説明

地図表示装置、方法及びプログラム

【課題】 古地図画像を効果的に表示する。
【解決手段】 現在地図の画像データが記憶された現在地図記憶部20と、古地図の画像データが記憶された古地図記憶部22と、古地図の表示範囲を示す境界情報が記憶された境界情報記憶部24を備える。表示画像生成部30は、古地図画像データを読み出して表示用画像を生成し、表示部14に江戸時代の地図を表示させる。領域判定部32は、車両位置検出部12において検出された現在位置情報と、境界情報記憶部24に記憶された古地図画像の境界情報から、現在位置が古地図画像の表示範囲外か否かを判定する。現在位置が古地図画像の表示範囲外であると判定されたときに、表示画像生成部30は、現在地図画像データを読み出して表示用画像を生成し、表示部14に現在の地図を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古い時代の地図を表示可能な地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載用のナビゲーション装置では、通常、最新の道路状況が反映された地図が用意されている。これに対し、最新の地図ではなく、走行中の地域の昔の地図(古地図)をディスプレイに表示させる地図表示装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
この地図表示装置では、現在の地図を表す現在地図データと、過去の時代の地図を表す古地図データとが用意されており、運転者において選択された時代の地図データを読み出すことで、自車位置を示すインジケータとともに古地図がディスプレイに表示される。これにより、例えば、江戸時代の地図を表示して昔の町並みを運転者に想起させることができ、趣のあるドライブを楽しむことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−242164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、古地図が用意される範囲は、現在の地図ほど広くないのが通常である。これは、古地図が作成された当時は、それほど広範囲の地図が必要とされていなかったこと、その後に紛失ないし焼失したこと等の理由による。
【0006】
そして、古地図に対応する画像データと、現在地図に対応する画像データは別々に用意されているため、古地図の画像がディスプレイに表示された状態で、古地図が用意されていない地域を走行する場合、ディスプレイには何も表示されなくなる。結果として、地図表示装置としての利便性が損なわれてしまう。
【0007】
かかる問題に対しては、現在地図の画像データと古地図の画像データを重ね合わせ、古地図の表示範囲外に出たときにも現在地図をそのまま表示させることが望ましい。しかし、複数の画像を重ね合わせて表示するためには、高速動作が可能な画像処理プロセッサや大容量のメモリが必要となるため、車載用または携帯用のナビゲーション装置に適用するのはコスト等の理由から困難である。
【0008】
本発明は、利便性を損なうことなく、効率的に古地図を表示させることが可能な地図表示装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地図表示装置は、現在の地図画像を示す現在地図画像データが記憶された現在地図記憶部と、古地図の画像を示す古地図画像データが記憶された古地図記憶部と、現在位置を示す現在位置情報を検出する位置情報検出部と、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定する領域判定部と、前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成する地図画像生成部と、前記表示画像データに基づき、地図画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、現在位置が古地図の表示範囲外にあることが検出されたときに現在地図へ切り替えて表示するので、地図画像が全く表示されないという状況を防止することができ、地図表示装置の利便性を向上することができる。
【0011】
本発明の地図表示装置は、前記古地図の表示範囲を示す境界情報を記憶する境界情報記憶部を備え、前記領域判定部は、前記境界情報と前記現在位置情報から、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
この構成により、古地図の表示範囲外であるか否かの判定に必要なデータ量を削減することができるため、判定処理に要する時間を短縮でき、また、判定処理にあたり高速の画像処理プロセッサやメモリが不要となるため、装置の低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明の地図表示装置において、前記古地図記憶部に記憶された前記古地図画像データは、前記古地図の画像を複数のブロック画像に区分けした状態で記憶され、前記境界情報記憶部は、前記ブロック画像の各々に対応する前記境界情報を記憶し、前記領域判定部は、現在位置情報と、前記現在位置に対応する前記ブロック画像の前記境界情報から、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
この構成により、現在位置に対応するブロック画像の境界情報のみを抽出して判定処理を行えば良いため、全ての境界情報を抽出する必要がなく、より効率的に判定処理を行うことができる。
【0015】
