説明

地上デジタル受信機

【課題】共通の構成でVHF帯のセグメント音声放送やUHF帯の放送チャンネルを選択的に受信可能とする。
【解決手段】受信されたUHF帯の地上デジタル放送信号やVHF帯の地上アナログ放送信号から、可変BPF2,4により、地上デジタル放送の希望チャンネルあるいはVHF帯の所定チャンネルの地上デジタル音声放送信号が抽出される。抽出されたチャンネルは周波数混合回路5で、局部発振信号LOにより、予め決められた中間周波帯に周波数変換され、フィルタ20に供給される。フィルタ20は、地上デジタル放送のチャンネルが選局されたとき、13セグメント6MHzの通過帯域に設定され、地上デジタル音声放送のセグメント音声放送が選局されたときには、8セグメント3.4MHzの通過帯域が設定される。これにより、13セグメントの希望チャンネルあるいは1,3セグメントの音声放送を選局できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在UHF帯で放送されている地上デジタル放送を受信する受信機に係り、特に、将来放送予定のVHF帯のデジタル音声放送などのデジタル放送信号も受信可能とした地上デジタル受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内における地上デジタル放送では、UHF帯にチャンネルが配置され、従来のアナログ放送で使用されている1チャンネル当たり6MHzの信号帯域幅を利用して実用化されている。この地上デジタル放送では、各チャンネルでその6MHz信号帯域を13セグメントに分割配置するようにしたISDB-T方式が採用されており、そのセグメントの総数(即ち、13セグメント)を用いた高解像度のハイビジョン放送もしくは1セグメントを用いた簡易放送として、各放送局が映像コンテンツを配信している。
【0003】
また、VHF帯においても、将来のデジタル音声放送の実現に向けて、1セグメント放送と3セグメント放送の実用試験が実施されている。これは、現在のVHF帯のアナログ放送では、チャンネル7の一部もしくはチャンネル8の一部が空き帯域となっているが、かかる空き帯域に6/14MHz帯域幅のセグメントを8セグメント使用した約3.4MHzの信号帯域を割り当て、これで1セグメントのデジタル音声放送(以下、1セグメント音声放送という)と3セグメントのデジタル音声放送(以下、3セグメント音声放送という)を行なうものである。
【0004】
図8はかかるVHF帯の地上アナログ放送のチャンネルマップのチャンネル7,8の部分を示す図であり、同図(a)はチャンネル8がアナログ放送に使用されている場合を、同図(b)はチャンネル7がアナログ放送に利用されている場合を夫々示している。
【0005】
図8(a),(b)において、各アナログ放送チャンネルは周波数帯域幅が6MHzであって、各チャンネルの中心周波数f0の周波数間隔は6MHzであるが、チャンネル7の中心周波数f0(CH.7)が191.143MHzであるのに対して、チャンネル8の中心周波数f0(CH.8)が195.143MHzであり、その差は4MHzである。このように、これらチャンネル7,8の中心周波数f0(CH.7),f0(CH.8)の周波数間隔が4MHzとなっており、このため、これらチャンネル7,8の6MHzの周波数帯域が2MHz重なり合っている。従って、チャンネル7,8が同時に使用されることがなく、これらのいずれか一方がアナログ放送に使用される。
【0006】
図8(a)はチャンネル7,8のうちのチャンネル8が地上アナログ放送に使用されている場合を示すものであって、チャンネル8の周波数帯域CH.8のうちのハッチングで示す帯域ΔHがチャンネル7の周波数帯域CH.7(図8(b))と重複する重複帯域である。そして、このとき、チャンネル7が使用されないことから、チャンネル6とチャンネル8との間に4MHzの帯域幅の空き帯域SF7が生じ、この空き帯域SF7に上記の8セグメントを割り当て、ここで、1セグメントのデジタル音声放送(以下、1セグメント音声放送という)や3セグメントのデジタル音声放送(以下、3セグメント音声放送という)を行なうものである。
【0007】
なお、1セグメント音声放送の場合には、8セグメントのうちの特定の1セグメントがデジタル音声放送に使用され、他のセグメントは使用されない。同様にして、3セグメント音声放送の場合には、8セグメントのうちの特定の3セグメントが放送に使用され、他のセグメントは使用されない。
【0008】
図8(b)はチャンネル7,8のうちのチャンネル7が地上アナログ放送に使用されている場合を示すものであって、チャンネル7の周波数帯域CH.7のうちのハッチングで示す帯域がチャンネル8の周波数帯域CH.8(図8(a))と重複している重複帯域ΔHである。そして、チャンネル8が使用されないことから、チャンネル7とチャンネル9との間に4MHzの帯域幅の空き帯域SF8が生じ、この空き帯域SF8に上記の8セグメントを割り当て、ここで、1セグメント音声放送や3セグメント音声放送を行なうものである。
【0009】
なお、1セグメント音声放送の場合には、8セグメントのうちの特定の1セグメントがデジタルおんせい放送に使用され、他のセグメントは使用されない。同様にして、3セグメント音声放送の場合には、8セグメントのうちの特定の3セグメントがデジタル音声放送に使用され、他のセグメントは使用されない。
【0010】
上記の実用試験では、このように、VHF帯での空き帯域SF7,8を利用して1セグメント放送や3セグメント放送の試験を行なうものである。
【0011】
ところで、VHF帯で配信されるであろう上記のデジタルの音声信号を受信するための地上デジタル受信機も提案されており、その一例として、1セグメント音声放送と3セグメント音声放送とを受信可能とした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
図9はかかる従来の地上デジタル受信機を示す構成図であって、セグメント抽出に表面弾性波フィルタを用いたものであり、1はアンテナ、2は可変BPF(バンドパスフィルタ)、3は可変利得増幅器、4は可変BPF、5は周波数混合回路、6は局部発振回路、7はPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路、8は切替スイッチ、9は1セグメント音声放送抽出用の表面弾性波フィルタ、10は3セグメント音声放送抽出用の表面弾性波フィルタ、11は復調部、12a,12bはAD(アナログ/デジタル)変換器である。
【0013】
同図において、アンテナ1で受信されたデジタル信号(受信デジタル信号)SRFは可変BPF2に供給される。この可変BPF2は、局部発振回路6からのチャンネル選択信号SCに応じて通過帯域が変更されるものであって、このチャンネル選択信号SCによってその通過帯域が希望チャンネルの周波数帯域に設定されることにより、受信デジタル信号SRFの希望チャンネルが選択出力される。この場合、チャンネル7もしくはチャンネル8が選局される。
【0014】
