説明

型、それを用いたインプリント方法および物品の製造方法

【課題】インプリント装置にて、型と樹脂とを引き離す際の離型性と、使用可能期間の長期化の点で有利な型を提供する。
【解決手段】型1は、石英からなり、被処理体としての樹脂を成形するパターン部3を有する。この型1は、樹脂と接触するパターン部3の表面上に形成された、フッ化水素を含む液体に対して不溶である材料からなる第1層4と、第1層4の表面上に積層する形で形成された、シランカップリング剤を含む化学吸着膜としての第2層5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型、それを用いたインプリント方法および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂を型(モールド)で成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板(ウエハ)上のインプリント領域であるショットに紫外線硬化樹脂(インプリント材、光硬化性樹脂)を塗布する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)を型により成形する。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで引き離すことにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
上記技術を採用したインプリント装置では、型と基板上の樹脂とを引き離す際に、樹脂の一部が残渣として型のパターン部に付着すると、樹脂のパターンが所望の形状とはならなくなる。さらに、その残渣により、型のパターン部の形状または寸法も変化するので、次のインプリント処理の対象となるパターン形成領域でも、樹脂のパターンが所望の形状にならないという連鎖が生じる。そこで、従来、予めパターン部の表面にフッ素含有物質による化学吸着膜を形成する表面処理を施すことで、表面エネルギーを小さくし、型と基板上の樹脂との離型性を改善する技術が提案されている。特許文献1は、型の代表的な材質である石英に対して石英表面上のOH基と結合し、型との密着性が良好な化学吸着膜を形成することができるフッ素含有シランカップリング剤を用いる注型インプリント法を開示している。また、他の残渣の発生を抑える技術として、特許文献2は、樹脂の硬化を加熱により行う熱硬化法を採用したインプリント装置において、パターン部の表面に触媒作用を有する金属層を形成する型を開示している。この特許文献2では、型と基板上の樹脂とを押し付けた後、樹脂が加熱されたとき、この樹脂は、金属層を触媒として酸を発生させ、架橋反応を起こして硬化する。結果的に、硬化工程において樹脂の体積が収縮することから、この型を採用することで、残渣の発生を抑えることができる。一方、パターン部に付着した残渣を除去する方法として、特許文献3は、予めパターン部の表面に酸化チタンなどの光触媒作用を有する薄膜を形成し、残渣が発生した場合には、型に紫外光を照射して、光触媒作用により残渣を酸化分解する型を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−237312号公報
【特許文献2】特開2004−311690号公報
【特許文献3】特開2005−327788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、樹脂の残渣の発生を抑え、離型性を改善させる点で、型のパターン部の表面にフッ素含有シランカップリング剤による化学吸着膜を形成することは有効である。しかしながら、このような型でも、長期間繰り返して使用すると、残渣(汚れ)が発生する場合もあるため洗浄除去を行う必要があり、また、化学吸着膜の一部が型から徐々に剥離していく場合もあるため化学吸着膜を補修する必要もある。ここで、従来のインプリント装置では、基板上の樹脂に形成されるパターン幅を数十nmとするのが一般的である。この場合、型に形成されているパターン部の形状精度(例えば平滑性の精度)を維持するためには、化学吸着膜は、厚さが数nm、望ましくは1nm程度の均一な膜である必要がある。これに対して、化学吸着膜を補修するために、例えば、既存の化学吸着膜の上にさらにシランカップリング剤による重ね塗りを行うと、膜厚が厚くなったり、膜厚分布を生じさせたりするため、パターン幅やパターン部の形状精度に影響を及ぼす可能性がある。したがって、化学吸着膜を補修する際には、パターン部から化学吸着膜を全て除去させた後、新たに化学吸着膜を形成する必要がある。
【0006】
しかしながら、シランカップリング結合は、強固な結合であるため、パターン部から化学吸着膜を除去させることは容易ではない。例えば、フッ化水素を含む洗浄液により化学吸着膜を除去することも可能ではあるが、型の材質である石英が容易に溶解してしまうため、パターン部の形状が変化する可能性がある。同様に、特許文献2および3に示すように、パターン部の表面に酸化チタンを代表とする触媒膜を形成している場合でも、酸化チタンが容易に溶解してしまうため、パターン部の形状が変化する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、インプリント装置にて型と樹脂とを引き離す際の離型性と、使用可能期間の長期化の点で有利な型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、石英からなり、被処理体としての樹脂を成形するパターン部を有する型であって、樹脂と接触するパターン部の表面上に形成された、フッ化水素を含む液体に対して不溶である材料からなる第1層と、第1層の表面上に積層する形で形成された、シランカップリング剤を含む化学吸着膜としての第2層と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、インプリント装置にて型と樹脂とを引き離す際の離型性と、使用可能期間の長期化の点で有利な型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るモールドの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(モールド)
