説明

圧電発振器

【課題】
本発明の目的は、容器1の表面に圧電振動片12を実装し、底面側に半導体部品37を実装した圧電発振器であって、実装基板からの発熱による影響を半導体部品37側と、圧電振動片12側とで略同一とし、圧電振動片12の温度変化による周波数変動量を正確に半導体部品37に形成された温度センサで温度補償することが可能な圧電発振器を提供することにある。
【解決手段】
第1の空間10と第2の空間20が基板2を挟んで相反する方向に形成され、第1の空間10には圧電振動片12を密閉容器1で収納し、第2の空間20には半導体部品37を収納した圧電発振器において、第2の空間20に収納する半導体部品37は、基板2と接合部材36で実装されると共に、半導体部品37が実装される基板2面にはくぼみ38が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より携帯用の通信機器等の電子機器に圧電発振器が用いられている。
【0003】
かかる従来の圧電発振器としては、例えば図6に示す如く、基板2の上下面に第1の空間10、第2の空間20を有する容器1の上面の第1の空間10内に、圧電振動片12を実装して気密封止し、且つ前記第2の空間20内に、圧電振動片12の温度補償を行なうため半導体部品37を収容してなる温度補償型の圧電発振器であって、第2の空間20の内表面に、半導体部品37を保護するための樹脂38を充填した圧電発振器が開示してある。図6はその断面図である。
【0004】
上述の構造により、容器1の表面に圧電振動片12を実装し、底面側に半導体部品37を実装しているため、表面面積の小さい小型の圧電発振器ができる。また、圧電振動片12と半導体部品37とを全く異なる領域に収容することができるため、圧電振動片12の発振動作を長期にわたり安定化させることができる。また、圧電振動片12の発振特性の不良を製造工程中に簡単に検出できるため、半導体部品37の無駄な消費、無駄な製造工程の未実施により、安価な圧電発振器となる。また、容器1の表面に圧電振動片12を実装した後に、半導体部品37を実装しているので、圧電振動片12の周波数安定化のために行なう熱処理が、半導体部品37に加えられず、半導体部品37の動作信頼性や接続信頼性を高めることができる。(例えば、特許文献1、2参照)
【特許文献1】特開2000−138533号公報
【特許文献2】特開1999−333858号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の圧電発振器の場合、容器1の表面に圧電振動片12を実装し、底面側に半導体部品37を実装しているため、実装基板40からの発熱による影響は半導体部品37側が大きく、圧電振動片12側の影響が小さいため、圧電振動片12の温度変化による周波数変動量を正確に半導体部品37に形成された温度センサで温度補償できないという課題があった。
【0006】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、容器1の表面に圧電振動片12を実装し、底面側に半導体部品37を実装した圧電発振器であって、実装基板40からの発熱による影響を半導体部品37側と、圧電振動片12側とで略同一とし、圧電振動片12の温度変化による周波数変動量を正確に半導体部品37に形成された温度センサで温度補償することが可能な圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電発振器は、第1の空間と第2の空間が基板を挟んで相反する方向に形成され、前記第1の空間には圧電振動片を密閉容器で収納し、前記第2の空間には半導体部品を収納した圧電発振器において、前記第2の空間に収納する半導体部品は、前記基板と接合部材で実装されると共に、前記半導体部品が実装される前記基板面にはくぼみが形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の圧電発振器は、上記構成において、くぼみは、前記半導体部品の実装する接合部材より中心位置にあることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の圧電発振器は、上記構成において、基板は集合基板の形態を成し、複数個の圧電発振器が存在する形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電発振器によれば、第1の空間と第2の空間を持つ圧電発振器で、半導体部品を収納する第2の空間に、基板と接合部材で実装されると共に、前記半導体部品が実装される前記基板面にはくぼみが形成されていることから、第1の空間の圧電振動片側の温度環境(温度上昇)と、第2の空間に収納する半導体部品の温度環境(温度上昇)が略同一となるため、第1の空間と第2の空間側の熱の変動による温度変化を略同一にできるため、半導体部品内部に形成された温度センサの感知する温度と圧電振動片側の実際の温度とを略同一にでき温度補償精度の良い圧電発振器を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0012】
図1は本発明の実施形態にかかる圧電発振器の断面図である。図1に図示する圧電発振器は大略的に言って、容器1と、枠部5、圧電振動片12、半導体部品37とで構成されている。図1に図示する圧電発振器は、第1の空間10に圧電振動片12を収容した容器1に、枠部5の底面の四隅部に外部接続端子9が設けられている。外部接続端子9は枠部5と電気的および機械的に接続され、かつ固定されており、実装基板40との接続用端子として機能している。また、第2の空間20側には半導体部品37が接合部材36を介して基板2に接続されており、基板2の半導体部品37の搭載位置部分すなわち、半導体部品の実装する接合部材より中心位置にはへこみ38が形成されている。