なお、ユーザの希望チャンネルの選択操作による図示しないマイコンからの選局データにより、PLL回路7が局部発振回路6の発振周波数をこの希望チャンネルに応じた周波数に設定する。これにより、局部発振回路6は、この発振周波数の局部発振信号Loを発生して周波数混合回路5に供給するとともに、選択されたチャンネルに応じて、例えば、レベルが異なるチャンネル選択信号SCを発生し、可変BPF2に供給する。
【0015】
この希望チャンネルの受信デジタル信号SRFCは、可変増幅器3で増幅された後、可変BPF4に供給される。この可変BPF4も、可変BPF2と同様、局部発振回路6からのチャンネル選択信号SCによって通過帯域が希望チャンネルの周波数帯域に設定されており、これにより、可変増幅器3で増幅された希望チャンネルの受信デジタル信号SRFCから不要信号(例えば、隣接チャンネルの信号)が除去される。
【0016】
可変BPF4から出力される希望チャンネルの受信デジタル信号SRFCは、周波数混合回路5に供給され、PLL回路7の制御のもとに局部発振回路6から出力されるこの希望チャンネルの周波数に応じた周波数の局部発振信号LOを用いて、スーパーヘテロダイン方式により、その中心周波数が予め決められた中間周波数の信号となるように、周波数変換する。可変BPF2,4によっていずれのチャンネルが希望チャンネルとして選択されても、周波数混合回路5により、同じ中間周波数の中間周波数信号に周波数変換される。
【0017】
この希望チャンネルの中間周波信号SIFCは、切替スイッチ8に供給される。この切替スイッチ8は、希望チャンネル(即ち、チャンネル7または8)での希望するセグメント(即ち、1セグメント音声放送または3セグメント音声放送)に応じて切替られるものであって、1セグメント音声放送を選択する場合には、接点a側に切り替えられ、これにより、希望チャンネル7または8の中間周波信号SIFCは表面弾性波フィルタ9に供給される。この表面弾性波フィルタ9は、供給される希望チャンネルでの1セグメント音声放送に用いている1つの特定セグメントを通過させる通過帯域が設定されており、これにより、希望チャンネル7または8での1セグメント音声放送信号が抽出される。この1セグメント音声放送信号は復調部11に供給され、AD変換器12aによって復調される。
【0018】
また、3セグメント音声放送を選択する場合には、切替スイッチ8は接点b側に切り替えられ、これにより、希望チャンネル7または8の中間周波信号SIFCが表面弾性波フィルタ10に供給される。この表面弾性波フィルタ10は、供給される希望チャンネル7または8での3セグメント音声放送に用いている3つの特定セグメントを通過させる通過帯域が設定されており、これにより、希望チャンネル7または8での3セグメント音声放送信号が抽出される。この3セグメント音声放送信号は復調部11に供給され、AD変換器12bによって復調される。
【0019】
このようにして、VHF帯のアナログ放送でのチャンネル7または8で放送される地上デジタル放送の1または3セグメント音声放送を受信することができる。
【0020】
また、受信放送信号から特定の2つの周波数帯域を抽出できるようにした受信機も提案されている。かかる受信機によると、VHF帯で配信されるであろう地上デジタル放送信号の、図8で示したチャンネル7及びチャンネル8のデジタル音声放送信号を抽出するようにすることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0021】
図10はかかる地上デジタル受信機の要部を示すブロック構成図であって、13は可変増幅器、14は切替スイッチ、15,16は表面弾性波フィルタ、17は切替スイッチ、18は周波数混合回路である。
【0022】
同図において、図示しないアンテナで受信されたVHS帯の地上放送信号SRFは、可変増幅器13で増幅された後、切替スイッチ14に供給される。
【0023】
この地上放送信号SRFからチャンネル7の空き帯域SF7(図8)でのデジタル音声放送信号を抽出する場合には、切替スイッチ14がc接点側に切り替えられ、これにより、地上放送信号SRFは表面弾性波フィルタ15に供給される。この表面弾性波フィルタ15では、チャンネル7の空き帯域SF7の通過帯域が設定されており、供給された地上放送信号SRFからそのチャンネル7のデジタル音声放送信号が抽出されて切替スイッチ17に供給される。このとき、この切替スイッチ17は接点c’側に閉じており、表面弾性波フィルタ15で抽出されたチャンネル7のデジタル音声放送信号はこの切替スイッチ17を通って周波数混合回路18に供給される。このとき、この周波数混合回路18では、このチャンネル7の中心周波数に応じた周波数の局部発振信号LOが供給されており、これにより、チャンネル7のデジタル音声放送信号は予め決められた周波数の中間周波信号SIFに変換される。この中間周波信号SIFが、図示しない復調器でベースバンドのデジタル音声信号に復調される。
【0024】
また、地上デジタル信号SRFからチャンネル8の空き帯域SF8(図8)でのデジタル音声放送信号を抽出する場合には、切替スイッチ14はd側に切り替えられ、これにより、地上デジタル信号SRFは表面弾性波フィルタ16に供給される。この表面弾性波フィルタ16では、チャンネル8の空き帯域SF8の通過帯域が設定されており、供給された地上デジタル信号SRFからそのチャンネル8のデジタル音声放送信号が抽出されて切替スイッチ17に供給される。このとき、この切替スイッチ17は接点d’側に閉じており、表面弾性波フィルタ16で抽出されたチャンネル8のデジタル音声放送信号はこの切替スイッチ17を通って周波数混合回路18に供給される。このとき、この周波数混合回路18では、このチャンネル8の中心周波数に応じた周波数の局部発振信号LOが供給されており、これにより、チャンネル8のデジタル音声放送信号は上記の予め決められた周波数の中間周波信号に変換される。この中間周波信号が、図示しない復調器で復調される。
【0025】
このようにして、図8に示す地上デジタル放送信号からチャンネル7とチャンネル8のデジタル音声放送信号を受信することができる。
【特許文献1】特開2003−46885号公報
【特許文献2】特開2001ー189670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、上記の図9,図10に示したセグメント放送を受信する従来技術では、1セグメント放送や3セグメント放送を受信することができるが、このためには、1セグメント放送の通過帯域の表面弾性波フィルタ15と3セグメント放送の通過帯域の表面弾性波フィルタ16とを設け、即ち、セグメント放送毎に表面弾性波フィルタを設け、受信を希望するセグメント放送に応じてかかる表面弾性波フィルタを高周波用スイッチング素子などの切り替えによって選択する必要があり、このために、装置に用いる部品点数が増大化して回路の合理化,装置の小型化が図れないという問題がある。
【0027】
