説明

地表変化判別装置及び地表変化判別プログラム

【課題】該当地域の地表の変化を高速に精度良く解析する。
【解決手段】特異地表情報検出手段103は新規に得た該当地域の特異領域を算出し、特異地表情報検出手段203は事前に得た該当地域の特異領域を算出し、位置補正手段105は算出された新規に得た該当地域の特異領域及び事前に得た該当地域の特異領域に基づき新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行い、地表情報差分検出手段107は位置合わせが行われた新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出し、地表情報変化評価手段109は検出された差分について実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は該当地域の地形や構造物等の地表の変化を判別する地表変化判別装置及び地表変化判別プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地表変化判別装置では、該当地域の地表を航空機等からレーダで走査して新規に得た地表の高度情報やカメラで撮影して新規に得た色彩スペクトル情報と、事前に得た地表情報である地表の高度情報や地表の色彩スペクトル情報との差から、該当地域の地表の変化を判別している。地表の変化の例として、例えば、建造物の生成又は消滅や、河川の氾濫を含むくぼ地の生成又は消滅や、がけ崩れを含む一定傾斜斜面の生成又は消滅等が上げられる。
【0003】
このように、従来の地表変化判別装置では、航空機又は人工衛星等から該当地域の地表を可視光線、赤外線、電波等により撮影し、地表の高度情報や地表の色彩スペクトル情報を得ることが行われ、また、時間差をおいて撮影又は走査された複数の地表の画像から、時間の経過によって建造物を含む地表の変化を判別することが行われている。
【0004】
従来から、この地表の変化を判別する過程を人間の目視能力によらずに自動的に行うための発明がなされており、例えば特許文献1では、建造物や自然物等の物体が存在する地域の撮影画像からエッジ画像を生成するエッジ画像生成手段と、エッジ画像生成手段が生成したエッジ画像毎に当該撮影画像全体に対する存在確度を算出するとともに存在確度が一定値以下となるエッジ画像を当該撮影画像の該当領域から除去する手段とを有し、物体の影成分が削除された前処理画像を生成する画像処理装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、同一地域を時間を置いて上空から撮影した新旧画像を用意し、上記新旧画像の夫々から第1の画像変換手法により第1及び第2の変換画像を求め、該第1及び第2の変換画像を比較し、変化領域と推定されるデータを有する第1の2値化画像を求め、上記新旧画像の夫々から第2の画像変換手法により第3及び第4の変換画像を求め、該第3及び第4の変換画像を比較し、変化領域と推定されるデータを有する第2の2値化画像を求め、上記第1の2値化画像を所定画素数からなる複数の画素領域に分割し、夫々の画素領域中の領域変化を示す画素数を求め、該画素数をしきい値と比較して第3の2値化画像を求め、上記第2の2値化画像を所定画素数からなる複数の画素領域に分割し、夫々の画素領域中の領域変化を示す画素数を求め、該画素数をしきい値と比較して第4の2値化画像を求め、上記第3及び第4の2値化画像に基づいて上記新旧画像間の変化領域を特定する画像データ処理方法が開示されている。
【0006】
上記特許文献の従来の地表変化の検出手法においては、新旧の該当地域を撮影した画像を正確に位置合わせしてから、その後に地表変化を検出する必要があるが、この際の位置合わせの手法については、同一縮尺の平行移動のみで位置合わせをするか、開示しておらず手作業で位置合わせを行うことを前提として記述されている。
【0007】
一方、測量の際には、非特許文献1に、地上に対空標識を設置して位置合わせの基準とすることが記載されているが、通常の測量以外の測定の場合、特に災害が発生した後の地上の撮影においては、このような位置合わせ用の対空標識は被写体である地上には設定されない。
【0008】
また、撮影するカメラやレーザ照射装置の位置や姿勢は航空機に設置してあるGPS(Global Positioning System)装置及び姿勢制御装置で得ることができ、これを新旧の該当地域の撮影画像の位置合わせに用いることができるが、誤差も多く、その位置合わせのみに頼っていては、地表の変化を捉えるための位置合わせとしては不十分である。
【0009】
【特許文献1】特開平10−312466号公報(段落0006)
【特許文献2】特開2001−109872号公報(段落0006)
【非特許文献1】国土交通省公共測量作業規定、国土交通省大臣官房技術調査課監修、社団法人 日本測量協会、平成14年6月6日、第3章 空中写真測量、第1節 要旨、第98条、P.43