まず、本発明の第1実施形態に係るモールドの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るモールド1の構成を示す概略図である。特に、図1(a)は、凸部2の側から見たモールド1の全体形状を示す斜視図であり、図1(b)は、凸部2の平面領域に形成されているパターン部3の構成を示す断面図である。以下、このモールド1は、一例として光硬化法を用いたインプリント装置に採用されるものとするが、例えば熱硬化法を用いたインプリント装置にも採用可能である。なお、インプリント装置とは、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、基板上の被処理体としての未硬化樹脂をモールドで成形し、基板上に樹脂のパターンを形成する装置である。モールド1は、図1(a)に示すように、外周形状が多角形(好適には、矩形または正方形)であり、基板に対する面の中央部には、例えば回路パターンなどの転写すべきパターン部3が3次元状に形成された凸部2を含む。また、モールド1の材質は、光硬化法を用いたインプリント装置への適用を考慮して、紫外線を透過させることが可能な材質であり、本実施形態では一例として石英とする。
【0013】
パターン部3は、図1(b)に示すように、モールド1(凸部2)の本体である石英の凹凸面上に形成された第1層4と、この第1層4の表面上に積層する形で形成された第2層5とを含む。まず、第1層4は、有機ケイ素化合物とでシランカップリング結合が可能な酸化物で形成された洗浄保護膜である。この洗浄保護膜は、後述するが、第2層5を洗浄除去させる際に、洗浄液から石英の溶解を抑止するためのものである。この洗浄液としては、フッ酸を含む液体が使用されることから、第1層4の材質としては、洗浄液に不溶である酸化物とすることが望ましい。この酸化物としては、例えば酸化アルミニウムが好適である。ここで、パターン部3のパターン幅は、数十nmである。したがって、第1層4の膜厚は、パターン部3の形状精度や平滑性を維持させるために、1nm以上、10nm以下の範囲にあることが望ましい。一方、モールド1(パターン部3)と基板上の樹脂とを押し付けた後、紫外線の照射により樹脂を硬化させるが、第1層4の材料が紫外線に対して光触媒性を有すると、接触した樹脂の一部が酸化分解する可能性がある。したがって、第1層4を構成する材料には、光触媒性がない、または低い材料が望ましい。この点においても、上記の酸化アルミニウムは、第1層4の材料として好適である。次に、第2層5は、シランカップリング剤にて形成された化学吸着膜である。この化学吸着膜は、表面エネルギーを小さくすることで、モールド1と基板上の樹脂との離型性を改善させるためのものである。下層に位置する第1層4が酸化物からなる膜であるため、その表面のOH基がシランカップリング剤と結合することで、第2層5が形成される。ここで、数十nmのパターン幅の形状精度を維持するために、第2層5の膜厚は、0.2nm以上、10nm以下にあることが望ましく、さらには、数nm、より好ましくは1nm以下に均一化させることが望ましい。なお、上記の第1層4および第2層5の膜厚の寸法範囲は、実際の物品の製造工程にモールド1を採用する場合であり、例えばラフパターンの場合には、上限側がより大きくなるときもある。
【0014】
次に、モールド1をインプリント装置に採用した場合について説明する。通常、モールドは、インプリント装置にて長期間、繰り返し使用される。本実施形態のモールド1のように、パターン部3の表面、すなわち押し付けの際に樹脂と接触する部分に化学吸着膜を有するモールドでは、長期間の使用により、化学吸着膜の一部が剥離してしまう現象が生じる場合がある。化学吸着膜の剥離部分は、この剥離部分の周辺部分に比べて樹脂との離型性が低下しているため、その後の他のパターン形成領域(ショット)に対するインプリント処理において樹脂の一部がちぎれて付着し、樹脂の残渣を発生させやすい。また、化学吸着膜の剥離部分の周辺部分も、剥離部分を基点として、インプリント処理の際に樹脂と密着したまま剥離する場合もある。すなわち、化学吸着膜に剥離部分が一度生じてしまうと、残渣の大きさや数が飛躍的に増加する。さらに、化学吸着膜の表面上でも、同様に長期間の使用により残渣のような汚れが付着する場合もある。このような化学吸着膜の剥離や汚れの付着は、インプリント処理により基板上の樹脂に転写されるパターンの形状に影響を与える可能性がある。そこで、化学吸着膜に剥離部分が生じたり、汚れが付着したりした場合には、化学吸着膜を補修する必要がある。
【0015】
