説明

地下構造物の分岐部構造体

【課題】 共同溝などの溝路が斜角で交差するような分岐部であっても、コーナー角を調節した複数のプレキャスト製のコーナー壁部材を用意することで自在に対応できるとゝもに、溝路として通常のボックスカルバートを接続することで、容易に構築できる地下構造物の分岐部構造体を提供することにある。
【解決手段】 底版2の隣り合う二辺からそれぞれ直立する辺部側壁3からなるコーナー壁部材1を4隅に間隔をおいて設置するとゝもに、該コーナー壁部材の対向する両辺部側壁の間にボックスカルバート5を接続して形成した分岐部Haの底部に打設したコンクリートにより前記各コーナー壁部材をその底版を介して一体に形成し、前記分岐部の上方開口部を頂版7で閉塞したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地下貯水池,共同溝或いは人道などのボックスカルバートを用いた地下構
造物の分岐部構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボックスカルバートを用いた共同溝等の地下構造物の分岐部は、例えば特開平8
ー120746号公報に開示されているように、特殊形状のボックスカルバートを用いて
構築するか、或いは現場打ちコンクリートで構築している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−120746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現場打ちコンクリートにより構築する方法は、多くの手間と経費を要するとと
もに、作業が天候に左右されやすいといった諸問題点がある。また、特殊形状のボックス
カルバートを用いて構築する方法は、通常の直方体のボックスカルバートとは相違する特
殊形状の別のボックスカルバートを用いるので、分岐部の構築に多大の手間と経費を要す
るとゝもに、設置現場の状況に合わせて溝路の分岐角度を変える必要があり、製造が煩雑
であるといった問題点もある。
【0005】
本発明は、共同溝などの溝路が斜角で交差するような分岐部であっても、コーナー角を
調節した複数のプレキャスト製のコーナー壁部材を用意することで自在に対応できるとゝ
もに、溝路として通常のボックスカルバートを接続することで、容易に構築できる地下構
造物の分岐部構造体を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本願の請求項1に記載の発明は、四角形の底版と、該底
版の隣り合う二辺からそれぞれ直立する辺部側壁とからなるプレキャストコンクリート製
のコーナー壁部材を、4隅に間隔をおいて設置するとゝもに、隣り合うコーナー壁部材の
対向する両辺部側壁の間にボックスカルバートを接続して分岐部を形成し、該分岐部の底
部に打設した現場打ちコンクリートにより前記各コーナー壁部材をその底版を介して一体
に形成するとゝもに、前記分岐部の上方開口部を頂版で閉塞したことを特徴とする。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本願の請求項2に記載の発明は、前記分岐部の内
部にL字型ないし逆T字型の仕切り壁部材を複数個直列に設置して、その仕切り壁で前記
分岐部の内部を左右又は前後に仕切るとゝもに、前記分岐部の底部に打設した現場打ちコ
ンクリートにより前記コーナー壁部材および仕切り壁部材をそれぞれの底版を介して一体
に形成したことを特徴とする。
【0008】
そして、上記の目的を達成するために、本願の請求項3に記載の発明は、前記コーナー
壁部材の底版の端面から、現場打ちコンクリートと一体化するための補強筋を突出する構
成としたことを特徴とする。更に、本願の請求項4に記載の発明は、前記頂版が矩形状に
分割され、分割された頂版をプレストレス連結して一体化している構成としたことを特徴
とし、本願の請求項5に記載の発明は、前記コーナー壁部材と前記ボックスカルバート、
また前記頂版と前記コーナー壁部材またはボックスカルバートをボルト・ナットにより連
結する構成とし、更には、本願の請求項3に記載の発明は、前記仕切り壁部材の仕切り壁
に窓穴を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成とすることで、分岐部を現場打ちコンクリートによって形成する従来の方法
に比べ工期が格段に早まる。また、前記コーナー用壁部材は擁壁のコーナー部として一般
に用いられているL型の擁壁部材をそのまま用いることができるため、特殊な型枠を用い
る必要がない。そしてまた、分岐部の四隅に設置されるプレキャスト製コーナー用壁部材
のコーナー角度が、予め直角以外の角度に調整されたものを二組、対角線上に向き合う位