また、VHF帯の地上デジタル音声放送の受信では、無線周波(VHF帯)の受信信号の希望チャンネルを予め決められた中間周波数の中間周波信号に変換する場合、局部発振回路から出力される局部発振信号LOの周波数は、無線周波の受信信号での希望チャンネルの中心周波数に中間周波信号の中間周波数を加算した周波数である。ところが、上記の従来技術では、チャンネル7やチャンネル8の所望とする1セグメント音声放送や3セグメント音声放送を選択する場合、これらセグメント音声放送毎に表面弾性波フィルタを用いるものであるから、抽出しようとするセグメント音声放送の中心周波数を該当する表面弾性波フィルタの通過帯域の中心周波数に一致させるようにする必要がある。このため、上記の地上デジタル音声放送のチャンネルの選択のように、局部発振信号LOの周波数(局部発振周波数fO)をチャンネル7,8の中心周波数に中間周波数を加算しただけのものでは充分ではなく、かかる周波数からさらに変更することが必要がある。
【0028】
さらに、図8で示したように、VHF帯での放送信号のチャンネル7,8に配置されたセグメント音声放送を受信する従来の地上デジタル受信機では、これら特定のチャンネルに対して、夫々のチャンネルに応じた固定の通過帯域の表面弾性波フィルタを用いているので、今後放送局での放送チャンネルの配置が変更された場合、これに対応することが困難なものとなっている。
【0029】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、共通の構成で各セグメント放送やチャンネルを選択的に受信可能とし、部品点数を削減して回路の合理化、小型化を可能とした地上デジタル受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくともUHF帯の地上デジタル放送信号とVHF帯の地上デジタル放送信号とを、地上放送信号として、受信する地上デジタル受信機であって、受信した地上放送信号から指定された希望放送チャンネルの信号を選択抽出する可変通過帯域のバンドパスフィルタと、選択抽出された希望放送チャンネルの信号を、規定される中間周波数帯域の中間周波信号に周波数変換する周波数混合回路と、周波数混合回路に周波数変換のための局部発振信号を供給する局部発振回路と、局部発振回路の発振周波数を、指定された希望放送チャンネルに応じて、プログラマブルに制御するPLL回路とからなり、受信された地上放送信号の指定された希望チャンネルの信号を規定された周波数の中心周波信号に変換して出力するスーパーヘテロダイン方式のチューナ部と、チューナ部から出力される希望チャンネルの中間周波信号から希望信号のみを抽出するフィルタ部と、フィルタ部で抽出された希望信号を直交復調する直交復調部とを備え、希望信号のセグメント数またはセグメント帯域幅に応じて、局部発振回路の発振周波数のオフセット量を変化させることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明は、VHF帯の地上デジタル放送信号の希望チャンネルでの希望信号は、地上アナログ放送信号での空き帯域となっているチャンネルに設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号であって、希望チャンネルがチャンネル7であって、チャンネル7での空き帯域に設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が希望信号であるときには、局部発振回路の発振周波数をチャンネル7の中心周波数に中間周波数帯域の中心周波数を加算した周波数とし、希望チャンネルがチャンネル7以外のVHF帯のチャンネルに配置された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が希望信号であるときには、局部発振回路の発振周波数をこのチャンネルの中心周波数と中間周波数帯域の中心周波数とを加算してなる周波数に、周波数を高める方向に、2MHzのオフセットを設定した周波数とすることを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明は、VHF帯の地上デジタル放送信号の希望チャンネルでの希望信号は、地上アナログ放送信号での空き帯域となっているチャンネルに設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号であって、希望チャンネルがチャンネル8であって、チャンネル8での空き帯域に設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が希望信号であるときには、局部発振回路の発振周波数をチャンネル8の中心周波数に中間周波数帯域の中心周波数を加算した周波数とし、希望チャンネルがチャンネル8以外のVHF帯のチャンネルに配置された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が希望信号であるときには、局部発振回路の発振周波数をこのチャンネルの中心周波数と中間周波数帯域の中心周波数とを加算してなる周波数に、周波数を低める方向に、2MHzのオフセットを設定した周波数とすることを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明は、フィルタ部が、隣接チャンネルを抑圧する表面弾性波フィルタもしくはこれと同等の性能を有するバンドパスフィルタであって、希望信号に応じて、PLL回路から制御信号により、フィルタ部の通過帯域を切り替えることを特徴とするものである。
【0034】
また、本発明は、フィルタ部が、その通過帯域を13セグメントの帯域と8セグメントの帯域とに切り替え可能であって、かつ通過帯域が13セグメントの帯域であるときと8セグメントの帯域であるときの中心周波数を異にすることを特徴とするものである。
【0035】
また、本発明は、フィルタ部の帯域幅の切り替えが、内蔵のマイコンまたは直交復調部からの制御信号によって制御されることを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明は、少なくともUHF帯の直交変調された地上デジタル放送信号と、VHF帯の所定のチャンネルに割り当てられた直交変調されたデジタル音声放送信号とを、地上放送信号として、受信する地上デジタル受信機であって、受信した地上放送信号から指定された希望放送チャンネルの信号を選択抽出する可変通過帯域のバンドパスフィルタと、選択抽出された希望放送チャンネルの信号をベースバンドの信号に周波数変換する第1,第2の周波数混合回路と、第1の周波数混合回路に周波数変換のための局部発振信号を供給する局部発振回路と、局部発振信号を90゜位相シフトして第2の周波数混合回路に供給する90゜移相器と、局部発振回路の発振周波数を、指定された希望放送チャンネルに応じて、プログラマブルに制御するPLL回路とからなり、受信された地上放送信号の指定された希望チャンネルの信号を2つのベースバンド信号に周波数変換して出力するダイレクトコンバージョン方式のチューナ部と、チューナ部から出力される2つのベースバンド信号毎に希望信号のみを抽出する第1,第2の低域通過フィルタと、第1,第2の低域通過フィルタで抽出された夫々の希望信号を直交復調する直交復調部とを備え、希望信号のセグメント数またはセグメント帯域幅に応じて、局部発振回路の発振周波数のオフセット量を変化させることを特徴とするものである。
