓋体の機械的強度を向上させることができる。
【0033】
具体的に補強部21は堤部20から突出形成され、堤部20と一体成形された構造であるため、堤部20と凹部23との高低差(厚み差)を緩和することができる。つまり本構造によって、厚肉部分(堤部20)と薄肉部分(凹部の底面24)の境界となる領域を補強することができる。これにより、蓋体と容器体との接合後の蓋体の割れ等を抑制することができる。
【0034】
また、上記構成によれば、蓋体2の周縁部分は堤部20によって機械的強度を補うことができるとともに、補強部21a、21b、21c、21dが堤部20の内側四隅を含む領域(以下、コーナー部分と表記)に四箇所形成されているため、コーナー部分の機械的強度を向上させることができる。なお、図1において補強部は平面視で矩形となっているが、当該矩形の角部が曲率を有する形状であってもよい。
【0035】
また、超小型かつ薄型の蓋体において四角枠状の堤部のみが形成されている場合、前記コーナー部分に割れ等が比較的発生しやすくなるが、本発明の第1の実施形態の構成であれば当該コーナー部を補強することができる。これにより、蓋体とベースとの接合後の残留応力による割れ等を防止することができる。
【0036】
なお、補強部21(21a、21b、21c、21d)は図3に示すように、堤部20の高さ(厚み)と同一の高さ(厚み)で形成されていてもよい。このような構造であればコーナー部分の機械的強度が向上するととともに、蓋体の角部における接合領域を拡大させることができる。前記接合領域の拡大により、圧電振動子素子を収容するベースあるいは圧電振動素子との接合強度を向上させることができる。なお、図3においては補強部の角部は曲率を有する形状となっている。このような形状とすることによって、補強部と近接する堤部内壁面との境界が曲面でつながるため、当該境界を含む領域の補強効果を向上させることができる。
【0037】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を図4を用いて説明する。本実施形態では圧電振動板としてATカット水晶振動板を用いた水晶振動子を例に挙げて説明する。なお、本発明の第2乃至5の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。また本発明の第2乃至5の実施形態では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0038】
本実施形態では図4に示すように補強部21(21e、21f)が、平面視矩形状の堤部20の四辺のうち、対向する二短辺の内側に形成されている。なお補強部21(21e、21f)の短辺方向の中央を含む領域は、互いに対向するように均等に切り欠かれている(図4に示す切り欠き部210)。これは蓋体とベースとを接合した際に、水晶振動板と蓋体の補強部とが干渉しないようにするためである。
【0039】
このような構成によれば、平面視矩形状の堤部20の内側の対向する二短辺の,堤部20と凹部底面24の境界となる領域を補強することができる。つまりバランス良く、堤部20と凹部底面24の境界領域を補強することができる。前記補強により、蓋体とベースとの接合後の残留応力による割れ等を効果的に防止することができる。
【0040】
なお、凹部23に収容する水晶振動板の大きさや形状によって変化する凹部23の内部空間(内部クリアランス)に応じて、補強部21の形成位置を短辺側あるいは長辺側のいずれかを選択することで、限られた内部空間を有効活用できる(本発明の第2の実施形態の変形例として長辺側に補強部を形成した構成を図5に示す)。また、前記補強部は対向する二辺の全長に亘って形成されるだけでなく、対向する二辺の一部分に補強部が対向形成されていてもよい。
【0041】
−第3の実施形態−
本発明の第3の実施形態を図6を用いて説明する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では補強部21は堤部20の内周の全てに形成されている。補強部21の短辺方向の中央を含む領域は、本発明の第2の実施形態と同様に、水晶振動板と補強部とが干渉しないようにするために、互いに対向するように均等に切り欠かれている(図6に示す切り欠き部210)。
【0042】
上記構成であれば、堤部20と凹部底面24の境界となる領域の全てを補強することができるため、さらに補強効果を向上させることができる。これにより、蓋体と容器体との接合後の残留応力による割れ等を効果的に防止することができる。
【0043】
−第4の実施形態−
本発明の第4の実施形態を図7を用いて説明する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態において補強部21は堤部20よりも薄肉で、かつ堤部20の内周の全てに形成されている。補強部21の短辺方向の中央を含む領域は、本発明の第2の実施形態と同様に、互いに対向するように均等に切り欠かれている(図7に示す切り欠き部210)。そして一対の幅広部22,22が補強部の二長辺の略中央を含む領域から凹部方向へ突出して対向形成されている。
【0044】
上記構成によれば、幅広部22と堤部20とに挟まれた領域の補強部の機械的強度をさらに向上させることができる。つまり幅広部22,22を設けることにより、二つの長辺側の堤部の略中央領域をさらに補強することができる。なお、幅広部の形成位置は補強部の二長辺の略中央を含む領域に限定されるものではない。さらなる補強が必要となる位置に幅広部を形成することによって、補強部の補強効果をより向上させることができる。