本発明の地図表示装置は、移動経路を指示するナビゲーション装置に用いられ、前記移動経路を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、前記古地図の表示範囲を示す境界情報を記憶する境界情報記憶部を備え、前記領域判定部は、前記境界情報と前記経路情報より、前記古地図の表示範囲外となるときの前記移動経路上の位置を示す範囲外位置情報を検出し、前記現在位置と前記範囲外位置との距離が所定値未満になったときに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定することを特徴とする。この構成によっても、上記と同様の効果が得られる。
【0016】
本発明の地図表示装置において、地図画像生成部は、前記古地図と前記現在地図を並べた表示画像データを生成し、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定されたときは、前記現在地図のみに基づき表示画像データを生成することを特徴とする。この構成により、現在地図と古地図の両方を比較して楽しむことができるとともに、地図画像が全く表示されないという状況を防止することができる。
【0017】
古地図記憶部は、複数タイプの古地図に対応する古地図画像データを記憶することが好ましい。また、現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定されたときに、前記表示部に表示される画像が現在地図に切り替えられたことを音声出力する音声出力部を備えることが好ましい。この構成により、運転中にディスプレイから目を離している場合であっても、地図が切り替えられたことを運転手に的確に伝達することができる。
【0018】
本発明の地図表示方法は、現在の地図画像を示す現在地図画像データと、古地図の画像を示す古地図画像データとを記憶し、現在位置を示す現在位置情報を検出し、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定し、前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成し、前記表示画像データに基づき、地図画像を表示することを特徴とする。この構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の地図表示プログラムは、現在の地図画像を示す現在地図画像データと、古地図の画像を示す古地図画像データとが記憶されたコンピュータに対し、現在位置を示す現在位置情報を検出するステップと、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定するステップと、前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成するステップと、前記表示画像データに基づき、地図画像を表示するステップとを実行させることを特徴とする。この構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0020】
本発明の地図表示装置は、第1の地図画像を示す第1地図画像データが記憶された第1地図記憶部と、第2の地図画像を示す第2地図画像データが記憶された第2地図記憶部と、現在位置を示す現在位置情報を検出する位置情報検出部と、前記現在位置が前記第2の地図画像の表示範囲外であるか否かを判定する領域判定部と、前記第2地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記第2の地図画像の表示範囲外であると判定された場合には、前記第1地図画像データを用いて表示画像データを生成する地図画像生成部と、前記表示画像データに基づき、地図画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする。この構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、現在位置が古地図の表示領域外にあると判定したときに、現在地図へ切り替えて表示するようにしたので、ディスプレイに地図が表示されなくなる状況を防止することができ、地図表示装置の利便性を向上することができる。
【0022】
また、本発明によれば、古地図の表示領域の境界を示す情報を設け、現在位置と境界情報とを比較して古地図の表示領域外か否かを判定するようにしたので、領域外か否かの判定を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】地図範囲と画面表示範囲との関係を示す説明図である。
【図3】地図範囲と古地図表示範囲との関係を示す説明図である。
【図4】古地図の表示範囲を座標で示した説明図である。
【図5】古地図の表示範囲を示す境界情報を、古地図を構成するブロック座標と対応付けた表である。
【図6】古地図が表示された例を示す説明図である。
【図7】地図切り替え動作のシーケンスを示すフローチャートである。
【図8】古地図が現在地図に切り替わる例を示す説明図であり、(A)は古地図が表示された状態を、(B)は現在地図に切り替えられた後の状態を示す。
【図9】古地図が現在地図に切り替わる別の例を示す説明図であり、(A)は古地図と現在地図が並列表示された状態を、(B)は現在地図のみが表示された状態を示す。
【図10】別の実施形態に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施例に係る地図表示装置の構成を図1に示す。この地図表示装置は、例えば、車載用のナビゲーション装置や、歩行者用の携帯型ナビゲーション装置に適用することができるが、以下では、車両に搭載されたナビゲーション装置に本発明を適用した場合を例にして説明する。
【0025】
