説明

地上無線装置

【課題】 信号設備から得られる列車情報に基づいて指向性アンテナを制御し、停車中の列車に搭載された車載無線装置との間で無線通信を行うことができる地上無線装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 アンテナ11a、11bの方向をあらかじめ所定の角度に調整し、スイッチ14により送受信部13に繋がるアンテナを切り替える。スイッチ14の切り替えは電波放射制御部12からの切替制御信号に基づいて行う。送受信部13は外部通信装置15と接続されており、送受信部13では送受信信号の変復調、増幅等の処理を行う。地上信号設備16は、列車6が線路1上に存在することを示す在線検知信号と列車6から地上子17が無線受信した車両識別信号とを受け取り、地上無線装置3の電波放射制御部12に中継する。電波放射制御部12は、在線検知信号及び車両識別信号に基づいて制御信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車に搭載された車載無線装置との間で無線通信を行う地上無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の列車無線においてはLCXや無線LAN等の各種技術が広く用いられており、データ伝送や電話などのサービスに利用されている。さらに最近では、車輌の中で旅客に対してCM等の動画コンテンツを配信するサービスが開始され、列車無線においても広帯域の無線回線が要求されるようになっている。しかし、従来の列車無線システムでは無線の回線容量が小さく、動画コンテンツなどの大容量無線伝送ができないため、ミリ波のように周波数が高く、伝送速度が高い電波を用いて短期間で大容量の情報を効率よく伝送することが行われている。但し、ミリ波は周波数が数十GHzと高く電波の指向性が強いため、地上無線機のアンテナと列車搭載のアンテナを高精度に正対させて使用する必要がある。アンテナの指向性を制御する手段として特許文献1ではGPSを用いて列車位置を検出しているが、ミリ波帯無線通信における高精度なアンテナ制御に不向きである。また、地下鉄ではGPSの電波が届かないため、鉄道の信号設備から得られる情報に基づく制御が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駅構内に列車が停車している際に車載無線装置と地上無線装置との間で動画コンテンツなどの大容量データを短時間で伝送するためには、周波数が高く広い帯域を確保することができるミリ波帯などの電波を用いる必要があるが、周波数の高い電波は指向性が強く車載無線装置のアンテナと地上無線装置のアンテナを正対させる必要が生じる。そのため、駅停車中の列車に搭載された車載無線装置に対して通信を行う地上無線装置を、列車の停車位置にあわせてその停車位置の数と同数設置することも考えられるが、地上無線装置の数が多くなり、設備費用および工事費が大きくなってしまうという問題点があった。また、特に地下鉄などの駅構内では元々設置場所が少ない上、他の信号設備等が既設されていることも多く、同一駅構内に複数の地上無線装置を設置するための場所を確保することがさらに困難になるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、信号設備から得られる列車情報に基づいて指向性アンテナを制御し、停車中の列車に搭載された車載無線装置との間で無線通信を行うことができる地上無線装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る地上無線装置は、地上に設置され、ビーム指向方向が可変であるアンテナ部と、このアンテナ部により送受信した信号を処理する送受信部と、列車の入線により生じる在線検知信号と車両識別信号とに基づいて、ビーム指向方向が上記列車に搭載された車載無線装置の方向に向くように上記アンテナ部へ制御信号を送出する電波放射制御部とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る地上無線装置は、請求項1の発明に係る地上無線装置において、上記アンテナ部は、第1の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第1のアンテナ、第2の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第2のアンテナ、上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとを切り替えて上記送受信部に接続する切替手段を有することをものである。
【0008】
請求項3の発明に係る地上無線装置は、請求項2の発明に係る地上無線装置において、上記電波放射制御部は、上記第1の線路及び上記第2の線路に列車が停車している場合に、上記アンテナ部へ時分割的にビーム指向方向を変化させる制御信号を送出するものである。
【0009】