この化学吸着膜の補修に際しては、パターン部の形状精度を維持するために、化学吸着膜に付着した汚れも適切に除去することが望ましい。これは、化学吸着膜の1nm程度の膜厚を変化させることなく、また厚みムラを生じさせないように補修を行うことが望ましいことにもつながる。しかしながら、従来のパターン部3の表面上に化学吸着膜が存在する状態で、新たにシランカップリング剤により化学吸着膜を重ね塗りすると、既に化学吸着膜が存在していた部分は、所望の膜厚よりも厚くなる。これに対して、この化学吸着膜が存在していた部分の膜厚が厚くなり過ぎないように、シランカップリング剤による重ね塗りの程度を調整することも考えられるが、実際上、剥離部分に対して充分に化学吸着膜を補充することは難しい。そこで、本実施形態では、化学吸着膜の補修に際し、一旦、パターン部3の表面から既存の化学吸着膜である第2層5をすべて除去させ、その後、新たに第2層5を再形成する方法を採用する。
【0016】
ここで、化学吸着膜を有する従来のモールドは、その化学吸着膜をパターン部の表面上に直接形成している。この化学吸着膜を除去する際には、シランカップリング剤による化学吸着膜がパターン部の表面に強固に結合しているため、例えばフッ化水素を含む洗浄液を用いて除去することが考えられる。しかしながら、この洗浄液は、モールドの材料である石英に接触と、容易に溶解させてしまう性質を有する。そこで、本実施形態のモールド1は、この石英面に洗浄液が接触しないように、上記のように、パターン部3の表面と化学吸着膜である第2層5との間に、洗浄保護膜である第1層4を含む構成としている。この第1層4は、上記のように、例えば酸化アルミニウムからなる膜であり、フッ化水素を含む洗浄液に対して耐性があるため、この洗浄液が接触してもパターン部3を変形させづらく、パターン部3の形状精度への影響を抑えることができる。このように、本実施形態のモールド1は、離型特性を向上させる化学吸着膜を有し、かつ、万が一化学吸着膜に剥離や汚れの付着が生じても、パターン部3の形状精度への影響を抑えつつ、化学吸着膜を補修させることができる。
【0017】
以上のように、本実施形態によれば、インプリント装置にて、モールドと樹脂とを引き離す際の離型特性の向上のためにモールドに形成された化学吸着膜の補修の容易性の点で有利なモールドを提供することができる。
【0018】
なお、上記説明では、洗浄保護膜である第1層4を構成する酸化物として、酸化アルミニウムを一例に上げたが、例えば、この酸化アルミニウムに換えて、酸化ハフニウムを採用してもよい。さらに、第1層4を構成する酸化物は、単体物に限らず、例えば酸化アルミニウムと酸化ハフニウムとの混合物としてもよい。酸化ハフニウムも、フッ化水素を含む洗浄液に不溶であり、表面にOH基を有してシランカップリング結合を形成するため、上記と同様に、化学吸着膜の補修の際に好適である。この混合物を構成する材料も、これに限定するものではなく、フッ化水素を含む洗浄液に不溶であるものであれば、酸化アルミニウムを含む他の混合物あるいは酸化ハフニウムを含む他の混合物でもよい。
【0019】
(インプリント方法)
次に、本発明の一実施形態に係るインプリント方法について説明する。図2は、本実施形態に係るインプリント装置10の構成を示す概略図である。なお、このインプリント装置10は、上記のモールド1を採用し、一例として光硬化法を採用したインプリント装置とする。また、以下の図においては、ウエハ上の樹脂に対して紫外線を照射する照明系の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。インプリント装置10は、まず、光照射部11と、モールド保持機構12と、ウエハステージ13と、塗布部14と、制御部15とを備える。なお、モールド1は、上記実施形態で説明したものであるが、例えば、紫外線16が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さを有する凹部(キャビティ)を有するものとしてもよい。
【0020】
光照射部11は、インプリント処理時にモールド1に対して紫外線16を照射する。この光照射部11は、不図示であるが、光源と、この光源から照射された紫外線16をインプリントに適切な光に調整する光学素子とから構成される。モールド保持機構12は、モールド1を保持するモールドチャック17と、このモールドチャック17を保持し、モールド1(モールドチャック17)を移動させるモールド駆動機構18とを有する。モールドチャック17は、モールド1における紫外線16の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールド1を保持し得る。例えば、モールドチャック17が真空吸着力によりモールド1を保持する場合には、モールドチャック17は、外部に設置された不図示の真空ポンプに接続され、この真空ポンプのON/OFFによりモールド1の脱着が切り替えられる。また、モールドチャック17およびモールド駆動機構18は、光照射部11から照射された紫外線16がウエハ19に向かうように、中心部(内側)に開口領域20を有する。この開口領域20には、その一部とモールド1とで囲まれる空間を密閉空間とする光透過部材(例えばガラス板)が設置され、真空ポンプなどを含む不図示の圧力調整装置により空間内の圧力が調整される。圧力調整装置は、例えば、モールド1とウエハ19上の樹脂21との押し付けに際して、空間内の圧力をその外部よりも高く設定することで、凸部2をウエハ19に向かい凸形に撓ませ、樹脂21に対して凸部2の中心部から接触させ得る。これにより、パターン部3と樹脂21との間に気体(空気)が残留することを抑え、パターン部3に樹脂21を隅々まで充填させることができる。