地図表示装置10は、車両位置検出部12と、表示部14と、操作部16と、音声出力部18と、現在地図記憶部20と、古地図記憶部22と、境界情報記憶部24と、コンテンツ記憶部26とを備え、これらの動作は制御部28によって制御されている。
【0026】
車両位置検出部12は、例えばGPS装置であり、車両の現在位置(経度・緯度)を一定時間毎に検出し、現在位置情報を示す現在位置データを制御部28へ送る。表示部14は、例えばLCDパネルであり、後述する現在地図や古地図といった各種の地図画像を表示する。操作部16は、例えばLCDパネルに組み込まれたタッチパネルセンサまたは外付けの操作パネルであり、表示部14へ表示される地図のタイプを選択する際に操作されるほか、地図表示装置10をナビゲーション装置として使用する場合には、目的地を設定する際にも操作される。
【0027】
音声出力部18は、例えばスピーカであり、右折・左折指示といった運転案内に関する情報の他、後述する古地図を表示する場合には、史跡の情報や現在地図への切り替えがなされた旨の情報を、音声で出力する。
【0028】
現在地図記憶部20には、現在の道路状況を表す現在地図データが格納されている。この現在地図データは、例えば図2に示すように、地図画像の一部分を構成する正方形のブロック画像1〜16から構成されるビットマップデータである。このブロック画像1〜16を二次元状に並べることで、地図表示装置10で表示可能な全領域(地図範囲)の画像が得られる。各ブロック画像1〜16には、基準となる点の座標(経度情報、緯度情報)が設けられており、これら基準点の座標情報は、各ブロック画像の画像データと対応付けられている。この座標情報は、例えば、各ブロック画像の左上の点と右下の点の座標情報を用いることができる。
【0029】
古地図記憶部22には、例えば、明治時代の地図や江戸時代の地図を表す画像データ(古地図画像データ)が記憶されている。これら古地図画像も、現在地図と同様に複数のブロック画像から構成されるとともに、各ブロック画像の基準点に対応する座標情報が、各ブロック画像のデータと関連づけられている。これら古地図画像データは、現存する古地図を電子スキャンして、例えばビットマップの形式で保存することにより取得することができる。ここで、「古地図」とは、例えば江戸時代の地図、明治時代の地図、昭和時代初期の地図といったように、現在の道路状況がほとんど反映されていない時代の地図を意味する。
【0030】
ところで、現在では、日本全国にわたって詳細な地図が作成されているため、現在地図は、車両が走行可能な全ての領域をカバーすることができる。これに対し、古地図については、日本全国にわたって地図が作成されているものではないし、また、その後に紛失・焼失されてしまったものもある。このため、現在地図で表示可能な範囲(地図範囲)と、古地図で表示可能な範囲との間に、ずれが生じてしまう。
【0031】
図3は、地図範囲と、古地図の表示範囲との位置関係の例を示したものである。この例において、斜線で示した部分が古地図で実際に画像が表示される領域を示している。この例では、ほぼ全てのブロック画像において古地図が部分的に表示されるものの、ブロック画像13については対応する古地図が存在しない状態となっている。
【0032】
図4は、図3のブロック画像1を例にして、古地図が表示される領域を拡大して示したものである。本実施形態では、各ブロック画像は、例えば縦横それぞれ256ピクセルのビットマップ画像となっている。また、図中、黒丸で示した点は、古地図表示範囲の境界を示す境界点であり、左上の点を各ブロック画像の原点(相対的原点)とした場合の境界点の座標(古地図境界座標)が示されている。
【0033】
図5は、境界情報記憶部24に記憶される情報の一例を示したものである。境界情報記憶部24には、古地図を構成する各ブロック画像について、古地図境界座標の情報が格納されている。例えば、画像ID=1(ブロック画像1を示す)に対応するブロック画像については、図4で示した四角形の各頂点の古地図境界座標(125,170)、(255,170)、(255,255)、(125,255)の情報が記憶されており、この四点の古地図境界座標で示される図形の内部が、古地図で実際に表示されている領域であることが示されている。
【0034】
同様に、例えば画像ID=16(ブロック画像16)に対応するブロック画像については、図3に斜線で示した四角形の領域において古地図が実際に表示される。そして、ブロック画像の左上を相対的原点としたときに、(0,0)、(110,0)、(170,120)、(0,120)で示される古地図境界情報が、境界情報記憶部24に格納されている。この場合、座標(110,0)から座標(170,120)に至る境界については、これを直線であると仮定して、古地図表示領域の境界の座標情報が算出される。このように、境界情報記憶部24には、古地図を構成する全てのブロック画像の識別番号と、古地図境界座標を示す境界座標データとを対応付けられて記憶される。
【0035】
コンテンツ記憶部26には、例えばコンビニエンスストアやレストランといった施設の位置を示す位置情報、当該施設で提供されるサービス等の内容を示す施設情報、地名や河川の位置・名前を示す地名情報などが記憶されており、現在地図や古地図が表示されるときに、当該施設情報や地名情報が併せて表示される。また、現在地図に関連する情報の他に、古地図に関連する情報、例えば、古地図が作成された当時の地名情報やその当時の出来事に関する情報を示すデータを、位置情報と関連づけてコンテンツ記憶部26に格納しても良い。例えば、桜田門の位置情報と、桜田門外の変に関する情報(事件の内容、関連施設の情報など)を示すデータとが互いに関連づけられて、コンテンツ記憶部26に格納される。これらの情報は、当該地名が含まれる古地図画像が表示される際に制御部28によって読み出され、古地図画像と併せて表示される。