請求項4の発明に係る地上無線装置は、請求項1の発明に係る地上無線装置において、上記アンテナ部は、第1の停車位置に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第1のアンテナ、第2の停車位置に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第2のアンテナ、上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとを切り替えて上記送受信部に接続する切替手段を有するものである。
【0010】
請求項5の発明に係る地上無線装置は、請求項1の発明に係る地上無線装置において、
上記アンテナ部は、機械的に又は電気的にビーム指向方向を可変するビーム可変手段を有するものである。
【0011】
請求項6の発明に係る地上無線装置は、請求項5の発明に係る地上無線装置において、
上記電波放射制御部は、第1の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向と、第2の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向とが記述された情報テーブルを有し、上記第1の線路及び上記第2の線路に列車が停車している場合に、上記ビーム可変手段に対して時分割的にビーム指向方向を変化させる制御信号を送出するものである。
【0012】
請求項7の発明に係る地上無線装置は、請求項5の発明に係る地上無線装置において、上記電波放射制御部は、停車する列車の複数の停止位置と各停車位置における列車に搭載された車載無線装置の方向とが記述された情報テーブルを有し、上記ビーム可変手段に対してビーム指向方向を変化させる制御信号を送出するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、信号設備から得られる列車情報に基づいて指向性アンテナを制御することにより、地上無線装置と停車中の列車に搭載された車載無線装置との間で無線通信を行うことができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る地上無線装置を含む列車無線システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る地上無線装置及び周辺機器を構成するブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る地上無線装置内の電波放射制御部の実装例を表わす構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る地上無線装置における信号タイミングを表わすタイミングチャート図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る地上無線装置の構成を表わす機能ブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る地上無線装置のアンテナ指向方向の情報テーブルである。
【図7】この発明の実施の形態3に係る地上無線装置を含む列車無線システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
【0016】
この発明の実施の形態1に係る地上無線装置について、図1から図4を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る地上無線装置を含む列車無線システムの全体構成を示す構成図である。実施の形態1では、駅に停車中の列車に搭載した車載無線装置9と地上に設置した地上無線装置3との間の通信において、1台の地上無線装置9に付属のアンテナの指向性を制御することによって、異なる番線に停車する列車に搭載された車載無線装置9に対して時分割で通信を行う。地上無線装置3のアンテナのビーム指向方向4は、停車中の各列車に搭載された車載無線装置のアンテナに向くように設置調整する。図1に示すシステム構成は、線路1(1番線)に停車中の列車6と線路2(2番線)に停車中の列車7のそれぞれに搭載される車載無線装置9と車載無線装置10、地上無線装置3(アンテナを含む)から構成される。地上無線装置3のアンテナは送信電波4の指向性を車載無線装置9と車載無線装置10とに時分割で切り替え、各車載無線装置との通信を行う。地上無線装置3は、列車6と列車7に向けて、同一の周波数により時分割で電波を放射しており、複数の車載無線装置との間で同時通信を行うものではない。これは、車載無線装置の受信周波数を同一にすることにより、モデムなどの機能を簡素化し、車載無線装置の回路規模が増大しないようにするためである。
【0017】