置に一組づづ用いることで、分岐する溝路の交差角度を自由に設計できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2において、
Hは平面視がほゞ正方形状の分岐部構造体で、この分岐部構造体Hは、4隅に間隔をおい
てそれぞれ設置したプレキャスト製のコーナー壁部材1と、互いに隣り合うコーナー壁部
材1,1の間に設置したボックスカルバート5(5A,5B)と、分岐部Haの底部に打
設する現場打ちコンクリートで形成した底壁部6と、前記分岐部Haの上方開口部を閉じ
る頂版7とから主に構成されている。
【0011】
前記コーナー壁部材1は、図6に示すように、ほゞ四角形の底版2と、この底版2の隣
り合う二辺からそれぞれ垂直に立ち上がる辺部側壁3A,3Bで主に構成されており、図
示の実施形態では、前記底版2の内側に位置する他の隣り合う二辺の端面に、分岐部構造
体Hの底壁部6を形成するために打設する現場打ちコンクリートと一体化するための補強
鉄筋4がそれぞれ突出している。
【0012】
5はボックスカルバートで、図示の実施形態では、通常使用されている大小二種類のボ
ックスカルバート5A,5Bが前記コーナー壁部材1,1の間に設置されている。詳しく
は、4隅に間隔をおいてそれぞれ設置したプレキャスト製のコーナー壁部材1にあって、
隣り合うコーナー壁部材1,1の対向する辺部側壁3Aの端面と辺部側壁3Bの端面との
間に、大きなボックスカルバート5Aにあっては1個、小さなボックスカルバート5Bに
あっては並べて2個をそれぞれ設置してある。
【0013】
上記のように、4隅に間隔をおいてそれぞれ設置したプレキャスト製の4個のコーナー
壁部材1と、互いに隣り合う前記コーナー壁部材1,1の各辺部側壁3Aと3Bとの間に
それぞれ設置したボックスカルバート5とにより、平面視が矩形状の分岐部Haを形成す
る。つぎに、この分岐部Haの底部に現場打ちコンクリートを打設する。すなわち、前記
各コーナー壁部材1,1の各底版2,2の間にコンクリートを打設し、この現場打ちコン
クリートと前記各底版2とを、該底版2の2つの端面から突出する補強鉄筋4を介して一
体化した底壁部6を形成する。
【0014】
つぎに、前記コーナー壁部材1の辺部側壁3A,3B、該辺部側壁3A,3Bの間に設
置したボックスカルバート5、および現場打ちコンクリートで形成した底壁部6とからな
る有底箱型の分岐部Haの上方開口部に、一枚の頂版或いは複数枚を一体に連結して形成
した頂版7を設置する。すなわち、前記頂版7は一体のプレキャスト版でもよいが、分岐
部Haの面積が大きい場合には、矩形状のプレキャスト部材をPC鋼材15で連結し、一
体化したものでもよい。
【0015】
最後に、前記コーナー壁部材1と前記ボックスカルバート5はアングル型の連結金具R
を介して、また前記頂版7と前記コーナー壁部材1又はボックスカルバート5は、頂版7
に形成したボルト挿入孔7Aと前記コーナー壁部材1またはボックスカルバート5に埋設
したアンカーナット13にそれぞれボルト14を挿入し、これを締め付けて連結すること
で分岐部構造体Hを構築する。なお、地下水が高い場合や雨水が分岐部Ha内に進入する
場合は、前記それぞれの連結部分に止水目地や外側からのモルタル処理等によって連結部
が止水処理がなされる。
【0016】
図3及び図4に示すものは、前記図1及び図2に示す分岐部構造体Hの構成に加え、前
記分岐部Haの内部に、図8に示すようなL字型の仕切り壁部材8を複数個直列に設置し
たものであり、この仕切り壁部材8の仕切り壁部9で前記分岐部Haの内部を左右又は前
後に仕切ったものである。すなわち、前記仕切り壁部材8は、底版10とその一長辺側か
ら垂直に立ち上がる仕切り壁部9を備えたL字型のもので、この仕切り壁部9は用いるプ
レキャスト製の仕切り壁部材8によって四方にいかようにも形成することができる。
【0017】
9Aは前記仕切り壁部9に形成した窓穴で、仕切り壁部9にこの窓穴9Aを設けること
で、例えば共同溝として使用する場合の電線ケーブルの分岐が可能となり、また人が行き
来できる通路となる。更に、前記仕切り壁部材8の底版10には埋め込み鉄筋が設置され
ており、前記底版10の他方の長辺側にあってその端面からは、前記埋め込み鉄筋の延長
部である補強鉄筋11の先端部が突出している。なお、この補強鉄筋11は、分岐部構造
体Hの底壁部6を形成するために打設する現場打ちコンクリートと一体化するためのもの
である。
【0018】
そこで、分岐部Haの内部に仕切り壁部材8を設置する場合には、図示の実施形態のも
のでは、2つ並べて設置した小さなボックスカルバート5B,5Bの面接する夫々の側壁
部分に前記仕切り壁部材8の仕切り壁部9が位置するように配設し、これを複数個直列に