【0036】
制御部28は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。また、制御部28は、表示画像生成部30と、領域判定部32を備えている。
【0037】
表示画像生成部30は、車両の現在位置情報に基づき、表示部14への地図画像の表示に必要なブロックの画像データ(例えば、現在位置情報に対応するブロックの地図画像と、周囲のブロックの地図画像の画像データ)を、地図記憶部20,22から読み出す(図2参照)。そして、表示画像生成部30は、車両の現在位置を中心とした一定の表示範囲に対応する表示用画像データを生成し、これを表示部14へ送ることで、現在位置を中心とした一定領域の画像が表示部14に表示される。この表示画像は、一定時間毎に更新される。
【0038】
領域判定部32は、古地図が表示されている場合に、現在の車両位置が古地図表示範囲の外にあるか否か(すなわち、車両が古地図で表示される領域の外に出たか否か)を判定する。すなわち、領域判定部32は、現在位置情報と、対応する地図画像の基準座標の情報に基づき、当該ブロック画像内での車両位置の座標(相対位置座標)を算出する。例えば、あるブロックにおける左上の点の経度、緯度が(X1,Y1)、右上の点の経度・緯度が(X2,Y2)であり、車両位置の経度・緯度が(X,Y)であるときに、車両位置の相対座標(x、y)を、次式により求めることができる。
x=256×(X−X1)/(X2−X1)
y=256×(Y−Y1)/(Y2−Y1)
【0039】
そして、領域判定部32は、算出された車両位置の相対座標と、境界情報記憶部24に記憶された古地図表示範囲の情報から、車両の現在位置が古地図表示範囲の外にあるか否かを判定する。そして、車両が古地図表示範囲外であると判定したときは、表示画像を現在地図へ切り替えるための切替信号を,表示画像生成部30へ送る。
【0040】
切替信号を受けた表示画像生成部30は、車両の現在位置情報に対応するブロック画像の地図画像データと、そのブロックの周囲のブロックに対応する地図画像データを現在地図記憶部22から読み出し、表示用画像データを生成して表示部14へ送る。
【0041】
以下、上記構成による地図表示装置10の動作について説明する。地図表示装置10の利用者が操作部16を操作して、昔の時代(例えば江戸時代)の地図を表示するモードが選択されると、車両位置検出部12は車両の現在位置を示す緯度・経度情報を検出し、表示画像生成部30へ送る。表示画像生成部30は、車両の現在位置情報と、古地図記憶部22に記憶された基準位置情報とに基づき、車両の現在位置に対応するブロック画像と、その周囲のブロック画像を読み出す。そして、当該車両を中心とした一定領域の表示画像データを生成するとともに、表示画像に含まれる地名や標識等のコンテンツデータをコンテンツDB26から読み出して、表示画像データに合成した後に、表示部14へ送る。これにより、表示部14に江戸時代の地図が表示される。
【0042】
図6は、表示部14に江戸時代の地図が表示された例を示したものである。表示部14には、古地図記憶部22から読み出された江戸時代の古地図40と、コンテンツ記憶部26から読み出された地名等の情報のほかに、表示中の地図の時代を示すインジケータ42と、車両の現在位置を示すマーク44とが表示されている。地図表示装置10の利用者は、表示部14に表示される古地図40を鑑賞することで、現在走行中の地域の過去の様子を想起することができる、趣のあるドライブを楽しむことが可能となる。
【0043】
古地図が表示部14に表示されているとき、地図表示装置10は、車両の現在位置が古地図表示範囲外であるか否かを判定するとともに、現在位置が古地図表示範囲外に出たと判定した場合は、古地図から現在地図へ切り替えて表示する。
【0044】
図7のフローチャートは、上記の現在地図への切り替えを行うプロセスを示したものである。古地図が表示された後(S10)、車両位置検出部12は、車両の現在位置情報を検出して、これを領域判定部32へ送る(S11)。領域判定部32では、車両の現在位置情報と、古地図を構成する各ブロック画像の基準座標情報から、車両が属するブロックの番号を特定する(S12)。次に、領域判定部32は、得られたブロック番号が、前回の検出で得られたブロックの番号と同じか否かを判定する(S13)。ブロック番号が異なる場合は、領域判定部32は、境界情報記憶部24から、当該ブロックに対応する古地図境界座標のデータを読み出す(S14)。なお、得られたブロック番号が前回の検出時で得られたものと同じである場合には、既に古地図境界座標の情報が得られているため、ステップS14は省略される。
【0045】
次いで、領域判定部32は、現在位置情報と、当該ブロックの基準座標の情報に基づき、当該ブロック内での現在位置の座標(相対座標)を算出し(S15)、古地図境界座標の情報と対比して、現在位置が古地図表示範囲の外にあるか否かを判定する(S16)。現在位置が古地図表示範囲の内側にある(すなわち、車両が古地図表示範囲内に位置している)と判定された場合、ステップS11に戻って、再び同様の判定ステップを繰り返す。
【0046】
一方、ステップS16において、現在位置が古地図表示範囲外であると判定された場合、表示画像生成部30は、現在地図記憶部20から、車両の現在位置に対応するブロック画像の画像データを読み出す(S17)。そして、表示画像生成部30は、車両の現在位置を中心とした一定範囲の表示画像データを生成し、これを表示部14へ送る。これにより、車両が古地図表示範囲外に移動した場合に、現在地図が表示部14に表示される(S18)。
【0047】