【0037】
また、本発明は、第1,第2の低域通過フィルタのいずれか一方の低域通過帯域フィルタの通過帯域は固定であり、他方の低域通過フィルタの通過帯域が、希望信号がUHF帯の地上デジタル放送信号の希望チャンネルの信号であるときと、希望信号がVHF帯の地上デジタル音声放送信号であるときとで切り替えられることを特徴とするものである。
【0038】
また、本発明は、チューナ部と第1,第2の低域通過フィルタとが、同一パッケージの半導体チップに構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、PLL回路の設定をプログラマブルに変更することにより、受信放送信号を中心周波信号あるいはベースバンドの信号に変換するための局部発振器の発振周波数(従って、局部発振信号の周波数)を各セグメント方式に応じて任意にオフセット設定することが可能となるし、異なるセグメント数の帯域の切り替え可能なフィルタを用いることにより、セグメント方式にかかわらず共通のフィルタを用いることができ、回路の合理化が実現できて、地上デジタル受信機の小型化、低価格化に寄与できる。
【0040】
そして、このことから、本発明は、特に、常に移動して受信地域が限定されず、移動する地域に応じて放送チャンネルが変化する環境で使用される携帯端末機や車載端末機などの移動端末機に有効といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図9で説明した従来技術では、1セグメント音声放送や3セグメント音声放送を受信するものであったが、さらに、13セグメントの通過帯域の表面弾性波フィルタを追加することにより、UHF帯の地上デジタル放送の受信も可能となる。これを図2で説明する。但し、11は13セグメントの通過帯域の表面弾性波フィルタであり、図9に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0042】
図2において、アンテナ1からはVHF帯の地上デジタル音声放送やUHF帯の地上デジタル放送が受信され、可変BPF2,可変増幅器3,可変BPF4及び周波数混合回路5で処理された希望チャンネルの放送信号が中間周波信号SIFCとして得られる。この希望チャンネルの中間周波信号SIFCは切替スイッチ8に供給される。
【0043】
ここで、1セグメント音声放送を抽出するための表面弾性波フィルタ9と3セグメント音声放送を抽出するための表面弾性波フィルタ10とに加え、UHF帯の地上デジタル放送の13セグメントからなるチャンネルを抽出するための表面弾性波フィルタ11が設けられており、これらのいずれかが切替スイッチ8によって選択される。
【0044】
そこで、ユーザがVHF帯のチャンネル7またはチャンネル8での1セグメント音声放送または3セグメント音声放送である地上デジタル音声放送を、あるいはUHF帯の地上デジタル放送の1セグメント音声放送を選局した場合には、切替スイッチ8は接点a側またはb側に切り替わる。これにより、中間周波信号SIFCは表面弾性波フィルタ9または10に供給され、1セグメント音声放送または3セグメント音声放送が抽出される。これら放送信号は復調部13に供給され、復調される。
【0045】
また、UHF帯の地上デジタル放送信号の13セグメントの希望チャンネルが選局されたときには、切替スイッチ8は接点c側に切り替わる。これにより、中間周波信号SIFCは表面弾性波フィルタ19に供給され、13セグメントの希望チャンネルが抽出される。このチャンネルの13セグメントの放送信号は復調部13に供給され、映像信号や音声信号に復調される。
【0046】
また、このことは、図10に示した従来技術においても同様であり、13セグメントの通過帯域の表面弾性波フィルタを追加し、これを切替スイッチ14,17で選択するようにすることにより、UHF帯の地上デジタル放送のチャンネルも選局できる。
【0047】
このようにして、UHF帯の地上デジタル放送とVHF帯の地上デジタル音声放送のセグメント音声放送との受信が可能となるが、以下に説明する実施形態では、さらに、表面弾性波フィルタを1セグメント,3セグメント及び13セグメントの各放送の受信に共通に用いることができるようにしたものである。
【0048】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
【0049】
図1は本発明による地上デジタル受信機の第1の実施形態を示すブロック構成図であって、20は表面弾性波フィルタ、21は可変増幅器、22は復調部であり、図9に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0050】
この第1の実施形態は、一例として、UHF帯の地上デジタル放送での13セグメント放送とVHF帯の3セグメント音声放送とを受信する場合についてのものであり、受信信号をスーパーヘテロダイン方式のチューナ部で中間周波帯の受信信号に周波数変換し、この中間周波信号から所望の3セグメント音声信号や13セグメントのチャンネルを抽出するものである。
【0051】
同図において、図9に示した従来技術と同様、アンテナ1で受信されたUHF帯の地上デジタル放送信号やVHF帯の地上デジタル音声放送信号(以下、これらをまとめて受信放送信号SRFという)は可変BPF2に供給され、局部発振回路6からのチャンネル選択信号SCにより、その通過帯域が設定されてこの受信放送信号SRFの希望チャンネル(UHF帯の地上デジタル放送の希望のチャンネルやVHF帯での地上デジタル音声放送のためのチャンネル7もしくはチャンネル8)が選択出力される。この希望チャンネルの受信放送信号SRFCは、可変増幅器3で増幅された後、可変BPF4に供給される。この可変BPF4は、局部発振回路6からのチャンネル選択信号SCにより、通過帯域が希望チャンネルの周波数帯域に設定され、これにより、希望チャンネルの受信放送信号SRFCは、不要信号(例えば、隣接チャンネルの信号)が除去される。
【0052】
可変BPF4からの希望チャンネルの受信放送信号SRFCは周波数混合回路5に供給され、スーパーヘテロダイン方式により、局部発振回路6からの局部発振信号LOと混合されて予め決められた中間周波帯(国内では、中心周波数が57MHzの周波数帯)の受信放送信号(以下、中間周波放送信号という)SIFCに変換され、帯域幅が可変の表面弾性波フィルタ20に供給される。
【0053】
なお、以上の可変BPF2,4、可変増幅器3、周波数混合回路5、局部発振回路6及びPLL回路7などが、スーパーヘテロダイン方式のチューナ部を構成している。
【0054】