また、図示してないが一般的には半導体部品37の外側位置に配置する枠部5と、半導体部品37と枠部5とは樹脂で被われており、半導体部品37の回路形成面が保護されている。
【0013】
図2はシート状の母基板から切断された1個の基板領域を示したものである。また、図3は本発明の圧電発振器である圧電発振器を実装基板40に搭載した状態を示す断面図である。
【0014】
前記容器1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板2、基板2と同様のセラミック材料から成る側壁3、42アロイやコパール、リン青銅等から成る蓋体4から成り、前記基板2の上面に側壁3を取着させ、その上面に蓋体4を載置し固定させることによって容器1が構成され、側壁3の内側に位置する基板2の上面に接合部材13を介して圧電振動片12が実装される。前記容器1はその内部に、具体的には、基板2の上面と側壁3の内面と蓋体4の下面とで囲まれる第1の空間10内に圧電振動片12を収容して気密封止するためのものである。
【0015】
一方、前記容器1の第1の空間10に収容される圧電振動片12は、所定の結晶軸でカットした圧電振動片12の両主面に一対の振動電極を被着・形成してなり、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して圧電振動片12に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0016】
また一方で図1、図2に図示するように、上述した基板2の下面には、枠部5が形成され、枠部5の四隅部には外部接続端子9が被着・形成されている。これら枠部5間に位置する基板2の下面には、矩形状に形成されたフリップチップ型の半導体部品37が搭載されており、半導体部品37は接合部材36を介して基板2に接続されている。
【0017】
前記半導体部品37はその回路形成面に、周囲の温度状態を検知する温度センサ、圧電振動片12の温度特性を補償する温度補償データを有し、温度補償データに基づいて前記圧電振動片12の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えばクロック信号等の基準信号として利用されることとなる。ここで圧電振動片12と半導体部品37は図1に図示する基板2の内層に設けられたメタライズ配線15により接続されている。
【0018】
次に上述した圧電発振器の製造方法について、本発明の実施形態である図2、図3を用いて説明する。 まず、集合基板の状態で、縦m列×横n行(m、nは2以上の自然数)のマトリクス状に配列された複数個の第1の空間10、20を有するシート状の母基板を準備する。次に、図1に図示するように各第1の空間10に圧電振動片12を搭載する。各第1の空間10には、その上面側に一対の接続パッドと接合用の導体層が被着・形成されている。また、各第1の空間10と相反する面の基板領域の四隅部には、外部接続端子9が先の図1に図示するように被着して形成されている。
【0019】
このようなシート状の母基板は、例えば、アルミナセラミックス等から成るセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し更に混合して得たセラミックグリーンシートの表面等に、接続パッドや外部接続端子9等となる導体ペーストを所定のパターンに印刷して塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することによって製作される。
【0020】
そして、第1の空間10を有するシート状の母基板に形成される側壁3の内側に圧電振動片12を1個ずつ搭載する。圧電振動片12はその振動電極と基板2上面の対応する搭載パッドとを接合部材13を介して電気的・機械的に接続することによって基板2上に搭載される。
【0021】
また、シート状の母基板の第1の空間10と1対1に対応する複数個のカバー(蓋)領域を有する金属製の蓋体4を、圧電振動片12が封止されるように側壁3上に載置・接合する。前記蓋体4としては、例えば、42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成る厚みが60μm〜200μmの金属板が用いられる。
【0022】
この工程では、蓋体4を各カバー(蓋)領域の内側に対応する第1の空間10領域に圧電振動片12が配されるようにしてシート状の母基板上面の側壁3上に載置させ、しかる後に両者を従来から周知の金すず封止等により接合することによって蓋体4が側壁3の上面に取着し固定される。なお、上述した一連の接合工程は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましく、これによって圧電振動片12が収納される空間には不活性ガスが充満されるため、圧電振動片12が酸素や大気中の水分等によって腐食して劣化するおそれを有効に防止することができる。
【0023】
次にシート状の母基板下面の枠部5で囲まれる領域に半導体部品37を1個ずつ搭載する。半導体部品37は、その接続電極とシート状の母基板下面の対応する搭載パッドとを接合部材36を介して電気的・機械的に接続することによってシート状の母基板に搭載される。
【0024】
