説明

圧電振動素子および圧電デバイス

【課題】 振動特性の向上された圧電振動素子。
【解決手段】 平板形状の圧電基板21と、圧電基板21の下面および上面に設けられた励振電極22aおよび22bと、圧電基板21に設けられており圧電基板21の下面および上面に設けられた励振電極22aおよび22bに電気的に接続された圧電基板21の下面および上面に設けられた端子電極23aおよび23bと、圧電基板21に設けられており励振電極22に電気的に接続されていない固定用ランド部60とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子およびこれを用いた圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれるタイミングデバイスとして、圧電デバイスが幅広く用いられている。近年、電子機器は小型化が進み、電子機器に搭載される圧電デバイスにおいても同様に小型化が要求されている。ここでは圧電デバイスの一つである圧電振動子について説明する。
【0003】
圧電振動子は、素子搭載部材と、素子搭載部材に搭載された圧電振動素子と、圧電振動素子を覆うように素子搭載部材上に設けられた蓋部材とを備えている。圧電振動素子は、平板状の圧電基板と、圧電基板の主面に設けられた励振電極と、圧電基板の主面に設けられており励振電極に電気的に接続された端子電極とを含んでいる。端子電極は、導電性接着剤によって素子搭載部材に設けられた搭載パッドに電気的に接続されている。なお、外部からの衝撃による圧電基板の損傷を低減させるために、圧電振動素子の先端部が固定部材によって素子搭載部材に固定される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−94386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電振動素子においては、固定部材が圧電基板の表面に直接付着されているため、固定部材が圧電基板の表面において流れ広がって励振電極に付着してしまう可能性があった。特に、近年、圧電振動素子の小型化が進んでいるため、圧電基板の表面において固定部材が設けられている領域と励振電極が設けられている領域との距離が近くなり、流れ広がった固定部材が励振電極に付着してしまう可能性がさらに高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、圧電振動素子は、平板形状の圧電基板と、圧電基板に設けられた励振電極と、圧電基板に設けられており励振電極に電気的に接続された端子電極と、圧電基板に設けられており励振電極に電気的に接続されていない固定用ランド部とを備えている。
【0007】
本発明の他の態様によれば、圧電デバイスは、上記圧電振動素子と、圧電振動素子が搭載された素子搭載部材と、圧電振動素子の固定用ランド部に設けられており圧電振動素子を素子搭載部材に固定している固定部材とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様による圧電振動素子は、圧電基板に設けられており励振電極に電気的に接続されていない固定用ランド部を備えていることによって、固定部材によって素子搭載部材に固定される場合に、固定部材が表面張力の作用によって固定用ランド部上に留まりやすくなり、固定部材が圧電基板の表面に流れ出て励振電極に付着する可能性が低減されている。したがって、本発明の一つの態様による圧電振動素子は、振動特性に関して向上されている。
【0009】
本発明の他の態様による圧電デバイスは、上記構成の圧電振動素子と、圧電振動素子の固定用ランド部に設けられており圧電振動素子を素子搭載部材に固定している固定部材とを備えていることによって、固定部材が圧電基板の表面に流れ出て励振電極に付着する可能性が低減されており、周波数特性に関して向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態における圧電デバイスを示している分解斜視図である。
【図2】図1に示された圧電デバイスのA−Aにおける縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における圧電振動素子の斜視図である。
【図4】図3に示された圧電振動素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態における圧電デバイスの縦断面図であり、(b)は本発明の第2の実施形態の圧電デバイスにおける圧電振動素子の斜視図である。
【図6】(a)は本発明の第3の実施形態における圧電デバイスの縦断面図であり、(b)は本発明の第3の実施形態の圧電デバイスにおける圧電振動素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1および図2に示されているように、本発明の第1の実施形態における圧電デバイス100は、凹部を有する素子搭載部材10と、素子搭載部材10の凹部内側に設けられており導電性接着剤40によって素子搭載部材10に搭載された圧電振動素子20と、素子搭載部材10の凹部を塞いでいる蓋部材30とを含んでいる。また、圧電振動素子20は、固定部材50によって素子搭載部材10に固定されている。
【0013】
素子搭載部材10は、平板状の基板部11と、基板部11の上に設けられた枠部12と、基板部11の上面における枠部12の内側の領域に設けられた複数の搭載パッド13と、枠部12の上端に設けられた金属層14とを含んでいる。
【0014】
基板部11は、例えばアルミナ等のセラミック材料からなり、四角形の板形状に形成されている。また、基板部11の内部には、配線導体が形成されている。
【0015】
枠部12は、基板部11と同様にアルミナ等のセラミック材料からなり、基板部11の上面に設けられており、基板部11と共に凹部を形成している。