ここで、この表面弾性波フィルタ20は、13セグメントを通過させる通過帯域と3セグメントを通過させる通過帯域とを切替え設定可能に構成されるものであり、これにより、UHF帯の地上デジタル放送の所定のチャンネルが選局されたときには、PLL回路7からの帯域制御信号SBにより、13セグメントの通過帯域が設定され、また、UHF帯の地上デジタル放送の1セグメント放送あるいはVHF帯の地上デジタル音声放送のチャンネル7またはチャンネル8の3セグメント放送信号が選局されたときには、3セグメントの通過帯域が設定される。
【0055】
図3は図1における表面弾性波フィルタ20の一具体例を模式的に示す構成図であって、23は圧電基板、24a,24bは表面弾性波フィルタ特性を構成する電極パターン(以下では、表面弾性波フィルタ部という)、25は切換スイッチ、26は選択部である。
【0056】
同図において、表面弾性波フィルタ20は、同じ圧電基板23上に通過帯域が異なる2つの表面弾性波フィルタ部24a,24bと選択部26とが形成された構成をなしており、これとともに、切換スイッチ25が同じパッケージ内に設けられている。なお、切換スイッチ25も、同じ圧電基板23上に設けられていてもよい。
【0057】
ここで、表面弾性波フィルタ部24bの通過帯域PB1は、図4(a)に示すように、8セグメントを通過させるものであり(即ち、6MHz×8/14=約3.4MHzの帯域幅)、表面弾性波フィルタ部24aの通過帯域PBは、図4(b)に示すように、1チャンネル13セグメントの通過帯域PBとなる(即ち、6MHzの帯域幅)。
【0058】
また、表面弾性波フィルタ部24bの入力側には、切換スイッチ25が設けられており、この切換スイッチ25は、PLL回路7からの帯域制御信号SBにより、切換制御される。切換スイッチ25がオフして接点1側に閉じているときには、表面弾性波フィルタ部24bは稼動状態にあり、切換スイッチ25が接点2側に閉じているときには、この表面弾性波フィルタ部24bの入力側が接地されることにより、この表面弾性波フィルタ部24bは非稼動状態となる。これに対し、表面弾性波フィルタ部24aは、常時稼動状態にある。
【0059】
なお、ここでは、切換スイッチ25を設けたハード的な構成を示しているが、受信機の図示しないマイコンやOFDMの復調器22からの帯域制御信号SBにより、ソフト的に表面弾性波フィルタ20の上記帯域幅の切り替えを行なうようにしてもよい。
【0060】
周波数混合回路5(図1)からの希望チャンネルが予め決められた周波数帯域の中間周波放送信号SIFCが表面弾性波フィルタ20に供給される。この表面弾性波フィルタ20では、切換スイッチ25が接点1側に切り換えられている場合には、この中間周波放送信号SIFCが表面弾性波フィルタ部24a,24bに分配され、表面弾性波フィルタ部24bでは、その図4(a)に示す通過帯域PB1により、3セグメント音声放送の抽出が可能となり(表面弾性波フィルタ部24aは8セグメントを通過させるものであるが、3セグメント音声放送が行なわれているときには、そのうちの3セグメントのみが放送に使用されている)、また、表面弾性波フィルタ部24aでは、その図4(b)に示す通過帯域PBにより、13セグメントの抽出が可能となる。表面弾性波フィルタ部24a,24bからの出力信号は選択部26に供給される。この選択部26は、帯域制御信号SBに応じて動作し、切換スイッチ25が接点1側に切り換えられている場合には、表面弾性波フィルタ部24bで抽出された8セグメントを選択し、切換スイッチ25が接点2側に切り換えられている場合には、表面弾性波フィルタ部24aで抽出された13セグメントを選択する。
【0061】
そこで、VHF帯のチャンネル7またはチャンネル8の地上デジタル音声放送の3セグメント音声放送やUHF帯の地上デジタル放送の所望のチャンネルでの1セグメント放送を選局受信するときには、PLL回路7からの帯域制御信号SBにより、切換スイッチ25が接点1側に設定され、これにより、表面弾性波フィルタ部24bは稼動状態に設定される。従って、表面弾性波フィルタ20によって8セグメントが抽出され、可変増幅器21(図1)で増幅される。可変増幅器21から出力される8セグメントは復調部22に供給され、3セグメント音声放送信号が、例えば、OFDM復調される。
【0062】
また、UHF帯の地上デジタル放送の所望チャンネルを選局受信したときには、PLL回路7からの帯域制御信号SBにより、切換スイッチ25が接点2側に設定され、これにより、表面弾性波フィルタ部24bは非稼動状態に設定される。従って、表面弾性波フィルタ20によって13セグメントが抽出され、13セグメントの所望チャンネルの地上デジタル放送信号が得られる。この所望チャンネルの地上デジタル放送信号は可変増幅器21(図1)で増幅される。可変増幅器21から出力される所望チャンネルの地上デジタル放送信号は復調部22に供給され、例えば、OFDM復調される。
【0063】
なお、ここでは、PLL回路7から表面弾性波フィルタ20に帯域幅制御信号SBを供給して表面弾性波フィルタ20の通過帯域を切り替えるようにしたが、受信機に内蔵のマイコンや復調部22からかかる帯域幅制御信号SBを供給して、その通過帯域を切り替えるようにしてもよい。
【0064】
次に、表面弾性波フィルタ20でUHF帯の地上デジタル放送の所定のチャンネル,セグメント放送やVHF帯のチャンネル7または8での地上デジタル音声放送の3セグメント音声放送を抽出可能とするための局部発振回路6の発振周波数について説明する。
【0065】
いま、周波数混合回路5で得られる選局される希望チャンネルの中間周波放送信号SIFCの中心周波数(中間周波数)をf0(IF)とすると、この中間周波数f0(IF)は、また、図5(a)に示すように、表面弾性波フィルタ20の全体の通過帯域BSAWの中心周波数でもある。また、UHF帯の地上デジタル放送の各チャンネルの中心周波数をf(U)n(但し、nはn番目のチャンネル)とすると、局部発振回路6の局部発振信号LOの周波数を(f(U)n+f0(IF))とすることにより、この中間周波数f0(IF)を中心周波数とする中間周波放送信号SIFCが得られ、表面弾性波フィルタ20でこの希望チャンネルを周波数帯域に過不足なく抽出することができる。
【0066】
また、VHF帯のチャンネル7の空き領域SF7(図8)のセグメント音声放送に用いられる8セグメントの周波数帯域については、UHF帯の地上デジタル放送の場合と同様、このチャンネル7の中心周波数をf0(CH.7)(図8)とすると、局部発振回路6の局部発振信号LOの周波数を(f0(CH.7)+f0(IF))とすることにより、図5(b)に示すように、周波数の高低が反転し、このセグメント放送の周波数帯域SF7(IF)が表面弾性波フィルタ20の通過帯域BSAW内で、かつこの通過帯域BSAWの上端側に寄った中間周波放送信号SIFCが得られる。このときのこのセグメント放送の中心周波数f0(IF)’は、中間周波放送信号SIFCの中心周波数f0(IF)よりも1MHz上側にあることになる。
【0067】