設置した後、通常の埋め込み金具を備えた連結部12の部分をボルト・ナット締めにより
連結する。つぎに、各コーナー壁部材1,1の各底版2および前記仕切り壁部材8の底版
10の間にそれぞれコンクリートを打設し、この現場打ちコンクリートと前記底版2,1
0を該底版2,10の端面から突出する補強鉄筋4,11を介して一体化した底壁部6を
形成する。その後の工程は上記と同じである。
【0019】
図5に示すものは、地下構造物の分岐部Haが一定の角度を有する場合の分岐部構造体
Hの平面図である。この場合は、図7に示すような、プレキャスト製のコーナー壁部材1
のコーナー角度θが予め直角以外の角度に調整したものを用いる。すなわち、図示の実施
形態にあっては、左上と右下の対角線状に向き合う部分にコーナー角度θが大きな一対の
コーナー壁部材1A,1Aを、右上と左下の対角線状に向き合う部分に前記のものよりコ
ーナー角度θが小さな一対のコーナー壁部材1B,1Bをそれぞれ設置することで、分岐
する溝路の交差角度を自由に設計できる分岐部Haを構築することができる。その後の工
程は上記と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る地下構造物の分岐部構造体の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面矢示図である。
【図3】本発明に係る分岐部構造体の他の実施形態の分解斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面矢示図である。
【図5】本発明に係る分岐部構造体の更に他の実施形態の平面図である。
【図6】コーナー壁部材の斜視図である。
【図7】同コーナー壁部材の他の実施形態の斜視図である。
【図8】仕切り壁部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コーナー壁部材
2,10 底版
3(3A,3B) 辺部側壁
4,11 補強鉄筋
5(5A,5B) ボックスカルバート
6 底壁部
7 頂版
8 仕切り壁部材
9 仕切り壁部
9A 窓穴
12 連結部
13 アンカーナット
14 ボルト
15 PC鋼棒
H 分岐部構造体
Ha 分岐部
R 連結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほゞ四角形の底版と、該底版の隣り合う二辺からそれぞれ直立する辺部側壁とからなるプレキャストコンクリート製のコーナー壁部材を、4隅に間隔をおいて設置するとゝもに、隣り合うコーナー壁部材の対向する両辺部側壁の間にボックスカルバートを接続して分岐部を形成し、該分岐部の底部に打設した現場打ちコンクリートにより前記各コーナー壁部材をその底版を介して一体に形成するとゝもに、前記分岐部の上方開口部を頂版で閉塞したことを特徴とする地下構造物の分岐部構造体。
【請求項2】
前記分岐部の内部にL字型ないし逆T字型の仕切り壁部材を複数個直列に設置して、その仕切り壁で前記分岐部の内部を左右又は前後に仕切るとゝもに、前記分岐部の底部に打設した現場打ちコンクリートにより前記コーナー壁部材および仕切り壁部材をそれぞれの底版を介して一体に形成したことを特徴とする請求項1記載の地下構造物の分岐部構造体。
【請求項3】
前記コーナー壁部材の底版の端面から、現場打ちコンクリートと一体化するための補強筋を突出する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の地下構造物の分岐部構造体。
【請求項4】
前記頂版が矩形状に分割され、分割された頂版をプレストレス連結して一体化している構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の地下構造物の分岐部構造体。
【請求項5】
前記コーナー壁部材と前記ボックスカルバート、また前記頂版と前記コーナー壁部材またはボックスカルバートをボルト連結により連結する構成としたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の地下構造物の分岐部構造体。
【請求項6】
前記仕切り壁部材の仕切り壁に窓穴を形成したことを特徴とする請求項2,3,4又は5記載の地下構造物の分岐部構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−161998(P2009−161998A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1289(P2008−1289)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000201504)前田製管株式会社 (35)
【Fターム(参考)】