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の地表変化判別装置は以上のように構成されているので、新旧の該当地域の撮影画像の位置合わせの精度が低く、該当地域の地表の変化を高速に精度良く解析することができないという課題があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、該当地域の地表の変化を高速に精度良く解析することができる地表変化判別装置及び地表変化判別プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る地表変化判別装置は、新規に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して新規に得た該当地域の特異領域を算出すると共に、事前に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して事前に得た該当地域の特異領域を算出する特異地表情報検出手段と、上記特異地表情報検出手段により算出された新規に得た該当地域の特異領域及び事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行う位置補正手段と、上記位置補正手段により位置合わせが行われた新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出する地表情報差分検出手段と、上記地表情報差分検出手段により検出された差分について、予め設定された地表情報の変化を評価するためのパラメータと比較して、実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価する地表情報変化評価手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、該当地域の地表の変化を高速に精度良く解析することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の形態1による地表変化判別装置の構成を示すブロック図である。この地表変化判別装置は、該当地域の地形や構造物の地表の変化を判別するもので、新着情報入力手段101、新着情報メモリ102、特異地表情報検出手段103、新着特異情報メモリ104、位置補正手段105、新着位置補正情報メモリ106、地表情報差分検出手段107、新着情報差分メモリ108、地表情報変化評価手段109、変化情報メモリ110、変化情報出力手段111、旧来情報メモリ202、特異地表情報検出手段203、旧来特異情報メモリ204及び地表情報変化モデルメモリ208を備えている。
【0015】
図1において、新着情報入力手段101は、例えばディスク装置であり、該当地域の地表の高度情報又は地表の色彩スペクトル情報である地表情報を新規に得て新着情報メモリ102に格納する。特異地表情報検出手段103は、新着情報メモリ102に格納されている新規に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出し、新規に得た該当地域の特異領域を算出して新着特異情報メモリ104に格納する。
【0016】
旧来情報メモリ202には、事前に得た該当地域の地表の高度情報又は地表の色彩スペクトル情報である地表情報が格納されている。特異地表情報検出手段203は、旧来情報メモリ202に格納されている事前に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出し、事前に得た該当地域の特異領域を算出して旧来特異情報メモリ204に格納する。
【0017】
位置補正手段105は、新着特異情報メモリ104に格納されている新規に得た該当地域の特異領域及び旧来特異情報メモリ204に格納されている事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報における中領域毎の位置ずれのベクトル量を求め、求めた中領域毎の位置ずれのベクトル量に基づき、新規に得た該当地域の地表情報を小領域毎にずらすことにより、新規に得た該当地域の地表情報の位置を補正して新着位置補正情報メモリ106に格納する。
このようにして、位置補正手段105は、特異地表情報検出手段103により算出された新規に得た該当地域の特異領域及び特異地表情報検出手段203により算出された事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行う。
【0018】
地表情報差分検出手段107は、新着位置補正情報メモリ106に格納されている位置が補正された新規に得た該当地域の地表情報と、旧来情報メモリ202に格納されている事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出して、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を新着情報差分メモリ108に格納する。