これに対し、VHF帯のチャンネル8の空き領域SF8(図8)のセグメント音声放送に用いられる8セグメントの周波数帯域については、このチャンネル8の中心周波数をf0(CH.8)(図8)と、上記と同様に、局部発振回路6の局部発振信号LOの周波数を(f0(CH.8)+f0(IF))とすると、図5(c)に示すように、周波数の高低が反転し、このセグメント音声放送の周波数帯域(SF8(IF)’)が表面弾性波フィルタ20の通過帯域BSAW内であるが、この通過帯域BSAWの下端側に寄った中間周波放送信号SIFCが得られることになり、上記のチャンネル7の場合の周波数帯域SF7(IF)からずれることになる。即ち、このときのこのセグメント放送の中心周波数は、中間周波放送信号SIFCの中心周波数f0(IF)よりも1MHz下側にあることになる。
【0068】
そこで、この第1の実施形態では、この周波数帯域SF8(IF)’を2MHzだけ高周波側にシフトして、図5(d)に示すように、チャンネル7の場合の周波数帯域SF7(IF)と一致するように、局部発振回路6からの局部発振信号LOの周波数を2MHzだけ高めるようにする。即ち、この局部発振信号LOの周波数を、(f0(CH.8)+f0(IF)+2MHz)とするものである。
【0069】
以上のように、PLL回路7では、図示しないマイコンからのユーザの選局操作による選局指示情報に応じて、局部発振回路6の発振周波数(従って、局部発振信号LOの周波数)の設定をプログラマブルに変更する。
【0070】
このようにして、VHF帯のチャンネル7とチャンネル8とでの地上デジタル音声放送の3セグメント音声放送の中間周波放送信号SIFCの周波数帯域を同じ周波数帯域とすることにより、同じ表面弾性波フィルタ20を用いて3セグメント音声放送を抽出することが可能となる。
【0071】
なお、チャンネル8の空き領域SF8(図8(b))のセグメント音声放送に用いる8セグメントの周波数帯域の信号を、局部発振信号LOの周波数を(f0(CH.8)+F0(IF))として、図5(c)に示す周波数帯域の中間周波信号とするようにしてもよい。しかし、この場合には、表面弾性波フィルタ20として、8セグメント帯域の中心周波数がSF(IF)’となる構成の表面弾性波フィルタを使用することにより、チャンネル7の空き領域SF7(図8(a))のセグメント音声放送に用いる8セグメントの周波数帯域の信号については、その中間周波信号として、図5(b)に示す状態から2MHz下方にシフトさせることが必要であり、このため、局部発振信号LOの周波数を(f0(CH.7)+F0(IF))から周波数が低い方向に2MHzオフセットして、(f0(CH.7)+F0(IF)−2MHz)とする。
【0072】
以上のように、この第1の実施形態では、受信信号を中間周波信号に変換する局部発振信号の周波数を制御するPLL回路の設定をプログラマブルに変更することにより、局部発振信号の周波数を、UHF帯の地上デジタル放送の13セグメントのチャンネルやVHF帯のチャンネル7,8(さらには、その他のVHF帯のチャンネルでもよい)の地上デジタル音声放送のセグメント音声放送に応じて任意にオフセットすることが可能となって、これら夫々のチャンネルやセグメント音声放送の周波数帯域を等しく設定することが可能となり、13セグメントのチャンネルと3セグメントのセグメント音声放送との抽出に共通の表面弾性波フィルタを用いることができる。そして、これ故に、部品点数を削減できて、回路の合理化を図ることができるし、受信機の小型化、低コスト化を実現できる。
【0073】
なお、この第1の実施形態では、表面弾性波フィルタを用いたが、これに限らず、これと同等の性能のフィルタを用いることもできる。例えば、抵抗,インダクタンス素子,コンデンサを用いて同等の性能を有するフィルタを構成し、これを用いるようにしてもよい。
【0074】
また、可変BPF2,4及び可変増幅器3は、受信するチャンネル数に応じて、複数設けるようにしてもよい。
【0075】
図6は本発明による地上デジタル受信機の第2の実施形態を示すブロック構成図であって、21a,21bは可変増幅器、27は90゜移相器、28,29は低域通過フィルタ、30a,30bはAD変換器であり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0076】
この第2の実施形態においても、VHF帯のチャンネル7または8から地上デジタル音声放送の3セグメント音声放送を抽出し、また、UHF帯の地上デジタル放送の13セグメントの所望のチャンネルを抽出するものとする。そして、先の第1の実施形態では、受信信号をスーパーヘテロダイン方式のチューナ部で中間周波信号に周波数変換し、この中間周波信号から3セグメント音声放送や13セグメントの所望チャンネルを抽出したものであるが、この第3の実施形態は、ダイレクトコンバージョン方式のチューナ部を用いて受信信号をベースバンドの信号に周波数変換し、このベースバンドの信号から3セグメント音声放送や13セグメントの所望チャンネルを抽出したものである。
【0077】
同図において、先の図1に示す第1の実施形態と同様、可変BPF2,4と可変増幅器3との処理により、UHF帯及びVHF帯の受信放送信号SRFから希望チャンネルの受信放送信号SRFCが得られる。
【0078】
ここで、この受信放送信号SRF、従って、受信放送信号SRFCはマルチキャリヤ方式、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の信号であって、周波数混合回路5a,5bに供給される。周波数混合回路5aには、局部発振回路6からPLL回路7によって上記希望チャンネルに応じた周波数に設定された所定位相の局部発振信号LOが供給され、これにより、周波数混合回路5aに供給された希望チャンネルの受信放送信号SRFCのI信号がベースバンドの周波数帯の信号に周波数変換される。また、周波数混合回路5bには、局部発振回路6からの局部発振信号LOが90゜移相器27で位相が90゜シフトされた供給される。これにより、周波数混合回路5bに供給された希望チャンネルの受信放送信号SRFCのQ信号がベースバンドの周波数帯の信号に周波数変換される。
【0079】
ここで、また、局部発振回路6の発振周波数(従って、局部発振信号LOの周波数)は、PLL回路7の制御により、希望チャンネルの受信放送信号SRFCがUHF帯の地上デジタル放送の13セグメントの希望チャンネルの信号である場合には、この希望チャンネルの中心周波数に等しい周波数に設定され、また、希望チャンネルの受信放送信号SRFCが、VHF帯の図8(a)に示す8セグメントの空き帯域SF7となっているチャンネル7での地上デジタル音声放送の3セグメント放送の信号である場合も、このチャンネル7の中心周波数に等しい周波数に設定される。これに対し、希望チャンネルの受信放送信号SRFCが、VHF帯の図8(b)に示す8セグメントの空き帯域SF8となっているチャンネル8での地上デジタル音声放送の3セグメント放送の信号である場合には、図5で説明した同様のことから、このチャンネル8の中心周波数を2MHzだけ高周波側にオフセットした(即ち、この中心周波数に2MHzを加算した)周波数に設定される。
【0080】
図7(a)は周波数混合回路5aから出力されるI信号の周波数帯域を、図7(b)は周波数混合回路5bから出力されるQ信号の周波数帯域を夫々示す図である。
【0081】