図2はこの発明の実施の形態1に係る地上無線装置及び周辺機器を構成するブロック図である。図2に示す地上無線装置3は、アンテナ11a及び11bの電波放射方向を制御する電波放射制御部12、アンテナ11a及び11bと情報を入出力する送受信部13を有する。地上無線装置3のアンテナ部は複数のアンテナ(図2においてはアンテナ11a及び11bの2つを記載するが3以上のアンテナでもよい)とスイッチ14から構成され、各アンテナの方向をあらかじめ所定の角度に調整し、スイッチ14により送受信部13に繋がるアンテナを切り替えることにより電波を放射する方向を切り替える。スイッチ14での切り替えは電波放射制御部12からの切替制御信号に基づいて行う。地上無線装置3を構成する各機器は一つの筐体内に収納してもよいし、別の装置として独立した場所に設置してもよい。送受信部13は外部通信装置15と接続されており、送受信部13では送受信信号の変復調、増幅等の処理を行う。送受信部13と外部通信装置15との間で入出力される送受信信号は、ネットワーク接続環境下でのデジタル信号でもよいし、NTSCのようなアナログ信号でもよい。地上信号設備16は、列車6(又は7)が線路1(又は2)上に存在することを示す在線検知信号と列車6(又は7)から地上子17が無線受信した車両識別信号とを受け取り、地上無線装置3の電波放射制御部12に中継する装置である。
【0018】
つぎに地上無線装置及び周辺機器の動作について説明する。まず運用開始前に、アンテナ11aのビーム方向を線路1に入線する列車6に搭載された車載無線装置9のアンテナに向くように調整し、アンテナ11bのビーム方向を線路2に入線する列車7に搭載された車載無線装置10のアンテナに向くように調整する。ここで、列車6及び列車7の停車位置8が定められているものとし、列車6における車載無線装置9の位置、及び列車7における車載無線装置10の位置が既知である条件のもと、地上無線装置3のアンテナ11a及び11bからみる車載無線装置9及び車載無線装置10の各アンテナの方向が求められているものとして、車載無線装置9及び車載無線装置10の各アンテナのビーム方向が調整される。この運用前のアンテナ調整の後、最初の状態として、線路1と線路2のどちらにも列車が停車していない状態を考える。この状態では、どちらの線路からも在線検知信号は発生しない。電波放射制御部12は、地上信号設備16を介して在線検知信号が入力されていない状態では、アンテナ11a及び11bと、送受信部13との間の通信を切断する制御信号(切断信号)をスイッチ14に送出する。
【0019】
次の状態として、線路1に列車6が入線し停車位置8に停車した状態を考える。この状態では、線路1で在線検知信号が発生し、地上子17により列車6の車両識別信号が生成され、これらの信号が地上信号設備16に入力される。地上信号設備16から在線検知信号及び車両識別信号が電波放射制御部12に入力されることによって、電波放射制御部12は停車位置8に列車6が停車したことを通知される。電波放射制御部12はアンテナ11aと送受信部13とが接続されるようにスイッチ14に制御信号(選択信号)を送出し、スイッチ14はこの制御信号に基づき、アンテナ11aと送受信部13とが接続されるよう接続切替をする。
【0020】
さらに次の状態として、線路1に列車6が停止している状態のまま、線路2に列車7が入線し停車位置8に停車した状態を考える。この状態では、線路2で在線検知信号が発生し、地上子17により列車7の車両識別信号が生成され、これらの信号が地上信号設備16に入力される。地上信号設備16から在線検知信号及び車両識別信号が電波放射制御部12に入力されることによって、電波放射制御部12は停車位置8に列車7が停車したことを通知される。このとき、電波放射制御部12はアンテナ11aとアンテナ11bとが時分割で送受信部13に接続されるようにスイッチ14に制御信号(選択信号)を順次送出し、スイッチ14は電波放射制御部12からの制御信号に基づき、送受信部13に接続するアンテナ11aとアンテナ11bとを切り替える。
【0021】
電波放射制御部12の構成及び機能の詳細について説明する。電波放射制御部12への入力は、地上信号設備16からの在線検知信号と車両識別信号、外部通信装置15からの通信停止信号であり、電波放射制御部12からの出力は、スイッチ14への制御信号、送受信部13へのフレームタイミング信号であり、電波放射制御部12は論理回路を用いて構成することが可能であり、例えばPLD(Programable Logic Device)を用いた実装例を図3に示す。図3において、電波放射制御部12は一つのPLD搭載基板18を有し、PLD搭載基板18には在線検知信号(線路1)、車両識別信号(線路1)、在線検知信号(線路2)、車両識別信号(線路2)、通信停止信号(線路1)、通信停止信号(線路2)が入力される。PLD搭載基板18は各信号から出力を生成する。
【0022】
図4はこの発明の実施の形態1に係る地上無線装置における信号タイミングを表わすタイミングチャート図である。図4(a)は1番線のみに列車が停車している状態でのタイミングチャートであり、在線検知信号(線路1)が立ち上がったのち、車両識別信号(線路1)が生起し、アンテナ11a選択を示す制御信号が電波放射制御部12から出力される。フレームタイミング信号は0値のままであるが、これはアンテナ11aが選択されていることを示している。列車6に搭載された車載無線装置からの送信をきっかけに通信が開始され、地上無線装置3からも情報データなどの送信が行われる。
【0023】