【0019】
地表情報変化モデルメモリ208には、該当地域の地表情報の変化を評価するためのパラメータが予め格納されている。地表情報変化評価手段109は、新着情報差分メモリ108に格納されている新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分について、地表情報変化モデルメモリ208に格納されている予め設定された地表情報の変化を評価するためのパラメータと比較して、実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価して変化情報メモリ110に格納する。
【0020】
変化情報出力手段111は変化情報メモリ110に格納されている実際に発生した地表情報の変化を出力する。
【0021】
図2は特異地表情報検出手段103の構成を示すブロック図である。この特異地表情報検出手段103は、領域分割制御手段301、領域分割手段302、領域統計算出手段303、領域統計メモリ304及び特異領域算出手段305を備えている。また、図示されていないが、特異地表情報検出手段203も図2に示す特異地表情報検出手段103の構成と同じ構成を備えている。
【0022】
図2において、領域分割制御手段301には、該当地域の全体領域を所定の中領域に分割し、分割した中領域を所定の小領域に分割する該当地域の領域分割方法が予め複数設定されている。領域分割手段302は、領域分割制御手段301に設定されている該当地域の領域分割方法に基づき、該当地域を所定の中領域及び小領域に分割する。
【0023】
領域統計算出手段303は、領域分割手段302により分割された所定の中領域及び小領域毎に、地表情報の領域統計を算出して領域統計メモリ304に格納する。特異領域算出手段305は、領域統計メモリ304に格納されている地表情報の領域統計に基づき、該当領域の地表情報の特異な分布を検出し、該当地域の特異領域を算出する。
【0024】
次に動作について説明する。
新着情報入力手段101は、該当地域の地表の高度情報又は地表の色彩スペクトル情報である地表情報を新規に得て新着情報メモリ102に格納するが、ここでは、地表情報としてレーザ等で走査して地表の高度データを得るものとする。このレーザ等による走査で新規に得た地表情報は、赤外線を含む光学的なセンサの画像と比較した場合、雲や日照の陰等の影響を受けないという特徴はあるものの、得られるのは高度データであり、地表面の反射スペクトルによる色彩や熱の差は検知されないという特徴がある。
【0025】
レーダ等で取得された高度データは、基本的には離散的な地点毎の高度データである。この地点毎の高度データについては、離散的な地点毎の高度データ(例えばデータ形式:x,y,zで、xが緯度、yが経度、zが高度)という形式で扱うこととする。新着情報メモリ102に格納された地表情報は特異地表情報検出手段103と位置補正手段105に転送される。
【0026】
特異地表情報検出手段103における領域分割制御手段301には、該当地域の領域分割方法が予め複数設定されている。
図3は特異地表情報検出手段103における領域分割制御手段301に予め設定されている該当地域の領域分割方法の例を示す図である。図3に示す領域分割方法Aでは、該当地域を300m×200mの中領域401に分割し、分割した中領域401を60m×40mの小領域402に分割している。また、領域分割方法Bでは、該当地域を300m×200mの中領域401に分割し、分割した中領域401を50m×50mの小領域402に分割している。
【0027】
新着情報入力手段101では、通常、1辺が3kmないし10km程度の該当地域の領域を保持していて、平均の分解能(xの値の最小間隔ないしyの値の最小間隔)が0.3mないし10m程度とする。領域分割制御手段301に予め設定されている該当地域の領域分割方法では、この全体領域を、中領域401として1辺が100mないし300m程度に分割し、さらに、この中領域401を1辺が30mないし100m程度の小領域402に分割している。
【0028】
領域分割方法として、図3では領域分割方法A,Bを例示したが、これ以外に縦長や斜め方向に分割する領域分割方法を複数種類を用意して設定する。なお、小領域の1辺の長さは、地表変化として検出すべき事象(建物の新築や撤去、川床の変化等)の大きさを勘案したものであり、事象の大きさが異なる場合(大規模地震による地殻変動等)の場合には領域分割制御手段301において変更して設定することが可能である。
【0029】
領域分割手段302は、領域分割制御手段301に設定されている該当地域の領域分割方法Aに基づき、例えば、該当地域の最左端で最下端を基点として、該当地域を所定の中領域及び小領域に分割する。
【0030】