【0016】
複数の搭載パッド13は、例えば導電効率の良い導電用材料よりなり、基板部11の内部の配線導体と電気的に接続されている。また、搭載パッド13は、表面上に金めっきされている。
【0017】
図3に示されているように、圧電振動素子20は、平板状の圧電基板21と、圧電基板21の下面および上面に設けられた励振電極22aおよび22bと、圧電基板21の下面および上面に設けられており励振電極23aおよび23bに電気的に接続された端子電極23aおよび23bと、圧電基板21の下面および上面に設けられており励振電極23aおよび23bに電気的に接続されていない固定用ランド部60とを備えている。
【0018】
圧電基板21は、例えば水晶のような石英材料よりなり、平面視で長方形状を有しており、短辺部には励振電極22aに電気的に接続された端子電極23aと励振電極22bに電気的に接続された端子電極23bとが設けられている。
【0019】
励振電極22aおよび22bは、平面視において、圧電基板21の中央部に配置されている。
【0020】
端子電極23aは、圧電基板21の下面から上面まで引き回されており、端子電極23bは、圧電基板21の上面から下面まで引き回されている。
【0021】
固定用ランド部60は、圧電基板21の下面および上面に設けられており、複数の金属パターン61a〜61dを含んでいる。複数の金属パターン61a〜61dは、例えば銀でできており、平面視において圧電基板21の複数の角部に設けられている。平面透視において、複数の金属パターン61a〜61dの端は、部分的に圧電基板21の辺に重なっている。
【0022】
固定用ランド部60は、平面透視において励振電極22aおよび22bに重ならないように設けられている。
【0023】
固定部材50は、固定用ランド部60に含まれている金属材料と同一の金属材料を含んでいる。
【0024】
蓋部材30は、例えば金属材料よりなり、四角形の板形状を有している。また、蓋部材30は、金属層14を介して素子搭載部材10に接合されている。
【0025】
本発明の第1の実施形態における圧電振動素子20は、圧電基板21に設けられた固定用ランド部60を備えていることにより、固定部材50によって素子搭載部材10に固定される場合に、固定部材50が表面張力の作用によって固定用ランド部60上に留まりやすくなり、固定部材50が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されている。したがって、本発明の第1の実施形態における圧電振動素子20は、振動特性に関して向上されている。
【0026】
本発明の第1の実施形態の圧電振動素子20において、固定用ランド部60が複数の金属パターン61aおよび61bを含んでおり、複数の金属パターン61aおよび61bが平面視において圧電基板21の複数の角部に設けられていることによって、例えば金属パターンが圧電基板21の短辺の中央部に設けられている構造に比べて、励振電極22aとの距離が大きくなるため、周波数温度特性に関して向上されている。
【0027】
本発明の第1の実施形態の圧電振動素子20において、固定用ランド部60が複数の金属パターン61aおよび61bを含んでおり、平面視において複数の金属パターン61aおよび61bの端が部分的に圧電基板21の辺に重なっていることによって、仮に固定部材50の量が所定の量より多すぎた場合に、固定部材50の余剰分が圧電基板21の側面に回り込んで固定部材50の余剰分が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されている。
【0028】
本発明の第1の実施形態の圧電振動素子20において、端子電極23a,23bおよび固定用ランド部60が、圧電基板21の第1の主面および第2の主面に設けられていることによって、圧電デバイス100の組み立て工程において圧電振動素子20の上下面の方向性を気にする必要がなくなるため、圧電デバイス100の生産性が向上されている。
【0029】
本発明の第1の実施形態における圧電デバイス100は、上述の圧電振動素子20と、圧電振動素子20の固定用ランド部60に設けられており圧電振動素子20を素子搭載部材10に固定している固定部材50とを備えていることによって、固定部材50が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されており、周波数特性に関して向上されている。
【0030】
なお、図1〜図3に示された圧電振動素子20は、図4に示されている圧電振動素子120であってもよい。圧電振動素子120において、端子電極23aおよび23bは、平面視において、圧電基板21の対角位置に設けられている。固定用ランド部160は、端子電極23aおよび23bに相対する角部に夫々設けられている。
【0031】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態における圧電デバイス200について図5(a)および(b)を参照して説明する。本発明の第2の実施形態の圧電デバイス200において第1の実施形態における圧電デバイス100と異なる構成は、複数の金属パターン261a〜261dの形状である。その他の構成については、第1の実施形態における圧電デバイス100と同様である。複数の金属パターン261a〜261dのそれぞれは、扇形を有しており、扇形の半径部分が圧電基板21の辺に沿っているとともに扇形の円弧部分が圧電基板21の中央部に向いており、複数の金属パターン261a〜261dの扇形の半径部分が圧電基板21の辺に沿っている。
【0032】