図8は、表示部14に表示される画像が、古地図から現在地図へ切り替えられる様子を示したものである。古地図が表示された状態を図8(A)に、現在地図が表示された状態を図8(B)に示している。図8(A)の状態では、車両の現在位置44が古地図表示範囲内にあるため、古地図40が表示部14に表示されているが、古地図の境界線の上側の領域は画像が何も表示されない空白領域となっている。
【0048】
この状態で、車両が図中上方向に移動し、車両の現在位置44が古地図表示範囲外に出たことが、領域判定部32によって検出されると、図8(B)に示すように、表示部14には、現在地図46が切り替え表示される。これにより、地図が表示されないという不都合を防止することができ、地図表示装置10の利便性が向上する。
【0049】
また、古地図から現在地図に表示が切り替えられたときに、その旨を示す音声メッセージを、音声出力部18から音声出力することが好ましい。これにより、地図表示装置10の利用者が運転中であり、表示部14を見ることができない状態であっても、地図画像が切り替えられたことを利用者に確実に伝えることができる。
【0050】
図9は、表示部14に表示される画像の別の例を示したものである。図9(A)では、表示部14に現在地図46と古地図40とが並べて表示されており、これにより、利用者は経路表示によるナビゲーションを受けると同時に、走行中の地域の古地図を鑑賞することができる。そして、車両の現在位置44が古地図表示範囲外に出たことが検出されると、図9(B)に示すように、表示部14には現在地図46のみが表示される。この態様によっても、上記と同様の効果を奏することができる。
【0051】
上記実施形態では、ブロック画像ごとに古地図境界座標を定め、現在位置情報と古地図表示範囲とを対比して、車両が古地図表示範囲外であるか否かを検出しているが、現在位置の近傍の領域に対応する古地図画像のビットマップデータを解析して、地図画像の有無を検出することにより、古地図表示範囲外であるか否かを検知するようにしても良い。この方法では、一定範囲のビットマップデータを解析する必要があるため、メモリ空間を多く使用してしまうものの、古地図境界座標の情報を予め設ける必要がなくなる。また、古地図境界座標を経度・緯度の情報で表しても良い。
【0052】
また、車両の走行経路を予測して、車両が古地図表示範囲外であるか否かを検知するようにしても良い。図10は、この実施形態に係る地図表示装置50の構成を示したものであり、これは、図1で示した構成に走行経路検出部52が更に備えられたものである。なお、図1に示す例と同じ構成部材については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
走行経路検出部52には、車両の走行経路を示すデータ(走行経路データ)が記憶されている。この走行経路データは、予め設定された目的地への最短経路を示すデータであり、例えば、目的地に至る複数の点の座標情報から構成することができる。目的地が設定されていない場合は、現在の車両位置と走行方向との情報に基づき、例えば次の交差点に至る複数の点の座標情報を走行経路データとする。領域判定部32は、走行経路検出部52に記憶された走行経路データと、境界情報記憶部24に記憶された境界座標情報とを比較して、走行経路が古地図表示範囲の境界に達する点の座標(経度、緯度情報)を算出する。そして、領域判定部32は、車両の現在位置と境界位置との距離が一定値未満になったときに、古地図表示範囲外に車両が移動したと検出し、現在地図を表示部14に切り替えて表示させる。
【0054】
上記実施形態では、地図画像が16のブロック画像に分けられた場合を例にして説明しているが、本発明はこれに限られることはなく、より多くのブロック画像に細分化して地図画像を構成しても良い。また、縮尺の異なる複数タイプのブロック画像を用意することで、地図画像を拡大・縮小表示することもできる。この場合も、対応する縮尺のブロック画像データを地図記憶部から読み出して、表示部14へ表示することで、拡大・縮小表示が可能となる。
【0055】
上記実施形態では、古地図を表示する場合を例にして説明しているが、本発明はこれに限られることはなく、種々の地図画像を切り替えて表示する場合にも、等しく適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、複数の地図画像を効果的に表示することが可能となり、例えば、車載用のナビゲーション装置や、携帯用のナビゲーション装置として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10,50 地図表示装置
12 車両位置検出部
14 表示部
20 現在地図記憶部
22 古地図記憶部
24 境界情報記憶部
30 表示画像生成部
32 領域判定部
40 古地図
46 現在地図
52 走行経路検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在の地図画像を示す現在地図画像データが記憶された現在地図記憶部と、
古地図の画像を示す古地図画像データが記憶された古地図記憶部と、
現在位置を示す現在位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定する領域判定部と、
前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成する地図画像生成部と、
前記表示画像データに基づき、地図画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記古地図の表示範囲を示す境界情報を記憶する境界情報記憶部を備え、