領域統計算出手段303は、領域分割手段302により分割された所定の中領域及び小領域毎に、地表情報の領域統計を算出して領域統計メモリ304に格納する。ここで、地表情報がx、y、zで、xが緯度、yが経度、zが高度の場合に、領域統計算出手段303は、各中領域及び各小領域の各緯度x、経度yにおける各地点の高度zに基づき、各中領域及び各小領域における高度zの算術平均値(以下、平均値と称する)を領域統計として算出し、その結果を領域統計メモリ304に格納する。
【0031】
次に、領域分割手段302は、領域分割制御手段301に設定されている該当地域の領域分割方法Aに基づき、該当地域の基点より、小領域のサイズの半分である、緯度xを30mずらしたところ、経度yを20mずらしたところ、並びに緯度xを30m及び経度yを20mずらしたところの各々を原点にして、該当地域を所定の中領域及び小領域に分割し、領域統計算出手段303は、領域分割手段302により分割された所定の中領域及び小領域毎に、同様にして、各中領域及び各小領域の各緯度x、経度yにおける各地点の高度zに基づき、各中領域及び各小領域における高度zの平均値を領域統計として算出し、その結果を領域統計メモリ304に格納する。
【0032】
また、領域分割手段302が、領域分割制御手段301に設定されている該当地域の領域分割方法Bに基づき、該当地域の基点から該当地域を所定の中領域及び小領域に分割した場合と、該当地域の基点より小領域のサイズの半分ずらした点を原点として該当地域を所定の中領域及び小領域に分割した場合について、領域統計算出手段303は、領域分割手段302により分割された所定の中領域及び小領域毎に、同様にして、各中領域及び各小領域の各緯度x、経度yにおける各地点の高度zに基づき、各中領域及び各小領域における高度zの平均値を領域統計として算出し、その結果を領域統計メモリ304に格納する。
【0033】
さらに、領域分割制御手段301に設定されている該当地域の他の領域分割方法についても、同様に、領域分割手段302は、該当地域を所定の中領域及び小領域に分割し、領域統計算出手段303は、地表情報の領域統計を算出して領域統計メモリ304に格納する。
【0034】
領域統計算出手段303により算出され領域メモリ304に格納される領域統計について、地表情報と関連して説明する。
図4は地表情報を略地図として表し、ある小領域402aとその小領域402aの経度yを小領域のサイズの半分だけずらした小領域402bを示す図である。図4の地表情報内には建物501と川床502がある。建物501内部の高度zは周辺の土地よりも高く、川床502内部の高度zは周辺の土地よりも低いとする。高度zの平均値は、この付近が平地であれば、小領域402bにおいては、建物501や川床502がない近隣の小領域より高い。小領域402aにおいては、高度zの平均値は、建物501と川床502に影響されるので、建物501や川床502がない近隣の小領域と比べた場合に特段の特徴はないが、分散値は大きい。
【0035】
そこで、特異領域算出手段305は、領域統計メモリ304に格納されている中領域の領域統計とその内部の小領域毎の領域統計を比較し、事前に設定されているしきい値に比べて、次の特徴を持つ小領域を特異領域とみなして、特異事由コードを設定する。
【0036】
図5は特異領域算出手段305に予め設定されている特異事由コード表の例を示す図である。この特異事由コード表は小領域の領域統計の状態と特異事由コードとの対で設定されており、領域統計メモリ304に格納されている小領域の領域統計の状態に対して特異領域算出手段305が該当の小領域の中心座標(x,y)に与える特異事由コードを示している。なお、図5では、各特異事由コードに対して説明のための検出目的を図示している。
【0037】
図5に示すように、特異事由コードとして、平均値による特異事由コード01,02,03,04,・・・があり、例えば、特異事由コード01は周辺よりも低地であることが示される。特異領域算出手段305は、この特異事由コードを該当小領域の中心座標(x,y)と共に、新着特異情報メモリ104に特異領域として(x,y,特異事由コード)を格納する。
【0038】
すなわち、特異領域算出手段305は、領域統計算出手段303により算出された小領域の地表情報の平均値と当該小領域を含む中領域の地表情報の平均値とを比較し、又は領域統計算出手段303により算出された小領域の地表情報の平均値と当該小領域に隣接する小領域の地表情報の平均値を比較し、予め設定された所定の条件を満たす場合に、当該小領域を特異領域として算出する。
【0039】