モールド駆動機構18は、モールド1とウエハ19上の樹脂21との押し付け、または引き離しを選択的に行うようにモールド1を各軸方向に移動させる。このモールド駆動機構18に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータまたはエアシリンダがある。また、モールド1の高精度な位置決めに対応するために、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、Z軸方向だけでなく、X軸方向やY軸方向、またはθ(Z軸周りの回転)方向の位置調整機能や、モールド1の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成もあり得る。なお、インプリント装置10における押し付けおよび引き離し動作は、モールド1をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、ウエハステージ13をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。
【0021】
ウエハ19は、例えば単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板であり、この被処理面には、紫外線硬化樹脂であり、モールド1に形成されたパターン部3により成形される樹脂21が塗布される。ウエハステージ13は、ウエハ19を保持し、モールド1とウエハ19上の樹脂21との押し付けに際し、ウエハ19上のパターン形成領域に予め形成されている基板側パターンの形状と、モールド1のパターン部3の形状との位置決めを実施する。このウエハステージ13は、ウエハ19を、吸着力により保持するウエハチャック22と、このウエハチャック22を機械的手段により保持し、各軸方向に移動可能とするステージ駆動機構23とを有する。このステージ駆動機構23に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータや平面モータがある。ステージ駆動機構23も、X軸およびY軸の各方向に対して、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、Z軸方向の位置調整のための駆動系や、ウエハ19のθ方向の位置調整機能、またはウエハ19の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成もあり得る。また、ウエハステージ13は、その側面に、X、Y、Z、ωx、ωy、ωzの各方向に対応した複数の参照ミラー24を備える。これに対して、インプリント装置10は、これらの参照ミラー24にそれぞれビームを照射することでウエハステージ13の位置を測定する複数のレーザー干渉計(測長器)25を備える。レーザー干渉計25は、ウエハステージ13の位置を実時間で計測し、後述する制御部15は、このときの計測値に基づいてウエハ19(ウエハステージ13)の位置決め制御を実行する。
【0022】
塗布部14は、モールド保持機構12の近傍に設置され、ウエハ19上に樹脂(未硬化樹脂)21を塗布する。ここで、この樹脂21は、紫外線16を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂(インプリント材)であり、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。また、塗布部14の吐出ノズル14aから吐出される樹脂21の量も、ウエハ19上に形成される樹脂21の所望の厚さや、形成されるパターンの密度などにより適宜決定される。
【0023】
制御部15は、インプリント装置10の各構成要素の動作、および調整などを制御し得る。制御部15は、例えばコンピュータなどで構成され、インプリント装置10の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。なお、制御部15は、インプリント装置10の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置10の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0024】
また、インプリント装置10は、インプリント処理に際し、ウエハ19上に存在し、被処理部となる基板側パターンの形状の計測などを実施する計測部であるアライメント計測系26を備える。このアライメント計測系26は、例えば、図2に示すように開口領域20内に設置し得る。これにより、アライメント計測系26は、例えば、ウエハ19上に形成されたアライメントマークをモールド1越しに検出することができる。また、インプリント装置10は、ウエハステージ13を載置するベース定盤27と、モールド保持機構12を固定するブリッジ定盤28と、ベース定盤27から延設され、除振器29を介してブリッジ定盤28を支持するための支柱30とを備える。除振器29は、床面からブリッジ定盤28へ伝わる振動を除去する。さらに、インプリント装置10は、共に不図示であるが、モールド1を装置外部からモールド保持機構12へ搬送するモールド搬送機構や、ウエハ19を装置外部からウエハステージ13へ搬送する基板搬送機構などを含み得る。
【0025】