【0045】
本実施形態において蓋体の外形は湿式エッチングによって形成されており、これを図7のB−B線における断面図で表したものが図8となっている。堤部と補強部および幅広部の厚み方向に傾斜面Sが形成される。堤部20および幅広部22の壁面は傾斜面Sとなっているので、凹部底面24と幅広部22および堤部20との高低差がより緩和されて曲面に近づくため、蓋体に加わる応力を分散させることができる。
【0046】
−第5の実施形態−
本発明の第5の実施形態を図9乃至12を用いて説明する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では圧電振動板として音叉型の水晶振動板を用いた水晶振動子を例に挙げて説明する。図9は蓋体の堤部が形成された主面の平面図であり、図10は図9のC−C線における断面図となっている。
【0047】
図9において補強部21は、堤部の内周の全てに堤部20と同一厚みで形成されている。一対の幅広部22,22は補強部の二長辺の略中央を含む領域から凹部方向へ突出して対向形成されており、その厚みは補強部21および堤部20と略同一厚みとなっている(図9において説明の便宜上、補強部と幅広部の領域を強調して表示)。図9において対向する二短辺の補強部は、蓋体とベースとの接合の際に水晶振動板4と干渉しないよう、水晶振動板に対応する領域がそれぞれ切り欠かれている(図9に示す切り欠き部210)。一方、一対の幅広部22,22は蓋体とベースとの接合の際に水晶振動板4と干渉しない位置まで補強部から突出形成されている。ここで幅広部22と補強部21は、堤部20と一体成形された構造となっている。なお、堤部並びに補強部および幅広部の上面には、ベースとの接合に用いられる金属ロウ材(図9において図示省略)が形成される。
【0048】
蓋体2は幅広部22と補強部21と堤部20とが略同一厚みで成形されているため、圧水晶振動板またはベースとの接合領域を拡大することができる。つまり、補強部または幅広部が堤部よりも薄肉で形成されている場合は、堤部のみが接合領域となり得るのに対し、前記構成であれば補強部および幅広部の領域も接合領域とすることができるためである。
【0049】
本実施形態において、蓋体2およびベース3の各々の外形は湿式エッチングによって形成されており、厚み方向に傾斜面が形成されている(図10乃至12参照)。図10乃至12に示すように幅広部22の壁面は傾斜面となっているので、凹部底面24と、補強部または幅広部との高低差が緩和されて曲面に近づくため、蓋体に加わる応力を分散させることができる。なお、蓋体2およびベース3の外形の成形手段は湿式エッチングに限定されるものではない。例えば湿式エッチングの他、乾式エッチング、ブラスト加工や複数層の積層によって外形を成形してもよい。
【0050】
図11は蓋体2とベース3とが接合される前の状態を表した図である。図11において堤部20上面と堤部外周縁の傾斜面を含む領域には、金属ロウ材6が周状に形成されている。ベース3はホウ珪酸ガラスからなる箱状の容器体であり、平面視矩形状の堤部30と、その内側に凹部を備え、凹部内には段部(図示省略)が形成されている。段部の上面には一対の搭載電極(図示省略)が形成されており、当該搭載電極はベースの外部底面に形成された図示しない外部端子と、ベース内部の引出導体(図示省略)を経由して電気的に接続されている。
【0051】
図11においてベース3はホウ珪酸ガラスからなり、水晶振動板4を収容するための凹部と、その外周に堤部30を有する構造となっている。ベース3の凹部33の底面には水晶振動板と接合材を介して接合される電極(以下、搭載電極と表記。図示省略)が形成されており、ベース3の外部底面(凹部33の底面と対向する主面)には図示しない接続端子が形成されている。前記電極と接続端子とはベース内部に形成された内部導体(図示省略)とを介して電気的に接続されている。
【0052】
本実施形態において堤部30と補強部と幅広部とは一体的に形成されている(図11においては補強部と幅広部とを補強部32として一体表記)。堤部30の上面には金属ロウ材6が周状に形成されている。堤部30の上面は蓋体2との接合領域となっており、堤部30には蓋体2の幅広部22と補強部21と堤部20とを含む領域と対応した,幅広の接合領域が形成されている。つまり蓋体とベースともに、断面視で略同一幅の幅広の接合領域が形成されている。前記幅広の接合領域を有することにより、蓋体と容器体との接合強度をさらに向上させ、蓋体と容器体との接合後の蓋体の割れ等を抑制することができる。
【0053】
図11において水晶振動板4は、一対の腕部(図11乃至12参照)と当該腕部の一端側と接続された基部と、基部と接続された延出部とを有する音叉型の水晶振動板である。前記水晶振動板の表面および側面には各種電極(図示省略)が形成されている。なお本発明は音叉型の水晶振動板(BTカット)に限定されるものではなく、ATカット水晶振動板にも適用可能である。
【0054】
図11において水晶振動板4は前述の搭載電極上に接合材によって固着されている。これにより水晶振動板の前述の各種電極と搭載電極とが電気的機械的に接続されている。なお前記接合材として導電性接着材が用いられるが、導電性接着材に限定されるものではなく、金錫合金等の合金や金属バンプを用いてもよい。