例えば、特異領域算出手段305は、図5に示すように、小領域の地表情報の平均値が当該小領域を含む中領域の地表情報の平均値より所定のしきい値以上低い場合には、くぼ地や川床と判断して当該小領域に特異事由コード01を与え、小領域の地表情報の平均値が当該小領域を含む中領域の地表情報の平均値より所定のしきい値以上高い場合には、建物や山頂と判断して当該小領域に特異事由コード02を与え、小領域の地表情報の平均値が当該小領域の上(北)の小領域の地表情報の平均値より低く、下(南)の小領域の地表情報の平均値より高い場合には、南向き斜面と判断して当該小領域に特異事由コード03を与え、小領域の地表情報の平均値が当該小領域の左(西)の小領域の地表情報の平均値より低く、右(東)の小領域の地表情報の平均値より高い場合には、東向き斜面と判断して当該小領域に特異事由コード04を与える。
【0040】
一方、旧来情報メモリ202に格納されている地表情報についても、特異地方情報検出手段203は、特異地方情報検出手段103と同様にして、小領域に特異事由コードを与えて、旧来特異情報メモリ204に特異領域として格納する。なお本処理は、いうまでもなく、新着情報入力手段101に新規に得た地表情報が入力される以前に実施しておくことができる。
【0041】
新着特異情報メモリ104及び旧来特異情報メモリ204に特異領域としての各小領域毎の特異事由コードが格納された後、位置補正手段105は、特異領域としての各小領域毎の特異事由コードに基づき、新着情報メモリ102に格納されている新規に得た地表情報と旧来情報メモリ202に格納されている事前に得た地表情報との位置合わせ行う。なお、仮に新規に得た地表情報と事前に得た地表情報の位置がずれていないならば、新着特異情報メモリ104内の特異事由コードと旧来特異情報メモリ204内の特異自由コードは全く一致するが、これは実際の観測データをもとにしていると起こりがたいため、以下のようにして位置合わせを行う。
【0042】
位置補正手段105は、新着特異情報メモリ104に格納されている特異領域としての(x1,y1,特異事由コード)を参照すると共に、旧来特異情報メモリ204に格納されている特異領域としての(x2,y2,特異事由コード)を参照し、新規に得た中領域における各小領域の特異事由コードと、事前に得た中領域における各小領域の特異事由コードとを比較し、同じ特異事由コードを持ち所定のしきい値以内の距離にある小領域の個数が所定のしきい値以上ある場合に、中領域における位置ずれのベクトル量(x1−x2,y1−y2)を中領域における位置ずれの候補として求める。
【0043】
また、位置補正手段105は、他の領域分割方法、例えば図3に示す領域分割方法Bで同様の処理を行い、位置ずれの候補を求める。このとき、位置ずれの候補を確実に得るために、該当領域を原点をずらして分割した中領域についても、同様の位置ずれの候補を求める処理を行う。
【0044】
このようにして、位置補正手段105は中領域毎の位置ずれのベクトル量を中領域における位置ずれの候補として求める。このとき、走査方向に5度以内の位置ずれがあれば領域全体は位置ずれのベクトル量が異なるが、例えばsin5度=0.087であり、1辺が300mの中領域であれば、位置ずれの最大は2.6m程度であるので、中領域毎にずれを求めれば角度の影響は無視できる。
【0045】
そして、位置補正手段105は、最大個数の中領域の位置ずれのベクトル量を算出した該当地域の領域分割方法を選択し、位置ずれのベクトル量が算出された中領域では算出された位置ずれのベクトル量を採用し、位置ずれのベクトル量が算出されていない中領域では、中心座標が最も近い中領域の位置ずれのベクトル量を採用する。さらに、位置補正手段105は、採用された中領域毎の位置ずれのベクトル量に基づき、新着情報メモリ102に格納されている新規に得た地表情報を小領域毎にずらすことにより、位置が補正された新規に得た地表情報を新着位置補正情報メモリ106に格納する。
【0046】
次に地表情報差分検出手段107は、新着位置補正情報メモリ106に格納されている位置が補正された新規に得た地表情報と、旧来情報メモリ202に格納されている相当位置にある事前に得た地表情報とを比較し、以下の方法により顕著な地表情報の差分を検出する。なお、センサの差及び高さ検出地点(x,y)の差があるため、本来は差のない地表であっても高度差は生じるので、単純にデータ上に高度差があるだけでは顕著な差とはいえない。また、位置補正手段105による位置ずれの算出の際に、同じ特異事由コードを有する相当領域であっても、これは統計量による比較であるため、顕著な地表情報の差は存在しうる。
【0047】
地表情報差分検出手段107は、事前に得た地表情報の小領域単位に、地表情報の値(x2,y2,z2)に対し、新着位置補正情報メモリ106に格納されている最も距離の近い地表情報の値(x1,y1,z1)を求め、その高度の差をz3=z2−z1として算出する。高度の差の絶対値|z2−z1|が所定のしきい値を超えた高度の差z3について、値(x2,y2,z3)を新着情報差分メモリ108に格納する。
【0048】
新着情報差分メモリ108に格納されているのは、点毎に高度に顕著な差がある地点のリストであるが、これが検出目的である実際の地表変化にあたるかどうかを次に示す方法で地表情報変化評価手段109により評価する。