次に、インプリント装置10によるインプリント方法(インプリント処理)について説明する。まず、制御部15は、基板搬送機構によりウエハ19を搬入させ、ウエハステージ13上のウエハチャック22にウエハ19を載置および固定させる。次に、制御部15は、ステージ駆動機構23を駆動させ、ウエハ19上のパターン形成領域(ショット)に存在する、処理対象の基板側パターンを塗布部14による塗布位置へ移動させる。次に、制御部15は、塗布部14に対し、塗布工程として基板側パターン上に樹脂21を塗布させる。次に、制御部15は、ステージ駆動機構23を再駆動させ、ウエハ19上の基板側パターンがモールド1に形成されたパターン部3の直下に位置するように移動させる。次に、制御部15は、押型工程として、モールド駆動機構18を駆動させ、ウエハ19上の樹脂21にモールド1を押し付ける。この押し付けにより、樹脂21は、パターン部3に充填される。この状態で、制御部15は、硬化工程として、光照射部11にモールド1の上面から紫外線16を照射させ、モールド1を透過した紫外線16により樹脂21を硬化させる。そして、樹脂21が硬化した後に、制御部15は、離型工程として、モールド駆動機構18を再駆動させ、モールド1を樹脂21から引き離す。これにより、ウエハ19上の基板側パターンの表面には、パターン部3に倣った3次元形状の樹脂21のパターンが成形される。このような一連のインプリント動作をウエハステージ13の駆動によりパターン形成領域を変更しつつ複数回実施することで、1枚のウエハ19上に複数の樹脂21のパターンを成形することができる。
【0026】
本実施形態のインプリント方法では、樹脂21と接触する部分にシランカップリング剤を用いた化学吸着膜を有するモールド1を使用することから、パターンの形成を複数回実施してもパターン部3に樹脂21の残渣が発生しづらいという利点がある。また、インプリント装置にて、さらに長期間、繰り返しモールド1を使用すると、場合によっては、化学吸着膜の一部が剥離したり、表面に残渣のような汚れが付着したりする可能性がある。そこで、本実施形態では、モールド1を使用したパターンの形成を複数回実施した後、パターン部3に形成されている化学吸着膜である第2層5の補修を行う。この補修工程として、まず、フッ化水素を含む洗浄液により、パターン部3に形成されている第2層5を一旦除去する工程と、次に、第1層4の表面上に、第2層5を再形成する工程とを有する。この補修工程を含むインプリント方法によれば、歩留まりの向上など装置性能に有益となり、またモールドの再利用の促進にも貢献する。
【0027】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 モールド
3 パターン部
4 第1層
5 第2層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英からなり、被処理体としての樹脂を成形するパターン部を有する型であって、
前記樹脂と接触する前記パターン部の表面上に形成された、フッ化水素を含む液体に対して不溶である材料からなる第1層と、
前記第1層の表面上に積層する形で形成された、シランカップリング剤を含む化学吸着膜としての第2層と、
を有することを特徴とする型。
【請求項2】
前記第1層を構成する前記材料は、表面にOH基を有し、有機ケイ素化合物とでシランカップリング結合が可能な酸化物である、または前記酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の型。
【請求項3】
前記酸化物は、酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載の型。
【請求項4】
前記酸化物は、酸化ハフニウムであることを特徴とする請求項2に記載の型。
【請求項5】
前記第1層の膜厚は、1nm以上、10nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の型。
【請求項6】
前記第2層の膜厚は、0.2nm以上、10nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の型。
【請求項7】
基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させて、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記型は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の型であることを特徴とするインプリント方法。
【請求項8】
前記型による前記パターンの形成を複数回実施した後、
フッ化水素を含む前記液体により、前記第2層を除去する工程と、
前記第2層を除去する工程の後、前記第1層の表面上に、前記第2層を再形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項7に記載のインプリント方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のインプリント方法を用いて基板上に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−105902(P2013−105902A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248921(P2011−248921)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】