【0055】
次に、蓋体2とベース3との接合について説明する。蓋体2の金属ロウ材6が、ベース3の金属ロウ材6に平面視で略一致するように、蓋体2をベース3上に位置決め載置した後、金属ロウ材を加熱溶融させることにより、蓋体とベースの各金属ロウ材が一体化されて蓋体とベースとが接合される。前記接合後の状態を図12に示す。ここで金属ロウ材を加熱溶融させると溶融金属は表面張力により、平面視略矩形の接合領域の長辺中央付近へ引き寄せられて滞留し易くなるが、蓋体2およびベース3には、断面視で略同一幅で幅広の接合領域が形成されているため、溶融金属が前記長辺中央付近に溜まったとしても、溶融金属の水晶振動子1の内部空間への侵入を防止することができる。これにより、水晶振動子の内部空間への接合材侵入による特性悪化を防止することができる。また、補強部および幅広部による接合領域の拡大によって、金属ロウ材の形成量または形成位置の設計自由度も拡大する。なお図12の接合後の状態において、蓋体2およびベース3の各々に形成された補強部(幅広部含む)は、平面視で水晶振動板とは重ならない位置となっている。本発明は平面視で補強部および幅広部が圧電振動素子と重なる位置であっても、補強部および幅広部が水晶振動板と干渉しない厚み(高さ)で形成することにより適用は可能であるが、補強部および幅広部を平面視で圧電振動素子と重ならない位置に形成することが好ましい。
【0056】
次に本発明の他の適用例を図13に示す。本発明は、蓋体2と、中央の振動領域が薄肉で当該領域の外周部分が厚肉で一体成形された水晶振動板4(所謂、逆メサ構造)と、平板状のベース3(容器体)のような三層構造の水晶振動子にも適用可能である。このような構造の場合、高周波帯で小型かつ薄型の圧電振動デバイスを提供することができる。なお、本発明の適用は前記圧電振動素子の構造に限定されるものではなく、その他の構造の圧電振動素子に対しても本発明は適用可能である。
【0057】
本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、集積回路等の電子部品に水晶振動子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0058】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 水晶振動子
2 蓋体
20 堤部(蓋体)
21 補強部
22 幅広部
23 凹部
24 凹部底面
3 容器体
30 堤部(容器体)
4 水晶振動板
6 金属ロウ材
S 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子に形成された励振電極を気密封止してなる圧電振動デバイスの蓋体であって、前記蓋体の一主面の周縁に周状形成された堤部と、当該堤部内側の凹部とを備え、
前記堤部から前記凹部側へ突出した補強部が形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項2】
前記補強部が、平面視矩形状の前記堤部の内側四隅を含む領域に四箇所形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項3】
前記補強部が、平面視矩形状の前記堤部の四辺のうち、対向する二辺に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項4】
前記補強部が、前記堤部の内周の全てに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項5】
前記補強部が、前記凹部側にさらに突出した幅広部を有していることを特徴とする請求項3乃至4のいずれかに記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項6】
前記補強部は、前記励振電極を前記蓋体で気密封止したときに、圧電振動素子の振動領域と干渉しない位置若しくは厚みにて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項7】
前記蓋体がガラスまたは水晶からなり、前記補強部および前記幅広部が傾斜面を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の圧電振動デバイス用蓋体。
【請求項8】
前記補強部と前記堤部が略同一厚み、または前記補強部と前記堤部と前記幅広部が略同一厚みで成形された請求項1乃至7のいずれかに記載の蓋体と、
前記堤部の前記幅広部を含む領域との接合領域を有する圧電振動素子または容器体とが、接合材を介して前記接合領域で接合されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記励振電極を外部端子へ導出するための引出導体が形成された容器体に、前記圧電振動素子を電気機械的に接合した後、請求項1乃至8のいずれかに記載の圧電振動デバイス用蓋体で前記励振電極を気密封止してなる圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−9280(P2013−9280A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142355(P2011−142355)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】