図4(b)は1番線に列車6が停車しているまま、2番線に列車7が入線し停車する状態でのタイミングチャートである。在線検知信号(線路2)が立ち上がったのち、車両識別信号(線路2)が生起したのち、アンテナ11aとアンテナ11bと選択する制御信号が交互に電波放射制御部12から出力される。このときフレームタイミング信号は0値と1値とを制御信号に合わせて出力する。列車7に搭載された車載無線装置からの送信をきっかけにして、地上無線装置3の送受信部13は、列車7へも送信を開始するが、この際、タイミング信号が0値のときは列車6への送信信号を、タイミング信号が1値のときは列車7への送信信号をアンテナ側へ出力する。PLD搭載基板18が出力するアンテナ切替えの制御信号の時間間隔Tは、あらかじめプリセットされた値が用いられるが、送受信部13又は外部通信装置15から設定変更できるようにしてもよい。
【0024】
また運用上は、線路1と線路2の両方に列車が停車していても、片方の列車で通信が不要な場合がある。例えば、終端駅ではない駅で折り返し運転をする列車が長期間同じ位置で停車し、通信を完了させてしまった場合が考えられる。このような場合には、前記の時間間隔Tでアンテナを切り替えることは効率が悪い。このため、図3に示すように電波放射制御部12に送信停止信号(線路1)と送信停止信号(線路2)を入力する信号線を設け、送信停止信号が発生している線路側へのアンテナ切替制御信号を出力しないようにする。実際には、列車6に搭載された車載無線装置9、または列車7に搭載された車載無線装置10から地上無線装置3に対して通信が完了したことを示す信号を送信し、送受信部13にてこの信号を検出し、送信停止信号(線路1)または送信停止信号(線路2)を電波放射制御部12へ出力するようにすればよい。
【0025】
以上のように、この実施の形態1に係る地上無線装置3によれば、地上無線装置3内の複数のアンテナを切り替えることによりアンテナ指向性を制御し、駅に入線してくる複数の列車に搭載された車載無線装置との時分割的な通信が可能となる。このようにアンテナ指向性を制御することは、とくにビーム指向性の高いミリ波帯による無線通信に好適であり、高速に大容量の通信を行うことができる。また、地上無線装置3からの送信信号は、時分割で複数の車載無線装置に送信するので、通信方式(周波数、帯域幅、変調型式など)を共通化することができ、これに伴って各列車に搭載される車載無線装置の受信処理系も共通化され1系統で構成でき回路規模も大きくならずに済む。
【0026】
実施の形態2
【0027】
この発明の実施の形態2に係る地上無線装置について、図5及び図6を用いて説明する。図5はこの発明の実施の形態2に係る地上無線装置の構成を表わす機能ブロック図である。図5において、19は機械的に或いは電気的に指向方向を変化させることができるアンテナであり、例えば、アンテナ角度を機械的に変化させる機械駆動装置を具備するもの、或いは、複数のアンテナ素子によりアンテナ開口を構成して各素子の位相を変化させるフェーズドアレイ型のアンテナでは位相制御装置を具備するもの、などとする。図5において、図2と同一の符号を付した部品又は回路は、この実施の形態2において特に説明するほか、図2における部品又は回路と同一又は相当するものとする。電波放射制御部12は、図3に示すものと同様に構成することができるが、PLD搭載基板18に図6に示すような情報を記録する記録領域を設けたものとする。図6はアンテナ指向方向の情報テーブルであり、線路の番号と、それに対応するアンテナ指向方向を定める角度からなる情報を記述する。電波放射制御部12は、地上信号設備16からの在線検知信号及び車両識別信号に基づいて、通信対象の列車が停車している線路の番号に対応するアンテナ指向方向角度を抽出しアンテナ19へ角度指令する。この角度指令は、図4に示す制御信号を代替するものであり、この指令に基づいてアンテナ19はアンテナ角度を変更する。また、複数の列車を対象に時分割で通信する際には、電波放射制御部12は、図4(b)の制御信号として、順次、通信対象とする列車の在線する線路番号に対応するアンテナ指向方向による角度指令を生成し、アンテナ19へ送出すればよい。
【0028】
以上のように、この実施の形態2に係る地上無線装置3は、アンテナを時分割で車載無線装置に指向させて通信を行うことができる。
【0029】
実施の形態3
【0030】
この発明の実施の形態3に係る地上無線装置について、図7を用いて説明する。図7はこの発明の実施の形態3に係る地上無線装置を含む列車無線システムの構成を示す構成図である。図7に示すように、線路1上には停車位置20と停車位置21などのように複数の停車位置があり、例えば、停車位置20には10両編成の列車が、停車位置21には8両編成の列車が停車するような場合を考慮する。図6に示す地上無線装置3は、ホーム5に設置する地上無線装置3のアンテナ指向性を変化させることにより、停車位置20又は停車位置21のいずれかに停車する列車6に搭載された車載無線装置9との間で通信を行う。地上無線装置3の構成は図2又は図5の構成を有するものであればよい。但し、停車位置20と停車位置21に同時に列車が停車することは無く、地上無線装置3は、停車位置20又は停車位置21のいずれかに停車する列車6に搭載された車載無線装置と、図示しない線路2に停車する列車7に搭載された車載無線装置との間で時分割的な通信を行う。
【0031】