【0049】
地表情報変化評価手段109は、新着情報差分メモリ108に格納されている値(x2,y2,z3)について、所定のしきい値より大きい正の高度の差z3を有する所定の距離以内の(x2,y2)の点を、該当地域の基点近傍の小領域から追跡して左回りの連鎖を作ることにより上昇区域輪郭線を形成し、上昇区域輪郭線で囲まれた輪郭領域の面積S1を求めると共に、所定のしきい値より小さい負の高度の差z3を有する所定の距離以内の(x2,y2)の点を、該当地域の基点近傍の小領域から追跡して左回りの連鎖を作ることにより下降区域輪郭線を形成し、下降区域輪郭線で囲まれた輪郭領域の面積S2を求める。
【0050】
そして、地表情報変化評価手段109は、上昇区域輪郭線で囲まれた輪郭領域の面積S1が所定のパラメータ1より大きい場合には実際に上昇区域が発生したと評価し、下降区域輪郭線で囲まれた輪郭領域の面積S2が所定のパラメータ1より大きい場合には、実際に下降区域が発生したと評価する。ここで、パラメータ1は上昇区域又は下降区域が発生したと評価する際の誤差を排除するためのパラメータである。
【0051】
また、地表情報変化評価手段109は、上昇区域輪郭線の外接長方形の面積S3、下降区域輪郭線の外接長方形の面積S4及び両外接長方形の重複面積S5を求め、S5/S3>パラメータ2又はS5/S4>パラメータ2の場合に、上昇区域と下降区域が混在して発生したと評価する。ここで、パラメータ2は上昇区域と下降区域が混在して発生したと評価する際の誤差を排除するためのパラメータである。
【0052】
そして、地表情報変化評価手段109は、実際に発生した地表情報の変化と評価した値(x2,y2,z3)、又は上昇区域輪郭線、下降区域輪郭線を変化情報メモリ110に格納する。
【0053】
変化情報出力手段111は、変化情報メモリ110に格納されている値(x2,y2,z3)、又は上昇区域輪郭線、下降区域輪郭線を、変化情報として出力する。
【0054】
以上のように、この実施の形態1によれば、特異地表情報検出手段103が新規に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して新規に得た該当地域の特異領域を算出し、特異地表情報検出手段203が事前に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して事前に得た該当地域の特異領域を算出し、位置補正手段105が算出された新規に得た該当地域の特異領域及び事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行い、地表情報差分検出手段107が位置合わせが行われた新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出し、地表情報変化評価手段109が、検出された差分について、予め設定された地表情報の変化を評価するためのパラメータと比較して、実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価することにより、該当地域の地表の変化を高速に精度良く解析することができるという効果が得られる。
【0055】
上記実施の形態1では、地表情報として(x,y,z)のz情報として高度情報を用いて説明してきたが、このかわりに、赤外線センサにおける反射値を離散値(例:0〜255)とした場合にも本処理は適用できる。その際は、高度のかわりに温度放射の高い区域と低い区域で変化を評価することとなる。また、高度情報のかわりに、赤・青・緑の3原色による色彩スペクトル情報を離散値として得た場合にも本処理は適用できる。その場合には、各原色による反射でまず変化を評価し、地表情報変化評価手段109により各原色での評価結果の論理和をとることで変化を判別する。
【0056】
なお、上記実施の形態1による地表変化判別装置は、コンピュータと、このコンピュータを上記実施の形態1における各手段として機能させるための地表変化判別プログラムにより実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態1による地表情報変化評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による地表情報変化評価装置の特異地表情報検出手段の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による地表情報変化評価装置の特異地表情報検出手段における領域分割制御手段に予め設定されている該当地域の領域分割方法の例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による地表情報変化評価装置において、地表情報を略地図として表し、ある小領域とその小領域の経度を小領域のサイズの半分だけずらした小領域を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る地表情報変化評価装置の特異地表情報検出手段における特異領域算出手段に予め設定されている特異事由コード表の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