希望チャンネルの受信放送信号SRFCがUHF帯の希望チャンネルの放送信号である場合には、周波数混合回路5aから、図7(a)に示すように、3MHzのベースバンドのI信号IUが得られ、周波数混合回路5bから、図7(b)に示すように、3MHzのベースバンドのQ信号QUが得られる。
【0082】
ところで、VHF帯のチャンネル7の空き帯域SF7(図8(a))に設定される地上ジタル音声放送のための8セグメントは、6MHz×8/13=約3.4MHzであり、そのうちの3MHzがQ信号に割り当てられ、残りの約0.4MHzがI信号に割り当てられる。チャンネル8の空き帯域SF8(図8(b))についても、同様である。
【0083】
そこで、希望チャンネルの受信放送信号SRFCがVHF帯のチャンネル7またはチャンネル8の地上デジタル音声放送信号であるときには、周波数混合回路5bからは、図7(b)に示すように、3MHzのベースバンドのQ信号QWが得られるが、周波数混合回路5aからは、図7(a)に示すように、約0.4MHzのベースバンドのI信号IWが得られる。
【0084】
なお、以上の可変BPF2,4、可変増幅器3、周波数混合回路5a,5b、局部発振回路6、PLL回路7及び90゜移相器27などが、ダイレクトコンバージョン方式のチューナ部を構成している。
【0085】
周波数混合回路5aから出力されるI信号は低域通過フィルタ29に供給され、周波数混合回路5bから出力されるQ信号は低域通過フィルタ28に供給される。ここで、周波数混合回路5bから出力されるQ信号は、希望チャンネルの受信放送信号SRFCがUHF帯の受信信号,VHF帯の受信信号にかかわらず、3MHzの周波数帯域を有するものであり、低域通過フィルタ28はベースバンド帯で6MHzの固定した通過帯域が設定されている。これに対し、低域通過フィルタ29は、PLL回路7からの帯域制御信号SBにより、通過帯域が3MHzと約0.4MHとに切り替え制御される。
【0086】
そこで、希望チャンネルの受信放送信号SRFCがUHF帯の地上デジタル放送の13セグメントの希望チャンネルの信号である場合には、低域通過フィルタ29の通過帯域が3MHzに設定され、これにより、低域通過フィルタ28,29から3MHzのI,Q信号が得られる。これらQ,I信号は夫々、可変増幅器21a,21bで増幅された後、直交復調部22に供給され、AD変換器30a,30bによって、例えば、OFDM復調される。
【0087】
また、希望チャンネルの受信放送信号SRFCがVHF帯のチャンネル7または8の3セグメントの地上デジタル音声放送信号である場合には、低域通過フィルタ28の通過帯域は3MHzと固定であるが、低域通過フィルタ29の通過帯域が約0.4MHzに切り替え設定され、これにより、低域通過フィルタ28から3MHzのQ信号が、低域通過フィルタ29から約0.4MHzのI信号が夫々得られる。これらQ,I信号は夫々、可変増幅器21a,21bで増幅された後、復調部22に供給され、AD変換器30a,30bによって復調される。
【0088】
このようにして、ダイレクトコンバージョン方式のチューナ部を用いた場合も、PLL回路7で局部発振回路6の発振周波数を制御して、UHF帯の地上デジタル放送の13セグメントの希望チャンネルやVHF帯のチャンネル7または8の3セグメントの地上デジタル音声放送信号をベースバンドの信号に周波数変換することにより、これらを共通の表面弾性波フィルタを用いて抽出することができ、先の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
なお、この第2の実施形態でも、可変BPF2,4及び可変増幅器3は、受信するチャンネル数に応じて、複数設けるようにしてもよい。
【0090】
また、この第2の実施形態では、I信号側の低域通過フィルタ29を通過帯域を切り換える構成としたが、VHF帯の地上デジタル音声放送のための8セグメントの3MHzをI信号側に割り当てられ、0.4MHzをQ信号側に割り当てられた場合には、Q信号側の低域通過フィルタ28の通過帯域を切り換えるようにする。
【0091】
また、この第2の実施形態では、チューナ部と低域通過フィルタ28,29とを同一パッケージの半導体チップに構成されるようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、UHF帯の地上デジタル放送の13セグメントの希望チャンネルやVHF帯のチャンネル7または8の地上デジタル音声放送での3セグメントのデジタル音声放送を対象として説明したが、3セグメントのデジタル音声放送の代わりに、1セグメント音声放送を対象としても、また、同じく1セグメントと3セグメントとの音声放送を対象としても、VHF帯の地上デジタル音声放送のためのチャンネル7または8については、上記の空き帯域の8セグメントを抽出するものであるから、同様である。
【0093】
なお、以上の実施形態では、VHF帯での地上デジタル音声放送のチャンネルをチャンネル7または8としたが、これ以外のチャンネルであっても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による地上デジタル受信機の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】VHF帯での地上デジタル音声放送やUHF帯での地上デジタル放送の1セグメント,3セグメント,13セグメント放送を受信可能とした地上デジタル受信機の一例を示すブロック構成図である。
【図3】図1における表面弾性波フィルタの一具体例を模式的に示す構成図である。
【図4】図3に示す表面弾性波フィルタの通過帯域の切り替え動作を説明する図である。
【図5】図1における局部発振回路の発振周波数について説明図である。
【図6】本発明による地上デジタル受信機の第2の実施形態を示すブロック構成図である。
【図7】図6における周波数混合回路から出力されるI,Q信号の周波数帯域を示す図である。
【図8】VHF帯の地上アナログ放送のチャンネルマップのチャンネル7,8の部分を示す図である。
【図9】従来の地上デジタル受信機の一例を示すブロック構成図である。
【図10】従来の地上デジタル受信機の他の例の要部を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0095】
1 アンテナ
2 可変BPF
3 可変利得増幅器
4 可変BPF
5 周波数混合回路
6 局部発振回路
7 PLL回路
20 表面弾性波フィルタ
21 可変増幅器
22 復調部
23 圧電基板
24a,24b 表面弾性波フィルタ部
25 切換スイッチ
26 選択部
21a,21b 可変増幅器
27 90゜移相器
28,29 低域通過フィルタ
30a,30b AD変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともUHF帯の地上デジタル放送信号とVHF帯の地上デジタル音声放送信号とを、地上放送信号として、受信する地上デジタル受信機であって、