本発明の第2の実施形態の圧電振動素子220において、複数の金属パターン261a〜261dのそれぞれが、扇形を有しており、扇形の円弧部分が圧電基板21の中央部に向いていることによって、固定部材50は、特に圧電基板21の中央方向において、表面張力の作用によって固定用ランド部260上に留まりやすくなり、固定部材50が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されている。したがって、本発明の第2の実施形態における圧電振動素子220は、振動特性に関して向上されている。
【0033】
本発明の第2の実施形態の圧電振動素子220において、複数の金属パターン261a〜261dのそれぞれが、扇形を有しており、複数の金属パターン261a〜261dの扇形の半径部分が圧電基板21の辺に沿っていることによって、仮に固定部材50の量が所定の量より多すぎた場合に、固定部材50の余剰分が圧電基板21の側面に回り込んで固定部材50の余剰分が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されている。
【0034】
また、本発明の第2の実施形態の圧電振動素子220において、複数の金属パターン261a〜261dの扇形の半径部分が圧電基板21の辺に沿っていない場合であっても、複数の金属パターン261a〜261dの円弧部分が圧電基板21の中央部側に位置すれば、固定部材50は圧電基板21の中央部側へは流れ難い状態となる。さらに、複数の金属パターン261a〜261dの、圧電基板21の中央部側とは反対側の形状は角部を有する形状であり、円弧部分と比較して固定部材50が流れ出し易い形状である。そのため、圧電基板21の中央部側すなわち励振電極22aとは反対側に固定部材50が流れ出し易い形状であるので、固定部材50が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性がより低減されている。
【0035】
なお、図4において第1の実施形態の圧電振動素子20の変形例として示された構成は、第2の実施形態の圧電振動素子220にも適用され得る。
【0036】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態における圧電デバイス300について図6(a)および(b)を参照して説明する。本発明の第3の実施形態の圧電デバイス300において第1の実施形態における圧電デバイス100と異なる構成は、複数の金属パターン361a〜361dの形状である。その他の構成については、第1の実施形態における圧電デバイス100と同様である。複数の金属パターン361a〜361dは円形状を有している。
【0037】
本発明の第3の実施形態の圧電振動素子320において、複数の金属パターン361a〜361dが円形状を有していることによって、固定部材50は表面張力の作用によって固定用ランド部360上に留まりやすくなり、固定部材50が圧電基板21の表面に流れ出て励振電極22aに付着する可能性が低減されている。したがって、本発明の第3の実施形態における圧電振動素子320は、振動特性に関して向上されている。
【0038】
なお、図4において第1の実施形態の圧電振動素子20の変形例として示された構成は、第3の実施形態の圧電振動素子320にも適用され得る。
【符号の説明】
【0039】
100 圧電デバイス
10 素子搭載部材
11 基板部
12 枠部
13 搭載パッド
14 金属層
20 圧電振動素子
21 圧電基板
22a,22b 励振電極
23a,23b 端子電極
30 蓋部材
40 導電性接着剤
50 固定部材
60 固定用ランド部
61a〜61d 金属パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板形状の圧電基板と、
前記圧電基板に設けられた励振電極と、
前記圧電基板に設けられており、前記励振電極に電気的に接続された端子電極と、
前記圧電基板に設けられており、前記励振電極に電気的に接続されていない固定用ランド部と、
を備えていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記固定用ランド部が複数の金属パターンを含んでおり、前記複数の金属パターンが平面視において前記圧電基板の複数の角部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記複数の金属パターンのそれぞれが扇形を有しており、前記扇形の半径部分が前記圧電基板の辺に沿っているとともに前記扇形の円弧部分が前記圧電基板の中央部に向いていることを特徴とする請求項2記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記固定用ランド部が複数の金属パターンを含んでおり、前記複数の金属パターンが円形を有していることを特徴とする請求項1記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記固定用ランド部が前記複数の金属パターンを含んでおり、平面視において前記複数の金属パターンの端が部分的に前記圧電基板の辺に重なっていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記端子電極および前記固定用ランド部が、前記圧電基板の第1の主面および第2の主面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された圧電振動素子と、
該圧電振動素子が搭載された素子搭載部材と、
前記圧電振動素子の前記固定用ランド部に設けられており前記圧電振動素子を前記素子搭載部材に固定している固定部材とを備えていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−5278(P2013−5278A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135434(P2011−135434)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】