図2に示す地上無線装置3の構成に準じれば、本実施の形態に係る地上無線装置3は、線路1の停車位置20と停車位置21に対応してビーム方向が調整される2つのアンテナと、図示しない線路2に停車する列車7に搭載された車載無線装置の方向にビーム方向が調整されるアンテナとを有する。また、図5に示す地上無線装置3の構成に準じれば、本実施の形態にかかる地上無線装置3は、線路1の停車位置20と停車位置21に対応してアンテナが向けられる方向と、線路2に停車する列車に搭載された車載無線装置のアンテナの方向とが記述された図6に示す情報テーブルに準じた情報テーブルを備え、その情報テーブルから線路1に関して選択されたいずれかのアンテナ方向と、線路2に関するアンテナ方向とを抽出し、時分割でアンテナ指向方向を変化させる。尚、停車位置20に停車する列車又は停車位置21に停車する列車が線路1に入線してきたいずれの場合も線路1からは同じ在線検知信号が生じる地上信号設備にあっても、列車停車時に取得される地上子17からの車両識別信号により、入線した列車の車両編成が判明するので(車両識別信号と車両編成の情報テーブルを電波放射制御部12内に有していればよい)、判明した車両編成に基づいて実際の停車位置を特定することができる。
【0032】
以上のように、この実施の形態3によれば、車両編成が異なる列車が線路に入線し、同じ線路内で停車位置が複数ある場合であっても、地上無線装置3のアンテナを複数個備えておくか、電波放射制御部12内にそれらの停車位置に対応する情報テーブルを設けておくことにより、地上無線装置3のアンテナの指向性を、時分割的に複数の車載無線装置の方向に変化させて、地上無線装置と車載無線装置との間の通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
3 地上無線装置
4 ビーム指向方向
6、7 列車
9、10 車載無線装置
11a、11b アンテナ
12 電波放射制御部
13 送受信部
14 スイッチ
19 アンテナ
20、21 停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、ビーム指向方向が可変であるアンテナ部と、このアンテナ部により送受信した信号を処理する送受信部と、列車の入線により生じる在線検知信号と車両識別信号とに基づいて、ビーム指向方向が上記列車に搭載された車載無線装置の方向に向くように上記アンテナ部へ制御信号を送出する電波放射制御部とを備えた地上無線装置。
【請求項2】
上記アンテナ部は、第1の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第1のアンテナ、第2の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第2のアンテナ、上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとを切り替えて上記送受信部に接続する切替手段を有することを特徴とする請求項1に記載の地上無線装置。
【請求項3】
上記電波放射制御部は、上記第1の線路及び上記第2の線路に列車が停車している場合に、上記アンテナ部へ時分割的にビーム指向方向を変化させる制御信号を送出することを特徴とする請求項2に記載の地上無線装置。
【請求項4】
上記アンテナ部は、第1の停車位置に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第1のアンテナ、第2の停車位置に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向に向けられた第2のアンテナ、上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとを切り替えて上記送受信部に接続する切替手段を有することを特徴とする請求項1に記載の地上無線装置。
【請求項5】
上記アンテナ部は、機械的に又は電気的にビーム指向方向を可変するビーム可変手段を有することを特徴とする請求項1に記載の地上無線装置。
【請求項6】
上記電波放射制御部は、第1の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向と、第2の線路に停車する列車に搭載された車載無線装置の方向とが記述された情報テーブルを有し、上記第1の線路及び上記第2の線路に列車が停車している場合に、上記ビーム可変手段に対して時分割的にビーム指向方向を変化させる制御信号を送出することを特徴とする請求項5に記載の地上無線装置。
【請求項7】
上記電波放射制御部は、停車する列車の複数の停止位置と各停車位置における列車に搭載された車載無線装置の方向とが記述された情報テーブルを有し、上記ビーム可変手段に対してビーム指向方向を変化させる制御信号を送出することを特徴とする請求項5に記載の地上無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167822(P2010−167822A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9876(P2009−9876)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】