そして、半導体部品37は、その回路形成面に周囲の温度状態を検知する温度センサや圧電振動片12の温度特性を補償する温度補償データを有し、温度補償データに基づいて圧電振動片12の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路を有する半導体部品37へ、圧電発振器の仕様を所望の数値となるように、温度補償制御端子(不図示)よりビットデータを入力し温度補償データの書き込みを行う。
【0025】
最後に、シート状の母基板を各基板領域の外周に沿って一括的に分割・切断(ダイシング)し、これによって複数個の圧電発振器が同時に製作される。また、シート状の母基板の切断(ダイシング)は、例えば、ダイサー等を用いて、これらの部材を一括的に切断(ダイシング)することによって行われ、これによって複数個の圧電発振器が同時に得られる。
【0026】
ここで、本発明の特徴部分は図1に図示するように、第1の空間10と第2の空間20が基板2を挟んで相反する方向に形成され、第1の空間10には圧電振動片12を密閉容器で収納し、第2の空間20には半導体部品37を収納した圧電発振器において、第2の空間20に収納する半導体部品37は、基板2と接合部材36で実装されると共に、半導体部品37が実装される基板2面にはくぼみ38が形成されていることから、第1の空間10の圧電振動片12側の温度環境(温度上昇)と、第2の空間20に収納する半導体部品37の温度環境(温度上昇)が略同一となるため、第1の空間10と第2の空間20側の熱の変動による温度変化を略同一にできるため、半導体部品37内部に形成された温度センサの感知する温度と圧電振動片12側の実際の温度とを略同一にでき温度補償精度の良い圧電発振器を得ることが可能となる。
【0027】
これは図4、図5に示す圧電発振器のヒータ試験による結果で明らかである。図4と図5はヒータ基板(設定温度:50℃)に圧電発振器を置いてからの時間と周波数偏差の関係を示したものであり、図4が本発明の基板2にくぼみ38を形成した場合、図5は従来例の基板2にくぼみを形成しない場合である。これら図4、図5より、従来例の図5はヒータ基板に圧電発振器を置いた直後に周波数偏差が大きく変化しているのに対し、本発明の図4はその差が小さくなっている。これは、半導体部品37のヒータ基板による温度変化と圧電振動片12のヒータ基板による温度変化が小さくなったために半導体部品37に形成された温度センサによる温度補償の精度が向上したことを意味する。即ち、従来の基板2にくぼみ38がない構造においてはヒータ基板による急激な温度変化に半導体部品37側に圧電振動片12側が追随できず、その結果、ヒータ基板に置いた直後に周波数偏差が大きく変化していたが、本発明の構造とすることで、急激な温度変化に対して半導体部品37側と圧電振動片12側の温度変化差小さくでき、その結果温度補償精度が向上し、周波数偏差を小さくすることが可能となる。
【0028】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0029】
例えば上述の実施形態においては、基板2のくぼみ38は空間なっているが、くぼみ38の空間に導電体、または樹脂等を形成し、熱伝導特性を向上させる手段を付加しても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態にかかる圧電発振器の概略の断面図である。
【図2】本発明のシート状基板の母基板から切断された1個の基板領域の下面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる圧電発振器である圧電発振器を実装基板に搭載した場合の断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる圧電発振器のヒータ基板による加熱試験の時間と周波数偏差の関係を示す図である。
【図5】従来の圧電発振器のヒータ基板による加熱試験の時間と周波数偏差の関係を示す図である。
【図6】従来の圧電発振器の概略の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・容器
2・・・基板
3・・・側壁
4・・・蓋体
5・・・枠部
9・・・外部接続端子
10・・・第1の空間
12・・・圧電振動片
13・・・接合部材
15・・・メタライズ配線
20・・・第2の空間
36・・・接合部材
37・・・半導体部品
38・・・くぼみ
40・・・実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間と第2の空間が基板を挟んで相反する方向に形成され、前記第1の空間には圧電振動片を密閉容器で収納し、前記第2の空間には半導体部品を収納した圧電発振器において、
前記第2の空間に収納する半導体部品は、前記基板と接合部材で実装されると共に、前記半導体部品が実装される前記基板面にはくぼみが形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1記載のくぼみは、前記半導体部品を実装する接合部材より中心位置にあることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1記載の基板は集合基板の形態を成し、複数個の圧電発振器が存在する形状を有することを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−235482(P2007−235482A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54110(P2006−54110)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】