101 新着情報入力手段、102 新着情報メモリ、103 特異地表情報検出手段、104 新着特異情報メモリ、105 位置補正手段、106 新着位置補正情報メモリ、107 地表情報差分検出手段、108 新着情報差分メモリ、109 地表情報変化評価手段、110 変化情報メモリ、111 変化情報出力手段、202 旧来情報メモリ、203 特異地表情報検出手段、204 旧来特異情報メモリ、208 地表情報変化モデルメモリ、301 領域分割制御手段、302 領域分割手段、303 領域統計算出手段、304 領域統計メモリ、305 特異領域算出手段、401 中領域、402 小領域、402a 小領域、402b 小領域、501 建物、502 川床。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して新規に得た該当地域の特異領域を算出すると共に、事前に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して事前に得た該当地域の特異領域を算出する特異地表情報検出手段と、
上記特異地表情報検出手段により算出された新規に得た該当地域の特異領域及び事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行う位置補正手段と、
上記位置補正手段により位置合わせが行われた新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出する地表情報差分検出手段と、
上記地表情報差分検出手段により検出された差分について、予め設定された地表情報の変化を評価するためのパラメータと比較して、実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価する地表情報変化評価手段とを備えた地表変化判別装置。
【請求項2】
上記特異地表情報検出手段が、
該当地域を所定の中領域及び小領域に分割する領域分割手段と、
上記領域分割手段に分割された所定の中領域及び小領域毎に地表情報の領域統計を算出する領域統計算出手段と、
上記領域統計算出手段により算出された中領域及び小領域毎の地表情報の領域統計に基づき、該当領域の地表情報の特異な分布を検出して該当地域の特異領域を算出する特異領域算出手段とを備えたことを特徴する請求項1記載の地表変化判別装置。
【請求項3】
上記領域統計算出手段は、各中領域及び各小領域の各地点の地表情報に基づき、各中領域及び各小領域の地表情報の平均値を領域統計として算出し、
上記特異領域算出手段は、上記領域統計算出手段により算出された小領域の地表情報の平均値と当該小領域を含む中領域の地表情報の平均値とを比較し、又は上記領域統計算出手段により算出された小領域の地表情報の平均値と当該小領域に隣接する小領域の地表情報の平均値を比較し、予め設定された所定の条件を満たす場合に、当該小領域を特異領域として算出する請求項2記載の地表変化判別装置。
【請求項4】
該当地域の地表の変化を判別するためにコンピュータを、
新規に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して新規に得た該当地域の特異領域を算出すると共に、事前に得た該当地域の地表情報の特異な分布を検出して事前に得た該当地域の特異領域を算出する特異地表情報検出手段、
上記特異地表情報検出手段により算出された新規に得た該当地域の特異領域及び事前に得た該当地域の特異領域に基づき、新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との位置合わせを行う位置補正手段、
上記位置補正手段により位置合わせが行われた新規に得た該当地域の地表情報と事前に得た該当地域の地表情報との差分を検出する地表情報差分検出手段、
上記地表情報差分検出手段により検出された差分について、予め設定された地表情報の変化を評価するためのパラメータと比較して、実際に発生した地表情報の変化であるか否かを評価する地表情報変化評価手段、
として機能させるための地表変化判別プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−102854(P2008−102854A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286625(P2006−286625)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】