受信した該地上放送信号から指定された希望放送チャンネルの信号を選択抽出する可変通過帯域のバンドパスフィルタと、選択抽出された該希望放送チャンネルの信号を、規定される中間周波数帯域の中間周波信号に周波数変換する周波数混合回路と、該周波数混合回路に該周波数変換のための局部発振信号を供給する局部発振回路と、該局部発振回路の発振周波数を、該指定された希望放送チャンネルに応じて、プログラマブルに制御するPLL回路とからなり、受信された該地上放送信号の該指定された希望チャンネルの信号を該規定された周波数の中心周波信号に変換して出力するスーパーヘテロダイン方式のチューナ部と、
該チューナ部から出力される該希望チャンネルの中間周波信号から希望信号のみを抽出するフィルタ部と、
該フィルタ部で抽出された該希望信号を直交復調する直交復調部と
を備え、
該希望信号のセグメント数、または、セグメント帯域幅に応じて、該局部発振回路の発振周波数のオフセット量を変化させることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記VHF帯の地上デジタル音声放送信号の前記希望チャンネルでの希望信号は、地上アナログ放送信号での空き帯域となっているチャンネルに設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号であって、
前記希望チャンネルが該チャンネル7であって、該チャンネル7での空き帯域に設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が前記希望信号であるときには、前記局部発振回路の発振周波数を該チャンネル7の中心周波数に前記中間周波数帯域の中心周波数を加算した周波数とし、
前記希望チャンネルが該チャンネル7以外のVHF帯のチャンネルに配置された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が前記希望信号であるときには、前記局部発振回路の発振周波数を該チャンネルの中心周波数と前記中間周波数帯域の中心周波数とを加算してなる周波数に、該周波数を高める方向に、2MHzのオフセットを設定した周波数とする
ことを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項3】
請求項1において、
前記VHF帯の地上デジタル音声放送信号の前記希望チャンネルでの希望信号は、地上アナログ放送信号での空き帯域となっているチャンネルに設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号であって、
前記希望チャンネルが該チャンネル8であって、該チャンネル8での空き帯域に設定された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が前記希望信号であるときには、前記局部発振回路の発振周波数を該チャンネル8の中心周波数に前記中間周波数帯域の中心周波数を加算した周波数とし、
前記希望チャンネルが該チャンネル8以外のVHF帯のチャンネルに配置された8セグメント帯域内の1セグメント音声放送もしくは3セグメント音声放送の信号が前記希望信号であるときには、前記局部発振回路の発振周波数を該チャンネルの中心周波数と前記中間周波数帯域の中心周波数とを加算してなる周波数に、該周波数を低める方向に、2MHzのオフセットを設定した周波数とする
ことを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項4】
請求項1,2または3において、
前記フィルタ部は、隣接チャンネルを抑圧する表面弾性波フィルタもしくはこれと同等の性能を有するバンドパスフィルタであって、
前記希望信号に応じて、前記PLL回路から制御信号により、フィルタ部の通過帯域を切り替えることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項5】
請求項1,2,3または4において、
前記フィルタ部は、その通過帯域を13セグメントの帯域と8セグメントの帯域とに切り替え可能であって、かつ通過帯域が13セグメントの帯域であるときと8セグメントの帯域であるときの中心周波数を異にすることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項6】
請求項4において、
前記フィルタ部の帯域幅の切り替えは、内蔵のマイコンまたは前記直交復調部からの制御信号によって制御されることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項7】
少なくともUHF帯の直交変調された地上デジタル放送信号と、VHF帯の所定のチャンネルに割り当てられた直交変調されたデジタル音声放送信号とを、地上放送信号として、受信する地上デジタル受信機であって、
受信した該地上放送信号から指定された希望チャンネルの信号を選択抽出する可変通過帯域のバンドパスフィルタと、選択抽出された該希望放送チャンネルの信号をベースバンドの信号に周波数変換する第1,第2の周波数混合回路と、該第1の周波数混合回路に該周波数変換のための局部発振信号を供給する局部発振回路と、該局部発振信号を90゜位相シフトして該第2の周波数混合回路に供給する90゜移相器と、該局部発振回路の発振周波数を、該指定された希望放送チャンネルに応じて、プログラマブルに制御するPLL回路とからなり、受信された該地上放送信号の該指定された希望チャンネルの信号を2つのベースバンド信号に周波数変換して出力するダイレクトコンバージョン方式のチューナ部と、
該チューナ部から出力される該2つのベースバンド信号毎に希望信号のみを抽出する第1,第2の低域通過フィルタと、
該第1,第2の低域通過フィルタで抽出された夫々の該希望信号を直交復調する直交復調部と
を備え、
該希望信号のセグメント数またはセグメント帯域幅に応じて、該局部発振回路の発振周波数のオフセット量を変化させることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1,第2の低域通過フィルタのいずれか一方の低域通過帯域フィルタの通過帯域は固定であって、
他方の低域通過フィルタの通過帯域が、前記希望信号が前記UHF帯の地上デジタル信号の希望チャンネルの信号であるときと、前記希望信号が前記VHF帯の地上デジタル音声放送信号であるときとで切り替えられることを特徴とする地上デジタル受信機。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記チューナ部と前記第1,第2の低域通過フィルタとが、同一パッケージの半導体チップに構成されていることを特徴とする地上デジタル受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−301098(P2008−301098A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143938(P2007−143938)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】