前記領域判定部は、前記境界情報と前記現在位置情報から、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定することを特徴とする、請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記古地図記憶部に記憶された前記古地図画像データは、前記古地図の画像を複数のブロック画像に区分けした状態で記憶され、
前記境界情報記憶部は、前記ブロック画像の各々に対応する前記境界情報を記憶し、
前記領域判定部は、現在位置情報と、前記現在位置に対応する前記ブロック画像の前記境界情報から、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定することを特徴とする、請求項2記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記地図表示装置は、移動経路を指示するナビゲーション装置に用いられ、
前記移動経路を示す経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記古地図の表示範囲を示す境界情報を記憶する境界情報記憶部を備え、
前記領域判定部は、前記境界情報と前記経路情報より、前記古地図の表示範囲外となるときの前記移動経路上の位置を示す範囲外位置情報を検出し、前記現在位置と前記範囲外位置との距離が所定値未満になったときに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定することを特徴とする、請求項1記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記領域判定部は、前記現在位置を含む所定範囲の前記古地図画像データを解析することで、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定することを特徴とする、請求項1記載の地図表示装置。
【請求項6】
前記地図画像生成部は、前記古地図と前記現在地図を並べた表示画像データを生成し、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定されたときは、前記現在地図のみに基づき表示画像データを生成することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか記載の地図表示装置。
【請求項7】
前記古地図記憶部は、複数タイプの古地図に対応する古地図画像データを記憶し、前記地図画像生成部は予め選択されたタイプの古地図画像データを前記古地図記憶部から読み出すことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか記載の地図表示装置。
【請求項8】
前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定されたときに、前記表示部に表示される画像が現在地図に切り替えられたことを音声出力する音声出力部を備えたことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか記載の地図表示装置。
【請求項9】
現在の地図画像を示す現在地図画像データと、古地図の画像を示す古地図画像データとを記憶し、
現在位置を示す現在位置情報を検出し、
前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定し、
前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成し、
前記表示画像データに基づき、地図画像を表示することを特徴とする地図表示方法。
【請求項10】
現在の地図画像を示す現在地図画像データと、古地図の画像を示す古地図画像データとが記憶されたコンピュータに対し、
現在位置を示す現在位置情報を検出するステップと、
前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であるか否かを判定するステップと、
前記古地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記古地図の表示範囲外であると判定された場合には、前記現在地図画像データを用いて表示画像データを生成するステップと、
前記表示画像データに基づき、地図画像を表示するステップとを実行させることを特徴とする地図表示プログラム。
【請求項11】
第1の地図画像を示す第1地図画像データが記憶された第1地図記憶部と、
第2の地図画像を示す第2地図画像データが記憶された第2地図記憶部と、
現在位置を示す現在位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記現在位置が前記第2の地図画像の表示範囲外であるか否かを判定する領域判定部と、
前記第2地図画像データを用いて表示画像データを生成するとともに、前記現在位置が前記第2の地図画像の表示範囲外であると判定された場合には、前記第1地図画像データを用いて表示画像データを生成する地図画像生成部と、
前記表示画像データに基づき、地図画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする地図表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−232515(P2011−232515A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102207(P2010−102207)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】